カテゴリ:治療( 107 )


週刊現代記事の補足説明


今週号の「週刊現代」「医療大特集 知っているのと知らないのでは大違い」という記事の取材に答えました。
週刊誌の記事という事もあり、紙面の都合などの事情で、編集でコメントが短縮されています。

この記事を読んで、このブログを見ている人もいると思いますので、この記事における、私が答えているパートについて誤解を招く部分もあるかと思いましたので、ここで補足説明をしておきたいと思います。

まず156ページ「糖尿病のスルホニル・ウレア(SU)薬について」
「SU薬は効果が強すぎるため、血糖値が下がりすぎるのです。低血糖になれば、脳神経にも影響が出て認知症のリスクも高くなります。」
小生がまだ20年以上前の研修医で病院勤務していた時代には、インスリン以外の薬はメトホルミンとこのSU薬しか存在していませんでした。その後の20年で糖尿病の治療薬として、様々な新薬が続々と上市されました。
研修医時代に、救急外来において、SU薬服用中の高齢者において、遷延性の重度の低血糖による意識混濁の症例を多数診療する機会があり、その多くがインスリンではなく、このSU 薬を服用していました。いくら糖液を大量に注射しても血糖が全く上がらず、二度と意識が戻らなかった事を今でも昨日の事のように覚えています。特に高齢者では無症候性の低血糖を繰り返して
認知機能低下やせん妄(軽度の意識障害)に至る事例も少なくないようです。
糖尿病学会専門医の講演会などでも近年はこの薬は低血糖リスクが最も高く、膵臓を疲弊させやすいので、他にリスクの少ない新薬が数多くある現在では推奨されなくなりました。

157ページ「高コレステロール血症;クレストール、リピトール」
「米国食品医薬品局(FDA)は、高齢者が服用し続けると認知機能が低下すると注意喚起している。コレステロールを薬で下げすぎると筋肉も衰えていくので注意が必要です」
小生は、若年~中年で家族性と思われる、高コレステロール血症の方々には、これらの薬(スタチン)は処方しています。スタチンの普及により動脈硬化が予防されて、動脈硬化性の脳梗塞や心筋梗塞・狭心症は減少しているのは事実です。しかし、一方で高齢者、認知機能低下、認知症においては、MMSEスコアがスタチンの中止によって上がるというのも事実です。
FDAがこの発表をしたのが、2012年、最近は海外の認知症の専門医の間では、スタチンで認知機能が低下するというのは常識となっています。
それだけではなく、高齢者、特に女性においては末梢神経や筋肉も衰えてくるので、いわゆるフレイルを誘発するケースも多いのではないかと推定されます。

157ページ、「痛み;トラムセット」
「トラムセットは膝や腰が痛い人によく処方されるが、高齢者は意識障害や痙攣を起こすこともある」
「トラムセット」というのはトラマドールとアセトアミノフェンの配合剤です。問題なのは「トラマドール」であり、トラマドールの単剤はトラマール、ワントラム(徐放剤)という商品名で発売されています。この薬は麻薬および類似薬のカテゴリーに入っていて、オピオイド(準麻薬)と呼ばれる薬です。薬の性質上、高齢者とか重度の脳疾患後遺症の方が内服すると、場合によってはとんでもない副作用が出てしまいます。開業当初に、この薬で深刻な意識障害をきたしていた方が、家族が「レビー小体型認知症」ではないかと疑ってわざわざ横須賀から来られたという事がありました。つい最近も、90歳の認知症の方にこの薬が処方されて、ひどい意識障害と痙攣を起こしていたケースを見た事があります。

158ページ
「マイスリーは米国で「せん妄(幻覚)が出る上に依存性がある」と大きな問題になりました。私の患者さんでも、せん妄が出た人は服用を中止しました。ほとんどの睡眠薬は依存性が強く、離脱するのが難しいです(以下略)」
最近は後発品が多いので、ゾルピデムという名称のほうがなじみがあるのではないかと思います。先のブログでもくわしく書いたように、パーキンソン病、レビー小体型認知症などでは、この薬は禁忌だと考えています。このような病気でなくても、80歳以上の高齢者では、この薬によって夜間の幻覚を伴うせん妄、レム睡眠行動異常のような症状が誘発されやすいので危険です。短時間で効果が切れるので、薬効が切れてからが問題になりやすいのです。

個人的には、薬の話をするときは、講演会でも文書でも、薬の名称は「一般名」で統一するようにしています。
決して、製薬会社に対する誹謗中傷ではなく、副作用を正しく知っていただく事が最も大事ではないかと考えています。
そういう意味では週刊誌の書き方は、やや煽情的であらぬ誤解を招きかねないのではないかと心配になることもあります。


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by shinyokohama-fc | 2018-11-02 12:38 | 治療

プレタールとシロスタゾールの違い

シロスタゾールという薬。
大塚製薬から、プレタールという商品名で発売されてから、かなりの年数が経過していますが、いまだに繁用されている薬です。

抗血小板作用、血流増加作用、内皮機能改善・保護作用、血管平滑筋細胞増殖作用が公式には示されています。

1)脳梗塞(心原性塞栓症を除く)発症後の再発抑制
2)慢性動脈閉塞症に基つく潰瘍
が保険適用であるが、多くは1)「脳梗塞」の病名で使用されています。

高齢者の場合は、MRI検査をすれば、大なり小なり、微小血管障害による
「ラクナ」と呼ばれている梗塞後変化が確認されます。
この「ラクナ」が基底核で増加すると「パーキンソニズム(動作緩慢・歩行障害・下肢の筋強剛)」が現れやすくなり、皮質で増加すると「認知症」が現れやすくなります。
そのために「ラクナ」を予防する必要性は意義があります。

