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週刊現代記事の補足説明


今週号の「週刊現代」「医療大特集 知っているのと知らないのでは大違い」という記事の取材に答えました。
週刊誌の記事という事もあり、紙面の都合などの事情で、編集でコメントが短縮されています。

この記事を読んで、このブログを見ている人もいると思いますので、この記事における、私が答えているパートについて誤解を招く部分もあるかと思いましたので、ここで補足説明をしておきたいと思います。

まず156ページ「糖尿病のスルホニル・ウレア(SU)薬について」
「SU薬は効果が強すぎるため、血糖値が下がりすぎるのです。低血糖になれば、脳神経にも影響が出て認知症のリスクも高くなります。」
小生がまだ20年以上前の研修医で病院勤務していた時代には、インスリン以外の薬はメトホルミンとこのSU薬しか存在していませんでした。その後の20年で糖尿病の治療薬として、様々な新薬が続々と上市されました。
研修医時代に、救急外来において、SU薬服用中の高齢者において、遷延性の重度の低血糖による意識混濁の症例を多数診療する機会があり、その多くがインスリンではなく、このSU 薬を服用していました。いくら糖液を大量に注射しても血糖が全く上がらず、二度と意識が戻らなかった事を今でも昨日の事のように覚えています。特に高齢者では無症候性の低血糖を繰り返して
認知機能低下やせん妄(軽度の意識障害)に至る事例も少なくないようです。
糖尿病学会専門医の講演会などでも近年はこの薬は低血糖リスクが最も高く、膵臓を疲弊させやすいので、他にリスクの少ない新薬が数多くある現在では推奨されなくなりました。

157ページ「高コレステロール血症;クレストール、リピトール」
「米国食品医薬品局(FDA)は、高齢者が服用し続けると認知機能が低下すると注意喚起している。コレステロールを薬で下げすぎると筋肉も衰えていくので注意が必要です」
小生は、若年~中年で家族性と思われる、高コレステロール血症の方々には、これらの薬(スタチン)は処方しています。スタチンの普及により動脈硬化が予防されて、動脈硬化性の脳梗塞や心筋梗塞・狭心症は減少しているのは事実です。しかし、一方で高齢者、認知機能低下、認知症においては、MMSEスコアがスタチンの中止によって上がるというのも事実です。
FDAがこの発表をしたのが、2012年、最近は海外の認知症の専門医の間では、スタチンで認知機能が低下するというのは常識となっています。
それだけではなく、高齢者、特に女性においては末梢神経や筋肉も衰えてくるので、いわゆるフレイルを誘発するケースも多いのではないかと推定されます。

157ページ、「痛み;トラムセット」
「トラムセットは膝や腰が痛い人によく処方されるが、高齢者は意識障害や痙攣を起こすこともある」
「トラムセット」というのはトラマドールとアセトアミノフェンの配合剤です。問題なのは「トラマドール」であり、トラマドールの単剤はトラマール、ワントラム(徐放剤)という商品名で発売されています。この薬は麻薬および類似薬のカテゴリーに入っていて、オピオイド(準麻薬)と呼ばれる薬です。薬の性質上、高齢者とか重度の脳疾患後遺症の方が内服すると、場合によってはとんでもない副作用が出てしまいます。開業当初に、この薬で深刻な意識障害をきたしていた方が、家族が「レビー小体型認知症」ではないかと疑ってわざわざ横須賀から来られたという事がありました。つい最近も、90歳の認知症の方にこの薬が処方されて、ひどい意識障害と痙攣を起こしていたケースを見た事があります。

158ページ
「マイスリーは米国で「せん妄(幻覚)が出る上に依存性がある」と大きな問題になりました。私の患者さんでも、せん妄が出た人は服用を中止しました。ほとんどの睡眠薬は依存性が強く、離脱するのが難しいです(以下略)」
最近は後発品が多いので、ゾルピデムという名称のほうがなじみがあるのではないかと思います。先のブログでもくわしく書いたように、パーキンソン病、レビー小体型認知症などでは、この薬は禁忌だと考えています。このような病気でなくても、80歳以上の高齢者では、この薬によって夜間の幻覚を伴うせん妄、レム睡眠行動異常のような症状が誘発されやすいので危険です。短時間で効果が切れるので、薬効が切れてからが問題になりやすいのです。

個人的には、薬の話をするときは、講演会でも文書でも、薬の名称は「一般名」で統一するようにしています。
決して、製薬会社に対する誹謗中傷ではなく、副作用を正しく知っていただく事が最も大事ではないかと考えています。
そういう意味では週刊誌の書き方は、やや煽情的であらぬ誤解を招きかねないのではないかと心配になることもあります。


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by shinyokohama-fc | 2018-11-02 12:38 | 治療

