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認知症何でもレビー診断病の専門医

今回紹介する症例は、神経学会・認知症学会で臨床実績もある著名な専門医DRによる、非常にわかりやすい誤診症例です。

認知症、パーキンソニズムの領域では誤診は日常茶飯事ですが、学会で実績がある専門医DRだからといって、正しく診断できるとは限らないようです。

これまでも数々の学会で著名な先生方の診断・処方を見てきましたが、残念ながら、学会における専門性、ヒエラルキーと診断・処方の適確性はまったく比例しない事がよくわかりました。

今回の症例は67歳女性。

4年前から左足をひきずって歩くようになり、パーキンソン病(PD)と診断。
3年前から自発性低下、意欲減退、夜間不穏、転倒、ムズムズ脚の症状などが始まったようです。

2年前に転倒して右手を骨折して、某大学病院へ入院。
入院先でレビー小体型認知症(DLB)と診断されて、様々な薬がテストされるが、どれを使われても、病状が悪化するという経過をたどり、半年前には
コリンエステラーゼ阻害薬、ドネぺジルやリバスチグミンの増量によって、焦燥、興奮性、攻撃性、脱抑制、多動が悪化、まったく歩けなくなり、車椅子移動になってしまった事もあるそうです。

コリンエステラーゼ阻害薬を中止してレボドパ配合剤を服用して歩けるようにはなったが、レボドパを増量するとやはり上記の陽性症状がかなり悪化してしまうようでした。歩けるようにはなったそうですが、誰かの誘導が必要のようです。レボドパを一時中止すると体幹傾斜が高度になって、立位保持が困難になってしまうそうです。

夫の介護が限界レベルだったので、施設へ入所となりましたが、急に立ち上がったり、大声でわめいたりという脱抑制症状が顕著であったため、トラゾドン、炭酸リチウムが処方されていました。

診察で観察してみると
歩行時の姿勢が不安定で、体幹傾斜が強く、頭を上へ向けるなど視線がどこを向いているかわからないような姿勢をとるが、何とか立位の保持は可能なようでした。

椅子に倒れるように座り、誘導しないと短距離でも移動できませんでした
指タップ、脚タップは右はできるが、左は全くできませんでした。
両手とも強い把握反応があり、
言葉はオウム返し、反響言語が顕著で、通常の会話が困難のようでした。

決定的なのは、左上肢を不自然に挙上して、左手で何かをつかもうとするような奇妙な動きをすることで、まさにこれこそが「他人の手徴候」でした。

小生も、初回の診察では気がつかなかったのですが、2回目、3回目の再診時に再現性がみられましたので、これぞ臨床診断「皮質基底核変性症候群」(CBS)で間違いないと確信しました。

現在の処方薬は
1) レボドパ・カルビドパ配合薬(100mg) 2錠
2) トラゾドン(25mg) 3錠
その他、便秘薬など2~3種としています。
一時期は炭酸リチウムが処方されていましたが、夫の希望で中止となりました。本来は「躁病」に使う薬なのに、前医から使途理由の説明もなく、納得できないとの事でした。中止しても何の問題もありませんでした。

「皮質基底核変性症」(CBS)の臨床所見がほぼ揃っていましたので、難病申請するようにしました。臨床調査票に画像診断所見の記載が必要だったので、近隣の医療機関へ頭部CT検査を依頼しました。

予想通り! 右側前頭葉~頭頂葉にかけて脳溝の拡張、脳萎縮所見が確認され
顕著な非対称性、左右差が顕著でした。

臨床的にあそこまで顕著な非対称性があるのですから、当然の結果でした。

認知症専門医はとかく、DLBという診断をしたがります。この症例の特徴からして、一体この症例のどこがDLB なんですか?という印象でした。
さらに四肢の症状に顕著な左右差があり、左手の他人の手徴候まである。
一番目立つのは、前頭葉解放症状と失行、失認、失語だったからです。こういうのが主症状であるDLBというのは、臨床的には考えられない。

マンチェスターグループの提唱した「ピックコンプレックス」という概念が大変意義深いのは、CBD、PSP、AGDなどの4リピートタウオパチーと呼ばれている疾患群をFTLD(ピック系疾患群)の仲間だと捉えた事。

個人的には、CBD、PSPにパーキンソニズムが現れるから、「パーキンソン症候群」という呼称する事はまったく気に入らない。まるでCBD、PSP がPDやDLBの仲間であるような誤解を生むからです。

そういう誤解が、CBD(CBS)の臨床的に典型症例を、学会の高名な専門医が、DLBだ!コリンエステラーゼ阻害薬だ!と安易に診断・投薬してしまうという事が起こりうるのでしょうか?

