パーキンソン病・25年目の奇跡 (1) 実録


今回は発症して25年目のパーキンソン病の症例を紹介します。この方は50歳で発症して現在は75歳です。
25年というと、ちょうど小生がこの仕事をやっている年数そのものです。
つまりこの仕事を始めたときに、この方は発症したのです。


「パーキンソン病、少しずつ減薬すれば良くなる!」2月16日出版
今回の書籍を書く動機になった症例でした。書籍の帯で紹介されている(本文では7ページ4~7行目) 文章はこの患者さんご家族からの手紙です。
様々な医療機関を転々として、平成27年8月。当院の受診へ至りました。


「これまでは、外来で神経内科医に不調を相談すると、すぐに薬が追加されていたが、それらの薬にはほとんど効果が感じられず、副作用ばかり増える気がしていた。長年飲んでいる薬の影響で生活の質(QOL)もかなり低い状態になっていた。こちらでは無駄な薬の排除をしてくださるので、大変ありがたい

この方は、症例2(拙著84~90ページ)に紹介しています。
著名な元大学教授の先生の外来へ通院していました。
長くなるので、くわしくは拙著をよく読んでほしいと思います。


初診時は、ほとんど動けず、立位保持も歩行もできない状態でした
診察すると把握反応が著明(左>右)で、開眼失行が目立ち、言葉が話せず、
強い前頭葉機能障害が示唆されました。意識も朦朧としているように見えました。まるで進行性核上性麻痺の進行期と同じような臨床像でした。

ドパミン作動薬を複数服用していても、全然効いていなくて一日中ほとんど動けない、歩けないという厳しい状態でした。
前医では、「発症して20年以上経っていて、認知症もかなり進んでいるので、かなり深刻な状況だ。何をしてもよくなるはずがない。」と言われ

前医で処方されていた、治療薬は
① レボドパ・カルビドパ 200mg×3
② ロピニロール 4mg
③ ロチゴチン 9mg
④ ゾニサミド 25mg
⑤ エンタカポン 100mg×3
⑥ ドネぺジル 3mg
⑦ ドンペリドン 10mg×3
⑧ 酸化マグネシウム 330mg×4


実は小生も前医と同じように「病気が進行していて深刻な状況だ」と認識していて、どう考えてもこの方が良くなるとは思いませんでした。
正直に言うと「エライ患者が来てしまったな」と感じていたほどです。


しかし、そういう状況であれば、なおさら無駄な薬はいらんだろうと思い、ドパミン・アゴニストである②と③の併用。④のゾニサミドの使用、⑥のドネぺジルの使用、⑦のドンペリドンの使用は意味がないと考えましたので、
ドパミン・アゴニストは③に統一して、②④⑥⑦を順次中止しました。
特に⑥⑦はドパミン阻害に作用、②④はせん妄を誘発していると考えました
さらに①レボドパ配合剤200mg×3回を水に溶かして100mg×6回に変更しました。レボドパ吸収を阻害している可能性が考えられた、⑧の酸化マグネシウムをレボドパから2時間ずらして1日2回の服用に変更しました。

日中の意識は覚醒して、自宅内も手すりを使って移動できるようになり、オンの時間帯には日常生活動作もほとんど自分でできるようになりました。
この経過でやはりこの方はパーキンソン病だったのだと確信しました。

運動症状が良くなってから、認知症の簡易評価スケールであるMMSE、HDSRを実施しましたが、それぞれ28点、29点であり、26点以上でしたので、認知症(PDD)には該当しませんでした。
前医の「認知症もかなり進んでいる」という認識は間違いでした

よくパーキンソン病の専門家の先生方が、年表で「発症して20年以上経てば、認知症が進行する」というステレオタイプ的な講演を聞きますが、
この方にとっては前医が処方していた薬で認知症みたいにされていたのであり、認知症には至っていない事がわかりました。


来院後1年の処方 (28年11月)
① レボドパ・カルビドパ 配合剤 600mg/日
6時150/9時100/12時100/15時150/18時100(600mg/日)
② エンタカポン 200mg/日
12時100 18時100
③ロチゴチン 13.5mg/日
④酸化マグネシウム 1000mg/日
14時 500mg 21時 500mg
②は一時期中止したのですが、やはりオフが出るという事で再開。
④も一時期中止して、漢方薬に変更したが合わずに、元に戻しました。

