人気ブログランキング |

カテゴリ:治療( 142 )


サフィナミドの製品説明パンフレット(患者向け)

製薬会社が作成している、製品の説明パンフレットというのがあります。
我々医療関係者向けのものと、患者さん向けのものがあります。

パーキンソン病患者さんに対して、新しい薬を処方するに際して、「あまり副作用を強調しすぎると怖がって患者さんが服用してくれない」という医師側の意見を訊くことがありますが、私はそうは思いません。
処方する医師側・薬剤師側は効能だけではなく、起こりうる副作用についてもすべて説明する義務があると思います。

先日のブログで「抗精神病薬を処方する際は、副作用説明付きの同意書を取って処方している」という話を書きました。これは抗精神病薬だけではなく、コリンエステラーゼ阻害薬やドパミン作動薬でも同じことが言えるのではないかと思います。

今回、サフィナミドという新発売になった、パーキンソン病治療薬の患者さん向けの販売会社が作成したパンフレットを見て大変驚きました。

全部で6ページあるのですが、「作用と効果」に関しては最初の1ページ目だけで、2ページ目は「服用する際の注意」(自動車運転は行わないで下さい、抗うつ薬と一緒に飲むことはできません、など)3ページ目から4ページにわたって「副作用とその対策」に割いていました。

「副作用とその対策」「主な副作用」としては、
精神症状(幻覚など)
傾眠および突発性睡眠
ジスキネジア
衝動制御障害
悪性症候群
セロトニン症候群
起立性低血圧


ここまでページ数、行数を割いて、くわしく副作用について、説明した患者さん向けのパンフレットは初めて見た気がします。
このパンフレットに関してはメリット1に対してデメリット5の比率になっています。

これらの副作用は、ドパミン作動系のパーキンソン病治療薬であれば、どんな薬でも起こりうる副作用で、薬の種類・用量・患者さん側のコンプライアンスによって差異が大きいのが現実です。

ここに書かれている内容は、むしろドパミン・アゴニスト系の治療薬のパンフレットに書かれるべき内容ではないかと思います。

レボドパ配合剤とサフィナミドだけの2種類併用では発現する確率は極めて低いのではないでしょうか?

個人的には、この薬はレボドパ配合剤だけとの併用で使用するのが理想的だと考えます。つまり、レボドパ配合剤から開始して、ウェアリングオフが出てくれば、次の一手としてこの薬を使うのがいいと思います。

レボドパ+ドパミンアゴニストがすでに使われている患者さんに使う、特に相当量のドパミンアゴニストと併用するとなれば、やはりパンフレットに書いてある通りの何らかの副作用が現れる確率は高いでしょう。

とはいえ、私にとって第一例目になる患者さんは、レボドパ/ベンセラジドとロチゴチンが相当量使用されていました。サフィナミドがこれだけ有効であれば、本来はロチゴチンを減薬できればと思いますが、ドパミン・アゴニストという薬の性質上、減薬はもっとも難しいと思われます。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2020-02-04 18:40 | 治療

サフィナミド/パーキンソン病治療薬

サフィナミドメシル酸塩(以下サフィナミド)、イタリアのNewron Pharmaceuticals S.p.Aという製薬会社が創製した、パーキンソン病治療薬が昨年11月に日本で発売されました。

欧州では2015年、米国では2017年に承認されていて、日本での承認は3~5年遅れています。

拙著172ページでも紹介しているように、ドパミンの分解酵素であるモノアミン酸化酵素(MAO)の活性を低下、ドパミンの分解を抑えることによって、脳内のドパミン濃度を一定に増やす効果がある薬です。

アセチルコリンの分解を抑えることによって、脳内のアセチルコリン濃度を一定に増やす効果のあるコリンエステラーゼ阻害薬に作用は似ているでしょうか?

