簡易知能評価スケール診断の限界

「簡易知能評価スケール」という簡便に短時間で「認知症」の重症度を測る
検査として、認知症専門医にも診断スケールとして重宝されている診断のためのスケールです。

世界的には、Mini-Mental State Examination (MMSE)が最も頻用され、一方で日本では改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)が使われています。

小生の外来通院者には、これらのテストで高得点(25~30点)を取るが、明らかに、日常生活において客観的にみて、明らかに認知機能が低下している患者さんが沢山おられます。

昨年行われた、「自動車運転に関わる認知症の診断」の講演会で演者の先生が語っていました。
簡易知能評価スケールで認知症か否かを判定してはならないと
交通事故を起こしやすいのは、むしろ、初期のFTDとか初期のDLBであり、むしろ初期の非若年性のATDは事故率が高いとはとても思えません。
初期のFTDは、MMSEが高得点でも、交通ルールを守らないですし、初期のDLBは日中の傾眠、認知の変動などで運転リスクが高いわけです。

中には何らかの薬物など(コリンエステラーゼ阻害薬以外の事も多い)が奏功して、点数が高得点になっている事例もありますが、元々の地頭が良かったり、教育歴・職業歴による影響が大きいと推定されます。

検査実施者によるバイアスも大きいようです。ある患者さんに同じMMSEを実施しているのに、小生が実施したテストでは30点で、紹介先の別のDrが実施すると22点だった事がありました。

小生が診ている方々は、アルツハイマータイプ(皮質性認知症)よりも、非アルツハイマータイプ(皮質下性認知症・混在)の方が多く、このような非アルツハイマータイプに関しては、MMSE、HDSR による認知機能評価は初期~中期の病勢を反映しにくく、それほど役に立たない事がわかりました。

「パーキンソン病から派生する認知機能低下症」、いわゆるPDDの症例も比較的多く診ているのですが、多くはMMSEやHDSRが26点以上。
失点するのは、ほとんどシリアル7です。
また正答はするが、時間がかかるというパターンは多いようです。

構成障害・視空間認知機能低下が顕著で、時計描画・図形模写・立方体模写が全くできない症例が多数いる事がわかりました。

それゆえ、学会レベルでは、PDDに対してはMMSEよりも、THE MONTREAL COGNITIVE ASSESSMENT (MOCA)という検査が推奨されていて、日本語改訂版というのもあります。ただし検査に20分くらいかかります。
最近はそれ以外のテストもいろいろ実施して、多角的に臨床評価するように試みています。

PDDというのは、認知機能低下症をきたさない通常のPDとも、レビー小体型認知症(DLB)とも臨床像が違うというのが、多くの患者さんを診てよく理解できました。

なぜ、学会レベルで「同じスペクトラムの病気だ」と言われているものを、わざわざ、この3つに分類(正確には6つに分類)する必要があるのかというと、薬物処方に関わってくるからに他なりません。

「同じスペクトラム=同じ病気」という、病理と臨床を同一化した考え方によって、認知症の全くないPDに対して無意味なコリンエステラーゼ阻害薬が処方されたり、DLBにドパミン作動薬が大量に処方されたりして深刻な精神症状を引き起こしたり、混乱・混迷・パニックになってるのが現状ではないでしょうか?

この点については、10月21日 (日曜日)に、AP横浜で行われる講演会でくわしくお話したいと思います。


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by shinyokohama-fc | 2018-08-06 12:34 | 医療
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