人気ブログランキング |

カテゴリ:治療( 131 )


睡眠導入薬に警告

米国食品医薬品安全局(FDA)は、ゾルピデム(マイスリー🄬)、エスゾピクロン(ルネスタ🄬)、ザレプロンについて、服用後の異常行動による危険性を指摘。
新たに警告を追加しました。

66例の重篤なレベルの睡眠時行動異常が確認されたということです。
そのうち20例は異常行動で死亡
死因は一酸化炭素中毒、溺死、転倒、低体温、自動車事故、自殺
そのうち46例は過量服薬、転倒、火傷、溺水、自殺企図(銃殺)など重篤な
危険障害が報告
されています。

これらの睡眠導入薬で、異常行動を来たした既往歴のある患者については、使用禁忌を求めています。
服用後に半覚醒下での異常行動、服薬中の行動を覚えていないなどの場合は直ちに中止して、処方した医者に相談せよと警告しています。

私が主に診察している、パーキンソン病、レビー小体型認知症の患者さんは
70%くらいは、レム睡眠行動異常があります。
つまり、上記のリスクが通常よりも高い患者群と言えます。

ゾルピデムでの異常行動は自験例でも多数診ていて、数年前からは高齢者を含めて、自ら処方することはなくなりました。
他医で処方されているケースで異常行動や幻覚を誘発されているケースも多く、ゾルピデムを中止するように指示しています。
今後はエスゾピクロン、ゾピクロンなどでも気をつけるべきだと考えます。
エスゾピクロンでの異常行動の自験例がまだないのは、原則1mg処方にしているからなのかもしれません。

これらの薬はベンゾジアゼピン受容体作動薬です。以前は「非ベンゾジアゼピン」だと喧伝されて、使用量が米国でも日本でも飛躍的に増えましたが、
その分だけ、上記のような深刻な事例の報告も増えたようです。
一度服用を開始してしまうと、身体依存・精神依存が非常に強いので、なかなか中止できない状況になってしまう点が非常に厄介だと言えます。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-09-03 18:37 | 治療

抗コリン剤が著効したパーキンソン病77歳女性

今月半ばに初診で来られた、臨床的(操作的診断)において典型的なパーキンソン病だと診断した、77歳の女性の方が来られました。

6月から左下肢のふるえで気がつかれて、ふるえがストレスになってる影響なのか、食欲もかなり落ちているそうです。

診察してみると
ベッド上安静、静止時で左下肢の顕著なふるえ(振戦)、左上肢の軽度のふるえ、顕著な歯車様筋強剛が左上肢・下肢ともに確認されました。
手足の往復運動(タップ動作、開閉・回内回外運動など)は左側で手足とも著しく拙劣でした。
血圧は臥位~立位で収縮気圧(上の血圧)が20~25mmHgほど下がりますが、10回測定して、120~145で推移していました。

77歳でこれだけ顕著なパーキンソン病の運動症状があるわけですから、
おそらく神経内科医が10人いたら10人とも、レボドパ配合剤を処方する事例でしょう。

しかし、高齢女性は、レボドパ配合剤やドパミンアゴニストを使うと、想像以上に食欲が落ちます。

これらの薬を使うことによって、セロトニンに影響を与えて自律神経が不調になり、胃腸の蠕動運動が低下してしまうのでしょう。セロトニンの90%が胃腸に存在していて、日本人はセロトニンを再取り込みする窓口が欧米人よりもかなり少ないようですので。

ドンペリドンを併用して、レボドパ配合剤とかドパミンアゴニストを処方する神経内科医が多いようで、これは日本のガイドラインに推奨されていますが、ただの薬剤カスケードにすぎず、安全性・有効性が臨床試験で証明されているわけではないので、何一つ正当性がありません。

薬剤カスケードの問題というのは、レボドパ配合剤とかドパミンアゴニストがその症例にとって、どの程度毒性を及ぼしているか(副作用が深刻か)をかき消してしまうものです。ブラインドをかけるのと同じで、蓋をして副作用を見えないようにしているのと同じなわけです。

