カテゴリ:医療( 61 )


横浜セミナー「パーキンソン病とレビー小体型認知症は違う病気です」

10月21日(日)、AP横浜駅西口にて、脳神経変性疾患研究会主催のセミナーがありました。

小生と平川先生(誠弘会池袋病院 副院長)がそれぞれ60分ずつ講演し、その後会場の質問に対して意見を言い合う、座談会が30分行われました。

平川先生の講演会が延長、その後の座談会も延長して、結局予定より40分も超過して、大変盛会のうちに終わりました。

たぶん、この講演会で、パーキンソン病(PD)とその延長である認知症を伴うパーキンソン病(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)の違いがよくわかっていただけたであろうと思います。

本当はもう少し座談会の時間を60分くらいとれれば良かったかもしれないと思いました。
今回のセミナーは1か月前に参加エントリー終了となってしまいました。
今回参加できなかった、特に地元横浜・神奈川の方々には申し訳なかったと思っています。
この場を借りてお詫びしたいと思います。

来年も違うテーマで同じ会場で実現できればと考えています。

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by shinyokohama-fc | 2018-10-23 18:15 | 医療

鹿児島での講演

先日、9月16日、講演のため鹿児島に出張してきました。
ひらやま脳神経外科の平山貴久先生のご協力で、同じビルにあるホールで行いました。今回は時間制限がなく、約90分で話しました。神戸のときよりは、落ち着いて上手く話せたような気がします。

「認知症を伴うパーキンソン病(PDD)とレビー小体型認知症(DLB)の違い」について、自分の診療を通しての考え方をお話しました。
本題に入る前に、平山先生から「パーキンソン病」に関する短い解説をしていただきました。熊本で開業されている、木村武実先生にもお越しいただいて大変貴重な発言していただきました。
ご協力いただいた、お二人の先生方には大変感謝しています。有難うございました。

各種学会では「PDD とDLBは病理が同じだから同じ病気だ」という学説がまことしやかに言われているようですが、
実際に患者を診ている、小生からすると、どう見ても違う臨床像、薬物反応であるので、どうにも受け入れがたい学説のようです。

アルツハイマー(AD)に関しても、若年発症の「皮質優位型」と高齢発症の「辺縁系優位型」は同じ病理でも、まったく違う臨床像・薬物反応であることは、誰もが知ることでしょう。それと同じことです。

同じような内容を10月21日(日曜日)に横浜で、平川亘先生を招いて、講演と討論を実施する予定です。会場が小さい会議室であるので、すでに2週間前に満席となってしまいました。

わずかな時間でしたが、少々観光しましたので、以下にスナップ写真をいくつか紹介します。
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上から順、西郷隆盛の銅像、天文館商店街、市電、錦江湾から鹿児島市街、錦江湾から桜島、桜島の海岸、桜島の北岳


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by shinyokohama-fc | 2018-09-20 10:54 | 医療

停電という非常事態

一昨日、25年ぶりという、中心気圧950ヘクトパスカルの猛烈な台風が関西地方を襲いました。関西空港の水没、乗用車が強風で吹き飛ばされて潰されるなど、大変な被害があったようです。

そして今朝早朝、北海道の中心部を震度7の大地震が襲いました。ここでも
列車が全面ストップ、空港が機能停止、やはり停電による大きな影響がありました。

一番大変なのは、台風が過ぎ去った後も、交通インフラが復旧しない、停電が長引く、コンビニから食料がなくなる、などの二次災害とも言える事態でしょう。特に電気で生活や仕事を賄っている現代社会においては、停電はかなり致命的だと言えます。

記憶に新しいですが、東日本大震災の直後も「計画停電」という停電がありました。この時も2~3か月にわたって時間限定ですが、自宅でも職場でも停電の不便さを嫌というほど経験しました。

当時住んでいた地域がかなり郊外でしたので、頻繁に計画停電の影響を受けました。自宅ではロウソクを使い、仕事場では電子カルテが使用できないので、それなりの対処を強いられました。

近隣の大病院でも、MRI検査ができず、脳卒中が入院できなくなりました。それゆえ、かかりつけの患者さんが脳卒中になってしまい、かなり遠方の病院まで運ばれてしまったので、ご家族が面会に行くのが大変だったようです。

