プレタールとシロスタゾールの違い

シロスタゾールという薬。
大塚製薬から、プレタールという商品名で発売されてから、かなりの年数が経過していますが、いまだに繁用されている薬です。

抗血小板作用、血流増加作用、内皮機能改善・保護作用、血管平滑筋細胞増殖作用が公式には示されています。

1)脳梗塞(心原性塞栓症を除く)発症後の再発抑制
2)慢性動脈閉塞症に基つく潰瘍
が保険適用であるが、多くは1)「脳梗塞」の病名で使用されています。

高齢者の場合は、MRI検査をすれば、大なり小なり、微小血管障害による
「ラクナ」と呼ばれている梗塞後変化が確認されます。
この「ラクナ」が基底核で増加すると「パーキンソニズム(動作緩慢・歩行障害・下肢の筋強剛)」が現れやすくなり、皮質で増加すると「認知症」が現れやすくなります。
そのために「ラクナ」を予防する必要性は意義があります。

10月21日に一緒に講演させていただいた、平川先生は700例を超える「認知症」の症例に使用し、脳血管性認知症 (VD)で50%、レビー小体型認知症(DLB)で45%、アルツハイマー型認知症 (AD)で30%の改善率があると著書 (177ページ)で示しています。

シロスタゾールはホスホジエステラーゼ(PDE)3活性を選択的に阻害して脳血管を拡張させて、脳血流を増加させる作用があるようです。
PDE3活性阻害により、脳神経細胞内にある、cAMP 応答配列結合タンパク(CREB)のリン酸化が促進されて活性化し、大脳皮質が関与した高次脳機能 (認知機能)を改善させると言われています。

しかし、平川先生は、プレタール(先発品)とシロスタゾール(後発品)の多数症例による比較検討まで実施していて、その結果によると、プレタールは有効だった症例が、シロスタゾールに変更すると効果がなくなるそうです。
それを講演で聴いて以後は、小生はこの薬に関しては先発品でしか処方しないことにしていました。

この薬のもう1つの効果に「誤嚥防止効果」というのがあり、すでに15年前にはそういう効果が報告されていました。

このたび、小生の外来に、「椎骨動脈解離後に脳幹(延髄)梗塞を発症した」50歳の男性の方が初診で2週間前に来られました。
5月初めの発症で、すでに発症して5か月半経過していました。
リハビリ病院からの紹介、後発品のシロスタゾール、100mgを1日2回(200mg/日)が処方されていました。

初診時は延髄梗塞の後遺症によって、構音障害が強く、普通の速さ、大きな声で話しができず、嚥下障害も強く、食べ物を飲み込むのに苦労しており、時にむせる状態でした。特に夜間に唾液がたくさんたまって、就眠中に3回ほど覚醒して、たまった唾液を嘔吐するという状況でした。

前医処方が後発品であったので、もしかしたら、先発品(プレタール)に変更すれば、上記の症状が改善するのではないかと考えて、患者さんにも上記の事情を説明した上で同意をえて、先発品の処方箋を切ることにしました。

2週間後、再診されて驚きました。
なんと、あれだけ話しにくかったはずなのに、別人のようにハキハキと普通の人と変わらないくらいの速さで話せていました。
嚥下も良くなったようで、夜間唾液がたまって覚醒して、むせて嘔吐するということも一切なくなったとのことでした。
患者さんが先発品薬の有難みを実感されたのは言うまでもありません。

「ここまで先発品と後発品は違うのか」という事と、プレタール(先発品)の誤嚥防止効果の凄さというのを改めてリアルに実感できました。

つまり何が言いたいかというと、後発品が先発品と同様の臨床試験をしないかぎり、有効性・安全性に関しても疑いは晴れないと思います。
シロスタゾールの後発品メーカーはいくつかありますが、あえてどの会社のものかはあえて確認していません。
しかし、こういう事例がある以上、後発品すべてに対して改めて、有効性・安全性に対して検証する必要があるのではないでしょうか?

今回は、リハビリ病院では後発品を処方されて効果がなく、当院から先発品に変更して、劇的に改善したわけです。
脳梗塞発症して6か月近く経過し、この2か月で症状がまったく変わらなかった事を考えれば、これは自然経過ではなく、先発品・プレタールの効果だと考えて間違いないでしょう。

長尾先生もブログに、抗不安剤を後発品(ジェネリック)に変更して、患者側から有効性がなくなったとクレーム言われたという記事を書いておられましたが、血圧を下げる薬でも、先発品→後発品の変更で効果がなくなったという患者さんからの声は日常的に聴かれます。

我々内科は、薬を選択して処方して、患者さんを少しでも良くしたいという想いでこの仕事をやっています。

国が後発品を推進したいと言うのであれば、先発品メーカーに後発品として発売していただく(オースライズド・ジェネリック)か、それ以外の後発品メーカーには臨床試験で有効性・安全性を改めて証明させるという事をしていただかないととても納得できません。

