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カテゴリ:治療( 134 )


レビー小体型認知症の多様性に応じた薬物選択

先日11月2日(土曜日)
午前中のみで診療を終了して、新幹線で大阪、堺のホテルに向かいました。
「神経変性疾患セミナーin 南大阪」で、かつて所属していた医局の先生方に講演を依頼されました。

講演のタイトルは
「レビー小体型認知症の多様性に応じた薬物選択」というテーマでした。
時間は60分間で
レビー小体型認知症(以下DLB)の診断・分類・薬物選択の功罪などについて2か月かかって作成したスライド100枚以上になりました。

開業して5年間での、実際の臨床経験と最新の医学論文・医学書などの報告知見をすべて網羅した内容になりました。
健康保険適用外の薬物についてはルールにより表示できませんでした。
医学書にもDLBに推薦される薬物として明記されている薬物ではありますが、ルールなのでやむを得ません。

DLBには「認知機能低下症」だけではなく、「睡眠(覚醒)障害」「精神障害」「自律神経失調症」「運動障害(パーキンソニズム)」の5つの側面があり、それぞれの薬物選択の話をしました。
「睡眠導入薬(ベンゾジアゼピン系作動薬)」「抗精神病薬」「コリンエステラーゼ阻害薬」「ドーパミン受容体刺激薬(アゴニスト)」の諸問題についても最新知見を交えて詳しくお話ししました。

私の講演の前には、福岡大学医学部の講師の先生が
「パーキンソン病の運動緩慢に対するアプローチ」というテーマで講演されました。非常に素晴らしい内容の講演で感銘を受けました。

南大阪・堺地区に帰るのはおそらく15年ぶりくらいでしたので、講演終了後は、かつて所属した同じ医局の先生と何年ぶりかに会って話せたのがよかったです。

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会場ホテルより堺港から神戸・六甲山方面を望む



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by shinyokohama-fc | 2019-11-08 09:46 | 治療

神経内科のポリファーマシー


神経内科による、ポリファーマシー(多剤併用)は日常茶飯事のようです。
神経系に作用する薬剤が5種類以上、使われることがザラにあります。

以前のブログでも取り上げましたが、パーキンソン病治療薬をすでに7種類併用している症例に8種類目をトッピングして有効であったという発表を堂々とやっている講演会を聴いて、呆れ果てたことがあります。

いかなる神経変性疾患でも、4種類以上の神経作用薬については安全性・有効性について科学的根拠はありません。臨床試験がされてないからです。

特に、アルツハイマー病、パーキンソン病以外の神経変性疾患、神経難病については臨床試験はまったくされていないので、そういう病気に対してポリファーマシーというのは非常に危険を伴う方法になります。

今回紹介する症例は、70代後半の男性。どうやらパーキンソン病と診断されているようですが、5年以内に自立歩行不能、車椅子使用になっていて、全く会話できなくなっていたので、国際学会(MDS)の定める除外診断基準としては、パーキンソン病は確実に否定される症例です。頸部~脊柱(体軸)の筋強剛が強いのが印象的でした。

処方薬は神経系薬剤だけでも以下の7種類ありました。
1)レボドパ・ベンセラジド(100)3
2)ドロキシドパ(100)3
3)チアプリド(25)6
4)リスペリドン(1)1
5)エスゾピクロン(1)2
6)ドネぺジル(10)1
7)メマンチン(5)3

まず考えられるのは、ドネペジル10mgを服用していることで、体軸性筋強剛、不眠が誘発されていると思われます。
ドネペジル10mg+チアプリド150mg+リスペリドン1mgだと、3つとも薬剤性錐体外路症状(EPS)・パーキンソニズムの原因薬剤なので
これだけでも相当な影響があると思われます。
ここまで動作が悪い症例に対して、ドパミン阻害作用の強い、抗精神病薬を2種類も処方している意図が理解できません。
どう見ても、アルツハイマーではない症例に対して、ドネぺジル10mg+メマンチン15mgを処方する意義はないと思われます。