適用・効能は「レボドパ含有製剤で治療中のパーキンソン病におけるウェアリングオフ現象の改善」ですので、すでにレボドパ含有製剤を処方されて治療中であるが、レボドパの効果が切れてしまう事で動作(運動症状)が悪化するケースのみが対象になります。

ウェアリングオフ現象の改善時間が平均で1.6時間/日ということで、ドパミンアゴニストに比肩するレベルという報告です。

ちなみに他のウェアリングオフ改善治療薬の効果は平均1時間未満にとどまっており、服用している患者さんの有効性の実感に乏しい印象があります。特に薬剤性精神病、薬剤性せん妄状態になっているケースに関しては、これらの薬は真っ先に減薬・中止の対象としていました。

レボドパ配合剤+ドパミンアゴニストがすでに相当量が使用されている症例が多く、その上にトッピングされているので、年齢が65歳を超えていれば、精神系有害事象が出現する確率は高く、ほとんどが薬剤性精神病、あるいは薬剤性せん妄になっていました。

今回、このサフィナミド50mg(朝1回)を、現在55歳男性、発症後約10年経過した患者さんに昨年12月に初めて処方しました。
すでにレボドパ配合剤450mg、ロチゴチン18mg、イストラデフィリン20~40mgが使われていましたが、かなりのオフ時間があり、日常生活や仕事に困っていました。

2年前まではロチゴチン18mgと併用にてイストラデフィリンがオフ時間の短縮に有効とのことでしたが、1年前くらいから効果が怪しくなり、
仕事のストレスなどの影響もあり、レボドパ配合剤の服用回数と用量が増加傾向(1日5回)になりました。

通常は脳深部刺激療法(DBS)の適応と考えてもよいレベルですが、
サフィナミドが発売されたという事で、効果が怪しくなってきたイストラデフィリンからの変更を提案、1年間は2週間毎の処方しかできないという事を受諾されたため、初めてこの薬を処方しました。

服用して数日以内に効果を実感されたようで、これまではレボドパの服用を午前中は2回必要だったのが、朝1回で済むようになったのが大きな変化だということでした。レボドパ配合剤の服用回数も、1日3~4回で済む日も増えたとのことでした。

パーキンソン病を診察し始めて30年近く経ちますが、これまで同系統の薬剤では経験したことがないほどの効果であったので、大変驚きました。

この方は、足の痛みを伴うジストニア、3年前から左足から始まり、最近は左右とも夜間22~23時頃に連日起こっていました。あまりに痛みが辛いために、芍薬甘草湯を頓服用として処方していて毎日服用していました。
この有痛性ジストニアがサフィナミドを服用開始後は、毎日起こっていたのが、月に2~3回まで減少したという事です。

この有痛性足ジストニアは、40~50歳という若年発症のパーキンソン病の方には比較的よくみられる症状で、以前はジストニアのために通勤ができないという方もいました。

これまでこのタイプのジストニアに対しては確実に有効といえる薬がなく、アマンタジンや抗アセチルコリン薬のトリへキシフェニジルを試していましたが、用量が少ないと効果が乏しく、有効な用量まで増やすとなると、必ず副作用の問題になり、長年高齢になっても長期に安心して服用できる方法ではありませんでした。

このサフィナミドが、有痛性ジストニアを軽減する効果があるとすれば、かなり期待できるのではないかと思います。

グルタミン酸への作用、抑うつ症状をどこまで軽減できるかも今後は注目して、適正な症例があれば試していきたいと考えています。

抑うつ状態は女性に多いのですが、パーキンソン病の場合はSSRIやSNRIのような薬がとても使いにくいため、この薬が抑うつ症状に効果があればと期待しています。
まだわずか1例だけですが、今後症例数を増やして多数の患者さんの効果を観ていきたいと感じさせる薬だと思います。

ただ残念なのは、この薬に限りませんが、近年、パーキンソン病治療薬として発売される薬の薬価があまりにも高すぎることです。発売後2~3年で安全性が確認されれば、薬価を少しは下げてほしいと思います。あまりにも高すぎると、処方する側も躊躇させられるものです。薬価を高くすることで、ポリファーマシーの抑止にはつながっていないように感じます。

拙著のタイトルで誤解される方も多いかもしれませんが、私はけっして薬物治療否定論者ではありません。
適正な用量、適正な種類で患者さんにとってデメリットが少なく、メリットが多くなるような使い方を提唱しているだけです。

患者さんの薬に対する忍容性もさまざまですので、一筋縄ではいかないですが、たくさんある治療薬をいかに上手に使えるかを考えています。
また、5年後、10年後のことも視野に入れて、処方薬をよく考えないといけないと思います。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2020-02-01 16:49 | 治療

