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ドパミン阻害剤で悪化する共通項

最近、「パーキンソン病」「パーキンソン症候群」という病名で健康保険適応の検査となった核医学検査として、ドパミントランスポーターシンチグラフィー(通称・ダットスキャン)というのがあります。主として本態性振戦とパーキンソン病、アルツハイマー病とレビー小体病(DLB)の鑑別ができる検査といわれています。ただしピックコンプレックスと呼ばれている疾患群であるCBD/PSP(CBS/PSPS)でもレビー小体病と同様に両側の線条体のドパミン集積が著しく低下しています。それゆえこれらの3つの疾患群ではすべて元々ドパミンが枯渇状態にあるわけです。こういうドパミンが枯渇状態の疾患に対してドパミン阻害作用の薬剤を処方するとどうなるか?当然のごとく動作歩行は悪化するだけでなく、仮性球麻痺がひどい場合は嚥下障害、呼吸筋麻痺を引き起こします。私が診てきた症例の印象としては、DLBよりもCBD/PSPのほうがドパミン阻害剤で症状が悪化する程度がより強い傾向にあると思われます
CBS/PSPSは「ピックコンプレックス」かつ「ドパミン枯渇症候群」です。そういう疾患群が少なくないという事を臨床医の多くが知りません。認知症専門医・神経内科専門医を名乗っている医者すらほとんど知らないのではないか?かく言う私もつい3~4年前までは全く知りませんでした。CBS/PSPSの症例を1年で50例以上診たからこそわかったのです。特にアセチルコリン賦活作用の強力な薬剤はアセチルコリンードパミンのバランスに影響してドパミンの相対的低下をもたらし、錐体外路症状(パーキンソニズム)増悪させる事が懸念されると考えられていて、実際の私の臨床経験でもそうでした。やはりDLBよりもCBS/PSPS症候群のほうが薬剤性パーキンソニズム有害事象がより深刻であるようです。加えてアセチルコリンの強力賦活によりピック症状が悪化して脱抑制・錯乱状態になり、きわめて悲惨な状態に至ります。CBD/PSPはDLBと違ってレボドパやパーキンソン治療薬が全くと言っていいほど効かないため、ドパミン阻害剤による有害事象に対しては解毒治療しか方法がないわけです。
CBS/PSPSとDLBの鑑別はMIBG心筋シンチグラムが有用だと言われています。前者ではMIBGの集積は正常であり、後者では著明に低下すると成書には記載されています。しかし両者の鑑別はDLBではレボドパが少量50mg×1~2でも著効しますが、CBS/PSPSでは300mg以上使用しても効果が得られないという事です。もちろん例外的なケースもあり、PSP-Pというタイプだけはレボドパが効果を示しますし、DLBの中にはレボドパやChEIなどが効かない悪性進行性タイプもあります。いずれにしても動作歩行障害系の神経変性疾患にはアセチルコリン賦活作用の強力な薬剤を使用するには細心の注意が必要であり、重度のドパミン枯渇状態が推定される病状のケースでは最初から使用を控えるべきではないかと思います。


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by shinyokohama-fc | 2016-01-23 17:25 | 治療

パーキンソン型認知症には少量アマンタジンが著効

当ブログでは以前から「レビー小体型認知症(DLB)」という呼称を用いてきましたが、軽度~中等度のパーキンソン症状が明確に存在する症例以外はともかく、パーキンソン症状が全く存在せず、むしろ動作が通常よりも速い症例でも幻視、認知の変動があればDLBだと前医で診断される症例を数多く診ました。それらの多くがピック系の意味性認知症、行動障害型FTDとして典型的な症例が多かったという印象です。私はこの2年でさまざまな症例を診るにつれてDLBという病名を現行の診断基準で診断するのは不可能ではないかとすら感じるようになりました。そもそも「レビー小体」というのは病理診断であるために、実際の症状だけで、レビー(シヌクレイン)が溜まっているのか、タウが溜まっているのかなど誰もわからないので当然といえば当然なのですが。そもそも幻視という症状1つとっても、前頭葉、側頭葉が起源のものから、中脳黒質~脳幹、あるいは後頭葉が起源のものもあると言われており多彩です。統合失調症の症状として幻視・幻聴がみられるように、意味性認知症などのピック系の疾患群、CBS/PSPSなどのピックコンプレックスでも幻視・幻聴がみられる症例は少なくないという印象です。
つまり「木を見て森を見ず」という診療が誤解を生んでいるのではないか?神経疾患の臨床診断というのは全体像を見てするべきであり、「幻視」「パーキンソン症状」とか断片的な症状だけで診断すべきではないと考えています。
今後はパーキンソン病の主要症候が存在する症例を「パーキンソン型認知症」と呼ぶようにしたいと思います。このタイプの認知症にはパーキンソン病の主要症候のうちわずかでも確認できるタイプをすべてそう呼称したいと思います。必須項目は1)動作緩慢~寡動(思考緩慢、歩行緩慢を含む) 2)歯車様筋固縮 3)姿勢異常・姿勢反射障害 4)安静時振戦とし、追加項目として1)自律神経症状(起立性低血圧、便秘、排尿障害、体温調節障害など) 2)レム睡眠行動異常とします。これらの所見がみられないものはすべて除外します。つまり私案では「パーキンソン病らしさ」があるかないかを重視し、「幻視」「認知の変動」という主観的で判断の曖昧な臨床診断を混乱させる項目は除外します。
「パーキンソン型認知症」に共通してみられ問題になる症候として「日中の嗜眠・傾眠」があります。先日、同じ日の外来にこの「パーキンソン型認知症」で継続診療している症例が4~5例集まりました。そのうち3例が前回処方したアマンタジン50mg(朝食後)が著明に効果を示しました。以前から他のどんな薬剤を使用しても効果がなかった「日中の嗜眠・傾眠」という症状に対してです。わずか50mgで劇的に効いたのは大変驚きでした。特に毎回外来受診時にいつも嗜眠状態であった60代の症例が初めて外来受診時に嗜眠状態がなかったのです。このたびアマンタジンを使用した症例は元々幻視の訴えがないかあっても軽度の症例が多かったと思われます。アマンタジンは副作用として幻覚が出やすいというのは神経系専門の人間であれば誰もが知っているほど有名な事ですので、DLBにはこれまで一切使用が推奨されて来なかったように思われます。しかしアマンタジンという薬剤は「パーキンソン病」「パーキンソン症候群」に適応があり、実際はパーキンソン病の症例においても古くはレボドパの次に選択される薬剤という位置付けでした。パーキンソン病に対してドパミンアゴニストなど次々と新薬が出たために、ここ最近の10~15年くらいはいつしかアマンタジンを使わなくなったという傾向がありましたが、少量でもこれだけの効果があるのであれば見直されるべきだと思います。個人的にはChE-Iよりも価値の高い薬剤治療だと考えます。