明日は、港北区内の地域ケアプラザにおいてセミナーがあり、「脱ポリファーマシー」という医学書をおそらく初めて出された(編集された)先生がゲストとして来られて、講演する予定でした。しかし、台風来襲の影響のため、来浜が難しくなり、中継で講演されることになりました。
この医学書では、内服薬の種類が多くなった理由として以下の点が挙げられていました。
1)薬剤情報を製薬サイドから入手することによるバイアス
2)先輩医師への遠慮
3)エビデンスのない謎の薬の人気
4)薬剤カスケード
5)多診療科併診
6)薬の好きな患者
7)薬の副作用情報を報道しないメディア

拙著においても「パーキンソン病、少しずつ減薬すれば良くなる!」は、
パーキンソン病における、神経内科医によるポリファーマシーを批判した主旨の書籍です。主に第6章にその問題について書きました。
(6-3)ポリファーマシーと薬剤カスケード
(6-6)ポリファーマシーの弊害

決して薬剤による治療そのものを否定しているわけではなく、正しい薬の使い方をしてほしいと訴えているだけなのです。

アルツハイマーでもパーキンソン病でもない神経難病に対して、アルツハイマー病の治療薬とパーキンソン病の治療薬を同時使用するということが、保険医療として認められている?という現状には嘆息するしかないです。




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by shinyokohama-fc | 2019-10-10 17:19 | 治療

コリンエステラーゼ阻害薬と姿勢保持障害/姿勢異常


認知症・神経内科の識者は教科書や雑誌にはよくこう記載されています。
「コリンエステラーゼ阻害薬は姿勢保持障害に有効である」

姿勢保持障害は別名、姿勢反射障害とも呼ばれます。
姿勢反射とは、外力が加わったとき、重心が移動したときに、姿勢を立て直すために、姿勢保持する筋肉の緊張の調整が行われることです。
転倒せず、安定して重心を移動する、歩行動作には必要な機能です。

パーキンソン病の歩行・姿勢保持障害の原因として、脳幹の脚橋被蓋核(PPN)におけるアセチルコリンの関与(アセチルコリン経路Ch5/6)が考えられることから、コリンエステラーゼ阻害薬の転倒・歩行障害に対する効果が検討されたとのことです。

23例を対象にした二重盲検交差試験でドネぺジルの効果が、114例を対象にした二重盲検交差試験でリバスチグミンの効果が示唆されました。

転倒イベントが明らかに減ったという報告ですが、そもそも純粋なパーキンソン病は、レビー小体型認知症は、私が診ている症例においては、進行期でも安全な環境であればそこまで転倒イベントが多い病気ではないのですが???

しかしこれらの薬剤には「歩行障害・転倒予防」に対する保険適用はないので、リスクを十分考慮したうえで投与を検討すべきと書いてあります。

そのリスクとは振戦の増悪、易怒性など精神症状の悪化、不整脈、低血圧あなどと書かれていますが、それよりも問題なのが、前回のブログでくわしく書いた、姿勢異常(首下がり、腰曲がり、体幹側屈/ピサ徴候)なのです。

コリンエステラーゼ阻害薬によるアセチルコリン賦活は病的な過度の筋緊張を誘発します。純粋型アルツハイマー病でそれが誘発されるケースはほとんどないと思いますが、パーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(DLB)では非常に高率に病的な筋肉の過緊張が起こり、ジストニアにいたります。PDでは四肢末端、DLBでは頸部~体幹(体軸)に強く起こります。

以前は専門家による「パーキンソン病関連の医学書とか医学雑誌」には、23例のRCTを元に「パーキンソン病の姿勢不安定にはドネぺジルを使え」という表現が一時期目立っていましたが、近著ではかなりトーンダウンしたようです。

それは、不都合なことにドパミンアゴニストのみならず、ドネぺジルにも腰曲がり、体幹側屈/ピサ徴候の報告が相次いだからです。
私の経験でいうと、リバスチグミンでもかなりそのようなケースが確認されましたので、ドネぺジルとほぼ同等ではないかという印象です。

多系統萎縮症(MSA)や進行性核上性麻痺(PSP)では病気そのものの症状として姿勢異常が出現するのですが、PDという初期の診断をかたくなに変更せずに、上記の論文を信用してドネぺジル(リバスチグミン)を追加処方してしまって、姿勢異常をさらに悪化させてしまって立位が保持できず歩けず車椅子になってしまうというケースが結構よく見かけます。

