高齢者認知症女性は全員心不全である

日本人の平均寿命は男性は79~80歳ですが、女性は86~87歳です。
つまり、80歳以上の高齢者のほとんどは女性であり、統計的には、そのうちの30~40%が「認知症」らしいです。
という事は「物忘れ外来」とか「認知症外来」を標榜する医療機関を受診する患者の大半が、80歳以上の高齢者女性という事になります。

小生は「神経内科」の専門医ではありますが、いわゆる「認知症」の専門医は標榜していません。「認知症」の学会である老年精神医学会、日本認知症学会には入会していませんので、専門医資格も持っていません。

それでも「神経内科」を標榜しているので「認知症」の患者を診ることになります。4年間診てきて様々な事がわかりました。

もっとも特徴的なことは、ほぼ全員が「心不全」だという事実でした。
聴診器で明らかな弁膜症による逆流音を聴取する方も少なくないようです。
骨格筋に関しては、男女差が明確ですが、心筋に関しても男女差があるのではないかと推定できます。
「女性は心筋は男性よりも弱い状態で男性よりも長生きする」
「心不全」と「認知症」の関連は様々な文献で示されています。
心拍出力が慢性的に低下していれば、心臓より上にある脳への循環量が減りますので、脳への酸素や糖分など栄養の供給が落ちるので、脳の神経細胞が老化するのが早まるのだと思われます。
しかしこれは「認知症」という病気ではなくて「加齢・老化現象」の一環だと考えたほうが良さそうです。

抗精神病薬やコリンエステラーゼ阻害薬は言うまでもなく「心臓に悪い薬」です。最近は、使用前に心電図を撮るべきだという意見もあり、私もそうしています。心電図のQ波とT波の時間が延長していると、致死性不整脈の危険が高いために、それを参考にしています。

高齢者の認知症の多くは心不全なので、原則的に最初からコリンエステラーゼ阻害薬と抗精神病薬、シロスタゾール使うべきではない」と私は考えています。この3~4年の小生の臨床経験では、これらの薬を使って、続けられている高齢者女性はごくわずかで8割以上が忍容性なく脱落しました。
やむをえず使用する場合は、心臓へのリスクを十分に説明した上で使用するべきではないかと思いますが、そこまでして85歳や90歳の女性患者さんに薬を使う事の意味はあるのか?と思います。
極論かもしれませんが、薬害で寿命を縮める事は倫理的に許されない。
行動心理症状を抑制する目的では、メマンチンを少量で使っていますが、
それ以外の薬は高齢者の認知症には必要ないのではと考えています。
本当の「認知症」は50~60歳、つまり70歳以前に発症する方々です。



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# by shinyokohama-fc | 2018-05-18 12:32 | 医療

山門(寺院の玄関)の数々

寺院には通常、総門と山門があります。総門はどこの寺院でもあるのですが、立派な山門を構える寺院というのは限られているようです。
この2~3年で小生が訪れた寺院で、特に山門が印象に残る寺院のものを集めてみました。
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建長寺・山門 (鎌倉市・臨済宗)
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光明寺・山門 (鎌倉市・浄土宗)
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南禅寺・山門 (京都市・臨済宗)
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慈恩寺・山門 (寒河江市)
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総光寺・山門 (酒田市・曹洞宗)

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恐山・菩提寺(円通寺) (むつ市・曹洞宗)

山門は、仏教寺院の正門であり、左右に金剛力士像(仁王像)が鬼のような形相で立っています。寺院は本来「山」に例えられ「山号」が名称についています。山門をくぐれば「入山する」という意味で、解脱(悟り)を求める人々は、この門から中に入りなさい(入山しなさい)という意義があります。
別名「三解脱門」と呼ばれていて、「空」「無相」「無作」の3つから解脱するという意味だそうです。
この写真でお見せしている「山門」はいずれも特に由緒ある有名な寺院の山門であり、「南禅寺」など日本有数の大きさの山門もあります。
「山門」は寺院の「顔」と言えると思います。普段は中は非公開ですが、期間限定で、公開している寺院が多いようです。
「慈恩寺」など非常に古くから残っている木造建築もあり、文化遺産としても貴重な山門も多いようです。


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# by shinyokohama-fc | 2018-05-14 12:02

古寺巡礼(4) 永観堂・禅林寺(浄土宗・京都市)

4月15日に内科学会で京都市へ出張しました。
学会会場から徒歩10分くらいで行ける距離に有名な寺がいくつかありましたが、今回は南禅寺と永観堂を拝観することにしました。

永観堂・禅林寺は「モミジ寺」として大変有名な寺で、毎年紅葉の季節には観光客で混雑するようです。

名前からして、南禅寺のような禅宗の寺かと想像していましたが、もともとこの寺は真言密教の寺として始まり、後に永観律師によって発展、その後の住職の意向により浄土宗に変わったそうで、臨済宗とは関係ないようです。

