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レビー小体型認知症(A)パーキンソニズム

5回シリーズでレビー小体型認知症(DLB)の症状について検証してみたいと思います。私がこの病気であろう症例を初めて診たのは今から15年前だったと思います。70代半ばの男性でした。

この病気に最初にコリンエステラーゼ阻害薬を処方。ドネぺジル3mgが認知機能に劇的に効果があったのを覚えています。
しかし、半年もたたないうちに動作歩行が悪化してきて、ついには外出中に転倒して歩けなくなりました。パーキンソニズムとしては3レベルでした。

ヤール3レベル以上のパーキンソニズムのケースでは、パーキンソニズムが短期間で悪化するという事を15年前に症例を通じて知ったわけです。
それゆえ、パーキンソニズム3)~5)のケースはコリンエステラーゼ阻害薬は
動作・歩行・姿勢・嚥下を悪化させると認識しています。アセチルコリンそのものに筋肉を緊張させる作用があるからです。メリットよりもデメリットのほうが大きい可能性が高いです。

1)動作にまったく問題がない
2)動作がわずかに遅い
3)動作がかなり遅く、すり足歩行、姿勢が悪い(前傾)
4)自力で歩けない(介助歩行)、言葉が出にくい、姿勢がかなり悪い(顕著な体幹傾斜・前屈・腰曲がり)、両下肢の膝が伸展困難で膝を曲げたまま歩行
5)歩行不可能、寝たきり

その一方で、1年前に病院から引き継いだ、精密検査の上で確定診断されている、78歳女性のDLBの方です。表情は明るく笑顔もあり、元気そう。

この方は動作歩行はまったく問題ない、パーキンソニズム1)です。起立性低血圧や便秘もなくて、自律神経1)です。幻覚も1)~2)程度です。
コリンエステラーゼ阻害薬のリバスチグミン9mgを処方されていましたが、4.5mgへ減量しています。パーキンソニズムは全く現れる気配もなく、幻覚もほとんどなく、認知機能も維持しています。たぶんドネぺジル3mgでも大丈夫ではないかと推定されます。

病院の認知症の専門外来や老年精神科の外来を受診する、DLBの症例はほとんどこのような症例ばかりではなかろうかと思います。
たしかにこういう症例にはコリンエステラーゼ阻害薬が有効だと思います。高齢者で長期間効果を維持するためには少量投与でというのは、平川先生が講演で言っているとおりだと思います。

当院の外来でDLBと診断する症例は、ほとんどが3)~4)です。このレベルになると、おそらく認知症外来や老年精神科では診ていないでしょう。

DLBのパーキンソニズムの重篤さはPDの比ではないです。2)~3)レベルだと、レボドパ配合剤少量かアマンタジン少量が有効な事がありますが、3)~4)レベルになるとほとんど効果はないです。無理に続けると幻覚が悪化するだけなのでやめたほうがいいでしょう。
それよりも薬剤性パーキンソニズムの原因薬剤を減量・中止することがまず先になります。


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# by shinyokohama-fc | 2019-03-08 12:36 | 治療

レビー小体型認知症(DLB)の多様性

私は視聴できなかったが、昨日、有名なテレビ番組で、パーキンソン病(PD)とレビー小体型認知症(DLB)が取り上げられたようです。

毎回、健康や病気の事をテーマに取り上げるかなり視聴率のいい番組ですが、昨日は所用のため外出していて、残念ながら視聴できませんでした。

レビー小体型認知症(DLB)という病気は早期に見つけて治療薬を処方してもらったほうがいいのか? といえば、必ずしもそうとは言えないでしょう。
それは、DLBにはものすごくレンジの大きい多様性があるからです。

私もこのDLBという病気がいかに臨床的に捉えどころがないか、痛感させられました。専門医でも正しく診断するのが困難だからです。
糖尿病のように尿検査や血液検査で簡単に診断できないからです。

事実、私よりキャリアが長く高名な認知症専門を名乗る神経内科医が、他の病気(CBD)をDLBと誤診するくらいですから、その診断の難しさは半端ないのです。

一時期、DLB患者会がらみで、前医でDLBだと診断された患者が続々と受診された時期がありましたが、ほとんどが見事に誤診でした。
その多くが「薬によるせん妄」つまり薬害なわけです。

深刻な脳卒中後遺症の患者に整形外科で処方されたトラマドールの副作用だったり、パーキンソン病の神経内科医で処方されたプラミペキソールとかドパミンアゴニスト、その他諸々のドパミン作動薬のポリファーマシーによるものだったり、色々ありました。これが拙著を出版するきっかけでした。