診察時にもオン時間帯には猛烈な上半身のジスキネジアが頻繁にみられ、オフ時間も以前よりはかなり減ったもののエンタカポンでは埋めきれない状況でした。しかしエンタカポンを増やすと、ジスキネジアがさらに悪化すると想定されたので増やす気はありませんでした。

前医の無駄な薬をすべて取っ払うと動ける時間が増える一方で、ウェアリングオフとジスキネジアが目立ち典型的な無動型のパーキンソン病の臨床像が明らかになってきました。
アマンタジン100mgを追加してジスキネジアはいくらか軽減したものの、オフ現象はそのままでした。

つまり残る問題である、ウェアリングオフとジスキネジアは未解決でした。
前回のブログでも示したように、最近
ロチゴチンとイストラデフィリンの併用により、オフ現象の制御に成功した症例がいくつかありましたので
思い切ってエンタカポン、アマンタジンを中止して、イストラデフィリンに変更しました。

最新処方(30年3月)
①レボドパ・カルビドパ配合剤 600mg 1日5回
②ロチゴチン13.5mg 1日1回
③イストラデフィリン 20mg 1日1回
④酸化マグネシウム 1000mg 1日2回
⑤ルビプロストン 24μg 1日1回 (※便秘薬)

ジスキネジアは大幅に減少して、ほとんど見られなくなりましたオフ現象も同居している家族が見ている範囲ではほとんどなくなりました。
現在、歩行器を使って歩行していますが、以前より早くなったという印象で
地面から足がしっかり上がっているという感じがしました。

25年目でも薬の効果があるのが、純粋型パーキンソン病なのです。

パーキンソン病の25年目としては上出来ではないかと思いました
パーキンソン病の20年目以上の方が全員認知症になるわけではなく、実際統計的には半数程度と言われています。

この方を現在のベストの状態に持っていくまで3年近くかかったのですが、
純粋型パーキンソン病は、進行がきわめて遅いために、試行錯誤する時間的猶予が与えられました。
何より前医(元大学教授)とは違って何の権威もない小生のような開業医を信用して、3年も根気強く通院し続けてくれた患者さんとご家族に感謝したいと思います。

この方には、実は薬以外にも、2~3種類のサプリメントを使っています。
そのサプリメントはこちらから提案して、同意のうえで服用しています。
サプリメントの併用がなければ、減薬は困難だったかもしれません。
サプリメントが効果があると言うと、やれ科学的根拠がないだのプラセボ効果だのと言われかねないので、情報は非公開にしています。

またこの症例と同じような方に、同じような事をしたとしても、全員上手くいくとは思いません。それは他の病気でも同じです。

それは「多様性」があるからです。同じ病気でも、それぞれが置かれている環境因子や遺伝的素因はすべて違います。
同じ方法を使ってすべて上手くいくほど実地臨床は甘くはないのです。
この症例はおそらく、認知症がない、アルツハイマー病理がない、など好条件がそろっていたので幸運にも上手くいったのだと思います。




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# by shinyokohama-fc | 2018-03-16 11:32 | 治療

鹿児島認知症ブログ・書評(4)価値観を大事にして「世間」で仕事をしない

(4) 価値観を大事にして、「世間」で仕事をしない

医者としては「患者に害を与えない」という価値観を大事にしている。
この価値観を医者を続けている間はすり減らさないようにしたいと思っているので

それが最も大事な価値観ではないでしょうか?そう思います。
神経に作用する薬を多種多量に処方するという事は、最も患者に害を与える可能性が高いというのは、誰が考えても自明の理であります。
パーキンソン病という多くは非常にゆっくりと進行する経過の長い病気において、初期からそういう処方をしてしまうというのは、そういう意識が全然ないのでしょうか。

医者同士の会合なり、懇親会なりの「付き合い」には極力顔を出さないようにしている。「時間がない」ということだけがその理由ではない。
付き合いという「世間」を重視しているうちに、自分が大事にしている価値観が薄められてしまうことを恐れるからである。

それはよくわかります。
小生も昨年は自分が出たいと思わない会合とか懇親会はよく欠席しました。
セミナーとか講演会だけ出席して、懇親会は出ない事も多いです。
講演会は、興味のあるテーマの場合はなるべく行くようにしています。
懇親会も、他の医者との歓談(対話)で有意義な情報が得られる事もありますし、仕事と全く関係のない雑談をする事もありますので。
昔から忘年会とか送別会とか、宴会系が大の苦手でした。不特定多数の人が同じテーブルに座ってランダムに会話するという形式が基本的にムリですね
気心が知れた人3~4人くらいまでであればいいのですが。

