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パーキンソニズム型DLBにゾニサミド、クロナゼパムが著効

前医で「パーキンソン病」という診断されていた、71歳男性の方。
自宅の近くにある公立病院の神経内科の外来に通院していましたが、
拙著を読まれて、初診は昨年の11月、12月に2回セカンドオピニオンで受診されました。自宅の近くの医療機関にかかるように説得しましたが、
どうしてもという希望で今年1月から当院で定期診療になりました。

当初は、前医の「パーキンソン病」という診断を前提で診ていたので、非常に難しく感じました。

まず「パーキンソン病」に必須条件である、レボドパの顕著な効果がみられません。日内変動はあるが、レボドパ服用時間と一致しない。ドパストンという点滴を実施しても運動状態は目に見えて良くはなりませんでした。

レボドパ・カルビドパ 配合剤 500mg
エンタカポン 300mg
プラミペキソール徐放剤 4.5mg
ゾニサミド 25mg

物が二重に見えたり(変形視)、自宅内でしばしば宮殿の中にいるような(実体意識性)がみられ、ゾニサミド追加された後から、夜間眠りが浅く、大声をあげて手足をバタバタさせるという症状(レム睡眠行動異常症)がひどくなり、連日みられるようになったそうです。姿勢も首下がりがひどく、頸部~脊柱の筋強剛が目立つ状態でした。

プラミペキソール+ゾニサミドという組み合わせは高率に精神症状を悪化させます。当院へ初診で受診するほとんどの症例がこの組み合わせです。
おそらくそれぞれを単独で適切な症例に適切な用量で使えばよい薬なのだと思います。実際私も両方ともいくつかの症例に使っています。しかし、両方を併用してしまうと効果よりも薬害のほうが大きくなってしまうようです。

精神症状、レム睡眠行動異常の悪化、体軸性姿勢異常はいずれも、プラミペキソール4.5mgの影響で間違いないでしょう。当院へ初診する直前に患者側希望で中止されていたようです。中止2週間後からは変形視や実体意識性は見られなくなったようです。ゾニサミド25mgも一旦中止するようにお伝えしました。

レボドパ・カルビドパ配合剤も服用直後に頭痛と嘔気が出現していたため、一時自己中止されていました。しかし中止後数日経つと、運動症状が極端に悪化したため再開されたようです。レボドパの有効時間にかかわらず、足が出なかったり、立位姿勢の維持や歩行も困難になっていたようです。

レボドパ・ベンセラジド配合剤に変更して、上記の副作用の問題は解決されましたが、やはり肝心の有効性がはっきりせず、レボドパが有効なはずの時間帯でも運動症状が不調になる状態が続きました。逆にレボドパ服用しなくても普通に問題なく歩ける時間帯もあるとのことでした。

さらに頸部~腰部にかけての違和感 (体軸性の筋強剛)、開眼困難、呼吸困難感、入眠時の下肢のピクピクした違和感、入眠後に下肢をバタバタさせる動きがひどくなり、声も出にくいという様々な多彩な症状がありました。

これらの症状以上に抑うつ症状が顕著であり、夜間の不眠が深刻な状況でしたので、うつ状態に伴う心気的な症状だと考えて、ミルタザピン15mgを眠前に処方しました。1日だけ服用したが、全く眠れず気分が悪くなるだけだったので、翌日から服用中止したそうです。むしろ夜間の行動異常が悪化したようです。ロチゴチンも2.25mgで再開しましたが、一時期治っていた
首下がりが再び悪化しました。下肢の症状に対する有効性も実感できないとこ事で中止しました。

「レム睡眠行動異常」が顕著で悪化傾向であることは明確でした。ラメルテオン8mgも試しましたが、全く効果がないという事で中止。やむを得ず、クロナゼパムを0.25mgから開始しました。このクロナゼパムは著効して、行動異常も下肢の症状も軽減して、夜間よく眠れるようになり、日中の心身体調も大幅に回復したようです。

この時点で「認知症のないレビー小体型認知症」を疑いました。これは日本語として甚だおかしい表現ですが、実際に医学雑誌にそういう質問があり、
「レビー小体型認知症」という病名がよくないのだという返答でした。
たしかに記憶の問題はないのですが、時計描画にやや問題がありました。