はっきり言える事としては、DLBという概念が一般化してきた事による弊害のほうが大きいのではないか?という事です。

認知症やパーキンソ二ズム(動作歩行障害)も見れば、診察による十分な評価もせずに、安易にDLBだと診断する専門医が多すぎるようです。
これを「認知症、何でもレビー診断病」と呼んでいます。
最近は核医学などの検査ツールがあるのでそれに依存する傾向があり、本来やるべき診察を全くやらない専門医が非常に多いようです

そもそも、神経変性疾患の診断基準というのは、病理検査によるものではなく、症状の操作的診断が主体の診断基準なので、本来は臨床医がかなり精密に神経学的な診察をして、除外診断をかなり丁寧にやる必要があります。

それ以外にも、薬剤過敏性=DLB だという誤解、精神症状(幻覚など)の評価をめぐる誤解・混乱などが目に余ります。
これらの要因が「認知症、何でもレビー診断病、何でもコリンエステラーゼ阻害薬処方」を生む温床になっているのではないか?
こういう診断や処方をやめない限り、患者は救われないでしょうね。
神経学会・認知症学会の指導的立場にある専門医が日常的にそういう事をやっているのですから、もはや何を信用していいのかわからないですね。

6月10日(日曜日)に中野サンプラザで行われる「認知症治療研究会」では
小生がそのような専門医による誤診症例を4症例、30分の講演で紹介します。ぜひご興味のある方はお越しください。


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by shinyokohama-fc | 2018-05-31 16:39 | 医療

高齢者認知症女性は全員心不全である

日本人の平均寿命は男性は79~80歳ですが、女性は86~87歳です。
つまり、80歳以上の高齢者のほとんどは女性であり、統計的には、そのうちの30~40%が「認知症」らしいです。
という事は「物忘れ外来」とか「認知症外来」を標榜する医療機関を受診する患者の大半が、80歳以上の高齢者女性という事になります。

小生は「神経内科」の専門医ではありますが、いわゆる「認知症」の専門医は標榜していません。「認知症」の学会である老年精神医学会、日本認知症学会には入会していませんので、専門医資格も持っていません。

それでも「神経内科」を標榜しているので「認知症」の患者を診ることになります。4年間診てきて様々な事がわかりました。

もっとも特徴的なことは、ほぼ全員が「心不全」だという事実でした。
聴診器で明らかな弁膜症による逆流音を聴取する方も少なくないようです。
骨格筋に関しては、男女差が明確ですが、心筋に関しても男女差があるのではないかと推定できます。
「女性は心筋は男性よりも弱い状態で男性よりも長生きする」
「心不全」と「認知症」の関連は様々な文献で示されています。
心拍出力が慢性的に低下していれば、心臓より上にある脳への循環量が減りますので、脳への酸素や糖分など栄養の供給が落ちるので、脳の神経細胞が老化するのが早まるのだと思われます。
しかしこれは「認知症」という病気ではなくて「加齢・老化現象」の一環だと考えたほうが良さそうです。

抗精神病薬やコリンエステラーゼ阻害薬は言うまでもなく「心臓に悪い薬」です。最近は、使用前に心電図を撮るべきだという意見もあり、私もそうしています。心電図のQ波とT波の時間が延長していると、致死性不整脈の危険が高いために、それを参考にしています。

高齢者の認知症の多くは心不全なので、原則的に最初からコリンエステラーゼ阻害薬と抗精神病薬、シロスタゾール使うべきではない」と私は考えています。この3~4年の小生の臨床経験では、これらの薬を使って、続けられている高齢者女性はごくわずかで8割以上が忍容性なく脱落しました。
やむをえず使用する場合は、心臓へのリスクを十分に説明した上で使用するべきではないかと思いますが、そこまでして85歳や90歳の女性患者さんに薬を使う事の意味はあるのか?と思います。
極論かもしれませんが、薬害で寿命を縮める事は倫理的に許されない。
行動心理症状を抑制する目的では、メマンチンを少量で使っていますが、
それ以外の薬は高齢者の認知症には必要ないのではと考えています。
本当の「認知症」は50~60歳、つまり70歳以前に発症する方々です。



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by shinyokohama-fc | 2018-05-18 12:32 | 医療

鹿児島認知症ブログ・書評(2)減薬して良くなったことを評価される珍妙な現場

書評(2) 減薬して良くなったことを評価される珍妙な現場

薬を多量に盛られた方を、再度評価しなおして、慎重に減薬していく作業は、やったことがある医師ならわかると思うが、とにかく時間がかかる。
おそらく、初診には相当時間を費やしていると思われる。(中略)
「他院で大量に出された薬の後始末をしているから」


他の医者が処方した薬など、本当は一切触りたくないというの本音であり、本当は処方した医者が修正するべきものだと思います。小生も自分の診断や処方が間違っていたと後で気がついて後悔する事があります。副作用によるデメリットが大きければ、自分で処方した薬は自分で減薬したり中止したりする事は日常茶飯事です。