このように、二次災害として、やむを得ない事とはいえ、医療現場において
停電は長引けば長引くほどかなり深刻な影響を及ぼします。

札幌は昨年9月、神戸は2週間前に講演で出向いた場所でした。
両地域とも、少しでも早く復旧する事を願わずにはいられません。
これだけ、日本国内で毎月のように甚大な災害があるというのは異常事態でしょう。過去50年で記憶にありません。
やはり「防災省」が必要ではないかと感じずにはいられません。


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by shinyokohama-fc | 2018-09-06 18:23 | 医療

病気になるのはもうやめよう

第2回認知症治療研究会関西支部会が神戸市中央区中山手通にある、ラッセホールで昨日(8月26日)に開催されました。

小生はランチョンセミナーの演者として招待講演のために参加しました。
250名という多数の参加者で、これほど大人数の前で話すのは久しぶりだったので、待っている間は大変緊張していました。

小生の講演の前に、アクアメディカルクリニックの石黒先生が90分ほどの講演を拝聴しました。石黒先生の話を聴くのは実はまったくの初めてでした。これまでは患者の紹介などのやりとりをしただけでした。

講演テーマは主題「食事・栄養療法で認知症は予防・改善できるのか?」、副題「認知症になりやすい食事、なりにくい食事」でした。

講演を90分聴いて、とにかく色々な意味で衝撃的でした。

講演のスタイルは、さながら米国人のプレゼンテーターのようでした。いつもこういうふうにやりたいと憧れますが、とても真似できません。

講演も方々からセレクトした動画(参考資料としての)を流す時間が半分くらいでした。日本のテレビを含めたマスメディアでは絶対に報じられない真実ばかりでした。せめて「NHKスペシャル」ではやってほしいくらいの内容でした。

内容については、ここでは核心部分を詳細に書くことはできませんが。

世界の人口爆発に伴う食糧危機を賄うために、食物の大量生産が必要になり
飼料・農作物にも抗生物質、化学薬品(農薬、殺虫剤、除草剤)などが大量に使用されているという事実。

栄養価の低くむしろ有毒性の高い食事(たとえば小麦が多い食事)ばかりが好んで大衆に多く食べられているという事実。

そういう食事による腸内環境の悪化に伴って、メタボリック、リッキーガット(腸の粘膜の慢性炎症)など炎症性疾患が増加している事実。

神経変性疾患の権威である米国のデール・ブレデセン氏が考案した「リコード法」、その背景について解説した著書「アルツハイマー病 真実と終焉」で書かれていた、アルツハイマーをもたらす3つの原因である1)炎症 2)栄養不足 3) 毒物 という内容が短時間で理解できる、プレゼンテーションでした。

どういう食事療法をすればいいのか?野菜ジュースやサプリメントを含めた提案もありました。

この講演を聴いて、いろいろ考えさせられました。今行われている、神経変性疾患に対する薬物療法はいったいどれほどの意味があるのだろうか?と。

神経変性疾患、生活習慣病(たとえば糖尿病)を引き起こすのを予防するための医療こそが、現代社会には求められているのだと。
石黒先生の名刺には「病気になるのはもうやめよう」と書かれていました。

今求められているのは、神経変性疾患(アルツハイマー、パーキンソンなど)に関しては、効果がどこまであるのか保証されておらず、病気の進行を止めることすらできない、いやそれどころかむしろ病気の進行を助長、病状を悪化してしまう可能性の高い薬物療法ではなくて、

病気の進行を止める可能性のある食事療法、運動療法を確立する事に他ならないと確信させられました。

小生は石黒先生に続いて、11時30分から講演しました。
ほぼ「パーキンソン病」に特化した内容で、一部レビー小体型認知症との違いについても触れました。
前半は、市民向けで「パーキンソン病の諸症状」について、30分間。後半は医療職向けで「パーキンソン病の薬物療法の作用と副作用のパラドックスと限界」について50分間。内容はここ数か月、ブログで書いているのと同じような内容ですので、わざわざここで書く必要もなかろうと思います。

以上の内容において、一つ押さえておかなければならない事実として、多様性が非常に大きい人体において、それぞれの代謝酵素や遺伝子の個体差は非常に大きいです。

同じ食物・食習慣をしても、神経変性疾患、生活習慣病になりやすい人となりにくい人がいます。
同じ薬物・用量を服用しても、効果が出る人と出ない人がいます。また副作用・有害事象が出る人と出ない人がいます。


そんな中で我々ができる事はいったい何でしょうか?
病気になりやすい人、副作用・有害事象がでやすい人の存在を強く意識することではないでしょうか?