10月21日に一緒に講演させていただいた、平川先生は700例を超える「認知症」の症例に使用し、脳血管性認知症 (VD)で50%、レビー小体型認知症(DLB)で45%、アルツハイマー型認知症 (AD)で30%の改善率があると著書 (177ページ)で示しています。

シロスタゾールはホスホジエステラーゼ(PDE)3活性を選択的に阻害して脳血管を拡張させて、脳血流を増加させる作用があるようです。
PDE3活性阻害により、脳神経細胞内にある、cAMP 応答配列結合タンパク(CREB)のリン酸化が促進されて活性化し、大脳皮質が関与した高次脳機能 (認知機能)を改善させると言われています。

しかし、平川先生は、プレタール(先発品)とシロスタゾール(後発品)の多数症例による比較検討まで実施していて、その結果によると、プレタールは有効だった症例が、シロスタゾールに変更すると効果がなくなるそうです。
それを講演で聴いて以後は、小生はこの薬に関しては先発品でしか処方しないことにしていました。

この薬のもう1つの効果に「誤嚥防止効果」というのがあり、すでに15年前にはそういう効果が報告されていました。

このたび、小生の外来に、「椎骨動脈解離後に脳幹(延髄)梗塞を発症した」50歳の男性の方が初診で2週間前に来られました。
5月初めの発症で、すでに発症して5か月半経過していました。
リハビリ病院からの紹介、後発品のシロスタゾール、100mgを1日2回(200mg/日)が処方されていました。

初診時は延髄梗塞の後遺症によって、構音障害が強く、普通の速さ、大きな声で話しができず、嚥下障害も強く、食べ物を飲み込むのに苦労しており、時にむせる状態でした。特に夜間に唾液がたくさんたまって、就眠中に3回ほど覚醒して、たまった唾液を嘔吐するという状況でした。

前医処方が後発品であったので、もしかしたら、先発品(プレタール)に変更すれば、上記の症状が改善するのではないかと考えて、患者さんにも上記の事情を説明した上で同意をえて、先発品の処方箋を切ることにしました。

2週間後、再診されて驚きました。
なんと、あれだけ話しにくかったはずなのに、別人のようにハキハキと普通の人と変わらないくらいの速さで話せていました。
嚥下も良くなったようで、夜間唾液がたまって覚醒して、むせて嘔吐するということも一切なくなったとのことでした。
患者さんが先発品薬の有難みを実感されたのは言うまでもありません。

「ここまで先発品と後発品は違うのか」という事と、プレタール(先発品)の誤嚥防止効果の凄さというのを改めてリアルに実感できました。

つまり何が言いたいかというと、後発品が先発品と同様の臨床試験をしないかぎり、有効性・安全性に関しても疑いは晴れないと思います。
シロスタゾールの後発品メーカーはいくつかありますが、あえてどの会社のものかはあえて確認していません。
しかし、こういう事例がある以上、後発品すべてに対して改めて、有効性・安全性に対して検証する必要があるのではないでしょうか?

今回は、リハビリ病院では後発品を処方されて効果がなく、当院から先発品に変更して、劇的に改善したわけです。
脳梗塞発症して6か月近く経過し、この2か月で症状がまったく変わらなかった事を考えれば、これは自然経過ではなく、先発品・プレタールの効果だと考えて間違いないでしょう。

長尾先生もブログに、抗不安剤を後発品(ジェネリック)に変更して、患者側から有効性がなくなったとクレーム言われたという記事を書いておられましたが、血圧を下げる薬でも、先発品→後発品の変更で効果がなくなったという患者さんからの声は日常的に聴かれます。

我々内科は、薬を選択して処方して、患者さんを少しでも良くしたいという想いでこの仕事をやっています。

国が後発品を推進したいと言うのであれば、先発品メーカーに後発品として発売していただく(オースライズド・ジェネリック)か、それ以外の後発品メーカーには臨床試験で有効性・安全性を改めて証明させるという事をしていただかないととても納得できません。

医者は信用して薬を処方できないし、患者さんは信用して薬を服用できないのではないでしょうか?
後発品を推進する前に「効果のはっきりしない薬に金を払う必要があるのか」という事を改めて考え直したほうがいいでしょう。

今回の症例の方は、まだ50歳で仕事もしなければいけない年齢でした。



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by shinyokohama-fc | 2018-11-01 12:17 | 治療

プラミペキソールの減薬に苦労した事例

今回、紹介するケースは
パーキンソン病が発症して約18年。薬物治療も同じ18年にわたります。60歳代後半の方で、半年前から通院しています。

治療薬の多剤併用の影響で、10年前から腰が前屈した姿勢となっている(おそらくドパミンアゴニスト長期服用の影響)ようで、経過中、静止時の手足のふるえ(振戦)は確認されておらず、
典型的な「無動型」です。

最近、朝そこにない物を取ろうとする(幻覚)、朝食を食べながらこぼす、衣服に着用しているつり革の使い方がわからない。食べ物に対する執着(食欲衝動)などが見られたために、心配になり連れて来られました。
朝食後の薬を服薬して30分以内に、がくんと眠ってしまう状況でした。
ペルゴリドからプラミペキソール徐放剤に変更されてから現れたそうです。

ウェアリングオフではフリーズとなり、オン時は頸部~上半身のジスキネジアが座位でも顕著に激しくみられます。
本来は、数年前からすでに、脳深部刺激手術 (DBS)を検討すべき状況ではなかったかと推察されます。