例えば、本書に掲載した症例が、なぜ前医にかかるのをやめて、当院へ来なければならなかったのでしょうか?
「医者と患者側のコミュニケーション不十分で、現状を共有できていない」「医者が副作用(有害事象)を十分認識していない、深刻に考えていない」
この2点につきるのではないでしょうか?
逆にこの2点ができていれば、前医によって副作用で有害な薬は減薬・中止されて、病状は安定したはずで、当院へ来る事もなかったはずです。
副作用をまず第一に実感するのは、患者さん自身と同居している家族や介護者であり、医者ではありません。医者が診察している時間(数分間)に副作用が目に見えて出現しているケースというのはまれです。
そういう意味で、患者側との対話、コミュニケーションが不可欠です。
初診の時間はだいたい30分にしています。薬の減量や変更はすぐには難しいので、通常は病状が安定するまでは2週間毎に診察にしています。特にパーキンソン病の場合は現行の保険医療制度下では何種類併用しても許されているので、ありえないほどの多剤併用処方(ポリファーマシー)が少なくないので、大変困難な仕事になりますが、誰もこういう仕事をやる人がいないので、仕方なく自分がやるしかないのかと諦めてやっています。
誰かがこの仕事をやらなれば、患者さんの病状が悪化していくだけなので、それを見過ごす事は到底できないからです。

減薬という、いわば他所の仕事の尻拭いで患者さんから喜ばれるというのは、なんとも妙な気分である。自分が一からその患者さんを良くしたわけではないからである。
他所の仕事の尻拭いのために、こちらの時間が持ち出しになっていることにゲンナリする。
誰かがやらなくてはならない仕事なのだろうが、自分個人の精神衛生上はきわめてよろしくない。

前医がもっと副作用を厳重に注意しながら慎重に薬を処方していれば、こんな事態(薬剤せん妄など)には至るはずもないわけで、正直言うと満足感は何もないです。
今回本書を書いた理由は、こういうポリファーマシーの被害者が少しでも減る事を願ったものです。
たぶんさほど効果は期待できないでしょうが。その理由は次回に。


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by shinyokohama-fc | 2018-03-05 12:00 | 医療

鹿児島認知症ブログ・書評(1)神経変性疾患は個別対応こそが求められている

小生が欠かさず閲覧しているブログが、「鹿児島認知症ブログ」です。
http://www.ninchi-shou.com/

2018年2月26日のブログに、小生の新刊書籍に関する書評を書いていただきました。
この先生のブログの内容はいつも大変思慮深くて素晴らしく、実地臨床家にとって非常に考えさせられる、時には辛辣な批判もあります。
このブログにいつも感銘を受けるのは、ご自分の言葉で書いているのが伝わってくるからです。
「世間」「ガイドライン」を意識しすぎて、自分の意見が見えてこない内容の医学書を読むよりもずっとためになると思います。
今回の書評、この内容についての意見を、このブログで4回シリーズで書いていきたいと思います。

長年、パーキンソン病を診てきた、著者からの、診療現場への怒りをこめた「警世の書」

私が大好きなフットボールで言えば「イエローカード(警告)」、信号機で言うと色は「黄色」です。

書評(1)神経変性疾患は個別対応こそが求められている

「少しずつ減薬すれば良くなる」とはすなわち、「たっぷり盛られた薬を減らしたら良くなった」という意味である。

たっぷり薬を盛るのが好きな先生方に対する皮肉です。
患者側からしたら本当に冗談じゃない、笑えない事実です。

パーキンソン病といっても症状の個人差が大きいため、必然的に治療は個別対応にならざるを得ない。しかし、ガイドラインには個別対応の仕方は載っていない。初学者はまず治療ガイドラインに目を通すべきであるにしても、それはガイドラインを盲目的になぞる事と同義ではない。ガイドラインに相対しながらも距離感を持つことが重要であろう。

本書に掲載させていただいた症例の数々は、なぜ掲載したのか?というと処方内容と実際の患者さん達の病状の乖離が現れているからなのです。
「個別対応」「ガイドラインとの距離感」が考慮されなければ、処方薬の数は関係なく、患者にとってパニック(大迷惑)処方になりえます。

通常は常識的な感覚を持ちながら、臨床的な経験を積んでいけば、距離感も自然と身についていくと思われる。

それが多くの臨床経験を持つ専門医?おそらく私よりも何倍も患者数を診ているはずの臨床医達に身についているのか疑問。

世の中には「ガイドラインに載っていないことは認めない・存在してはならない」という。ガイドラインと一体化したような教条主義者がいる
そのような教条主義者はえてして高いポジションにいたりするのだが、「臨床リテラシーを磨く事と知力とは、別の問題だなぁ」と感じる


なぜわが国では「教条主義者」が生まれやすいのか?
それは自分の意見を言わない、主張しないのを美徳とする文化が、東アジア民族に根強く存在していて、一部の声の大きな権力者(教条主義者)の方向性に誘導されても、それに反論しにくい「世間」が存在するからでしょう。
また「教条主義者」にとって都合の悪い内容の意見は握りつぶされる傾向にあります。自分の意見を主張するのが当たり前の欧州などではありえない事かもしれません。

自分の経験を自分の言葉で語れずに、大規模臨床試験の結果しか語れないことが何を意味するかは明白で、それは「研究ばかりしていて、ろくに患者を診ていない」ということである。もしくは「患者を診てはいるが、臨床リテラシーがないので目の前の患者が見えていない」