厳しくセレクトされた症例群で実施された、ランダム化比較試験(RCT)のみをタテに海外の大規模臨床試験でエビデンスがあるからと言って、日本人にも安全性・有効性は保証されているのでしょうか?

個々の症例を十分に検証した上で、特に薬物に関しては慎重に処方するという態度が求められるのではないでしょうか?

そもそも同じ治療薬を4種類以上併用するのはエビデンスにも反していますので、安全性の面から言って論外なのですが。



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by shinyokohama-fc | 2018-08-27 12:02 | 医療

簡易知能評価スケール診断の限界

「簡易知能評価スケール」という簡便に短時間で「認知症」の重症度を測る
検査として、認知症専門医にも診断スケールとして重宝されている診断のためのスケールです。

世界的には、Mini-Mental State Examination (MMSE)が最も頻用され、一方で日本では改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)が使われています。

小生の外来通院者には、これらのテストで高得点(25~30点)を取るが、明らかに、日常生活において客観的にみて、明らかに認知機能が低下している患者さんが沢山おられます。

昨年行われた、「自動車運転に関わる認知症の診断」の講演会で演者の先生が語っていました。
簡易知能評価スケールで認知症か否かを判定してはならないと
交通事故を起こしやすいのは、むしろ、初期のFTDとか初期のDLBであり、むしろ初期の非若年性のATDは事故率が高いとはとても思えません。
初期のFTDは、MMSEが高得点でも、交通ルールを守らないですし、初期のDLBは日中の傾眠、認知の変動などで運転リスクが高いわけです。

中には何らかの薬物など(コリンエステラーゼ阻害薬以外の事も多い)が奏功して、点数が高得点になっている事例もありますが、元々の地頭が良かったり、教育歴・職業歴による影響が大きいと推定されます。

検査実施者によるバイアスも大きいようです。ある患者さんに同じMMSEを実施しているのに、小生が実施したテストでは30点で、紹介先の別のDrが実施すると22点だった事がありました。

小生が診ている方々は、アルツハイマータイプ(皮質性認知症)よりも、非アルツハイマータイプ(皮質下性認知症・混在)の方が多く、このような非アルツハイマータイプに関しては、MMSE、HDSR による認知機能評価は初期~中期の病勢を反映しにくく、それほど役に立たない事がわかりました。

「パーキンソン病から派生する認知機能低下症」、いわゆるPDDの症例も比較的多く診ているのですが、多くはMMSEやHDSRが26点以上。
失点するのは、ほとんどシリアル7です。
また正答はするが、時間がかかるというパターンは多いようです。

構成障害・視空間認知機能低下が顕著で、時計描画・図形模写・立方体模写が全くできない症例が多数いる事がわかりました。

それゆえ、学会レベルでは、PDDに対してはMMSEよりも、THE MONTREAL COGNITIVE ASSESSMENT (MOCA)という検査が推奨されていて、日本語改訂版というのもあります。ただし検査に20分くらいかかります。
最近はそれ以外のテストもいろいろ実施して、多角的に臨床評価するように試みています。

PDDというのは、認知機能低下症をきたさない通常のPDとも、レビー小体型認知症(DLB)とも臨床像が違うというのが、多くの患者さんを診てよく理解できました。

なぜ、学会レベルで「同じスペクトラムの病気だ」と言われているものを、わざわざ、この3つに分類(正確には6つに分類)する必要があるのかというと、薬物処方に関わってくるからに他なりません。

「同じスペクトラム=同じ病気」という、病理と臨床を同一化した考え方によって、認知症の全くないPDに対して無意味なコリンエステラーゼ阻害薬が処方されたり、DLBにドパミン作動薬が大量に処方されたりして深刻な精神症状を引き起こしたり、混乱・混迷・パニックになってるのが現状ではないでしょうか?

