クロルプロマジン(ウインタミン、コントミン)処方をやめた理由

2年前から新規でクロルプロマジンを処方するのはやめました。
12月2日に品川で行われた、脳神経変性疾患研究会においての小生の講演
クロルプロマジン(ウインタミン🄬・以下CP)を2~4年の間、85~88歳女性、高齢の重症レベルの前頭側頭型変性症に処方し続けて、多大な有害事象を招いたという事例を2例発表しました。

1例目は行動異常型タイプで、多幸的で脱抑制と行動異常が顕著なタイプでしたが、今から2年と半年前にCP30mg/日から開始してから、徐々に減量して現在は6mg/日(朝2mg/夕4mg)で維持しています。鎮静目的でCP 以外にも、バルプロ酸やカルバマゼピンなどの少量投与も試しましたが、いずれもごく少量でも嗜眠、ふらつきが強く継続が困難でしたので、やむをえず、CPを漸減 (加齢と病状進行のため)して長期に継続していました。
1年前から、動作が悪化し立位が保持できなくなりました。診察のたびに頸部~体幹、四肢の筋強剛が強くなってしまいました。今はガチガチに硬くなっています。

2例目は語義失語タイプで、多幸的だが脱抑制と気分変調が大きく、今から4年前からCP8~12mg/日(朝昼夕各4mg)で処方を継続していましたが、
1~2年前から徐々に動作が遅くなり、嚥下障害が悪化しており、半年前の今年4月についに誤嚥性肺炎を起こしてしまいました。激しい咳嗽の後、嘔吐、意識朦朧となり、診察したときは37℃の微熱、努力様呼吸、胸部からは湿性音聴取、酸素飽和度低下しており、すぐ救急病院へ診療を依頼しました。高齢者の重度レベルの前頭側頭型変性症であったため、入院はせず、外来治療になりましたが、奇跡的に回復されました。
これを期にCPを中止してもらいました。CP中止後は、以前あった嚥下障害は大幅に軽減したようで、動作も非常によくなりました。

CP(クロルプロマジン)はもっとも古い抗精神病薬で、精神科では古くから使用されていた薬です。鎮静作用がある一方で、抗コリン作用 (アセチルコリンを抑える作用)も強く、高齢者には推奨できないという意見も多い薬です。

短期間なら問題なくても、長期間服用して問題になることが多いようです。
一般的によく言われるのは、心臓の伝導障害、致死的不整脈ですが、高齢者の女性は慢性心不全が多いので確かに危険性が高いといえます。

神経内科的にそれよりも問題なのは、やはり薬剤性EPSであり、服用開始後かなり経ってから、四肢・体幹のジスキネジア、ジストニアは多いですし
今回発表したような、パーキンソニズムによる筋強剛、嚥下障害も比較的多い気がします。

「CPでも少量だったら安全??」という事でよく頻用される先生方もおられるようですが、抗精神病薬の場合は中途半端な用量だと効果がはっきりしないか、「奇異反応 (逆に興奮が悪化してしまう)」が起こりやすいようで、私が20例ほど使用した中で有効でかつ忍容性があったのが上記のわずか2例だけでした。
つまりCPで望むようなちょうどいい効果を出すというのは難しく、長期に服用を続けると「薬剤性身体拘束」のようになってしまうのです。

そのために、2年前から新規のCPの使用はやめて、新しい方法を模索しています。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







# by shinyokohama-fc | 2018-12-07 12:32 | 治療

第1回脳神経変性疾患研究会

昨日、第1回脳神経変性疾患研究会が品川駅東側の会議室で行われました。時間は13時15分から16時15分までのわずか3時間でした。
第1部が、小生の講演、第2部が世話人の3名の先生方の症例報告で、その後、ディスカッションを45分という構成でした。
私も自身の講演と後半のディスカッションでは進行役を務めました。

まったく初めての研究会で、同じテーマ「陽性行動心理症状に対する薬物療法」というテーマでしたので、非常に多くの先生方に発言してもらい、多様な意見を引き出せたのではないかと思います。世話人の先生方以外にも知っている先生に指定発言をいくつかお願いしました。
参加者の1人の先生からは「大変濃密で充実した時間だった」という、感想をいただいたので、企画した小生も大変満足しています。

まだ第1回目で、今回は医者中心のディスカッション、討議が主体の研究会でしたので、参加者が50名以下と少なく、また新規参加の先生方からの発言(意見)や質問が少なかったように思います。
来年以後は参加者を増やして、もう少しディスカッションの時間を十分とれるようにしたいと思います。

できるだけ多くの参加者に自由に発言してもらい、多様な意見を吸収するのが、この研究会の趣旨ですので、みなさま次回もよろしくお願いします。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