MSAやPSPにコリンエステラーゼ阻害薬を処方するというのは一番やってはいけない行為だと思います。

たとえ最初にPDという診断を下したとしても、急速な運動障害の進行~車椅子という経過をたどれば、それはPDではなく、MSA-PかPSP-Pの可能性が高いわけです。このような神経難病においては、ドパミンアゴニストもコリンエステラーゼ阻害薬も有害にしか作用しないのです。

そのために国際運動障害学会(MDS)のPDの診断基準の除外診断基準(Red Flags)が存在するわけですが、多くの臨床医はこのことを知らないで、患者を診ているようです。

特に75歳以上の高齢者においては、PD+PSP,DLB+PSPなど確率的にはいくらでもあるわけで、経過途中で別の変性疾患が混合するなどというのは珍しくもないことです。

どうやら医学書・医学雑誌に書いてある1つの情報を信用して処方する傾向が多いようです。
そのうえで最初につけた診断名(多くはパーキンソン病とかアルツハイマー病)に固執してしまう傾向があります。初診時に核医学検査までやっているのだから、パーキンソン病で間違いないという思い込みから脱出できないわけで、一番不幸な転帰をたどるのは患者さんなのです。

いつまでも誤った処方が修正されないがゆえに結果的に常軌を逸したパニック処方になってしまうケースも散見されるようです。臨機応変という意識が足りないのではないかと思います。

コリンエステラーゼ阻害薬の存在自体が悪いというわけではなく、深い思慮もなく、「認知症なのだからコリンエステラーゼ阻害薬をとりあえず処方しておけばいい」みたいな誤った価値観に支配されているのではないかというような気がしてならないわけです。

コリンエステラーゼ阻害薬は純粋アルツハイマー(中期まで)のみ処方されるべき薬です(フランスはそれすら価値がないと断じられたわけですが)

パーキンソン病を発症して10年以上経過して認知機能が低下したケースや顕著なパーキンソニズム(ヤール3度以上相当)のレビー小体型認知症に使用されるべき薬ではないと個人的な見解ですが、私はそう考えます。



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by shinyokohama-fc | 2019-10-04 18:24 | 治療

薬で悪化する体幹の異常姿勢(ジストニア)に要注意!

先日、ジストニアで著名な先生の講演を拝聴しました。
「ジストニアは運動異常か姿勢異常かどちらなのか?」専門家の間でも意見が分かれていて、論議の的だったようです。

「ジストニア」というと何か遺伝性の特別な病気DYTなどが想像されると思います。私も以前DYTで、機能外科手術を受けた後の患者さんを診ていたことがあります。こちらは全身性で、身体がねじれてくる(捻転性)「運動異常」と呼ぶに相応しい症状で非常に重篤であり、日常生活動作が困難になるレベルです。

我々普通の診療所で、実地医家としてよく見かけるのは、高齢者における「姿勢異常」のほうです。近年はこれがジストニアだと呼ばれるようです。

もちろん、神経変性疾患によって起こりうる症状ではありますが、神経系に作用する薬物によって助長・強調されるケースが頻繁にみられます。
原因となる代表的な薬物があり、1つはドパミンアゴニスト(非麦角系)、もう1つはコリンエステラーゼ阻害薬(ドネぺジルとリバスチグミン)

特にレビー小体型認知症(DLB)の症例で、どちらかが高用量で使用されていたケース、どちらも使用されていたケースでは高率に「体幹ジストニア/姿勢異常」が起こるようです。

体幹ジストニアは、主に①首下がり②腰曲がり③体幹傾斜(ピサ徴候)の3種類のパターンがあります。
この5年間において、ドパミンアゴニストかコリンエステラーゼ阻害薬によってこのいずれかが見られた症例を数多く拝見してきました。

65歳以上で運動症状が出現して、「パーキンソン病」と診断されて、非麦角系のドパミンアゴニスト(プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン)を処方開始されてから、数か月単位でみるみるうちに首が下がってきた、腰が曲がってきたというパターンが非常に多いようです。