ご本人から、以前中止していた、残薬のゾニサミド25mgをもう一度試してみたいという申し出があり、服用可能としました。
服用開始してから、頸部~腰背部の体軸の筋肉痛が軽減、運動症状も平均的に良くなり、歩行可能な時間も増えたようです。開眼困難、呼吸困難感、夜間の下肢の症状なども減少したようです。

ゾ二サミドについては、以前のブログに書いたように、プラミペキソールとの併用、トッピング処方によって、数多くの症例において精神症状の悪化が確認されたので、あまり良い印象をもっていませんでした。

パーキンソン病においては、振戦が強いタイプに使用していますが、その効果は抗コリン薬より劣るケースも多く、あまり評価していませんでした。

昨年ゾニサミドは「レビー小体型認知症」の運動症状に保険適用になったようです。当症例では思いの他著効したようです。
当症例では「レビー小体型認知症」中核4症状のうち、確実なものは「レム睡眠行動異常症」「パーキンソン症状」の2つしかありませんでした。プラミペキソール服用中に、変形視や実体意識性は確認されていますが、記憶力は維持されているにもかかわらず、くりかえす幻視は見られていません。

半年前に実施したDATスキャン検査では、左右の線条体のSBRが同等に低下していました。運動症状に関しても、パーキンソン病ほど顕著な左右差が確認できず、静止時振戦もなく、レボドパに対する顕著な効果もない。つまり「パーキンソン病」と診断するにはかなり微妙な症例でもあります。

ともあれ、当症例はクロナゼパムとゾ二サミドが著効で、レボドパ配合剤の効果が微妙、プラミペキソール、ロチゴチン、ミルタザピンで悪化という経過を踏まえると「パーキンソン病」ではなく、「レビー小体型認知症」に近いことは間違いないでしょう。


この症例に限らず、これまでの臨床経験ではっきりと言えることは、ゾニサミドは、プラミペキソール1.5~4.5mgと併用してしまうと全く効果を発揮できないばかりか、精神症状を悪化させる方向に作用してしまうわけです。
その一方で、レボドパ配合剤との併用で使用すると想像以上に効果を発揮するという事です。

臨床試験でも単独使用か、レボドパ配合剤との併用でしか有効性・安全性は確認していないはずで、プラミペキソールを合わせた3薬剤併用での臨床試験は実施されていないはずです。

つまり、臨床医のあくまで個人的な判断による、レボドパ配合剤+プラミペキソール+ゾニサミド+セレギリンという3~4種類薬剤併用という、誤ったポリファーマシーが多くの精神症状(薬害)を招いているのは間違いないようです。

神経内科の専門医の多くが、私を含めて「レビー小体型認知症」の臨床評価や経験スキルがなく、「パーキンソン病」と鑑別する臨床的スキルも検査手段もきわめて乏しいという現状を考えると由々しき事ではないでしょうか?

当症例のように「レビー小体型認知症」の診断そのものが操作的であるというのも、薬害問題を大きくしていると推定されます。
繰り返しますが、脳神経に作用する薬はもっと慎重で厳重な対応が求められます。あまりにも杜撰すぎやしないかと思うのは私だけでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2019-05-23 17:53 | 治療

PSP症例、レボドパ→アマンタジンでV回復!

前医で長年「パーキンソン病」だと診断されていて、レボドパ・カルビドパ配合剤200mg×3回(1日600mg)とエンタカポン100mg×3回が処方されていて、半年前の初診時は私も「パーキンソン病なのか」と前医の診断を信用していました。75歳の男性の方です。

ただ、2回頭部を打撲する大怪我をしていて、硬膜下血種や外傷性クモ膜下血種になっているというのが気になっていました。

よく診ると、四肢よりも頸部~体幹のほうが筋強剛が強く、前後の可動域制限があるようです。目を見開いたびっくり眼であり、眼の動きは上下・左右とも制限されていました。
椅子から後ろにずり落ちて転倒することが多く、椅子に座るときもドスンと倒れこむような座り方でした。
この方にはレボドパ配合剤はまったく効果がなく、100mg×3に減量しました。
画像検査を再検査すると、中脳被蓋と前頭葉が萎縮しているのが確認できました。進行性核上性麻痺(PSP)だと思いました。

日常的に転倒を繰り返していて、歩行器での歩行もできなくなり、飲み込み時のむせ、嚥下困難も目立っていて、いよいよ病状が進行してきたかという
感じでした。日常生活動作、トイレや食事なども自分でできない状況。

