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パーキンソン病はまず運動

昨年2月に出版した書籍を読んで、受診される方がおられます。
もう1年以上経っているので、書店から撤去されたのか?と思いましたが、
書店によっては置いてあるようです。パーキンソン病というテーマで神経内科の専門医が執筆した書籍が非常に少ないからでしょうか?

受診される方の内訳は以下のどれかに分かれます。
1) 診断は合っているが、不適切な多剤処方によって、有害事象(幻覚、嗜眠、せん妄など)で苦しんでいる。
2) 不適切な多剤処方によって、効果減弱でオフ現象で苦しんでいる。
3) パーキンソン病ではないのに、不適切な多剤処方によって、有害事象に苦しんだ挙句、病気が悪化してしまった

拙著でパーキンソン病の多剤大量処方を問題だとしている理由はまさにこの
1)~3)があるからです。結局多剤大量処方というのは患者にとって何もメリットを生み出さない事がはっきりしているわけです。

最初から多剤処方や大量処方をしなければ、このような問題は起きにくいはずです。
背景としては
1)パーキンソン病の薬処方は無制限であること
2)10~20%に薬物依存性の強い体質の患者さんが存在すること
3)薬を使えば、病気が治るはずだと勘違いしていること
などです。
私が最初から診ている患者さんで、薬をほとんど増やさずに上手くいっているケースのほとんどは、自ら率先して運動している人です。つまり、まずは自ら身体を動かすことが何よりも大事なのです。

不適切な多剤大量処方を服薬している期間が長いと、修正は困難です。

通常のステレオタイプのパーキンソン病であれば、多剤大量処方というのは本来必要ないはずです。
通常の処方で効果がなければ、本当にパーキンソン病なのか?と疑う必要があります。これでもかこれでもかと薬を投入するのは病気を悪化させるだけです。
それについては、次回くわしく書こうと思います。



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by shinyokohama-fc | 2019-03-15 12:34 | 治療

パーキンソン病認知症とレビー小体型認知症、3タイプ


高齢者、70代半ばからパーキンソン病の動作歩行障害が現れたケースは、パーキンソニズム優位型DLBである確率が高いようで、近年は高齢者増加に比例して増えています。

神経内科専門医、パーキンソン病で有名な医者などの外来を受診する事が多く、不幸なことに神経内科専門医の多くが、パーキンソニズム優位型DLBのことを知らない(かく言う私も数年前まではよくわからなかった)ので、
パーキンソン病だと診断して、ドパミン作動薬を増やされます。

ドパミン作動薬は、パーキンソン病と同じように著効することは少なくて、多くは副作用による嗜眠、幻覚、その他精神症状などが誘発されます。

多くの場合、ドパミン作動薬を増量されすぎて、アセチルコリン欠乏の症状が顕性化します。つまり認知機能の低下です。このタイミングで仮にコリンエステラーゼ阻害薬を処方したとしても、過剰なドパミン作動薬を減薬しないかぎり、有効に作用することは少なく、むしろ副交感神経系の消化器症状が強く出て服薬が困難になり、八方塞がりになるケースがほとんどでしょう。

これと混同されてしまうのが、いわゆるパーキンソン病進行期の認知機能低下です。こちらは発症して15~20年経って現れます。ドパミンニューロン(ドパミンを受け渡しする神経細胞)が枯渇してしまい、大脳皮質特に前頭葉への投射不全によって、認知機能が徐々に低下してくるパターンと、レビー小体型認知症(DLB)が併発してくるパターンがあります。

前者の認知機能低下は、パーキンソン病の経過の一部であるため、比較的緩徐で、家族からみても少し判断力や注意力がなんとなく落ちてきたかなという程度で、仮に認知機能検査を実施しても、多くの場合は軽度認知障害のレベルです。

後者の場合は、顕著な幻覚などの精神症状を伴うだけでなく、睡眠・覚醒レベルの変動、顕著な視空間失認、構成障害などが見られます。一番特徴的なのはイスに正しい位置に座ったりできなくなる事です。つまり視空間認知の問題が日常生活動作に影響を与えるほどのレベルだという事です。仮に認知機能検査をしても、覚醒レベルが変動するので、点数の変動が大きいです。パーキンソン病にDLBが追加されてくるパターンの場合、多くはラッシュ経過、急速進行性です。1~2年で歩行不可能になります。

