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サフィナミド/パーキンソン病治療薬

サフィナミドメシル酸塩(以下サフィナミド)、イタリアのNewron Pharmaceuticals S.p.Aという製薬会社が創製した、パーキンソン病治療薬が昨年11月に日本で発売されました。

欧州では2015年、米国では2017年に承認されていて、日本での承認は3~5年遅れています。

拙著172ページでも紹介しているように、ドパミンの分解酵素であるモノアミン酸化酵素(MAO)の活性を低下、ドパミンの分解を抑えることによって、脳内のドパミン濃度を一定に増やす効果がある薬です。

アセチルコリンの分解を抑えることによって、脳内のアセチルコリン濃度を一定に増やす効果のあるコリンエステラーゼ阻害薬に作用は似ているでしょうか?

適用・効能は「レボドパ含有製剤で治療中のパーキンソン病におけるウェアリングオフ現象の改善」ですので、すでにレボドパ含有製剤を処方されて治療中であるが、レボドパの効果が切れてしまう事で動作(運動症状)が悪化するケースのみが対象になります。

ウェアリングオフ現象の改善時間が平均で1.6時間/日ということで、ドパミンアゴニストに比肩するレベルという報告です。

ちなみに他のウェアリングオフ改善治療薬の効果は平均1時間未満にとどまっており、服用している患者さんの有効性の実感に乏しい印象があります。特に薬剤性精神病、薬剤性せん妄状態になっているケースに関しては、これらの薬は真っ先に減薬・中止の対象としていました。

レボドパ配合剤+ドパミンアゴニストがすでに相当量が使用されている症例が多く、その上にトッピングされているので、年齢が65歳を超えていれば、精神系有害事象が出現する確率は高く、ほとんどが薬剤性精神病、あるいは薬剤性せん妄になっていました。

今回、このサフィナミド50mg(朝1回)を、現在55歳男性、発症後約10年経過した患者さんに昨年12月に初めて処方しました。
すでにレボドパ配合剤450mg、ロチゴチン18mg、イストラデフィリン20~40mgが使われていましたが、かなりのオフ時間があり、日常生活や仕事に困っていました。

2年前まではロチゴチン18mgと併用にてイストラデフィリンがオフ時間の短縮に有効とのことでしたが、1年前くらいから効果が怪しくなり、
仕事のストレスなどの影響もあり、レボドパ配合剤の服用回数と用量が増加傾向(1日5回)になりました。

通常は脳深部刺激療法(DBS)の適応と考えてもよいレベルですが、
サフィナミドが発売されたという事で、効果が怪しくなってきたイストラデフィリンからの変更を提案、1年間は2週間毎の処方しかできないという事を受諾されたため、初めてこの薬を処方しました。

服用して数日以内に効果を実感されたようで、これまではレボドパの服用を午前中は2回必要だったのが、朝1回で済むようになったのが大きな変化だということでした。レボドパ配合剤の服用回数も、1日3~4回で済む日も増えたとのことでした。

パーキンソン病を診察し始めて30年近く経ちますが、これまで同系統の薬剤では経験したことがないほどの効果であったので、大変驚きました。

この方は、足の痛みを伴うジストニア、3年前から左足から始まり、最近は左右とも夜間22~23時頃に連日起こっていました。あまりに痛みが辛いために、芍薬甘草湯を頓服用として処方していて毎日服用していました。
この有痛性ジストニアがサフィナミドを服用開始後は、毎日起こっていたのが、月に2~3回まで減少したという事です。

この有痛性足ジストニアは、40~50歳という若年発症のパーキンソン病の方には比較的よくみられる症状で、以前はジストニアのために通勤ができないという方もいました。

これまでこのタイプのジストニアに対しては確実に有効といえる薬がなく、アマンタジンや抗アセチルコリン薬のトリへキシフェニジルを試していましたが、用量が少ないと効果が乏しく、有効な用量まで増やすとなると、必ず副作用の問題になり、長年高齢になっても長期に安心して服用できる方法ではありませんでした。

このサフィナミドが、有痛性ジストニアを軽減する効果があるとすれば、かなり期待できるのではないかと思います。

グルタミン酸への作用、抑うつ症状をどこまで軽減できるかも今後は注目して、適正な症例があれば試していきたいと考えています。

抑うつ状態は女性に多いのですが、パーキンソン病の場合はSSRIやSNRIのような薬がとても使いにくいため、この薬が抑うつ症状に効果があればと期待しています。
まだわずか1例だけですが、今後症例数を増やして多数の患者さんの効果を観ていきたいと感じさせる薬だと思います。

ただ残念なのは、この薬に限りませんが、近年、パーキンソン病治療薬として発売される薬の薬価があまりにも高すぎることです。発売後2~3年で安全性が確認されれば、薬価を少しは下げてほしいと思います。あまりにも高すぎると、処方する側も躊躇させられるものです。薬価を高くすることで、ポリファーマシーの抑止にはつながっていないように感じます。

拙著のタイトルで誤解される方も多いかもしれませんが、私はけっして薬物治療否定論者ではありません。
適正な用量、適正な種類で患者さんにとってデメリットが少なく、メリットが多くなるような使い方を提唱しているだけです。

患者さんの薬に対する忍容性もさまざまですので、一筋縄ではいかないですが、たくさんある治療薬をいかに上手に使えるかを考えています。
また、5年後、10年後のことも視野に入れて、処方薬をよく考えないといけないと思います。


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by shinyokohama-fc | 2020-02-01 16:49 | 治療
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