効果が感じられない、レボドパ配合剤は段階的に減量して中止し、代わりにアマンタジン150mg(朝100mg昼50mg)に変更しました。
標準タイプの進行性核上性麻痺(PSP)は幻覚が出現することはめったにないので、アマンタジンは使いやすい薬です。

レボドパ→アマンタジンに変更してからは、意欲が出てきて、日常生活動作はほとんどできるようになり、足がすくまなくなり、歩行器なしで歩けるようになりました。顔の表情も出るようになり、話しかけて笑顔、大きな声で笑えるようになりました。自宅内では何もつかまらずに移動できるようです。嚥下もむせることはほとんどなくなったようです。

この病気に関しては、コリンエステラーゼ阻害薬とレボドパは病状を悪化させうることが多いので、最近は使わないようにしています。
このアマンタジンという薬は、CBSにも有効な症例が多いようです。


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by shinyokohama-fc | 2019-05-18 12:46 | 治療

レボドパ (メネシット・マドパー)神話の崩壊

臨床医、特に神経内科医の頭には「レボドパ配合剤 はゴールドスタンダード、王道である」という公式が刷り込まれているようです。

ちなみに、レボドパ配合剤とは以下の商品名の薬です。
レボドパ/ベンセラジド
イーシードパール、ネオドパゾール、マドパーなど
レボドパ/カルビドパ
ネオドパストン、メネシット、ドパコールなど

パーキンソニズムがあれば、パーキンソン病であろうが、その他の病気であろうが、「とりあえずレボドパ配合剤を処方しておけばいい」と考えているでしょう。

パーキンソン病の国際的な診断基準には「レボドパ配合剤の顕著な効果」とあります。つまりレボドパが顕著な効果がなければ、パーキンソン病ではないと言っても過言ではないのです。

パーキンソニズムをきたすが、パーキンソン病ではない病気、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症、皮質基底核変性症に対しては、レボドパはパーキンソン病のようにうまく働きません。むしろ悪いほうに作用することが多いですので、中止したほうがいい場合も多いです。

レボドパ配合剤をやめて、何を使うかというと、それはアマンタジン(シンメトレル)です。上記3つの疾患に関してはアマンタジンが著効する症例が多いことに気が付きました。レビー小体型認知症の場合は量を増やすと幻覚が悪化することもありますが、ドパミンアゴニストのひどさに比べたら大したことはないです。

私が診ている患者さんはレボドパ配合剤が効かない症例のほうが多いです。レボドパ配合剤はノルアドレナリンを減らすのか、血圧が下がったり、眠気が出たり、特に上記3つの疾患では副作用でひどく悪化してしまうケースが多いです。
「レボドパが効かない、副作用で飲めない」と処方している神経内科医に勇気を出して進言すると、激怒されてしまうことがよくあります。
「レボドパは決してゴールドスタンダード(王道)などではない」のです。
レボドパに固執されすぎて、病状が悪化して不幸な転帰をとっているケースはかなり多いのではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2019-05-14 18:46 | 治療

統合失調症と同レベルのDLB

幻覚など精神症状が非常に強いタイプのDLBが存在します。
精神症状>>認知機能低下がメインで覚醒レベル変動・血圧変動・パーキンソニズムは一切ないです。
臨床的には「老年性統合失調症」と呼んでもいいのではないかと思います。パーキンソニズムタイプとは対極にあるスキゾフレニアタイプです。

つまり、脳幹型レビー小体はわずかしかたまっておらず、大脳辺縁系にレビー小体がすごくたまっているタイプだと推察されます。

主症状は、陽性症状(幻視・幻聴・妄想・思考伝播・作為体験・滅裂思考・病識欠如)と陰性症状(感情鈍麻・意欲低下・思考途絶・認知機能低下)です。
まるで「統合失調症」です。

最も特徴的な幻覚だけで5段階作るとすれば
1)薬によって幻覚が容易に誘発されやすい
2)原因薬なしで幻覚がときどき現れる
3)幻覚が毎日現れる
4)軽度妄想~行動化(家庭内トラブル)
5)重度妄想~行動化(社会トラブル)