患者さん達(ご家族)から聴取した情報によると、「外来診察で問診も診察もロクにされていない。何か言うと薬が追加処方されるだけ」という声が多数ありました。これが本当だとすれば、薬の効果と副作用が正しく評価ができるはずもないと思いました。
私の想像ではもう一つ要因があります。
それは、ブランド志向。がアダになっているのではないかと。
とにかく有名な先生に診てもらいたい。有名な病院で診てもらいたい
と特定の医者、医療機関に患者さん達が殺到しすぎるから、時間がとれないのかもしれませんね。
どんな名医でも1人の医者が診れる(必要最低限の問診と診察がなされているという意味)患者数は限られていますからね。
この点については、拙著のQ&Aのコーナーに書いてありますので、良ければ
一読してください。
今回はここまで。また次回をお楽しみに。


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by shinyokohama-fc | 2018-03-03 12:51 | 医療

薬で悪化してしまうパーキンソン病の非運動症状(1)睡眠障害

パーキンソン病の運動症状を良くするための治療薬などは、運動症状以外の症状(非運動症状)を悪化させやすいという事実は意外と知られていません。

パーキンソン病の症状は実は非運動症状の占める割合が多いにもかかわらずです。今回は「睡眠障害」を取り上げます。

近年国内で実施された大規模臨床試験による、進行ステージのパーキンソン病1000例を対象にした非運動症状の頻度によると
夜間睡眠障害は73.8%日中の過眠は79.2%もありました。
パーキンソン病の場合は、昼夜のリズムがおかしくなります。
人によっては、夜間にはレストレスレッグス(ムズムズ脚)症候群レム睡眠行動異常、日中には突発性睡眠という特徴的な睡眠障害が起こります。

私の診ている外来患者ではここまで多くの比率はいません。
何故ならこれらの症状のほとんどが薬によって誘発・増強されていることがわかっているからです。以下の薬を必要以上に増やさないように心がけているからです。
薬によって非運動症状を悪化させることは、想像以上に生活の質を著しく落とします。一緒に生活している家族、配偶者にも多大な迷惑をかけます。

睡眠障害を悪化させる薬というのは以下のとおりです。
1)ドパミン・アゴニスト
プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン、タリペキソールなど
2)レボドパ配合剤
レボドパ・カルビドパ/ベンゼラシド
)コリンエステラーゼ阻害薬
特にドネぺジル、リバスチグミン
4) 睡眠導入剤
特にゾルピデム
)抗てんかん剤
特にゾ二サミド、バルプロ酸

これら1)~4)それぞれ単独で服用しても、半数以上のパーキンソン病の患者さんは、睡眠障害が悪化します。
ここにベンゾジアゼピン系睡眠導入剤などを追加しようものなら、夜間せん妄が悪化してしまい、一晩中夢遊病者、錯乱状態という事態にもなりえます。

パーキンソン病の睡眠障害でまずすべきことは、上記の薬剤をまずは見直すことです。
特にドパミンアゴニストの徐放剤(1日1回タイプ)の服用量がその人にとって多すぎて日中の過眠レム睡眠行動異常が悪化していることがほとんどですので、すぐに中止せずにまずは減薬するのが得策でしょう。
またレボドパ配合剤がその人にとって多すぎる場合があります。70歳以上の高齢者でも1日400~500mgとか服用すれば、半数以上は日中の過眠が強くなります。ドパミンアゴニストと併用した場合さらに強くなります。

レストレスレッグス症候群に対しては、ドパミンアゴニストが80%以上で効果がありますが、使用量はごく少量です。
私が使用した経験ではドパミンアゴニストという薬は少量で使用してこそ価値がある薬だと思います。日本人の場合は量を増やすとかなりの確率で副作用が出ます(中でも日中の眠気が最も多い)ので注意が必要です。


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by shinyokohama-fc | 2018-01-09 18:41 | 医療

レビー診断病とパーキンソン・認知症複合(PDC)

先日、神経難病の初診患者として、そのFTDPらしき臨床像の方が来ました。67歳の女性でした。

2年前に全く同じような臨床像の70代女性の方を1年くらい診ていたことがあって、その方と全く似ていました。専門医の診断はレビー(DLB)だったそうです。

遺伝子変異によって脳内にタウタンパク質の異常集積が原因でおこる、家族性前頭側頭型認知症・パーキンソ二ズム(FTDP)という病気があります。
前頭葉解放症状、行動の脱抑制症状を伴う特異的な認知症とパーキンソン病のような動作歩行の運動症状が同時に起こる複雑な臨床像の病気です。

著しい行動の脱抑制によって、施設から何度も脱走を試みたり、部屋の窓から私物を放り投げる、猛烈な速さで食事をするなど、異常な行動が目立つ一方で、疲労によって動作が極端に遅くなり、姿勢が傾いて歩行が難しくなったりするという奇妙な症状があり、最終的には急速に病気が進行して、数か月のうちに寝たきり状態に至りました。


FTDPに関しては、臨床研究によると、大脳皮質全般においてアセチルコリン神経細胞とドパミン神経細胞が極度に欠乏しているようで、前のブログで示したPDD/DLB-2やPSP以上に重症です。おそらく他の神経伝達物質(NMT)も極度に欠乏していると推定されます。