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by shinyokohama-fc | 2016-01-18 19:00 | 治療

薬害だらけの医療現場

新年早々で久しぶりのブログ更新ですが、おめでたくない話題で恐縮です。以下は私の知人(病院勤務Dr・神経内科)から先日受信したメールの一部引用です。
「本日から仕事初めでしたが、救急患者はゾルピデム(短時間型睡眠導入薬)飲みすぎて意識障害の高齢男性、フル二トラゼパム(長時間型睡眠導入薬)、レべチラセタム+ガバペンチン(抗てんかん薬)と神経系薬剤を多剤併用されて転倒して腰椎圧迫骨折した高齢男性、チクロピジン(抗血小板薬)を内服していて腸腰筋血腫をおこした高齢男性などなどいきなり薬害患者のオンパレードでした(苦笑)」
もともと私の診療科である「神経内科」は薬害患者が放り込まれやすい傾向にあります。薬害患者の原因薬剤が処方されるのは大半が「精神科」です。「うつ病」で精神科にかかっていて、抗精神薬を多剤併用されている患者から、手が震えるとか歩きにくいので診てほしいというケースが非常に多すぎてこちらは辟易します。
病院勤務時代も今でも一番印象に残っているのは精神科で処方されたハロペリドールやクロルプロマジンなどの抗精神薬で「悪性症候群」を起こした数々の重症症例です。抗精神薬を処方された方すべてがこのような重篤な有害事象を起こすわけではありませんが、人というのは個体差・個別差があり、1000人に1人はこのようなケースがあるわけです。特に代謝能力が低下した高齢者では抗精神薬や睡眠導入薬などの神経系薬剤を多剤併用あるいは高用量で投与された場合は高い確率で重篤な副作用(意識障害やせん妄など)を起こしえます。
一番の問題は薬を処方する医者側が薬の副作用(危険性)を十分に理解していない事です。特に神経系に作用する薬剤というのはやむを得ず、恐る恐る処方する薬です。患者側もそういう意識で薬を飲むべきです。そういう薬が数種類に増えれば脳の中で何が起こるか誰にも予測できないのです。
昨日NHKのドクターGという番組で「スルピリド(抗精神薬)による薬剤性パーキンソン症候群」のケースが取り上げられていました。一般の方が視聴する番組としてはかなりマニアックだと思いましたが、私が20年以上神経内科の外来をやっていて最も多かったのはこのケースでした。古くから胃薬としても使われていて特に精神科においてはよく頻用されている薬です。「食欲がない」という症状には特に効果があるようです。しかしこの薬を長期間内服を続けることによって、「手が震える、動作が鈍くなった、歩けなくなった」という事で神経内科の外来を訪れるケースが非常に多かったのです。スルピリドを中止しても元のように歩けるまで数か月~半年かかった症例もありました。高齢者でなくても「薬剤性パーキンソン症候群」が出やすい薬であることは間違いないようです。
最近よく診るケースとしては高齢者の側頭葉てんかんの症例に対してカルバマゼピン(抗てんかん薬)が処方されて、ふらついて歩けなくなったという症例です。100~200mgという少量でもそういう症状が出るようです。この薬はそれだけ「小脳性運動失調」を起こしやすい薬だという事です。長期内服により「薬剤性小脳変性症」を起こすことも知られており、若年時から20~30年の間内服を続けていた結果、60歳で高度の小脳萎縮、起立歩行が不可能になった症例も最近診て非常に驚きました。昨年から単独使用が可能になった新規抗てんかん剤にはこのような有害事象はないようです。
薬害は日常の臨床現場に溢れています。医療者(医者や薬剤師)の勉強不足・管理責任が欠如していると言わざるをえない現状です。神経系の薬剤は症例を選んで上手に使えば非常に有用であることは間違いないのですが、使い方がまずいために有害事象が放置されているケースがあまりにも多すぎて嘆息させられます。こういう現状を踏まえて将来的には神経系薬剤の副作用に関する啓蒙活動などを考えています。


