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65歳以上で幻覚、ドパミン・アゴニストを少しずつ減薬を!


本日「医薬品安全対策情報」2018.4(No.268)が届きました。
薬剤が発売されてから、20年近く経過しても、新たな添付文書の改訂が行われるのが、普通です。

5ページ目に、プラミペキソールに関する内容が記載されていました。
注目すべきは「悪性症候群」「幻覚などの精神症状」

「悪性症候群」
本剤の急激な減薬または中止により、悪性症候群があらわれる」拙著 193~194ページ参照。
これがあるから、拙著タイトルは「少しずつ減薬すれば」になっています。

「幻覚などの精神症状」拙著 202~206ページ参照。
65歳以上の高齢者で、非高齢者に比べて、幻覚などの精神症状の高い傾向が認められているので、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。幻覚などの精神症状が現れた場合には、減量または投与中止するとともに、必要に応じて抗精神病薬を使用すること」
拙著の症例5(127ページ)、症例10(225ページ)では、プラミペキソールによる深刻な精神症状の事例を掲載しています。
ドパミン・アゴニストが精神症状の副作用が多いというのは実地臨床ではもはや常識ですが、特にプラミペキソールは増量すると大脳辺縁系のドパミン受容体(D2/D3)に選択的にダイレクトに作用してしまうからという

何度も言いますが、こういう深刻な有害事象から最初に気がつくのは家族です。つまり救えるのは家族しかいない訳です。
ですから、「医薬品安全対策情報」というのは、薬を服用している患者側に対して、薬局から直接提供されるべき情報ではないのか?と思います。
実際は、患者側は幻覚の副作用の事など全然知らないで服用を続けている、問診もロクに取る時間がない外来医は外来で気がつかないから、そのまま継続処方しているという事が多いのではないか。

2月16日に発売された、拙著を購読されたのを契機に、初診で来院された高齢者のうち、ドパミン・アゴニスト服用していた方は5名、そのうち2名がプラミペキソールを服用していました。内訳は以下のとおり。

①)67歳男性 発症16年目 PDDと診断
精神運動興奮を伴わない程度の幻視があったが、減薬により軽減
ロチゴチン 18mg/日
レボドパ/カルビドパ550mg、エンタカポン400mg、
ゾニサミド50mgを併用

②)66歳女性 発症15年目
幻覚などの精神症状なし
プラミペキソール徐放剤 3.75mg/日
レボドパ/ベンセラシド600mg、エンタカポン300mg、
アマンタジン200mg

③)70歳女性 発症12年目
幻覚は1年前にあり、現在はなし
プラミペキソール徐放剤0.375mg/日
レボドパ/カルビドパ550mg、セレギリン5mg
ゾニサミド25mg、イストラデフィリン40mg

④) 76歳女性 発症7年 PDDと診断
レボドパなどわずかな薬の増量でも幻覚が出る状態
レボドパ/カルビドパ 400mg(600mgから少しずつ減量)
ロピニロール8~14mg、アマンタジン200mg(過去に服用していた)

⑤)70歳男性 発症16年
幻視・幻聴・誤認妄想と顕著な精神症状出現
ロチゴチン23.5mg/日、ペルゴリド 1250μg/日
レボドパ/カルビドパ 400mg、エンタカポン300mg
ゾニサミド25~50mg (中止にて精神症状は消失)

レボドパ配合剤+ドパミン・アゴニスト+ゾニサミドという組み合わせが、症例⑤と同じような幻覚などの精神症状が、最も高い確率で出現しやすい事がいくつかの症例でわかりました。
このような場合にまず行うべき対策としては、
A)ゾニサミドの中止
B) ドパミン・アゴニスト徐放剤から速放剤への変更
C) ドパミン・アゴニスト速放剤を少しずつ減量
D) レボドパの1回投与量減量・服薬回数の増加

A~Dを実践することによって、ほとんどの症例で幻覚などの精神症状は軽減する事が、経験的にわかりました。
症例⑤)のように①だけでも軽減する方もいました。

もちろん運動症状が悪化しないように配慮していますが、これまでの経験では、少しずつ慎重に薬を変更すれば、運動症状の悪化はみられていませんでした。それはレボドパの1日量だけは減量していないからです。
プラミペキソールだけではなく、ドパミン・アゴニスト(受容体作動薬)の増量には、65歳以上の高齢者では、精神症状が出現しやすいので、かなり慎重になるべきでしょう。


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by shinyokohama-fc | 2018-04-12 18:06 | 治療

薬の多さを疑い、奈良から来られたパーキンソン病の方

先日、拙著を読んで奈良市からご主人と同伴で来られた方がいました。

70歳の女性で、私が見た印象としては「神経症的気質」で、女性のパーキンソン病の方には多いタイプだと思われました。

ご主人の書かれた経過を読ませていただきましたが、A4プリント3枚で非常にくわしく書かれており、よくわかりました。
以下、その要点だけ示します。

昨年5月、血圧が高いという事で、バルサルタン80mgを服用していたが、血圧の上下が著しく、アルファ遮断剤のドキサゾシン(朝2mg夕2mg)に変更となり、血圧の上下は消えたが、倦怠感がひどく動けなくなったので
1か月もたたずに自己中止し、倦怠感はなくなりました。


この当時、午前中作業をすると背中が凝る、指先が動かしにくく、細かい作業がしにくい、食欲がない、便秘傾向、体重が減った、話していると声が小さくなる、ろれつが回らない時もあるとの事でした。

昨年6月、地元の総合病院で内視鏡、超音波などを含めて全身の精密検査を受けたが、内臓には特別な異常は確認されませんでした。
神経内科による諸検査では、MRI検査は異常なく、ドパミントランスポーターシンチグラフィー(DATスキャン)を受け、線条体のドパミン集積が正常より大幅に低下していると指摘されました。

昨年8月、大阪市内の総合病院へ検査入院したそうです。
MIBG心筋シンチグラフィーで心筋の集積が低下している、レボドパ配合剤に対する反応(効果)が鈍い。嗅覚検査で異常なし、立っていると血圧が徐々に下がってくる(起立性低血圧)が確認されました。

結論として「パーキンソン病かそれ以外の病気かの判定ができない」
レボドパ/カルビドパ配合剤150mg×3回(毎食前)服用、血圧に対してはアムロジピン2.5mg1回を服用するように指示されました。
その病院の関連クリニックを紹介されたそうです。

レボドパ配合剤を開始して、背中の凝り、手指の動かしにくさ、話しにくさは改善したとの事です。その一方で
食欲がない、多く食べられない、薬を服用すると30分くらい気分が悪くなる。トイレが近くなった。

今回、当院まで来られた理由としては、以下のとおりです。
1) 薬の量が多すぎるのではないか?減らしたい、できればやめさせたい。
2) 本当にパーキンソン病かどうか疑問