2年前に診た70代女性も、コリンエステラーゼ阻害薬(脳内のアセチルコリンを増やす薬)、レボドパ配合剤(脳内のドパミンを増やす薬)、抗精神病薬(脳内のドパミンを減らす薬)、いずれの薬を服用しても、わずかな量でも副作用が現れてしまうという状況でしたので、結局どの薬も使えなかったという記憶がありますが、このことがどんな薬を少量で使っても副作用が出る理由なのだと思います。


パーキンソンの運動症状があれば、レビー(DLB)だという操作的な診断の限界を痛感させられた、今回の症例でした。
現在の核医学検査や診察では、脳内にシヌクレイン(レビー小体)がたまっているかなどまったく分かるはずもないのに、専門医が、レビーだとか適当な診断名をつけて、適当な薬を処方するというきわめて滑稽なことが繰り返されているわけです。今回の事例もそれと同じです。

この症例でこれまで使われた薬を以下に示します。
ドネぺジル、リバスチグミン、メマンチン、ガランタミン、セルトラリン(SSRI)、クエチアピン、抑肝散、ロチゴチン、クロナゼパム
いずれも副作用で脱落したようです。この時点でレビーではないでしょう。

結局現在も継続して使っているのは
レボドパ・ベンゼラシド配合剤(少量)、トラゾドン、リチウム
残った薬を見た限りでは、前頭側頭型変性症ではないかと思われます。診察した印象でも、多幸的で病識が乏しく、レビーらしさ?は全く感じられませんでした。

パーキンソン・認知症複合 (PDC)という言葉は臨床像を現わす病名で、紀伊半島の牟婁地方で多発した風土病も、Kii-PDCと呼ばれています。PDCの中にはさまざまな病理基盤の病気が含まれると思います。

英語でDementiaという言葉が「認知症」と呼ばれることにはかなり違和感があるものの、安易にレビーとかいう診断名をつけるよりはマシではないかと思います。

パーキンソン・認知症複合はPDCパーキンソン・精神病複合はPPCパーキンソン・前頭葉解放症状複合はPFCという命名で良いのではないかと私は思います。



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by shinyokohama-fc | 2018-01-06 12:47 | 医療

認知症の正しい診断と正しい薬物治療は不可能

高齢者ブレインバンクにおける、連続剖検において、神経変性疾患の病理診断は嗜銀顆粒性認知症(AGD)は16%、レビー小体型認知症(DLB)は23%、それぞれ混合病理が30~40%という報告でした。

つまり日本人の高齢者(死亡時の年齢)においては、アルツハイマー型認知症(ATD)とAGDとDLBの単独ないし混合で77%(8割弱)を占めることになり、それに次ぐのが、進行性核上性麻痺(PSP)と神経原線維変化型認知症(NFTD)です。一方でピック病は0.5%以下だったそうです。

神経変性疾患の剖検を積極的に行っているある国内の病院の研究発表によると、PSPと皮質基底核変性症 (CBD)に至っては、本来の運動症状が主体で病気がスタートする(発症する)症例は半数以下であり、30~40%は前頭側頭型認知症(FTD)の行動異常、脱抑制、あるいは情緒不安定などの辺縁系症候群で発症し、その後も何年も運動症状が現れないという経過をたどるとのことです。

以上は病理診断の話ですが、私は個人的に、臨床診断と病理診断を合致させるのは、現在の診療ツールでは不可能だと考えます。PSP/PSPSやCBD/CBSの症例を診てきて、それぞれの症例の経過と臨床症状の多様さからみてそれは明らかです。医学的な常識として、薬物治療というのが正しい診断が前提であるとすれば、これらの認知症を含む神経変性疾患には正しい薬物治療というのはほとんど不可能だという結論になります。

私もこのような病気の他の医者の診断を訊いて強く感じるのは、神経変性疾患に対する臨床診断というのは、診察した医者の価値観・経験などに影響された「個人の感想」というレベルにすぎず「思い込み」の要素に多分に左右されるという事です。当然のことながら「正しい診断」が不可能な症候群に対して、そもそも「正しい(薬物)治療」などできるはずもないわけです。ある医者がATDだ、DLBだと診断しても、別の医者はピック病だ、パーキンソン病だとかいうおかしな混乱が起こり、そのたびに薬が変更されたりして、患者は右往左往させられるという問題がおこります。

先のブログで書いたように、前頭葉関連症状=ピック病ではなく、動作歩行障害=パーキンソン病、DLBでもないので、外来医としては何を基準に診断したらいいのかわからないという状況です。私を含めてほとんどの医者は正しい診断もできず、適当な診断をつけて、神経系に作用する劇薬を処方するというわけです。特に80歳以上の高齢者には超劇薬になることも珍しくはないのです。

ATDではないAGDやPSPの患者にコリンエステラーゼ阻害薬を処方しては興奮させてしまう。DLBやAGDの患者に抗精神病を処方して動けなくなる。辺縁系症候群が強いDLBやAGDに対してドパミン刺激剤を処方して
精神錯乱させる。といった混乱が日常茶飯事に起こっているわけです。