ドパミン調節異常症/レボドパ含有製剤に基本的注意追記

厚労省は1月21日、レボドパ含有製剤の使用上の注意に対して、重要な基本的注意の項に「ドパミン調節障害症候群」の記載の追加を求める改訂指示を出し、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が改訂情報を伝えた。
レボドパとカルビドパ/ベンセラジド/エンタカポンの配合剤が対象。

報告例は1例とか2例らしいですが、まあ氷山の一角でしょう。報告してしまうと、薬を処方する方も、服用する方も不都合になってしまうからですね。

「ドパミン調節異常症」については拙著186ページに書いています。わかりやすく言うと「ドパミン依存症」のことです。

「薬をたくさん使わないと効果がでない」という思い込みから必要以上の服薬を求めて、場合によっては、他の医療機関に処方してもらおうとするケースもあります。本書では1.5%と書きましたが、程度問題であり、実際は10%以上は存在するでしょう。

この「ドパミン調節異常症」はもともとはドパミンアゴニストというドパミン受容体の刺激剤が登場したときに、注意喚起された有害事象ですが、少なからずレボドパ配合剤単独でも出現しうるという事でしょう。

私がこれまで診てきたケースでは、レボドパ配合剤とドパミンアゴニスト(多くはプラミペキソール)の高用量がすでに長年処方されているケースです。最大限まで増やされてしまい、その上で、セレギリン、ゾニサミドなどが続々とトッピングされて、精神疾患のようになってしまった症例をみたことがあります。中国地方のパーキンソン病で著名な医師から処方されていて、わざわざ受診したケースもあります。

対症療法とはいえ、パーキンソン病の方々にとってレボドパ配合剤、ドパミンが必要で有意義であることには異論はありませんが、その人にとって、本当に正しく使われているか?服用量はそれで適正なのか?を検証することは、実は容易ではないです。
私の印象では、オーバードース傾向になっているケースが圧倒的に多いのではないかと感じます。

昨年秋に四国から、一時的に横浜へ来られた80代女性のパーキンソン病の方がいました。前医ではレボドパ・カルビドパが350mg/日処方されており、同居者が、夜間の不穏や幻覚にかなり悩まされました。
パーキンソン病かわからないほど運動症状が軽微であったので、段階的にレボドパ・カルビドパを50mgずつ200mg/日まで減量して、最近はこの問題は落ち着いたようです。

「レボドパは安全性が高いから、動けるようになるのであればいくらでも増やせば良い」と断言する専門家もいるようですが、これまでセカンドオピニオンで受診された方々の多くはドパミン依存になっていました。おそらくレボドパ配合剤を含めたポリファーマシーが「ドパミン調節異常症」を助長するのだろうと思います。ドパミン作動薬の服用量と種類が増えれば増えるほどリスクが高くなるのは間違いないでしょう。

薬というのは意図した作用(中脳へのドパミン刺激)だけではなく、意図しない不都合な作用(側坐核や辺縁系へのドパミン刺激)も起こりうるものであるという事をもっと知るべきだと思います。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2020-01-27 12:16 | 治療

前頭側頭葉変性症に対する投薬

かなり以前に、前頭側頭型変性症(以下FTD)についてこのブログに書いたことがありますが、諸事情があり、再び私見を書こうと思います。

2年前に患者会向けに講演いたしました。その直後に数名だけ遠方から受診されましたが、この1年はそれらしき新規の患者さんはいません。

3年前に、難病申請の対象になりましたので、当院でも約20名ほどは
FTDで臨床調査票を書きました。FTDで調査票を書いたケースのうち臨床病型は80%がSD(意味性認知症)でした。bv(行動異常型)FTDタイプは大半が臨床的にCBSに移行するので、FTDではなくCBDとして難病申請しました。

2年前の講演主旨は、FTDに抗精神病薬を使うことのデメリットについてです。開業当初は何もわからなかったので、先のブログに書いたクロルプロマジンやらクエチアピンやら使っていた時期がありましたが、半年くらいでほとんどこういう薬を処方するのをやめました。それはデメリット>>>メリットだからです。100人以上FTDを診てきた私見で言いますと、メリットはほとんどゼロに近いのではないかと思います。

