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ドネぺジルを安易に服用しない

ここ1年くらい、新患 (初診)患者さんに見られなかった、ドネぺジルの不適切処方・服用被害症例を時々見かけるようになりました。

症例1) 68歳男性
2~3年前まで会社に勤務していたが、30年前から糖尿病があり、目がかなり悪くほとんど見えないので、伝い歩き。
動作は遅くなくて普通。幻覚は訴えない。事実上独居で、大酒家で飲み歩く
状態で、有名病院の認知症科?からドネぺジル5mgが処方されている。
そこでは「レビー小体型認知症 (DLB)」と診断されているらしい。
詳しい診療情報は届いておらず、なぜDLBと診断したのかは根拠が不明。

まずドネぺジルに限らず、抗認知症薬は、本人管理が禁止されています。
認知症の患者さん自身に服薬管理は困難で、誤服薬の危険があるからです。
独居で認知症の方にどうしても抗認知症薬を服用させたければ、誰かに責任もって管理させて毎日訪問させて服薬させるしかないわけですが、現実的にそれは難しいので、どこかホームか施設に入ってもらうしかないわけですが、そうまでして服用する価値のある薬なのか?という事を考える必要があります。
それに加えて、この症例の場合は、大酒家で毎日飲み歩いているので、そんな患者さんに神経系に興奮作用する薬を処方すること自体が論外な訳です。
有名病院の認知症科ではそういう患者背景を検証することすら一切せずに、ただ病気の診断がDLB?だからドネぺジルを処方しとけばいいという事なのでしょうか?

症例2) 79歳男性
3年前から左手のふるえ、話しにくいという症状があり、2年前に総合病院の「神経内科」を受診。症状による操作的診断から「パーキンソン病」と診断されて、レボドパ配合剤100mg×3で治療、その後、プラミペキソール1.5mgが追加されて日中の眠気で中止。今年から「物忘れ」が目立ってきたため、ドネぺジルが追加されて、8mgまで増量されたそうです。さらに近所の開業医からゾルピデムとかエチゾラムが処方されていたようです。
ドネぺジル開始してから、夜間のせん妄?による徘徊、異常行動、反響言語が現れたそうです。
ご家族が、現在の診断、薬物処方を不審に感じ、当院へ転院されました。

診察では、時計描画テストでクロージング現象あり、図形模写もかなり小さく、ベッド上の動作も緩慢で拙劣でした。一見「パーキンソン病+認知症」かと思いました。ただし、現在の薬物が効いているようには思えなかったので、診断見直しのため、レボドパ配合剤とドネぺジルは少しずつ減らしてから、中止としました。中止による病状の悪化は確認されませんでした。

2回目の診察では大声で突発的に話す、明らかな反響言語があり、同じフレーズを繰り返し言いました。ふるえは動作時に出現して静止時にはなく、MMSEでは15点/30点でした。何よりも臥位から立位での起立性の血圧低下が全くみられず、PDDやDLBらしくないと感じられました。

DLBに最も親和性のある、リバスチグミンを少量より開始しましたが、ごく少量1.125mg~2.5mgでも動作が急激に悪化するという奇異反応が確認されたためすぐに中止しました。

これはおかしいと感じたため、MIBG心筋シンチグラフィーの検査を近隣の医療機関に依頼しました。
結果は「集積低下なし」心臓交感神経の脱神経はなかったという事です。
つまり「進行性核上性麻痺症候群のパーキンソン類似タイプ(PSP-P)」と診断しました。除外診断のための検証が必要な難しい症例でした。

進行性核上性麻痺症候群(PSPS)については、次回のブログでくわしく書きたいと思いますが、この症例のように「パーキンソン病+認知症 (PDD)と誤診されているケースが多いです。以前から何度も言っているように、ドネぺジル、リバスチグミンのようなアセチルコリンの分解を阻止して増やす薬は禁忌です。最近はガランタミンも合わない症例が多い事を知りました。