本来、コリンエステラーゼ阻害薬は60~70歳くらいで発症した、純粋なアルツハイマー型認知症に対しては効果が認められた薬(効果は1~3年の限定的ではありますが)ですが、80歳以上の症例では、AGDやDLBやPSPを合併する症例が増えますので、そうなると上記のような患者が薬に振り回されるという混乱イベントが増えるのではないかと推定されます。

高齢者の精神症状、辺縁系症候群(情緒障害)と前頭葉関連症候群(脱抑制的行動異常)に関しては、病理統計的にはDLBとAGDが4割ずつで、残りの2割がNFTDではないかと推定されます。ピック病は若年発症で、その病気の性格上、事故や病気で亡くなる方がほとんどで、80歳以上まで生き延びている人はほとんどいないのではないかと思われます。


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by shinyokohama-fc | 2017-11-18 12:08 | 医療

高齢者の精神症状と嗜銀顆粒性認知症 (AGD・グレイン)

高齢者ブレインバンク、高齢者の変性疾患において積極的に死後の病理解剖 (剖検)を実施して、精密な臨床研究で定評のある医療機関(病院)の近年における論文(文献)や研究発表は臨床医にとって大変参考になります。
高齢者において認知症、精神症状、運動障害など様々な臨床像を呈した症例を数多く剖検して、臨床像と比較検討しているからです。前者の研究によると、高齢者の連続剖検された500例以上の認知症のうち神経変性疾患の内訳は、嗜銀顆粒性認知症(AGD, Argyrophilic Grain Dementia, 通称グレイン)16%、アルツハイマー型認知症(ATD)38%、神経原線維型認知症(NFTD)7%、レビー小体型認知症(DLB)23%、進行性核上性麻痺(PSP)8%、ピック病0.5%、皮質基底核変性症(CBD)0.5%(いずれも混合病理を含む)でした。つまり死後の病理解剖で最も多い病気(病理診断病名)はグレイン(以下AGD)という事になります。また後者の研究では、65歳以上で発症した初期から中期まで精神病性障害が主体で認知症を欠いていた症例グループにおいて、病理診断としてAGDが36%、DLBが36%と有意に高率であり、高齢発症の精神病性障害にAGDが関与している可能性が示唆されています。同じタウ蛋白(4リピートタウ)が脳に異常にたまる病気であるCBDとPSPの病理診断剖検例において、CBD35例では100%、PSP30例の28%でAGD病理を合併していたという結果でした。病理診断CBDにおいて臨床的CBS(皮質基底核症候群)を示したのは半数以下、病理診断PSPにおいてリチャードソン症候群(進行性の姿勢反射障害・嚥下障害・眼球運動障害など)を示したのは60%前後だったそうです。近年の学説では、病理診断PSPとCBDでは精神症状や行動異常から発症する症例がしばしば見られる事が世界的に注目されており、ピック病に類似した臨床像をとることから「ピックコンプレックス」と呼ばれているという事は、以前の当ブログでも繰り返し言及している通りです。
その一方で、外来で臨床診療に携わっているほとんどの神経内科専門医、認知症専門医、精神科医は、アルツハイマー型認知症(ATD)、レビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病(PD)以外の病気はほとんど存在しない、きわめてまれだと認識しているようです。当院に初診で来院される、前医の診断も上の3つが80~90%程度であり、残りは診断不明とされています。しかし実際は、この3年間で私自身が外来で診療してきた症例は、この3つの病気以外としか言いようのない症例、症候群は非常に多いです。これらの臨床像は、皮質基底核症候群(CBS)、リチャードソン症候群、前頭側頭型認知症(脱抑制的行動異常)、発語失行、非流暢性失語などが主症状でした。それらの症状が2~3並存していた症例が非常に多かったように思います。これは60歳以上の高齢者・長寿者の急激な増加が影響しているのではないかと思われます。10~20年前に常識とされていた事は臨床医学の分野ではもはや常識ではないのです。
神経内科の外来では、行動異常や精神症状だけが主訴の症例を診ることはほとんどありません。ほとんどは精神科の外来を受診するのだと思われます。しかしそのような精神症状で発症して、数年間は精神科か認知症専門外来に通院し、抗精神病薬などを処方されて、何年も経過してから、精神症状は軽減してきたが動作歩行などの運動障害が目立ってきたという事で、精神科から神経内科(当院)へ定期通院先を変更するという60~70歳前後の症例が少なからず見られるようです。一方で、80歳以上で精神症状と運動障害が同時に悪化していく症例が多く見られます。
このような症例・症候群の正体はいったい何なのか?運動障害はあるものの、パーキンソン病 (PD)でみられるそれではなくて、どちらかというと皮質基底核症候群やリチャードソン症候群に合致した運動障害です。行動異常・精神症状の多くは激烈なレベルであり、ATDやDLBの行動心理症状(BPSD)とはレベルが違います。自宅で介護に耐えられる同居配偶者・家族は少なく、多くは精神科病院へ入院する事が多いようです。早々に精神病院へ入院してしまう症例は我々神経内科医が診ることはありません。おそらく抗精神病薬など鎮静目的の薬が初期から複数処方されると思われます。そのうちの半数程度は抗精神病薬を開始して半年~一年以内に動作歩行・運動障害が急激に悪化して寝たきり状態になるのではないかと思われますが、その経緯も我々神経内科医の目に触れる事はないでしょう。それらの多くは病気が進行してしまったんだと解釈されてそれで終わりになっているのではないでしょうか?中には、深刻な精神症状をきたす病気になった患者さんでも精神科病院へ入院する事に抵抗して、自宅で看ようと頑張るご家族の方がいます。この3年の私の外来診療ではそういう症例を数多く診てきました。精神科ではない私にとっては非常に不慣れで対応に苦慮しましたが、1つだけ重要な事に気がつきました。CBD、PSP、AGDと推定されるこれらの症例群では共通して抗精神病薬やコリンエステラーゼ阻害薬に対して強い過敏性を示すという事です。私の感覚ではそれはDLB以上の過敏性ではないかと実感しています。過敏性があるがゆえに、ごく少量の抗精神病薬でも効果がある半面、副作用も出やすいようで、姿勢が極端に悪くなったり、歩けなくなったりという症例が続出しました。開始後1~2か月で大丈夫でも、数か月してから姿勢が悪くなる症例もありました。それゆえ、1年前からはこのような症候群に対して、抗精神病薬を処方する事は極力控えることにしました。「抗精神病薬に対する過敏性」という項目は、DLBの診断基準の支持的特徴にされていますが、「抗精神病薬に対する過敏性=DLB」ではなく、「抗精神病薬に対する過敏性=DLB、AGD、PSP、CBDのいずれか」というのが正しい認識ではないかと思います。
ブレインバンクの研究発表によると、AGDは16%(3位)、PSPは8%(4位)でした。私の外来患者で診察しているイメージとだいたい同じです。しかし、多数の認知症を診察している認知症専門外来を標榜する医療機関の外来医は、臨床的PSPSやCBSは診療経験がほとんどなくて診断できないようで、ATD、DLB、MCI(軽度認知障害)以外の病気はよくわからないようです。そのために当院の外来に来る症例は、必然的にPSPSやCBSが多くなったのであろうと思います。
次回のブログでは、臨床像が類似していて鑑別が困難であるAGDとピック病(前頭側頭型変性症)を典型的な症例を通じて比較検証してみたいと思います。前頭側頭型認知症において、AGDは若年発症から高齢発症まで圧倒的多数を占め、ピック病は若年発症だけでごく少数であるという病理診断統計的な事実がある。つまり前頭側頭型認知症は比較的多く見られるが、その大多数はピック病以外のAGDやPSP、その他の病気であるという事です。