この点については、10月21日 (日曜日)に、AP横浜で行われる講演会でくわしくお話したいと思います。


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by shinyokohama-fc | 2018-08-06 12:34 | 医療

DAT-SCANという検査の意義

今から20年前に一緒に仕事をしていた、神経内科医から興味深い内容のメールをもらいました。以下のとおりです。

お元気ですか?DAT-SCANですが、パーキンソン病治療薬を服用して、幻覚と不穏など精神症状で困っていた高齢者2名について検査実施しましたが、SBRが2~3程度、ある程度線条体のドパミン集積があるのを確認してから、治療薬を中止しましたが、精神症状がなくなって落ち着きました。動作歩行レベルの悪化はないようです。

DAT-SCANはパーキンソン病の診断よりも、治療薬を中止する目安に使うのがいいかもしれません。
ちなみに、パーキンソン治療薬による(中略)でSBR1~1.5くらいになったら、パーキンソン病治療薬依存症・(中略)になっているので、中止すると禁断症状が出るみたいです。

以上がメール文引用・一部編集

拙著121ページでも、診断補助のための検査として、DAT-SCAN(ドパミン・トランスポーター・シンチグラフィー)について簡潔に書いています。

中脳黒質のドパミンニューロンが、線条体の神経終末に投射しているので、この神経終末に存在するドパミントランスポーターに高い親和性を示す、イオフルパンの集積で評価される検査です。イオフルパンの取り込み低下している場合は、同部位のドパミン神経終末の変性によるドパミン欠乏が示唆されるという事です。

イオフルパンの取り込み程度を数値的・客観的にするための、通常、臨床現場で使用されている定量的指標(上記のSBR)は形態的変化(たとえば脳萎縮)や撮像方法による影響を受けるようですので、この数値のみで診断するのは避けるべきだという意見があります。

レボドパ、ドパミンアゴニストなどの薬物治療が実施される、今から30年以上前は、パーキンソン病において、幻覚などの精神症状はほとんど出現していなかったと言われています。

現在は高齢者に対しても遠慮なく、多種大量のドパミン作動薬が処方されているのが普通のようです。その多くは過剰処方であり、幻覚、妄想、時には行動化を起こし不穏状態になります。

上記のメール文のように、「パーキンソン病」だと診断されれば、80歳であろうが90歳であろうが、ガイドラインどおり?ドパミン作動薬を増量されてしまい、精神症状が出てしまっている症例がいったいどれだけあるのか?一度大規模臨床試験で検証する必要があるのではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2018-08-04 12:13 | 医療

レボドパ配合剤の後発品

近年、医薬品・ジェネリック(後発品)への推進がすすめられています。

少しでも薬剤費を抑制したいという国策でしょうが、やはり臨床試験で安全性・有効性が確認されていないと心配になります。

知人の臨床医からは、先発品に比べて明らかに安全性も有効性も落ちる事が少なくない、全く効果がない?という情報をよく聞きます。シロスタゾールをよく処方している先生からそのようなお話を聞きました。

薬剤費を抑制したいのであれば、一つでも多く減薬することが最優先ではないでしょうか?日本は、1人あたりの処方薬の数があまりにも多すぎます。

つい最近も後発品を扱う某製薬メーカーが、降圧剤に発がん性のある物質が混入していた事が発覚して大きな問題になりました。

実地臨床に携わっている臨床医であれば、誰でも経験があると思いますが、薬局の誘導で後発品に変更されて、効果が著しく減弱した?あるいは効果が感じられなくなったというエピソードは多くみられます。また先発品では、経験したことのないような副作用が出現したりします。

製薬メーカーすら、後発品の安全性・有効性を正しく把握していないものと思われます。ただし、先発品メーカーが同じ薬を後発品として販売するケースだけは例外です。

レボドパ配合剤でも、私が定期で診ている、20名くらいの複数の症例で、先発品と後発品の有効性の差異が確認されました。
10名ほど先発品から後発品に変更されると、これまで有効でスムーズにできていた、動作歩行が著しく悪化しました。
同じ薬で後発品から先発品への変更も10名くらいでテストしてみましたが、すべての症例で動作歩行が著しく改善しました。

拙著249ページにも書いたように、パーキンソン病という病気は、プラセボ効果とノセボ効果がありますので、今回の小生の臨床経験だけをもって、後発品は先発品よりも劣っていると断言することはできませんが、
先発品と同じ用量を服用して、効果がないとなると、患者側の不利益につながりますので、これは看過できない問題だと思います。


MDS(Movement Disorder Society)が定義した、最新のパーキンソン病の診断基準では「レボドパ製剤の顕著な有効性」という項目があります。
パーキンソン病という病気は、レボドパ(エルドパ)が効く病気であり、そのレボドパが効果が乏しいのであれば、診断を見直さなければならないとされています。

診断にかかわるデリケートな問題でもありますので、レボドパ・カルビドパの後発品と先発品の大規模臨床比較試験が行われて、患者にとって有益な正しい情報が提供されるべきではないでしょうか?