PSPSに使っていい神経系作用薬は、アマンタジンだけだというのが、小生の最終的な結論です。

ここで言いたかったことは、専門医が十分な鑑別診断も行わず、認知症とみれば、安易にドネぺジルを処方したがるのが問題なわけです。
動作歩行に問題のある人はドネぺジルを服用すべきではありません。
薬剤性パーキンソニズムの原因薬剤だという事を忘れずに。
特に進行性核上性麻痺症候群 (PSPS)の場合は症例によって深刻で急激な悪化が見られますので、要注意です。


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by shinyokohama-fc | 2018-11-22 18:43 | 治療

認知症の「陽性行動心理症状」がテーマ

12月2日(日曜日)「第1回、脳神経変性疾患研究会」が
品川シーズンテラスの3階で開催されます。
参加者は医師、看護師、薬剤師にしています。
今回から始まる研究会ですが、初回は「認知症の陽性行動心理症状」がテーマです。私以外の3名の先生方に30分の短い講演をお願いしています。それらの講演を基調にして質問や討論の時間をとります。

1つのテーマで4人が話すというのは恐らく珍しいのではないかと思います。
同じテーマでも意見や考え方が様々で異なるのは当たり前のことで、それを前提にした研究会で、多様性を重視したいと思います。
今回は時間の都合で、ディスカッションの時間が30分と短くなってしまいましたが、参加された先生方にはできるだけ自主的に意見を言ってもらいたいと考えております。

小生の講演内容ですが、抗精神病薬の限界についても症例を提示しながら、説明しようと考えています。
高齢女性の脱抑制タイプの老年認知症の方々にクロルプロマジン(ウインタミン🄬、コントミン🄬など)を処方されて2年以上継続したが、その後どうなったか?2症例を提示します。



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by shinyokohama-fc | 2018-11-19 12:36 | 治療

週刊現代記事の補足説明


今週号の「週刊現代」「医療大特集 知っているのと知らないのでは大違い」という記事の取材に答えました。
週刊誌の記事という事もあり、紙面の都合などの事情で、編集でコメントが短縮されています。

この記事を読んで、このブログを見ている人もいると思いますので、この記事における、私が答えているパートについて誤解を招く部分もあるかと思いましたので、ここで補足説明をしておきたいと思います。

まず156ページ「糖尿病のスルホニル・ウレア(SU)薬について」
「SU薬は効果が強すぎるため、血糖値が下がりすぎるのです。低血糖になれば、脳神経にも影響が出て認知症のリスクも高くなります。」
小生がまだ20年以上前の研修医で病院勤務していた時代には、インスリン以外の薬はメトホルミンとこのSU薬しか存在していませんでした。その後の20年で糖尿病の治療薬として、様々な新薬が続々と上市されました。
研修医時代に、救急外来において、SU薬服用中の高齢者において、遷延性の重度の低血糖による意識混濁の症例を多数診療する機会があり、その多くがインスリンではなく、このSU 薬を服用していました。いくら糖液を大量に注射しても血糖が全く上がらず、二度と意識が戻らなかった事を今でも昨日の事のように覚えています。特に高齢者では無症候性の低血糖を繰り返して
認知機能低下やせん妄(軽度の意識障害)に至る事例も少なくないようです。
糖尿病学会専門医の講演会などでも近年はこの薬は低血糖リスクが最も高く、膵臓を疲弊させやすいので、他にリスクの少ない新薬が数多くある現在では推奨されなくなりました。

157ページ「高コレステロール血症;クレストール、リピトール」
「米国食品医薬品局(FDA)は、高齢者が服用し続けると認知機能が低下すると注意喚起している。コレステロールを薬で下げすぎると筋肉も衰えていくので注意が必要です」
小生は、若年~中年で家族性と思われる、高コレステロール血症の方々には、これらの薬(スタチン)は処方しています。スタチンの普及により動脈硬化が予防されて、動脈硬化性の脳梗塞や心筋梗塞・狭心症は減少しているのは事実です。しかし、一方で高齢者、認知機能低下、認知症においては、MMSEスコアがスタチンの中止によって上がるというのも事実です。
FDAがこの発表をしたのが、2012年、最近は海外の認知症の専門医の間では、スタチンで認知機能が低下するというのは常識となっています。
それだけではなく、高齢者、特に女性においては末梢神経や筋肉も衰えてくるので、いわゆるフレイルを誘発するケースも多いのではないかと推定されます。