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by shinyokohama-fc | 2016-01-08 09:25 | 治療

慢性疼痛治療薬(オピオイドなど)の深刻な副作用

ここ5~10年の間に神経痛などの慢性疼痛に対する治療薬が何種類か発売されました。特に整形外科を中心に最近よく処方されている代表的な薬剤がプレガバリン、トラマドールという薬剤です。
プレガバリンはもともとガバぺンチンという新規抗てんかん剤の前駆体です。高齢者では転倒に注意、副作用には浮動性・回転性めまい、平衡障害、運動失調、傾眠、意識消失、と明記してあります。25mgと75mgがありますが、高齢者では25~50mgでも実際はめまい、ふらつき、運動失調をきたしているケースが多いようです。この1か月だけで4~5名そういう方がおられました。同じ抗てんかん剤の古くからあるカルバマゼピンという薬も少量でかなりふらつきますので、やはり転倒リスクが高まります。
トラマドールという薬剤もアセトアミノフェンとの合剤などもありますが、オピオイドという非麻薬とはいえ、麻薬に近い薬剤ですので、高齢者においてはプレガバリン以上に同様の副作用がでやすいと思われます。実際に最近私の外来でめまい、ふらつきを訴えた高齢者全員がトラマドールかその合剤を他の医療機関(整形外科)で処方されていましたので、僭越ながらトラマドールを減量・中止を指南させていただきました。処方する医師や薬剤師から副作用の説明についてまったくなされてないに等しいという事は憂慮する事態だと考えます。こういう特殊薬剤を処方する場合は医療側からの説明責任が問われるべきでしょう。2年前に病院の整形外科でトラマドールを処方されて全身の粗大な震え(振戦)が止まらないという事で受診した患者、1年前に「DLBの意識障害ではないか?」と家族が誤解してわざわざ50km離れた所から受診した方がいました。診察すると意識朦朧状態であり、重度の脳出血後遺症がある高齢者であるにもかかわらずトラマドールを病院の整形外科から処方されていた患者がいました。
個人的にはプレガバリンやトラマドールに比べると、脳神経に直接作用しない従来のNSAIDsのほうが副作用の点に関してはまだマシだと考えます。泌尿器科で繁用処方されている旧型の抗コリン剤(プロピべリンなど)も同様でせん妄状態、意識朦朧を引き起こしやすく歩けなくなった認知症の方もいました。脳・神経系に作用する薬剤は高齢者、特に脳卒中後遺症や認知症など脳神経にハンディキャップがある患者への使用は深刻な副作用をもたらす可能性が極めて高いため、厳重な注意・観察が必要で、個人的には使用を控えるべきだと考えています。


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by shinyokohama-fc | 2015-11-13 08:48 | 治療