レボドパ配合剤150mg×3回(1日450mg)も服用していることもあり
診察では、運動症状はほとんど確認できず。四肢の筋強剛は全くなしで
ベッドへ寝るなどの動作、歩行の速度はまったく正常に見えました。
手指の指タップで、左手がわずかに右手よりも落ちるくらいでした。
つまり、診察ではパーキンソン病らしさは皆無でした。
しかし、血圧測定では、やはり臥位から立位で30mmHgの持続性の血圧低下がみられ、立位での血圧は収縮期110前後でした。

拙著にも書きましたが、パーキンソン治療薬の最大の特徴というのは
「運動症状を改善する薬によって非運動症状が悪化する」という事です。
特に、自律神経が不調なタイプの方はその傾向が強いです
ほとんどの薬は自律神経に何らかの作用をして影響を与えるから当然です。

この方は、明らかにMIBG心筋シンチグラフィーでも心筋の交感神経集積が低下している、起立性低血圧などが確認されます。
当然、消化管(胃腸)の運動機能不全も推定されますので、
最初から1回150mgというレボドパ配合剤の服用がこの方にとって、多すぎるのは自明の理であり、消化器症状が出るのは当然と言えます。
私としては、運動症状の重症度がそれほどでもないにもかかわらず、レボドパ配合剤が多すぎるので、少しずつ減薬の方向で
とりあえず、レボドパ・カルビドパは100mg×3回としました。
常識的に考えれば、レボドパ配合剤はできるだけ減量して、他のドパミン作動薬を補助的に使うべきでしょう。教科書にはそう書いてあるはずです。

このケースで私が感心したのは、ご主人が「薬(降圧剤やレボドパ配合剤)が多すぎるんじゃないか」と感覚的に理解していた事です。
患者の事を一番よくわかっているのは、1~2か月に1回(大病院なら3か月に1回)、2~3分しか診ない医者などではなくて、ずっとそばで診ている
配偶者・同居者のはずです。「配偶者が事実上の主治医」と拙著に書いたのはそういう意味です。

今回は、苦労して本を書いたかいがあったと思いました。その一方で
1) 最初からこんな大量のレボドパを処方する理由が全く理解できない
2) 減薬したい、薬が多すぎるという要望を訊ける医者はいないのか?
という事を感じました。

6月17日(日曜日)にAP品川という会議室で、パーキンソン病とそれに関連した認知症をテーマにした講演会を行います。
この2か月で来られた症例も紹介します。
テーマはおそらく「パーキンソン病、増薬すれば悪くなる」になるでしょう。
今回、奈良から来たこの方のように、不要な増薬から守る事ができるのは、
配偶者など家族しかいません。

だから拙著は、医学書ではなく、一般書にしたのです。



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by shinyokohama-fc | 2018-04-10 11:58 | 治療

パーキンソン病・25年目の奇跡 (2) 考察

パーキンソン病、25年目の奇跡。
今回の奇跡を成し得た、アストロサイト(グリア)とアデノシンについて考察してみたいと思います。
考察ですので、医学を知る方々以外にはやや難しい内容かもしれません。

脳を構成している細胞は2つ
ニューロン(神経細胞)とグリア(神経膠細胞)です。
ニューロンはわずか10%でグリアが90%。つまりほとんどグリアです。

ニューロンは情報処理や興奮伝達に特化した細胞で、巨大な情報ネットワークを構築しています。
グリアはニューロンを支える補助的な役割と言われていました。
しかし、今回のパーキンソン病25年目の症例はグリアの働きを証明したのではないかと思います。

運動指令の伝達に主要な役目を果たしている、ドパミンの受け渡しをするドパミン・ニューロンは、パーキンソン病の運動症状が発症した時点ですでに正常の50%以下になっています。

症例によって多様性がありますが、通常は発症して10~15年経つと、ドパミン・ニューロンは20%以下まで落ちると言われています。
レボドパ配合剤を初期(発症後7年以内)から多量(600mg以上)服用していた症例では、ドパミン・ニューロンはそれ以上(10%以下)まで落ちると推定されます。

そのようなドパミン・ニューロンが稼働不能状態に至った症例では、セロトニン・ニューロンがその役目を代替えすると言われています。
しかし、そのセロトニン・ニューロンも長年経つと変性が進んでしまうので
発症後20年経つとやはり稼働不能状態
になってしまいます。

グリアが主としてドパミンの受け渡しを行うようになります。グリアから放出されたドパミンがどのように受容体に作用するのかは詳細は不明です。

グリア(神経膠細胞)というのは、接着剤という意味で、ニューロンとニューロンの間を埋めるように存在しています。脳を空間的に支えたり、栄養を補充するなど、情報ネットワークの稼働を助ける存在と言われています。

アストロサイトというのは最も多いグリアで、ニューロンの立体構造を支えています。アストロサイトの細胞膜にも様々な神経伝達物質(ドパミン、アセチルコリン、セロトニン、ノルアドレナリン、アデノシンなど)に対する受容体(アストロサイト受容体)が存在しているようです。

アストロサイトではグルタミン酸がシナプスから放出されて、アストロサイト受容体と結合してニューロンと同様の興奮が起こり、アストロサイトはアデノシン三リン酸(ATP)を放出して、また別のアストロサイトを興奮させるという流れが起こると言われています。

ニューロンの変性が進行して、正常に稼働するニューロンが枯渇してしまった、長期罹患パーキンソン病においては、グリア、特にアストロサイトが神経情報伝達の主役になります。

アストロサイトの受容体においても、ニューロンと同様にドパミンとアデノシンは競合しているのではないかと推定されます。

アデノシンが神経情報伝達の主役になるらしいので、ニューロン以上にドパミンがアストロサイト受容体に受け取られるのをブロックされてしまうのではないかと思われます。

そこにアデノシンをブロックする、イストラデフィリンを加えることによって、競合していたドパミンがアストロサイト受容体にスムーズに受け入れられて、効果を発揮するのではないかと思います。

レボドパ配合剤が20年以上の長期罹患症例に効果を発揮するケースは、アルツハイマー、グレイン、ピック病理など異なる病理が存在しない、純度の高いパーキンソン病では多く見られます。胃ろうから持続的にレボドパ注入する治療が奏功している事例が存在するのはそのためだと思います。

おそらくニューロンの代わりにアストロサイト(グリア)が神経情報伝達の主役になっているのでしょう。

重度まで進行した意味性認知症と思われる症例にも、グルタミン酸に作用する薬剤が奏功するのも、そのためではないかと思われます。

アストロサイト(グリア)に関する研究は現在進められており、今後その成果が期待されるでしょう。



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by shinyokohama-fc | 2018-03-20 12:12 | 治療