抗精神病薬を避ける最大の理由は、FTD、特にbvFTDはCBSと臨床的に高い頻度でオーバーラップするからです。当院の外来受診者の臨床的FTDの中で比較的多かったのは、CBS(大脳皮質基底核変性症)タイプです。CBSは脱抑制的な症状が強く出現するからです。

前医(精神科か神経内科)で処方された抗精神病薬を数年継続して服用され続けて、当院に来られた時はすでに歩行不可能に至り車椅子という方を山ほど診てきましたので、抗精神病薬に対してはかなり警戒しています。

「不機嫌で家族やデイケアで暴れる=FTD」というのもよくある大きな誤解です。最近みた症例で、男性の方で、パーソナリティー問題によるギャンブル依存などが背景にあって暴れるATD(アルツハイマー)のケースがありました。抗精神病薬をいくつか試みましたが、一時的な効果はあるものの、やはり根本的な解決にはなりえませんでした。

ATDにしろFTDにしろDLBにしろ、暴れる人は暴れます。
暴れるという症状は即、行動異常型FTDの診断にはなりえません。

認知症の人が暴れるのは、それは生育歴、パーソナリティー、家族、生活環境、などの問題が背景にあるためで、家庭では暴れるけど、デイケアでは大人しい、またはその逆などもあります。環境変化というのは暴れる理由になりえます。またワンマン社長、独裁者タイプの男性も暴れる人になりやすいです。そもそも社長や教授やってた人にデイケアが合うわけないですし、男性は仕事をしてカネを稼いでいるという存在意義がなくなり、ただ認知機能が低下していく状態になれば不安になり暴れるでしょう。
長年のパーソナリティーの問題が、たかだか医者の処方した抗精神病薬ごときで収まると考えるべきではないでしょう。

抗精神病薬は期間限定にするようにとあります。なぜなのでしょうか?
それは病気が進行していくからです。病気が進行してしまえば、最初は抗精神病薬で上手くいったように見えても、半年後はドパミン遮断による様々な問題が発生します。80歳以上の人になると心臓が悪い人が多いですので、不整脈の問題があります。

抗精神病薬の代わりに何を処方するかというと、やはり現実的には抗てんかん薬かセロトニンを増やす薬(SSRIなど)になるのでしょうか?
しかし、旧来型のカルバマゼピンや、パロキセチン、フルボキサミンは副作用が多いことで有名ですので、使いつらい所です。












新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2020-01-14 12:54 | 治療

抗精神病薬の特性

現在使用されている、抗精神病薬は第1世代(17種類)と第2世代(10種類)があります。

中でも最も危険な副作用は以下の1)2)であり、やはり従来使われていた第1世代では非常に多かったと思います。
1)心電図でのQT時間の延長
不整脈による心臓突然死を誘発する危険性が高まる
2)悪性症候群
40℃前後の高熱、意識障害、全身の筋肉硬直

私は「神経内科」ということで、総合病院勤務時代はイヤというほど、精神科処方の抗精神病薬による悪性症候群のケースを受け持ちました。
このような臨床経験がなければ、悪性症候群の本当の恐ろしさはわからないと思います。

これらを軽減すべく、この20~30年で第2世代が続々と製品化されました。長年服用しなければならない統合失調症の患者さんにとっては喜ばしい事でした。

ただ、ここ数年の高齢者の増加に比例して、認知症に伴う精神症状のケースが増えたこともあり、この第2世代が使われることが増えたようです。
特に施設などでおとなしくするために漫然と服用させられるケースがあり、しばしば動けなくなった、ジスキネジアが出たと言って、神経内科の外来を受診されます。

認知症によく使われている第2世代をピックアップします。

SDA(第2世代)
リスペリドン(リスパダール®)力価100倍/半減期21時間
D2(3+)D3(+)D4(+)D1(+)
α1(2+)5HT1(4+)H1(2+)
無動が問題、作用がかなり強すぎる

MARTA(第2世代)
オランザピン(ジプレキサ®)力価40倍/半減期28時間
D2(2+)D3(2+)D4(2+)D1(+)D5(+)
α1(2+)Ach(2+)5HT1(4+)H1(3+)
眠気、認知機能低下、血圧低下、無動、不随意運動が問題
作用が強すぎる