1つ目のパーキンソニズム優位型DLB は最初から本質はDLBですが、4~5年で歩行不能に至ります。
2つ目のパーキンソン病の進行期の認知機能低下というのはPDの延長で、さほど重症ではないので、歩行能力は維持されます。
3つ目のPD+DLBというタイプは、急速に進行する。これが一番重症で、短期間、1~2年で歩行不能になります。

重症度は③PD+DLB>>①DLB(パーキンソニズム優位型)>>②PD
という事になります。学会などでPDDと呼ばれているのは、PD+DLBの事のようです。私が知るかぎりではこのタイプが一番薬物治療に反応がすこぶる悪く、対症療法が通用しません。

一般的にコリンエステラーゼ阻害薬で良くなると喧伝されているDLB(アルツハイマー優位型)と比べてその重症度・予後は雲泥の差と言えます。
つまり、胃がんや肺がんと同じで、同じ病名でも病気の予後は天地の差があるのです。



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by shinyokohama-fc | 2019-03-11 18:23 | 治療

レビー小体型認知症(A)パーキンソニズム

5回シリーズでレビー小体型認知症(DLB)の症状について検証してみたいと思います。私がこの病気であろう症例を初めて診たのは今から15年前だったと思います。70代半ばの男性でした。

この病気に最初にコリンエステラーゼ阻害薬を処方。ドネぺジル3mgが認知機能に劇的に効果があったのを覚えています。
しかし、半年もたたないうちに動作歩行が悪化してきて、ついには外出中に転倒して歩けなくなりました。パーキンソニズムとしては3レベルでした。

ヤール3レベル以上のパーキンソニズムのケースでは、パーキンソニズムが短期間で悪化するという事を15年前に症例を通じて知ったわけです。
それゆえ、パーキンソニズム3)~5)のケースはコリンエステラーゼ阻害薬は
動作・歩行・姿勢・嚥下を悪化させると認識しています。アセチルコリンそのものに筋肉を緊張させる作用があるからです。メリットよりもデメリットのほうが大きい可能性が高いです。

1)動作にまったく問題がない
2)動作がわずかに遅い
3)動作がかなり遅く、すり足歩行、姿勢が悪い(前傾)
4)自力で歩けない(介助歩行)、言葉が出にくい、姿勢がかなり悪い(顕著な体幹傾斜・前屈・腰曲がり)、両下肢の膝が伸展困難で膝を曲げたまま歩行
5)歩行不可能、寝たきり

その一方で、1年前に病院から引き継いだ、精密検査の上で確定診断されている、78歳女性のDLBの方です。表情は明るく笑顔もあり、元気そう。

この方は動作歩行はまったく問題ない、パーキンソニズム1)です。起立性低血圧や便秘もなくて、自律神経1)です。幻覚も1)~2)程度です。
コリンエステラーゼ阻害薬のリバスチグミン9mgを処方されていましたが、4.5mgへ減量しています。パーキンソニズムは全く現れる気配もなく、幻覚もほとんどなく、認知機能も維持しています。たぶんドネぺジル3mgでも大丈夫ではないかと推定されます。

病院の認知症の専門外来や老年精神科の外来を受診する、DLBの症例はほとんどこのような症例ばかりではなかろうかと思います。
たしかにこういう症例にはコリンエステラーゼ阻害薬が有効だと思います。高齢者で長期間効果を維持するためには少量投与でというのは、平川先生が講演で言っているとおりだと思います。

当院の外来でDLBと診断する症例は、ほとんどが3)~4)です。このレベルになると、おそらく認知症外来や老年精神科では診ていないでしょう。

DLBのパーキンソニズムの重篤さはPDの比ではないです。2)~3)レベルだと、レボドパ配合剤少量かアマンタジン少量が有効な事がありますが、3)~4)レベルになるとほとんど効果はないです。無理に続けると幻覚が悪化するだけなのでやめたほうがいいでしょう。
それよりも薬剤性パーキンソニズムの原因薬剤を減量・中止することがまず先になります。