<前医処方>
1) レボドパ・ベンセラジド配合剤 550mg(1日5~6回)
2) プラミペキソール徐放剤 1.5mg×3 (朝1回)
3) アマンタジン 50mg×3(朝1 夕2)
4) セレギリン2.5mg×4 (朝2 昼2)
5) エンタカポン2.5mg(1日4回)
6) ドロキシドパ100mg×6(1日3回)

2)は突発性睡眠、幻覚誘発の最大要因と推定されたので大幅に減量
3)はジスキネジアには全く効果がないようで、幻覚を誘発するので中止
4)も有効性がはっきりしないので中止
5)はオフを減少させておらず、ジスキネジアを悪化させていたので中止

数か月間、試行錯誤を繰り返したうえで、以下のように変更しました。
1) レボドパ・ベンセラジド 600mg(1日6~7回)
2) ロチゴチン13.5mg(1日1回)
3) イストラデフィリン 20mg×2 (1日1回朝)
4) ドロキシドパ 100mg×3(1日3回)

本当はプラミペキソール徐放剤を中止してロチゴチンへ完全移行したいと考えていたのですが、無動型の進行ステージであるという事情を考慮してやむをえず、ごく少量残すようにしていました。(プラミペキソール徐放剤0.375mg×2 (1日1回)
しかし、プラミペキソール徐放剤を服用すると、夢と現実の区別がつかないという副作用を患者さん自身が自覚できたため、最終的に自己判断で中止となりました。
この方にとって一番問題になっているのが、前医から処方されて長年服用していたプラミペキソール徐放剤でありました。すでに65歳を超えており、精神症状が顕著に出現していたので、中止するのが最終目標でしたので、ロチゴチンへの入れ替えが完了して精神症状も出現しなくなりましたので、目標は達成したのではないかと思います。

現時点では極端なオフ(フリーズ)時間は著しく減り、ジスキネジアも多少軽減し、幻覚・突発性睡眠、衝動性、薬剤性のせん妄はほぼなくなり、認知機能も維持されています。

ただし、不本意にも5種類もの多剤併用となっていますので、この処方で継続していくと今後は何らかの問題が起こるだろうとは推定されます。
5種類の神経系薬剤の併用は科学的に安全性が保証されていないのです。

ウェアリングオフ&ジスキネジアの顕著な無動型ケースの薬物処方
レボドパ配合剤+ロチゴチン(少量)+イストラデフィリンが主流ではないかと思います。今後はここにラサギリンをどう使っていくかでしょう。
できれば多くとも3種類だけでコントロールしたい所です。

「無動型」の特徴としては、薬物治療において「ドパミン依存性」に移行しやすい傾向が強い事です。早い方だと、レボドパ処方を開始してから、2~3年で、ウェアリングオフ・オンオフ現象が出現してしまいます。

初期はレボドパやドパミンアゴニストのレスポンス(反応性)は非常に顕著で、しばらくはこれらの薬の恩恵を受けることになりますが、それは長くは続かず、多くは5年前後で現実の状態に戻されてしまう時間が増えてしまう事になります。

「ドパミン依存性」というのは、実際の薬物使用の上では「レボドパ&ドパミンアゴニスト依存性」になります。これは側坐核や扁桃体という場所にあるドパミン受容体(D2/3)に薬が強く作用してしまうからです。

同じパーキンソン病でも「振戦型」(約10%)に同じような薬(レボドパ・ドパミンアゴニスト)を出してしまうと、症例によっては拙著127~132ページ掲載、症例5のように、初期から激しい過活動性せん妄、低活動性せん妄をきたします。せん妄であるにもかかわらず「レビー小体型認知症だ」と決めつけられて不本意にも認知症治療薬を追加されて、さらにせん妄がひどくなってしまうというパターンが多いようです。

「無動型」の場合は、初期には副作用の被害を被ることなく、ドパミンアゴニストになじんでしまう方がほとんどなので、10~15年は何も問題なく服薬が継続できる方がほとんどですが、
病気は年々進行し、加齢変化もあって、それに伴ってニューロン(神経細胞)、ドパミン受容体の数はどんどん減少していきます。
大量のレボドパ配合剤から変換した大量のドパミンと大量のドパミンアゴニストがドパミン受容体で受け止められなくなって、シナプス間に飽和状態になってしまいます。
その臨界点を超えれば、これまで見られなかった、幻覚、傾眠、認知機能低下(薬剤性のせん妄)が出現してきます。

進行性の病気である以上、薬物治療の限界は必ず訪れます。いかなる名医でも薬物で終生コントロールするのは不可能です。
通常人と同じ運動レベルにこだわれば、薬は大量になりますが、その一方で病気が進行して、正常な神経細胞は激減している。その代償として、昔はパーキンソン病には現れないとまで言われていた「認知症」「精神症状」に悩まされることになります
「無動型」の場合はそれを見越して、できれば70歳までに、発症15年までに、早めのDBS導入を検討すべきでしょう。

言葉は悪いかもしれないが、ここまで薬でこじれまくっている事例を処理するのは大変だと痛感させられました。
多剤併用を際限なく保険医療として許可している現状にも憤懣やるかたないという思いです。
ベンゾジアゼピン受容体作動薬依存症とドパミン受容体作動薬依存症の事例に関しては、できれば薬を処方した医者が、最初から最後まで責任をもって処理してほしいと切に願いたいところです。


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by shinyokohama-fc | 2018-10-12 12:05 | 治療

パーキンソン病治療薬の不適正使用

はたして、これが治療と言えるのか.....
あるパーキンソン病治療薬の「重篤な副作用の一覧」に紹介されていた症例を以下に提示します。
これを見て呆然とさせられるのは、おそらく私だけではないでしょう。