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by shinyokohama-fc | 2017-11-16 12:36 | 医療

PSPSとCBSはピック病の仲間

病理診断の病名としては、一般的には前頭側頭型変性症(FTLD)と呼ばれています。2010年の最新分類ではFTLDには、4つのタイプがあるそうです。
1) FTLDータウ (Pick、CBD、PSP、AGD、NFTD、他)
2) FTLDーTDP( Pick、SD、FTD-MND、他)
3) FTLD-FUS( NIFID、BIBD)
4) FTLD-UPS( FTLD-TDP)
3) 4)は遺伝性疾患であり、比較的稀です。4)らしき症例は1例だけ診たことがあります。FTLD-TDPの病状は、パーキンソン病に似た進行性のパーキンソニズムと認知機能障害と前頭葉関連症状があります。すべての症状が半年~1年でラッシュに進行し、あらゆる薬物療法に抵抗性でまったく歯が立たない状況です。すべての神経変性疾患の中で最もコリン作動系神経障害が重度であり、おそらくFTLD の中では最も重症かつ急速進行性な経過ではないかと推定されます。
1) FTLD-タウはFTLDプロテイノパチーの中では最も多数を占める、4リピートタウという病的異常タンパク質がたまる症候群です。この中には以下の疾患が含まれます。
① Pick病 (PID) ②大脳皮質基底核変性症(CBD) ③ 進行性核上性麻痺(PSP) ④ 嗜銀顆粒性認知症(AGD・グレイン) ⑤ 神経原線維変化型認知症(NFTD)
近年の高齢化によって、④と⑤が特に増えているようですが、④に②や③が合併するという、高齢発症のAGD+PSP、AGD+CBDというケースが増えています。
CBD/CBSの疾患概念については、CBSを臨床診断名、CBDを病理診断名として区別して使用する事が提唱されました。臨床診断名としてCBS(大脳皮質基底核変性症候群)を使用し、その中には病理診断ではCBD(50%)の他に、PSP(30~40%)、その他少数ではあるが、AD(アルツハイマー)、FTLD(前頭側頭型変性症)、CJD(ヤコブ病)が含まれます。また病理診断CBDは、CBSの他に、PSPS(進行性核上性麻痺症候群)、FBS(行動異常型症候群)、NFPPA(非流暢性失語症候群)という臨床病型が含まれるとされています。
PSP /PSPSの疾患概念についても、同様にPSPSを臨床診断名、PSPを病理診断名として区別して使用する事が提唱されました。臨床診断名としてPSPS (進行性核上性麻痺症候群)を使用し、その病理診断ではPSP(50%)の他に、CBD(20~30%)、CJD(ヤコブ病)、多発性脳幹梗塞、PID(Pick病)、傍腫瘍性神経症候群、松果体腫瘍などがあるようです。また病理診断PSPは、PSPーRS(リチャードソン症候群)の他に、PSP-P(パーキンソン型)、PSP-PAGF(純粋無動型)、PSP-CBS(皮質基底核変性症型)、PSP-PNFA(非流暢性失語型)、PSP-bvFTD(行動異常型)、PSP-C(小脳失調型)などがあるようです。
たぶん、これを読んでいて何のことかさっぱりわからないと思う方が多いと思いますが、これが臨床診断と病理診断の現実であり、生きている間には正確な病理診断はまったく不可能であることがわかると言えるでしょう。結局Pick(bvFTD)、CBD、PSP、AGDという病気は混合・重複ありで、いくらでもオーバーラップする病気・症候群だと言えます。それゆえ、Manchster GroupはCBD(CBS)やPSP(PSPS)をPick Complexと呼称していました。これらの病気(CBD/CBSとPSP /PSPS )は決してパーキンソン病の仲間(パーキンソン症候群)などではなくて、病理的にはピック病の仲間なのです。