ベンゾジアゼピン系薬剤(抗不安薬)の問題

先日、「処方薬物の乱用・依存を防ぐ」という特別研究会を聴講してきました。講師は日常的に薬物中毒者・依存者の治療にあたっているDrで、おそらく抗不安薬特にベンゾジアゼピン系薬剤というのは一度処方すると深刻な薬物依存を生む原因となっていて、精神科はもちろんのこと内科でも頻繁に処方されているのが問題であるとのことでした。薬物依存というのは薬を摂取しないと強い不安状態に陥る精神依存、服用を中止したり減量したときに起こる身体依存、服用を継続することで効果が減弱するため、さらに強い効果を求めて使用量が増加する耐性化の3点が問題になっています。一般的に問題とされるのは、自殺企図直前の大量服用(overdose)であり、抗不安薬の大量服用しなければ自殺までに至らないケースもあるといいます。薬物依存の専門医が問題としている頻用薬剤は主としてベンゾジアゼピン系の薬剤で、エチゾラム(デパスなど)、フル二トラゼパム(サイレースなど)、トリアゾラム(ハルシオンなど)、ゾルピデム(マイスリーなど)、ベゲタミン、二トラゼパム(ベンザリンなど)です。これらの薬剤を常用している患者は複数の医療機関で上記の特定薬剤を指定して「これを処方してくれ」と初診から言ってきます。私は薬物依存を生まないという理念で仕事をしていますので、こういう申し出についてはこれらの薬物の危険性を資料を配布して十分説明した上で断るようにしています。今回の講師のDrはエチゾラムとべゲタミンの新規処方をやめようと呼びかけていました。私もこれには賛同しています。前者は幅広い適応症があり、抗精神薬扱いにはなっていない事もあってわが国では至る所で処方されており、世界的に見ても処方数量が飛び抜けて多すぎると問題視されているくらいです。我が国の保険診療システム、フリーアクセスの負の遺産と言っても過言ではないと思います。後者に関しても3種類の抗精神薬(フェノバルビタール、プロメタジン、クロルプロマジン)の配合剤であるため、死亡率が高い(死因は肺炎、不整脈による突然死、自殺企図)薬のようです。特にフェノバルビタールはてんかん専門医が使用禁止を提案しているほどの薬ですから有用性よりも有害事象がはるかに上回るという事なのでしょう。
神経内科でよく扱っている高齢者の神経変性疾患(パーキンソン病・認知症関連疾患、脳卒中後遺症、神経難病)に関しては上記の薬剤は特にリスクが高いようです。
私自身の経験で言うと、エチゾラムを常用して誤嚥性肺炎を起こした患者が過去に数名いました。最近の症例では発症して6~7年のヤール2度のパーキンソン病の70代男性が不快な喀痰貯留症状を訴えていたのですが、睡眠導入目的でエチゾラムを前医で処方されていたので、中止させて試行錯誤の上でオレキシン受容体拮抗薬に代替した結果、喀痰貯留症状は完全消失して、外来での不定主訴まですっかりなくなりました。パーキンソン病、脳卒中後遺症、神経難病など嚥下障害をきたすケースにおいてはベンゾジアゼピン系の薬剤はやはり問題が大きいと改めて再認識させられました。エチゾラムは最もやめるのが難しい薬剤だと言われていますが、私の診ている症例に関しては数例で中止が可能になっていますので、中止離脱は不可能というわけではないようです。
他の症例では60代女性で重症の神経難病(CBS)+NPH(正常圧水頭症)の方ではCBSの症状であるミオクローヌスに対して前医にて二トラゼパムが使用されていました。前医の使用量が過量だったため小刻みに減量を試みた結果、これまで問題だった嗜眠傾向と誤嚥が大幅に軽減しました。減量しすぎると粗大なミオクローヌスでやはり問題になるようです。BZ系はミオクローヌスに対しては非常に効果の高い事が確認できましたが、半面で副作用のために誤嚥性肺炎を誘発しやすいようです。特に薬剤によって日中が嗜眠状態で食事をするというのはきわめて誤嚥リスクが高いと言えます。BZ系は確かに切れ味がよく患者には喜ばれる薬なので、Dr側は「患者が喜ぶのなら」とついつい際限なく処方してしまうようですが、高齢者の肺炎死亡者が激増している遠因としてBZ系薬剤の過剰処方があるのは間違いないと思われます。BZ系に関しては特に高齢者と脳疾患・脳後遺症患者においては特に注意すべきでしょう。


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by shinyokohama-fc | 2015-10-27 12:46 | 治療