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by shinyokohama-fc | 2019-03-08 12:36 | 治療

ベンゾジアゼピン系薬で肺炎リスク上昇

以前、当ブログでエチゾラムとゾルピデムの問題を以前取り上げました。

このたび中国の杭州の病院で多数の肺炎症例を統計解析した結果、ベンゾジアゼピン受容体関連薬(BZRD)が肺炎リスクを上昇させるという報告がされています。
杭州というと800万人近い人口をもつ巨大都市で、12万例の症例を解析したとのことです。

結果としては、ジアゼパム(セルシン🄬)、ロラゼパム(ワイパックス🄬)、テナゼパム、ゾピクロン(アモバン🄬)で有意に肺炎リスクが高まったそうです。
服薬患者数が多いため、臨床上大きなインパクトがあると警告しています。

ベンゾジアゼピン受容体関連薬(BZRD)に呼吸抑制作用があるというのは以前から言われていたことであり、BZRDの数ある副作用の中でこれが最も重大かつ深刻であり、高齢者の肺炎による入院など医療費を上げている要因であるのは間違いないでしょう。

自身の臨床経験においても、前医からされたフル二トラゼパム(サイレース🄬、ロヒプノール🄬)が中止できずに、誤嚥性肺炎を繰り返して衰弱してしまった神経難病の方や、前医から処方されたエチゾラム(デパス🄬)を服用継続して、誤嚥性肺炎を繰り返した脳梗塞後遺症の方がいました。

ベンゾジアゼピン受容体関連薬(BZRD)は特に75歳以上の高齢者、脳梗塞・脳外傷後遺症やパーキンソン病などの神経難病の方には危険な薬です。
ただでさえ、嚥下・呼吸機能が低下しているのですから当然ですが。

こういう患者には最初からBZRDを処方しない。継続服用している患者は少しずつ減薬して中止を試みる事が大事です。

小生も過去の反省を踏まえて、最近は高齢者に新規では極力BZRDは処方しないようにしています。どうしても必要な場合はラメルテオンを処方する事がほとんどです。

日本はBZRDが過剰に処方されすぎてるのではないでしょうか?世界ではベルギーに次いで2位、アジアでは1位だそうです。
国民皆保険制度の弊害なのか?気安く睡眠薬を処方しているのが現状です。

BZRDをやめる、減らすだけで、高齢者の誤嚥性肺炎・転倒による外傷の患者とそれにまつわる医療費は大幅に減るのではないかと思います。

薬がないと眠れないという意識というのは思い込みの要素が強いため、まずは偽薬を使うなど何らかの対策を講じる必要があるのではないでしょうか?



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by shinyokohama-fc | 2019-02-28 11:28 | 治療

多剤併用を推奨する専門医?

先日、パーキンソン病の新しい薬に関する講演会を案内されたので、聴講しました。新しい薬はまだ使用経験が少ないので、何か得るものがないかと。

新しい薬と言っても、日本以外の海外の国では何年も前から標準的に使われている薬ですので、世界的には決して新しくはないのですが。

ある演者の講演の最後に症例提示があったのですが、それを聴いて愕然とさせられました。
すでにパーキンソン治療薬を7種類処方されている患者に、新しい薬を追加したら良くなっただと?すでに7種類服用している例でもこの薬は効果がある?という内容でした。
誰がこの効果??がプラセボではないと証明できるのでしょうか?
私はこの話を聴いて、大きく嘆息し、とてつもない失望感を感じて会場を退席しました。

一般的に薬のRCTで効果と安全性が証明できるのは、2~3種類の併用までです。4種類以上は効果も安全性も証明されておらず、何が起こるか想定外の得体の知れない未知の領域です。

パーキンソン病の専門を謳う専門医というのはとかく多剤併用をしたがるようです。パーキンソン治療薬が10種類もあって、保険医療においていくら併用してもOKというおかしな事になっています。
足し算処方ばかりで引き算処方という考え方は全く知らないようです。
1年前にブックマン社から出版した拙著はそれを問題提起する目的で書きました。

厚労省(国)もこのたび「多剤併用」「ポリファーマシー」への注意を呼びかける指針を出しています。医療経済的な問題だけではなく、薬の影響で体調を崩している患者があまりにも多いからだと思われます。

