無動タイプは減薬困難、DBSも考慮

拙著を読まれたのがきっかけで遠方から受診した方が2名おられました。

皮肉な事に「減薬すれば良くなる」に全く該当しないケースでした。

何事にも「例外」というのは存在します。

減薬が困難なケースというのは
「65歳以下で発症した、無動(固縮)型・アキネジアタイプ」
具体的には、レボドパ配合剤の効果が1~2時間しかもたない状況になっているタイプのことです。ある意味、
最もパーキンソン病らしいタイプであり、
他のパーキンソン病類似の病気では絶対に起こりえない現象です
このようなタイプの場合は、レボドパ配合剤を少なくとも6回以上、場合によっては10回以上少量分割服用にする必要があります。

今回、来られた患者さんは、自主的に10回以上に分割して服用しておられましたが、効果が1時間もたない状況のようでした。

実は私が定期に診ている患者さんにも数名このような方がおられます。
中には40代後半、50代前半の仕事をしている方もおられます。仕事中に動けなくなるというのは大変つらい事だと思います。

ウェアリング・オフ現象、オンオフ現象と呼ばれます。
発症して5年以内にレボドパ配合剤が増量された
場合は、この現象が起こりやすいというのは、海外の論文にも掲載されています。
すでにレボドパが増やされてしまって、オンオフ現象が顕著に現れているケースには、減薬メソッドは通用しません。

ウェアリングオフ現象に適応のある薬剤は次の3つです。
1)ゾニサミド (25mg)錠 1115.9円
2)イストラデフィリン(20mg)錠 782.4円
3)エンタカポン(100mg) 217.3円×最大8回/最大1600mg

薬価が高額です。高額であるがゆえに、
確実にオフ現象が軽減したと言えなければ継続する意味は全くないです。


1)に関しては、ふるえ(振戦)を軽減する効果は期待できますが、拙著にも書いたように、ウェアリングオフに対する効果が現れるまでは時間がかかるので、最低3か月以上服用して判定せよとなっています。実際には3か月も待ってられるのか?という事と、小生の経験では前医で処方されて実際には数か月以上服用しても効果がはっきりしないケースが多いようで、高額でもあり、減薬対象になりやすい薬です。

2)に関しては、単独で使用するよりは、むしろごく少量のドパミン・アゴニストと併用することによって、顕著なウェアリングオフ効果を発揮するケースが多いようです。ドパミンアゴニスト単独使用で増量すると、以前のブログでも書いたように、元々副作用が出現しやすい(多くは非運動症状の悪化)ので、少量で効果を発揮できるというのは理想的です。

3)はレボドパ配合剤を補完する作用の酵素阻害剤であるため、現状ではレボドパを服用するのと同じ回数で服用する必要があります。ゾニサミド、イストラデフィリン、ドパミンアゴニストが1日1回であるのに比べると服薬錠数・回数がが増える事が分が悪い
と思われます。レボドパ配合剤の効果時間をどれくらい伸ばせるのかは諸説あります。ある著名な先生が書いた教科書には30分と書いてますが、製薬会社の発表データでは90分になっています。もし前者であればメリットはさほど大きくないという事になります。

いずれにしても、根治療法ではなく対症療法なのですから
オフ現象軽減に効いていなければ、中止を申し出る
べきでしょうね。

イストラデフィリンが登場して2~3年の頃は、私はこの薬を処方しておらず、著名な先生も「この新しい薬をどう使っていったらいいのか?」とコメントしていたくらいでしたが、ドパミン作動薬ではないが故にドパミンアゴニストに代表されるドパミン作動薬特有の副作用が出にくいという点がアドバンテージになっているのではないかと推定されます。

レボドパ配合剤分割服用+イストラデフィリン+ドパミンアゴニスト
レボドパ配合剤分割服用+エンタカポン
このいずれかでもウェアリングオフが穴埋めできない場合は、薬物治療の限界と考えます。拙著にも書いたように、4種類以上の併用は薬剤せん妄に至るリスクが高まるので意味がなく、むしろせん妄、精神症状によるQOL低下が深刻化します。それは拙著の症例に書いたとおりです。

何より4種類以上の併用は大規模臨床試験などで有効性や安全性は証明されていません。神経系薬剤のポリファーマシーを何年も続ける事によって何をもたらすのかは拙著にくわしく書いたとおりです。