# by shinyokohama-fc | 2018-12-03 17:13 | 治療

ドネぺジルを安易に服用しない

ここ1年くらい、新患 (初診)患者さんに見られなかった、ドネぺジルの不適切処方・服用被害症例を時々見かけるようになりました。

症例1) 68歳男性
2~3年前まで会社に勤務していたが、30年前から糖尿病があり、目がかなり悪くほとんど見えないので、伝い歩き。
動作は遅くなくて普通。幻覚は訴えない。事実上独居で、大酒家で飲み歩く
状態で、有名病院の認知症科?からドネぺジル5mgが処方されている。
そこでは「レビー小体型認知症 (DLB)」と診断されているらしい。
詳しい診療情報は届いておらず、なぜDLBと診断したのかは根拠が不明。

まずドネぺジルに限らず、抗認知症薬は、本人管理が禁止されています。
認知症の患者さん自身に服薬管理は困難で、誤服薬の危険があるからです。
独居で認知症の方にどうしても抗認知症薬を服用させたければ、誰かに責任もって管理させて毎日訪問させて服薬させるしかないわけですが、現実的にそれは難しいので、どこかホームか施設に入ってもらうしかないわけですが、そうまでして服用する価値のある薬なのか?という事を考える必要があります。
それに加えて、この症例の場合は、大酒家で毎日飲み歩いているので、そんな患者さんに神経系に興奮作用する薬を処方すること自体が論外な訳です。
有名病院の認知症科ではそういう患者背景を検証することすら一切せずに、ただ病気の診断がDLB?だからドネぺジルを処方しとけばいいという事なのでしょうか?

症例2) 79歳男性
3年前から左手のふるえ、話しにくいという症状があり、2年前に総合病院の「神経内科」を受診。症状による操作的診断から「パーキンソン病」と診断されて、レボドパ配合剤100mg×3で治療、その後、プラミペキソール1.5mgが追加されて日中の眠気で中止。今年から「物忘れ」が目立ってきたため、ドネぺジルが追加されて、8mgまで増量されたそうです。さらに近所の開業医からゾルピデムとかエチゾラムが処方されていたようです。
ドネぺジル開始してから、夜間のせん妄?による徘徊、異常行動、反響言語が現れたそうです。
ご家族が、現在の診断、薬物処方を不審に感じ、当院へ転院されました。

診察では、時計描画テストでクロージング現象あり、図形模写もかなり小さく、ベッド上の動作も緩慢で拙劣でした。一見「パーキンソン病+認知症」かと思いました。ただし、現在の薬物が効いているようには思えなかったので、診断見直しのため、レボドパ配合剤とドネぺジルは少しずつ減らしてから、中止としました。中止による病状の悪化は確認されませんでした。

2回目の診察では大声で突発的に話す、明らかな反響言語があり、同じフレーズを繰り返し言いました。ふるえは動作時に出現して静止時にはなく、MMSEでは15点/30点でした。何よりも臥位から立位での起立性の血圧低下が全くみられず、PDDやDLBらしくないと感じられました。

DLBに最も親和性のある、リバスチグミンを少量より開始しましたが、ごく少量1.125mg~2.5mgでも動作が急激に悪化するという奇異反応が確認されたためすぐに中止しました。

これはおかしいと感じたため、MIBG心筋シンチグラフィーの検査を近隣の医療機関に依頼しました。
結果は「集積低下なし」心臓交感神経の脱神経はなかったという事です。
つまり「進行性核上性麻痺症候群のパーキンソン類似タイプ(PSP-P)」と診断しました。除外診断のための検証が必要な難しい症例でした。

進行性核上性麻痺症候群(PSPS)については、次回のブログでくわしく書きたいと思いますが、この症例のように「パーキンソン病+認知症 (PDD)と誤診されているケースが多いです。以前から何度も言っているように、ドネぺジル、リバスチグミンのようなアセチルコリンの分解を阻止して増やす薬は禁忌です。最近はガランタミンも合わない症例が多い事を知りました。

PSPSに使っていい神経系作用薬は、アマンタジンだけだというのが、小生の最終的な結論です。

ここで言いたかったことは、専門医が十分な鑑別診断も行わず、認知症とみれば、安易にドネぺジルを処方したがるのが問題なわけです。
動作歩行に問題のある人はドネぺジルを服用すべきではありません。
薬剤性パーキンソニズムの原因薬剤だという事を忘れずに。
特に進行性核上性麻痺症候群 (PSPS)の場合は症例によって深刻で急激な悪化が見られますので、要注意です。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







# by shinyokohama-fc | 2018-11-22 18:43 | 治療

認知症の「陽性行動心理症状」がテーマ

12月2日(日曜日)「第1回、脳神経変性疾患研究会」が
品川シーズンテラスの3階で開催されます。
参加者は医師、看護師、薬剤師にしています。
今回から始まる研究会ですが、初回は「認知症の陽性行動心理症状」がテーマです。私以外の3名の先生方に30分の短い講演をお願いしています。それらの講演を基調にして質問や討論の時間をとります。

1つのテーマで4人が話すというのは恐らく珍しいのではないかと思います。
同じテーマでも意見や考え方が様々で異なるのは当たり前のことで、それを前提にした研究会で、多様性を重視したいと思います。
今回は時間の都合で、ディスカッションの時間が30分と短くなってしまいましたが、参加された先生方にはできるだけ自主的に意見を言ってもらいたいと考えております。

