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誤診パーキンソン病

パーキンソン病ではないのに、パーキンソン病だと診断されて、必要性のないパーキンソン病治療薬を長年服用しているケースが非常に多いようです。

パーキンソン病と大病院数か所で明らかに誤診されていたケース、70代の男性が続けて、初診で受診されました。

お2人とも、呂律が回らない話し方で、左右に足を広げて、ふらついた歩き方でした。筋肉はまったく硬さはなく、むしろ柔らかいくらいでした。
ひざ~かかと試験をやってみると、左右のかかとでひざを正確に指すことができず、特に左に強い測定障害、ジャーク運動がありました。

これらの症例ではパーキンソン病の診断基準である、動作緩慢(おそい)、筋強剛(かたい)、静止時振戦(ふるえ)は一切確認できません。
小脳性の運動失調(アルコールを多飲したときに現れるような、しゃべり方、歩き方、手足の測定困難)であり、こんな症状がパーキンソン病で出ることはまずありえません。

実はパーキンソン病の診断は難しく、専門医でも感度80%くらいなのですが、今回の症例に関しては、なぜパーキンソン病と診断されているのか?
どう考えてもまったく理解できないというレベルでした。

我々、神経内科医は、動作歩行など運動症状の方が受診されれば、まずは「パーキンソン病」なのか、それ以外なのか?を見極める所から始めます。

近年は特に、高齢者の増加に伴って、レビー小体型認知症DLB、進行性核上性麻痺PSPのほうが、増えている傾向があるので、「パーキンソン病」ではない事のほうが多い気がします。

学会の提唱する、パーキンソン病を否定する根拠になりうる、除外診断基準を以下に示します。拙著140ページにも書いてます。

1)3年以内に姿勢が悪くなり、転倒を繰り返すようになる
2)5年以内に日常的に車椅子を使うようになる
3)5年以内に尿がもれる(A尿失禁)、尿が出ない(B尿閉)
4)5年以内に立ち上がると血圧が下がる
5)10年以内に首が前後に動かなくなり、腕や足の関節が動かなくなる
6)5年以内にしゃべりにくい(構音障害)飲み込みにくい(嚥下障害)
7)症状の左右差がなく、左右がほぼ同じ(両側性・対称性)

1)2)3A)5)6)7)は進行性核上性麻痺(PSP)
1)2)3A)4)5)6)7)はレビー小体型認知症(DLB)
3B)4)5)6)7)は多系統萎縮症(MSA-P )
6)だけだと脊髄小脳変性症(SCD)
を一般的に疑います。
病気の進行度・重症度は、MSA>PSP>>DLB>>SCD
難しいのが1)~7)に該当しない、皮質基底核変性症(CBS)です。

パーキンソン病では主に手首と足首、次に肘と膝の関節が硬くなりますが、
レボドパの服用で軽減します。逆にレボドパの服用で軽減しなければ、パーキンソン病ではないと国際的診断基準では言われています。

進行性核上性麻痺(PSP)やレビー小体型認知症(DLB)では手や足よりも、
頸部から体幹(体軸)の筋肉が硬くなります。体軸の筋肉の柔軟性がなくなるから、脊柱の側部にある傍脊柱筋が思うように自由に動かなくなり、姿勢が左右に傾斜したり、転倒しやすくなったりするわけです。

典型的なパーキンソン病の患者さんは、レボドパの服用で筋肉の硬さはなくなりますし、個人差はあるものの初期の5~10年は頸部~体幹の筋肉はそれほど顕著に硬くはならないので、姿勢が悪くなったり、転倒したりしないわけです。

今回、受診されたケースは「しゃべりにくい」です。
それも並大抵のレベルではなく、呂律が回らず、ほとんど言葉が正確に聞きとるのが難しいというレベルです。

パーキンソン病では、話し方は小声で単調にはなりますが、呂律が回らないという事はまずありえません。

神経内科であれば、もう少し丁寧に診察してほしいものですが、神経内科の患者さんは病院外来ばかりに殺到しすぎていて、外来医が丁寧に診察する時間も余裕もないのかもしれません。
とはいえ、話し方がパーキンソン病とは全然違うというくらいは気がついてほしいものです。まさか外来で顔を見るだけで会話も交わす時間もないのでしょうか?