4)5)レベルは家庭や社会的影響・被害が大きいので、統合失調症と同じく、早急に薬物を介入しなければならないのだと思われます。抗精神病薬の介入が不可欠なので、原則的には精神科専門医が対応すべきだと思いますが、神経内科医と同様にこの病気を理解している精神科医は非常に少ないのが現実です。
これまでにブログで紹介してきた、脳幹型レビー小体がたまる、抗精神病薬にもコリンエステラーゼ阻害薬にも全く忍容性のない王道DLBとはまるで違うわけです。

幻覚というのは、おそらく以下のタイプに分かれます。
1) 中脳起源
パーキンソン病(PD)の治療薬過剰、PSP の一部
→幻覚をおこす薬を可能なかぎり中止する
2) 後頭葉起源 (幻視・変形視などが主体だが多くは軽症)
通常型DLB患者の主症状
→コリンエステラーゼ阻害薬(症例によって適量には個人差が大きい)
3) 辺縁系起源 (幻聴や顕著な妄想・行動化を伴い重症)
統合失調症、スキゾタイプDLB患者の主症状
→抗精神病薬
4) 脳幹網様体起源 (意識がもうろうとしている)
レム睡眠行動異常や薬剤・夜間せん妄の一部
→せん妄誘発する薬を中止する、ラメルテオン+クロナゼパム少量

2)と4)は通常型DLBには普通にみられる症状です。私が普段診察で遭遇する多くは1)か4)ですので、このようなタイプにコリンエステラーゼ阻害薬や抗精神病薬は必要ではなく、まず処方しようとは考えません。
もし薬剤誘発性の幻覚に間違ってこの2つを処方してしまうと、薬剤カスケードに迷宮入りしてグチャグチャになるだけなので、むしろ禁忌です。

3)を普段診察する事はほとんどありません。こういう症例のほとんどは「精神科」を受診しますが、たまに当院にも来られます。以前は「精神科」で診てもらうようにお伝えしていました。
しかし近年は75歳以上の高齢者で3)のタイプが増えているようです。こういうタイプや対人関係的にトラブルになり、家族や施設が困るわけです。
1)2)4)のやり方は通用しないので、おそらく抗精神病薬を使う以外に方法はないのでしょう。

私の診療の歴史は抗精神病薬(ドパミンを抑える薬)の薬害との戦いの歴史でした。若手の頃は悪性症候群を何人も診ました。まして薬剤過敏性のDLBですので、一歩間違えば谷底に落ちるリスクは高いです。

当時(20~25年前)の悪性症候群の原因薬剤は、ハロぺリドール(セレネース)かクロルプロマジン(コントミン)でした。私にはこれらの薬に対する警戒感みたいなものが刷り込まれています。
幸いなことにこの20年で、新規の抗精神病薬が続々と開発されて販売されています。それゆえ選択肢が増えたと思います。「統合失調症」と言っても「老年性」なので少量でないと谷底に落ちるのは言うまでもないですが。

「スキゾタイプDLB」とか「老年性統合失調症」という表現には精神科専門医や認知症専門医からは異論がかなりあると思いますが、それを承知で書きました。実地臨床はガイドラインのような綺麗事では済まないからです。


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by shinyokohama-fc | 2019-04-16 18:46 | 治療

レビー小体型認知症の横綱症例

今回は、レビー小体型認知症(DLB)の横綱!カンぺオン症例をお示します。DLBという病気は非常にレンジが広く、重症度がピンからキリまで極端に違うので捉えどころがない病気です。

私が日常的に診ているのは横綱・大関・関脇・小結くらいのランクのDLB症例ですが、世間や学会で語られてるのは、幕下くらいのランクのDLBのようですので、まるで別の病気の病気の事のように思えます。

特に病状が悪いのが、パーキンソン病(PD)にDLBが併発してきて2~3年で歩行不可能になるタイプで、レボドパ高用量、ドパミンアゴニストなどの処方がされてしまい、取り返しがつかないほど悪化する、PD+DLBというタイプが最も重症です。

今回はPDに併発しない、純粋なDLBで横綱級の症例というのはどんなものかというのを紹介したいと思います。こういう症例を知ることによって、DLBという病気の本質が理解できるはずです。つまり、薬剤過敏性・自律神経不全が重症であるという事です。