「多剤併用」「ポリファーマシー」の患者の予後は悲惨の一言です。
1年前から、遠方から「セカンドオピニオン」で来られた患者さんの多くのケースはそうでした。常軌を逸した「多剤併用」を10年、15年続けたあげく、神経回路・伝達がズタズタにされていたのでしょう。こうなってしまうと取り返しがつかないのです。

脳内の神経伝達というのは非常に複雑です。主なものだけでもドパミン系の他にも、セロトニン、アセチルコリン、ノルアドレナリン、ギャバなどがあり、他にも何種類もあってそれが複雑に連動しているわけです。

脳神経に作用する薬が何種類も大量に服用を続けることは非常に危険な事です。ましてドパミンだけを多剤併用でこれでもかこれでもかと刺激すれば、他の神経伝達物質や自律神経系にも支障をきたすのは自明の理でしょう。

「多剤併用」「ポリファーマシー」が良くないので、薬を減らそうというのは欧米を中心にWHOでもかなり前から言われてきた事です。

「多剤併用・大量処方」が当たり前の我が国の処方スタイルというのは悲劇という他はないのではないでしょうか?

個人的にはパーキンソン病の治療薬の効果の半分以上はプラセボ効果ではないかと思っていますので、3種類以上追加する場合は健康保険の適応外にするかあるいは偽薬を試すのでいいのではないでしょうか?



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by shinyokohama-fc | 2019-02-26 18:20 | 治療

レボドパ配合剤は対症療法薬にすぎない

「レボドパ配合剤はパーキンソン病治療のゴールドスタンダードだ」と長年専門家はその重要性を過剰に喧伝してきたように思います。しかし実際の臨床を診ていると本当にそうなのか?と疑わざるをえない症例が非常に多い気がします。

以前のブログでも書いてきたように、レボドパ配合剤のプラセボ効果とノセボ効果が疑われるような症例があまりも多いからです。
そもそも、パーキンソン病という病気自体が、特に運動症状などは心理的影響を受けやすい傾向が強くあり、特にプラセボ・ノセボ効果に左右されやすいのです。(拙著249~251ページ参照)

「New England Journal of Medicine(NEJM)」という著名な医学雑誌に今月24日号で、Amsterdam Neuroscience (オランダ)の研究グループから「パーキンソン病における無作為化遅延開始試験」というタイトルの論文が発表されました。

方法は、初期パーキンソン病を2つのグループに無作為に分けて実施され、1つのグループには、レボドパ(100mg)カルビドパ(25mg)を1日3回を
80週服用させ、もう1つのグループには最初の40週は偽薬(プラセボ)を服用させ、その後の40週で同じ用量の実薬(レボドパ・カルビドパ)を服用させ、パーキンソン病評価尺度(UPDRS)スコアで、平均変化量のグループ間差などを評価したそうです。

被験者は445人。グループA(レボドパ・カルビドパ早期開始・80週)が222例、グループB(レボドパ・カルビドパ遅延開始・40週)が223例で
UPRDSスコアもグループAが28.1点、グループBが29.3点。

結果は、グループAとグループBの双方にUPRDSスコアの上で有意差は確認されませんでした。
つまり、レボドパ・カルビドパを早く開始しても、遅く開始しても、症状の経過には影響を及ぼさないという結論でした。つまり病気の進行を抑えるという病態修飾効果はないという事が証明されたようです。

レボドパ配合剤に関しては、ウェアリングオフ現象、ジスキネジアなどの副作用がクローズアップされます。それを避けるために、レボドパ配合剤以外の薬が学会では推奨されてきました。

20年前から推奨されてきた、ドパミンアゴニスト(受容体刺激剤)に関しては病気の高齢化に伴い、65歳以上の高齢者において幻覚や嗜眠、せん妄などの精神症状の事例が続出したことが問題になり、昨年4月にプラミペキソールの医薬品安全性情報が改訂されました。

その影響もあり、近年はモノアミン酸化酵素B阻害薬(ドパミンの分解を抑える薬・MAOBI)を最初の薬として使用することが推奨されています。
その一方で薬価が高額なわりには、レボドパ配合剤に比べて患者さん自身が効果を実感しにくい薬でもあるようです。