付き合い重視で空気を読みすぎ、大事な何かをすり減らし続けると、そのうち「世間」のために仕事をするようになるのではないか、という懸念を自分は持っている。

常に空気を読んで行動する常識人においてはそうなのでしょう。
私は空気など全然読まないので、すり減らす事はありません(苦笑)。
そもそも空気読んでたら、今回のようなタイトルと内容の書籍はたぶん出版していないと思います。

普通の医者の「世間」とは「EBM信奉、ガイドライン遵守」である
「抗パーキンソン薬や抗認知症薬は基本的に、規定量まで増量・維持」の世界である。

普通に臨床実地医家をやっていたら、特にパーキンソン病とか認知症とか脳内の神経伝達物質の状態がデータ表示できるわけでもないので、EBMとかガイドラインではとてもじゃないが、対応できない事がよくわかりますね。
例えば、レボドパの少量分割投与などはEBMは証明されていませんが、ウェアリングオフとかジスキネジア回避のために普通に行われてますね。
EBM絶対主義が叫ばれてから、医療がゆがんだ方向に行ってるような気がします。EBM 丸投げで自分の頭で悩んだり考えなくなったし、むしろ無責任な医療になったのではないかとすら感じます。
そもそもEBMのない漢方セミナーになぜあれだけの医者が集まるのか?

本書籍を読めば、小生が「世間」で仕事をしていない事が良く分かる。

空気の読めない、生来の天邪鬼気質というだけなのかもしれませんが。
自慢ではないが、人の言う事に素直に従ったことのない人間ですので。

パーキンソン病に関わる医療従事者は、自分の襟を正すために。そして
パーキンソン病患者さんとその家族は、知識を得てわが身を守るために、本書籍を一読する事をお勧めする。

むしろ後者の目的で書いたのですが、知人の神経内科医数名からの評判は悪くなかったようなので、ひとまずは安堵しています。
ここまで強力な言葉での推薦を著者としては本当に感謝したいと思います。



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# by shinyokohama-fc | 2018-03-12 12:07 | 治療

鹿児島認知症ブログ・書評(3) 抗パーキンソン薬が際限なく増える理由


書評(3)抗パーキンソン薬が際限なく増える理由

減薬で患者さんを良くすることは一種の解毒であり、解毒が治療の一つと言えるのであれば、我々がやっていることも世間では治療と呼んでもらえるのかもしれない。だが、それは本来的な意味での病気の治療とは全く別物であろう。

拙著108~113ページの症例3のように、一見して前医の多剤増薬によって病状が看過できないほど著しく悪化している(多くは薬剤性せん妄)場合は、原因薬剤の中止を指示するだけでなく、111ページ5行目に書いてあるように「週に1回通院していただいて、解毒目的のグルタチオン点滴治療」を実施せざるを得ないことがあります。
これは、パーキンソン病に限った事ではなくて、むしろ多くの愁訴を有する病気、例えば「レビー小体型認知症と診断されている症例(本当はそうではない)」などに多く見られがちです。
初めから、不適切な投薬を重ねたりしなければ、このような事態は起こりえないわけで、解毒に成功して副作用から解放されたからといっても、本来あるべき姿に戻っただけなので、治療したという実感や達成感はないです。

患者さんに、パーキンソンの要素を見出したときには、
#1 パーキンソン病の可能性がある
#2 パーキンソン病は個人差が非常に大きい病気である
#3 数年後にパーキンソン病ではない病気だったことが判明するかもしれない
#4 初期から抗パーキンソン薬を増やしすぎると後々大変な目に遭う事が多い
#5 抗酸化治療のグルタチオン点滴療法は、短期的にも長期的にもメリットが大きい
このような事をお伝えしている

まず第一に言いたかったのは#2です。それはこの病気を主として診療している神経内科医であれば、誰でも知っている事です。
振戦優位型と無動型、運動障害の重症度が全く違う、別の病気に見えます。
50歳前後で発症した方と、80歳以上で発症した方もまるで違います。
発症して20年以上経過して認知症にならない方もいれば、2年で認知症になってしまう方もいます。幻覚の出にくい方と出やすい方もいます。

#3に関しては、ずっと前医でパーキンソン病だと言われて、そうだと信じて診ていたが、実はやはり違っていた(皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)など、拙著141ページから)というのはよくあります。これについては、また改めてこのテーマで後日書きたいと思います。

#4に関しては、よくあるパターンです。この1~2週間で拙著を購読したのが契機で、初診で受診された方々はこのパターンでした。
拙著165ページ3行目~「初期からレボドパを大量に投与すると、効果が早く失われやすい」実はこれは海外の論文からの報告です。
発症から10年以内にウェアリングオフ現象が深刻になっている方々にお話を聞いてみると「初期からレボドパがどんどん増やされた」と言われます。
先々の事を考えれば、「レボドパをいかに増やさずに治療するか」というのが、本来神経内科の専門医が考えるべきことではないでしょうか?