その次に多いのが、PSPとCBDの誤診でした。DLBよりもむしろPSPとCBDのほうが、症候的にわかりやすい病気だという事を考えると、診察や薬効などによる評価が不十分だという事に尽きるのではないかと。
つまり、パソコン画面見て薬処方するだけで、身体の診察をしてくれない。

そのような除外診断を十分にして、最後にDLB という臨床診断に行き着くのではないかと思います。
つまり安易にDLBと診断するなと言うことです。

そうやってDLBと診断したとしても、次の難関が待ち受けています。
それは1つの病気とするにはあまりにも多様性が大きすぎるのです。

おおまかに言うと、臨床的には以下のタイプに分かれるのではないかと思います。以下の5つの臨床症状において重症度を評価する必要があります。
この5つがDLBの中核症状と言われています。5つとも2以上あればほぼ確実でしょうが、そうでない症例は確定診断するのは困難です。

A)パーキンソニズム
1) 動作にまったく問題ない (アルツハイマータイプ)
2) 動作にわずかに遅い
3) 動作がかなり遅く、すり足歩行、姿勢もやや悪い
4) 自力で歩けない、言葉も出ない、姿勢が曲がっている
5) 寝たきり

B)幻覚
1) 薬の副作用によって幻覚がときどき/常時出る
2) 幻覚(薬が原因ではない)がときどき出る
3) 幻覚が毎日一定時間出て、妄想を伴うが、行動化しない
4) 幻覚思い込みによる行動化が出て、家族に迷惑かける
5) 幻覚思い込みにより社会でも異常行動・行動化で事件化する

C)認知機能
1) 軽度の構成障害・注意障害が確認できる
2) 軽度の思考遅延、行動停滞がみられる、軽度の認知の日内変動
3) 視空間失認、思考遅延、行動停滞、中等度の認知の日内変動
4) 日常動作が自分でできない
5) 会話も意思表示もできない

D)睡眠・覚醒
1) たまにレム睡眠行動異常があり、日中やや眠い時がある
2) 毎日レム睡眠行動異常があり、日中はかなり眠い
3) 毎日夜間せん妄による興奮があり、日中は眠ることが多い
4) 睡眠・覚醒リズムがなく、日中も覚醒しない時間が多い
5) ほぼ一日中覚醒しない

E)自律神経
1) たまに便秘・頻尿、低血圧によるふらつき
2) 毎日、便秘・頻尿、低血圧によるふらつき
3) 深刻な便秘・頻尿、低血圧による失立・失神発作
4) 血圧・脈拍の大幅な変動(40~50mmHg以上)
5) 顕著な低血圧・徐脈による心停止

それぞれの評価項目1~5は重症度はピンキリですが、特に要注意なのは、パーキンソニズム3以上、認知機能3以上、自律神経3以上のケースです。
その多くが薬剤不耐性、つまり有害事象で病状が悪化する危険性のほうが高いからです。つまり、コリンエステラーゼ阻害薬を処方されてそれで解決?
という短絡的で生易しいものではない
からです。

実際にコリンエステラーゼ阻害薬だけで症状が改善するのは重症度がきわめて低いごく一部の症例だけです。上記の5項目がすべて1~2レベル程度の症例という事になります。あくまで症状の一時的な改善にすぎず、病気が治るわけではないです。むしろ自律神経がきわめて脆弱なために、神経系に作用する薬で有害事象が現れるケースのほうが圧倒的に多い。

パーキンソン病(PD)で障害されるのは主に中脳黒質で、それ以外の大脳皮質の機能低下は二次的なものにすぎません。中脳黒質の障害は他の部位でかなりカバーリングできます。
DLBの場合は、中脳黒質にとどまらず、下位脳幹、特に脳幹網様体が強く障害されますし、大脳皮質の障害も広範囲で一次的なものになります。つまり、他の部位でカバーリングできないわけです。

つまり、PDとDLBでは病気としての重症度は雲泥の差なわけです。
両者にレビー小体という物質がたまっている事がわかった。
なぜ、症例によってここまで重症度が違うのか?多様性があるのか?という事までは解明されていません。おそらく遺伝子の違いが多様性を生み出すのだろうと推定されますが。

今はそのPDですら、根本的な治療法がない状況で、iPS細胞の臨床治験をやっているこれからという段階。それよりはるかに重症であるDLBの根本治療となるとまだまだ入口にも達していないのが現実ではないでしょうか?



