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高齢者に純粋なアルツハイマーは少ない

先日、高田中央病院が主催している、「みんなの実践セミナー」という医療者向けのセミナーで、小生が講演をさせていただきました。
認知症治療薬の1つである、リバスチグミンの使用経験とそれに関連した知見について話をさせていただきました。
講演後の質疑応答の時間では、予想に反して6~7名程度の質問者から1人2~3もの質問があり、そちらの方が大変でした。
今回話した内容は「高齢者には純粋なアルツハイマーは少なく、多くは血管型、DLB、AGD、PSPなどの混合型であるので、リバスチグミンは用量を加減して使用せざるをえない」という内容でした。「まったく初めて初めて聞いた内容だ」という感想も多くいただきました。

認知症専門介護に携わる会社が定期的に実施している研修会(セミナー)の依頼があり、10月14日(日曜日)にも「認知症のさまざまな症状に対応した適切な薬の使い方」というテーマで川崎市産業振興会館で13時から講演をする予定です。もしご興味のある方はお越しください。
問い合わせ 0120-326-310 (デイサービス&ショートステイふるさと)

「認知症」をテーマにした医療者向けの通常の講演では、アルツハイマー認知症(純粋型)の事だけを対象にした内容しか話されません。
認知症の大多数は「アルツハイマー型認知症」である事が前提であり、中核症状と周辺症状があるとかいう判で押したような話です。

小生がこの4年間で外来で診てきた「変性型認知症」の症例のうち、純粋なアルツハイマー型認知症、あるいはその前段階の軽度認知障害(MCI)と推定される症例はおそらく20%くらいしかなく、非アルツハイマー(FTD (SDが多い)、DLB、PDD、PSPS、CBS、AGD)が80%でした。
その傾向は75歳以上の後期高齢者に強く、特異な精神症状や動作歩行障害を伴う症例が大多数でした。
11年前に発表された、ブレインバンクの高齢者・変性型認知症の連続剖検でも、すでにアルツハイマーは30%前後しかないようです。

それゆえ、非アルツハイマーについて猛勉強せざるを得なかったこの4年間でした。PSPSやCBSの異型病型もすべてのバージョンを診てきました。非アルツハイマーの多くは「認知症」というよりは「神経難病」であり、決まった治療法もない中で苦労の連続だったと思います。

そういう実地臨床をやってる者からすれば、アルツハイマー型認知症(純粋型)だけを前提にした講演というのは、あまりにも現実から乖離していると言わざるをえないからです。

特に高齢者は純粋型アルツハイマーはきわめて少ない(おそらく20%以下)状況で、アルツハイマーであっても混合型、むしろ非アルツハイマーの方が
多いのが現実です。

つまり、多くの非アルツハイマーの症例にリバスチグミンなどの認知症治療薬が処方されているというのが現実なのではないかと思います。


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by shinyokohama-fc | 2018-06-30 12:35 | 治療

4種類以上の多剤併用処方に科学的根拠なし

昨日(6月17日)は、AP品川で13時から、講演会を行いました。
「パーキンソン病と認知症 その多様性と薬の使い方の違い」
事前申し込み制でしたが、130名前後の方々に来ていただきました。
来場していただいた皆様、本当にありがとうございました。

今回の講演では、総括的な話として
「パーキンソン病に対する4種類以上の多剤併用にはRCT(ランダム化比較試験)は実施されておらず、エビデンス(科学的根拠)はない」
「多種類の薬剤服用によって、副作用の危険率は指数関数的に増える」
という話もしました。

6月18日の、長尾和宏先生の、Dr和の町医者日記には
「なぜ、薬漬け医療がいっこうに治らないのか。だから賢い患者さんになるしかない」と書いてありました。
私もそういう目的で、今回の書籍を執筆し講演会もしています。
パーキンソン病の薬漬け医療を止めるためには、賢い患者さん側になってもらうしかないからです。

パーキンソン病診療ガイドラインが今年改定されました。
「治療ガイドライン」ではなく「診療ガイドライン」に変わっています。

ガイドライン作成している、キー・オピニオン・リーダー(KOL)の先生の1人は、こう述べています。
「患者背景は1人1人異なりますので、一律にこれに従って治療方針を決定することはできません。ガイドラインは、最適な治療を選択する際の手がかりの1つであり、妄信的に従うことは避けていただきたい」
「パーキンソン病患者の多くは70歳以上の高齢者であり、今後もその数は増加すると予想されますので、高齢者のエビデンスを蓄積し、高齢者に焦点を当てたガイドラインを作成していく必要がある」

つまり、「今のガイドラインは高齢者に焦点を当てたガイドラインではないので、特に高齢者の場合は個別化対応を意識せずに、妄信的に従うとかえって混乱を招く」ということでしょうか。

例を挙げると75歳以上の後期高齢者に徐放剤ドーパミンアゴニストを高用量で処方されているというケースがあります。多くの症例ではレボドパ、ドパミンアゴニストだけではなく、ゾニサミド、セレギリン、その他もろもろの薬が追加されています。