医者は信用して薬を処方できないし、患者さんは信用して薬を服用できないのではないでしょうか?
後発品を推進する前に「効果のはっきりしない薬に金を払う必要があるのか」という事を改めて考え直したほうがいいでしょう。

今回の症例の方は、まだ50歳で仕事もしなければいけない年齢でした。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







# by shinyokohama-fc | 2018-11-01 12:17 | 治療

横浜セミナー「パーキンソン病とレビー小体型認知症は違う病気です」

10月21日(日)、AP横浜駅西口にて、脳神経変性疾患研究会主催のセミナーがありました。

小生と平川先生(誠弘会池袋病院 副院長)がそれぞれ60分ずつ講演し、その後会場の質問に対して意見を言い合う、座談会が30分行われました。

平川先生の講演会が延長、その後の座談会も延長して、結局予定より40分も超過して、大変盛会のうちに終わりました。

たぶん、この講演会で、パーキンソン病(PD)とその延長である認知症を伴うパーキンソン病(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)の違いがよくわかっていただけたであろうと思います。

本当はもう少し座談会の時間を60分くらいとれれば良かったかもしれないと思いました。
今回のセミナーは1か月前に参加エントリー終了となってしまいました。
今回参加できなかった、特に地元横浜・神奈川の方々には申し訳なかったと思っています。
この場を借りてお詫びしたいと思います。

来年も違うテーマで同じ会場で実現できればと考えています。

■し■t■た■し■m

新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







# by shinyokohama-fc | 2018-10-23 18:15 | 医療

パーキンソン病治療薬の不適正使用

はたして、これが治療と言えるのか.....
あるパーキンソン病治療薬の「重篤な副作用の一覧」に紹介されていた症例を以下に提示します。
これを見て呆然とさせられるのは、おそらく私だけではないでしょう。

70歳代女性 パーキンソン病

1) レボドパ・カルビドパ・エンタカポン配合剤
2) レボドパ・ベンセラジド配合剤
3) ロピニロール (ドパミン・アゴニスト)
4) プラミペキソール (ドパミン・アゴニスト)
5) ゾ二サミド (抗てんかん剤)
6) アマンタジン(ドパミン遊離剤)
7) イストラデフィリン(アデノシン受容体拮抗剤)
8) アポモルヒネ (ドパミン・アゴニスト注射剤)
9) ラサジリン(MAO阻害剤)
以上が、パーキンソン病治療薬。さらにそれに加えて

10) デュロキセチン
11) ゾルピデム
12) ラメルテオン
13) ブロチゾラム

これ以外にも3種類の処方薬があるようですが、とりあえず、神経系に作用する薬だけを列挙しました。
すでに15種類もの神経系作用薬が併用されている事例に、さらに新しい薬を試すとは信じがたい暴挙と言えるでしょう。
薬の用量はまったく不明ですが、3)+4)+5)+6)+11)を併用して幻覚が出ないほうがおかしいです。幻覚を起こす処方と言っても過言ではないです。

こういう処方を見て痛感するのは、リスクとべネフィットをまったく何も評価せず、考えずに、ただ薬をボンボン放り込んでるだけの処方....
これが医療と言えるのか...
こんな乱暴極まりない薬の使い方が、保険医療として許されてるのか....
なぜこのような暴挙を取り締まるルールが存在していないのか....

近年、特に問題にされている、多剤併用(ポリファーマシー)の中でも、特にパーキンソン病患者に対する、神経系薬剤の常軌を逸した種類の薬の併用というのは最も罪深いものではないかと思います。
15~16種類の神経作用薬の同時併用。こんな処方、当然ながら科学的根拠(エビデンス)などあるわけないです。医療とは言えないです。

小生の拙著にもいくつかそういう多剤併用大量処方を修正した事例を掲載していますが、なぜこのようなことがなくならないのか...と嘆息するしかありません。


# by shinyokohama-fc | 2018-10-11 18:08 | 治療

ドパミン受容体作動薬(アゴニスト)とベンゾジアゼピン受容体作動薬は似ている

ドパミン受容体作動薬 (ドパミン・アゴニスト)とは、約20年前後にわたって、主に神経内科でパーキンソン病治療薬としてよく使われてきた薬です。

わが国で使用されている薬としては
①プラミペキソール、②ロピニロール、③ロチゴチン、④ブロモクリプチン、⑤カベルゴリン、⑥ぺルゴリド、⑦タリペキソール
現在主に使用されているのは、①~③
④~⑦はエルゴタミンが入っているため、長期服用にて心臓弁膜症、肺線維症、発がん性が問題視されているため、現在は条件付き限定的使用