# by shinyokohama-fc | 2019-03-07 13:31

ベンゾジアゼピン系薬で肺炎リスク上昇

以前、当ブログでエチゾラムとゾルピデムの問題を以前取り上げました。

このたび中国の杭州の病院で多数の肺炎症例を統計解析した結果、ベンゾジアゼピン受容体関連薬(BZRD)が肺炎リスクを上昇させるという報告がされています。
杭州というと800万人近い人口をもつ巨大都市で、12万例の症例を解析したとのことです。

結果としては、ジアゼパム(セルシン🄬)、ロラゼパム(ワイパックス🄬)、テナゼパム、ゾピクロン(アモバン🄬)で有意に肺炎リスクが高まったそうです。
服薬患者数が多いため、臨床上大きなインパクトがあると警告しています。

ベンゾジアゼピン受容体関連薬(BZRD)に呼吸抑制作用があるというのは以前から言われていたことであり、BZRDの数ある副作用の中でこれが最も重大かつ深刻であり、高齢者の肺炎による入院など医療費を上げている要因であるのは間違いないでしょう。

自身の臨床経験においても、前医からされたフル二トラゼパム(サイレース🄬、ロヒプノール🄬)が中止できずに、誤嚥性肺炎を繰り返して衰弱してしまった神経難病の方や、前医から処方されたエチゾラム(デパス🄬)を服用継続して、誤嚥性肺炎を繰り返した脳梗塞後遺症の方がいました。

ベンゾジアゼピン受容体関連薬(BZRD)は特に75歳以上の高齢者、脳梗塞・脳外傷後遺症やパーキンソン病などの神経難病の方には危険な薬です。
ただでさえ、嚥下・呼吸機能が低下しているのですから当然ですが。

こういう患者には最初からBZRDを処方しない。継続服用している患者は少しずつ減薬して中止を試みる事が大事です。

小生も過去の反省を踏まえて、最近は高齢者に新規では極力BZRDは処方しないようにしています。どうしても必要な場合はラメルテオンを処方する事がほとんどです。

日本はBZRDが過剰に処方されすぎてるのではないでしょうか?世界ではベルギーに次いで2位、アジアでは1位だそうです。
国民皆保険制度の弊害なのか?気安く睡眠薬を処方しているのが現状です。

BZRDをやめる、減らすだけで、高齢者の誤嚥性肺炎・転倒による外傷の患者とそれにまつわる医療費は大幅に減るのではないかと思います。

薬がないと眠れないという意識というのは思い込みの要素が強いため、まずは偽薬を使うなど何らかの対策を講じる必要があるのではないでしょうか?



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# by shinyokohama-fc | 2019-02-28 11:28 | 治療

多剤併用を推奨する専門医?

先日、パーキンソン病の新しい薬に関する講演会を案内されたので、聴講しました。新しい薬はまだ使用経験が少ないので、何か得るものがないかと。

新しい薬と言っても、日本以外の海外の国では何年も前から標準的に使われている薬ですので、世界的には決して新しくはないのですが。

ある演者の講演の最後に症例提示があったのですが、それを聴いて愕然とさせられました。
すでにパーキンソン治療薬を7種類処方されている患者に、新しい薬を追加したら良くなっただと?すでに7種類服用している例でもこの薬は効果がある?という内容でした。
誰がこの効果??がプラセボではないと証明できるのでしょうか?
私はこの話を聴いて、大きく嘆息し、とてつもない失望感を感じて会場を退席しました。

一般的に薬のRCTで効果と安全性が証明できるのは、2~3種類の併用までです。4種類以上は効果も安全性も証明されておらず、何が起こるか想定外の得体の知れない未知の領域です。

パーキンソン病の専門を謳う専門医というのはとかく多剤併用をしたがるようです。パーキンソン治療薬が10種類もあって、保険医療においていくら併用してもOKというおかしな事になっています。
足し算処方ばかりで引き算処方という考え方は全く知らないようです。
1年前にブックマン社から出版した拙著はそれを問題提起する目的で書きました。

厚労省(国)もこのたび「多剤併用」「ポリファーマシー」への注意を呼びかける指針を出しています。医療経済的な問題だけではなく、薬の影響で体調を崩している患者があまりにも多いからだと思われます。

「多剤併用」「ポリファーマシー」の患者の予後は悲惨の一言です。
1年前から、遠方から「セカンドオピニオン」で来られた患者さんの多くのケースはそうでした。常軌を逸した「多剤併用」を10年、15年続けたあげく、神経回路・伝達がズタズタにされていたのでしょう。こうなってしまうと取り返しがつかないのです。

脳内の神経伝達というのは非常に複雑です。主なものだけでもドパミン系の他にも、セロトニン、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ギャバなどがあり、他にも何種類もあってそれが複雑に連動しているわけです。

脳神経に作用する薬が何種類も大量に服用を続けることは非常に危険な事です。ましてドパミンだけを多剤併用でこれでもかこれでもかと刺激すれば、他の神経伝達物質や自律神経系にも支障をきたすのは自明の理でしょう。

「多剤併用」「ポリファーマシー」が良くないので、薬を減らそうというのは欧米を中心にWHOでもかなり前から言われてきた事です。

「多剤併用・大量処方」が当たり前の我が国の処方スタイルというのは悲劇という他はないのではないでしょうか?