#5に関しては、短期的に前医の処方を解毒する目的で実施するのは有意義です。本来は解毒剤ですから。しかし長期的に有意義(メリットが大きい)かと言われると果たしてどうなのか? #2のごとくパーキンソン病そのものに多様性が大きく、#3のように別の病気であるという可能性を考えますと、「グルタチオン点滴が効果があるケースも一部あるかもしれない」といった程度でしょうか。常識的に考えて、たとえ効果があったとしても、点滴の効果というのは長くは続きません。
このテーマについては改めてブログで書きたいと思います。

食事を見直して糖質の過剰摂取があれば制限し、腸内環境を整えることの重要性をお伝えしている

パーキンソン病の場合は、αシヌクレイン(レビー小体)が腸内の神経叢(腸管を動かす自律神経の塊)にたまるので、多くは便秘になりがちです。それゆえ
腸内環境が病気を左右すると言っても過言ではないでしょう。

パーキンソン病の病初期で当院を訪れ、説明を受けた患者さんの多くは怪訝な表情をしている。そして、いつのまにか通院が途絶えていく人達もいる
自分の伝え方もあるのだろうが、相手側の理解力の乏しさとも決して無縁ではない。
また、パーキンソン病ゆえの「治療薬を過剰に求めすぎる現象」も関係してるかもしれない。

小生の外来では、パーキンソン病の方が最も再診率が高いです。むしろ認知症のほうが、本人の病識が乏しい、薬が効かない、などの理由で、通院が途絶えていく人が目立つようです。
我々が外来で説明した事が頭に残らない事も多いので、文章化して個別の病気に対して、プリント資料をお渡しするのも一つの方法だと思います。
限られた時間において、医療の内容を一般の人に説明するには時間がかかります。しかし、パーキンソン病の患者さんとその家族というのは、基本的に真面目な性格で勤勉な方が多いので、すでに情報収集したりしていますのでむしろ「話が早い、通じやすい」方々が多いので、こちらもストレスが少ない気がします。
「治療薬を過剰に求めすぎる」患者さんは小生のクリニックには来ません(苦笑)。なぜならホームページに「減薬主義」を掲げているので。
実際「世間」には増薬主義の患者さんや医者が多いようですので、「減薬主義」というマイノリティーでやっていくのは大変ではありますが。

通院が途絶えた患者さんは、別の病院で多くの抗パーキンソン薬を盛られているのか、それとも自ら求めているのだろうか、と想像すると切ない

薬の種類が10種類近くあるにもかかわらず、保険医療における制限が全くないというのが、そもそも大問題です。

少量の抗パーキンソン薬で軽度症状改善があったのに、患者側がその効果に満足できずに増薬を希望する事はかなりある。増量に伴う中長期的なリスクを説明し、現状維持が無難であることを理解してもらうためには時間がかかるのだが、自分の希望に医者が応えてくれないことに失望して去っていく患者もいる

薬物中毒にならないように、リスクを説明してブレーキをかけるのも臨床医の大事な役目です。
小生の場合はこの4年でそのようなケースは記憶にないです。なぜなら「減薬主義」を掲げているので、そのような方が訪れるケースはないからです。

多くの患者を外来で診なければならない医者は、一人の患者に多くの診療時間を割くことができない。そのため時間のかかる作業は非効率的とみなして端折られがちである。患者に去られたくない医者は、それが決して本意ではなくても、求めに応じて薬を出すことがあるかもしれない。その結果で副作用が発現しても、増薬が本意ではなかった医者は、心の中で「自分で求めたのだから、自己責任でしょ」くらいに思っているのかもしれない。

これはまさに患者が過剰に殺到する病院における神経内科の外来、特にパーキンソン病外来における本質的かつ根源的な問題をダイレクトに表現していただいたと思います。
外来診療の限られた時間では、副作用のリスクはすべて説明しきれない事も多いであろうというのが、拙著を書いた意図の一つです。
薬による有害事象は、薬を求めすぎた患者にも責任の一端があるという事です。これを回避するのは、患者と医者がよく薬をどうするかについて時間をとって話し合う必要があるのですが、忙しすぎると面倒になり、増薬一辺倒になりがちのようです。それで患者側の医療側への不信感が増幅します。

