プラミペキソールの減薬に苦労した事例

今回、紹介するケースは
パーキンソン病が発症して約18年。薬物治療も同じ18年にわたります。60歳代後半の方で、半年前から通院しています。

治療薬の多剤併用の影響で、10年前から腰が前屈した姿勢となっている(おそらくドパミンアゴニスト長期服用の影響)ようで、経過中、静止時の手足のふるえ(振戦)は確認されておらず、
典型的な「無動型」です。

最近、朝そこにない物を取ろうとする(幻覚)、朝食を食べながらこぼす、衣服に着用しているつり革の使い方がわからない。食べ物に対する執着(食欲衝動)などが見られたために、心配になり連れて来られました。
朝食後の薬を服薬して30分以内に、がくんと眠ってしまう状況でした。
ペルゴリドからプラミペキソール徐放剤に変更されてから現れたそうです。

ウェアリングオフではフリーズとなり、オン時は頸部~上半身のジスキネジアが座位でも顕著に激しくみられます。
本来は、数年前からすでに、脳深部刺激手術 (DBS)を検討すべき状況ではなかったかと推察されます。

<前医処方>
1) レボドパ・ベンセラジド配合剤 550mg(1日5~6回)
2) プラミペキソール徐放剤 1.5mg×3 (朝1回)
3) アマンタジン 50mg×3(朝1 夕2)
4) セレギリン2.5mg×4 (朝2 昼2)
5) エンタカポン2.5mg(1日4回)
6) ドロキシドパ100mg×6(1日3回)

2)は突発性睡眠、幻覚誘発の最大要因と推定されたので大幅に減量
3)はジスキネジアには全く効果がないようで、幻覚を誘発するので中止
4)も有効性がはっきりしないので中止
5)はオフを減少させておらず、ジスキネジアを悪化させていたので中止

数か月間、試行錯誤を繰り返したうえで、以下のように変更しました。
1) レボドパ・ベンセラジド 600mg(1日6~7回)
2) ロチゴチン13.5mg(1日1回)
3) プラミペキソール徐放剤 0.375mg×2 (1日1回朝)
4) イストラデフィリン 20mg×2 (1日1回朝)
5) ドロキシドパ 100mg×3(1日3回)

本当はプラミペキソール徐放剤を中止してロチゴチンへ完全移行したいと考えていたのですが、無動型の進行ステージであるという事情を考慮してやむをえず、ごく少量残すようにしました。

現時点では極端なオフ(フリーズ)時間は著しく減り、ジスキネジアも多少軽減し、幻覚・突発性睡眠、衝動性、薬剤性のせん妄はほぼなくなり、認知機能も維持されています。

ただし、不本意にも5種類もの多剤併用となっていますので、この処方で継続していくと今後は何らかの問題が起こるだろうとは推定されます。
5種類の神経系薬剤の併用は科学的に安全性が保証されていないのです。

ウェアリングオフ&ジスキネジアの顕著な無動型ケースの薬物処方
レボドパ配合剤+ロチゴチン(少量)+イストラデフィリンが主流ではないかと思います。今後はここにラサギリンをどう使っていくかでしょう。
できれば多くとも3種類だけでコントロールしたい所です。

「無動型」の特徴としては、薬物治療において「ドパミン依存性」に移行しやすい傾向が強い事です。早い方だと、レボドパ処方を開始してから、2~3年で、ウェアリングオフ・オンオフ現象が出現してしまいます。

初期はレボドパやドパミンアゴニストのレスポンス(反応性)は非常に顕著で、しばらくはこれらの薬の恩恵を受けることになりますが、それは長くは続かず、多くは5年前後で現実の状態に戻されてしまう時間が増えてしまう事になります。

「ドパミン依存性」というのは、実際の薬物使用の上では「レボドパ&ドパミンアゴニスト依存性」になります。これは側坐核や扁桃体という場所にあるドパミン受容体(D2/3)に薬が強く作用してしまうからです。

同じパーキンソン病でも「振戦型」(約10%)に同じような薬(レボドパ・ドパミンアゴニスト)を出してしまうと、症例によっては拙著127~132ページ掲載、症例5のように、初期から激しい過活動性せん妄、低活動性せん妄をきたします。せん妄であるにもかかわらず「レビー小体型認知症だ」と決めつけられて不本意にも認知症治療薬を追加されて、さらにせん妄がひどくなってしまうというパターンが多いようです。

「無動型」の場合は、初期には副作用の被害を被ることなく、ドパミンアゴニストになじんでしまう方がほとんどなので、10~15年は何も問題なく服薬が継続できる方がほとんどですが、
病気は年々進行し、加齢変化もあって、それに伴ってニューロン(神経細胞)、ドパミン受容体の数はどんどん減少していきます。
大量のレボドパ配合剤から変換した大量のドパミンと大量のドパミンアゴニストがドパミン受容体で受け止められなくなって、シナプス間に飽和状態になってしまいます。
その臨界点を超えれば、これまで見られなかった、幻覚、傾眠、認知機能低下(薬剤性のせん妄)が出現してきます。

進行性の病気である以上、薬物治療の限界は必ず訪れます。いかなる名医でも薬物で終生コントロールするのは不可能です。
通常人と同じ運動レベルにこだわれば、薬は大量になりますが、その一方で病気が進行して、正常な神経細胞は激減している。その代償として、昔はパーキンソン病には現れないとまで言われていた「認知症」「精神症状」に悩まされることになります
「無動型」の場合はそれを見越して、できれば70歳までに、発症15年までに、早めのDBS導入を検討すべきでしょう。

言葉は悪いかもしれないが、ここまで薬でこじれまくっている事例を処理するのは大変だと痛感させられました。
多剤併用を際限なく保険医療として許可している現状にも憤懣やるかたないという思いです。
ベンゾジアゼピン受容体作動薬依存症とドパミン受容体作動薬依存症の事例に関しては、できれば薬を処方した医者が、最初から最後まで責任をもって処理してほしいと切に願いたいところです。


新横浜フォレストクリニック
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by shinyokohama-fc | 2018-10-12 12:05 | 治療
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