MDS(国際的パーキンソン病学会)が規定した、診断基準によると
・発症3年以内に姿勢が悪くなり、転倒を繰り返す
・発症10年以内に首が前後に動かなくなる

これらはパーキンソン病を否定するための根拠になりうる「除外診断基準」
つまりこの現象があれば、パーキンソン病以外の病気であるという証拠になりうるということです。
もしこれらの症状が出現してパーキンソン病が否定的であれば、ドパミンアゴニストは即座に減量・中止すべきでしょう。
しかし、多くの場合はそうではなくて、ドパミンアゴニストの副作用・有害事象として、首下がり、腰曲がり、ピサ徴候が現れるわけです。

最も多いのは、レビー小体型認知症(DLB)をパーキンソン病(PD)だと誤診されているケースです。
パーキンソニズム優位型のDLBに対してドパミンアゴニストを増量して使うと、体幹ジストニアはほぼ必発だと言えます。私が5年間で診てきた20前後の症例では程度の差はあれどすべての症例でジストニアが現れてます。

一般的にPDの場合は四肢の末端の筋強剛が最も強く、具体的には手首・足首が固く関節が動かしにくくなります。
それに対してDLBの場合は四肢の末端よりも頸部~脊柱(体幹)の筋強剛が主体になります。この特徴はPDよりもPSPに似ています。

すでにDLBだと診断を下した症例において、ドネぺジル、リバスチグミンを増量した場合、体幹ジストニアは起こります。進行した重症ステージの症例ほど起こりやすくなります。
こちらは私自身が今から3~4年前に自身がこれらの薬を処方した症例において数多く体験しました。

頸部~体幹の筋強剛、首下がり、腰曲がりは転倒リスクが高まるだけではなく、嚥下が困難になり、誤嚥のリスクが高まります。

ドパミンアゴニスト、コリンエステラーゼ阻害薬の増量服用によって、このような深刻な問題が起きているという事実を多くの臨床医はわかっていないようです。

DLBとPDの区別もしないといけないのですが、患者をさわらない、核医学検査(DAT-SCAN,MIBG心筋シンチグラフィー)の結果をモニターで確認するだけの診療・診断ではとうてい区別はできません。検査のみに頼る診療・診断は医療とは言えません。

ドパミンアゴニストとコリンエステラーゼ阻害薬の不適切使用が、多くの症例をジストニアに陥れていると言っても過言ではないでしょう。両方とも使われている症例は言うまでもなく、ハイリスキーです。


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by shinyokohama-fc | 2019-09-30 13:33 | 治療

睡眠導入薬に警告

米国食品医薬品安全局(FDA)は、ゾルピデム(マイスリー🄬)、エスゾピクロン(ルネスタ🄬)、ザレプロンについて、服用後の異常行動による危険性を指摘。
新たに警告を追加しました。

66例の重篤なレベルの睡眠時行動異常が確認されたということです。
そのうち20例は異常行動で死亡
死因は一酸化炭素中毒、溺死、転倒、低体温、自動車事故、自殺
そのうち46例は過量服薬、転倒、火傷、溺水、自殺企図(銃殺)など重篤な
危険障害が報告
されています。

これらの睡眠導入薬で、異常行動を来たした既往歴のある患者については、使用禁忌を求めています。
服用後に半覚醒下での異常行動、服薬中の行動を覚えていないなどの場合は直ちに中止して、処方した医者に相談せよと警告しています。

私が主に診察している、パーキンソン病、レビー小体型認知症の患者さんは
70%くらいは、レム睡眠行動異常があります。
つまり、上記のリスクが通常よりも高い患者群と言えます。

ゾルピデムでの異常行動は自験例でも多数診ていて、数年前からは高齢者を含めて、自ら処方することはなくなりました。
他医で処方されているケースで異常行動や幻覚を誘発されているケースも多く、ゾルピデムを中止するように指示しています。
今後はエスゾピクロン、ゾピクロンなどでも気をつけるべきだと考えます。
エスゾピクロンでの異常行動の自験例がまだないのは、原則1mg処方にしているからなのかもしれません。

これらの薬はベンゾジアゼピン受容体作動薬です。以前は「非ベンゾジアゼピン」だと喧伝されて、使用量が米国でも日本でも飛躍的に増えましたが、
その分だけ、上記のような深刻な事例の報告も増えたようです。
一度服用を開始してしまうと、身体依存・精神依存が非常に強いので、なかなか中止できない状況になってしまう点が非常に厄介だと言えます。



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by shinyokohama-fc | 2019-09-03 18:37 | 治療

薬を変えればレビー症(DLB)は良くなる?!