体外から脳内で不足したドパミンを補う(レボドパ配合剤)か、すでに脳内にあるドパミンを有効に使う(MAOBI)の違いです。後者についてはコリンエステラーゼ阻害薬と似たところがあります。

いずれにしても、対症療法薬である事に変わりはなく、有効性が実感できなければ、デメリットがメリットを上回れば、中止したほうがいいというのは他の薬と同じです。薬を止めれば、病気が悪くなるわけではありません。

病気の進行や病態の経過というのは、薬を早期に服用したからメリットが得られるという単純なものではないのです。

逆に処方医がレボドパ処方に固執しすぎて逆にトラブルになるケースが増えているようです。パーキンソン病だから全員レボドパを高用量服用しなければならないという誤った考えに囚われている神経内科医も多いようです。



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by shinyokohama-fc | 2019-01-31 12:04 | 治療

抗認知症薬の適量処方を実現する会

先日、1月27日(日曜日)に品川駅前の会議室において「一般社団法人・抗認知症薬の適量処方を実現する会・第4回・特別セミナー」が実施され、小生も「減薬医が指南する、高齢者の認知症&パーキンソン病で真っ先にやめたほうがいい薬」という演題で約1時間の講演をいたしました。

くわしくは長尾先生の「町医者日記」というブログを参照ください。
http://blog.drnagao.com/
今回の記事に対してここに書かれたコメントも拝読しましたが、おおよそ内容的には賛同できるコメントだと思います。

この会の代表の長尾和宏先生が司会でしたが、今回の講演を高く評価していただいたようです。3か月前から入念に準備して当日を迎えたので、大きな仕事が終わったという実感があります。
長尾先生は「この講演をそのままテレビで放送したらいい」と仰っておられました。

内容的にはそれほど斬新な内容ではなくて、日本老年医学会が数年前から提唱している内容に沿ったものです。「高齢者の認知症にとってはクスリはリスクになりうる」というごく当たり前のことを話したにすぎないです。

この学会では他のクスリのリスクについては提唱していますが、抗認知症薬のリスクについてはなぜか一切触れていなかったので、その部分は詳しくお話しました。

特にクローズアップしたのは、「抗不安薬・睡眠導入薬(ベンゾジアゼピン受容体作動薬BZD)」「抗精神病薬(統合失調症の治療薬)」「抗認知症薬(アルツハイマー型認知症の治療薬)」です。

抗認知症薬の処方は半数近くが、85歳以上の超高齢者に対して(2015年の調査では47%)のものですが、その一方で、85歳以上の超高齢者の認知症をきたす神経変性疾患(変性型認知症)」のうち、純粋なアルツハイマーは少なく、むしろアルツハイマー以外のほうが多いという現状をお伝えしました。その中で現行の抗認知症薬の使い方が果たして適切なのか?という問題提起をしました。

このブログで何度も書いてきましたが、特に心臓系の副作用(心室性不整脈、徐脈性不整脈、急性冠症候群、心不全)のリスクを考慮すれば、特にコリンエステラーゼ阻害薬の使用は超高齢者には極力控えるべきだという私見を述べました。

個人の体質(遺伝子多型)によって薬剤に対する反応はものすごく個人差が出るので、たとえ、コリンエステラーゼ阻害薬、抗精神病薬、BZDを服用しても何も問題が起こらない超高齢者も少なからずいるとは思います。

しかし「誰が問題が起こりやすく、誰が問題が起こりにくいのか?」というのを判定するツールがまったくない現状において、高齢者が劇薬を服用するにおいて、個人差を無視した、エビデンス至上主義に当てはめてしまうのは非常にリスキーであると言わざるをえません。

つまり「どんな薬であっても服用してみなければ結果はどちらに転ぶかわからない」のが実地臨床では現実的な問題なのです。

それゆえ、特に薬の代謝能力が著しく低下した高齢者においては、「薬は慎重に処方・服用する、できれば必要最小限にする」というのは当たり前のことではないでしょうか?
それはアルツハイマー病やレビー小体病を長年わずらって、正常な神経細胞(ニューロン)が残りわずかになった進行した段階の患者でも同じことが言えるのだと思います。