天邪鬼な私は、悩んだ挙句、トリへキシフェニジル1mgから処方しました。
認知症学会、神経学会が目の敵にしている抗コリン剤です。
本当のパーキンソン病は、ドパミンの放出は当然のごとく減少していますが、アセチルコリンの放出は過剰になっているはずです。
ふるえが強く、筋強剛も強く、左右差が顕著で、食欲が落ちている、となると、数あるパーキンソン病治療薬の中で、この薬以外はまったく頭に浮かびませんでした。

ご存知のように、学会が推奨する、専門医の皆さんが大好きな、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネぺジル、リバスチグミン)はいずれも食欲が落ちるどころか、吐き気まで催す可能性のある薬です。さらに、これらの薬は、パーキンソン病に間違って使われてしまうと、四肢の筋強剛が悪化してしまうこともありました。そのことを思い出して、逆手にとったのです。

1週間後、効果は驚くほどで、予想以上でした。
食欲が戻っただけではなく、あれほどひどかった静止時振戦(ふるえ)、歯車様筋強剛が大幅に軽減していました。わずか1mgのトリへキシフェニジル(アーテン🄬)が想定以上に著効したわけです。
往復運動はまだ左右差が確認されたので、次は2mgに増やしました。

私は近年、この世代(後期高齢者)のパーキンソン病症例に対して、レボドパ配合剤かアマンタジンを処方してきましたが、正直いって今回ほど著効したケースはありませんでした。

これぞ「原点回帰」だと実感させられました。
トリへキシフェニジルを処方している症例はありますが、わずかに10例以下です。
高齢発症のパーキンソン病の場合は、レビーと紛らわしいケースも多いですが、もしレビーであれば、間違いなく認知機能や精神症状が悪化する薬でもありますので、いいリトマス紙(試験紙)になると思います。

私見ですが、パーキンソン病(特に筋強剛(筋肉が硬い)、静止時振戦)のある
方は、アセチルコリンが過剰なことが多いので、むしろ少し抑えるくらいのほうがいいと思います。

高齢者のパーキンソン病はいずれ短期間で認知症になるから、前もってコリンエステラーゼ阻害薬を服用させておけという臨床治験をやっていたはずですが、アレはどうなったのでしょうかね?

脳を構成するアセチルコリンを伝達する神経細胞(ニューロン)がある程度減ってしまえば、いくらアセチルコリンの分解を阻害しても、何の役にも立たないですからね。

最近、進行性核上性麻痺(PSP)にトリへキシフェニジルを臨床治験を検討している?という情報を知りましたが、意図が私には理解できません。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-08-23 12:34 | 治療

薬を変えればレビー症(DLB)は良くなる?!

レビー小体型認知機能低下症(以下、レビー症)という病気は薬を変えれば良くなるでしょうか?

答えは下の写真を見れば、一目瞭然だと思います。
正確には、患者さんの病状に合っていない薬をやめて、合っている薬に変えれば、劇的によくなるという事です。

今回の症例は驚くべきことに、
コリンエステラーゼ阻害薬(ドネぺジル、リバスチグミン)は一切使っていません。使わなくても良くなりました。

78歳女性
幻覚と誤認妄想が、半年前から連日継続的に見られるようです。
夜間の異常行動が顕著で安眠できていないようです。レム睡眠行動異常。
1日のうちで注意と覚醒レベルの変化があるようです。
動作緩慢、前傾姿勢、右手のふるえなどパーキンソン病の運動症状
MIBG心筋シンチグラムでは心臓/縦隔比の集積低下

f0349413_09251950.jpg
時計描画)
数字が円から大きく離れ、内側にクロージングしていくのが顕著でした。
長針と短針を書くように指示も、全く書けず、数字を書いてしまいました。
重複五角形模写)
五角形は描けていますが、かなり小さくなっています。

かなりぼーっとした感じで、ミニメンタルステートテストをしましたが、17点(30点満点)でした。全体的に質問に対する返答がかなり遅い。
動作は全体的に遅いものの、手の往復運動に左右差はありませんでした。
体幹が左へ大きく傾斜して、前傾姿勢でトボトボと歩く
イスに座るとき、手すりにひっかかる(視覚認知の問題か?)
右手の静止時のふるえ(振戦)が顕著でした。
臥位→立位で、25~30mmHgの血圧低下がみられました。