レビー小体型認知機能低下症(以下、レビー症)という病気は薬を変えれば良くなるでしょうか?

答えは下の写真を見れば、一目瞭然だと思います。
正確には、患者さんの病状に合っていない薬をやめて、合っている薬に変えれば、劇的によくなるという事です。

今回の症例は驚くべきことに、
コリンエステラーゼ阻害薬(ドネぺジル、リバスチグミン)は一切使っていません。使わなくても良くなりました。

78歳女性
幻覚と誤認妄想が、半年前から連日継続的に見られるようです。
夜間の異常行動が顕著で安眠できていないようです。レム睡眠行動異常。
1日のうちで注意と覚醒レベルの変化があるようです。
動作緩慢、前傾姿勢、右手のふるえなどパーキンソン病の運動症状
MIBG心筋シンチグラムでは心臓/縦隔比の集積低下

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時計描画)
数字が円から大きく離れ、内側にクロージングしていくのが顕著でした。
長針と短針を書くように指示も、全く書けず、数字を書いてしまいました。
重複五角形模写)
五角形は描けていますが、かなり小さくなっています。

かなりぼーっとした感じで、ミニメンタルステートテストをしましたが、17点(30点満点)でした。全体的に質問に対する返答がかなり遅い。
動作は全体的に遅いものの、手の往復運動に左右差はありませんでした。
体幹が左へ大きく傾斜して、前傾姿勢でトボトボと歩く
イスに座るとき、手すりにひっかかる(視覚認知の問題か?)
右手の静止時のふるえ(振戦)が顕著でした。
臥位→立位で、25~30mmHgの血圧低下がみられました。

<前医処方>
① ロチゴチン(ニュープロ🄬) 9mg/日
② トリへキシフェニジル(アーテン🄬) 2 mg 朝1回
③ 抑肝散 2.5g 朝・昼・夕3回
④ アムロジピン2.5mg 朝・夕2回
⑤ ラニチジン 75mg 眠前 1回


※パーキンソン病運動症状のふるえに対する薬としては、①②はよく使われる薬でこの量は決して過量ではなく、むしろ少ない量です。
③は幻覚・妄想を抑えるための処方だが、全く効果がないようです。

※右手のふるえは強いものの、①②で幻覚が悪化していると推定されたために減量して中止。抑肝散も効いてなさそうなので減量して中止。眠前のラニチジンも夜間の症状を悪化させているようなので中止。

<1回目の処方変更>
① ロチゴチン2.25mg/日
② ゾニサミド50mg 朝1回
③ 抑肝散 2.5g 朝夕2回
④ オルメサルタン5mg
⑤ シロスタゾール(プレタール🄬)50mg 朝夕2回


<1週間後の再診時>
変更後最初の2日は幻覚・妄想はなかったが、3日目から前と同じように復活
脈拍が異常に速くなり、動悸のため眠れなくなったそうです。本人もプレタール🄬を始めてから眠れなくなったと強く訴えてました
本質的にはまったくといっていいほど良くなっておらず、むしろ悪化?
動作レベルは以前と変わらず。ふるえは軽減。以前よりも覚醒レベルが悪くなり、ぼーっとしている感じでした。
収縮期血圧は臥位で130~135、立位で112~135でした。

応急的に、グルタチオン600mgとシチコリン500mgを点滴注射。
点滴注射後は、動作歩行も速くなり、意識がしっかりしていました。

<2回目の処方変更>
① レボドパ・カルビドパ 50mg1日2回 朝・昼
② クロナゼパム0.25mg 1日1回眠前
③ オルメサルタン5mg 1日1回夕食後

※ロチゴチン、ゾニサミド、プレタール🄬は明らかに悪く作用しているため中止。抑肝散も全く役にたっていないため中止。
※パーキンソン運動症状に代わりの薬としてレボドパ配合剤ごく少量。レム睡眠行動異常・不眠にクロナゼパムごく少量。八方塞がり苦肉の処方変更。