70歳代女性 パーキンソン病

1) レボドパ・カルビドパ・エンタカポン配合剤
2) レボドパ・ベンセラジド配合剤
3) ロピニロール (ドパミン・アゴニスト)
4) プラミペキソール (ドパミン・アゴニスト)
5) ゾ二サミド (抗てんかん剤)
6) アマンタジン(ドパミン遊離剤)
7) イストラデフィリン(アデノシン受容体拮抗剤)
8) アポモルヒネ (ドパミン・アゴニスト注射剤)
9) ラサジリン(MAO阻害剤)
以上が、パーキンソン病治療薬。さらにそれに加えて

10) デュロキセチン
11) ゾルピデム
12) ラメルテオン
13) ブロチゾラム

これ以外にも3種類の処方薬があるようですが、とりあえず、神経系に作用する薬だけを列挙しました。
すでに15種類もの神経系作用薬が併用されている事例に、さらに新しい薬を試すとは信じがたい暴挙と言えるでしょう。
薬の用量はまったく不明ですが、3)+4)+5)+6)+11)を併用して幻覚が出ないほうがおかしいです。幻覚を起こす処方と言っても過言ではないです。

こういう処方を見て痛感するのは、リスクとべネフィットをまったく何も評価せず、考えずに、ただ薬をボンボン放り込んでるだけの処方....
これが医療と言えるのか...
こんな乱暴極まりない薬の使い方が、保険医療として許されてるのか....
なぜこのような暴挙を取り締まるルールが存在していないのか....

近年、特に問題にされている、多剤併用(ポリファーマシー)の中でも、特にパーキンソン病患者に対する、神経系薬剤の常軌を逸した種類の薬の併用というのは最も罪深いものではないかと思います。
15~16種類の神経作用薬の同時併用。こんな処方、当然ながら科学的根拠(エビデンス)などあるわけないです。医療とは言えないです。

小生の拙著にもいくつかそういう多剤併用大量処方を修正した事例を掲載していますが、なぜこのようなことがなくならないのか...と嘆息するしかありません。

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by shinyokohama-fc | 2018-10-11 18:08 | 治療

ドパミン受容体作動薬(アゴニスト)とベンゾジアゼピン受容体作動薬は似ている

ドパミン受容体作動薬 (ドパミン・アゴニスト)とは、約20年前後にわたって、主に神経内科でパーキンソン病治療薬としてよく使われてきた薬です。

わが国で使用されている薬としては
①プラミペキソール、②ロピニロール、③ロチゴチン、④ブロモクリプチン、⑤カベルゴリン、⑥ぺルゴリド、⑦タリペキソール
現在主に使用されているのは、①~③
④~⑦はエルゴタミンが入っているため、長期服用にて心臓弁膜症、肺線維症、発がん性が問題視されているため、現在は条件付き限定的使用

ベンゾジアゼピン受容体作動薬とは、長年にわたって不安症状や不眠症状に対して、精神科のみならず、プライマリケア医によく使われてきた薬です。
よく使われている抗不安薬としては
①エチゾラム、②クロチアゼパム ③ロラゼパム ④アルプラゾラム ⑤ブロマゼパム ⑥ジアゼパム ⑦クロルジアゼポキシド ⑧オキサゾラム ⑨ロフラゼプ酸エチル
①~⑤が短時間~中時間型、⑥~⑨が長時間型です。
特に頻用されてるのが、①②④⑥⑨あたりではないでしょうか?
①については、特にパーキンソン病、レビー小体型認知症には使うべきではない薬であるという意見を書きました。以前のブログを参照ください。

よく使われてる睡眠導入薬としては
①ゾピクロン ②ゾルピデム ③トリアゾラム ④二トラゼパム ⑤フル二トラゼパム ⑥ブロチゾラム ⑦エスタゾラム ⑧エスゾピクロン
①②は一時期非ベンゾジアゼピン系だから安全だと喧伝されていた時期がありましたが、近年はベンゾジアゼピン受容体作動薬として包括されました。
①については、特にパーキンソン病、レビー小体型認知症には使うべきではない薬であるという意見を書きました。以前のブログを参照ください。
個人的印象では、⑧は①を安全に改良されたという印象はあり、実臨床ではあまり依存症やせん妄で問題になる事例は散見されないようです。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬に関しては、ここで書くまでもなく、欧米などの先進国で、その使用がかなり問題になってます。
わが国ではその使用頻度が異常に多い事が、以前から問題視されており、
今年4月の診療報酬改定において
「ベンゾジアゼピン受容体作動薬を1年以上にわたって、同一成分を同一用量で連続して処方している場合を「向精神薬長期処方」として診療報酬を一律で減算する」という新しいルールが発表されました。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の一番の問題は、特に短時間型に顕著な「依存性」です。また、高齢者・脳神経変性疾患罹患者・脳卒中後遺症者に対しては特に、高い確率で「せん妄」を起こしやすい事で知られています。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の作用機序としては、GABA受容体の活性が高まり、GABAがGABA(A)受容体に結合して、クロールイオンが神経細胞に流入して過分極、鎮静・筋弛緩・不安抑制作用があります。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存形成に関しては
GABA(A)受容体を仲介して中脳・腹側被蓋野でドパミン神経細胞を活性化
中脳・腹側被蓋野と側坐核付近でドパミン放出を起こす薬は一般に嗜癖性(依存性)があります。

ドパミン受容体、特にD2受容体(側坐核付近)を刺激する薬もまた、嗜癖性(依存性)があります。「ドパミン調節依存症」というのは、言い換えれば「ドパミン依存症」の事であり、「薬をたくさん使わないと効果がでない」という思い込みを誘導してしまうようです。