プレタールとシロスタゾールの違い

シロスタゾールという薬。
大塚製薬から、プレタールという商品名で発売されてから、かなりの年数が経過していますが、いまだに繁用されている薬です。

抗血小板作用、血流増加作用、内皮機能改善・保護作用、血管平滑筋細胞増殖作用が公式には示されています。

1)脳梗塞(心原性塞栓症を除く)発症後の再発抑制
2)慢性動脈閉塞症に基つく潰瘍
が保険適用であるが、多くは1)「脳梗塞」の病名で使用されています。

高齢者の場合は、MRI検査をすれば、大なり小なり、微小血管障害による
「ラクナ」と呼ばれている梗塞後変化が確認されます。
この「ラクナ」が基底核で増加すると「パーキンソニズム(動作緩慢・歩行障害・下肢の筋強剛)」が現れやすくなり、皮質で増加すると「認知症」が現れやすくなります。
そのために「ラクナ」を予防する必要性は意義があります。

10月21日に一緒に講演させていただいた、平川先生は700例を超える「認知症」の症例に使用し、脳血管性認知症 (VD)で50%、レビー小体型認知症(DLB)で45%、アルツハイマー型認知症 (AD)で30%の改善率があると著書 (177ページ)で示しています。

シロスタゾールはホスホジエステラーゼ(PDE)3活性を選択的に阻害して脳血管を拡張させて、脳血流を増加させる作用があるようです。
PDE3活性阻害により、脳神経細胞内にある、cAMP 応答配列結合タンパク(CREB)のリン酸化が促進されて活性化し、大脳皮質が関与した高次脳機能 (認知機能)を改善させると言われています。

しかし、平川先生は、プレタール(先発品)とシロスタゾール(後発品)の多数症例による比較検討まで実施していて、その結果によると、プレタールは有効だった症例が、シロスタゾールに変更すると効果がなくなるそうです。
それを講演で聴いて以後は、小生はこの薬に関しては先発品でしか処方しないことにしていました。

この薬のもう1つの効果に「誤嚥防止効果」というのがあり、すでに15年前にはそういう効果が報告されていました。

このたび、小生の外来に、「椎骨動脈解離後に脳幹(延髄)梗塞を発症した」50歳の男性の方が初診で2週間前に来られました。
5月初めの発症で、すでに発症して5か月半経過していました。
リハビリ病院からの紹介、後発品のシロスタゾール、100mgを1日2回(200mg/日)が処方されていました。

初診時は延髄梗塞の後遺症によって、構音障害が強く、普通の速さ、大きな声で話しができず、嚥下障害も強く、食べ物を飲み込むのに苦労しており、時にむせる状態でした。特に夜間に唾液がたくさんたまって、就眠中に3回ほど覚醒して、たまった唾液を嘔吐するという状況でした。

前医処方が後発品であったので、もしかしたら、先発品(プレタール)に変更すれば、上記の症状が改善するのではないかと考えて、患者さんにも上記の事情を説明した上で同意をえて、先発品の処方箋を切ることにしました。

2週間後、再診されて驚きました。
なんと、あれだけ話しにくかったはずなのに、別人のようにハキハキと普通の人と変わらないくらいの速さで話せていました。
嚥下も良くなったようで、夜間唾液がたまって覚醒して、むせて嘔吐するということも一切なくなったとのことでした。
患者さんが先発品薬の有難みを実感されたのは言うまでもありません。

「ここまで先発品と後発品は違うのか」という事と、プレタール(先発品)の誤嚥防止効果の凄さというのを改めてリアルに実感できました。

つまり何が言いたいかというと、後発品が先発品と同様の臨床試験をしないかぎり、有効性・安全性に関しても疑いは晴れないと思います。
シロスタゾールの後発品メーカーはいくつかありますが、あえてどの会社のものかはあえて確認していません。
しかし、こういう事例がある以上、後発品すべてに対して改めて、有効性・安全性に対して検証する必要があるのではないでしょうか?

今回は、リハビリ病院では後発品を処方されて効果がなく、当院から先発品に変更して、劇的に改善したわけです。
脳梗塞発症して6か月近く経過し、この2か月で症状がまったく変わらなかった事を考えれば、これは自然経過ではなく、先発品・プレタールの効果だと考えて間違いないでしょう。

長尾先生もブログに、抗不安剤を後発品(ジェネリック)に変更して、患者側から有効性がなくなったとクレーム言われたという記事を書いておられましたが、血圧を下げる薬でも、先発品→後発品の変更で効果がなくなったという患者さんからの声は日常的に聴かれます。

我々内科は、薬を選択して処方して、患者さんを少しでも良くしたいという想いでこの仕事をやっています。

国が後発品を推進したいと言うのであれば、先発品メーカーに後発品として発売していただく(オースライズド・ジェネリック)か、それ以外の後発品メーカーには臨床試験で有効性・安全性を改めて証明させるという事をしていただかないととても納得できません。

医者は信用して薬を処方できないし、患者さんは信用して薬を服用できないのではないでしょうか?
後発品を推進する前に「効果のはっきりしない薬に金を払う必要があるのか」という事を改めて考え直したほうがいいでしょう。

今回の症例の方は、まだ50歳で仕事もしなければいけない年齢でした。



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by shinyokohama-fc | 2018-11-01 12:17 | 治療
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