パーキンソン病治療薬大量によるDLB診断病

まずは、今から15年前に同じ病院で勤務していた、神経内科医の同僚からの昨日のメール内容を紹介します。

おつかれさまです。今日も老人施設を訪問診療し、ポリファーマシー(多剤併用処方)のパーキンソン病患者を診察しました。かねてより、薬剤減量していましたが、日常生活動作に悪化傾向はみられません。

前医の総合病院の著名な神経内科医によるポリファーマシー、大量のパーキンソン病薬剤で幻覚症状が出ており、お約束のように「レビー小体型認知症」だという病名がつけられていました。

患者は84歳ですが、薬剤情報を完璧に理解しており、大量処方にクレームをつけていました。
私が減薬した薬剤についても理解・記憶しており、こちらの治療計画を尋ねてくるほどの人です。どこが認知症なのか???
パーキンソン病の治療方針、シンプルが一番良いです。

パーキンソン病の患者さんで、確かに認知機能低下症を伴うケースは現に存在しており、一般的にPDDと呼ばれています。

今回の症例は、84歳男性。平成15年からで発症15年
平成19年8月に「パーキンソン病」と診断
平成25年にジスキネジア、ウェアリングオフ
平成26年に幻視が出現したため、DLBと診断。
平成30年に歩行器歩行となり、病院への通院困難で在宅医へ紹介

前医(病院の神経内科専門医)からの処方
1) レボドパ・カルビドパ・エンタカポン配合剤 (100mg) 5錠
2) セレギリン (2.5mg) 2錠
3) イストラデフィリン(20mg) 2錠
4) マグネシウム(330mg)6錠
5) リバスチグミン9mg
6) メマンチン(5mg)2錠

在宅医は、4)は中止して他の薬剤へ変更。1)は100mg減量、2)は中止、
3)は20mgへ減量、5)6)もそれぞれ減量したそうです。
減量しても動作歩行レベルの低下はなかったようです。

厳密には、長期罹患・高齢発症のパーキンソン病では、中脳から前頭前野へのドパミン投射が減少しており、二次的に前頭葉機能障害がみられます。
そのため、軽度の注意障害や思考遅延傾向などが確認されます。

どこからどこまでを「認知症(認知機能低下症)」と呼ぶのか?という問題があります。また程度もピンキリです。

しかし、上記の84歳の症例の場合のように、他者からみて、自分の頭で正確に考えられ、物事を正しく理解・記憶している事例までも「認知症」扱いしてしまうのには疑義があるでしょう。

まして、ドパミン作動薬の過剰処方によって出現した薬剤性の幻覚とか認知の変動が出ているのを、DLBだと診断しているのは言語道断ではないかと思います。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2018-07-27 12:05 | 治療

DLBにはまずドロキシドパから

レビー小体型認知症(DLB)。通称レビー。
以前から何度も言っているが、この病名には非常に違和感があります。
私はいまだによくわかりませんし、こんなに得体のしれない、つかみどころがない、臨床医にとってわかりにくい病気も他にはないでしょう


DLBは初期は記憶障害がほとんどないようですが、「記憶障害=認知症」「物忘れ外来=認知症を診てくれる外来」という価値概念が定着しているようですので、その範疇からは外れやすいので、見逃されやすいと啓蒙される傾向があります。

このDLBという病名の病気の臨床像ですが、
幻覚よりも誤認(実体意識性など)に伴う妄想が主症状のようです。パーキンソニズム(動作歩行障害)は半数程度にしか確認できず、動作歩行がやや遅い程度のケースがほとんどですので、老化現象と区別が難しいというレベルです。認知の変動?も外来では確認するのが難しく、介護者の主観に影響されます。初期には記憶は問題なく、簡易知能評価スケールでも高得点なので、「認知症」とはみなされず「軽度認知障害」「年齢相応」にされてしまうので、「誤認妄想症候群」という名前でいいのではないかと思います。

DLBの診断基準では重視されていないようですが、神経内科的観点から言うと、以下の2つの症状が重要ではないかと思います。

1) 血圧変動の大きさ (起立性低血圧・食事性低血圧、ときに臥位高血圧)
2) 姿勢保持の不安定さ (転倒しやすい)