<前医処方>
① ロチゴチン(ニュープロ🄬) 9mg/日
② トリへキシフェニジル(アーテン🄬) 2 mg 朝1回
③ 抑肝散 2.5g 朝・昼・夕3回
④ アムロジピン2.5mg 朝・夕2回
⑤ ラニチジン 75mg 眠前 1回


※パーキンソン病運動症状のふるえに対する薬としては、①②はよく使われる薬でこの量は決して過量ではなく、むしろ少ない量です。
③は幻覚・妄想を抑えるための処方だが、全く効果がないようです。

※右手のふるえは強いものの、①②で幻覚が悪化していると推定されたために減量して中止。抑肝散も効いてなさそうなので減量して中止。眠前のラニチジンも夜間の症状を悪化させているようなので中止。

<1回目の処方変更>
① ロチゴチン2.25mg/日
② ゾニサミド50mg 朝1回
③ 抑肝散 2.5g 朝夕2回
④ オルメサルタン5mg
⑤ シロスタゾール(プレタール🄬)50mg 朝夕2回


<1週間後の再診時>
変更後最初の2日は幻覚・妄想はなかったが、3日目から前と同じように復活
脈拍が異常に速くなり、動悸のため眠れなくなったそうです。本人もプレタール🄬を始めてから眠れなくなったと強く訴えてました
本質的にはまったくといっていいほど良くなっておらず、むしろ悪化?
動作レベルは以前と変わらず。ふるえは軽減。以前よりも覚醒レベルが悪くなり、ぼーっとしている感じでした。
収縮期血圧は臥位で130~135、立位で112~135でした。

応急的に、グルタチオン600mgとシチコリン500mgを点滴注射。
点滴注射後は、動作歩行も速くなり、意識がしっかりしていました。

<2回目の処方変更>
① レボドパ・カルビドパ 50mg1日2回 朝・昼
② クロナゼパム0.25mg 1日1回眠前
③ オルメサルタン5mg 1日1回夕食後

※ロチゴチン、ゾニサミド、プレタール🄬は明らかに悪く作用しているため中止。抑肝散も全く役にたっていないため中止。
※パーキンソン運動症状に代わりの薬としてレボドパ配合剤ごく少量。レム睡眠行動異常・不眠にクロナゼパムごく少量。八方塞がり苦肉の処方変更。

<2週間後の再診時 >
幻覚・誤認妄想はほとんどなくなりました。夜も眠れているそうです。
日中もしっかりした状態が続いているようです。
姿勢も良くなり、動作も速くなり、覚醒レベルも非常によくて驚きました。
右手のふるえ (静止時振戦)は相変わらずのようです。

f0349413_09253366.jpg
時計描画)
数字は正しい配列で円に沿って12まで書けています。
12→3→6→9の順に書きました。数字間の間隔がまだやや不整です。
長針・短針ともに正確に書けています。
2週間前に比べると別人のように変わっていて驚きました。
時計描画において、ここまで短期間に劇的変化したケースは初めてでした。

<<薬に関する考察>>
今回は、パーキンソニズム優位型のレビー症であり、最初からコリンエステラーゼ阻害薬を使うという選択肢は微塵もありませんでした。
この症例はすでに体軸性の筋強剛と体幹傾斜・姿勢異常が、おそらくロチゴチンによって引き起こされていたからです。
コリンエステラーゼ阻害薬を使う事で、体軸性筋強剛と姿勢異常が顕著に悪化していったケースをあまりにも多く経験してきたからです。
その数々の経験は筆舌に尽くしたいほどの悔しさとして、今でも私の頭に刻まれているからです。

レビー症にドパミンアゴニストは絶対禁忌にすべきでしょう。これだけ微量のロチゴチンですらここまでひどい精神症状が出るのですから。ロチゴチン以外のドパミンアゴニストだとさらにひどかったであろうと推察されます。