一度始めると、やめられない薬
それが、ベンゾジアゼピン受容体作動薬であり、ドパミン受容体作動薬なのだと思います。もちろん嗜癖性に個人差が大きいのが現実ではありますが。
服用する場合はそれを覚悟しないといけないのでしょう。


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by shinyokohama-fc | 2018-09-21 12:34 | 治療

スタチン原理主義とその功罪

「スタチン」という薬。
循環器科医と糖尿病内科医はほぼ全員が絶賛する薬
であろうと思います。
その分野の権威的なDrだと「盲信的」と言っていいほどです。日本人が発明した薬だからというのがその理由の1つかもしれません。

しかし、薬というのは、常にパラドックス(矛盾)を抱えています。
薬である以上副作用のリスクがあるわけですが、スタチンの副作用についてそういう議論が臨床医でなされている事はほとんどないようです。

その理由は「心臓血管イベントを抑制する」からです。
心血管イベントというのは、わかりやすくいうと、心筋梗塞とか脳梗塞とか
動脈閉塞症など、動脈硬化による疾患群のことです。

たしかに、私がこの仕事を始めた頃に比べると、明らかに「多発性の微小脳梗塞」「脳血管性パーキンソニズム」「脳血管性認知症」「アテローム血栓性脳梗塞」はかなり減ったように思います。
これは降圧剤の普及による血圧コントロール、糖尿病治療薬の普及による糖尿病コントロール、禁煙の普及などがありますが、スタチンの寄与している所も大きいと思われます。

しかし神経内科医である私はこの薬を毛嫌いしていました。
「スタチン」による「横紋筋融解症」の重篤な劇症型症例を数例診ているからです。近年は劇症型ではない「横紋筋融解症」は増えていると推定されます。中高年者でも「スタチン」を開始してから筋肉痛が発症して、立てない
、腕が上がらないというケースはよく見られます。それが近年の高齢者の「フレイル」の増加の一因になっているのではないかと思われます。

また、中年高齢者に四肢、特に下肢の末端のしびれをきたす方々の多くが、スタチンを服用しているようです。「スタチン」は「末梢神経障害」も引き起こす薬だからです。

それに加えて「スタチン」にとってさらなる「不都合な現実」が存在する事が明らかになりました。
それは「認知機能の低下」つまり「認知症」を増やすという現実です。

神経細胞(ニューロン)はコレステロールから作られます。筋肉や末梢神経も同じくです。長年にわたってスタチンを服用する人が増えれば、認知症が増えるのは当然だと言えます。

8月19日に、市川フォレストクリニックの松野晋太郎先生が、興味深い報告をされていました。「認知症患者に処方されていたスタチンを中止すると、テストで3~4点も点数が上がる」
本来「スタチン」信仰の強い循環器科医がこのような報告をしている事が私にとっては衝撃的でした。

もっともテストで認知症の病態すべてが説明できるわけはないのですが、先日説明した、デール・ブレデセン先生の著書にも同じ事が書いてありました。他にも同じような報告がありますが、わが国では「スタチンが認知症を悪化させているか?」を検証する臨床試験が実施される事はおそらくないだろうと思います。

糖尿病患者が「糖毒性認知症」を発症するリスクが高いというのは今や常識になりつつありますが、糖尿病の糖毒は「末梢神経障害」「筋肉障害」を引き起こすのは古くから知られています。「自律神経」というのは目に見えない「末梢神経」で、糖尿病では「自律神経障害」もきたします。

糖尿病を長年患った高齢者がスタチンを服用し続けるとどうなるか?
「認知症」「末梢神経・自律神経障害」「筋肉障害」を続々と引き起こして
最終的には「フレイル」に至る要介護者が増える事が容易に想定できます。

心血管イベントが減少して長寿者が増えたのは喜ばしい事なのかもしれませんが、別の問題が起こっているという事実も無視できないでしょう。

また良質な脂質、例えば「リン脂質」は認知機能を改善させるという報告も増えていますので、長年にわたって脂質は悪者扱いされていましたが、脂質に対する見識を根本的に考え直すべき時期に来ているのかもしれません。


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by shinyokohama-fc | 2018-09-15 15:51 | 治療

ベンゾジアゼピン&オピオイドクライシス

今回は「日本医事新報 No.4920(2018.8.11)24~25ページ」の「不眠大国ニッポンにおける"ベンゾクライシス"」という記事

を元に小生の個人的意見を書きたいと思います。長尾和宏先生の「町医者で行こう!!」という連載シリーズで、今回が第88回目だということです。

米国ではオピオイド濫用による死亡者は2016年で42000人を超えており、昨年10月大統領が「公衆衛生の非常事態宣言」をしました。

日本ではどうでしょうか? 近年、トラマドールというオピオイドが整形外科領域でかなり頻用されているようです。依存性・精神作用が他のオピオイドよりも弱いとされていますが、80~90歳の代謝が低下し、認知機能が低下した超高齢者に対しても委細構わず濫用されているようです。

その結果として深刻な痙攣発作、せん妄など精神症状、意識障害などを引き起こしている事例を数多く診てきました。特に認知症、脳卒中後遺症など脳機能が低下している事例にはこの薬は禁忌にすべきでしょう。

脳機能低下のない30~50歳くらいの神経痛などに1~2か月の期間限定で使えば大変有用な薬だと思いますが、
90歳の認知症患者にも平気で処方されている現実をみますと「オピオイドクライシス」が高齢者・認知症者で今後頻発しそうな予感がします。