既存の経口服薬による薬物治療の限界ケースの場合は、
1)脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation)
2)胃ろうによるレボドパ持続注入

のいずれかになります。
侵襲的な治療であり、高額医療にはなりますが、パーキンソン病という病気は先の長い病気ですので、QOL 機能予後を考慮すれば導入する価値はあると思われます。
ただし、いかなる治療も効果・副作用には個人差があるという事は理解する必要があるでしょう。



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# by shinyokohama-fc | 2018-03-06 12:32 | 治療

鹿児島認知症ブログ・書評(2)減薬して良くなったことを評価される珍妙な現場

書評(2) 減薬して良くなったことを評価される珍妙な現場

薬を多量に盛られた方を、再度評価しなおして、慎重に減薬していく作業は、やったことがある医師ならわかると思うが、とにかく時間がかかる。
おそらく、初診には相当時間を費やしていると思われる。(中略)
「他院で大量に出された薬の後始末をしているから」


他の医者が処方した薬など、本当は一切触りたくないというの本音であり、本当は処方した医者が修正するべきものだと思います。小生も自分の診断や処方が間違っていたと後で気がついて後悔する事があります。副作用によるデメリットが大きければ、自分で処方した薬は自分で減薬したり中止したりする事は日常茶飯事です。

例えば、本書に掲載した症例が、なぜ前医にかかるのをやめて、当院へ来なければならなかったのでしょうか?
「医者と患者側のコミュニケーション不十分で、現状を共有できていない」「医者が副作用(有害事象)を十分認識していない、深刻に考えていない」
この2点につきるのではないでしょうか?
逆にこの2点ができていれば、前医によって副作用で有害な薬は減薬・中止されて、病状は安定したはずで、当院へ来る事もなかったはずです。
副作用をまず第一に実感するのは、患者さん自身と同居している家族や介護者であり、医者ではありません。医者が診察している時間(数分間)に副作用が目に見えて出現しているケースというのはまれです。
そういう意味で、患者側との対話、コミュニケーションが不可欠です。
初診の時間はだいたい30分にしています。薬の減量や変更はすぐには難しいので、通常は病状が安定するまでは2週間毎に診察にしています。特にパーキンソン病の場合は現行の保険医療制度下では何種類併用しても許されているので、ありえないほどの多剤併用処方(ポリファーマシー)が少なくないので、大変困難な仕事になりますが、誰もこういう仕事をやる人がいないので、仕方なく自分がやるしかないのかと諦めてやっています。
誰かがこの仕事をやらなれば、患者さんの病状が悪化していくだけなので、それを見過ごす事は到底できないからです。

減薬という、いわば他所の仕事の尻拭いで患者さんから喜ばれるというのは、なんとも妙な気分である。自分が一からその患者さんを良くしたわけではないからである。
他所の仕事の尻拭いのために、こちらの時間が持ち出しになっていることにゲンナリする。
誰かがやらなくてはならない仕事なのだろうが、自分個人の精神衛生上はきわめてよろしくない。

前医がもっと副作用を厳重に注意しながら慎重に薬を処方していれば、こんな事態(薬剤せん妄など)には至るはずもないわけで、正直言うと満足感は何もないです。
今回本書を書いた理由は、こういうポリファーマシーの被害者が少しでも減る事を願ったものです。
たぶんさほど効果は期待できないでしょうが。その理由は次回に。


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# by shinyokohama-fc | 2018-03-05 12:00 | 医療

鹿児島認知症ブログ・書評(1)神経変性疾患は個別対応こそが求められている

小生が欠かさず閲覧しているブログが、「鹿児島認知症ブログ」です。
http://www.ninchi-shou.com/

2018年2月26日のブログに、小生の新刊書籍に関する書評を書いていただきました。
この先生のブログの内容はいつも大変思慮深くて素晴らしく、実地臨床家にとって非常に考えさせられる、時には辛辣な批判もあります。
このブログにいつも感銘を受けるのは、ご自分の言葉で書いているのが伝わってくるからです。
「世間」「ガイドライン」を意識しすぎて、自分の意見が見えてこない内容の医学書を読むよりもずっとためになると思います。
今回の書評、この内容についての意見を、このブログで4回シリーズで書いていきたいと思います。