ゾニサミドは今年に入って、75歳~85歳の高齢者女性に数例処方しました。レビー症ではなく、パーキンソン病でしたが、結果はすべてNG。
高齢者女性には抑制系の副作用が出やすく合わないようです。

プレタール🄬(シロスタゾール)もやはり、高齢者女性では顕著に頻脈が出現しますが、ここまでひどいのは初めてでした。おそらく心臓がかなり悪いのでしょうか?以前も申しましたが、高齢者の女性はほとんど心不全です。
プレタール🄬は心不全には禁忌です。心不全の上にレビー症やパーキンソン病のために心臓の交感神経が脱落しているわけですから厳しいでしょう。

コリンエステラーゼ阻害薬、シロスタゾールがなくても劇的に良くなる!
これがレビー症という病気が一筋縄ではいかない奥の深い症候群であることの証左でしょう。決してステレオタイプでは通用しないのです。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-07-27 12:06 | 治療

投薬行為に対する倫理観

「鹿児島認知症ブログ」の「投薬は侵襲行為という自覚」という記事を興味深く拝読しました。
これを自覚している臨床医、患者が果たしてどのくらいいるでしょうか?

投薬をすることで診療をした気になっていませんか?
投薬をされることで診療をされた気になっていませんか?


開業当初、私の投薬が平均よりあまりにも少ないので、調剤薬局の薬剤師から不信がられた事がありました。
この薬剤師は「ポリファーマシー」の処方箋が当たり前の常識だと思い込んでいたのかもしれません。

国民皆保険制度による恩恵?によって、世界的にもここまでひどいポリファーマシーが野放しにされている国は他にないのではないかと思います。

「医療行為(投薬)は生体内に何らかの変化をもたらす侵襲行為である」
「人体という複雑系を扱うことへの怖れを忘れると薬によって患者を傷つけてしまう」


このことを多くの高齢者の患者さん(症例)が嫌というほど教えてくれます。
特に、高齢者女性の増加に比例して増えている、遅発性(Late on set)注意欠陥多動性障害(ADHD)やレビー小体型(DLB)などがその代表格でしょう。

つい最近も、レビー小体型(DLB)と推定される女性に、シロスタゾールという薬、50~100mg/日を処方し服用してから、ひどい頻脈 (110~120/分)になってしまったケースが2~3例ありました。

特に高齢者女性の場合は「投薬しなかったほうが良かったのではないか?」と思わせるケースが多いように思います。

おそらく昔は「老化現象」として素直に受け入れていたように思います。
近年は「老化現象」などと正直に言うと、反発される事も少なくない。
いつから、ここまで「老化現象」に対して不寛容になったのでしょうか??

高齢者の投薬には、メリットとデメリットを勘案すべきであり、特に慎重にあるべきではないでしょうか?

たとえば、85歳以上の患者にパーキンソン病の治療薬+睡眠導入薬など神経系に作用する薬を何種類も処方・服用するという事が正しいのか?
これが倫理的な医療行為と言えるのか?
自分の頭でもう一度よく考えてみたほうがいいでしょう。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-07-23 17:13 | 治療

クエチアピンの使い方

クエチアピンという薬、認知症の行動心理症状 (BPSD)の抑制?目的でよく使われているようです。

認知症の教科書とか講演会ではよくこの薬が書いてあります。学会が推奨?しているからか、この薬を抵抗なく処方する先生方が多いようです。

抗精神病薬の中では力価が低いため、本来の「統合失調症」に対して使う場合は、高用量が必要になります。

夜間暴れて眠らないとか、レビー小体型認知症(DLB)で幻覚が出ているとか、そういう症状に対して専門医?によって使われることが多いようです。

実際はこの薬はDLBに使うと合う症例と合わない症例があるようです。
前者は皮質型で脳幹がまったく障害されていないタイプ、後者は脳幹型あるいは通常型で脳幹網様体が強く障害されているタイプです。