PDは薬剤依存性、PDDとDLBは薬剤過敏性

PD(パーキンソン病)は薬剤依存性、DLB(レビー小体型認知症)は薬剤過敏性。特にパーキンソン治療薬に対しては。数々の症例を経験するとそういう結論に至りました。これらの疾患は同じレビー小体病、αシヌクレイン疾患とされていますが、やはり機能性・臨床像で大きな相違点があります。
PDという疾患は進行は緩徐であり、発症年齢は様々ですが通常は発症15~20年までは動作歩行障害のみの症状で、副作用を除いて高次脳機能障害や精神症状はほとんど現れません。DLBのような薬剤過敏性もみられませんので、パーキンソン治療薬や神経系薬剤の少量投与によって顕著な副作用が出現するケースはほとんどありません。ただし発症10年前後で薬効の減退によるウェアリングオフ、オンオフなどの現象が顕著になってきます。動作歩行障害の年次進行に伴って神経内科医が治療薬を多剤併用&増量でどんどん増やしていきます。多くのPD患者は薬剤過敏性はなく、ドーパミン依存性であるため一度増量した薬剤を減量することは困難です。少しでも薬剤を減量すると、動けなくなった!と大騒ぎする方も少なくないわけです。PD患者で多剤併用薬を大幅に減らすと動作歩行が極端に悪化します。なぜなら脳が薬に依存している状態だからです。しかし経過の長い症例では6~7種ものパーキンソン治療薬が処方されるため、副作用として幻覚・妄想・せん妄・嗜眠などの精神症状が避けられない状況になります。それを回避するための一つの方法として外科的治療・DBS(深部脳刺激)があります。
2か月前から72歳女性で20年以上の長期経過のPD(パーキンソン病)の症例をみています。オンオフ現象もはっきりした症例であり、50歳前後からの発症なので本来はDBS(深部脳刺激療法)の適応ではなかったのではないかと思われましたが、前医(神経内科医)からは何故かまったくその話がなかったそうです。PDという疾患は病気の経過進行にしたがって治療薬がどんどん増えてしまう傾向があり、これらの治療薬はすべて神経系に作用するものですので、高齢化とともに多剤併用になるため、薬害リスクが高まるというデメリットが避けられないという問題があります。DBSを導入すれば、治療薬はドーパミンアゴニスト単剤(カベルゴリンなど)にすることが可能になります。この方は6~7種類ものパーキンソン治療薬が盛り付けられていました。レボドパ・カルビドパは600mg/日。前医にて副作用中和目的にドンペリドン(リスぺリドンの親戚薬、日本の治療ガイドラインで推奨されているが、フランスでは危険薬物指定)が処方されて案の定、流延と誤嚥が悪化したため介護者の判断で中止されていました。それ以外にもロピニロール徐放剤とロチゴチン貼付剤(同じドーパミンアゴニスト)が併用されていて、それ以外にもなぜかコリンエステラーゼ阻害薬(内服薬)、COMT阻害剤、ゾニサミド(元々抗てんかん剤)が処方されていました。その結果として嗜眠状態、せん妄状態となっていて、すくみと姿勢反射障害が顕著で介助でもほとんど歩けず、強制把握反応や開眼失行など著しい前頭葉兆候がみられていたため、初診時はPSPSと間違えたほどでした。私は治療薬による有害事象の要素が非常に大きいと考えて、レボドパ減量、ロピニロール中止、ChEI中止、ゾニサミド中止を指示しました。
その後は早朝起床時の覚醒が良くなり、嗜眠は大幅に軽減してしたものの、両足の疼痛が出現したため、ゾニサミドのみ再開とし、最近発売されたリン脂質系のサプリメントを推奨しました。次の診察では動作が良くなっただけではなく、強制把握反応と開眼失行が大幅に軽減していたことです。前頭葉兆候がここまで軽減したケースはこれまで記憶がなかったので驚かされました。過剰な多剤併用を少しでも軽減できるという希望が持てました。私の経験でいうとChEIなどの神経系薬剤の一部は前頭葉症状を悪化させることは間違いないようです。今回紹介した症例はやはり典型的なPDで間違いないのですが、経過が長すぎるため、大脳基底核・黒質・淡蒼球の長期の伝達障害のため、二次的に前頭葉障害が起こっていると推察されました。明らかに多剤併用による精神症状にもかかわらず、幻覚などの症状だけを判断して、DLBだと診断??されたのか患者会に入会していたようです。
典型的なDLBはすべての神経系薬剤に対して薬剤過敏性です。そのため多剤併用には忍容性がなく、ほとんどの症例でChEI、パーキンソン治療薬で副作用が出現しやすいようです。特にパーキンソン治療薬の多剤併用は重篤な副作用を誘発します。意識障害、失神、起立性低血圧、嗜眠状態などを誘発したり、幻覚・妄想などで錯乱状態に至るケースも多いです。DLBのパーキンソン症状の多くは軽度であることがわかったので、最近はあえてパーキンソン治療薬を処方することを避けています。一方で高齢でPD症状が先行して発症して4~5年以内に幻覚などの精神症状や高次脳機能障害をきたすPDDという病型があります。PDDの場合は脳幹障害と前頭葉障害が顕著な症例が多く、臨床像としてはPSPSに類似したものになります。誤嚥性肺炎や転倒などの合併症もDLBよりは非常に多く予後不良のようです。DLBもPDDも一部にChEIが全く通用しないケースがあり、むしろChEI投与により精神症状が増悪したり、動作歩行が悪化したりするケースが存在します。これらが前頭葉にタウが高度蓄積する(前頭葉が高度変性・萎縮する)タイプの悪性DLB/PDDです。ChEI反応性のDLB/PDDと比べると同じ疾患とは思えないほど経過が進行性で悪性のため現存する薬物治療はほとんど無力に近いという印象です。こういうケースの場合はがんと同じく緩和ケア中心の医療を検討したほうがいいのではないかと思います。
いずれにして薬剤反応も含めてあまりにも臨床症状に差異が大きいのが事実です。てんかんの大発作と精神運動発作くらいの違いがあります。ちなみにてんかんという疾患においては病理変化はありません。片頭痛や群発頭痛も同様です。これらの機能性に分類される症候群においては病理診断ではなく、臨床症状と薬物反応のみで評価されます。
PDやDLBという疾患というよりも症候群はそういう性質が強いのではないか?臨床現場においては変性疾患というよりも機能性疾患という意識で考えたほうがいいと個人的には思います。


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by shinyokohama-fc | 2015-10-15 11:38 | 治療