個人的にはパーキンソン病の治療薬の効果の半分以上はプラセボ効果ではないかと思っていますので、3種類以上追加する場合は健康保険の適応外にするかあるいは偽薬を試すのでいいのではないでしょうか?



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# by shinyokohama-fc | 2019-02-26 18:20 | 治療

レボドパ配合剤は対症療法薬にすぎない

「レボドパ配合剤はパーキンソン病治療のゴールドスタンダードだ」と長年専門家はその重要性を過剰に喧伝してきたように思います。しかし実際の臨床を診ていると本当にそうなのか?と疑わざるをえない症例が非常に多い気がします。

以前のブログでも書いてきたように、レボドパ配合剤のプラセボ効果とノセボ効果が疑われるような症例があまりも多いからです。
そもそも、パーキンソン病という病気自体が、特に運動症状などは心理的影響を受けやすい傾向が強くあり、特にプラセボ・ノセボ効果に左右されやすいのです。(拙著249~251ページ参照)

「New England Journal of Medicine(NEJM)」という著名な医学雑誌に今月24日号で、Amsterdam Neuroscience (オランダ)の研究グループから「パーキンソン病における無作為化遅延開始試験」というタイトルの論文が発表されました。

方法は、初期パーキンソン病を2つのグループに無作為に分けて実施され、1つのグループには、レボドパ(100mg)カルビドパ(25mg)を1日3回を
80週服用させ、もう1つのグループには最初の40週は偽薬(プラセボ)を服用させ、その後の40週で同じ用量の実薬(レボドパ・カルビドパ)を服用させ、パーキンソン病評価尺度(UPDRS)スコアで、平均変化量のグループ間差などを評価したそうです。

被験者は445人。グループA(レボドパ・カルビドパ早期開始・80週)が222例、グループB(レボドパ・カルビドパ遅延開始・40週)が223例で
UPRDSスコアもグループAが28.1点、グループBが29.3点。

結果は、グループAとグループBの双方にUPRDSスコアの上で有意差は確認されませんでした。
つまり、レボドパ・カルビドパを早く開始しても、遅く開始しても、症状の経過には影響を及ぼさないという結論でした。つまり病気の進行を抑えるという病態修飾効果はないという事が証明されたようです。

レボドパ配合剤に関しては、ウェアリングオフ現象、ジスキネジアなどの副作用がクローズアップされます。それを避けるために、レボドパ配合剤以外の薬が学会では推奨されてきました。

20年前から推奨されてきた、ドパミンアゴニスト(受容体刺激剤)に関しては病気の高齢化に伴い、65歳以上の高齢者において幻覚や嗜眠、せん妄などの精神症状の事例が続出したことが問題になり、昨年4月にプラミペキソールの医薬品安全性情報が改訂されました。

その影響もあり、近年はモノアミン酸化酵素B阻害薬(ドパミンの分解を抑える薬・MAOBI)を最初の薬として使用することが推奨されています。
その一方で薬価が高額なわりには、レボドパ配合剤に比べて患者さん自身が効果を実感しにくい薬でもあるようです。

体外から脳内で不足したドパミンを補う(レボドパ配合剤)か、すでに脳内にあるドパミンを有効に使う(MAOBI)の違いです。後者についてはコリンエステラーゼ阻害薬と似たところがあります。

いずれにしても、対症療法薬である事に変わりはなく、有効性が実感できなければ、デメリットがメリットを上回れば、中止したほうがいいというのは他の薬と同じです。薬を止めれば、病気が悪くなるわけではありません。

病気の進行や病態の経過というのは、薬を早期に服用したからメリットが得られるという単純なものではないのです。

逆に処方医がレボドパ処方に固執しすぎて逆にトラブルになるケースが増えているようです。パーキンソン病だから全員レボドパを高用量服用しなければならないという誤った考えに囚われている神経内科医も多いようです。



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# by shinyokohama-fc | 2019-01-31 12:04 | 治療
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