パーキンソン病・25年目の奇跡 (1) 実録


今回は発症して25年目のパーキンソン病の症例を紹介します。この方は50歳で発症して現在は75歳です。
25年というと、ちょうど小生がこの仕事をやっている年数そのものです。
つまりこの仕事を始めたときに、この方は発症したのです。


「パーキンソン病、少しずつ減薬すれば良くなる!」2月16日出版
今回の書籍を書く動機になった症例でした。書籍の帯で紹介されている(本文では7ページ4~7行目) 文章はこの患者さんご家族からの手紙です。
様々な医療機関を転々として、平成27年8月。当院の受診へ至りました。


「これまでは、外来で神経内科医に不調を相談すると、すぐに薬が追加されていたが、それらの薬にはほとんど効果が感じられず、副作用ばかり増える気がしていた。長年飲んでいる薬の影響で生活の質(QOL)もかなり低い状態になっていた。こちらでは無駄な薬の排除をしてくださるので、大変ありがたい

この方は、症例2(拙著84~90ページ)に紹介しています。
著名な元大学教授の先生の外来へ通院していました。
長くなるので、くわしくは拙著をよく読んでほしいと思います。


初診時は、ほとんど動けず、立位保持も歩行もできない状態でした
診察すると把握反応が著明(左>右)で、開眼失行が目立ち、言葉が話せず、
強い前頭葉機能障害が示唆されました。意識も朦朧としているように見えました。まるで進行性核上性麻痺の進行期と同じような臨床像でした。

ドパミン作動薬を複数服用していても、全然効いていなくて一日中ほとんど動けない、歩けないという厳しい状態でした。
前医では、「発症して20年以上経っていて、認知症もかなり進んでいるので、かなり深刻な状況だ。何をしてもよくなるはずがない。」と言われ

前医で処方されていた、治療薬は
① レボドパ・カルビドパ 200mg×3
② ロピニロール 4mg
③ ロチゴチン 9mg
④ ゾニサミド 25mg
⑤ エンタカポン 100mg×3
⑥ ドネぺジル 3mg
⑦ ドンペリドン 10mg×3
⑧ 酸化マグネシウム 330mg×4


実は小生も前医と同じように「病気が進行していて深刻な状況だ」と認識していて、どう考えてもこの方が良くなるとは思いませんでした。
正直に言うと「エライ患者が来てしまったな」と感じていたほどです。


しかし、そういう状況であれば、なおさら無駄な薬はいらんだろうと思い、ドパミン・アゴニストである②と③の併用。④のゾニサミドの使用、⑥のドネぺジルの使用、⑦のドンペリドンの使用は意味がないと考えましたので、
ドパミン・アゴニストは③に統一して、②④⑥⑦を順次中止しました。
特に⑥⑦はドパミン阻害に作用、②④はせん妄を誘発していると考えました
さらに①レボドパ配合剤200mg×3回を水に溶かして100mg×6回に変更しました。レボドパ吸収を阻害している可能性が考えられた、⑧の酸化マグネシウムをレボドパから2時間ずらして1日2回の服用に変更しました。

日中の意識は覚醒して、自宅内も手すりを使って移動できるようになり、オンの時間帯には日常生活動作もほとんど自分でできるようになりました。
この経過でやはりこの方はパーキンソン病だったのだと確信しました。

運動症状が良くなってから、認知症の簡易評価スケールであるMMSE、HDSRを実施しましたが、それぞれ28点、29点であり、26点以上でしたので、認知症(PDD)には該当しませんでした。
前医の「認知症もかなり進んでいる」という認識は間違いでした

よくパーキンソン病の専門家の先生方が、年表で「発症して20年以上経てば、認知症が進行する」というステレオタイプ的な講演を聞きますが、
この方にとっては前医が処方していた薬で認知症みたいにされていたのであり、認知症には至っていない事がわかりました。


来院後1年の処方 (28年11月)
① レボドパ・カルビドパ 配合剤 600mg/日
6時150/9時100/12時100/15時150/18時100(600mg/日)
② エンタカポン 200mg/日
12時100 18時100
③ロチゴチン 13.5mg/日
④酸化マグネシウム 1000mg/日
14時 500mg 21時 500mg
②は一時期中止したのですが、やはりオフが出るという事で再開。
④も一時期中止して、漢方薬に変更したが合わずに、元に戻しました。

診察時にもオン時間帯には猛烈な上半身のジスキネジアが頻繁にみられ、オフ時間も以前よりはかなり減ったもののエンタカポンでは埋めきれない状況でした。しかしエンタカポンを増やすと、ジスキネジアがさらに悪化すると想定されたので増やす気はありませんでした。

前医の無駄な薬をすべて取っ払うと動ける時間が増える一方で、ウェアリングオフとジスキネジアが目立ち典型的な無動型のパーキンソン病の臨床像が明らかになってきました。
アマンタジン100mgを追加してジスキネジアはいくらか軽減したものの、オフ現象はそのままでした。

つまり残る問題である、ウェアリングオフとジスキネジアは未解決でした。
前回のブログでも示したように、最近
ロチゴチンとイストラデフィリンの併用により、オフ現象の制御に成功した症例がいくつかありましたので
思い切ってエンタカポン、アマンタジンを中止して、イストラデフィリンに変更しました。

最新処方(30年3月)
①レボドパ・カルビドパ配合剤 600mg 1日5回
②ロチゴチン13.5mg 1日1回
③イストラデフィリン 20mg 1日1回
④酸化マグネシウム 1000mg 1日2回
⑤ルビプロストン 24μg 1日1回 (※便秘薬)

ジスキネジアは大幅に減少して、ほとんど見られなくなりましたオフ現象も同居している家族が見ている範囲ではほとんどなくなりました。
現在、歩行器を使って歩行していますが、以前より早くなったという印象で
地面から足がしっかり上がっているという感じがしました。

25年目でも薬の効果があるのが、純粋型パーキンソン病なのです。

パーキンソン病の25年目としては上出来ではないかと思いました
パーキンソン病の20年目以上の方が全員認知症になるわけではなく、実際統計的には半数程度と言われています。

この方を現在のベストの状態に持っていくまで3年近くかかったのですが、
純粋型パーキンソン病は、進行がきわめて遅いために、試行錯誤する時間的猶予が与えられました。
何より前医(元大学教授)とは違って何の権威もない小生のような開業医を信用して、3年も根気強く通院し続けてくれた患者さんとご家族に感謝したいと思います。

この方には、実は薬以外にも、2~3種類のサプリメントを使っています。
そのサプリメントはこちらから提案して、同意のうえで服用しています。
サプリメントの併用がなければ、減薬は困難だったかもしれません。
サプリメントが効果があると言うと、やれ科学的根拠がないだのプラセボ効果だのと言われかねないので、情報は非公開にしています。