クエチアピンという薬の受容体結合親和性の比率を確認すると
1) ヒスタミン受容体1 ) 30%
眠気、鎮静、肥満、認知機能低下
2) アルファ1A受容体 ) 30%
鎮静、起立性低血圧
3) アルファ2C受容体 ) 7%
認知機能改善
4) セロトニン5HT2A受容体) 7%
抗精神病作用(幻覚など)
5) セロトニン5HT1A受容体)4%
抗不安作用、認知機能改善
6) セロトニン5HT7受容体) 3%
認知機能改善
7) ムスカリンM1受容体) 2%
認知機能低下、便秘
8) ドパミンD2L受容体)0.5%
パーキンソニズム(動作歩行障害)

少なくとも上記8つの神経系受容体に作用して拮抗作用、つまりブロックする、多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)と呼ばれています。
しかし多元とはいえ、その実態は1/3がヒスタミン遮断で、1/3がアルファ遮断なわけです。
それゆえ、最も多い副作用がヒスタミン遮断による傾眠・眠気であり、次いで、アルファ遮断による起立性低血圧です。

いわゆるDLBらしい症例というのは脳幹網様体が強く障害されている、
「注意・覚醒レベルの変動を伴う認知機能障害」が顕著な症例です。
つまり、薬による有害作用がなくても日中眠気が強いタイプであり、こういうタイプは、顕著な起立性低血圧を示すことが多いです。

こういうタイプのDLBに、日中にクエチアピンを服用させてしまうとどうなるでしょうか??
ただでさえ眠いのがさらに眠くなり、血圧も下がって、立ちくらみや失神を誘発するでしょう。立位・座位・食後の低血圧が助長されるので、脳循環不全となり、覚醒レベルはさらに悪くなるでしょう。たとえDLBでなくても、75歳以上の何らかの認知機能低下症の高齢者であれば、誰でも起こりうることでしょう。

クエチアピンを1年以上継続して服用するとどうなるか?おそらくかなり認知機能が低下するのではないかと思います。もしかすると、いくらドネぺジルやらリバスチグミンやらを使っていてもまったく役に立たないのではないかと推定されます。

というわけで、私はこの薬は高齢者が長期に服用するには良くない薬ではないかと思います。
どうしても服用するというのなら、6.25~12.5mgを眠前に服用するだけにとどめ、2~3か月で中止したほうがいいでしょう。
レビー小体型認知症(DLB)の皮質限局型以外には長期的に服用してしまうと良くない薬であるというのは、病態生理的には自明の理です。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-06-03 18:33 | 治療

PSP症例、レボドパ→アマンタジンでV回復!

前医で長年「パーキンソン病」だと診断されていて、レボドパ・カルビドパ配合剤200mg×3回(1日600mg)とエンタカポン100mg×3回が処方されていて、半年前の初診時は私も「パーキンソン病なのか」と前医の診断を信用していました。75歳の男性の方です。

ただ、2回頭部を打撲する大怪我をしていて、硬膜下血種や外傷性クモ膜下血種になっているというのが気になっていました。

よく診ると、四肢よりも頸部~体幹のほうが筋強剛が強く、前後の可動域制限があるようです。目を見開いたびっくり眼であり、眼の動きは上下・左右とも制限されていました。
椅子から後ろにずり落ちて転倒することが多く、椅子に座るときもドスンと倒れこむような座り方でした。
この方にはレボドパ配合剤はまったく効果がなく、100mg×3に減量しました。
画像検査を再検査すると、中脳被蓋と前頭葉が萎縮しているのが確認できました。進行性核上性麻痺(PSP)だと思いました。

日常的に転倒を繰り返していて、歩行器での歩行もできなくなり、飲み込み時のむせ、嚥下困難も目立っていて、いよいよ病状が進行してきたかという
感じでした。日常生活動作、トイレや食事なども自分でできない状況。

効果が感じられない、レボドパ配合剤は段階的に減量して中止し、代わりにアマンタジン150mg(朝100mg昼50mg)に変更しました。
標準タイプの進行性核上性麻痺(PSP)は幻覚が出現することはめったにないので、アマンタジンは使いやすい薬です。