現在、DLB (仮称)と推定される症例全例で、臥位~立位の血圧変動を記録していますが、だいたい30~50mmHgくらい下がり、立位の血圧は90mmHg以下の症例も多いです。

このような状況であれば、立ちくらみやふらつきは当然ありますし、最悪の場合は気を失います(失神)、座位や立位で慢性的に脳循環が悪いので、意識がぼーっとして、認知が変動しやすくなり、これを連日のように長期間繰り返していると、当然のごとく認知機能が低下していきます。

当然ながら、コリンエステラーゼ阻害薬や抗精神病薬はこのような問題(血圧変動)の解決には全くなりません。教科書に書いてあるから、認知症専門医がこの薬を使えと言うから使ってみたけど、実際は良くなる症例は少ないという印象です。これらの薬をいくら使っても上手くいかない症例の多くは起立性低血圧がひどい症例です。一体どうしたらいいのでしょうか?

まず弾性ストッキングを下腿に履かせることです。
血圧降下剤、特にアムロジピンを服用していれば中止することです。
血管拡張剤、特にシロスタゾールを服用していれば中止することです。
臥位の血圧が高くない場合は、ドロキシドパを服用することです。

2年前から通院している、72歳男性。
DLB(仮称)の診断基準は完全に満たしていて、DATスキャンでも線条体の高度集積低下が確認されている症例です。
7年前から夜間の異常行動があり、クロナゼパムを処方
2年前から幻覚、誤認、妄想がひどくなり
総合病院の精神科を紹介されて受診。パリペリドン(リスぺリドンの徐放型)、アリピプラゾールを処方されたが、全く精神症状がおさまらないという
事で受診されました。
「神経内科」ですので、この症状の方は受診する事は通常少ないです。

記憶は悪くないので、診察時にはその誤認による被害妄想、嫉妬妄想、作話の詳細を長々と語れる状況でした。
人、動物、虫の幻視、変形視なども顕著でした。
前傾姿勢で動作は遅く、パーキンソニズムヤール2~2.5相当でした。
リバスチグミンを試し、段階的に1か月ごとに18mgまで増量しましたが、精神症状はまったく改善せず、動作歩行状態が悪化したので中止。


ドネぺジル3mgから開始しましたが、最初の1~2か月だけ幻視と尿失禁が減少したが、すぐに効果は失われ、開始4~5か月後で動作歩行状態が悪化してきたので中止。中止すると状態がよくなったと言われました。
幻覚に対してブロナンセリンを少量だけ使用したが、やはり全く効果なし。
着衣の動作も非常に悪化していました。

血圧変動を測定してみると、ひどい起立性低血圧でした。
臥位 115/76(83)
~立位1分 67/50(97) 立位2分 81/58(100)

半年前にすでに低血圧があったため、アメニジウム(20mg)2錠を服用していましたが、全く効いていなかった事に愕然としました。
そこで起死回生を願ってドロキシドパ(100mg)6錠、1日600mgを開始しました。他の併用薬は、レム睡眠行動異常を抑えるためのクロナゼパム0.25mgとラメルテオン8mgだけです。

ドロキシドパ600mg/日を開始して、それまで何をやってもおさまらなかった幻覚、誤認などの精神症状が大幅に減少しました。
立位の血圧も、94/66(87)、88/63(88)とまだ低いですが、回復したようです。

ドロキシドパという薬は、ノルアドレナリンの前駆体で、当初はパーキンソン病の治療薬で、すくみ症状に効果があると言われ、20年前はよく処方していました。しかし、パーキンソン病のエキスパートと言われる先生方の著書では「運動症状には全く効果がない」と散々な評価であるのが現状です。

ノルアドレナリンという神経伝達物質は、脳幹の青斑核にたくさん存在すると言われていて、特に覚醒力が強く、気分を高揚させ、注意・不安にもかかわる、血圧を上昇させると書いてあります。

これはまさにDLBに最適ではないかと思います。
血圧を上昇させ、脳循環を改善させるだけではなく、覚醒作用、気分高揚作用、注意力向上作用、不安軽減作用があるとすれば
この薬はレボドパ配合剤、コリンエステラーゼ阻害薬、などよりもはるかに優れた薬ではないかと思います。

パーキンソン病、DLBらしき症例を見たら、まずは起立性低血圧を評価し、立位で100mmHg以下であれば、まずはドロキシドパを試すべきではないかと考えます。

起立性低血圧(自律神経不全)が重度の場合は、いくらコリンエステラーゼ阻害薬を使っても、まったく有効ではないという事が証明された事例であったと思われます。

コリンエステラーゼ阻害薬を増やせば、認知機能が改善するからそれで良しとする意見は、認知機能よりも重大な症状である自律神経不全症状を完全に無視している、実地臨床から大きく乖離したものではないでしょうか?