病態修飾の根治的な治療薬ではなく、対症療法薬でしかない薬においては病気が進行すればむしろ減薬したほうがいいのです。


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by shinyokohama-fc | 2019-01-29 11:48 | 治療

パーキンソン振戦型。ガンマナイフ>>薬物治療の1例

「振戦型」のパーキンソンというのがあります。これは前回紹介した「無動型」とはまるで違う臨床像です。振戦は手や足のふるえのことです。
パーキンソン病は100通りくらいあると言われてますが、「振戦型」はおおよそ1割前後(10人に1人くらい)だと言われています。
振戦と無動が同じ程度に混在しているのは「通常型」と呼ぶことにします。

過剰な運動(手や足のふるえ)が制御できないという症状が強くて、必要な運動ができないという症状は目立ちません。それゆえ普通の人と変わらないくらいの日常動作と歩行レベルを維持している人がほとんどです。逆に無動型のほうはふるえはないかごくわずかなことが多いです。

無動型では動くために不可欠であるレボドパ配合剤も、振戦型では効果を実感できない人がほとんどで、無動型や通常型と同じレベルで増やしてしまうとかえって副作用が出てしまう傾向が強いようです。

昨年から通院してる方で、26年目のパーキンソン病で、現在は76歳男性。今から13年前の63歳の時に「ガンマナイフ」という治療を受けました。この治療を受ける以前は、薬物療法はほぼ通用せず、手足のふるえ(振戦)が猛烈にひどかったようですが、治療後はほぼ完全に止まったそうです。

最近、急病で入院したのを契機に一時期筋力が衰えたので、リハビリテーションの専門病院に入院していたそうです。なぜか、ドネぺジル5mgが処方されたり、レボドパ/ベンセラジド配合剤が必要以上に増やされたりしていたようです。パーキンソン病の病歴はかなり長いですが、問診でも診察でも病的な認知機能の低下はまったく確認できない方です。

ドネぺジルを服用する意義がまったく理解できないので自己中止。レボドパ/ベンセラシドも1回2錠で1日3回服用すると、眠すぎて意識が遠のくようにぼーとするそうなので、自己中止。つまり、神経内科医の処方している薬の必要性がまったく、患者には理解できなかったわけです。

当院を受診してからは、レボドパ/ベンセラジドも1回1錠、1日3回に変更してもらいました。起立性低血圧はあったため、ドロキシドパ100mgも同じように続行してもらう事にしました。

前傾姿勢はあるものの、姿勢反射は維持されており、ヤール2度ですくみがなく、年齢相応のスピードで歩ける状態です。
高用量のレボドパ配合剤は最初から必要ないわけです。前医でドネぺジル処方されたのは、レボドパ配合剤の過量によって、ぼーとしていたからなのではないかと推定されます。必要のない薬剤カスケードだったのでしょう。

激しい振戦というのは、薬剤治療ではまったく太刀打ちできない症状です。
多くの神経内科医はとかく、抗コリン剤とかドパミンアゴニストで何とかできると思い込んでいるようですが、両者の過量投与がせん妄などの薬害を招くことは言うまでもありません。この2種類の神経作用薬を10年も20年も長期間服用すればどうなるか?誰もが容易に想像はできると思います。

この方は、早々に「ガンマナイフ」という治療に賭けたのは英断だったと思います。保険外の自費治療(高額)であり、治療成功率も半分くらいですので、この治療を選択する患者さんは非常に少ないとは思いますが、パーキンソン病という病気の経過の長さを考えれば、激しい振戦の場合は試してみる価値はあるのではないかと思いました。

パーキンソン病はとかく薬の内服量が多く、それが長期になりがちです。服薬量・服薬種類が多く、それが長期間になると、病気が進行してからは、二次無効や様々な副作用に長年苦しむ事になります。