一方で、ベンゾジアゼピンは近年、依存症、認知症リスクがクローズアップされています。しかし、ベンゾジアゼピンを長期に服用している方々は、依存症の本態である脳内報酬系を断ち切ることは決して容易ではありません。
以前のブログでふれた、エチゾラムという薬は特に依存性が強く、内科医や神経内科医にも頻用されているので問題とされています。

ゾルピデムという薬は非ベンゾジアゼピン系として長年米国で濫用されてきましたが、今年の診療報酬改定では、同じベンゾジアゼピン受容体作動薬としてペナルティーの対象になっています。特に高齢者に対しては、以前のブログでも指摘したように、行動異常、せん妄、幻覚などの精神症状を頻発させる傾向があるので、認知症、脳卒中後遺症など脳機能が低下している事例にはやはり好ましくない薬と言えるでしょう。

睡眠導入薬、特にベンゾジアゼピン受容体作動薬を長年投与された結果、高齢になって認知機能が低下します。そこへ2種類の抗認知症薬が増量されてそれによって惹起された行動心理症状に対して抗精神病薬が複数上乗せされるケースも散見されるようです。まさに「薬剤カスケード」の極致であり、薬剤性の認知症に対してさらに薬剤で上塗りするという悪循環です。

ちなみにコリンエステラーゼ阻害薬は高率に睡眠障害を誘発します。コリンエステラーゼ阻害薬による薬剤性の不眠症に対して睡眠導入薬が処方されるというパターンも非常に多いようです。これも「薬剤カスケード」ですね。

多重受診、フリーアクセスを容認している現状では、多剤投与になることが多く、「多剤投与」の弊害を患者側に広く啓発しないかぎり前に進みまないでしょう。減薬を提案すると怒り出す患者さんは少なくないようです。

小生の場合は、睡眠導入薬のみならず、特に神経に作用する劇薬に関しては、必ずデメリット、副作用を強調し、それでも薬が飲みたいのか?と問うようにしています。それゆえ深刻な依存症になっている患者さんにはある意味過酷な指導かもしれません。薬依存症が最も深刻なのは他ならぬ「パーキンソン病」の患者さん達です。

長尾先生は「高齢者の尊厳を守るためにも、今後は国民啓発を優先すべきだと感じる」と書いておられます。まさにその通りだと小生も感じます。
忙しく限られた外来診察時間では上記の問題を説明して理解を得る時間もない、それゆえ医者は「薬剤カスケード」に走るのだと思います。
医者にペナルティーを与えるだけでは、患者の不信感を増幅させるだけではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2018-08-20 12:18 | 治療

認知症の薬は副作用、効果なしでアウト(フランス)

週刊誌でも大きく取り上げられている記事ですが、

フランスの厚生省は、8月1日からアルツハイマー型認知症の治療薬を医療保険の対象から外したそうです。ドネぺジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンの4つです。

決断した理由は「効果がほとんどない」と判断したのと、循環器系や消化器系の副作用・有害事象のリスクが勝ると判断したという事です。
健康保険の適応から外すということは、患者にとって意味のある効果が示せない薬には国のお金は出せないという事でしょうか。

小生は4年前から、このブログで認知症の治療薬、特にコリンエステラーゼ阻害薬による有害事象の問題を多く取り上げました。
我が国の認知症を専門とする学会は、コリンエステラーゼ阻害薬を積極的に使えと強力に推進してきました。

学会が強力に推奨することで、安全性・有効性が証明されていない、副作用リスクの非常に高い、85歳以上の老年認知症なのか?加齢性変化なのか判別困難な症例にも多くのコリンエステラーゼ阻害薬が処方されました。

その結果として、循環器系、消化器系、精神神経系の副作用・有害事象のケースが非常に増えてしまっているのが現状です。

2年前に、一般社団法人 「抗認知症薬の適量処方を実現する会」が発足して
昨年に少量投与を認める裁定がありました。

しかし、小生の経験では、高齢者には虚弱者、薬剤過敏者が非常に多くて、
リバスチグミンの初期量(4.5mg)ですら、有害事象が出現してしまうケースが多くみられます。

高齢者、特に75歳以上の後期高齢者においては、小生の使用経験におけるコリンエステラーゼ阻害薬の忍容性の低さの現状を見るかぎり、薬を服用するメリットよりもデメリットのほうが大きいのではないか?という印象をもちます。

学会は、パーキンソン病に伴う認知症 (PDD)に対しても、保険適応のないコリンエステラーゼ阻害薬を使うように、ガイドラインで推奨しています。
「PD、PDD、DLBは同じスペクトラムの病気」というのがその根拠であり、DLB に保険適応があるから使えと推奨しているようですが、これをフランス人の専門医が見たらどう思うのでしょうか?

ここ最近、認知症を伴うパーキンソン病 (PDD)の症例全例に対して、臥位から立位への血圧変動、起立性低血圧を評価するようにしていますが、9割以上の症例で収縮期血圧20~40mmHgの起立性低血圧を確認しました。

心臓の交感神経が機能低下していて、自律神経不全に陥っているケースに対して、強力に自律神経に影響を与える薬(コリンエステラーゼ阻害薬)を使う事が果たして正しいといえるのでしょうか?

