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神経内科のポリファーマシー


神経内科による、ポリファーマシー(多剤併用)は日常茶飯事のようです。
神経系に作用する薬剤が5種類以上、使われることがザラにあります。

以前のブログでも取り上げましたが、パーキンソン病治療薬をすでに7種類併用している症例に8種類目をトッピングして有効であったという発表を堂々とやっている講演会を聴いて、呆れ果てたことがあります。

いかなる神経変性疾患でも、4種類以上の神経作用薬については安全性・有効性について科学的根拠はありません。臨床試験がされてないからです。

特に、アルツハイマー病、パーキンソン病以外の神経変性疾患、神経難病については臨床試験はまったくされていないので、そういう病気に対してポリファーマシーというのは非常に危険を伴う方法になります。

今回紹介する症例は、70代後半の男性。どうやらパーキンソン病と診断されているようですが、5年以内に自立歩行不能、車椅子使用になっていて、全く会話できなくなっていたので、国際学会(MDS)の定める除外診断基準としては、パーキンソン病は確実に否定される症例です。頸部~脊柱(体軸)の筋強剛が強いのが印象的でした。

処方薬は神経系薬剤だけでも以下の7種類ありました。
1)レボドパ・ベンセラジド(100)3
2)ドロキシドパ(100)3
3)チアプリド(25)6
4)リスペリドン(1)1
5)エスゾピクロン(1)2
6)ドネぺジル(10)1
7)メマンチン(5)3

まず考えられるのは、ドネペジル10mgを服用していることで、体軸性筋強剛、不眠が誘発されていると思われます。
ドネペジル10mg+チアプリド150mg+リスペリドン1mgだと、3つとも薬剤性錐体外路症状(EPS)・パーキンソニズムの原因薬剤なので
これだけでも相当な影響があると思われます。
ここまで動作が悪い症例に対して、ドパミン阻害作用の強い、抗精神病薬を2種類も処方している意図が理解できません。
どう見ても、アルツハイマーではない症例に対して、ドネぺジル10mg+メマンチン15mgを処方する意義はないと思われます。

明日は、港北区内の地域ケアプラザにおいてセミナーがあり、「脱ポリファーマシー」という医学書をおそらく初めて出された(編集された)先生がゲストとして来られて、講演する予定でした。しかし、台風来襲の影響のため、来浜が難しくなり、中継で講演されることになりました。
この医学書では、内服薬の種類が多くなった理由として以下の点が挙げられていました。
1)薬剤情報を製薬サイドから入手することによるバイアス
2)先輩医師への遠慮
3)エビデンスのない謎の薬の人気
4)薬剤カスケード
5)多診療科併診
6)薬の好きな患者
7)薬の副作用情報を報道しないメディア

拙著においても「パーキンソン病、少しずつ減薬すれば良くなる!」は、
パーキンソン病における、神経内科医によるポリファーマシーを批判した主旨の書籍です。主に第6章にその問題について書きました。
(6-3)ポリファーマシーと薬剤カスケード
(6-6)ポリファーマシーの弊害

決して薬剤による治療そのものを否定しているわけではなく、正しい薬の使い方をしてほしいと訴えているだけなのです。

アルツハイマーでもパーキンソン病でもない神経難病に対して、アルツハイマー病の治療薬とパーキンソン病の治療薬を同時使用するということが、保険医療として認められている?という現状には嘆息するしかないです。




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by shinyokohama-fc | 2019-10-10 17:19 | 治療

コリンエステラーゼ阻害薬と姿勢保持障害/姿勢異常

「コリンエステラーゼ阻害薬は姿勢保持障害に効果がある」
認知症・神経内科の識者は教科書や雑誌にはよくこう記載されています。

姿勢保持障害は別名、姿勢反射障害とも呼ばれます。
姿勢反射とは、外力が加わったとき、重心が移動したときに、姿勢を立て直すために、姿勢保持する筋肉の緊張の調整が行われることです。
転倒せず、安定して重心を移動する、歩行動作には必要な機能です。

パーキンソン病の歩行・姿勢保持障害の原因として、脳幹の脚橋被蓋核(PPN)におけるアセチルコリンの関与(アセチルコリン経路Ch5/6)が考えられることから、コリンエステラーゼ阻害薬の転倒・歩行障害に対する効果が検討されたとのことです。

23例を対象にした二重盲検交差試験でドネぺジルの効果が、114例を対象にした二重盲検交差試験でリバスチグミンの効果が示唆されました。

転倒イベントが明らかに減ったという報告ですが、そもそも純粋なパーキンソン病は、レビー小体型認知症は、私が診ている症例においては、進行期でも安全な環境であればそこまで転倒イベントが多い病気ではないのですが???