クエチアピン(セロクエル®)力価1.5倍/半減期3~6時間
D2(2+)D3(2+)D4(+)
α1(3+)Ach(+)5HT1(4+)H1(4+)
眠気、認知機能低下、血圧低下が問題

DPA(第2世代)
アリピプラゾール(エビリファイ®)力価25倍/半減期61時間
D2(4+)D3(2+)D4(+)D1(+)
α1(+)5HT1(4+)H1(+)
無動が問題

各種受容体)Dドパミン Achアセチルコリン Hヒスタミン
D1/D5:不必要な運動→ジスキネジア
D2:必要な運動ができない→アキネジア(動作緩慢・無動・寡動)
D3:抑うつの軽減
α1:起立性血圧低下、鎮静(嗜眠)
ACh:認知機能低下、覚醒低下
5HT1;認知機能改善不安軽減、動作緩慢軽減
H1;認知機能低下、鎮静(嗜眠)、肥満

ドパミン受容体がブロックされると、パーキンソン病と同じような症状、
動作緩慢・無動・寡動、不随意運動などがみられます。
アセチルコリン受容体がブロックされると、アルツハイマーやレビーと同じような症状、覚醒レベルの低下、認知機能低下がみられます。
アルファ受容体がブロックされると立位の血圧低下で、脳の血流が悪化します。
ヒスタミン受容体がブロックされると、鼻炎・皮膚炎に使われる薬と同じく、嗜眠、認知機能低下(せん妄)がみられます。

つまり、第1世代よりも致死性不整脈や悪性症候群のリスクは減ったとはいえ、長期間にわたって認知症症例に使うと良くない薬であるというのは変わらないわけです。特にレビーに使うときは厳重注意です。どの症例に使ったとしても長期服用すれば副作用は避けられないでしょう

一方で、認知症によく使われる、第1世代はというと
クロルプロマジン(コントミン®ウインタミン®)力価1倍
D2(2+)
α1(3+)ACh(3+)5HT2(3+)H1(3+)
血圧低下、高度の認知機能低下、眠気が問題
レボメプロマジン(ヒルナミン®レボトミン®)力価1倍
D2(2+)
α1(3+)Ach(2+)5HT2(3+)H1(4+)
血圧低下、高度の認知機能低下、眠気が問題
ハロペリドール(セレネース®)力価2倍
D2(3+)
α1(+)5HT2(+)
無動が問題

認知症患者に使うのであれば、アセチルコリン受容体とヒスタミン受容体を強力にブロックするクロルプロマジンやレボメプロマジンは避けたほうがよく、どうしても使うのであれば、ハロペリドール少量になりますが、私が若い頃に経験した、悪性症候群のケースの原因薬のほとんどがこの薬でした。やはり少量だといってもリスクはあるので、短期間の使用にとどめるべきでしょう。




新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-12-23 18:48 | 治療

抗精神病薬の処方

抗精神病薬というジャンルの薬があります。

「統合失調症」の対症療法としては、非常に重要な薬であり、この薬のおかげで、病気の症状が寛解状態を維持できて、社会に適応できている人々が少なくないです。

通常は精神科でしか、処方されませんが、たまに精神科ではない、内科医が処方していることもまれにあるかもしれません。
患者さんの側(家族も含む)が「精神科」への受診を故意に避けたがるという問題もあります。

近年は、
①幻覚・妄想などの精神症状を主体とする、高齢者の認知機能低下症のケースが増えているようです。(レビー小体型認知症など)
②パーキンソン病の運動症状に対してレボドパ配合剤+ドパミンアゴニスト+その他という多剤併用のドパミン刺激剤を長年服用し続けて、高齢に至ってから、幻覚・妄想がなどの精神症状が現れてきたというケースもあります。

①の場合は、認知症専門外来で、②の場合は、パーキンソン専門外来で、それぞれ幻覚・妄想を抑える目的で、抗精神病薬という薬が処方されます

私はどちらも診ていますが、抗精神病薬はめったに処方することはありません。なぜなら幻覚・妄想は多くの場合、薬で誘発されているので、その原因薬を減量・中止することで軽減することがほとんどだからです。

原因薬は、パーキンソン病治療薬、特にドーパミンアゴニストや超短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬、泌尿器科で処方される抗コリン薬、などです。