たしかに、DLB(レビー小体型認知症)の初期から中期にみられる「覚醒レベルの変化に伴う認知機能の変動」に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬は少量でも有効である事は明らかで、小生もすでに15年前にドネぺジルでそれは確認済みです。
しかし、それも病気の進行とともに効果が減弱して、薬剤性パーキンソニズムによる動作歩行の悪化が目立ってきます。これは決して「病気が悪化したからだ」ではなくて、薬剤によるドパミン阻害有害事象です。

しかし、PDとPDDには原則的に「覚醒レベルの変化を伴う認知機能の変動」は見られません。つまりDLBとはここが根本的に違います。
もし見られるとすれば、それはドパミンアゴニストなどドパミン作動薬、その他の神経系薬剤の多剤過剰処方による「薬剤せん妄」なのだと思います。

昨年あるパーキンソン病の研究会で、ドパミン阻害薬をてんこ盛り処方した症例で認知機能の変動が出現したケースで、リバスチグミンを処方して奏功したと自慢げに発表していた専門医がいました。

小生は自身の経験をもとに、DLB の中核症状と薬剤せん妄を混同してはいかんと、以前のブログでも書いています。

このように専門医が薬が正しく使うことができない現状であれば、いっそのこと、これらの薬は保険適用から外したほうが、いいのではないかと思う今日この頃です。

ちなみに小生は、この2~3年でコリンエステラーゼ阻害薬の処方数は激減しました。想定していた以上に、忍容性が低く脱落してしまうのと、認知機能低下に対しては有効性(メリット)が実感できる症例が、実際はきわめて少ないからです。

「コリンエステラーゼ阻害薬を服用しているが、どうも有効性が感じられないので中止したい」という要望には基本的に小生は賛成です。
無駄なコストを有効性がない薬に払う必要はないのですから。

「中止したら認知症が悪化するぞ」と恫喝するつもりは一切ありません。
もしそんな事言ったら、欧州、特にフランスの医者に笑われますからね。

コリンエステラーゼ阻害薬を服用しようがしまいが、アルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症(DLB)は進行します。

「症状の進行を抑える」という表現はきわめて誤解を招く表現ではないかと思います。多くの患者は「病気の進行を抑える」と誤解するからです。

しかし、同じAD、DLB、PDと言っても、多様性が非常に大きいというのが事実であり、軽症から重症、進行が遅いから速いまで様々です。
多様性が元来の病気の性格であって、これを薬で変える事は難しいです。
それは、同じ胃がん、肺がんでも良性~悪性まであるのと同じことではないでしょうか?

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by shinyokohama-fc | 2018-08-09 12:10 | 治療

パーキンソン病治療薬大量によるDLB診断病

まずは、今から15年前に同じ病院で勤務していた、神経内科医の同僚からの昨日のメール内容を紹介します。

おつかれさまです。今日も老人施設を訪問診療し、ポリファーマシー(多剤併用処方)のパーキンソン病患者を診察しました。かねてより、薬剤減量していましたが、日常生活動作に悪化傾向はみられません。

前医の総合病院の著名な神経内科医によるポリファーマシー、大量のパーキンソン病薬剤で幻覚症状が出ており、お約束のように「レビー小体型認知症」だという病名がつけられていました。

患者は84歳ですが、薬剤情報を完璧に理解しており、大量処方にクレームをつけていました。
私が減薬した薬剤についても理解・記憶しており、こちらの治療計画を尋ねてくるほどの人です。どこが認知症なのか???
パーキンソン病の治療方針、シンプルが一番良いです。

パーキンソン病の患者さんで、確かに認知機能低下症を伴うケースは現に存在しており、一般的にPDDと呼ばれています。

今回の症例は、84歳男性。平成15年からで発症15年
平成19年8月に「パーキンソン病」と診断
平成25年にジスキネジア、ウェアリングオフ
平成26年に幻視が出現したため、DLBと診断。
平成30年に歩行器歩行となり、病院への通院困難で在宅医へ紹介

前医(病院の神経内科専門医)からの処方
1) レボドパ・カルビドパ・エンタカポン配合剤 (100mg) 5錠
2) セレギリン (2.5mg) 2錠
3) イストラデフィリン(20mg) 2錠
4) マグネシウム(330mg)6錠
5) リバスチグミン9mg
6) メマンチン(5mg)2錠

在宅医は、4)は中止して他の薬剤へ変更。1)は100mg減量、2)は中止、
3)は20mgへ減量、5)6)もそれぞれ減量したそうです。
減量しても動作歩行レベルの低下はなかったようです。

厳密には、長期罹患・高齢発症のパーキンソン病では、中脳から前頭前野へのドパミン投射が減少しており、二次的に前頭葉機能障害がみられます。
そのため、軽度の注意障害や思考遅延傾向などが確認されます。

どこからどこまでを「認知症(認知機能低下症)」と呼ぶのか?という問題があります。また程度もピンキリです。

しかし、上記の84歳の症例の場合のように、他者からみて、自分の頭で正確に考えられ、物事を正しく理解・記憶している事例までも「認知症」扱いしてしまうのには疑義があるでしょう。

まして、ドパミン作動薬の過剰処方によって出現した薬剤性の幻覚とか認知の変動が出ているのを、DLBだと診断しているのは言語道断ではないかと思います。


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by shinyokohama-fc | 2018-07-27 12:05 | 治療

DLBにはまずドロキシドパから

レビー小体型認知症(DLB)。通称レビー。
以前から何度も言っているが、この病名には非常に違和感があります。
私はいまだによくわかりませんし、こんなに得体のしれない、つかみどころがない、臨床医にとってわかりにくい病気も他にはないでしょう


DLBは初期は記憶障害がほとんどないようですが、「記憶障害=認知症」「物忘れ外来=認知症を診てくれる外来」という価値概念が定着しているようですので、その範疇からは外れやすいので、見逃されやすいと啓蒙される傾向があります。