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2018-07-24 12:02 | 治療

セレギリンは心臓交感神経機能(立位の血圧)を低下させる

拙著79ページ。症例1の当時82歳のY さんが定期診察に来られました。
初診時は、セレギリン (2.5mg×2回)を服用していて、立ちくらみがひどく一時期外出できなくなっていた方です。
もうすぐ85歳になる高齢者ですが、湘南地域からこの猛暑の中で1人で受診できるほど元気な方です。
レボドパ・カルビドパは50mg×3回しか処方していません。
もともと毎日6000~10000歩精力的に歩く方で、この2年で見た目の症状はまったく進行していません。
先日の再診時に血圧変動を確認してみました。
臥位 130/70(57) 立位 141/77(70)、2分後142/77(70)

この年齢のパーキンソン病の症例としては異例中の異例でした。
最近はかかりつけのパーキンソン病の症例が増えましたので、全例で臥位から立位への血圧変動を確認していますが、ほぼ90%の症例で収縮期血圧10mmHg以上の血圧低下、70%の症例で20mmHg以上の血圧低下がみられ、これまで、パーキンソン病で立位で血圧が10mmHg以上上がる症例など見たことがなかったからです。

この症例では血圧に作用する薬はもちろん使っていません。
しかも2年前の初診時にはセレギリンの影響で、血圧が30mmHg以上低下していた (臥位150/76(74) 立位 120/78(86) )ので、同一人物の2年後とはとても思えませんでした。
人一倍歩くことで下腿の筋肉が維持されているので起立性低血圧を防いでいるのではないかと思われます。

「パーキンソン病 病理学、自律神経系研究の進歩 中外医学社 2004年所版」を気になって再読してみました。

第3章ー3「パーキンソン病におけるMIBGシンチグラフィー」の100~101ページに、セレギリンはH/M比を低下させると書いてありました。
拙著121ページにも書いているように、これは心臓の筋肉の交感神経を評価するための検査で、微量の放射性物質(I-MIBG)を注射で投与すると、通常は心臓の筋肉にMIBGが集まるのですが、パーキンソン病では心臓の交感神経が変性しているので、MIBGが集まらなくなるという事です。
2か月程度の短期間の投与であれば、元に戻り可逆性である。
長期間の二重盲検試験では有意に心臓交感神経機能を低下させるという、海外からの報告(Neulorogy 1997に掲載)も記載されていました。

最近、PDD(認知症を伴うパーキンソン病)やDLB(レビー小体型認知症)の症例・全例で血圧変動を確認していますが、起立性低血圧の程度と認知機能低下(注意障害・遂行機能障害・構成障害)は明らかに相関していることが実感されます。

しかし、パーキンソン病を診療し、薬を処方している多くの神経内科医がこのことを正しく認識しているとは思えません。
なぜなら、起立性低血圧の程度を確認もせず、10年以上の長期罹病者や75歳以上の高齢者にもセレギリンを含めた5~6種類のパーキンソン病治療薬を意味なく処方しているからです。
さらにアムロジピンが処方されていて、気を失ったり、下腿がむくんだりしている症例が散見されます。

起立性低血圧・血圧変動は、自律神経症状としてきわめて重要な症状です。立位で常に血圧が低ければ、慢性的な脳循環不全となり、認知機能低下を促進することはもはや自明の理でしょう。

起立性低血圧がないか?日常から確認することが大事で、これは医者でなくても介護者であれば誰でもできる事です。
もし起立性低血圧があれば薬の見直しがまず必要です。
特にレビー小体型認知症(DLB)には、薬剤性以外でも高頻度に見られます
。おそらくDLBに最適な薬剤は何か?を考えるヒントになるでしょう?