処方した薬が効果がなければ、薬の成否で患者側からの評判も左右される、それが内科医の立場です。
今回の臨床経験(小規模ですが)を踏まえて、小生の方針としてパーキンソン病の運動症状の薬、特にレボドパ配合剤に関しては、原則的に先発品を処方することにしました。
むろん、あくまでこれは個人の価値観ですから、他の臨床医にそれを押し付けるようなつもりは毛頭ありません。


現在、レボドパ・カルビドパ配合剤の規格は、100mg錠と250mg錠しかありません。60~70歳の体重80~100kgの欧米人向けであれば、これで十分かもしれません。

しかし、日本人は総じて薬剤過敏であり、体重も少ないやせ型が多いです
高齢発症、長期罹病者のパーキンソン病患者が急増しているという背景を考慮すれば、25mg錠、50mg錠、75mg錠という規格が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2018-07-31 18:08 | 医療

認知症何でもレビー診断病の専門医

今回紹介する症例は、神経学会・認知症学会で臨床実績もある著名な専門医DRによる、非常にわかりやすい誤診症例です。

認知症、パーキンソニズムの領域では誤診は日常茶飯事ですが、学会で実績がある専門医DRだからといって、正しく診断できるとは限らないようです。

これまでも数々の学会で著名な先生方の診断・処方を見てきましたが、残念ながら、学会における専門性、ヒエラルキーと診断・処方の適確性はまったく比例しない事がよくわかりました。

今回の症例は67歳女性。

4年前から左足をひきずって歩くようになり、パーキンソン病(PD)と診断。
3年前から自発性低下、意欲減退、夜間不穏、転倒、ムズムズ脚の症状などが始まったようです。

2年前に転倒して右手を骨折して、某大学病院へ入院。
入院先でレビー小体型認知症(DLB)と診断されて、様々な薬がテストされるが、どれを使われても、病状が悪化するという経過をたどり、半年前には
コリンエステラーゼ阻害薬、ドネぺジルやリバスチグミンの増量によって、焦燥、興奮性、攻撃性、脱抑制、多動が悪化、まったく歩けなくなり、車椅子移動になってしまった事もあるそうです。

コリンエステラーゼ阻害薬を中止してレボドパ配合剤を服用して歩けるようにはなったが、レボドパを増量するとやはり上記の陽性症状がかなり悪化してしまうようでした。歩けるようにはなったそうですが、誰かの誘導が必要のようです。レボドパを一時中止すると体幹傾斜が高度になって、立位保持が困難になってしまうそうです。

夫の介護が限界レベルだったので、施設へ入所となりましたが、急に立ち上がったり、大声でわめいたりという脱抑制症状が顕著であったため、トラゾドン、炭酸リチウムが処方されていました。

診察で観察してみると
歩行時の姿勢が不安定で、体幹傾斜が強く、頭を上へ向けるなど視線がどこを向いているかわからないような姿勢をとるが、何とか立位の保持は可能なようでした。

椅子に倒れるように座り、誘導しないと短距離でも移動できませんでした
指タップ、脚タップは右はできるが、左は全くできませんでした。
両手とも強い把握反応があり、
言葉はオウム返し、反響言語が顕著で、通常の会話が困難のようでした。

決定的なのは、左上肢を不自然に挙上して、左手で何かをつかもうとするような奇妙な動きをすることで、まさにこれこそが「他人の手徴候」でした。

小生も、初回の診察では気がつかなかったのですが、2回目、3回目の再診時に再現性がみられましたので、これぞ臨床診断「皮質基底核変性症候群」(CBS)で間違いないと確信しました。

現在の処方薬は
1) レボドパ・カルビドパ配合薬(100mg) 2錠
2) トラゾドン(25mg) 3錠
その他、便秘薬など2~3種としています。
一時期は炭酸リチウムが処方されていましたが、夫の希望で中止となりました。本来は「躁病」に使う薬なのに、前医から使途理由の説明もなく、納得できないとの事でした。中止しても何の問題もありませんでした。

