認知症の薬は副作用、効果なしでアウト(フランス)

週刊誌でも大きく取り上げられている記事ですが、

フランスの厚生省は、8月1日からアルツハイマー型認知症の治療薬を医療保険の対象から外したそうです。ドネぺジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンの4つです。

決断した理由は「効果がほとんどない」と判断したのと、循環器系や消化器系の副作用・有害事象のリスクが勝ると判断したという事です。
健康保険の適応から外すということは、患者にとって意味のある効果が示せない薬には国のお金は出せないという事でしょうか。

小生は4年前から、このブログで認知症の治療薬、特にコリンエステラーゼ阻害薬による有害事象の問題を多く取り上げました。
我が国の認知症を専門とする学会は、コリンエステラーゼ阻害薬を積極的に使えと強力に推進してきました。

学会が強力に推奨することで、安全性・有効性が証明されていない、副作用リスクの非常に高い、85歳以上の老年認知症なのか?加齢性変化なのか判別困難な症例にも多くのコリンエステラーゼ阻害薬が処方されました。

その結果として、循環器系、消化器系、精神神経系の副作用・有害事象のケースが非常に増えてしまっているのが現状です。

2年前に、一般社団法人 「抗認知症薬の適量処方を実現する会」が発足して
昨年に少量投与を認める裁定がありました。

しかし、小生の経験では、高齢者には虚弱者、薬剤過敏者が非常に多くて、
リバスチグミンの初期量(4.5mg)ですら、有害事象が出現してしまうケースが多くみられます。

高齢者、特に75歳以上の後期高齢者においては、小生の使用経験におけるコリンエステラーゼ阻害薬の忍容性の低さの現状を見るかぎり、薬を服用するメリットよりもデメリットのほうが大きいのではないか?という印象をもちます。

学会は、パーキンソン病に伴う認知症 (PDD)に対しても、保険適応のないコリンエステラーゼ阻害薬を使うように、ガイドラインで推奨しています。
「PD、PDD、DLBは同じスペクトラムの病気」というのがその根拠であり、DLB に保険適応があるから使えと推奨しているようですが、これをフランス人の専門医が見たらどう思うのでしょうか?

ここ最近、認知症を伴うパーキンソン病 (PDD)の症例全例に対して、臥位から立位への血圧変動、起立性低血圧を評価するようにしていますが、9割以上の症例で収縮期血圧20~40mmHgの起立性低血圧を確認しました。

心臓の交感神経が機能低下していて、自律神経不全に陥っているケースに対して、強力に自律神経に影響を与える薬(コリンエステラーゼ阻害薬)を使う事が果たして正しいといえるのでしょうか?

たしかに、DLB(レビー小体型認知症)の初期から中期にみられる「覚醒レベルの変化に伴う認知機能の変動」に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬は少量でも有効である事は明らかで、小生もすでに15年前にドネぺジルでそれは確認済みです。
しかし、それも病気の進行とともに効果が減弱して、薬剤性パーキンソニズムによる動作歩行の悪化が目立ってきます。これは決して「病気が悪化したからだ」ではなくて、薬剤によるドパミン阻害有害事象です。

しかし、PDとPDDには原則的に「覚醒レベルの変化を伴う認知機能の変動」は見られません。つまりDLBとはここが根本的に違います。
もし見られるとすれば、それはドパミンアゴニストなどドパミン作動薬、その他の神経系薬剤の多剤過剰処方による「薬剤せん妄」なのだと思います。

昨年あるパーキンソン病の研究会で、ドパミン阻害薬をてんこ盛り処方した症例で認知機能の変動が出現したケースで、リバスチグミンを処方して奏功したと自慢げに発表していた専門医がいました。

小生は自身の経験をもとに、DLB の中核症状と薬剤せん妄を混同してはいかんと、以前のブログでも書いています。

このように専門医が薬が正しく使うことができない現状であれば、いっそのこと、これらの薬は保険適用から外したほうが、いいのではないかと思う今日この頃です。

ちなみに小生は、この2~3年でコリンエステラーゼ阻害薬の処方数は激減しました。想定していた以上に、忍容性が低く脱落してしまうのと、認知機能低下に対しては有効性(メリット)が実感できる症例が、実際はきわめて少ないからです。

「コリンエステラーゼ阻害薬を服用しているが、どうも有効性が感じられないので中止したい」という要望には基本的に小生は賛成です。
無駄なコストを有効性がない薬に払う必要はないのですから。

「中止したら認知症が悪化するぞ」と恫喝するつもりは一切ありません。
もしそんな事言ったら、欧州、特にフランスの医者に笑われますからね。

コリンエステラーゼ阻害薬を服用しようがしまいが、アルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症(DLB)は進行します。

「症状の進行を抑える」という表現はきわめて誤解を招く表現ではないかと思います。多くの患者は「病気の進行を抑える」と誤解するからです。

しかし、同じAD、DLB、PDと言っても、多様性が非常に大きいというのが事実であり、軽症から重症、進行が遅いから速いまで様々です。
多様性が元来の病気の性格であって、これを薬で変える事は難しいです。
それは、同じ胃がん、肺がんでも良性~悪性まであるのと同じことではないでしょうか?

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by shinyokohama-fc | 2018-08-09 12:10 | 治療
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新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


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