しかしこれらの薬剤には「歩行障害・転倒予防」に対する保険適用はないので、リスクを十分考慮したうえで投与を検討すべきと書いてあります。

そのリスクとは振戦の増悪、易怒性など精神症状の悪化、不整脈、低血圧あなどと書かれていますが、それよりも遥かに問題なのが、前回のブログでくわしく書いた、姿勢異常(首下がり、腰曲がり、体幹側屈/ピサ徴候)なのです。

コリンエステラーゼ阻害薬によるアセチルコリン賦活は病的な過度の筋緊張を誘発します。純粋型アルツハイマー病でそれが誘発されるケースはほとんどないと思いますが、パーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(DLB)では非常に高率に病的な筋肉の過緊張が起こり、ジストニアにいたります。PDでは四肢末端DLBでは頸部~体幹(体軸)に強く起こります。

以前は専門家による「パーキンソン病関連の医学書とか医学雑誌」には、23例のRCTをタテに「パーキンソン病の姿勢不安定にはドネぺジルを使え」という恣意的な表現が一時期目立っていましたが、近著ではかなりトーンダウンしたようです。

それは、不都合なことにドパミンアゴニストのみならず、ドネぺジルにも腰曲がり、体幹側屈/ピサ徴候の報告が相次いだからです。
私の経験でいうと、リバスチグミンでもかなりそのようなケースが確認されましたので、ドネぺジルとほぼ同等ではないかという印象です。

多系統萎縮症(MSA)や進行性核上性麻痺(PSP)では病気そのものの症状として姿勢異常が出現するのですが、PDという初期の診断をかたくなに変更せずに、上記のRCT論文を妄信したあげくドネぺジルをトッピング処方してしまって、姿勢異常をさらに悪化させてしまって立位が保持できず歩けず車椅子になってしまうというケースが結構よく見かけます。

MSAやPSPにコリンエステラーゼ阻害薬を処方するというのは一番やってはいけない行為です。

たとえ最初にPDという診断を下したとしても、急速な運動障害の進行~車椅子という経過をたどれば、それはPDではなく、MSA-PかPSP-Pの可能性が高いわけです。このような神経難病においては、ドパミンアゴニストもコリンエステラーゼ阻害薬も有害にしか作用しないわけです

そのために国際運動障害学会(MDS)のPDの診断基準の除外診断基準(Red Flags)が存在するわけですが、多くの神経内科の臨床医はこのことを知らないで、患者を診ているようです。

特に75歳以上の高齢者においては、PD+PSP,DLB+PSPなど確率的にはいくらでもあるわけで、経過途中で別の変性疾患が混合するなどというのは珍しくもないことです。

どうやら医学書・医学雑誌に書いてある1つの情報を妄信して処方する傾向が多いようです。
そのうえで最初につけた診断名(多くはパーキンソン病とかアルツハイマー病)に固執してしまう傾向があります。初診時に核医学検査までやっているのだから、パーキンソン病で間違いないという思い込みから脱出できないわけで、一番不幸な転帰をたどるのは患者さんなのです。

いつまでも誤った処方が修正されないがゆえに結果的に常軌を逸したパニック処方になってしまうケースも散見されるようです。臨機応変という意識が欠如しているのではないかと思います。

コリンエステラーゼ阻害薬の存在が悪いわけではなく、深い思慮もなく、
「認知症なのだからコリンエステラーゼ阻害薬をとりあえず処方しておけばいい」みたいな誤った価値観に支配されているのではないかというような気がならないわけです。

コリンエステラーゼ阻害薬は純粋アルツハイマー(中期まで)のみ処方されるべき薬です(フランスはそれすら価値がないと断じられたわけですが)

パーキンソン病を発症して10年以上経過して認知機能が低下したケースや顕著なパーキンソニズム(ヤール3度以上相当)のレビー小体型認知症に使用されるべき薬ではないと私は考えます。個人的な見解ですが。


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by shinyokohama-fc | 2019-10-04 18:24 | 治療
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