またこの症例と同じような方に、同じような事をしたとしても、全員上手くいくとは思いません。それは他の病気でも同じです。

それは「多様性」があるからです。同じ病気でも、それぞれが置かれている環境因子や遺伝的素因はすべて違います。
同じ方法を使ってすべて上手くいくほど実地臨床は甘くはないのです。
この症例はおそらく、認知症がない、アルツハイマー病理がない、など好条件がそろっていたので幸運にも上手くいったのだと思います。




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by shinyokohama-fc | 2018-03-16 11:32 | 治療

鹿児島認知症ブログ・書評(4)価値観を大事にして「世間」で仕事をしない

(4) 価値観を大事にして、「世間」で仕事をしない

医者としては「患者に害を与えない」という価値観を大事にしている。
この価値観を医者を続けている間はすり減らさないようにしたいと思っているので

それが最も大事な価値観ではないでしょうか?そう思います。
神経に作用する薬を多種多量に処方するという事は、最も患者に害を与える可能性が高いというのは、誰が考えても自明の理であります。
パーキンソン病という多くは非常にゆっくりと進行する経過の長い病気において、初期からそういう処方をしてしまうというのは、そういう意識が全然ないのでしょうか。

医者同士の会合なり、懇親会なりの「付き合い」には極力顔を出さないようにしている。「時間がない」ということだけがその理由ではない。
付き合いという「世間」を重視しているうちに、自分が大事にしている価値観が薄められてしまうことを恐れるからである。

それはよくわかります。
小生も昨年は自分が出たいと思わない会合とか懇親会はよく欠席しました。
セミナーとか講演会だけ出席して、懇親会は出ない事も多いです。
講演会は、興味のあるテーマの場合はなるべく行くようにしています。
懇親会も、他の医者との歓談(対話)で有意義な情報が得られる事もありますし、仕事と全く関係のない雑談をする事もありますので。
昔から忘年会とか送別会とか、宴会系が大の苦手でした。不特定多数の人が同じテーブルに座ってランダムに会話するという形式が基本的にムリですね
気心が知れた人3~4人くらいまでであればいいのですが。

付き合い重視で空気を読みすぎ、大事な何かをすり減らし続けると、そのうち「世間」のために仕事をするようになるのではないか、という懸念を自分は持っている。

常に空気を読んで行動する常識人においてはそうなのでしょう。
私は空気など全然読まないので、すり減らす事はありません(苦笑)。
そもそも空気読んでたら、今回のようなタイトルと内容の書籍はたぶん出版していないと思います。

普通の医者の「世間」とは「EBM信奉、ガイドライン遵守」である
「抗パーキンソン薬や抗認知症薬は基本的に、規定量まで増量・維持」の世界である。

普通に臨床実地医家をやっていたら、特にパーキンソン病とか認知症とか脳内の神経伝達物質の状態がデータ表示できるわけでもないので、EBMとかガイドラインではとてもじゃないが、対応できない事がよくわかりますね。
例えば、レボドパの少量分割投与などはEBMは証明されていませんが、ウェアリングオフとかジスキネジア回避のために普通に行われてますね。
EBM絶対主義が叫ばれてから、医療がゆがんだ方向に行ってるような気がします。EBM 丸投げで自分の頭で悩んだり考えなくなったし、むしろ無責任な医療になったのではないかとすら感じます。
そもそもEBMのない漢方セミナーになぜあれだけの医者が集まるのか?

本書籍を読めば、小生が「世間」で仕事をしていない事が良く分かる。

空気の読めない、生来の天邪鬼気質というだけなのかもしれませんが。
自慢ではないが、人の言う事に素直に従ったことのない人間ですので。

パーキンソン病に関わる医療従事者は、自分の襟を正すために。そして
パーキンソン病患者さんとその家族は、知識を得てわが身を守るために、本書籍を一読する事をお勧めする。

むしろ後者の目的で書いたのですが、知人の神経内科医数名からの評判は悪くなかったようなので、ひとまずは安堵しています。
ここまで強力な言葉での推薦を著者としては本当に感謝したいと思います。



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by shinyokohama-fc | 2018-03-12 12:07 | 治療

鹿児島認知症ブログ・書評(3) 抗パーキンソン薬が際限なく増える理由


書評(3)抗パーキンソン薬が際限なく増える理由

減薬で患者さんを良くすることは一種の解毒であり、解毒が治療の一つと言えるのであれば、我々がやっていることも世間では治療と呼んでもらえるのかもしれない。だが、それは本来的な意味での病気の治療とは全く別物であろう。

拙著108~113ページの症例3のように、一見して前医の多剤増薬によって病状が看過できないほど著しく悪化している(多くは薬剤性せん妄)場合は、原因薬剤の中止を指示するだけでなく、111ページ5行目に書いてあるように「週に1回通院していただいて、解毒目的のグルタチオン点滴治療」を実施せざるを得ないことがあります。
これは、パーキンソン病に限った事ではなくて、むしろ多くの愁訴を有する病気、例えば「レビー小体型認知症と診断されている症例(本当はそうではない)」などに多く見られがちです。
初めから、不適切な投薬を重ねたりしなければ、このような事態は起こりえないわけで、解毒に成功して副作用から解放されたからといっても、本来あるべき姿に戻っただけなので、治療したという実感や達成感はないです。

患者さんに、パーキンソンの要素を見出したときには、
#1 パーキンソン病の可能性がある
#2 パーキンソン病は個人差が非常に大きい病気である
#3 数年後にパーキンソン病ではない病気だったことが判明するかもしれない
#4 初期から抗パーキンソン薬を増やしすぎると後々大変な目に遭う事が多い
#5 抗酸化治療のグルタチオン点滴療法は、短期的にも長期的にもメリットが大きい
このような事をお伝えしている

まず第一に言いたかったのは#2です。それはこの病気を主として診療している神経内科医であれば、誰でも知っている事です。
振戦優位型と無動型、運動障害の重症度が全く違う、別の病気に見えます。
50歳前後で発症した方と、80歳以上で発症した方もまるで違います。
発症して20年以上経過して認知症にならない方もいれば、2年で認知症になってしまう方もいます。幻覚の出にくい方と出やすい方もいます。

#3に関しては、ずっと前医でパーキンソン病だと言われて、そうだと信じて診ていたが、実はやはり違っていた(皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)など、拙著141ページから)というのはよくあります。これについては、また改めてこのテーマで後日書きたいと思います。

#4に関しては、よくあるパターンです。この1~2週間で拙著を購読したのが契機で、初診で受診された方々はこのパターンでした。
拙著165ページ3行目~「初期からレボドパを大量に投与すると、効果が早く失われやすい」実はこれは海外の論文からの報告です。
発症から10年以内にウェアリングオフ現象が深刻になっている方々にお話を聞いてみると「初期からレボドパがどんどん増やされた」と言われます。
先々の事を考えれば、「レボドパをいかに増やさずに治療するか」というのが、本来神経内科の専門医が考えるべきことではないでしょうか?