最近、紹介にて受診されたケースの場合は、薬が原因ではなくて、前頭葉の広範囲な脳梗塞が誘因でした。前頭葉の梗塞発症後から幻覚・妄想が誘発されたのです。

このケースを診察してみると、時計描画テスト、図形模写テストでも視覚・空間認知の問題があり、元々大脳皮質後方に問題があった可能性があります。潜在的に、レビー小体型認知症があったのかもしれません。

このケースでは、幻覚・妄想を誘発する薬は一切服用されておらず、前頭葉の脳梗塞後遺症は広範囲で不可逆的だと推定されたので、やむをえず、抗精神病薬を必要とするレアなケースと判断しました。

幻覚の起源としては、①大脳皮質後方(後頭葉・頭頂葉)の機能低下による視覚・空間認知機能の低下②脳幹上行網様体の機能低下による覚醒不良
妄想の起源としては、大脳皮質前方(前頭葉)の一部の機能低下と言われています。

抗精神病薬を認知症に使用するにあたっては、副作用に厳重な注意・監視が必要です。また2~3か月の期間限定的使用が推奨されています。

医療側からは、起こりうる危険事象/副作用に対する丁寧な説明とそれに対する患者側の同意確認が必要であるのは言うまでもないでしょう。

起こりうる危険事象/副作用を予測するためには、抗精神病薬の特性を知る必要があります(次のブログに続く)。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-12-23 12:30 | 治療

かぜ薬の危険性

薬物依存の原因薬物は、報告されている範囲内では総合感冒薬などの市販薬が約40%を占めるらしいです。大麻や覚醒剤よりもはるかに多いのが近年の特徴だそうです。 

総合感冒薬のうち、特に問題になるのは「せき止め(鎮咳薬)」と「鼻水止め(抗ヒスタミン薬)」ともに中枢神経(脳)に作用する薬です

「せき止め(鎮咳薬)」
麻薬性と非麻薬性のものがありますが、前者としてよく使われていて、市販薬にもよく入っているのがコデインです。脳に直接作用して強制的に咳を止める薬です。

コデインには呼吸抑制、過剰鎮静などの副作用が有名で、英国・米国では12歳以下の使用は禁忌になっていますが、高齢者と脳神経系疾患(喀痰の排泄する力が弱まる病気、PD,PSP,DLBなど)にも禁忌にしたほうがいいと思える薬です。

かぜやインフルエンザなどのウイルス感染症だけではなく、百日咳やマイコプラズマなどの細菌感染症に対して咳を止めると、体内からウイルスや細菌の排泄を止めてしまうので、感染症からの回復が遅れてしまいます。

また若年~青年期ではコデインの大量服用によって依存性に至ってしまう人も少なくないようです。依存から離脱できず、中年期になっても薬局からせき止めを大量購入してしまう人もいるようです。

「鼻水止め(抗ヒスタミン薬)」
この薬はせき止め以上に汎用されています。特に第一世代の抗ヒスタミン薬は、ヒスタミン(神経伝達物質の1つ)を妨害する作用が強いので、若年者で短期間だけ使うにはいい薬ですが、高齢者、特に脳神経変性疾患などには原則的に使うべきではない薬でしょう。

第二世代の抗ヒスタミン薬は脳神経への影響はかなり軽減されているとはいえ、やはりこれを服用すると眠くなったりする人は少なくないです。
高齢者、脳神経変性疾患(アルツハイマー、パーキンソン)には使用を控えたほうがいいでしょう。

臨床現場では特にプロメタジン(かぜ薬としてよく処方されていたPLに配合されている抗ヒスタミン薬は、鎮静作用が強く制吐作用、ふるえを軽減する作用などもあるため、依存性が強いようです。かぜをひいたとウソを言って、毎月のようにPLをもらいに来る人がいるようです。

私は、高齢者の神経変性疾患を数多く診る仕事ですので、当然ながら、コデインもプロメタジンも処方しません。

また薬物治療の最新エビデンスによると、コデインも抗ヒスタミン薬も有効性はいずれも否定的な見解です。
そういう薬でわざわざ脳神経副作用や依存のリスクを負うというのは、あまりにもデメリットが大きすぎるような気がします。
特に、レビーやパーキンソン長期罹患者には危険、禁忌にすべき薬です。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-12-20 11:20 | 治療