<2週間後の再診時 >
幻覚・誤認妄想はほとんどなくなりました。夜も眠れているそうです。
日中もしっかりした状態が続いているようです。
姿勢も良くなり、動作も速くなり、覚醒レベルも非常によくて驚きました。
右手のふるえ (静止時振戦)は相変わらずのようです。

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時計描画)
数字は正しい配列で円に沿って12まで書けています。
12→3→6→9の順に書きました。数字間の間隔がまだやや不整です。
長針・短針ともに正確に書けています。
2週間前に比べると別人のように変わっていて驚きました。
時計描画において、ここまで短期間に劇的変化したケースは初めてでした。

<<薬に関する考察>>
今回は、パーキンソニズム優位型のレビー症であり、最初からコリンエステラーゼ阻害薬を使うという選択肢は微塵もありませんでした。
この症例はすでに体軸性の筋強剛と体幹傾斜・姿勢異常が、おそらくロチゴチンによって引き起こされていたからです。
コリンエステラーゼ阻害薬を使う事で、体軸性筋強剛と姿勢異常が顕著に悪化していったケースをあまりにも多く経験してきたからです。
その数々の経験は筆舌に尽くしたいほどの悔しさとして、今でも私の頭に刻まれているからです。

レビー症にドパミンアゴニストは絶対禁忌にすべきでしょう。これだけ微量のロチゴチンですらここまでひどい精神症状が出るのですから。ロチゴチン以外のドパミンアゴニストだとさらにひどかったであろうと推察されます。

ゾニサミドは今年に入って、75歳~85歳の高齢者女性に数例処方しました。レビー症ではなく、パーキンソン病でしたが、結果はすべてNG。
高齢者女性には抑制系の副作用が出やすく合わないようです。

プレタール🄬(シロスタゾール)もやはり、高齢者女性では顕著に頻脈が出現しますが、ここまでひどいのは初めてでした。おそらく心臓がかなり悪いのでしょうか?以前も申しましたが、高齢者の女性はほとんど心不全です。
プレタール🄬は心不全には禁忌です。心不全の上にレビー症やパーキンソン病のために心臓の交感神経が脱落しているわけですから厳しいでしょう。

コリンエステラーゼ阻害薬、シロスタゾールがなくても劇的に良くなる!
これがレビー症という病気が一筋縄ではいかない奥の深い症候群であることの証左でしょう。決してステレオタイプでは通用しないのです。



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by shinyokohama-fc | 2019-07-27 12:06 | 治療

投薬行為に対する倫理観

「鹿児島認知症ブログ」の「投薬は侵襲行為という自覚」という記事を興味深く拝読しました。
これを自覚している臨床医、患者が果たしてどのくらいいるでしょうか?

投薬をすることで診療をした気になっていませんか?
投薬をされることで診療をされた気になっていませんか?


開業当初、私の投薬が平均よりあまりにも少ないので、調剤薬局の薬剤師から不信がられた事がありました。
この薬剤師は「ポリファーマシー」の処方箋が当たり前の常識だと思い込んでいたのかもしれません。

国民皆保険制度による恩恵?によって、世界的にもここまでひどいポリファーマシーが野放しにされている国は他にないのではないかと思います。

「医療行為(投薬)は生体内に何らかの変化をもたらす侵襲行為である」
「人体という複雑系を扱うことへの怖れを忘れると薬によって患者を傷つけてしまう」


このことを多くの高齢者の患者さん(症例)が嫌というほど教えてくれます。
特に、高齢者女性の増加に比例して増えている、遅発性(Late on set)注意欠陥多動性障害(ADHD)やレビー小体型(DLB)などがその代表格でしょう。

つい最近も、レビー小体型(DLB)と推定される女性に、シロスタゾールという薬、50~100mg/日を処方し服用してから、ひどい頻脈 (110~120/分)になってしまったケースが2~3例ありました。

特に高齢者女性の場合は「投薬しなかったほうが良かったのではないか?」と思わせるケースが多いように思います。

おそらく昔は「老化現象」として素直に受け入れていたように思います。
近年は「老化現象」などと正直に言うと、反発される事も少なくない。
いつから、ここまで「老化現象」に対して不寛容になったのでしょうか??