ChEI貼付剤(認知症治療薬)の超高齢者における副作用

最近、90歳前後の長寿高齢者の増加に伴い、女性の平均寿命(87歳)を超える年齢でコリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)の貼付剤の少量投与(4.5~9mg)で嗜眠傾向が出現する症例が続出していることに気がつきました。いずれも中断してみると嗜眠はすみやかに改善するそうです。80歳までの症例ではまずなかった副作用です。NMDA受容体阻害剤ではなくChEIで出現したことに驚きだったわけで、最初は半信半疑だったのですが、デイケアからの情報では他に同じ貼付剤を使用して嗜眠になっている超高齢者が複数いるとの事でした。貼付剤の導入は内服薬だと消化器症状が強いのでという理由でした。たしかに内服薬に比べると9mg~13.5mgまで他の同種薬剤に比較して副作用が少ないという印象でした。
常識的に考えて88歳以上の患者は治験の対象にはなりません。平均寿命を超えた年齢なので、他の何らかの疾患(がんや肺炎など)で死亡する可能性が高いからです。治験は純粋なアルツハイマー、つまり60~70歳の患者に行われたものですので、本来はこの薬(貼付剤)が90歳前後の患者に使用されるという事はまったく想定されていないのだと思われます。そもそも90歳前後の患者にChEIの使用がどの程度意義があるのでしょうか?冠動脈攣縮や心室性不整脈などのリスクを考慮しても超高齢者に対してはChEIの使用は慎重になるべきだと思うからです。しかし一方で前医にてChEIが処方されていたケースではよほどの有害事象がないかぎり、中止しにくいのも事実です。それは「ChEIを中止すると認知機能が極端に落ちるので中止するな」という認知症学会からの指導があるからです。
一方で年齢によってChEIの用量調整、あるいは使用を控えろという指導はまったくありません。日本老年医学会のストップ・スタートにも認知症治療薬4種は何故か含まれていません。私の印象では認知症治療薬は特に80歳以上の患者に対しては抗精神薬と同等に近い深刻な副作用事例が報告されているのが事実です。その多くが前頭側頭型タイプの疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、意味性認知症、行動障害型認知症など)のようです。しかし90歳前後の超高齢者がChEIの使用で日中嗜眠状態で食事をとれば、誤嚥や窒息のリスクになることは高齢者医療の観点からいうと明白ですので、私はこの副作用の情報があった場合は、ChEIを即座に中止するように指示しています。
個人的な印象でいいますと85歳以上の認知症?の方には治療薬の使用は難しい。それは認知症治療薬が抗精神薬・抗うつ薬、パーキンソン治療薬などと同じく劇薬系だからです。劇薬は人によっては毒物に変わりますので要注意です。薬の有害事象で高齢者が誤嚥性肺炎に至る原因はベンゾジアゼピン系か抗精神薬だと言われてきましたし、実際わが国で繁用されているBZ系の抗不安薬では特に喀痰喀出能力を低下させて誤嚥の頻度が多くなり、最悪肺炎に至るという経験が数多くありました。しかし今後はChEIの貼付剤も要注意薬剤リストに入れるべきでしょう。


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by shinyokohama-fc | 2015-10-05 17:23 | 治療

認知症に対する抗精神薬使用問題

今週8月7日、NHKニュースの中で、認知症への抗精神薬の危険性について取り上げられていました。認知症学会や老年医学会などでは「基本的に使用しない方針」とのことです。しかし、実際は県下の認知症医療センターに指定された医療機関・精神科で軽度認知障害や軽度うつ状態と考えられるケースに対して複数の抗精神薬がが投与されて動けなくなったという事例をこの1年、当院で数多く拝見しました。入院中なのでご家族だけが相談に訪れた事例もいくつもありました。一方で抗認知症薬を開始してから明らかに易怒・興奮性が悪化したという相談事例も数多くありました。私はこういう事例の相談に応じる事を繰り返すたびに、「適正に使用できないのであれば薬物治療など一切やめるべきだ」と強く感じます。薬害被害に遭われたご家族は「安易な考えで医療機関を受診し、最初から薬物療法などやらなかった方がよかった。」と後悔の念だと思います。私も1年前までは一部の行動心理症状がひどい方々に抗精神薬を処方していた時期がありましたが、最近はほとんどなくなりました。いくつかの抗認知症薬により行動心理症状を軽減できることがわかってきたからです。以下に示す私がこれまで見聞した主な抗精神薬の副作用です。
副作用出現症例は、高用量、長期処方、薬剤過敏性(DLBなど)のいずれかのようですが、力価の高い薬剤は低用量でも以下の副作用を起こしますので要注意です。
1)フェノチアジン系(クロルプロマジン、レボメプロマジン、プロぺリシアジンなど)
発熱(悪性症候群)、肝機能障害、血球減少症 、遅発性ジストニア、遅発性ジスキネジア
※動作歩行障害(錐体外路障害)は比較的少ない
2)ブチロフェノン系(ハロペリドールなど)
発熱(悪性症候群)、血球減少症、イレウス(腸管麻痺)、遅発性ジスキネジア
3)ベンザミド系(スルピリド、チアプリドなど)
過鎮静、錐体外路症状(動作歩行障害・嚥下障害)
4)セロトニン・ドパミン遮断薬(リスペリドン・パリペリドン、ペロスピロンなど)
過鎮静、錐体外路症状(動作歩行障害・嚥下障害)
5)多元受容体作用薬(MARTA;オランザピン、クエチアピン)
過鎮静、体重増加、血糖上昇
※動作歩行障害(錐体外路症状)は比較的すくない
6)ドパミン受容体部分作動薬(アリピプラゾール)
1)~5)の副作用は比較的少ない
もし安全面を最優先に考慮して使うのであれば、3)ベンザミド系ではないかと思いますが、用量に注意が必要です。副作用を起こさず使用するためには、上記のごとく副作用の特徴をDrと薬剤師が熟知し、低用量、短期間で患者側にリスクを十分に説明したうえで処方するべきだと思います。特に高齢者は心臓が悪い人が多く、抗精神薬によって心室性不整脈を誘発して場合によっては心停止・突然死を起こしうると報告されています。一方で悪性症候群も非常に危険な副作用です。20年前に救急指定病院で勤務していた時期は、1)や2)の薬剤によって悪性症候群が誘発されて瀕死状態で救急病棟に入院した患者を数多く担当しました。「なぜ薬を処方したDrが治療に当たらないのか?と怒りがこみ上げてきた事もありました。」私は誰よりも悪性症候群の恐ろしさを体験しています。例えばクロルプロマジンなどが原因で発熱している、家族も薬が原因だろう疑っているのに、処方しているDrがその副作用のことを全く知らないらしく「不明熱の原因精査が必要だと言われた」という事例がありました。このケースでは家族の判断でクロルプロマジンを中止して事なきを得たようですが、処方しているDrが薬の副作用の知識がないというのは非常に恐ろしい事だと思います。
抗精神薬に限らず、抗認知症薬・パーキンソン治療薬など神経系に作用する薬剤はすべて重篤な副作用を起こしうるリスクの高い薬です。処方するDrとそれをチェックする薬剤師は副作用の事を知っているのでしょうか?患者側に正しい副作用情報を提供しているのでしょうか?現状をみるかぎりは私からみてとてもそうとは思えません。一方で明らかに周辺のケア対応や環境設定に問題があって、それが誘因になって行動心理症状が誘発されているにもかかわらず、それを修正しようとせず、薬に頼ろうとする施設のスタッフやご家族にも問題があります。外来で短時間しか診療しないDrにはその方が普段どんな環境にあって行動心理症状が起こっているか見えないからです。「自分の処方する薬で極力副作用を出さないようにしたい」私はそういう意識で日々薬を処方しています。それでも薬剤過敏性の高齢者は多数いて、わずか少量の神経系薬剤でも副作用は出てしまいます。医療側から薬の危険性についての十分な情報提供が求められます。明らかに家族が副作用に気がついて中止を求めているのに、残念ながらその声に耳を傾けないDrが少なくないようです。


