スタチン原理主義とその功罪

「スタチン」という薬。
循環器科医と糖尿病内科医はほぼ全員が絶賛する薬
であろうと思います。
その分野の権威的なDrだと「盲信的」と言っていいほどです。日本人が発明した薬だからというのがその理由の1つかもしれません。

しかし、薬というのは、常にパラドックス(矛盾)を抱えています。
薬である以上副作用のリスクがあるわけですが、スタチンの副作用についてそういう議論が臨床医でなされている事はほとんどないようです。

その理由は「心臓血管イベントを抑制する」からです。
心血管イベントというのは、わかりやすくいうと、心筋梗塞とか脳梗塞とか
動脈閉塞症など、動脈硬化による疾患群のことです。

たしかに、私がこの仕事を始めた頃に比べると、明らかに「多発性の微小脳梗塞」「脳血管性パーキンソニズム」「脳血管性認知症」「アテローム血栓性脳梗塞」はかなり減ったように思います。
これは降圧剤の普及による血圧コントロール、糖尿病治療薬の普及による糖尿病コントロール、禁煙の普及などがありますが、スタチンの寄与している所も大きいと思われます。

しかし神経内科医である私はこの薬を毛嫌いしていました。
「スタチン」による「横紋筋融解症」の重篤な劇症型症例を数例診ているからです。近年は劇症型ではない「横紋筋融解症」は増えていると推定されます。中高年者でも「スタチン」を開始してから筋肉痛が発症して、立てない
、腕が上がらないというケースはよく見られます。それが近年の高齢者の「フレイル」の増加の一因になっているのではないかと思われます。

また、中年高齢者に四肢、特に下肢の末端のしびれをきたす方々の多くが、スタチンを服用しているようです。「スタチン」は「末梢神経障害」も引き起こす薬だからです。

それに加えて「スタチン」にとってさらなる「不都合な現実」が存在する事が明らかになりました。
それは「認知機能の低下」つまり「認知症」を増やすという現実です。

神経細胞(ニューロン)はコレステロールから作られます。筋肉や末梢神経も同じくです。長年にわたってスタチンを服用する人が増えれば、認知症が増えるのは当然だと言えます。

8月19日に、市川フォレストクリニックの松野晋太郎先生が、興味深い報告をされていました。「認知症患者に処方されていたスタチンを中止すると、テストで3~4点も点数が上がる」
本来「スタチン」信仰の強い循環器科医がこのような報告をしている事が私にとっては衝撃的でした。

もっともテストで認知症の病態すべてが説明できるわけはないのですが、先日説明した、デール・ブレデセン先生の著書にも同じ事が書いてありました。他にも同じような報告がありますが、わが国では「スタチンが認知症を悪化させているか?」を検証する臨床試験が実施される事はおそらくないだろうと思います。

糖尿病患者が「糖毒性認知症」を発症するリスクが高いというのは今や常識になりつつありますが、糖尿病の糖毒は「末梢神経障害」「筋肉障害」を引き起こすのは古くから知られています。「自律神経」というのは目に見えない「末梢神経」で、糖尿病では「自律神経障害」もきたします。

糖尿病を長年患った高齢者がスタチンを服用し続けるとどうなるか?
「認知症」「末梢神経・自律神経障害」「筋肉障害」を続々と引き起こして
最終的には「フレイル」に至る要介護者が増える事が容易に想定できます。

心血管イベントが減少して長寿者が増えたのは喜ばしい事なのかもしれませんが、別の問題が起こっているという事実も無視できないでしょう。

また良質な脂質、例えば「リン脂質」は認知機能を改善させるという報告も増えていますので、長年にわたって脂質は悪者扱いされていましたが、脂質に対する見識を根本的に考え直すべき時期に来ているのかもしれません。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2018-09-15 15:51 | 治療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line