高齢者の投薬には、メリットとデメリットを勘案すべきであり、特に慎重にあるべきではないでしょうか?

たとえば、85歳以上の患者にパーキンソン病の治療薬+睡眠導入薬など神経系に作用する薬を何種類も処方・服用するという事が正しいのか?
これが倫理的な医療行為と言えるのか?
自分の頭でもう一度よく考えてみたほうがいいでしょう。


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by shinyokohama-fc | 2019-07-23 17:13 | 治療

クエチアピンの使い方

クエチアピンという薬、認知症の行動心理症状 (BPSD)の抑制?目的でよく使われているようです。

認知症の教科書とか講演会ではよくこの薬が書いてあります。学会が推奨?しているからか、この薬を抵抗なく処方する先生方が多いようです。

抗精神病薬の中では力価が低いため、本来の「統合失調症」に対して使う場合は、高用量が必要になります。

夜間暴れて眠らないとか、レビー小体型認知症(DLB)で幻覚が出ているとか、そういう症状に対して専門医?によって使われることが多いようです。

実際はこの薬はDLBに使うと合う症例と合わない症例があるようです。
前者は皮質型で脳幹がまったく障害されていないタイプ、後者は脳幹型あるいは通常型で脳幹網様体が強く障害されているタイプです。

クエチアピンという薬の受容体結合親和性の比率を確認すると
1) ヒスタミン受容体1 ) 30%
眠気、鎮静、肥満、認知機能低下
2) アルファ1A受容体 ) 30%
鎮静、起立性低血圧
3) アルファ2C受容体 ) 7%
認知機能改善
4) セロトニン5HT2A受容体) 7%
抗精神病作用(幻覚など)
5) セロトニン5HT1A受容体)4%
抗不安作用、認知機能改善
6) セロトニン5HT7受容体) 3%
認知機能改善
7) ムスカリンM1受容体) 2%
認知機能低下、便秘
8) ドパミンD2L受容体)0.5%
パーキンソニズム(動作歩行障害)

少なくとも上記8つの神経系受容体に作用して拮抗作用、つまりブロックする、多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)と呼ばれています。
しかし多元とはいえ、その実態は1/3がヒスタミン遮断で、1/3がアルファ遮断なわけです。
それゆえ、最も多い副作用がヒスタミン遮断による傾眠・眠気であり、次いで、アルファ遮断による起立性低血圧です。

いわゆるDLBらしい症例というのは脳幹網様体が強く障害されている、
「注意・覚醒レベルの変動を伴う認知機能障害」が顕著な症例です。
つまり、薬による有害作用がなくても日中眠気が強いタイプであり、こういうタイプは、顕著な起立性低血圧を示すことが多いです。

こういうタイプのDLBに、日中にクエチアピンを服用させてしまうとどうなるでしょうか??
ただでさえ眠いのがさらに眠くなり、血圧も下がって、立ちくらみや失神を誘発するでしょう。立位・座位・食後の低血圧が助長されるので、脳循環不全となり、覚醒レベルはさらに悪くなるでしょう。たとえDLBでなくても、75歳以上の何らかの認知機能低下症の高齢者であれば、誰でも起こりうることでしょう。

クエチアピンを1年以上継続して服用するとどうなるか?おそらくかなり認知機能が低下するのではないかと思います。もしかすると、いくらドネぺジルやらリバスチグミンやらを使っていてもまったく役に立たないのではないかと推定されます。

というわけで、私はこの薬は高齢者が長期に服用するには良くない薬ではないかと思います。
どうしても服用するというのなら、6.25~12.5mgを眠前に服用するだけにとどめ、2~3か月で中止したほうがいいでしょう。
レビー小体型認知症(DLB)の皮質限局型以外には長期的に服用してしまうと良くない薬であるというのは、病態生理的には自明の理です。



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by shinyokohama-fc | 2019-06-03 18:33 | 治療

PSP症例、レボドパ→アマンタジンでV回復!