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# by shinyokohama-fc | 2019-06-29 12:46 | 医療

クエチアピンの使い方

クエチアピンという薬、認知症の行動心理症状 (BPSD)の抑制?目的でよく使われているようです。

認知症の教科書とか講演会ではよくこの薬が書いてあります。学会が推奨?しているからか、この薬を抵抗なく処方する先生方が多いようです。

抗精神病薬の中では力価が低いため、本来の「統合失調症」に対して使う場合は、高用量が必要になります。

夜間暴れて眠らないとか、レビー小体型認知症(DLB)で幻覚が出ているとか、そういう症状に対して専門医?によって使われることが多いようです。

実際はこの薬はDLBに使うと合う症例と合わない症例があるようです。
前者は皮質型で脳幹がまったく障害されていないタイプ、後者は脳幹型あるいは通常型で脳幹網様体が強く障害されているタイプです。

クエチアピンという薬の受容体結合親和性の比率を確認すると
1) ヒスタミン受容体1 ) 30%
眠気、鎮静、肥満、認知機能低下
2) アルファ1A受容体 ) 30%
鎮静、起立性低血圧
3) アルファ2C受容体 ) 7%
認知機能改善
4) セロトニン5HT2A受容体) 7%
抗精神病作用(幻覚など)
5) セロトニン5HT1A受容体)4%
抗不安作用、認知機能改善
6) セロトニン5HT7受容体) 3%
認知機能改善
7) ムスカリンM1受容体) 2%
認知機能低下、便秘
8) ドパミンD2L受容体)0.5%
パーキンソニズム(動作歩行障害)

少なくとも上記8つの神経系受容体に作用して拮抗作用、つまりブロックする、多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)と呼ばれています。
しかし多元とはいえ、その実態は1/3がヒスタミン遮断で、1/3がアルファ遮断なわけです。
それゆえ、最も多い副作用がヒスタミン遮断による傾眠・眠気であり、次いで、アルファ遮断による起立性低血圧です。

いわゆるDLBらしい症例というのは脳幹網様体が強く障害されている、
「注意・覚醒レベルの変動を伴う認知機能障害」が顕著な症例です。
つまり、薬による有害作用がなくても日中眠気が強いタイプであり、こういうタイプは、顕著な起立性低血圧を示すことが多いです。

こういうタイプのDLBに、日中にクエチアピンを服用させてしまうとどうなるでしょうか??
ただでさえ眠いのがさらに眠くなり、血圧も下がって、立ちくらみや失神を誘発するでしょう。立位・座位・食後の低血圧が助長されるので、脳循環不全となり、覚醒レベルはさらに悪くなるでしょう。たとえDLBでなくても、75歳以上の何らかの認知機能低下症の高齢者であれば、誰でも起こりうることでしょう。

クエチアピンを1年以上継続して服用するとどうなるか?おそらくかなり認知機能が低下するのではないかと思います。もしかすると、いくらドネぺジルやらリバスチグミンやらを使っていてもまったく役に立たないのではないかと推定されます。

というわけで、私はこの薬は高齢者が長期に服用するには良くない薬ではないかと思います。
どうしても服用するというのなら、6.25~12.5mgを眠前に服用するだけにとどめ、2~3か月で中止したほうがいいでしょう。
レビー小体型認知症(DLB)の皮質限局型以外には長期的に服用してしまうと良くない薬であるというのは、病態生理的には自明の理です。



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# by shinyokohama-fc | 2019-06-03 18:33 | 治療

PSP症例、レボドパ→アマンタジンでV回復!