浄土宗の寺と言えば、以前のブログでも写真つきで紹介した「九品仏・浄真寺」が境内がモミジやイチョウなどの鮮やかな紅葉で有名ですが、永観堂はその境内の広さとスケールに圧倒されました。

南禅寺~永観堂近辺は、観光客でごった返す京都駅前や祇園と違って、その姿はほとんどなく、鎌倉の寺よりも拝観者が少なかった事には意外でした。
紅葉シーズン以外に訪れたのは初めてでした。

今年は3~4月の気温が高かったせいか、新緑のモミジが鮮やかでした。
小生も記憶が不確かですが、何年も前に一度だけ紅葉の時期に訪れた事があります。しかし混雑の記憶しかなくて、どういう境内だったのか覚えていませんでした。
中心に大きな池があり、水路に4つの橋がかかっていました。いくつかの堂があり、渡り廊下で移動できました。
境内は、モミジなど木々がたくさん植えられており、大きな庭園のようでした。
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# by shinyokohama-fc | 2018-04-16 10:11

65歳以上で幻覚、ドパミン・アゴニストを少しずつ減薬を!


本日「医薬品安全対策情報」2018.4(No.268)が届きました。
薬剤が発売されてから、20年近く経過しても、新たな添付文書の改訂が行われるのが、普通です。

5ページ目に、プラミペキソールに関する内容が記載されていました。
注目すべきは「悪性症候群」「幻覚などの精神症状」

「悪性症候群」
本剤の急激な減薬または中止により、悪性症候群があらわれる」拙著 193~194ページ参照。
これがあるから、拙著タイトルは「少しずつ減薬すれば」になっています。

「幻覚などの精神症状」拙著 202~206ページ参照。
65歳以上の高齢者で、非高齢者に比べて、幻覚などの精神症状の高い傾向が認められているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。幻覚などの精神症状が現れた場合には、減量または投与中止するとともに、必要に応じて抗精神病薬を使用すること」
拙著の症例5(127ページ)、症例10(225ページ)では、プラミペキソールによる深刻な精神症状の事例を掲載しています。
ドパミン・アゴニストが精神症状の副作用が多いというのは実地臨床ではもはや常識ですが、特にプラミペキソールは増量すると大脳辺縁系のドパミン受容体(D2/D3)に選択的にダイレクトに作用してしまうからという

何度も言いますが、こういう深刻な有害事象から最初に気がつくのは家族です。つまり救えるのは家族しかいない訳です。
ですから、「医薬品安全対策情報」というのは、薬を服用している患者側に対して、薬局から直接提供されるべき情報ではないのか?と思います。
実際は、患者側は幻覚の副作用の事など全然知らないで服用を続けている、問診もロクに取る時間がない外来医は外来で気がつかないから、そのまま継続処方しているという事が多いのではないか。

2月16日に発売された、拙著を購読されたのを契機に、初診で来院された高齢者のうち、ドパミン・アゴニスト服用していた方は5名、そのうち2名がプラミペキソールを服用していました。内訳は以下のとおり。

①)67歳男性 発症16年目 PDDと診断
精神運動興奮を伴わない程度の幻視があったが、減薬により軽減
ロチゴチン 18mg/日
レボドパ/カルビドパ550mg、エンタカポン400mg、
ゾニサミド50mgを併用

②)66歳女性 発症15年目
幻覚などの精神症状なし
プラミペキソール徐放剤 3.75mg/日
レボドパ/ベンセラシド600mg、エンタカポン300mg、
アマンタジン200mg

③)70歳女性 発症12年目
幻覚は1年前にあり、現在はなし
プラミペキソール徐放剤0.375mg/日
レボドパ/カルビドパ550mg、セレギリン5mg
ゾニサミド25mg、イストラデフィリン40mg

④) 76歳女性 発症7年 PDDと診断
レボドパなどわずかな薬の増量でも幻覚が出る状態
レボドパ/カルビドパ 400mg(600mgから少しずつ減量)
ロピニロール8~14mg、アマンタジン200mg(過去に服用していた)

⑤)70歳男性 発症16年
幻視・幻聴・誤認妄想と顕著な精神症状出現
ロチゴチン23.5mg/日、ペルゴリド 1250μg/日
レボドパ/カルビドパ 400mg、エンタカポン300mg
ゾニサミド25~50mg (中止にて精神症状は消失)

レボドパ配合剤+ドパミン・アゴニスト+ゾニサミドという組み合わせが、症例⑤と同じような幻覚などの精神症状が、最も高い確率で出現しやすい事がいくつかの症例でわかりました。
このような場合にまず行うべき対策としては、
A)ゾニサミドの中止
B) ドパミン・アゴニスト徐放剤から速放剤への変更
C) ドパミン・アゴニスト速放剤を少しずつ減量
D) レボドパの1回投与量減量・服薬回数の増加