薬は症例によって適しているかどうかを慎重に見極めて処方してこそ有益なものだと考えますが、実際はそれが正しく評価されていないからこそ、拙著で挙げたような多くの不適切処方薬による薬害といえるケースが後をたたないのではないかと感じます。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2018-07-23 11:39 | 治療

プラズマローゲン臨床医学研究会

7月15日(日曜日)に「プラズマローゲン臨床医学研究会」が東京コンファレンスセンター品川で開催されました。

小生も講演演者として登壇させていただきました。
「アパシーと抑うつ症状に対してプラズマローゲンが著効し、認知機能も維持している老年性認知症の1例」というタイトルです。

この症例に関しては、86歳から90歳まで診ていたのですが、パーキンソンの運動症状はなく、脱抑制症状もない症例で、初診時(86歳時)はHDSR(長谷川式簡易知能スケール)17点/30点でした。

前医でドネぺジルが処方されていましたが、効果が感じられないため、自己中止されていました。当方では初診時からガランタミン8+8mgで処方していましたが、1年後のHDSRも17点でした。

自宅からサービス付き高齢者住宅への転居に伴い抑うつ状態が目立ってきたので、ご家族への説明理解の元で、プラズマローゲンを服用開始していただきました。抑うつ症状に対してはすぐに効果がみられ、外来診察時も見違えるように明るく元気になったようで、大変驚かされました。

当初ガランタミンを服用していましたが、もともと心房細動のため循環器科から投薬されているという状況で、88歳時から労作時の息切れが現れたために、中止としました。

ガランタミンはコリンエステラーゼ阻害薬の中でも、アセチルコリン賦活作用は他の2種類の薬剤に比べてかなり微弱ですが、高齢者にとっては心臓への負担が想像以上に大きいようです。

ガランタミン中止後6か月経過し、プラズマローゲン服用のみで、HDSR再検査したところ、なんと25点もありました。

今回の小生が経験した症例と類似した、80歳以上の高齢者へのプラズマローゲン使用によるスーパーレスポンダーは、他の演者の先生の症例においても複数の症例で確認されています。

小生の経験症例では他4~5例がプラズマローゲン単独使用で、1年以上、認知機能を維持している症例がありますが、これでも十分レスポンダーではないかと思われますが、1年で単独使用で8点以上もHDSR が上がる症例など想定外だったので、今回発表させていただきました。

研究会終了後、プラズマローゲンの研究・臨床試験に携わったお二人の先生方とお話する機会に恵まれました。
私よりかなり年配の先生方ですが、非常に論文投稿などにも意欲的で、そのバイタリティーには驚かされます。

現代医療において、石油が主原料である化学物質である薬物(西洋薬)が脳の病気に対して、代謝能力の低い高齢者に過剰に投与されすぎている、ポリファーマシーによる健康被害という深刻な問題についても、お二人の先生方ともに理解が得られました。

脳の病気に対しては、対症療法という役割しか担わない薬物だけで改善させるのは到底不可能であることは自明の理です。
プラズマローゲンに限らず、ありとあらゆる薬以外の物質が脳の病気に応用されることが不可欠であると、小生は考えます。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2018-07-19 12:32 | 治療

古寺巡礼(5) 豪徳寺 (曹洞宗・東京都世田谷区)

豪徳寺は、文明2年に創建された、2代目彦根藩主の井伊直孝氏によって、曹洞宗の寺として開かれました。
豪徳寺駅(小田急線)の改札を出るとすぐに、招き猫像があります。
豪徳寺までの道幅の狭い参道を10分くらい歩いて、閑静な住宅街の中に、
広い緑に囲まれた敷地が現れました。
まずは左右に松の木を配した10mほどの参道を歩きます。

f0349413_15342935.jpg
参道を歩き切ると、小さな山門 (寺の玄関)が見えます。
f0349413_15345357.jpg
山門の先にはまずは仏殿が見えます。
f0349413_15351368.jpg

正面から向かって左手に堂々たる、三重塔がそびえたちます。

f0349413_15451396.jpg
仏殿の奥には本堂があります。
f0349413_15500639.jpg
招き猫が大小びっしりと奉納された、招福殿という建物がありました。
f0349413_15510251.jpg
f0349413_15512018.jpg
これまで訪問した、曹洞宗の寺とはまた、違った趣がありました。




[PR]

# by shinyokohama-fc | 2018-07-07 16:19
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line