現在72歳の男性。昨年8月から不定期で7回受診されています。
遠方からの不定期受診なので、こちらから処方はしていません。通常は訪問診療医が処方しているようです。

4年前に幻覚、誤認妄想で発症したそうです。地元の精神科でMIBG心筋シンチなど検査を経て、DLBと診断されたようです。

パーキンソニズムと覚醒レベル(認知機能)の日内変動も顕著で、重度の便秘症と起立性低血圧があります。
初診時)臥位118/69(54)→立位76/50(64)76/50(64)
再診時)臥位124/86(68)→立位67/50(135) 66/54(82)
今も立ち上がると目つきがおかしくなり、開眼できなくなるようです。

レボドパ有効時間は、動作緩慢ではあるが、歩行はある程度自分でできるようです。しかし視覚失認が重症のため、正しい方向に行けず、常時誘導が必要。イスがある位置が認識できず、自力でイスに座る事は不可能です。

筋強剛は体軸優位性で、頸部~体幹に強く、四肢は軽度のようです。開眼失行もあり、横綱DLBは臨床的にPSPに近いです。

ドネぺジルを2年、リバスチグミンを1年処方されていましたが、これらのコリンエステラーゼ阻害薬によって、首下がり、腰曲がりなどの姿勢異常がみるみる悪化していく(薬剤誘因性体幹ジストニア)ので奥様が危険を感じて中止。中止後は姿勢は元に戻ったようです。アセチルコリンを補充するCDPコリン(シチコリン・サプリメント)を試すとひどい精神錯乱状態となったようです。

レボドパ配合剤(ドパミン)は著効するが、2~3時間で効果が切れると流涎と無動になるそうです。しかしレボドパの1回が50mgを超えると血圧が下がりすぎて、ふらつきが強くなるそうなので、一時は1回は25mgしか服用できませんでした。

起立性低血圧にはドロキシドパは欠かせませんが、1回100mgを服用すると興奮して暴れるそうで、1回25mgしか服用できないそうです。

シロスタゾール(先発品)は強い頭痛が出現して、意識を何度も失ったそうです。やはりこの薬は血圧変動が大きくなって合わないようです。

試行錯誤の末に現在の服薬は
レボドパ/カルビドパ 25mg×3回
ドロキシドパ 25mg×3回
ラメルテオン 8mg(睡眠覚醒リズム維持目的)
半夏厚朴湯 2.5g(流涎軽減目的)
麻子仁丸 2.5g(便秘軽減目的)
その他にも様々なサプリメントを服用しているようです。

この症例を通じて学んだことは、横綱DLBというのは、世間で言われている(教科書などに書いてある)DLBに関する医学的常識はまったく通用しないという事です。薬剤過敏性は抗精神病薬に限られた話ではなく、全ての薬剤に過敏性、つまり不耐性だという事です。

この症例には統計処理された既報の臨床試験の常識などはまったく通用しません。通用するのは、幕下か前頭の下位くらいでしょう。
幕下・前頭の症例はDLB全体の70~80%をしめるかもしれませんが、同じ基準で、小結以上のDLBに処方すると大変な事になります。

同じ病名だからと言って、全部同じマニュアルの薬を使うというのが、いかにナンセンスであるというのが理解できると思います。
台風でも900hpの非常に強い台風もあれば、980hpの弱い台風もある。
病気も自然現象の一種ですので、多様性(個別差)があるのは当たり前でそれが自然科学の本質ではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2019-04-04 10:51 | 治療

レビー小体型認知症 (E)自律神経不全

レビー小体型認知症(DLB)の自律神経障害のバロメーターは実は誰でも簡単に知ることができます。
臥位(横になっている時の血圧)と立位(立ち上がった時の血圧)を比較することです。血圧計さえあれば、誰でもできます。
20~30mmHg以上の起立性低血圧が確認できれば、MIBG心筋シンチグラフィーという検査可能な施設が限定の高額な検査は必要ありません。

レビー小体型認知症というと、幻覚(特に幻視)やパーキンソニズムが主症状ですので、精神科か神経内科の外来に通院します。
神経内科では多くの場合、パーキンソン病と診断されて、運動症状の治療薬が過剰に入れられてしまい、かえって不調になります。
しかし、これらの外来医が診察において、上記のような血圧変動について確認したり、測定したりすることはなく、関心すらないのではと思われます。

私の臨床経験では最も臨床的にレビー小体型認知症らしさが強い症例こそ、起立性・食事性の血圧低下が著しいのです。そういう症例は認知・覚醒レベルの変動も著しい。つまり脳幹網様体の障害も強いのです。