157ページ、「痛み;トラムセット」
「トラムセットは膝や腰が痛い人によく処方されるが、高齢者は意識障害や痙攣を起こすこともある」
「トラムセット」というのはトラマドールとアセトアミノフェンの配合剤です。問題なのは「トラマドール」であり、トラマドールの単剤はトラマール、ワントラム(徐放剤)という商品名で発売されています。この薬は麻薬および類似薬のカテゴリーに入っていて、オピオイド(準麻薬)と呼ばれる薬です。薬の性質上、高齢者とか重度の脳疾患後遺症の方が内服すると、場合によってはとんでもない副作用が出てしまいます。開業当初に、この薬で深刻な意識障害をきたしていた方が、家族が「レビー小体型認知症」ではないかと疑ってわざわざ横須賀から来られたという事がありました。つい最近も、90歳の認知症の方にこの薬が処方されて、ひどい意識障害と痙攣を起こしていたケースを見た事があります。

158ページ
「マイスリーは米国で「せん妄(幻覚)が出る上に依存性がある」と大きな問題になりました。私の患者さんでも、せん妄が出た人は服用を中止しました。ほとんどの睡眠薬は依存性が強く、離脱するのが難しいです(以下略)」
最近は後発品が多いので、ゾルピデムという名称のほうがなじみがあるのではないかと思います。先のブログでもくわしく書いたように、パーキンソン病、レビー小体型認知症などでは、この薬は禁忌だと考えています。このような病気でなくても、80歳以上の高齢者では、この薬によって夜間の幻覚を伴うせん妄、レム睡眠行動異常のような症状が誘発されやすいので危険です。短時間で効果が切れるので、薬効が切れてからが問題になりやすいのです。

個人的には、薬の話をするときは、講演会でも文書でも、薬の名称は「一般名」で統一するようにしています。
決して、製薬会社に対する誹謗中傷ではなく、副作用を正しく知っていただく事が最も大事ではないかと考えています。
そういう意味では週刊誌の書き方は、やや煽情的であらぬ誤解を招きかねないのではないかと心配になることもあります。


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by shinyokohama-fc | 2018-11-02 12:38 | 治療

プレタールとシロスタゾールの違い

シロスタゾールという薬。
大塚製薬から、プレタールという商品名で発売されてから、かなりの年数が経過していますが、いまだに繁用されている薬です。

抗血小板作用、血流増加作用、内皮機能改善・保護作用、血管平滑筋細胞増殖作用が公式には示されています。

1)脳梗塞(心原性塞栓症を除く)発症後の再発抑制
2)慢性動脈閉塞症に基つく潰瘍
が保険適用であるが、多くは1)「脳梗塞」の病名で使用されています。

高齢者の場合は、MRI検査をすれば、大なり小なり、微小血管障害による
「ラクナ」と呼ばれている梗塞後変化が確認されます。
この「ラクナ」が基底核で増加すると「パーキンソニズム(動作緩慢・歩行障害・下肢の筋強剛)」が現れやすくなり、皮質で増加すると「認知症」が現れやすくなります。
そのために「ラクナ」を予防する必要性は意義があります。

10月21日に一緒に講演させていただいた、平川先生は700例を超える「認知症」の症例に使用し、脳血管性認知症 (VD)で50%、レビー小体型認知症(DLB)で45%、アルツハイマー型認知症 (AD)で30%の改善率があると著書 (177ページ)で示しています。