患者に対して驚くほどの冷淡さを示す、神経内科医を見かけるたびに、そのような医者の持つ心的風景を、自分は上記のように想像している

そのとおりですね。小生も、かつて患者が殺到する多忙な病院外来ではそうでした。というか、冷淡にならないと外来が回らないのですね

抗パーキンソン病大量投与に関しては、処方元の医者側にも多くの問題はあるにせよ、一部は患者側にも、現在の医療制度にも起因するのではないだろうか。

2年前の診療報酬改定で、抗精神病薬については制限が制定されたのは記憶に新しい事ですが、抗パーキンソン病薬については相変わらず無制限です。
カナダのように、薬をすべて保険外にするというのが困難だとしても、薬に関しては一定額以上は保険対象外にするとか何らかのの措置を講じないと、現状のような野放し状態では保険医療そのものが破綻してしまうのではないかと心配されます。

次回はこのシリーズの最終回になります。


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# by shinyokohama-fc | 2018-03-09 12:32 | 治療

無動タイプは減薬困難、DBSも考慮

拙著を読まれたのがきっかけで遠方から受診した方が2名おられました。

皮肉な事に「減薬すれば良くなる」に全く該当しないケースでした。

何事にも「例外」というのは存在します。

減薬が困難なケースというのは
「65歳以下で発症した、無動(固縮)型・アキネジアタイプ」
具体的には、レボドパ配合剤の効果が1~2時間しかもたない状況になっているタイプのことです。ある意味、
最もパーキンソン病らしいタイプであり、
他のパーキンソン病類似の病気では絶対に起こりえない現象です
このようなタイプの場合は、レボドパ配合剤を少なくとも6回以上、場合によっては10回以上少量分割服用にする必要があります。

今回、来られた患者さんは、自主的に10回以上に分割して服用しておられましたが、効果が1時間もたない状況のようでした。

実は私が定期に診ている患者さんにも数名このような方がおられます。
中には40代後半、50代前半の仕事をしている方もおられます。仕事中に動けなくなるというのは大変つらい事だと思います。

ウェアリング・オフ現象、オンオフ現象と呼ばれます。
発症して5年以内にレボドパ配合剤が増量された
場合は、この現象が起こりやすいというのは、海外の論文にも掲載されています。
すでにレボドパが増やされてしまって、オンオフ現象が顕著に現れているケースには、減薬メソッドは通用しません。

ウェアリングオフ現象に適応のある薬剤は次の3つです。
1)ゾニサミド (25mg)錠 1115.9円
2)イストラデフィリン(20mg)錠 782.4円
3)エンタカポン(100mg) 217.3円×最大8回/最大1600mg

薬価が高額です。高額であるがゆえに、
確実にオフ現象が軽減したと言えなければ継続する意味は全くないです。


1)に関しては、ふるえ(振戦)を軽減する効果は期待できますが、拙著にも書いたように、ウェアリングオフに対する効果が現れるまでは時間がかかるので、最低3か月以上服用して判定せよとなっています。実際には3か月も待ってられるのか?という事と、小生の経験では前医で処方されて実際には数か月以上服用しても効果がはっきりしないケースが多いようで、高額でもあり、減薬対象になりやすい薬です。

2)に関しては、単独で使用するよりは、むしろごく少量のドパミン・アゴニストと併用することによって、顕著なウェアリングオフ効果を発揮するケースが多いようです。ドパミンアゴニスト単独使用で増量すると、以前のブログでも書いたように、元々副作用が出現しやすい(多くは非運動症状の悪化)ので、少量で効果を発揮できるというのは理想的です。

3)はレボドパ配合剤を補完する作用の酵素阻害剤であるため、現状ではレボドパを服用するのと同じ回数で服用する必要があります。ゾニサミド、イストラデフィリン、ドパミンアゴニストが1日1回であるのに比べると服薬錠数・回数がが増える事が分が悪い
と思われます。レボドパ配合剤の効果時間をどれくらい伸ばせるのかは諸説あります。ある著名な先生が書いた教科書には30分と書いてますが、製薬会社の発表データでは90分になっています。もし前者であればメリットはさほど大きくないという事になります。