自律神経不全の重症度は
1)機会的、便秘・頻尿
2)連日性、便秘・頻尿
3)立ちくらみ・失神、血圧変動20~30
4)血圧変動40~50脈拍変動30以上
5)血圧変動60~70心停止リスク

特に要注意なのが、グレード3以上ですね。
なぜかというと、特に塩分と水分が同時に失われる夏場は立てなくなったり、意識を失ったりして救急搬送されるリスクが高くなるからです。

パーキンソン病の運動症状の治療薬はレボドパ配合剤を含めてこの起立性低血圧を悪化させる副作用がありますが、特にレボドパとセレギリンを併用している場合は薬剤起因性の血圧低下が起こるリスクが高いです。
一部で強く推奨されている、シロスタゾール(先発品)も特に高齢者のDLBの場合は血圧変動を大きくするため失神発作を誘発するようです。

自律神経不全の強いグレード3以上のDLB症例において、まず推奨されるのは先般ブログでも書いたようにドロキシドパ(ドプス🄬)です。
DLBの薬剤過敏性を考えると100mgだけではとても使いにくく、25mgや50mgという規格もほしい所。本来DLBには最も必要な薬だと考えます。

自律神経不全の強いグレード3以上のDLB症例においては、コリンエステラーゼ阻害薬は禁忌だと考えています。
もともとDLBという病気の一番の問題は自律神経不全であるにもかかわらず、DLBを診ている多くの臨床医はそのことを軽視(無視?)しています。
コリンエステラーゼ阻害薬である、ドネぺジルやリバスチグミンを自律神経不全の強いDLBに無神経にも使っているわけです。

血圧・脈拍の体位変動の評価は、DLBにおいて臨床上もっとも重要です。なぜなら、生命維持に直結するからに他ならないからです。
これを評価していなければ、本当の意味でDLBを診察していることにはならないと言っても過言ではないでしょう。
そのことを教えてくれるのが、DLBのカンペオン症例です。次回はこの症例を紹介したいと思います。



by shinyokohama-fc | 2019-03-30 11:05 | 治療

パーキンソン病はまず運動

昨年2月に出版した書籍を読んで、受診される方がおられます。
もう1年以上経っているので、書店から撤去されたのか?と思いましたが、
書店によっては置いてあるようです。パーキンソン病というテーマで神経内科の専門医が執筆した書籍が非常に少ないからでしょうか?

受診される方の内訳は以下のどれかに分かれます。
1) 診断は合っているが、不適切な多剤処方によって、有害事象(幻覚、嗜眠、せん妄など)で苦しんでいる。
2) 不適切な多剤処方によって、効果減弱でオフ現象で苦しんでいる。
3) パーキンソン病ではないのに、不適切な多剤処方によって、有害事象に苦しんだ挙句、病気が悪化してしまった

拙著でパーキンソン病の多剤大量処方を問題だとしている理由はまさにこの
1)~3)があるからです。結局多剤大量処方というのは患者にとって何もメリットを生み出さない事がはっきりしているわけです。

最初から多剤処方や大量処方をしなければ、このような問題は起きにくいはずです。
背景としては
1)パーキンソン病の薬処方は無制限であること
2)10~20%に薬物依存性の強い体質の患者さんが存在すること
3)薬を使えば、病気が治るはずだと勘違いしていること
などです。
私が最初から診ている患者さんで、薬をほとんど増やさずに上手くいっているケースのほとんどは、自ら率先して運動している人です。つまり、まずは自ら身体を動かすことが何よりも大事なのです。

不適切な多剤大量処方を服薬している期間が長いと、修正は困難です。

通常のステレオタイプのパーキンソン病であれば、多剤大量処方というのは本来必要ないはずです。
通常の処方で効果がなければ、本当にパーキンソン病なのか?と疑う必要があります。これでもかこれでもかと薬を投入するのは病気を悪化させるだけです。
それについては、次回くわしく書こうと思います。



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by shinyokohama-fc | 2019-03-15 12:34 | 治療

パーキンソン病認知症とレビー小体型認知症、3タイプ


高齢者、70代半ばからパーキンソン病の動作歩行障害が現れたケースは、パーキンソニズム優位型DLBである確率が高いようで、近年は高齢者増加に比例して増えています。

神経内科専門医、パーキンソン病で有名な医者などの外来を受診する事が多く、不幸なことに神経内科専門医の多くが、パーキンソニズム優位型DLBのことを知らない(かく言う私も数年前まではよくわからなかった)ので、
パーキンソン病だと診断して、ドパミン作動薬を増やされます。