高齢者 高リスク薬多用

朝日新聞、昨日(12月8日)一面記事
「高齢者 高リスク薬多用 睡眠・抗不安 処方80代ピーク」
「転倒・認知障害の恐れ」
「複数の不調で受診・重複も」

記事によると、ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬の処方数は、75歳以上の特に女性で年齢とともに増加、80~89歳がピーク、90歳以上でもかなりの処方数のようです。

これまでも私が当ブログ、地域の講演会、認知症なんでもTVなどで何度もしつこく取り上げているテーマです。

筋弛緩作用による転倒~外傷、呼吸状態の悪化、健忘症~認知機能の低下など、すべて直接的な健康被害に通じる有害事象が多いのが、このベンゾジアゼピン系です。
そういう薬が高齢者にこれだけ処方されているというのは驚かされます。

おそらく、ベンゾジアゼピン系の服用者が今よりもっと少なければ、医療費コストが大幅に減るのは間違いないでしょう。特に高齢者の救急外来の受診者数は大幅に減るのは間違いないでしょう。

一度、ベンゾジアゼピン系を服用開始して、半年以上服用してしまうと強い依存性のため、離脱するのがかなり困難になります。

私はベンゾジアゼピン系以外の薬に変更して上手くいったケースもありますが、上手くいかないケースもあります。

特に依存の強いのは、超短時間タイプ・短時間タイプの薬です。
効果が発現する時間が短く、短時間で効果が切れるタイプです。
夜間せん妄、異常行動、健忘症なども多いという報告があります。
長時間タイプに比べて、持ち越しが少なくて安全だと喧伝されてきたのですが、中途覚醒が多くて、異常行動、幻覚、転倒事故などがかなり多いという報告があります。
特にアルツハイマー、レビー、パーキンソンなどの神経変性疾患の方にはかなり高率で上記のイベントが現れる可能性が高いので、できればベンゾジアゼピン系は避けたほうがいいでしょう。

<超短時間タイプ>
トリアゾラム(ハルシオン)半減期1.2時間
ゾルピデム(マイスリー)半減期1~2時間
ゾピクロン(アモバン)半減期0.8時間
エスゾピクロン(ルネスタ)半減期0.8~1.5時間
<短時間タイプ>
エチゾラム(デパス)半減期3.3時間
ブロチゾラム(レンドルミン)半減期1.5時間

現在行われている30日の日数制限だけでは抑止にはつながらないので、精神疾患・精神科以外は高齢者への新規処方を原則禁止する。精神科以外の診療科から処方する場合は、理由を明記するという保険診療上のルールを作るべきだと思います。

レビーやパーキンソンと診断された高齢者はさらに、ドーパミンアゴニストなど神経系に作用する薬が何種類も併用されていることが多く、それがせん妄(一過性の意識レベル低下による異常な言動(幻覚・妄想など)・行動)を誘発していると推定されます。
神経系作用薬のポリファーマシーは特に有害性が大きいので要注意です


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-12-09 12:23 | 治療

レビー小体型認知症の多様性に応じた薬物選択

先日11月2日(土曜日)
午前中のみで診療を終了して、新幹線で大阪、堺のホテルに向かいました。
「神経変性疾患セミナーin 南大阪」で、かつて所属していた医局の先生方に講演を依頼されました。

講演のタイトルは
「レビー小体型認知症の多様性に応じた薬物選択」というテーマでした。
時間は60分間で
レビー小体型認知症(以下DLB)の診断・分類・薬物選択の功罪などについて2か月かかって作成したスライド100枚以上になりました。

開業して5年間での、実際の臨床経験と最新の医学論文・医学書などの報告知見をすべて網羅した内容になりました。
健康保険適用外の薬物についてはルールにより表示できませんでした。
医学書にもDLBに推薦される薬物として明記されている薬物ではありますが、ルールなのでやむを得ません。

DLBには「認知機能低下症」だけではなく、「睡眠(覚醒)障害」「精神障害」「自律神経失調症」「運動障害(パーキンソニズム)」の5つの側面があり、それぞれの薬物選択の話をしました。
「睡眠導入薬(ベンゾジアゼピン系作動薬)」「抗精神病薬」「コリンエステラーゼ阻害薬」「ドーパミン受容体刺激薬(アゴニスト)」の諸問題についても最新知見を交えて詳しくお話ししました。