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by shinyokohama-fc | 2015-08-08 08:51 | 治療

甘草による副作用について

甘草による副作用は医師国家試験に「偽アルドステロン症~低K血症~横紋筋融解症」が長年取り上げられているほど有名なものです。私自身はこの5年で認知症高齢者に使用した4~5例において比較的重い副作用(低K血症、横紋筋融解症、心不全・浮腫)ケースを経験しました。最近はレビー小体型認知症(DLB)を早期発見しようという啓蒙活動がどういうわけか盛んに行われているようですが、高齢者幻視とみればDLBだろう(実はそう単純ではないのだが)というわけで安易に抑肝散が使われている傾向にあるわけですが、自験例で半年前にひどい心不全(労作時の息切れ)をきたした症例もあり、この薬も高齢者に使用する際にはChEIと同様に厳重警戒しながら使うべき薬だという事を実感されられました。特に心臓に持病(心不全・不整脈など)がある症例では、ChEI+抑肝散の併用という組み合わせというのは高齢者にとってはかなりのリスクを伴うと考えられます。高齢者を日常的によく診ている立場であれば誰もが知っておくべき事実ですが、「日本老年医学会」の提唱する「ストップ」のリストに加えられていないのは少々違和感があります。甘草の副作用として偽アルドステロン症は有名ですが、これは含有しているグリチルリチンに起因するものです。グリチルリチンは腸内細菌によって加水分解され、グリチルリチン酸となり、Na-K、Na-H交換の促進と進みます。この結果、第一にNaイオン再吸収が高まり血圧上昇、浮腫の出現となる。第二にKイオンの排出が亢進して、低K血症が惹起されて不整脈、ミオパチー、横紋筋融解症などが発現、第三にHイオンが排泄亢進して代謝性アルカローシスが発現してテタニーとなります。対策として甘草を含む処方を投与する時点での聞き取りが重要になります。他の治療薬、利尿薬、グリチルリチン製剤、甘草を起源とする西洋薬、インスリンの使用について正確に問診を行います。使用開始後は低K血症と血圧上昇の監視が重要となります。偽アルドステロン症による血圧上昇、低K血症、浮腫などの症状はグリチルリチン酸の1日量として300mg以上を長期連用することで頻度が高くなるそうですので、甘草1gあたり40mg含まれるので、1日上限量は甘草6gが上限とされていますが、甘草は全ての漢方薬の2/3に含まれています。ただし認知症のBPSDに頻用される抑肝散では1日量でわずか1.5gです。私が経験した重篤副作用症例でこれだけわずかな用量でも副作用が出てしまったのは何故なのか?理由としては推定されるのはDLBの薬剤過敏性、糖尿病が基礎疾患として存在した事などでしょうか?
この1年の経験でいうと、DLBらしき79歳男性の幻覚・妄想・精神錯乱状態に対して抑肝散7.5gを処方して1か月後に少し歩いただけで息切れとなり、心不全に至りました。検査値ではBNP 677.7pg/mlを計測しました。抑肝散中止後もしばらく心不全症状は遷延しましたが、ARB+利尿剤(インダパミド)を2か月継続してようやく症状軽快しました。またDLBらしき83歳女性の幻覚に対して抑肝散2.5gを処方してわずか10日で横紋筋融解症でCPKが2000以上となり、歩いていた人が下半身筋脱力でまったく歩けなくなりました。脱力症状は出現しなかったものの抑肝散5g(甘草1g/日)で血清Kが2.5~3.0前後に低下する症例は少なくないようです。また血圧上昇や下腿浮腫の悪化などは比較的よくみられるため、症例によっては減量・中止などの対応を余儀なくされた事もありました。こういった症例を何例か経験すると、認知症高齢者に甘草含有の漢方薬を処方する場合は、血圧、血清K・CPK・BNPのモニタリングが必要なのではないかとすら考えてしまいます。西洋薬の抗精神薬などに比べると重篤な副作用が少ないのは事実だと思いますが、「漢方薬は天然物で作られているから安全だ」と妄信してしまうのは誤解であることがわかります。甘草以外にも特に黄笒、麻黄が含まれている生薬は副作用に注意が必要ではないかと思います。