レボドパ→アマンタジンに変更してからは、意欲が出てきて、日常生活動作はほとんどできるようになり、足がすくまなくなり、歩行器なしで歩けるようになりました。顔の表情も出るようになり、話しかけて笑顔、大きな声で笑えるようになりました。自宅内では何もつかまらずに移動できるようです。嚥下もむせることはほとんどなくなったようです。

この病気に関しては、コリンエステラーゼ阻害薬とレボドパは病状を悪化させうることが多いので、最近は使わないようにしています。
このアマンタジンという薬は、CBSにも有効な症例が多いようです。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-05-18 12:46 | 治療

レボドパ (メネシット・マドパー)神話の崩壊

臨床医、特に神経内科医の頭には「レボドパ配合剤 はゴールドスタンダード、王道である」という公式が刷り込まれているようです。

ちなみに、レボドパ配合剤とは以下の商品名の薬です。
レボドパ/ベンセラジド
イーシードパール、ネオドパゾール、マドパーなど
レボドパ/カルビドパ
ネオドパストン、メネシット、ドパコールなど

パーキンソニズムがあれば、パーキンソン病であろうが、その他の病気であろうが、「とりあえずレボドパ配合剤を処方しておけばいい」と考えているでしょう。

パーキンソン病の国際的な診断基準には「レボドパ配合剤の顕著な効果」とあります。つまりレボドパが顕著な効果がなければ、パーキンソン病ではないと言っても過言ではないのです。

パーキンソニズムをきたすが、パーキンソン病ではない病気、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症、皮質基底核変性症に対しては、レボドパはパーキンソン病のようにうまく働きません。むしろ悪いほうに作用することが多いですので、中止したほうがいい場合も多いです。

レボドパ配合剤をやめて、何を使うかというと、それはアマンタジン(シンメトレル)です。上記3つの疾患に関してはアマンタジンが著効する症例が多いことに気が付きました。レビー小体型認知症の場合は量を増やすと幻覚が悪化することもありますが、ドパミンアゴニストのひどさに比べたら大したことはないです。

私が診ている患者さんはレボドパ配合剤が効かない症例のほうが多いです。レボドパ配合剤はノルアドレナリンを減らすのか、血圧が下がったり、眠気が出たり、特に上記3つの疾患では副作用でひどく悪化してしまうケースが多いです。
「レボドパが効かない、副作用で飲めない」と処方している神経内科医に勇気を出して進言すると、激怒されてしまうことがよくあります。
「レボドパは決してゴールドスタンダード(王道)などではない」のです。
レボドパに固執されすぎて、病状が悪化して不幸な転帰をとっているケースはかなり多いのではないでしょうか?


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-05-14 18:46 | 治療

レビー小体型認知症の横綱症例

今回は、レビー小体型認知症(DLB)の横綱!カンぺオン症例をお示します。DLBという病気は非常にレンジが広く、重症度がピンからキリまで極端に違うので捉えどころがない病気です。

私が日常的に診ているのは横綱・大関・関脇・小結くらいのランクのDLB症例ですが、世間や学会で語られてるのは、幕下くらいのランクのDLBのようですので、まるで別の病気の病気の事のように思えます。

特に病状が悪いのが、パーキンソン病(PD)にDLBが併発してきて2~3年で歩行不可能になるタイプで、レボドパ高用量、ドパミンアゴニストなどの処方がされてしまい、取り返しがつかないほど悪化する、PD+DLBというタイプが最も重症です。

今回はPDに併発しない、純粋なDLBで横綱級の症例というのはどんなものかというのを紹介したいと思います。こういう症例を知ることによって、DLBという病気の本質が理解できるはずです。つまり、薬剤過敏性・自律神経不全が重症であるという事です。

現在72歳の男性。昨年8月から不定期で7回受診されています。
遠方からの不定期受診なので、こちらから処方はしていません。通常は訪問診療医が処方しているようです。

4年前に幻覚、誤認妄想で発症したそうです。地元の精神科でMIBG心筋シンチなど検査を経て、DLBと診断されたようです。

パーキンソニズムと覚醒レベル(認知機能)の日内変動も顕著で、重度の便秘症と起立性低血圧があります。
初診時)臥位118/69(54)→立位76/50(64)76/50(64)
再診時)臥位124/86(68)→立位67/50(135) 66/54(82)
今も立ち上がると目つきがおかしくなり、開眼できなくなるようです。