前医で長年「パーキンソン病」だと診断されていて、レボドパ・カルビドパ配合剤200mg×3回(1日600mg)とエンタカポン100mg×3回が処方されていて、半年前の初診時は私も「パーキンソン病なのか」と前医の診断を信用していました。75歳の男性の方です。

ただ、2回頭部を打撲する大怪我をしていて、硬膜下血種や外傷性クモ膜下血種になっているというのが気になっていました。

よく診ると、四肢よりも頸部~体幹のほうが筋強剛が強く、前後の可動域制限があるようです。目を見開いたびっくり眼であり、眼の動きは上下・左右とも制限されていました。
椅子から後ろにずり落ちて転倒することが多く、椅子に座るときもドスンと倒れこむような座り方でした。
この方にはレボドパ配合剤はまったく効果がなく、100mg×3に減量しました。
画像検査を再検査すると、中脳被蓋と前頭葉が萎縮しているのが確認できました。進行性核上性麻痺(PSP)だと思いました。

日常的に転倒を繰り返していて、歩行器での歩行もできなくなり、飲み込み時のむせ、嚥下困難も目立っていて、いよいよ病状が進行してきたかという
感じでした。日常生活動作、トイレや食事なども自分でできない状況。

効果が感じられない、レボドパ配合剤は段階的に減量して中止し、代わりにアマンタジン150mg(朝100mg昼50mg)に変更しました。
標準タイプの進行性核上性麻痺(PSP)は幻覚が出現することはめったにないので、アマンタジンは使いやすい薬です。

レボドパ→アマンタジンに変更してからは、意欲が出てきて、日常生活動作はほとんどできるようになり、足がすくまなくなり、歩行器なしで歩けるようになりました。顔の表情も出るようになり、話しかけて笑顔、大きな声で笑えるようになりました。自宅内では何もつかまらずに移動できるようです。嚥下もむせることはほとんどなくなったようです。

この病気に関しては、コリンエステラーゼ阻害薬とレボドパは病状を悪化させうることが多いので、最近は使わないようにしています。
このアマンタジンという薬は、CBSにも有効な症例が多いようです。


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# by shinyokohama-fc | 2019-05-18 12:46 | 治療

レボドパ (メネシット・マドパー)神話の崩壊

臨床医、特に神経内科医の頭には「レボドパ配合剤 はゴールドスタンダード、王道である」という公式が刷り込まれているようです。

ちなみに、レボドパ配合剤とは以下の商品名の薬です。
レボドパ/ベンセラジド
イーシードパール、ネオドパゾール、マドパーなど
レボドパ/カルビドパ
ネオドパストン、メネシット、ドパコールなど

パーキンソニズムがあれば、パーキンソン病であろうが、その他の病気であろうが、「とりあえずレボドパ配合剤を処方しておけばいい」と考えているでしょう。

パーキンソン病の国際的な診断基準には「レボドパ配合剤の顕著な効果」とあります。つまりレボドパが顕著な効果がなければ、パーキンソン病ではないと言っても過言ではないのです。

パーキンソニズムをきたすが、パーキンソン病ではない病気、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症、皮質基底核変性症に対しては、レボドパはパーキンソン病のようにうまく働きません。むしろ悪いほうに作用することが多いですので、中止したほうがいい場合も多いです。

レボドパ配合剤をやめて、何を使うかというと、それはアマンタジン(シンメトレル)です。上記3つの疾患に関してはアマンタジンが著効する症例が多いことに気が付きました。レビー小体型認知症の場合は量を増やすと幻覚が悪化することもありますが、ドパミンアゴニストのひどさに比べたら大したことはないです。

私が診ている患者さんはレボドパ配合剤が効かない症例のほうが多いです。レボドパ配合剤はノルアドレナリンを減らすのか、血圧が下がったり、眠気が出たり、特に上記3つの疾患では副作用でひどく悪化してしまうケースが多いです。
「レボドパが効かない、副作用で飲めない」と処方している神経内科医に勇気を出して進言すると、激怒されてしまうことがよくあります。
「レボドパは決してゴールドスタンダード(王道)などではない」のです。
レボドパに固執されすぎて、病状が悪化して不幸な転帰をとっているケースはかなり多いのではないでしょうか?


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# by shinyokohama-fc | 2019-05-14 18:46 | 治療

室生寺 (真言宗・奈良県宇陀市)

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# by shinyokohama-fc | 2019-05-10 08:49
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新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


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