セレギリンは心臓交感神経機能(立位の血圧)を低下させる

拙著79ページ。症例1の当時82歳のY さんが定期診察に来られました。
初診時は、セレギリン (2.5mg×2回)を服用していて、立ちくらみがひどく一時期外出できなくなっていた方です。
もうすぐ85歳になる高齢者ですが、湘南地域からこの猛暑の中で1人で受診できるほど元気な方です。
レボドパ・カルビドパは50mg×3回しか処方していません。
もともと毎日6000~10000歩精力的に歩く方で、この2年で見た目の症状はまったく進行していません。
先日の再診時に血圧変動を確認してみました。
臥位 130/70(57) 立位 141/77(70)、2分後142/77(70)

この年齢のパーキンソン病の症例としては異例中の異例でした。
最近はかかりつけのパーキンソン病の症例が増えましたので、全例で臥位から立位への血圧変動を確認していますが、ほぼ90%の症例で収縮期血圧10mmHg以上の血圧低下、70%の症例で20mmHg以上の血圧低下がみられ、これまで、パーキンソン病で立位で血圧が10mmHg以上上がる症例など見たことがなかったからです。

この症例では血圧に作用する薬はもちろん使っていません。
しかも2年前の初診時にはセレギリンの影響で、血圧が30mmHg以上低下していた (臥位150/76(74) 立位 120/78(86) )ので、同一人物の2年後とはとても思えませんでした。
人一倍歩くことで下腿の筋肉が維持されているので起立性低血圧を防いでいるのではないかと思われます。

「パーキンソン病 病理学、自律神経系研究の進歩 中外医学社 2004年所版」を気になって再読してみました。

第3章ー3「パーキンソン病におけるMIBGシンチグラフィー」の100~101ページに、セレギリンはH/M比を低下させると書いてありました。
拙著121ページにも書いているように、これは心臓の筋肉の交感神経を評価するための検査で、微量の放射性物質(I-MIBG)を注射で投与すると、通常は心臓の筋肉にMIBGが集まるのですが、パーキンソン病では心臓の交感神経が変性しているので、MIBGが集まらなくなるという事です。
2か月程度の短期間の投与であれば、元に戻り可逆性である。
長期間の二重盲検試験では有意に心臓交感神経機能を低下させるという、海外からの報告(Neulorogy 1997に掲載)も記載されていました。

最近、PDD(認知症を伴うパーキンソン病)やDLB(レビー小体型認知症)の症例・全例で血圧変動を確認していますが、起立性低血圧の程度と認知機能低下(注意障害・遂行機能障害・構成障害)は明らかに相関していることが実感されます。

しかし、パーキンソン病を診療し、薬を処方している多くの神経内科医がこのことを正しく認識しているとは思えません。
なぜなら、起立性低血圧の程度を確認もせず、10年以上の長期罹病者や75歳以上の高齢者にもセレギリンを含めた5~6種類のパーキンソン病治療薬を意味なく処方しているからです。
さらにアムロジピンが処方されていて、気を失ったり、下腿がむくんだりしている症例が散見されます。

起立性低血圧・血圧変動は、自律神経症状としてきわめて重要な症状です。立位で常に血圧が低ければ、慢性的な脳循環不全となり、認知機能低下を促進することはもはや自明の理でしょう。

起立性低血圧がないか?日常から確認することが大事で、これは医者でなくても介護者であれば誰でもできる事です。
もし起立性低血圧があれば薬の見直しがまず必要です。
特にレビー小体型認知症(DLB)には、薬剤性以外でも高頻度に見られます
。おそらくDLBに最適な薬剤は何か?を考えるヒントになるでしょう?

薬は症例によって適しているかどうかを慎重に見極めて処方してこそ有益なものだと考えますが、実際はそれが正しく評価されていないからこそ、拙著で挙げたような多くの不適切処方薬による薬害といえるケースが後をたたないのではないかと感じます。



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# by shinyokohama-fc | 2018-07-23 11:39 | 治療

プラズマローゲン臨床医学研究会

7月15日(日曜日)に「プラズマローゲン臨床医学研究会」が東京コンファレンスセンター品川で開催されました。

小生も講演演者として登壇させていただきました。
「アパシーと抑うつ症状に対してプラズマローゲンが著効し、認知機能も維持している老年性認知症の1例」というタイトルです。

この症例に関しては、86歳から90歳まで診ていたのですが、パーキンソンの運動症状はなく、脱抑制症状もない症例で、初診時(86歳時)はHDSR(長谷川式簡易知能スケール)17点/30点でした。