「皮質基底核変性症」(CBS)の臨床所見がほぼ揃っていましたので、難病申請するようにしました。臨床調査票に画像診断所見の記載が必要だったので、近隣の医療機関へ頭部CT検査を依頼しました。

予想通り! 右側前頭葉~頭頂葉にかけて脳溝の拡張、脳萎縮所見が確認され
顕著な非対称性、左右差が顕著でした。

臨床的にあそこまで顕著な非対称性があるのですから、当然の結果でした。

認知症専門医はとかく、DLBという診断をしたがります。この症例の特徴からして、一体この症例のどこがDLB なんですか?という印象でした。
さらに四肢の症状に顕著な左右差があり、左手の他人の手徴候まである。
一番目立つのは、前頭葉解放症状と失行、失認、失語だったからです。こういうのが主症状であるDLBというのは、臨床的には考えられない。

マンチェスターグループの提唱した「ピックコンプレックス」という概念が大変意義深いのは、CBD、PSP、AGDなどの4リピートタウオパチーと呼ばれている疾患群をFTLD(ピック系疾患群)の仲間だと捉えた事。

個人的には、CBD、PSPにパーキンソニズムが現れるから、「パーキンソン症候群」という呼称する事はまったく気に入らない。まるでCBD、PSP がPDやDLBの仲間であるような誤解を生むからです。

そういう誤解が、CBD(CBS)の臨床的に典型症例を、学会の高名な専門医が、DLBだ!コリンエステラーゼ阻害薬だ!と安易に診断・投薬してしまうという事が起こりうるのでしょうか?

はっきり言える事としては、DLBという概念が一般化してきた事による弊害のほうが大きいのではないか?という事です。

認知症やパーキンソ二ズム(動作歩行障害)も見れば、診察による十分な評価もせずに、安易にDLBだと診断する専門医が多すぎるようです。
これを「認知症、何でもレビー診断病」と呼んでいます。
最近は核医学などの検査ツールがあるのでそれに依存する傾向があり、本来やるべき診察を全くやらない専門医が非常に多いようです

そもそも、神経変性疾患の診断基準というのは、病理検査によるものではなく、症状の操作的診断が主体の診断基準なので、本来は臨床医がかなり精密に神経学的な診察をして、除外診断をかなり丁寧にやる必要があります。

それ以外にも、薬剤過敏性=DLB だという誤解、精神症状(幻覚など)の評価をめぐる誤解・混乱などが目に余ります。
これらの要因が「認知症、何でもレビー診断病、何でもコリンエステラーゼ阻害薬処方」を生む温床になっているのではないか?
こういう診断や処方をやめない限り、患者は救われないでしょうね。
神経学会・認知症学会の指導的立場にある専門医が日常的にそういう事をやっているのですから、もはや何を信用していいのかわからないですね。

6月10日(日曜日)に中野サンプラザで行われる「認知症治療研究会」では
小生がそのような専門医による誤診症例を4症例、30分の講演で紹介します。ぜひご興味のある方はお越しください。


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by shinyokohama-fc | 2018-05-31 16:39 | 医療

高齢者認知症女性は全員心不全である

日本人の平均寿命は男性は79~80歳ですが、女性は86~87歳です。
つまり、80歳以上の高齢者のほとんどは女性であり、統計的には、そのうちの30~40%が「認知症」らしいです。
という事は「物忘れ外来」とか「認知症外来」を標榜する医療機関を受診する患者の大半が、80歳以上の高齢者女性という事になります。

小生は「神経内科」の専門医ではありますが、いわゆる「認知症」の専門医は標榜していません。「認知症」の学会である老年精神医学会、日本認知症学会には入会していませんので、専門医資格も持っていません。

それでも「神経内科」を標榜しているので「認知症」の患者を診ることになります。4年間診てきて様々な事がわかりました。

もっとも特徴的なことは、ほぼ全員が「心不全」だという事実でした。
聴診器で明らかな弁膜症による逆流音を聴取する方も少なくないようです。
骨格筋に関しては、男女差が明確ですが、心筋に関しても男女差があるのではないかと推定できます。
「女性は心筋は男性よりも弱い状態で男性よりも長生きする」
「心不全」と「認知症」の関連は様々な文献で示されています。
心拍出力が慢性的に低下していれば、心臓より上にある脳への循環量が減りますので、脳への酸素や糖分など栄養の供給が落ちるので、脳の神経細胞が老化するのが早まるのだと思われます。
しかしこれは「認知症」という病気ではなくて「加齢・老化現象」の一環だと考えたほうが良さそうです。