#5に関しては、短期的に前医の処方を解毒する目的で実施するのは有意義です。本来は解毒剤ですから。しかし長期的に有意義(メリットが大きい)かと言われると果たしてどうなのか? #2のごとくパーキンソン病そのものに多様性が大きく、#3のように別の病気であるという可能性を考えますと、「グルタチオン点滴が効果があるケースも一部あるかもしれない」といった程度でしょうか。常識的に考えて、たとえ効果があったとしても、点滴の効果というのは長くは続きません。
このテーマについては改めてブログで書きたいと思います。

食事を見直して糖質の過剰摂取があれば制限し、腸内環境を整えることの重要性をお伝えしている

パーキンソン病の場合は、αシヌクレイン(レビー小体)が腸内の神経叢(腸管を動かす自律神経の塊)にたまるので、多くは便秘になりがちです。それゆえ
腸内環境が病気を左右すると言っても過言ではないでしょう。

パーキンソン病の病初期で当院を訪れ、説明を受けた患者さんの多くは怪訝な表情をしている。そして、いつのまにか通院が途絶えていく人達もいる
自分の伝え方もあるのだろうが、相手側の理解力の乏しさとも決して無縁ではない。
また、パーキンソン病ゆえの「治療薬を過剰に求めすぎる現象」も関係してるかもしれない。

小生の外来では、パーキンソン病の方が最も再診率が高いです。むしろ認知症のほうが、本人の病識が乏しい、薬が効かない、などの理由で、通院が途絶えていく人が目立つようです。
我々が外来で説明した事が頭に残らない事も多いので、文章化して個別の病気に対して、プリント資料をお渡しするのも一つの方法だと思います。
限られた時間において、医療の内容を一般の人に説明するには時間がかかります。しかし、パーキンソン病の患者さんとその家族というのは、基本的に真面目な性格で勤勉な方が多いので、すでに情報収集したりしていますのでむしろ「話が早い、通じやすい」方々が多いので、こちらもストレスが少ない気がします。
「治療薬を過剰に求めすぎる」患者さんは小生のクリニックには来ません(苦笑)。なぜならホームページに「減薬主義」を掲げているので。
実際「世間」には増薬主義の患者さんや医者が多いようですので、「減薬主義」というマイノリティーでやっていくのは大変ではありますが。

通院が途絶えた患者さんは、別の病院で多くの抗パーキンソン薬を盛られているのか、それとも自ら求めているのだろうか、と想像すると切ない

薬の種類が10種類近くあるにもかかわらず、保険医療における制限が全くないというのが、そもそも大問題です。

少量の抗パーキンソン薬で軽度症状改善があったのに、患者側がその効果に満足できずに増薬を希望する事はかなりある。増量に伴う中長期的なリスクを説明し、現状維持が無難であることを理解してもらうためには時間がかかるのだが、自分の希望に医者が応えてくれないことに失望して去っていく患者もいる

薬物中毒にならないように、リスクを説明してブレーキをかけるのも臨床医の大事な役目です。
小生の場合はこの4年でそのようなケースは記憶にないです。なぜなら「減薬主義」を掲げているので、そのような方が訪れるケースはないからです。

多くの患者を外来で診なければならない医者は、一人の患者に多くの診療時間を割くことができない。そのため時間のかかる作業は非効率的とみなして端折られがちである。患者に去られたくない医者は、それが決して本意ではなくても、求めに応じて薬を出すことがあるかもしれない。その結果で副作用が発現しても、増薬が本意ではなかった医者は、心の中で「自分で求めたのだから、自己責任でしょ」くらいに思っているのかもしれない。

これはまさに患者が過剰に殺到する病院における神経内科の外来、特にパーキンソン病外来における本質的かつ根源的な問題をダイレクトに表現していただいたと思います。
外来診療の限られた時間では、副作用のリスクはすべて説明しきれない事も多いであろうというのが、拙著を書いた意図の一つです。
薬による有害事象は、薬を求めすぎた患者にも責任の一端があるという事です。これを回避するのは、患者と医者がよく薬をどうするかについて時間をとって話し合う必要があるのですが、忙しすぎると面倒になり、増薬一辺倒になりがちのようです。それで患者側の医療側への不信感が増幅します。

患者に対して驚くほどの冷淡さを示す、神経内科医を見かけるたびに、そのような医者の持つ心的風景を、自分は上記のように想像している

そのとおりですね。小生も、かつて患者が殺到する多忙な病院外来ではそうでした。というか、冷淡にならないと外来が回らないのですね

抗パーキンソン病大量投与に関しては、処方元の医者側にも多くの問題はあるにせよ、一部は患者側にも、現在の医療制度にも起因するのではないだろうか。

2年前の診療報酬改定で、抗精神病薬については制限が制定されたのは記憶に新しい事ですが、抗パーキンソン病薬については相変わらず無制限です。
カナダのように、薬をすべて保険外にするというのが困難だとしても、薬に関しては一定額以上は保険対象外にするとか何らかのの措置を講じないと、現状のような野放し状態では保険医療そのものが破綻してしまうのではないかと心配されます。

次回はこのシリーズの最終回になります。


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by shinyokohama-fc | 2018-03-09 12:32 | 治療

無動タイプは減薬困難、DBSも考慮

拙著を読まれたのがきっかけで遠方から受診した方が2名おられました。

皮肉な事に「減薬すれば良くなる」に全く該当しないケースでした。

何事にも「例外」というのは存在します。

減薬が困難なケースというのは
「65歳以下で発症した、無動(固縮)型・アキネジアタイプ」
具体的には、レボドパ配合剤の効果が1~2時間しかもたない状況になっているタイプのことです。ある意味、
最もパーキンソン病らしいタイプであり、
他のパーキンソン病類似の病気では絶対に起こりえない現象です
このようなタイプの場合は、レボドパ配合剤を少なくとも6回以上、場合によっては10回以上少量分割服用にする必要があります。

今回、来られた患者さんは、自主的に10回以上に分割して服用しておられましたが、効果が1時間もたない状況のようでした。

実は私が定期に診ている患者さんにも数名このような方がおられます。
中には40代後半、50代前半の仕事をしている方もおられます。仕事中に動けなくなるというのは大変つらい事だと思います。

ウェアリング・オフ現象、オンオフ現象と呼ばれます。
発症して5年以内にレボドパ配合剤が増量された
場合は、この現象が起こりやすいというのは、海外の論文にも掲載されています。
すでにレボドパが増やされてしまって、オンオフ現象が顕著に現れているケースには、減薬メソッドは通用しません。