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by shinyokohama-fc | 2015-06-22 18:59 | 治療

釣藤散の抗認知症作用

「Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol 39 No1 2015/p36~37/釣藤散の抗認知症作用」から以下引用
富山大学和漢医薬総合研究所 複合薬物薬理学教室
当研究室では脳血管性認知症(VD)およびアルツハイマー型認知症(AD)モデル動物を用いて、コリンエステラーゼ阻害薬(タクリン)と比較し、釣藤散の薬理学的効果と作用メカニズムの解明を進めてきた。その結果、釣藤散は認知行動を改善し、学習記憶障害を予防改善し、情動障害を改善する事が明らかになった。ADおよびVDの治療ではコリン作動性神経の伝達を促進する事が有用とされる。既存の抗認知症薬ではコリンエステラーゼ阻害作用を有するが、釣藤散はムスカリン性M1受容体刺激によりコロン作動性神経を活性化した。ここから釣藤散の学習記憶障害の予防および改善作用はムスカリン性M1受容体への直接刺激が関与し、これには構成生薬の釣藤鈎が主要な役割を果たしていると考えられた。大脳皮質や海馬におけるNMDA受容体は学習記憶に重要であり、脳虚血後の神経細胞死に関与するとされる。既存の抗認知症薬ではメマンチンがNMDA受容体拮抗作用を有し、過剰なグルタミン酸によるNMDA受容体の活性化を抑制するが、釣藤散に含まれる特徴的なアルカロイド成分はNMDA受容体を非競合的に阻害することで興奮毒性を抑制し神経細胞障害を防止した。学習記憶の基本的なメカニズムではシナプス可塑性が大きな役割を担っている。グルタミン酸作動性神経のNMDA受容体とAMPA受容体が重要な働きを担っており、釣藤散はシナプス可塑性に関与する複数のメディエーターを活性化してシナプス機能を改善した。血管内皮増殖因子(VEGF)は血管新生および神経の保護・再生に関与し、学習記憶に関与し加齢に伴い低下するとされる。釣藤散はVEGF系の機能低下を抑制し、神経細胞の保護作用を示すことが示唆されている。認知症はADを中心に論じられる傾向にあるが、その原因は複雑でVD/DLB/FTDと明確に区別する事は難しい。漢方薬は多彩な成分を含み多彩な機序を有する事から、さらなる機序解明とエビデンスの蓄積により、安全・低薬価に認知症治療に貢献することができると考える。

このたび、こういう記事をわざわざ取り上げたのは、医療の進歩による長寿化により、特に女性を中心に80~90歳の超高齢者の急増の実態があります。がん、脳卒中、心疾患、肺炎などの致死的なイベントなく、健康で長寿をまっとうしている高齢女性が増加するのに比例して、さまざまなタイプの認知症が増加しています。しかし超高齢女性の多くは心機能が低下していて不整脈や弁膜症があり、肝臓・腎臓の代謝能力も低下しています。とても通常用量の抗認知症薬(西洋薬)が耐えられないという状況です。こういう人に薬を無理に内服させる事によって患者が悪化するというリスクを負わせるのは避けるべきです。たしかに漢方薬がすべて安全だとは言えません。たとえば甘草が一定量入っている薬では電解質異常(カリウム低下)に伴う浮腫・筋融解などの副作用があります。実例として抑肝散2.5g/日を10日間内服しただけで、全身の筋肉が融解して歩けなくなったという驚くべきケース(85歳女性)もあります。漢方薬では「一般に高齢者では生理機能が低下しているので、減量するなど注意すること」という記載があります。西洋薬にはこのような記載が一切ないという点に違和感を感じています。
高齢者で使用する場合は抑肝散の使用が5g/日で推奨されているように、釣藤散も5g/日という事になると思います。抑肝散よりも甘草の含有量は低いので比較的安全に使えるのではないかと思います。西洋薬神経系薬剤の欠点は配合剤がほとんど存在しない事で、どうしても薬の種類が増えがち(多剤)になってしまう問題がありますので、そういう点では元々配合剤である漢方薬にアドバンテージがあるのではと考えています。


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by shinyokohama-fc | 2015-06-06 17:19 | 治療
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