今から15~20年前にドーパミンアゴニストが学会を挙げて強力に推進されていた時代がありました。徐放剤(1日1回タイプ)が出た時は大物KOLの先生方がこぞって徐放剤を推奨していたのを覚えています。
しかし、小生のかかりつけのパーキンソン病患者を速放剤から徐放剤へ一斉に変更した結果、ほぼ全員に奇異反応(症状が悪化してしまう)や副作用が出てしまい、患者さんには「元の速放剤に戻してくれ」と言われました。
小生はこの時から、学会KOLの言う事を妄信するのをやめました。

一番問題なのは、科学的根拠のない4種類・5種類・6種類・7種類というパーキンソン病治療薬を同時に使うことを規制する保険医療におけるルールが何もないという事ではないかと思います。

薬の種類が多いという事は決して歓迎すべき事ではなく、不適切な処方が行われる確率が上がるという事だと思います。



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by shinyokohama-fc | 2018-06-18 12:51 | 治療

エビデンス治療のパラドックス


エビデンスに基ついた医療(EBM )とは何か?

ランダム化比較試験(RCT)、無作為に抽出した患者群において、実薬とプラセボ(偽薬)の比較試験を実施して、有効性と副作用(安全性)について、公正な臨床評価を行うというものです。

RCTには平均的な患者サンプルが選択される傾向にあり、異質性の強い症例(たとえば、ベースに顕著なアスペルガー症候群や精神疾患、相応の内科疾患などが併存する症例)は除外されます。

現在のEBMというのはRCT のみで安全性・有効性が保障された治療のみを使いましょうというやり方です。

「EBMのある事だけをする、EBM のない事は一切しない」という主義の
臨床医は実際少なからず存在します。

小生も、日本の大手製薬会社が開発し販売している、シロスタゾールという薬を処方していると
「この薬は日本以外、北米などではEBMがないから使わないように、アスピリンなどを使うように」と上司から説教された事がかつてありました。

EBMのある事だけをする臨床医(EBM原理主義者)というのは、
1) 世界的(海外で)EBMが証明された薬しか治療薬として認めない
2) RCTが不可能な漢方薬は治療薬として認めない
3) 日本だけでRCTで有効性が認められた薬も認めない
という事になります。
「信頼性の高いRCT証明=科学的根拠」であり、それ以外は治療薬として一切認めない、自らも処方しない。という事です。

小生から見て、EBM原理主義を遵守する立場の医師というのは、学会の幹部、理事、指導医または、大学病院の教授・准教授・講師などいわゆる指導的立場にある臨床医だと思います。
何故ならその分野において指導的立場にある臨床医が科学的根拠のない医療を推奨・実践するというのは、科学者として到底認められないからです。

最近「日本における抗認知症薬の年間総処方量の47%を85歳以上の高齢者が占める」というニュースがありました。
当然ながら、85歳以上の認知症患者に対しては、RCTは実施されておらず、抗認知症薬のEBMは確立されていません。
したがって、EBM原理主義者は、85歳以上の高齢者には、抗認知症薬は処方するべきではない。という事になります。
もちろん、EBMのない漢方薬(たとえば抑肝散)などを自ら処方したり、雑誌誌上で推奨したりする事もありえない事になります。
しかし、実際はどうかというと、堂々と処方してるようですね(苦笑)。

パーキンソン病の治療において、EBM(世界的)のない治療法というのは実は数えきれないほどたくさんあります。代表的なものだと、

1) レボドパ配合剤の少量・分割投与(RCTは実施されていない)
2) イストラデフィリンの処方(日本国内の製薬会社の臨床試験のみ)
3) 3種類以上の治療薬の併用(RCT での証明が不可能)

つまり「EBM 原理主義では、パーキンソン病の治療はほとんどできない」という事になります。

実際に、
① レボドパ配合剤を1回量150mg、1日3回で処方する主義の臨床医
② イストラデフィリンを処方しない主義の臨床医
は少なくないようです。
①の場合、多くは血中・脳内ドパミン濃度の乱高下がおこり、ウェアリングオフとジスキネジアで大変になってる事が多いようです。1回量を100mg以下、1日5~6回にすれば解決する事が多いようです。
②の場合、ドパミン作動薬を5~6種類併用されている事が多く、実際には副作用ばかりで、全く効いていない事が多いようです。併用薬のうち1~2種類を中止・減量し、イストラデフィリンを追加すれば解決する事が多いようです。
ドパミン作動薬を4種類以上使っている時点で、EBMではありませんし、安全性や有効性の保障はゼロで、副作用リスクが何乗も増加するだけです。
しかし、実地臨床ではEBMだけでは治療は困難です。
このような話も、6月17日の品川の講演ではする予定です。



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by shinyokohama-fc | 2018-06-04 18:34 | 治療
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