ウェアリングオフ現象に適応のある薬剤は次の3つです。
1)ゾニサミド (25mg)錠 1115.9円
2)イストラデフィリン(20mg)錠 782.4円
3)エンタカポン(100mg) 217.3円×最大8回/最大1600mg

薬価が高額です。高額であるがゆえに、
確実にオフ現象が軽減したと言えなければ継続する意味は全くないです。


1)に関しては、ふるえ(振戦)を軽減する効果は期待できますが、拙著にも書いたように、ウェアリングオフに対する効果が現れるまでは時間がかかるので、最低3か月以上服用して判定せよとなっています。実際には3か月も待ってられるのか?という事と、小生の経験では前医で処方されて実際には数か月以上服用しても効果がはっきりしないケースが多いようで、高額でもあり、減薬対象になりやすい薬です。

2)に関しては、単独で使用するよりは、むしろごく少量のドパミン・アゴニストと併用することによって、顕著なウェアリングオフ効果を発揮するケースが多いようです。ドパミンアゴニスト単独使用で増量すると、以前のブログでも書いたように、元々副作用が出現しやすい(多くは非運動症状の悪化)ので、少量で効果を発揮できるというのは理想的です。

3)はレボドパ配合剤を補完する作用の酵素阻害剤であるため、現状ではレボドパを服用するのと同じ回数で服用する必要があります。ゾニサミド、イストラデフィリン、ドパミンアゴニストが1日1回であるのに比べると服薬錠数・回数がが増える事が分が悪い
と思われます。レボドパ配合剤の効果時間をどれくらい伸ばせるのかは諸説あります。ある著名な先生が書いた教科書には30分と書いてますが、製薬会社の発表データでは90分になっています。もし前者であればメリットはさほど大きくないという事になります。

いずれにしても、根治療法ではなく対症療法なのですから
オフ現象軽減に効いていなければ、中止を申し出る
べきでしょうね。

イストラデフィリンが登場して2~3年の頃は、私はこの薬を処方しておらず、著名な先生も「この新しい薬をどう使っていったらいいのか?」とコメントしていたくらいでしたが、ドパミン作動薬ではないが故にドパミンアゴニストに代表されるドパミン作動薬特有の副作用が出にくいという点がアドバンテージになっているのではないかと推定されます。

レボドパ配合剤分割服用+イストラデフィリン+ドパミンアゴニスト
レボドパ配合剤分割服用+エンタカポン
このいずれかでもウェアリングオフが穴埋めできない場合は、薬物治療の限界と考えます。拙著にも書いたように、4種類以上の併用は薬剤せん妄に至るリスクが高まるので意味がなく、むしろせん妄、精神症状によるQOL低下が深刻化します。それは拙著の症例に書いたとおりです。

何より4種類以上の併用は大規模臨床試験などで有効性や安全性は証明されていません。神経系薬剤のポリファーマシーを何年も続ける事によって何をもたらすのかは拙著にくわしく書いたとおりです。

既存の経口服薬による薬物治療の限界ケースの場合は、
1)脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation)
2)胃ろうによるレボドパ持続注入

のいずれかになります。
侵襲的な治療であり、高額医療にはなりますが、パーキンソン病という病気は先の長い病気ですので、QOL 機能予後を考慮すれば導入する価値はあると思われます。
ただし、いかなる治療も効果・副作用には個人差があるという事は理解する必要があるでしょう。



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by shinyokohama-fc | 2018-03-06 12:32 | 治療

パーキンソン病に抗精神病薬はNG

パーキンソン病に抗精神病薬を使っていいのでしょうか?神経内科専門医として25年多くの症例を診てきた経験で言うとNGと言わざるをえないです。

リスペリドン、ハロペリドール、オランザピン、クロールプロマジン、クエチアピン、アリピプラゾールとかいろいろありますが、
薬による深刻な有害事象、特に致死的な「悪性症候群」に関する「十分な説明と同意」せずに、軽々しく抗精神病薬を処方する医者は信用できないとはっきり申し上げておきます。
おそらく、以下に説明するような「悪性症候群」の患者を一度も診た経験がないのでしょうか? 「知らない」というのは本当に怖い事だと思います。

自分で処方した薬で作った病気を自分では事後処理した経験がないので、罪の意識も希薄なのでしょう。そういう臨床的な感覚の乏しい医者に抗精神病薬のような劇薬を処方する資格ははたしてあるのでしょうか?

パーキンソン病の治療に関して記載された成書には、定型抗精神病薬の使用は極力さけるようにと明記されています。定型抗精神病薬というのは、以下のとおりです。
①ブチロフェノン系)
ハロペリドール(セレネース🄬、リントン🄬)
②フェノチアジン系)
クロールプロマジン(コントミン🄬、ウインタミン🄬)、レボメプロマジン(ヒルナミン🄬)、プロぺリアジン(ニューレプチル🄬)

それに対して後年に開発された非定型抗精神病薬は以下のとおりです。
①セロトニン・ドパミン遮断薬
リスぺリドン(リスパダール🄬)、パリペリドン(インヴェガ🄬)、ぺロスピロン(ルーラン🄬)
②多元受容体作用薬
クエチアピン(セロクエル🄬)、オランザピン(ジプレキサ🄬)
③ドパミン受容体部分作動薬
アリピプラゾール(エビリファイ🄬)

なぜ定型抗精神病薬が特にNGなのでしょうか。それは以下の理由です。
小生の臨床経験では、たとえごく少量であっても①~③は起こりえます。
2種類併用や長期服用であればなおさら確実に以下の問題が起こります。
①悪性症候群を起こす

②ジスキネジア、ジストニアなど深刻な不随意運動をおこす
③運動症状(動作歩行)が悪化する


何が一番危険かと言いますと、それは言うまでもなく悪性症候群でしょう。
抗精神病薬はすべてですが、特にハロペリドールで高率に起こります。

急激に全身の筋肉がガチガチにこわばって動けなくなり、39~40℃前後の高熱が続き、意識がなくなり、大量の発汗、血圧が低下、脈拍が頻回、尿が出なくなり、ショック状態。生命の危機に切迫した状況に至ります。

小生は今から20~25年前のまだ医者をはじめて間もない頃に、救急指定病院で勤務していた時代に、「神経内科」だからという事で、非常に多くの「悪性症候群」の患者を受け持つという経験をしました。

ほとんどは精神科で診られていた患者が救急搬送されたものですが、時には認知症高齢者の入院後の夜間せん妄でハロペリドールの注射を打たれてから発症したというケースもありました。

当時まだ若かったので、「なぜ精神科の処方薬で起こった重症を、自分が集中治療室で治療しなければいけないのか?薬を処方した精神科医が事後処理をするべきだろ」と理不尽さに怒りに震えながら患者を診ていたのを未だに昨日のことのように覚えています。