ドパミン作動薬は、パーキンソン病と同じように著効することは少なくて、多くは副作用による嗜眠、幻覚、その他精神症状などが誘発されます。

多くの場合、ドパミン作動薬を増量されすぎて、アセチルコリン欠乏の症状が顕性化します。つまり認知機能の低下です。このタイミングで仮にコリンエステラーゼ阻害薬を処方したとしても、過剰なドパミン作動薬を減薬しないかぎり、有効に作用することは少なく、むしろ副交感神経系の消化器症状が強く出て服薬が困難になり、八方塞がりになるケースがほとんどでしょう。

これと混同されてしまうのが、いわゆるパーキンソン病進行期の認知機能低下です。こちらは発症して15~20年経って現れます。ドパミンニューロン(ドパミンを受け渡しする神経細胞)が枯渇してしまい、大脳皮質特に前頭葉への投射不全によって、認知機能が徐々に低下してくるパターンと、レビー小体型認知症(DLB)が併発してくるパターンがあります。

前者の認知機能低下は、パーキンソン病の経過の一部であるため、比較的緩徐で、家族からみても少し判断力や注意力がなんとなく落ちてきたかなという程度で、仮に認知機能検査を実施しても、多くの場合は軽度認知障害のレベルです。

後者の場合は、顕著な幻覚などの精神症状を伴うだけでなく、睡眠・覚醒レベルの変動、顕著な視空間失認、構成障害などが見られます。一番特徴的なのはイスに正しい位置に座ったりできなくなる事です。つまり視空間認知の問題が日常生活動作に影響を与えるほどのレベルだという事です。仮に認知機能検査をしても、覚醒レベルが変動するので、点数の変動が大きいです。パーキンソン病にDLBが追加されてくるパターンの場合、多くはラッシュ経過、急速進行性です。1~2年で歩行不可能になります。

1つ目のパーキンソニズム優位型DLB は最初から本質はDLBですが、4~5年で歩行不能に至ります。
2つ目のパーキンソン病の進行期の認知機能低下というのはPDの延長で、さほど重症ではないので、歩行能力は維持されます。
3つ目のPD+DLBというタイプは、急速に進行する。これが一番重症で、短期間、1~2年で歩行不能になります。

重症度は③PD+DLB>>①DLB(パーキンソニズム優位型)>>②PD
という事になります。学会などでPDDと呼ばれているのは、PD+DLBの事のようです。私が知るかぎりではこのタイプが一番薬物治療に反応がすこぶる悪く、対症療法が通用しません。

一般的にコリンエステラーゼ阻害薬で良くなると喧伝されているDLB(アルツハイマー優位型)と比べてその重症度・予後は雲泥の差と言えます。
つまり、胃がんや肺がんと同じで、同じ病名でも病気の予後は天地の差があるのです。



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by shinyokohama-fc | 2019-03-11 18:23 | 治療

レビー小体型認知症(A)パーキンソニズム

5回シリーズでレビー小体型認知症(DLB)の症状について検証してみたいと思います。私がこの病気であろう症例を初めて診たのは今から15年前だったと思います。70代半ばの男性でした。

この病気に最初にコリンエステラーゼ阻害薬を処方。ドネぺジル3mgが認知機能に劇的に効果があったのを覚えています。
しかし、半年もたたないうちに動作歩行が悪化してきて、ついには外出中に転倒して歩けなくなりました。パーキンソニズムとしては3レベルでした。

ヤール3レベル以上のパーキンソニズムのケースでは、パーキンソニズムが短期間で悪化するという事を15年前に症例を通じて知ったわけです。
それゆえ、パーキンソニズム3)~5)のケースはコリンエステラーゼ阻害薬は
動作・歩行・姿勢・嚥下を悪化させると認識しています。アセチルコリンそのものに筋肉を緊張させる作用があるからです。メリットよりもデメリットのほうが大きい可能性が高いです。

1)動作にまったく問題がない
2)動作がわずかに遅い
3)動作がかなり遅く、すり足歩行、姿勢が悪い(前傾)
4)自力で歩けない(介助歩行)、言葉が出にくい、姿勢がかなり悪い(顕著な体幹傾斜・前屈・腰曲がり)、両下肢の膝が伸展困難で膝を曲げたまま歩行
5)歩行不可能、寝たきり