前医で長年「パーキンソン病」だと診断されていて、レボドパ・カルビドパ配合剤200mg×3回(1日600mg)とエンタカポン100mg×3回が処方されていて、半年前の初診時は私も「パーキンソン病なのか」と前医の診断を信用していました。75歳の男性の方です。

ただ、2回頭部を打撲する大怪我をしていて、硬膜下血種や外傷性クモ膜下血種になっているというのが気になっていました。

よく診ると、四肢よりも頸部~体幹のほうが筋強剛が強く、前後の可動域制限があるようです。目を見開いたびっくり眼であり、眼の動きは上下・左右とも制限されていました。
椅子から後ろにずり落ちて転倒することが多く、椅子に座るときもドスンと倒れこむような座り方でした。
この方にはレボドパ配合剤はまったく効果がなく、100mg×3に減量しました。
画像検査を再検査すると、中脳被蓋と前頭葉が萎縮しているのが確認できました。進行性核上性麻痺(PSP)だと思いました。

日常的に転倒を繰り返していて、歩行器での歩行もできなくなり、飲み込み時のむせ、嚥下困難も目立っていて、いよいよ病状が進行してきたかという
感じでした。日常生活動作、トイレや食事なども自分でできない状況。

効果が感じられない、レボドパ配合剤は段階的に減量して中止し、代わりにアマンタジン150mg(朝100mg昼50mg)に変更しました。
標準タイプの進行性核上性麻痺(PSP)は幻覚が出現することはめったにないので、アマンタジンは使いやすい薬です。

レボドパ→アマンタジンに変更してからは、意欲が出てきて、日常生活動作はほとんどできるようになり、足がすくまなくなり、歩行器なしで歩けるようになりました。顔の表情も出るようになり、話しかけて笑顔、大きな声で笑えるようになりました。自宅内では何もつかまらずに移動できるようです。嚥下もむせることはほとんどなくなったようです。

この病気に関しては、コリンエステラーゼ阻害薬とレボドパは病状を悪化させうることが多いので、最近は使わないようにしています。
このアマンタジンという薬は、CBSにも有効な症例が多いようです。


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by shinyokohama-fc | 2019-05-18 12:46 | 治療

レボドパ (メネシット・マドパー)神話の崩壊

臨床医、特に神経内科医の頭には「レボドパ配合剤 はゴールドスタンダード、王道である」という公式が刷り込まれているようです。

ちなみに、レボドパ配合剤とは以下の商品名の薬です。
レボドパ/ベンセラジド
イーシードパール、ネオドパゾール、マドパーなど
レボドパ/カルビドパ
ネオドパストン、メネシット、ドパコールなど

パーキンソニズムがあれば、パーキンソン病であろうが、その他の病気であろうが、「とりあえずレボドパ配合剤を処方しておけばいい」と考えているでしょう。

パーキンソン病の国際的な診断基準には「レボドパ配合剤の顕著な効果」とあります。つまりレボドパが顕著な効果がなければ、パーキンソン病ではないと言っても過言ではないのです。

パーキンソニズムをきたすが、パーキンソン病ではない病気、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症、皮質基底核変性症に対しては、レボドパはパーキンソン病のようにうまく働きません。むしろ悪いほうに作用することが多いですので、中止したほうがいい場合も多いです。

レボドパ配合剤をやめて、何を使うかというと、それはアマンタジン(シンメトレル)です。上記3つの疾患に関してはアマンタジンが著効する症例が多いことに気が付きました。レビー小体型認知症の場合は量を増やすと幻覚が悪化することもありますが、ドパミンアゴニストのひどさに比べたら大したことはないです。

私が診ている患者さんはレボドパ配合剤が効かない症例のほうが多いです。レボドパ配合剤はノルアドレナリンを減らすのか、血圧が下がったり、眠気が出たり、特に上記3つの疾患では副作用でひどく悪化してしまうケースが多いです。
「レボドパが効かない、副作用で飲めない」と処方している神経内科医に勇気を出して進言すると、激怒されてしまうことがよくあります。
「レボドパは決してゴールドスタンダード(王道)などではない」のです。
レボドパに固執されすぎて、病状が悪化して不幸な転帰をとっているケースはかなり多いのではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2019-05-14 18:46 | 治療
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