このDLBという病名の病気の臨床像ですが、
幻覚よりも誤認(実体意識性など)に伴う妄想が主症状のようです。パーキンソニズム(動作歩行障害)は半数程度にしか確認できず、動作歩行がやや遅い程度のケースがほとんどですので、老化現象と区別が難しいというレベルです。認知の変動?も外来では確認するのが難しく、介護者の主観に影響されます。初期には記憶は問題なく、簡易知能評価スケールでも高得点なので、「認知症」とはみなされず「軽度認知障害」「年齢相応」にされてしまうので、「誤認妄想症候群」という名前でいいのではないかと思います。

DLBの診断基準では重視されていないようですが、神経内科的観点から言うと、以下の2つの症状が重要ではないかと思います。

1) 血圧変動の大きさ (起立性低血圧・食事性低血圧、ときに臥位高血圧)
2) 姿勢保持の不安定さ (転倒しやすい)


現在、DLB (仮称)と推定される症例全例で、臥位~立位の血圧変動を記録していますが、だいたい30~50mmHgくらい下がり、立位の血圧は90mmHg以下の症例も多いです。

このような状況であれば、立ちくらみやふらつきは当然ありますし、最悪の場合は気を失います(失神)、座位や立位で慢性的に脳循環が悪いので、意識がぼーっとして、認知が変動しやすくなり、これを連日のように長期間繰り返していると、当然のごとく認知機能が低下していきます。

当然ながら、コリンエステラーゼ阻害薬や抗精神病薬はこのような問題(血圧変動)の解決には全くなりません。教科書に書いてあるから、認知症専門医がこの薬を使えと言うから使ってみたけど、実際は良くなる症例は少ないという印象です。これらの薬をいくら使っても上手くいかない症例の多くは起立性低血圧がひどい症例です。一体どうしたらいいのでしょうか?

まず弾性ストッキングを下腿に履かせることです。
血圧降下剤、特にアムロジピンを服用していれば中止することです。
血管拡張剤、特にシロスタゾールを服用していれば中止することです。
臥位の血圧が高くない場合は、ドロキシドパを服用することです。

2年前から通院している、72歳男性。
DLB(仮称)の診断基準は完全に満たしていて、DATスキャンでも線条体の高度集積低下が確認されている症例です。
7年前から夜間の異常行動があり、クロナゼパムを処方
2年前から幻覚、誤認、妄想がひどくなり
総合病院の精神科を紹介されて受診。パリペリドン(リスぺリドンの徐放型)、アリピプラゾールを処方されたが、全く精神症状がおさまらないという
事で受診されました。
「神経内科」ですので、この症状の方は受診する事は通常少ないです。

記憶は悪くないので、診察時にはその誤認による被害妄想、嫉妬妄想、作話の詳細を長々と語れる状況でした。
人、動物、虫の幻視、変形視なども顕著でした。
前傾姿勢で動作は遅く、パーキンソニズムヤール2~2.5相当でした。
リバスチグミンを試し、段階的に1か月ごとに18mgまで増量しましたが、精神症状はまったく改善せず、動作歩行状態が悪化したので中止。


ドネぺジル3mgから開始しましたが、最初の1~2か月だけ幻視と尿失禁が減少したが、すぐに効果は失われ、開始4~5か月後で動作歩行状態が悪化してきたので中止。中止すると状態がよくなったと言われました。
幻覚に対してブロナンセリンを少量だけ使用したが、やはり全く効果なし。
着衣の動作も非常に悪化していました。

血圧変動を測定してみると、ひどい起立性低血圧でした。
臥位 115/76(83)
~立位1分 67/50(97) 立位2分 81/58(100)

半年前にすでに低血圧があったため、アメニジウム(20mg)2錠を服用していましたが、全く効いていなかった事に愕然としました。
そこで起死回生を願ってドロキシドパ(100mg)6錠、1日600mgを開始しました。他の併用薬は、レム睡眠行動異常を抑えるためのクロナゼパム0.25mgとラメルテオン8mgだけです。

ドロキシドパ600mg/日を開始して、それまで何をやってもおさまらなかった幻覚、誤認などの精神症状が大幅に減少しました。
立位の血圧も、94/66(87)、88/63(88)とまだ低いですが、回復したようです。

ドロキシドパという薬は、ノルアドレナリンの前駆体で、当初はパーキンソン病の治療薬で、すくみ症状に効果があると言われ、20年前はよく処方していました。しかし、パーキンソン病のエキスパートと言われる先生方の著書では「運動症状には全く効果がない」と散々な評価であるのが現状です。

ノルアドレナリンという神経伝達物質は、脳幹の青斑核にたくさん存在すると言われていて、特に覚醒力が強く、気分を高揚させ、注意・不安にもかかわる、血圧を上昇させると書いてあります。

これはまさにDLBに最適ではないかと思います。
血圧を上昇させ、脳循環を改善させるだけではなく、覚醒作用、気分高揚作用、注意力向上作用、不安軽減作用があるとすれば
この薬はレボドパ配合剤、コリンエステラーゼ阻害薬、などよりもはるかに優れた薬ではないかと思います。

パーキンソン病、DLBらしき症例を見たら、まずは起立性低血圧を評価し、立位で100mmHg以下であれば、まずはドロキシドパを試すべきではないかと考えます。

起立性低血圧(自律神経不全)が重度の場合は、いくらコリンエステラーゼ阻害薬を使っても、まったく有効ではないという事が証明された事例であったと思われます。

コリンエステラーゼ阻害薬を増やせば、認知機能が改善するからそれで良しとする意見は、認知機能よりも重大な症状である自律神経不全症状を完全に無視している、実地臨床から大きく乖離したものではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2018-07-24 12:02 | 治療
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