しかし、若い時にこういう抗精神病薬の有害事象の極限状態ともいうべき症例を数多く経験して、その悲惨さを肌身にしみて苦労して体験したのは良かったと思います。自分ほど悪性症候群をたくさん診療した医者は他にいないのではと自負しているほどです。

原因薬剤で圧倒的に多かったのが、ハロぺリドールでした。しかし小生が診た症例で最も重症だった症例の原因薬剤はクロールプロマジンでした。

この症例は急性期に重度の肝不全と播種性血管内凝固症候群(DIC)まで引き起こし、意識障害が1週間以上続いてひどい出血傾向にまでなったのですが、まだ50歳と若かったために集中治療で奇跡的に助かりました。緊急入院してちょうど1か月後に病室で座ってご飯を食べている姿を見て感動して涙したのを覚えています。貴重な症例として内科学会の地方会でも発表させていただきました。

②の不随意運動に関しては、以前のブログにもかなり書きましたので、詳しくはそちらを読んでいただけたらと思いますが、やはりハロぺリドール、クロールプロマジン、最近は非定型のアリピプラゾール、ベロスピロン、などでもジスキネジアが出ます。中には服用して2~3年たってから全身に現れる「遅発性」のケースが少なくないのです。
抗精神病薬を使う場合は短期間にとどめましょうというのはそういう理由だと思いますが、実際は漫然と続けて服用されているケースがほとんどで、小生の外来に来た時はもうすでに長期間服用していて、こちらとしてはなす術がないという事が多いです。


近年このようなジスキネジアにも手術治療が試みられていて、成果をあげているようですが、統合失調症で抗精神病薬を長年服用せざるをえない症例の場合です。

③の運動症状が悪化するというのは、しごく当然のことです。抗精神病薬はすべてドパミン阻害作用がある薬だからです。
特にリスぺリドンのドパミン阻害作用はかなり強力で、パーキンソン病でもない高齢者でも精神科医からの処方で少量(1~2mg)でも全身がガチガチに固まるケースがありました。

最もドパミン阻害作用が弱いので安全だと言われているアリピプラゾール少量(3mg/日)でも、幻覚の訴えがひどい、脳卒中片麻痺の高齢者に精神科医から処方されて、全く歩けなくなったという事で来院したケースも最近ありました。クエチアピン12.5mgに変更して、かなり歩けるようにはなりましたが、本音を言えば、クエチアピンも中止したいところです。

パーキンソン病治療ガイドラインで推奨されているのは、クエチアピンだけですエビデンス(科学的根拠)的にはランダム化比較試験ではなくオープンラベル比較試験での有効性しか証明されていませんが、小生の使用経験でもこの薬をごく少量(12.5mg)でしか使用した事がありません。
幸いなことに悪性症候群、深刻な不随意運動、運動症状の顕著な悪化の報告例も他の抗精神病薬とは違って、ほとんど見られないようです。


幻覚・妄想に対して、唯一ランダム化比較試験で有意差・有効性が証明されたのはクロザピンだけのようですが、わが国では精神科病院に入院の上で、精神保健指定医によるという条件付きの処方となりますので、我々には事実上まったく使用できない薬です。

パーキンソン病の幻覚・妄想に対しては、以前のブログで紹介した、ピマバンセリンという薬が2年前から米国では使用できるようになったようですが、日本では使用できる目途はたっていません。

未だにハロペリドールとかが使われているのが現状です。昔から日本は新薬認可に関しては、世界でもかなり後進国ですので、仕方ないとあきらめるしかないのかもしれません。
やむをえずに抗精神病薬を使う場合は、十分な説明と同意(同意書をとる)が必要なのは言うまでもありません。


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by shinyokohama-fc | 2018-01-13 12:33 | 治療

抗精神病薬の死亡リスクを知っているか?

「抗精神病薬の死亡リスク」
認知症患者を対象に抗精神病薬を使用したグループと使用しなかったグループで180日間の死亡リスクを比較した大規模コホート研究があり、それぞれの抗精神病薬の死亡リスクの増加を示した結果が示されました。
ただし、この研究では認知症の重症度と行動心理症状の重症度に関する情報が不確かで、二重盲検試験ではないようです。

JAMA Psychiatry 72(5):438-445, 2015 「認知症のある患者群における抗精神病薬の死亡リスク」
1)ハロペリドール ; A(3.8%) B(26人)
2) リスぺリドール ; A(3.7%) B(27人)
3) オランザピン ; A(2.5%) B(40人)
4) クエチアピン ; A(2.0%) B (50人)
A) 死亡リスク上昇率、B) 1人の死亡が生じるまで何人が投薬を受けるかを示す指数(数が少ないほど危険)

ハロペリドールとリスぺリドンのリスク(危険性)が群を抜いて高いことがわかると思います。
私の臨床経験では、この2つの薬剤は悪性症候群の発生率が高い、すなわち薬剤性のEPS(錐体外路症状)が非常に出やすい薬剤だと言えます。

悪性症候群というのは、わかりやすく言いますと、急速に全身の筋肉がガチガチに固まってしまい、まったく関節が動かない状態になる、あるいは38~40度の高熱が出る、意識がもうろうとなる、という状態です。
それ以外にも、心臓の致死的不整脈が発生しやすく、心臓突然死が多いという報告が昔から言われています。

クエチアピンに関しては、この薬剤性のEPS が比較的少ないと言われていて、PDDやDLBの幻覚・妄想を抑制する薬剤として、認知症学会、神経学会、パーキンソン病学会などが推奨していますが、やはりリスクがあることに変わりはないので、介護者・家族にリスクに関する十分な説明を行い、同意・承認を書面で得ることが必要だと考えます。

「認知症の行動心理症状に対する抗精神病薬の使用は、専門医によることが望ましい」と治療ガイドラインには書かれているようですが、専門医というのは「認知症学会」「老年精神医学会」なのか?「精神科学会」なのか?「神経学会」なのか?どれを指すのかよくわかりません。

一口に行動心理症状と言っても、ATDか、DLBか、PDDか、FTDか、AGDか、PSPS/CBSかでまるで違います。個人的には使っても危険性が低いと言えるのは、75歳以下のATDだけです。
特に危険なのは、DLB、PDD、AGD、PSPS/CBSです。前者は抗精神病薬に対する過敏性があるという事で有名ですが、実は後者も前者以上に過敏性があるという事はあまり知られていません。
また若年発症のFTDに関しては抗精神病薬はほとんど効果がありません。

それゆえ、抗精神病薬を安全に使える認知症症例はほとんど存在しないという事になります。
「ベネフィットとリスクを天秤にかけて総合的に判断せよ」とほとんど現場丸投げの姿勢ですが、私の経験では抗精神病薬の使用によるベネフィットはほとんどないと言えます。効果も2~3か月くらいしか続かず、根本的な解決にはならずです。特に長期使用によるデメリットは計り知れないものがあります。