「薬物治療の限界」を認める、受け入れることが何よりも大事です。
それが受け入れられないから、常軌を逸した多剤パニック大量処方に傾倒してしまうのだろうと推定されます。「パーキンソン病は薬物治療ですべてコントロールできる」という誤解をしてしまわない事です。
その上で薬物以外の治療を効果的に取り入れる事が減薬につながるのではないかと思います。
症状の程度が強い場合は、脳外科的・放射線科的治療 (脳深部刺激療法、ガンマナイフ、超音波など)も選択枝として考えたほうがいいのではないかと
そう考えさせてくれる2つの貴重な症例でした。



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by shinyokohama-fc | 2019-01-28 11:43 | 治療

パーキンソン無動型、DBS(脳深部刺激術)>>薬物治療の1例

パーキンソン病になって25年経過している、81歳の女性の方です。
75歳時に脳深部刺激療法 (DBS)を受けています。

そのおかげで、今も介助なしで歩行できています。やや足元を引きずって歩くので不安定に見えますが、不思議なことにまったく転倒しない状態でした。四肢の巧緻運動動作は右側がやや拙劣で左右差がありますが、ふるえはなく、無動型だったようです。

運動症状は、DBSのおかげですこぶる良好で、オフ現象もまったくみられず、前医処方薬は大幅に減薬してレボドパ・カルビドパ配合剤150mg(50mg×3回)だけですが、この薬も必要ないのではと思うほどでした。

その一方で、この数年で認知機能低下が進行していて、椅子に正しい位置に座れない、線二等分テストでは左側ができない、時計描画では右半分しか描けない、図形模写はできないという、構成障害と視空間認知が顕著という状況でした。
さらに起立性低血圧が20~30mmHg程度ありました。前医で処方されていた、降圧剤はすぐにやめさせました。

神経内科医によるパーキンソン病の外来診察というのは、認知機能(とくに視空間認知、構成能力など)とか起立性低血圧の評価をするという事がほとんどないようです。立位の血圧が100切っているのに、アムロジピン5~10mg処方しているとかよくありますからね。本来ありえないのですが。

運動症状はずっとそれなりに安定していたのですが、2か月前から姿勢の安定性が悪化して、2回後ろ向きに転倒したということでした。
それでレボドパ・カルビドパを250mgまで一時的に増やしたのですが、
1回量100mgで服用すると眠気が強くなり、かえって転倒のリスクが増えたようです。それで慌てて150mgに戻したそうです。

DBS電池の消耗が速い傾向にあったそうです。それでDBS手術を行った病院で電池交換をしていただいたところ、元のレベルに戻ったようです。

パーキンソン病は長くわずらうと、高齢になると、全員ではないが、DLBのような認知機能低下に至るケースも多い(PDD)ようです。
認知機能低下は大脳皮質に病理変化が拡散したことによるものです。とくに大脳皮質の後半部分が起源である、頭頂葉の障害である視空間認知障害は、薬がまったく通用しない症状です。

こういう症例ではコリンエステラーゼ阻害薬は副作用が出るだけでほぼ役立たずです。私も多くの症例に試してきましたが、すべてダメでした。
むしろ副作用で身体が曲がる、傾くという厄介な姿勢異常が高い確率で出てしまいますので、ほぼ有害です。

パーキンソン病を長年わずらって、認知症が出てきたので、コリンエステラーゼ阻害薬を追加服用というのはほぼ間違いだというのが経験的に理解できます。アセチルコリンを放出するニューロンが大幅に減っている状況でコリンエステラーゼ阻害しても全然ダメなわけです。

レボドパ配合剤も同じで、ドパミンを放出するニューロンが大幅に減ってるので、レボドパとか様々な薬を入れても、ただ眠くなったり、幻覚がでたりするだけで、全然役に立たない人が多いです。

その一方でDBSは病気がここまで進行しても、運動症状には有効であるというのは驚くべきことです。認知機能低下した進行期パーキンソン病では多くはドパミン作動薬は副作用のために不耐性になっているからです。
無動型のパーキンソン病の患者はできるだけ早期にDBSを検討したほうがいいでしょう。
どう見ても無動がひどいパーキンソン病でDBSの適応ケースであるにもかかわらず、薬物治療に固執し、レボドパ配合剤を大量に服用したあげく多剤併用して何年も経過した症例の予後はおおよそ不良です。

それは、多くのケースで薬の入れすぎを何年も続けた影響で神経伝達経路が混線して修復不可能になってしまうからだと思われます。そこにコリンエステラーゼ阻害薬を投入すればさらに混線するだけです。

薬物治療というのは、病気の経過が長くなり、薬の量と種類が増えれば増えるほどカオスに陥りやすいのは間違いないようです。



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by shinyokohama-fc | 2019-01-22 12:16 | 治療

せん妄の特効薬?