小生の講演内容ですが、抗精神病薬の限界についても症例を提示しながら、説明しようと考えています。
高齢女性の脱抑制タイプの老年認知症の方々にクロルプロマジン(ウインタミン🄬、コントミン🄬など)を処方されて2年以上継続したが、その後どうなったか?2症例を提示します。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







# by shinyokohama-fc | 2018-11-19 12:36 | 治療

週刊現代記事の補足説明


今週号の「週刊現代」「医療大特集 知っているのと知らないのでは大違い」という記事の取材に答えました。
週刊誌の記事という事もあり、紙面の都合などの事情で、編集でコメントが短縮されています。

この記事を読んで、このブログを見ている人もいると思いますので、この記事における、私が答えているパートについて誤解を招く部分もあるかと思いましたので、ここで補足説明をしておきたいと思います。

まず156ページ「糖尿病のスルホニル・ウレア(SU)薬について」
「SU薬は効果が強すぎるため、血糖値が下がりすぎるのです。低血糖になれば、脳神経にも影響が出て認知症のリスクも高くなります。」
小生がまだ20年以上前の研修医で病院勤務していた時代には、インスリン以外の薬はメトホルミンとこのSU薬しか存在していませんでした。その後の20年で糖尿病の治療薬として、様々な新薬が続々と上市されました。
研修医時代に、救急外来において、SU薬服用中の高齢者において、遷延性の重度の低血糖による意識混濁の症例を多数診療する機会があり、その多くがインスリンではなく、このSU 薬を服用していました。いくら糖液を大量に注射しても血糖が全く上がらず、二度と意識が戻らなかった事を今でも昨日の事のように覚えています。特に高齢者では無症候性の低血糖を繰り返して
認知機能低下やせん妄(軽度の意識障害)に至る事例も少なくないようです。
糖尿病学会専門医の講演会などでも近年はこの薬は低血糖リスクが最も高く、膵臓を疲弊させやすいので、他にリスクの少ない新薬が数多くある現在では推奨されなくなりました。

157ページ「高コレステロール血症;クレストール、リピトール」
「米国食品医薬品局(FDA)は、高齢者が服用し続けると認知機能が低下すると注意喚起している。コレステロールを薬で下げすぎると筋肉も衰えていくので注意が必要です」
小生は、若年~中年で家族性と思われる、高コレステロール血症の方々には、これらの薬(スタチン)は処方しています。スタチンの普及により動脈硬化が予防されて、動脈硬化性の脳梗塞や心筋梗塞・狭心症は減少しているのは事実です。しかし、一方で高齢者、認知機能低下、認知症においては、MMSEスコアがスタチンの中止によって上がるというのも事実です。
FDAがこの発表をしたのが、2012年、最近は海外の認知症の専門医の間では、スタチンで認知機能が低下するというのは常識となっています。
それだけではなく、高齢者、特に女性においては末梢神経や筋肉も衰えてくるので、いわゆるフレイルを誘発するケースも多いのではないかと推定されます。

157ページ、「痛み;トラムセット」
「トラムセットは膝や腰が痛い人によく処方されるが、高齢者は意識障害や痙攣を起こすこともある」
「トラムセット」というのはトラマドールとアセトアミノフェンの配合剤です。問題なのは「トラマドール」であり、トラマドールの単剤はトラマール、ワントラム(徐放剤)という商品名で発売されています。この薬は麻薬および類似薬のカテゴリーに入っていて、オピオイド(準麻薬)と呼ばれる薬です。薬の性質上、高齢者とか重度の脳疾患後遺症の方が内服すると、場合によってはとんでもない副作用が出てしまいます。開業当初に、この薬で深刻な意識障害をきたしていた方が、家族が「レビー小体型認知症」ではないかと疑ってわざわざ横須賀から来られたという事がありました。つい最近も、90歳の認知症の方にこの薬が処方されて、ひどい意識障害と痙攣を起こしていたケースを見た事があります。

158ページ
「マイスリーは米国で「せん妄(幻覚)が出る上に依存性がある」と大きな問題になりました。私の患者さんでも、せん妄が出た人は服用を中止しました。ほとんどの睡眠薬は依存性が強く、離脱するのが難しいです(以下略)」
最近は後発品が多いので、ゾルピデムという名称のほうがなじみがあるのではないかと思います。先のブログでもくわしく書いたように、パーキンソン病、レビー小体型認知症などでは、この薬は禁忌だと考えています。このような病気でなくても、80歳以上の高齢者では、この薬によって夜間の幻覚を伴うせん妄、レム睡眠行動異常のような症状が誘発されやすいので危険です。短時間で効果が切れるので、薬効が切れてからが問題になりやすいのです。

個人的には、薬の話をするときは、講演会でも文書でも、薬の名称は「一般名」で統一するようにしています。
決して、製薬会社に対する誹謗中傷ではなく、副作用を正しく知っていただく事が最も大事ではないかと考えています。
そういう意味では週刊誌の書き方は、やや煽情的であらぬ誤解を招きかねないのではないかと心配になることもあります。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







# by shinyokohama-fc | 2018-11-02 12:38 | 治療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line