私の講演の前には、福岡大学医学部の講師の先生が
「パーキンソン病の運動緩慢に対するアプローチ」というテーマで講演されました。非常に素晴らしい内容の講演で感銘を受けました。

南大阪・堺地区に帰るのはおそらく15年ぶりくらいでしたので、講演終了後は、かつて所属した同じ医局の先生と何年ぶりかに会って話せたのがよかったです。

レビー小体型認知症の多様性に応じた薬物選択_f0349413_08414379.jpg
レビー小体型認知症の多様性に応じた薬物選択_f0349413_08442389.jpg

会場ホテルより堺港から神戸・六甲山方面を望む



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-11-08 09:46 | 治療

神経内科のポリファーマシー


神経内科による、ポリファーマシー(多剤併用)は日常茶飯事のようです。
神経系に作用する薬剤が5種類以上、使われることがザラにあります。

以前のブログでも取り上げましたが、パーキンソン病治療薬をすでに7種類併用している症例に8種類目をトッピングして有効であったという発表を堂々とやっている講演会を聴いて、呆れ果てたことがあります。

いかなる神経変性疾患でも、4種類以上の神経作用薬については安全性・有効性について科学的根拠はありません。臨床試験がされてないからです。

特に、アルツハイマー病、パーキンソン病以外の神経変性疾患、神経難病については臨床試験はまったくされていないので、そういう病気に対してポリファーマシーというのは非常に危険を伴う方法になります。

今回紹介する症例は、70代後半の男性。どうやらパーキンソン病と診断されているようですが、5年以内に自立歩行不能、車椅子使用になっていて、全く会話できなくなっていたので、国際学会(MDS)の定める除外診断基準としては、パーキンソン病は確実に否定される症例です。頸部~脊柱(体軸)の筋強剛が強いのが印象的でした。

処方薬は神経系薬剤だけでも以下の7種類ありました。
1)レボドパ・ベンセラジド(100)3
2)ドロキシドパ(100)3
3)チアプリド(25)6
4)リスペリドン(1)1
5)エスゾピクロン(1)2
6)ドネぺジル(10)1
7)メマンチン(5)3

まず考えられるのは、ドネペジル10mgを服用していることで、体軸性筋強剛、不眠が誘発されていると思われます。
ドネペジル10mg+チアプリド150mg+リスペリドン1mgだと、3つとも薬剤性錐体外路症状(EPS)・パーキンソニズムの原因薬剤なので
これだけでも相当な影響があると思われます。
ここまで動作が悪い症例に対して、ドパミン阻害作用の強い、抗精神病薬を2種類も処方している意図が理解できません。
どう見ても、アルツハイマーではない症例に対して、ドネぺジル10mg+メマンチン15mgを処方する意義はないと思われます。

明日は、港北区内の地域ケアプラザにおいてセミナーがあり、「脱ポリファーマシー」という医学書をおそらく初めて出された(編集された)先生がゲストとして来られて、講演する予定でした。しかし、台風来襲の影響のため、来浜が難しくなり、中継で講演されることになりました。
この医学書では、内服薬の種類が多くなった理由として以下の点が挙げられていました。
1)薬剤情報を製薬サイドから入手することによるバイアス
2)先輩医師への遠慮
3)エビデンスのない謎の薬の人気
4)薬剤カスケード
5)多診療科併診
6)薬の好きな患者
7)薬の副作用情報を報道しないメディア

拙著においても「パーキンソン病、少しずつ減薬すれば良くなる!」は、
パーキンソン病における、神経内科医によるポリファーマシーを批判した主旨の書籍です。主に第6章にその問題について書きました。
(6-3)ポリファーマシーと薬剤カスケード
(6-6)ポリファーマシーの弊害

決して薬剤による治療そのものを否定しているわけではなく、正しい薬の使い方をしてほしいと訴えているだけなのです。

アルツハイマーでもパーキンソン病でもない神経難病に対して、アルツハイマー病の治療薬とパーキンソン病の治療薬を同時使用するということが、保険医療として認められている?という現状には嘆息するしかないです。




新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分







by shinyokohama-fc | 2019-10-10 17:19 | 治療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line