長年、パーキンソン病を診てきた、著者からの、診療現場への怒りをこめた「警世の書」

私が大好きなフットボールで言えば「イエローカード(警告)」、信号機で言うと色は「黄色」です。

書評(1)神経変性疾患は個別対応こそが求められている

「少しずつ減薬すれば良くなる」とはすなわち、「たっぷり盛られた薬を減らしたら良くなった」という意味である。

たっぷり薬を盛るのが好きな先生方に対する皮肉です。
患者側からしたら本当に冗談じゃない、笑えない事実です。

パーキンソン病といっても症状の個人差が大きいため、必然的に治療は個別対応にならざるを得ない。しかし、ガイドラインには個別対応の仕方は載っていない。初学者はまず治療ガイドラインに目を通すべきであるにしても、それはガイドラインを盲目的になぞる事と同義ではない。ガイドラインに相対しながらも距離感を持つことが重要であろう。

本書に掲載させていただいた症例の数々は、なぜ掲載したのか?というと処方内容と実際の患者さん達の病状の乖離が現れているからなのです。
「個別対応」「ガイドラインとの距離感」が考慮されなければ、処方薬の数は関係なく、患者にとってパニック(大迷惑)処方になりえます。

通常は常識的な感覚を持ちながら、臨床的な経験を積んでいけば、距離感も自然と身についていくと思われる。

それが多くの臨床経験を持つ専門医?おそらく私よりも何倍も患者数を診ているはずの臨床医達に身についているのか疑問。

世の中には「ガイドラインに載っていないことは認めない・存在してはならない」という。ガイドラインと一体化したような教条主義者がいる
そのような教条主義者はえてして高いポジションにいたりするのだが、「臨床リテラシーを磨く事と知力とは、別の問題だなぁ」と感じる


なぜわが国では「教条主義者」が生まれやすいのか?
それは自分の意見を言わない、主張しないのを美徳とする文化が、東アジア民族に根強く存在していて、一部の声の大きな権力者(教条主義者)の方向性に誘導されても、それに反論しにくい「世間」が存在するからでしょう。
また「教条主義者」にとって都合の悪い内容の意見は握りつぶされる傾向にあります。自分の意見を主張するのが当たり前の欧州などではありえない事かもしれません。

自分の経験を自分の言葉で語れずに、大規模臨床試験の結果しか語れないことが何を意味するかは明白で、それは「研究ばかりしていて、ろくに患者を診ていない」ということである。もしくは「患者を診てはいるが、臨床リテラシーがないので目の前の患者が見えていない」

患者さん達(ご家族)から聴取した情報によると、「外来診察で問診も診察もロクにされていない。何か言うと薬が追加処方されるだけ」という声が多数ありました。これが本当だとすれば、薬の効果と副作用が正しく評価ができるはずもないと思いました。
私の想像ではもう一つ要因があります。
それは、ブランド志向。がアダになっているのではないかと。
とにかく有名な先生に診てもらいたい。有名な病院で診てもらいたい
と特定の医者、医療機関に患者さん達が殺到しすぎるから、時間がとれないのかもしれませんね。
どんな名医でも1人の医者が診れる(必要最低限の問診と診察がなされているという意味)患者数は限られていますからね。
この点については、拙著のQ&Aのコーナーに書いてありますので、良ければ
一読してください。
今回はここまで。また次回をお楽しみに。


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# by shinyokohama-fc | 2018-03-03 12:51 | 医療

前頭側頭葉変性症を学ぶセミナー

昨日、品川の会議室において、
「前頭側頭葉変性症 つくしの会(家族とその仲間の会)」の主催で、
「前頭側頭葉変性症をきたす様々な病気の特徴とその対症療法」というテーマで僭越ながら、小生が60分の講演をさせていただきました。
そのあと、60分は質疑応答に応じました。

たぶん「患者会」をメインにして講演をさせていただいたのは初めてではないかと思います。
やはり「患者会」は真剣度は医者とは全然違うと感じました。それは自分の家族だからでしょう。
前頭側頭型変性症(FTD)という病気は、国に難病指定されている病気ですので、有効な治療薬はありません。
いわゆる「ピック」と呼ばれる、行動異常型とか意味性認知症(そもそも認知症という言葉が不適切だが)症候群に関しては、発症年齢が60歳以下であり
中高年期の発症であるがゆえに、高齢者にくらべて病気の進行が速くて、より重いという印象があります。