長期使用で問題になるのは、悪性症候群以外に、嚥下障害、動作歩行障害、姿勢異常⇒転倒、不随意運動などです。
年齢を重ねれば、病気は進行して、正常な神経細胞が減っていくのですから、副作用の出現が避けられないものになるというのは自明の理なのです。それゆえ原則的に短期間の使用にとどめるべきなのだと思います。

最近も薬剤性EPSが少ないと言われているアリピプラゾールですら、わずか1~2mgで歩けなくなったDLBと思われる症例がありました。83歳の女性です。元々脳卒中があり、左片麻痺で杖歩行している方でした。使用目的は幻覚を抑えるためでしたが、デイケアに行けば幻覚はなくなるそうです。脳卒中とか頭部外傷などの既往のある方は特に危険です。

現在、日本には安全に幻覚を抑えられる薬は存在しないと思います。最も幻覚を抑える作用の高い、抗精神病薬はハロペリドールですが、上記のとおり、死亡リスクが高いので、私は処方する事はほとんどありません。
幻覚を抑えるためには、幻覚を起こす原因の薬をやめる、減らすことがまず第一ですが、相変わらず幻覚を誘発しやすい薬剤があちこちで処方され続けているのが現実です。

かなり以前のブログで紹介した、ピマヴァンセリンという薬が幻覚を抑える薬としては現存する薬としては最有力ですが、残念ながら、日本でこの薬が認可されるのはいつになるのか?というのが現状です。
本来禁忌的な薬である抗精神病薬にいつまで頼らなければならないのか?今後は80歳以上の高齢者が激増して、AGD 、PDD、DLB、PSPも増えそうな現状を考えればかなり心配です。

次回のブログでは、幻覚を起こしやすい薬剤について紹介しようと思います。
今われわれにできる事は、高齢者、特に認知症などの神経変性疾患、脳卒中後の方々に対して幻覚をおこしやすい薬を極力使わないという事に尽きると思います。



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by shinyokohama-fc | 2017-12-09 17:29 | 治療

身体診察されずスルーされていた重大な病気

今回のブログは、四半世紀(25年)、臨床神経の診療に従事してきた、一介の臨床医として、あまりにも看過できないエピソードであったので、ここに紹介することにしました。
61歳の女性で2~3か月前から右足がガクガクするという自覚症状で、1週間前に当院を受診されました。
これまで、地元の脳神経外科のクリニック、整形外科のクリニック、内科のクリニックを受診されており、当院が4件目の受診でした。1件目の脳神経外科では、身体診察されずに頭部MRIで脳画像の検査診断だけで、異常なしと言われて終わり、2件目の整形外科でも、身体診察されずに腰椎レントゲンの検査診断だけで、異常なしと言われて終わり、3件目の内科を受診したが、わからないので「神経内科で診てもらえ」と言われて受診されました。
まず歩行を観察すると完全に「痙性対麻痺(両下肢の筋肉がつっぱるため、膝関節がスムーズに曲げられない状態で歩く)」の歩行で、かなり歩きにくそうでした。ベッドに寝かせて診察してみると、両下肢の膝蓋腱反射とアキレス腱反射が明らかに亢進しており、両足にバビンスキー反射(足の裏の外側を下から上へ縦にこすると、母趾が背屈する反応)が顕著に見られ、両足の足間代・クローヌス(足関節を他動的に動かすと連続性にガクガクした動きが起こる)、両下肢とも伸展位から屈曲位で折り畳みナイフ現象(膝関節を屈曲するときに抵抗)がありました。
20~30歳くらいの若年者でこのような所見がある場合は、遺伝性の痙性対麻痺をまず考えますが、通常、60歳以上になってから、このような症状が出現するとは思えず、常識的に考えると、脊椎の病気による外的な脊髄の圧迫によるものか、九州南部出身者に多いと言われている、HTLV-1というレトロウイルスによる脊髄症かいずれかだと推定されました。後者は関東在住の方では非常にまれですので、前者であろうと推定したので、脊椎手術も可能な脊椎外科が専門のクリニックに紹介しました。
頸椎MRI/CT/レントゲン検査が実施され、頸椎レベルの「後縦靭帯骨化症(OYL)」による脊髄症と診断されたようで、「頸椎椎弓形成術」の手術予定との事でした。紹介した者としては、おおよそ診断が予想通りであり、手術で改善が見込める病状であったという事でとても安堵しました。
知っている方は当然ご存じとは思いますが、今回のケースは本来、脳神経外科や整形外科で診断されなければならない病気・病状でした。あれだけ病的な歩行障害があるにもかかわらず、身体の診察が全くなされずに、まったく的外れの検査がされて「異常なし」として終わらせるとは、一体どういうことなのか??と感じました。
私が近年感じることは、20年前とは違って、MRI やCTなどがかなり普及しており、そういう検査機器を所有しているクリニックが当たり前になりつつあるようです。検査を目当てに患者が来る(検査で異常なしと言われて安心したい患者が多い)という側面もあるようです。日本では健康保険制度のおかげで、諸外国よりはるかに手軽にCTやMRIの検査が可能です。近年はクリニックでもこういう高性能な検査が当たり前にできるようになって、その反面、今回のように医者が身体診察を一切せずに的外れな検査をオーダーして検査結果だけを見て診断しているケースが非常に多いという点が非常に気になります。
私がよく取り上げるテーマである、パーキンソン病やアルツハイマー病などの脳神経変性疾患にしても、大病院だと、医者は簡単な質問(問診というレベルには程遠い)をするだけで、神経心理検査、MRI検査、核医学(シンチグラフィー)検査をオーダーして、その結果を2回目の診察の時に、電子カルテのPCモニターで確認して結果を確認して、それだけを元に診断した結果を伝えるだけ。そういう外来診療が少なくないようです。かつて「ベッドサイドの臨床神経学」と言われた、基本的な神経診察である、ベッドに寝かせたり、手足を動かしたり、ハンマーを叩いたり、歩かせたりとか、身体診察は一切せず、患者さんに指一本触れることはなく診察が終わるという事も少なくないようです。当院に来た患者さんやご家族からそのような話をよく聞かされます。この2~3年で検査結果だけを妄信したが故の大病院による明らかな誤診ケースも数多く診てきました。一つの要因としては、大病院の外来に患者が殺到しすぎているという日本独自の状況もあり、とても身体診察に時間を割く余裕がないのかもしれません。
検査偏重主義により、身体診察が軽視されての、今回のような重大な病気の見落としというのも本末転倒ではないかと思います。特に神経を診るエキスパートであるはずの、脳神経外科医、整形外科医、神経内科医が身体診察をしないというのは常識では考えらえない事です。せめて医者であれば最低限の身体診察くらいはしてほしいものです。


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by shinyokohama-fc | 2017-11-09 19:13 | 治療
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