ベンゾジアゼピン受容体作動薬とは、長年にわたって不安症状や不眠症状に対して、精神科のみならず、プライマリケア医によく使われてきた薬です。
よく使われている抗不安薬としては
①エチゾラム、②クロチアゼパム ③ロラゼパム ④アルプラゾラム ⑤ブロマゼパム ⑥ジアゼパム ⑦クロルジアゼポキシド ⑧オキサゾラム ⑨ロフラゼプ酸エチル
①~⑤が短時間~中時間型、⑥~⑨が長時間型です。
特に頻用されてるのが、①②④⑥⑨あたりではないでしょうか?
①については、特にパーキンソン病、レビー小体型認知症には使うべきではない薬であるという意見を書きました。以前のブログを参照ください。

よく使われてる睡眠導入薬としては
①ゾピクロン ②ゾルピデム ③トリアゾラム ④二トラゼパム ⑤フル二トラゼパム ⑥ブロチゾラム ⑦エスタゾラム ⑧エスゾピクロン
①②は一時期非ベンゾジアゼピン系だから安全だと喧伝されていた時期がありましたが、近年はベンゾジアゼピン受容体作動薬として包括されました。
①については、特にパーキンソン病、レビー小体型認知症には使うべきではない薬であるという意見を書きました。以前のブログを参照ください。
個人的印象では、⑧は①を安全に改良されたという印象はあり、実臨床ではあまり依存症やせん妄で問題になる事例は散見されないようです。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬に関しては、ここで書くまでもなく、欧米などの先進国で、その使用がかなり問題になってます。
わが国ではその使用頻度が異常に多い事が、以前から問題視されており、
今年4月の診療報酬改定において
「ベンゾジアゼピン受容体作動薬を1年以上にわたって、同一成分を同一用量で連続して処方している場合を「向精神薬長期処方」として診療報酬を一律で減算する」という新しいルールが発表されました。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の一番の問題は、特に短時間型に顕著な「依存性」です。また、高齢者・脳神経変性疾患罹患者・脳卒中後遺症者に対しては特に、高い確率で「せん妄」を起こしやすい事で知られています。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の作用機序としては、GABA受容体の活性が高まり、GABAがGABA(A)受容体に結合して、クロールイオンが神経細胞に流入して過分極、鎮静・筋弛緩・不安抑制作用があります。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存形成に関しては
GABA(A)受容体を仲介して中脳・腹側被蓋野でドパミン神経細胞を活性化
中脳・腹側被蓋野と側坐核付近でドパミン放出を起こす薬は一般に嗜癖性(依存性)があります。

ドパミン受容体、特にD2受容体(側坐核付近)を刺激する薬もまた、嗜癖性(依存性)があります。「ドパミン調節依存症」というのは、言い換えれば「ドパミン依存症」の事であり、「薬をたくさん使わないと効果がでない」という思い込みを誘導してしまうようです。

一度始めると、やめられない薬
それが、ベンゾジアゼピン受容体作動薬であり、ドパミン受容体作動薬なのだと思います。もちろん嗜癖性に個人差が大きいのが現実ではありますが。
服用する場合はそれを覚悟しないといけないのでしょう。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







# by shinyokohama-fc | 2018-09-21 12:34 | 治療

鹿児島での講演

先日、9月16日、講演のため鹿児島に出張してきました。
ひらやま脳神経外科の平山貴久先生のご協力で、同じビルにあるホールで行いました。今回は時間制限がなく、約90分で話しました。神戸のときよりは、落ち着いて上手く話せたような気がします。

「認知症を伴うパーキンソン病(PDD)とレビー小体型認知症(DLB)の違い」について、自分の診療を通しての考え方をお話しました。
本題に入る前に、平山先生から「パーキンソン病」に関する短い解説をしていただきました。熊本で開業されている、木村武実先生にもお越しいただいて大変貴重な発言していただきました。
ご協力いただいた、お二人の先生方には大変感謝しています。有難うございました。

各種学会では「PDD とDLBは病理が同じだから同じ病気だ」という学説がまことしやかに言われているようですが、
実際に患者を診ている、小生からすると、どう見ても違う臨床像、薬物反応であるので、どうにも受け入れがたい学説のようです。

アルツハイマー(AD)に関しても、若年発症の「皮質優位型」と高齢発症の「辺縁系優位型」は同じ病理でも、まったく違う臨床像・薬物反応であることは、誰もが知ることでしょう。それと同じことです。

同じような内容を10月21日(日曜日)に横浜で、平川亘先生を招いて、講演と討論を実施する予定です。会場が小さい会議室であるので、すでに2週間前に満席となってしまいました。

わずかな時間でしたが、少々観光しましたので、以下にスナップ写真をいくつか紹介します。
f0349413_09471746.jpg
f0349413_09470603.jpg
f0349413_09465296.jpg
f0349413_09475147.jpg
f0349413_09481598.jpg
f0349413_09473804.jpg
f0349413_09480133.jpg
上から順、西郷隆盛の銅像、天文館商店街、市電、錦江湾から鹿児島市街、錦江湾から桜島、桜島の海岸、桜島の北岳


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







# by shinyokohama-fc | 2018-09-20 10:54 | 医療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line