私の知人から面白い症例報告があったので、ぜひみなさんに紹介したいと思います。

以下、知人から来たメールを引用します(一部編集)。

もともと軽度認知症がある94歳の超高齢者の男性、他の病院でも入院した時に大暴れして、強制退院させられたことがあるほどの患者さんです。

今回は肺炎になって、CRP(炎症反応性蛋白)20mg/dl超の重症で入院。入院中はひどく弱っていて暴れる元気もなかったのですが、点滴して元気になったら、大暴れしてしまいました。夜間の当直Drがハロペリドール(セレネース🄬)を注射してもまったく効果なし、病棟のベテランナースには「もう強制退院させたら?」と言われましたが、CRP30mg/dl超でとても退院させられる数値ではなく、病棟は大変だったとは思いますが、とりあえず翌日まで経過観察としました。

その翌日、回診するとその患者さん「昨日はすみませんでした。」と謝られるほど落ち着かれ、何があったのか?と思いました。実は看護学生が実習対応されてから、ウソのように落ち着かれたようです。

今回のケースに関しては、認知症治療薬(ガランタミン、メマンチンなど)や抗精神病薬(ハロペリドールやリスペリドンなど)よりも、看護学生の対応が勝ったということです。

認知症の高齢男性に対しては、薬にムダなカネを使う(認知症治療薬+抗精神病薬)くらいなら、週に2~3回、若い女性と触れ合える場所に行ってもらったほうがいいのではないかと思いました。

(引用終了)
今回のメールの文章を読んだ感想

今回の患者さんと看護学生は人間としての相性が非常に良かったのではないでしょうか?高齢者の男性患者さんすべてが若い女性がいいというわけではないですし、若い女性であれば誰でもいいというわけではないと思います。いつも今回のように上手くいくとは限らないと思います。

ひとかどの仕事をしていたプライドの高そうな男性が高齢化して認知症になった場合、そのプライドの高さゆえ、しばしば家族や介護者を辟易させるほどのひどい行動心理症状を起こすケースがあります。

困った家族や介護者は、安易に鎮静剤による薬剤拘束を医者に請求しがちですが、この症例のように、大変なリスクを冒して、94歳の人にハロペリドールの注射をしたとしても何の役にもたたない場合も多いです。

ハロペリドールという薬は、大昔に病院で勤務していた時に、よく入院夜間せん妄の鎮静目的で使われていたのですが、心停止をきたす危険な心室性の不整脈を引き起こしたり、悪性症候群(高熱が出て、全身の筋肉がガチガチになり、瀕死状態になる)を引き起こしたりという症例を数多く診てきた私にとっては、危険でしかないです。

それはクロルプロマジン(コントミン🄬)の注射薬でもリスペリドンの内服液でも似たようなもんでしょう。抗精神病薬というのは非常にリスクの高いギャンブルでしかないというのが私の見解です。

高齢者が急病による入院/入所など環境変化による過活動性せん妄で暴れるというのはよくある事ですが、それが今回の看護学生のように人間的対応で解決するのであれば、これほど安全な方法はないでしょう。
逆によくあるのが、看護師や介護士の対応の問題か、患者さんとの相性が悪いのか、わかりませんが、かえって暴れるケースもよくあります。

看護師や介護士といった資格のある専門職にかぎらず、プライドの高い高齢者に対して上手に対応できる才覚のある女性というのはいると世の中にたくさんいると思います。資格のあるなしにかかわらず、そういうのが得意な人に病院や施設で仕事をしてもらうのがいいのではないかと思いました。

我々にできることはただ一つ。「その患者さんが暴れるような薬は2度と使わない」ということです。暴れるような薬は他の人にとっては合う薬かもしれないが、その患者さんにとっては毒でしかないのです。


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by shinyokohama-fc | 2019-01-18 10:50 | 治療
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