レボドパ有効時間は、動作緩慢ではあるが、歩行はある程度自分でできるようです。しかし視覚失認が重症のため、正しい方向に行けず、常時誘導が必要。イスがある位置が認識できず、自力でイスに座る事は不可能です。

筋強剛は体軸優位性で、頸部~体幹に強く、四肢は軽度のようです。開眼失行もあり、横綱DLBは臨床的にPSPに近いです。

ドネぺジルを2年、リバスチグミンを1年処方されていましたが、これらのコリンエステラーゼ阻害薬によって、首下がり、腰曲がりなどの姿勢異常がみるみる悪化していく(薬剤誘因性体幹ジストニア)ので奥様が危険を感じて中止。中止後は姿勢は元に戻ったようです。アセチルコリンを補充するCDPコリン(シチコリン・サプリメント)を試すとひどい精神錯乱状態となったようです。

レボドパ配合剤(ドパミン)は著効するが、2~3時間で効果が切れると流涎と無動になるそうです。しかしレボドパの1回が50mgを超えると血圧が下がりすぎて、ふらつきが強くなるそうなので、一時は1回は25mgしか服用できませんでした。

起立性低血圧にはドロキシドパは欠かせませんが、1回100mgを服用すると興奮して暴れるそうで、1回25mgしか服用できないそうです。

シロスタゾール(先発品)は強い頭痛が出現して、意識を何度も失ったそうです。やはりこの薬は血圧変動が大きくなって合わないようです。

試行錯誤の末に現在の服薬は
レボドパ/カルビドパ 25mg×3回
ドロキシドパ 25mg×3回
ラメルテオン 8mg(睡眠覚醒リズム維持目的)
半夏厚朴湯 2.5g(流涎軽減目的)
麻子仁丸 2.5g(便秘軽減目的)
その他にも様々なサプリメントを服用しているようです。

この症例を通じて学んだことは、横綱DLBというのは、世間で言われている(教科書などに書いてある)DLBに関する医学的常識はまったく通用しないという事です。薬剤過敏性は抗精神病薬に限られた話ではなく、全ての薬剤に過敏性、つまり不耐性だという事です。

この症例には統計処理された既報の臨床試験の常識などはまったく通用しません。通用するのは、幕下か前頭の下位くらいでしょう。
幕下・前頭の症例はDLB全体の70~80%をしめるかもしれませんが、同じ基準で、小結以上のDLBに処方すると大変な事になります。

同じ病名だからと言って、全部同じマニュアルの薬を使うというのが、いかにナンセンスであるというのが理解できると思います。
台風でも900hpの非常に強い台風もあれば、980hpの弱い台風もある。
病気も自然現象の一種ですので、多様性(個別差)があるのは当たり前でそれが自然科学の本質ではないでしょうか?


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-04-04 10:51 | 治療

レビー小体型認知症 (E)自律神経不全

レビー小体型認知症(DLB)の自律神経障害のバロメーターは実は誰でも簡単に知ることができます。
臥位(横になっている時の血圧)と立位(立ち上がった時の血圧)を比較することです。血圧計さえあれば、誰でもできます。
20~30mmHg以上の起立性低血圧が確認できれば、MIBG心筋シンチグラフィーという検査可能な施設が限定の高額な検査は必要ありません。

レビー小体型認知症というと、幻覚(特に幻視)やパーキンソニズムが主症状ですので、精神科か神経内科の外来に通院します。
神経内科では多くの場合、パーキンソン病と診断されて、運動症状の治療薬が過剰に入れられてしまい、かえって不調になります。
しかし、これらの外来医が診察において、上記のような血圧変動について確認したり、測定したりすることはなく、関心すらないのではと思われます。

私の臨床経験では最も臨床的にレビー小体型認知症らしさが強い症例こそ、起立性・食事性の血圧低下が著しいのです。そういう症例は認知・覚醒レベルの変動も著しい。つまり脳幹網様体の障害も強いのです。