前医でドネぺジルが処方されていましたが、効果が感じられないため、自己中止されていました。当方では初診時からガランタミン8+8mgで処方していましたが、1年後のHDSRも17点でした。

自宅からサービス付き高齢者住宅への転居に伴い抑うつ状態が目立ってきたので、ご家族への説明理解の元で、プラズマローゲンを服用開始していただきました。抑うつ症状に対してはすぐに効果がみられ、外来診察時も見違えるように明るく元気になったようで、大変驚かされました。

当初ガランタミンを服用していましたが、もともと心房細動のため循環器科から投薬されているという状況で、88歳時から労作時の息切れが現れたために、中止としました。

ガランタミンはコリンエステラーゼ阻害薬の中でも、アセチルコリン賦活作用は他の2種類の薬剤に比べてかなり微弱ですが、高齢者にとっては心臓への負担が想像以上に大きいようです。

ガランタミン中止後6か月経過し、プラズマローゲン服用のみで、HDSR再検査したところ、なんと25点もありました。

今回の小生が経験した症例と類似した、80歳以上の高齢者へのプラズマローゲン使用によるスーパーレスポンダーは、他の演者の先生の症例においても複数の症例で確認されています。

小生の経験症例では他4~5例がプラズマローゲン単独使用で、1年以上、認知機能を維持している症例がありますが、これでも十分レスポンダーではないかと思われますが、1年で単独使用で8点以上もHDSR が上がる症例など想定外だったので、今回発表させていただきました。

研究会終了後、プラズマローゲンの研究・臨床試験に携わったお二人の先生方とお話する機会に恵まれました。
私よりかなり年配の先生方ですが、非常に論文投稿などにも意欲的で、そのバイタリティーには驚かされます。

現代医療において、石油が主原料である化学物質である薬物(西洋薬)が脳の病気に対して、代謝能力の低い高齢者に過剰に投与されすぎている、ポリファーマシーによる健康被害という深刻な問題についても、お二人の先生方ともに理解が得られました。

脳の病気に対しては、対症療法という役割しか担わない薬物だけで改善させるのは到底不可能であることは自明の理です。
プラズマローゲンに限らず、ありとあらゆる薬以外の物質が脳の病気に応用されることが不可欠であると、小生は考えます。


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# by shinyokohama-fc | 2018-07-19 12:32 | 治療

古寺巡礼(5) 豪徳寺 (曹洞宗・東京都世田谷区)

豪徳寺は、文明2年に創建された、2代目彦根藩主の井伊直孝氏によって、曹洞宗の寺として開かれました。
豪徳寺駅(小田急線)の改札を出るとすぐに、招き猫像があります。
豪徳寺までの道幅の狭い参道を10分くらい歩いて、閑静な住宅街の中に、
広い緑に囲まれた敷地が現れました。
まずは左右に松の木を配した10mほどの参道を歩きます。

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参道を歩き切ると、小さな山門 (寺の玄関)が見えます。
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山門の先にはまずは仏殿が見えます。
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正面から向かって左手に堂々たる、三重塔がそびえたちます。

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仏殿の奥には本堂があります。
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招き猫が大小びっしりと奉納された、招福殿という建物がありました。
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これまで訪問した、曹洞宗の寺とはまた、違った趣がありました。




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# by shinyokohama-fc | 2018-07-07 16:19

高齢者に純粋なアルツハイマーは少ない

先日、高田中央病院が主催している、「みんなの実践セミナー」という医療者向けのセミナーで、小生が講演をさせていただきました。
認知症治療薬の1つである、リバスチグミンの使用経験とそれに関連した知見について話をさせていただきました。
講演後の質疑応答の時間では、予想に反して6~7名程度の質問者から1人2~3もの質問があり、そちらの方が大変でした。
今回話した内容は「高齢者には純粋なアルツハイマーは少なく、多くは血管型、DLB、AGD、PSPなどの混合型であるので、リバスチグミンは用量を加減して使用せざるをえない」という内容でした。「まったく初めて初めて聞いた内容だ」という感想も多くいただきました。

認知症専門介護に携わる会社が定期的に実施している研修会(セミナー)の依頼があり、10月14日(日曜日)にも「認知症のさまざまな症状に対応した適切な薬の使い方」というテーマで川崎市産業振興会館で13時から講演をする予定です。もしご興味のある方はお越しください。
問い合わせ 0120-326-310 (デイサービス&ショートステイふるさと)

「認知症」をテーマにした医療者向けの通常の講演では、アルツハイマー認知症(純粋型)の事だけを対象にした内容しか話されません。
認知症の大多数は「アルツハイマー型認知症」である事が前提であり、中核症状と周辺症状があるとかいう判で押したような話です。