抗精神病薬やコリンエステラーゼ阻害薬は言うまでもなく「心臓に悪い薬」です。最近は、使用前に心電図を撮るべきだという意見もあり、私もそうしています。心電図のQ波とT波の時間が延長していると、致死性不整脈の危険が高いために、それを参考にしています。

高齢者の認知症の多くは心不全なので、原則的に最初からコリンエステラーゼ阻害薬と抗精神病薬、シロスタゾール使うべきではない」と私は考えています。この3~4年の小生の臨床経験では、これらの薬を使って、続けられている高齢者女性はごくわずかで8割以上が忍容性なく脱落しました。
やむをえず使用する場合は、心臓へのリスクを十分に説明した上で使用するべきではないかと思いますが、そこまでして85歳や90歳の女性患者さんに薬を使う事の意味はあるのか?と思います。
極論かもしれませんが、薬害で寿命を縮める事は倫理的に許されない。
行動心理症状を抑制する目的では、メマンチンを少量で使っていますが、
それ以外の薬は高齢者の認知症には必要ないのではと考えています。
本当の「認知症」は50~60歳、つまり70歳以前に発症する方々です。



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by shinyokohama-fc | 2018-05-18 12:32 | 医療

鹿児島認知症ブログ・書評(2)減薬して良くなったことを評価される珍妙な現場

書評(2) 減薬して良くなったことを評価される珍妙な現場

薬を多量に盛られた方を、再度評価しなおして、慎重に減薬していく作業は、やったことがある医師ならわかると思うが、とにかく時間がかかる。
おそらく、初診には相当時間を費やしていると思われる。(中略)
「他院で大量に出された薬の後始末をしているから」


他の医者が処方した薬など、本当は一切触りたくないというの本音であり、本当は処方した医者が修正するべきものだと思います。小生も自分の診断や処方が間違っていたと後で気がついて後悔する事があります。副作用によるデメリットが大きければ、自分で処方した薬は自分で減薬したり中止したりする事は日常茶飯事です。

例えば、本書に掲載した症例が、なぜ前医にかかるのをやめて、当院へ来なければならなかったのでしょうか?
「医者と患者側のコミュニケーション不十分で、現状を共有できていない」「医者が副作用(有害事象)を十分認識していない、深刻に考えていない」
この2点につきるのではないでしょうか?
逆にこの2点ができていれば、前医によって副作用で有害な薬は減薬・中止されて、病状は安定したはずで、当院へ来る事もなかったはずです。
副作用をまず第一に実感するのは、患者さん自身と同居している家族や介護者であり、医者ではありません。医者が診察している時間(数分間)に副作用が目に見えて出現しているケースというのはまれです。
そういう意味で、患者側との対話、コミュニケーションが不可欠です。
初診の時間はだいたい30分にしています。薬の減量や変更はすぐには難しいので、通常は病状が安定するまでは2週間毎に診察にしています。特にパーキンソン病の場合は現行の保険医療制度下では何種類併用しても許されているので、ありえないほどの多剤併用処方(ポリファーマシー)が少なくないので、大変困難な仕事になりますが、誰もこういう仕事をやる人がいないので、仕方なく自分がやるしかないのかと諦めてやっています。
誰かがこの仕事をやらなれば、患者さんの病状が悪化していくだけなので、それを見過ごす事は到底できないからです。

減薬という、いわば他所の仕事の尻拭いで患者さんから喜ばれるというのは、なんとも妙な気分である。自分が一からその患者さんを良くしたわけではないからである。
他所の仕事の尻拭いのために、こちらの時間が持ち出しになっていることにゲンナリする。
誰かがやらなくてはならない仕事なのだろうが、自分個人の精神衛生上はきわめてよろしくない。

前医がもっと副作用を厳重に注意しながら慎重に薬を処方していれば、こんな事態(薬剤せん妄など)には至るはずもないわけで、正直言うと満足感は何もないです。
今回本書を書いた理由は、こういうポリファーマシーの被害者が少しでも減る事を願ったものです。
たぶんさほど効果は期待できないでしょうが。その理由は次回に。


新横浜フォレストクリニック
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by shinyokohama-fc | 2018-03-05 12:00 | 医療
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