その一方で、1年前に病院から引き継いだ、精密検査の上で確定診断されている、78歳女性のDLBの方です。表情は明るく笑顔もあり、元気そう。

この方は動作歩行はまったく問題ない、パーキンソニズム1)です。起立性低血圧や便秘もなくて、自律神経1)です。幻覚も1)~2)程度です。
コリンエステラーゼ阻害薬のリバスチグミン9mgを処方されていましたが、4.5mgへ減量しています。パーキンソニズムは全く現れる気配もなく、幻覚もほとんどなく、認知機能も維持しています。たぶんドネぺジル3mgでも大丈夫ではないかと推定されます。

病院の認知症の専門外来や老年精神科の外来を受診する、DLBの症例はほとんどこのような症例ばかりではなかろうかと思います。
たしかにこういう症例にはコリンエステラーゼ阻害薬が有効だと思います。高齢者で長期間効果を維持するためには少量投与でというのは、平川先生が講演で言っているとおりだと思います。

当院の外来でDLBと診断する症例は、ほとんどが3)~4)です。このレベルになると、おそらく認知症外来や老年精神科では診ていないでしょう。

DLBのパーキンソニズムの重篤さはPDの比ではないです。2)~3)レベルだと、レボドパ配合剤少量かアマンタジン少量が有効な事がありますが、3)~4)レベルになるとほとんど効果はないです。無理に続けると幻覚が悪化するだけなのでやめたほうがいいでしょう。
それよりも薬剤性パーキンソニズムの原因薬剤を減量・中止することがまず先になります。


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by shinyokohama-fc | 2019-03-08 12:36 | 治療

ベンゾジアゼピン系薬で肺炎リスク上昇

以前、当ブログでエチゾラムとゾルピデムの問題を以前取り上げました。

このたび中国の杭州の病院で多数の肺炎症例を統計解析した結果、ベンゾジアゼピン受容体関連薬(BZRD)が肺炎リスクを上昇させるという報告がされています。
杭州というと800万人近い人口をもつ巨大都市で、12万例の症例を解析したとのことです。

結果としては、ジアゼパム(セルシン🄬)、ロラゼパム(ワイパックス🄬)、テナゼパム、ゾピクロン(アモバン🄬)で有意に肺炎リスクが高まったそうです。
服薬患者数が多いため、臨床上大きなインパクトがあると警告しています。

ベンゾジアゼピン受容体関連薬(BZRD)に呼吸抑制作用があるというのは以前から言われていたことであり、BZRDの数ある副作用の中でこれが最も重大かつ深刻であり、高齢者の肺炎による入院など医療費を上げている要因であるのは間違いないでしょう。

自身の臨床経験においても、前医からされたフル二トラゼパム(サイレース🄬、ロヒプノール🄬)が中止できずに、誤嚥性肺炎を繰り返して衰弱してしまった神経難病の方や、前医から処方されたエチゾラム(デパス🄬)を服用継続して、誤嚥性肺炎を繰り返した脳梗塞後遺症の方がいました。

ベンゾジアゼピン受容体関連薬(BZRD)は特に75歳以上の高齢者、脳梗塞・脳外傷後遺症やパーキンソン病などの神経難病の方には危険な薬です。
ただでさえ、嚥下・呼吸機能が低下しているのですから当然ですが。

こういう患者には最初からBZRDを処方しない。継続服用している患者は少しずつ減薬して中止を試みる事が大事です。

小生も過去の反省を踏まえて、最近は高齢者に新規では極力BZRDは処方しないようにしています。どうしても必要な場合はラメルテオンを処方する事がほとんどです。

日本はBZRDが過剰に処方されすぎてるのではないでしょうか?世界ではベルギーに次いで2位、アジアでは1位だそうです。
国民皆保険制度の弊害なのか?気安く睡眠薬を処方しているのが現状です。

BZRDをやめる、減らすだけで、高齢者の誤嚥性肺炎・転倒による外傷の患者とそれにまつわる医療費は大幅に減るのではないかと思います。

薬がないと眠れないという意識というのは思い込みの要素が強いため、まずは偽薬を使うなど何らかの対策を講じる必要があるのではないでしょうか?



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by shinyokohama-fc | 2019-02-28 11:28 | 治療
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