小生の経験では、このような患者さん達には、いわゆる抗精神病薬(内容については以前のブログを参照ください)は通用しない事がほとんどです。
かつて小生のクリニックに訪れた、外来の初診患者でも、抗精神病薬を4種類か5種類以上とっかえひっかえ服用した結果として、深刻な不随意運動が現れたり、かえって易怒・興奮性が増強したりという症例が多かった気がします。

終了後にも介護者(家族)から相談を受けたのですが、
とにかく「抗精神病薬原理主義」みたいな担当医で、
「すでに認知機能がかなり落ちていて、日常生活動作にも困っているのに、なかなかクロールプロマジン(CP)を減らしてくれなかった
という不満を訊かされました。

今回の講演会の内容としては、前頭側頭型認知症にとっては抗精神病薬は極力使うべきではない(少なくとも外来という診療形態では)という話をさせていただきました。
それは、上の症例のように、抗精神病薬の長期服用によるデメリット、薬害の部分が大きくなるからです(詳しくは以前のブログ参照)。
病状が進行して1年以上もすれば、多くの場合は易怒・興奮の時期は過ぎ去り、無為の症状が目立ってきます進行したステージではむしろ脳の活動を抑えてしまう薬は良くないのは当然と言えます。

せめてゆっくりと少しずつ減量して経過を見るべきでしょう。
患者側がしつこく頼みこまなければ、減量もしてくれない?
まったくもっとおかしな話です。
患者の状態を一番よく診ているのは一体誰なのか?

しかし、一部には「前頭側頭型認知症=抗精神病薬」みたいなステレオタイプ的(自分の頭で何も考えていないのか?)で頑迷であり、患者家族にとって大迷惑な臨床医が少なからず存在するのも事実です。
そういう臨床医はこの病気の診療から手を引くべきではないかと思います。

私は少ないながらも、このタイプの患者さんを外来で診察してはいます。
80歳台半ばの患者さんは、クロールプロマジン(CP)12.5mgを2年以上内服していましたが、つい最近になって
「歩くと息切れがする」「疲れやすい」「自分から動かない」などが見られ
中止に踏み切りました。中止して以上の症状はすべて軽減しました。
思えばもう少し早期に中止すべきだったと後悔しています。
心不全で入院しなくて良かったと安堵しています。

最後に一言
「抗精神病薬で前頭側頭型変性症は治りません」


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# by shinyokohama-fc | 2018-02-26 16:58

北九州へ出張



先日、実に久しぶり、何年ぶりかに、北九州市を訪れました。
福岡県へ空路では福岡空港には2度行った事がありますが、北九州空港には初めて行きました。関西空港のように海上にある空港ですが、空港から新幹線駅のある小倉駅前まではやや距離がありましたが、高速道路を走るので、深夜だとシャトルバスで30分前後で到着しました。

北九州市小倉北区にて実地医家の先生方向けの講演会でした。参加者の先生方からも興味深い質問があり、有意義な時間だったと思います。
講演が終了した後に、会場から徒歩で、小倉城(写真)に行きました。
当日は強い寒波の影響で、外気温が2~3度くらいで強い寒風が吹いて、非常に寒い日でした。


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その後、観光目的でJR鹿児島本線の終着駅である、門司港駅に向かいました。写真のように、すごく古く懐かしいアイテムが残っている駅です。

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展望タワーの31階の展望台から、関門海峡が見渡せました。
当時は時々風雪が横向きに吹いており、いかにも真冬らしい気候でした。
日本海に面した北九州でも、雪が降るのは珍しいそうです。

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この後、小倉のホテルに帰ったのですが、深夜に猛烈な勢いで雪が降り、
2~3時間で10cm前後積もっていました。3時間前に小倉駅から歩いた時は全く降っていなかったので驚きました。

翌日の朝9時の飛行機で帰る予定だったので、これはまずいと思いました。幸いすぐに雪はやみ、それ以上の積雪はありませんでした。翌朝は予定よりも早い時間のシャトルバスに乗りましたが、バスも飛行機もやや遅延したものの、無事に運行されていて、一安心でした。

北陸や山陰地方では記録的な大雪で、交通機関が完全にマヒしている地域もあるようです。
北九州ではつい半年前に、連日性の記録的豪雨があったのが記憶に新しいですが、最近の天気災害は想定外レベルなので、本当に油断できないです。


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# by shinyokohama-fc | 2018-02-13 18:15
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新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


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