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by shinyokohama-fc | 2017-11-06 18:01 | 医療

前頭葉関連症状=前頭側頭型変性症(FTD)ではない

前頭葉関連症状で始まり、その後運動機能障害により動作歩行が悪化していくケースは意外と多いようです。
前頭葉関連症状というのは、以前のブログでも書いていますが、箇条書きにすると以下のとおりです。
1) 常同行動 (同じルートを何度も周回する、同じ内容の話言葉をくりかえす、絶えず手で脚をさする、など)
2) 脱抑制 (本能のままの行動、周囲への配慮・礼節に欠ける、盗むなど反社会的行為、発作的に易怒、など)
3) 被影響性 (外的刺激に反応しやすい、相手の言葉をオウム返し、目の前のものを触る、など)
4) 注意・集中力低下 (一つの行為が続けられない、診察室・検査室に留まれず、立ち去ろうとする、など)
5) 感情・情動変化 (理由なく笑顔、または不機嫌、他人と共感できない、など)
6) 病識の欠如 (自分が病気である自覚が全くないため、受診や定期通院が難しくなる、など)
7) 言語障害 (物の名前が出てこない、言葉の意味がわからない、読み間違い、会話がスムーズにいかない、など)
8) 食行動障害 (甘いもの、味が濃いものばかり食べる、盗み食い、高速で噛まずに飲み込みので窒息、など)
9) 自発性定価 (家事や仕事をしなくなる、何もせずゴロゴロしている、質問しても考えずに適当に答える、など)
前頭側頭型変性症 (FTD)については、2年前から65歳以下で発症した症例については、行動異常型 (bvFTD)と意味性認知症 (SD)については難病指定となっており、診断基準を満たす症例は難病として申請が可能になります。診断基準は症候学的診断(症状を基準とした診断法)がメインではありますが、画像診断がbvFTDやSDに合わない症例や、発症年齢が合わない症例は、申請しても認定されないようです。
診断基準の表現は、専門医以外には難しいこともあり、1)~9)の症候学的特徴がそろっているかどうかで、この病気 (FTD)を考えるのですが、実際はそう単純ではなくて、前頭葉関連症状=FTDではなく、FTD以外にもほぼすべての認知症で前頭葉関連症状をきたしうるというのが現実です。このような神経変性疾患に関しては、死後の脳の解剖による病理診断でなければ、生きている間に正しい診断はほぼ不可能であることは、近年の海外の様々な論文などでも指摘されています。
前頭葉は、大脳辺縁系・大脳基底核、中脳(脳幹)と密接に連携していますので、前頭葉以外、例えば、中脳と基底核に限局した障害のパーキンソン病でも軽度の前頭葉障害をきたすと確認されています。患者数が多いと言われているアルツハイマー型認知症や、レビー小体型認知症/認知症を伴うパーキンソン病など、本来大脳皮質の後半部分が限局して障害される病気でも、20~40%では前頭葉~側頭葉の障害が強く、大脳皮質全域が障害されてしまう重症タイプがあります。それ以外に近年増えている、タウオパチー、嗜齦顆粒性認知症(AGD、グレイン)、神経原線維型認知症(NFTD)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)などは疾患の性質上、高率かつ顕著な前頭葉関連症状があります。
中には、高齢発症の著しい前頭葉関連症状(精神症状)のAGDで発症した症例が、臨床的CBSやPSPSに移行していく症例は数多く見られます。つまり精神科でかかっていた症例が、動けなくなって神経内科(当院)で診ることになったというパターンは珍しくないという事です。
統計的にFTDは全認知症の1~5%程度にすぎないわけですが、前頭葉関連症状をきたす認知症、となるともっと多くなるのではないかと思われます。そしてその鑑別診断や予後を推定することは非常に難しいのです。


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by shinyokohama-fc | 2017-11-06 12:36 | 医療
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