小生がこの4年間で外来で診てきた「変性型認知症」の症例のうち、純粋なアルツハイマー型認知症、あるいはその前段階の軽度認知障害(MCI)と推定される症例はおそらく20%くらいしかなく、非アルツハイマー(FTD (SDが多い)、DLB、PDD、PSPS、CBS、AGD)が80%でした。
その傾向は75歳以上の後期高齢者に強く、特異な精神症状や動作歩行障害を伴う症例が大多数でした。
11年前に発表された、ブレインバンクの高齢者・変性型認知症の連続剖検でも、すでにアルツハイマーは30%前後しかないようです。

それゆえ、非アルツハイマーについて猛勉強せざるを得なかったこの4年間でした。PSPSやCBSの異型病型もすべてのバージョンを診てきました。非アルツハイマーの多くは「認知症」というよりは「神経難病」であり、決まった治療法もない中で苦労の連続だったと思います。

そういう実地臨床をやってる者からすれば、アルツハイマー型認知症(純粋型)だけを前提にした講演というのは、あまりにも現実から乖離していると言わざるをえないからです。

特に高齢者は純粋型アルツハイマーはきわめて少ない(おそらく20%以下)状況で、アルツハイマーであっても混合型、むしろ非アルツハイマーの方が
多いのが現実です。

つまり、多くの非アルツハイマーの症例にリバスチグミンなどの認知症治療薬が処方されているというのが現実なのではないかと思います。


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# by shinyokohama-fc | 2018-06-30 12:35 | 治療

4種類以上の多剤併用処方に科学的根拠なし

昨日(6月17日)は、AP品川で13時から、講演会を行いました。
「パーキンソン病と認知症 その多様性と薬の使い方の違い」
事前申し込み制でしたが、130名前後の方々に来ていただきました。
来場していただいた皆様、本当にありがとうございました。

今回の講演では、総括的な話として
「パーキンソン病に対する4種類以上の多剤併用にはRCT(ランダム化比較試験)は実施されておらず、エビデンス(科学的根拠)はない」
「多種類の薬剤服用によって、副作用の危険率は指数関数的に増える」
という話もしました。

6月18日の、長尾和宏先生の、Dr和の町医者日記には
「なぜ、薬漬け医療がいっこうに治らないのか。だから賢い患者さんになるしかない」と書いてありました。
私もそういう目的で、今回の書籍を執筆し講演会もしています。
パーキンソン病の薬漬け医療を止めるためには、賢い患者さん側になってもらうしかないからです。

パーキンソン病診療ガイドラインが今年改定されました。
「治療ガイドライン」ではなく「診療ガイドライン」に変わっています。

ガイドライン作成している、キー・オピニオン・リーダー(KOL)の先生の1人は、こう述べています。
「患者背景は1人1人異なりますので、一律にこれに従って治療方針を決定することはできません。ガイドラインは、最適な治療を選択する際の手がかりの1つであり、妄信的に従うことは避けていただきたい」
「パーキンソン病患者の多くは70歳以上の高齢者であり、今後もその数は増加すると予想されますので、高齢者のエビデンスを蓄積し、高齢者に焦点を当てたガイドラインを作成していく必要がある」

つまり、「今のガイドラインは高齢者に焦点を当てたガイドラインではないので、特に高齢者の場合は個別化対応を意識せずに、妄信的に従うとかえって混乱を招く」ということでしょうか。

例を挙げると75歳以上の後期高齢者に徐放剤ドーパミンアゴニストを高用量で処方されているというケースがあります。多くの症例ではレボドパ、ドパミンアゴニストだけではなく、ゾニサミド、セレギリン、その他もろもろの薬が追加されています。

今から15~20年前にドーパミンアゴニストが学会を挙げて強力に推進されていた時代がありました。徐放剤(1日1回タイプ)が出た時は大物KOLの先生方がこぞって徐放剤を推奨していたのを覚えています。
しかし、小生のかかりつけのパーキンソン病患者を速放剤から徐放剤へ一斉に変更した結果、ほぼ全員に奇異反応(症状が悪化してしまう)や副作用が出てしまい、患者さんには「元の速放剤に戻してくれ」と言われました。
小生はこの時から、学会KOLの言う事を妄信するのをやめました。

一番問題なのは、科学的根拠のない4種類・5種類・6種類・7種類というパーキンソン病治療薬を同時に使うことを規制する保険医療におけるルールが何もないという事ではないかと思います。

薬の種類が多いという事は決して歓迎すべき事ではなく、不適切な処方が行われる確率が上がるという事だと思います。



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# by shinyokohama-fc | 2018-06-18 12:51 | 治療
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新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


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