いずれにしても、根治療法ではなく対症療法なのですから
オフ現象軽減に効いていなければ、中止を申し出る
べきでしょうね。

イストラデフィリンが登場して2~3年の頃は、私はこの薬を処方しておらず、著名な先生も「この新しい薬をどう使っていったらいいのか?」とコメントしていたくらいでしたが、ドパミン作動薬ではないが故にドパミンアゴニストに代表されるドパミン作動薬特有の副作用が出にくいという点がアドバンテージになっているのではないかと推定されます。

レボドパ配合剤分割服用+イストラデフィリン+ドパミンアゴニスト
レボドパ配合剤分割服用+エンタカポン
このいずれかでもウェアリングオフが穴埋めできない場合は、薬物治療の限界と考えます。拙著にも書いたように、4種類以上の併用は薬剤せん妄に至るリスクが高まるので意味がなく、むしろせん妄、精神症状によるQOL低下が深刻化します。それは拙著の症例に書いたとおりです。

何より4種類以上の併用は大規模臨床試験などで有効性や安全性は証明されていません。神経系薬剤のポリファーマシーを何年も続ける事によって何をもたらすのかは拙著にくわしく書いたとおりです。

既存の経口服薬による薬物治療の限界ケースの場合は、
1)脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation)
2)胃ろうによるレボドパ持続注入

のいずれかになります。
侵襲的な治療であり、高額医療にはなりますが、パーキンソン病という病気は先の長い病気ですので、QOL 機能予後を考慮すれば導入する価値はあると思われます。
ただし、いかなる治療も効果・副作用には個人差があるという事は理解する必要があるでしょう。



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# by shinyokohama-fc | 2018-03-06 12:32 | 治療

鹿児島認知症ブログ・書評(2)減薬して良くなったことを評価される珍妙な現場

書評(2) 減薬して良くなったことを評価される珍妙な現場

薬を多量に盛られた方を、再度評価しなおして、慎重に減薬していく作業は、やったことがある医師ならわかると思うが、とにかく時間がかかる。
おそらく、初診には相当時間を費やしていると思われる。(中略)
「他院で大量に出された薬の後始末をしているから」


他の医者が処方した薬など、本当は一切触りたくないというの本音であり、本当は処方した医者が修正するべきものだと思います。小生も自分の診断や処方が間違っていたと後で気がついて後悔する事があります。副作用によるデメリットが大きければ、自分で処方した薬は自分で減薬したり中止したりする事は日常茶飯事です。

例えば、本書に掲載した症例が、なぜ前医にかかるのをやめて、当院へ来なければならなかったのでしょうか?
「医者と患者側のコミュニケーション不十分で、現状を共有できていない」「医者が副作用(有害事象)を十分認識していない、深刻に考えていない」
この2点につきるのではないでしょうか?
逆にこの2点ができていれば、前医によって副作用で有害な薬は減薬・中止されて、病状は安定したはずで、当院へ来る事もなかったはずです。
副作用をまず第一に実感するのは、患者さん自身と同居している家族や介護者であり、医者ではありません。医者が診察している時間(数分間)に副作用が目に見えて出現しているケースというのはまれです。
そういう意味で、患者側との対話、コミュニケーションが不可欠です。
初診の時間はだいたい30分にしています。薬の減量や変更はすぐには難しいので、通常は病状が安定するまでは2週間毎に診察にしています。特にパーキンソン病の場合は現行の保険医療制度下では何種類併用しても許されているので、ありえないほどの多剤併用処方(ポリファーマシー)が少なくないので、大変困難な仕事になりますが、誰もこういう仕事をやる人がいないので、仕方なく自分がやるしかないのかと諦めてやっています。
誰かがこの仕事をやらなれば、患者さんの病状が悪化していくだけなので、それを見過ごす事は到底できないからです。

減薬という、いわば他所の仕事の尻拭いで患者さんから喜ばれるというのは、なんとも妙な気分である。自分が一からその患者さんを良くしたわけではないからである。
他所の仕事の尻拭いのために、こちらの時間が持ち出しになっていることにゲンナリする。
誰かがやらなくてはならない仕事なのだろうが、自分個人の精神衛生上はきわめてよろしくない。

前医がもっと副作用を厳重に注意しながら慎重に薬を処方していれば、こんな事態(薬剤せん妄など)には至るはずもないわけで、正直言うと満足感は何もないです。
今回本書を書いた理由は、こういうポリファーマシーの被害者が少しでも減る事を願ったものです。
たぶんさほど効果は期待できないでしょうが。その理由は次回に。


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# by shinyokohama-fc | 2018-03-05 12:00 | 医療
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