A~Dを実践することによって、ほとんどの症例で幻覚などの精神症状は軽減する事が、経験的にわかりました。
症例⑤)のように①だけでも軽減する方もいました。

もちろん運動症状が悪化しないように配慮していますが、これまでの経験では、少しずつ慎重に薬を変更すれば、運動症状の悪化はみられていませんでした。それはレボドパの1日量だけは減量していないからです。
プラミペキソールだけではなく、ドパミン・アゴニスト(受容体作動薬)の増量には、65歳以上の高齢者では、精神症状が出現しやすいので、かなり慎重になるべきでしょう。


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# by shinyokohama-fc | 2018-04-12 18:06 | 治療

パーキンソン病・25年目の奇跡 (2) 考察

パーキンソン病、25年目の奇跡。
今回の奇跡を成し得た、アストロサイト(グリア)とアデノシンについて考察してみたいと思います。
考察ですので、医学を知る方々以外にはやや難しい内容かもしれません。

脳を構成している細胞は2つ
ニューロン(神経細胞)とグリア(神経膠細胞)です。
ニューロンはわずか10%でグリアが90%。つまりほとんどグリアです。

ニューロンは情報処理や興奮伝達に特化した細胞で、巨大な情報ネットワークを構築しています。
グリアはニューロンを支える補助的な役割と言われていました。
しかし、今回のパーキンソン病25年目の症例はグリアの働きを証明したのではないかと思います。

運動指令の伝達に主要な役目を果たしている、ドパミンの受け渡しをするドパミン・ニューロンは、パーキンソン病の運動症状が発症した時点ですでに正常の50%以下になっています。

症例によって多様性がありますが、通常は発症して10~15年経つと、ドパミン・ニューロンは20%以下まで落ちると言われています。
レボドパ配合剤を初期(発症後7年以内)から多量(600mg以上)服用していた症例では、ドパミン・ニューロンはそれ以上(10%以下)まで落ちると推定されます。

そのようなドパミン・ニューロンが稼働不能状態に至った症例では、セロトニン・ニューロンがその役目を代替えすると言われています。
しかし、そのセロトニン・ニューロンも長年経つと変性が進んでしまうので
発症後20年経つとやはり稼働不能状態
になってしまいます。

グリアが主としてドパミンの受け渡しを行うようになります。グリアから放出されたドパミンがどのように受容体に作用するのかは詳細は不明です。

グリア(神経膠細胞)というのは、接着剤という意味で、ニューロンとニューロンの間を埋めるように存在しています。脳を空間的に支えたり、栄養を補充するなど、情報ネットワークの稼働を助ける存在と言われています。

アストロサイトというのは最も多いグリアで、ニューロンの立体構造を支えています。アストロサイトの細胞膜にも様々な神経伝達物質(ドパミン、アセチルコリン、セロトニン、ノルアドレナリン、アデノシンなど)に対する受容体(アストロサイト受容体)が存在しているようです。

アストロサイトではグルタミン酸がシナプスから放出されて、アストロサイト受容体と結合してニューロンと同様の興奮が起こり、アストロサイトはアデノシン三リン酸(ATP)を放出して、また別のアストロサイトを興奮させるという流れが起こると言われています。

ニューロンの変性が進行して、正常に稼働するニューロンが枯渇してしまった、長期罹患パーキンソン病においては、グリア、特にアストロサイトが神経情報伝達の主役になります。

アストロサイトの受容体においても、ニューロンと同様にドパミンとアデノシンは競合しているのではないかと推定されます。

アデノシンが神経情報伝達の主役になるらしいので、ニューロン以上にドパミンがアストロサイト受容体に受け取られるのをブロックされてしまうのではないかと思われます。

そこにアデノシンをブロックする、イストラデフィリンを加えることによって、競合していたドパミンがアストロサイト受容体にスムーズに受け入れられて、効果を発揮するのではないかと思います。

レボドパ配合剤が20年以上の長期罹患症例に効果を発揮するケースは、アルツハイマー、グレイン、ピック病理など異なる病理が存在しない、純度の高いパーキンソン病では多く見られます。胃ろうから持続的にレボドパ注入する治療が奏功している事例が存在するのはそのためだと思います。

おそらくニューロンの代わりにアストロサイト(グリア)が神経情報伝達の主役になっているのでしょう。

重度まで進行した意味性認知症と思われる症例にも、グルタミン酸に作用する薬剤が奏功するのも、そのためではないかと思われます。

アストロサイト(グリア)に関する研究は現在進められており、今後その成果が期待されるでしょう。



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# by shinyokohama-fc | 2018-03-20 12:12 | 治療
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