自律神経不全の重症度は
1)機会的、便秘・頻尿
2)連日性、便秘・頻尿
3)立ちくらみ・失神、血圧変動20~30
4)血圧変動40~50脈拍変動30以上
5)血圧変動60~70心停止リスク

特に要注意なのが、グレード3以上ですね。
なぜかというと、特に塩分と水分が同時に失われる夏場は立てなくなったり、意識を失ったりして救急搬送されるリスクが高くなるからです。

パーキンソン病の運動症状の治療薬はレボドパ配合剤を含めてこの起立性低血圧を悪化させる副作用がありますが、特にレボドパとセレギリンを併用している場合は薬剤起因性の血圧低下が起こるリスクが高いです。
一部で強く推奨されている、シロスタゾール(先発品)も特に高齢者のDLBの場合は血圧変動を大きくするため失神発作を誘発するようです。

自律神経不全の強いグレード3以上のDLB症例において、まず推奨されるのは先般ブログでも書いたようにドロキシドパ(ドプス🄬)です。
DLBの薬剤過敏性を考えると100mgだけではとても使いにくく、25mgや50mgという規格もほしい所。本来DLBには最も必要な薬だと考えます。

自律神経不全の強いグレード3以上のDLB症例においては、コリンエステラーゼ阻害薬は禁忌だと考えています。
もともとDLBという病気の一番の問題は自律神経不全であるにもかかわらず、DLBを診ている多くの臨床医はそのことを軽視(無視?)しています。
コリンエステラーゼ阻害薬である、ドネぺジルやリバスチグミンを自律神経不全の強いDLBに無神経にも使っているわけです。

血圧・脈拍の体位変動の評価は、DLBにおいて臨床上もっとも重要です。なぜなら、生命維持に直結するからに他ならないからです。
これを評価していなければ、本当の意味でDLBを診察していることにはならないと言っても過言ではないでしょう。
そのことを教えてくれるのが、DLBのカンペオン症例です。次回はこの症例を紹介したいと思います。



by shinyokohama-fc | 2019-03-30 11:05 | 治療

パーキンソン病はまず運動

昨年2月に出版した書籍を読んで、受診される方がおられます。
もう1年以上経っているので、書店から撤去されたのか?と思いましたが、
書店によっては置いてあるようです。パーキンソン病というテーマで神経内科の専門医が執筆した書籍が非常に少ないからでしょうか?

受診される方の内訳は以下のどれかに分かれます。
1) 診断は合っているが、不適切な多剤処方によって、有害事象(幻覚、嗜眠、せん妄など)で苦しんでいる。
2) 不適切な多剤処方によって、効果減弱でオフ現象で苦しんでいる。
3) パーキンソン病ではないのに、不適切な多剤処方によって、有害事象に苦しんだ挙句、病気が悪化してしまった

拙著でパーキンソン病の多剤大量処方を問題だとしている理由はまさにこの
1)~3)があるからです。結局多剤大量処方というのは患者にとって何もメリットを生み出さない事がはっきりしているわけです。

最初から多剤処方や大量処方をしなければ、このような問題は起きにくいはずです。
背景としては
1)パーキンソン病の薬処方は無制限であること
2)10~20%に薬物依存性の強い体質の患者さんが存在すること
3)薬を使えば、病気が治るはずだと勘違いしていること
などです。
私が最初から診ている患者さんで、薬をほとんど増やさずに上手くいっているケースのほとんどは、自ら率先して運動している人です。つまり、まずは自ら身体を動かすことが何よりも大事なのです。

不適切な多剤大量処方を服薬している期間が長いと、修正は困難です。

通常のステレオタイプのパーキンソン病であれば、多剤大量処方というのは本来必要ないはずです。
通常の処方で効果がなければ、本当にパーキンソン病なのか?と疑う必要があります。これでもかこれでもかと薬を投入するのは病気を悪化させるだけです。
それについては、次回くわしく書こうと思います。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-03-15 12:34 | 治療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line