シロスタゾールはホスホジエステラーゼ(PDE)3活性を選択的に阻害して脳血管を拡張させて、脳血流を増加させる作用があるようです。
PDE3活性阻害により、脳神経細胞内にある、cAMP 応答配列結合タンパク(CREB)のリン酸化が促進されて活性化し、大脳皮質が関与した高次脳機能 (認知機能)を改善させると言われています。

しかし、平川先生は、プレタール(先発品)とシロスタゾール(後発品)の多数症例による比較検討まで実施していて、その結果によると、プレタールは有効だった症例が、シロスタゾールに変更すると効果がなくなるそうです。
それを講演で聴いて以後は、小生はこの薬に関しては先発品でしか処方しないことにしていました。

この薬のもう1つの効果に「誤嚥防止効果」というのがあり、すでに15年前にはそういう効果が報告されていました。

このたび、小生の外来に、「椎骨動脈解離後に脳幹(延髄)梗塞を発症した」50歳の男性の方が初診で2週間前に来られました。
5月初めの発症で、すでに発症して5か月半経過していました。
リハビリ病院からの紹介、後発品のシロスタゾール、100mgを1日2回(200mg/日)が処方されていました。

初診時は延髄梗塞の後遺症によって、構音障害が強く、普通の速さ、大きな声で話しができず、嚥下障害も強く、食べ物を飲み込むのに苦労しており、時にむせる状態でした。特に夜間に唾液がたくさんたまって、就眠中に3回ほど覚醒して、たまった唾液を嘔吐するという状況でした。

前医処方が後発品であったので、もしかしたら、先発品(プレタール)に変更すれば、上記の症状が改善するのではないかと考えて、患者さんにも上記の事情を説明した上で同意をえて、先発品の処方箋を切ることにしました。

2週間後、再診されて驚きました。
なんと、あれだけ話しにくかったはずなのに、別人のようにハキハキと普通の人と変わらないくらいの速さで話せていました。
嚥下も良くなったようで、夜間唾液がたまって覚醒して、むせて嘔吐するということも一切なくなったとのことでした。
患者さんが先発品薬の有難みを実感されたのは言うまでもありません。

「ここまで先発品と後発品は違うのか」という事と、プレタール(先発品)の誤嚥防止効果の凄さというのを改めてリアルに実感できました。

つまり何が言いたいかというと、後発品が先発品と同様の臨床試験をしないかぎり、有効性・安全性に関しても疑いは晴れないと思います。
シロスタゾールの後発品メーカーはいくつかありますが、あえてどの会社のものかはあえて確認していません。
しかし、こういう事例がある以上、後発品すべてに対して改めて、有効性・安全性に対して検証する必要があるのではないでしょうか?

今回は、リハビリ病院では後発品を処方されて効果がなく、当院から先発品に変更して、劇的に改善したわけです。
脳梗塞発症して6か月近く経過し、この2か月で症状がまったく変わらなかった事を考えれば、これは自然経過ではなく、先発品・プレタールの効果だと考えて間違いないでしょう。

長尾先生もブログに、抗不安剤を後発品(ジェネリック)に変更して、患者側から有効性がなくなったとクレーム言われたという記事を書いておられましたが、血圧を下げる薬でも、先発品→後発品の変更で効果がなくなったという患者さんからの声は日常的に聴かれます。

我々内科は、薬を選択して処方して、患者さんを少しでも良くしたいという想いでこの仕事をやっています。

国が後発品を推進したいと言うのであれば、先発品メーカーに後発品として発売していただく(オースライズド・ジェネリック)か、それ以外の後発品メーカーには臨床試験で有効性・安全性を改めて証明させるという事をしていただかないととても納得できません。

医者は信用して薬を処方できないし、患者さんは信用して薬を服用できないのではないでしょうか?
後発品を推進する前に「効果のはっきりしない薬に金を払う必要があるのか」という事を改めて考え直したほうがいいでしょう。

今回の症例の方は、まだ50歳で仕事もしなければいけない年齢でした。



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by shinyokohama-fc | 2018-11-01 12:17 | 治療
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