DLBにはまずドロキシドパから

レビー小体型認知症(DLB)。通称レビー。
以前から何度も言っているが、この病名には非常に違和感があります。
私はいまだによくわかりませんし、こんなに得体のしれない、つかみどころがない、臨床医にとってわかりにくい病気も他にはないでしょう


DLBは初期は記憶障害がほとんどないようですが、「記憶障害=認知症」「物忘れ外来=認知症を診てくれる外来」という価値概念が定着しているようですので、その範疇からは外れやすいので、見逃されやすいと啓蒙される傾向があります。

このDLBという病名の病気の臨床像ですが、
幻覚よりも誤認(実体意識性など)に伴う妄想が主症状のようです。パーキンソニズム(動作歩行障害)は半数程度にしか確認できず、動作歩行がやや遅い程度のケースがほとんどですので、老化現象と区別が難しいというレベルです。認知の変動?も外来では確認するのが難しく、介護者の主観に影響されます。初期には記憶は問題なく、簡易知能評価スケールでも高得点なので、「認知症」とはみなされず「軽度認知障害」「年齢相応」にされてしまうので、「誤認妄想症候群」という名前でいいのではないかと思います。

DLBの診断基準では重視されていないようですが、神経内科的観点から言うと、以下の2つの症状が重要ではないかと思います。

1) 血圧変動の大きさ (起立性低血圧・食事性低血圧、ときに臥位高血圧)
2) 姿勢保持の不安定さ (転倒しやすい)


現在、DLB (仮称)と推定される症例全例で、臥位~立位の血圧変動を記録していますが、だいたい30~50mmHgくらい下がり、立位の血圧は90mmHg以下の症例も多いです。

このような状況であれば、立ちくらみやふらつきは当然ありますし、最悪の場合は気を失います(失神)、座位や立位で慢性的に脳循環が悪いので、意識がぼーっとして、認知が変動しやすくなり、これを連日のように長期間繰り返していると、当然のごとく認知機能が低下していきます。

当然ながら、コリンエステラーゼ阻害薬や抗精神病薬はこのような問題(血圧変動)の解決には全くなりません。教科書に書いてあるから、認知症専門医がこの薬を使えと言うから使ってみたけど、実際は良くなる症例は少ないという印象です。これらの薬をいくら使っても上手くいかない症例の多くは起立性低血圧がひどい症例です。一体どうしたらいいのでしょうか?

まず弾性ストッキングを下腿に履かせることです。
血圧降下剤、特にアムロジピンを服用していれば中止することです。
血管拡張剤、特にシロスタゾールを服用していれば中止することです。
臥位の血圧が高くない場合は、ドロキシドパを服用することです。

2年前から通院している、72歳男性。
DLB(仮称)の診断基準は完全に満たしていて、DATスキャンでも線条体の高度集積低下が確認されている症例です。
7年前から夜間の異常行動があり、クロナゼパムを処方
2年前から幻覚、誤認、妄想がひどくなり
総合病院の精神科を紹介されて受診。パリペリドン(リスぺリドンの徐放型)、アリピプラゾールを処方されたが、全く精神症状がおさまらないという
事で受診されました。
「神経内科」ですので、この症状の方は受診する事は通常少ないです。

記憶は悪くないので、診察時にはその誤認による被害妄想、嫉妬妄想、作話の詳細を長々と語れる状況でした。
人、動物、虫の幻視、変形視なども顕著でした。
前傾姿勢で動作は遅く、パーキンソニズムヤール2~2.5相当でした。
リバスチグミンを試し、段階的に1か月ごとに18mgまで増量しましたが、精神症状はまったく改善せず、動作歩行状態が悪化したので中止。


ドネぺジル3mgから開始しましたが、最初の1~2か月だけ幻視と尿失禁が減少したが、すぐに効果は失われ、開始4~5か月後で動作歩行状態が悪化してきたので中止。中止すると状態がよくなったと言われました。
幻覚に対してブロナンセリンを少量だけ使用したが、やはり全く効果なし。
着衣の動作も非常に悪化していました。

血圧変動を測定してみると、ひどい起立性低血圧でした。
臥位 115/76(83)
~立位1分 67/50(97) 立位2分 81/58(100)

半年前にすでに低血圧があったため、アメニジウム(20mg)2錠を服用していましたが、全く効いていなかった事に愕然としました。
そこで起死回生を願ってドロキシドパ(100mg)6錠、1日600mgを開始しました。他の併用薬は、レム睡眠行動異常を抑えるためのクロナゼパム0.25mgとラメルテオン8mgだけです。

ドロキシドパ600mg/日を開始して、それまで何をやってもおさまらなかった幻覚、誤認などの精神症状が大幅に減少しました。
立位の血圧も、94/66(87)、88/63(88)とまだ低いですが、回復したようです。

ドロキシドパという薬は、ノルアドレナリンの前駆体で、当初はパーキンソン病の治療薬で、すくみ症状に効果があると言われ、20年前はよく処方していました。しかし、パーキンソン病のエキスパートと言われる先生方の著書では「運動症状には全く効果がない」と散々な評価であるのが現状です。

ノルアドレナリンという神経伝達物質は、脳幹の青斑核にたくさん存在すると言われていて、特に覚醒力が強く、気分を高揚させ、注意・不安にもかかわる、血圧を上昇させると書いてあります。

これはまさにDLBに最適ではないかと思います。
血圧を上昇させ、脳循環を改善させるだけではなく、覚醒作用、気分高揚作用、注意力向上作用、不安軽減作用があるとすれば
この薬はレボドパ配合剤、コリンエステラーゼ阻害薬、などよりもはるかに優れた薬ではないかと思います。

パーキンソン病、DLBらしき症例を見たら、まずは起立性低血圧を評価し、立位で100mmHg以下であれば、まずはドロキシドパを試すべきではないかと考えます。

起立性低血圧(自律神経不全)が重度の場合は、いくらコリンエステラーゼ阻害薬を使っても、まったく有効ではないという事が証明された事例であったと思われます。

コリンエステラーゼ阻害薬を増やせば、認知機能が改善するからそれで良しとする意見は、認知機能よりも重大な症状である自律神経不全症状を完全に無視している、実地臨床から大きく乖離したものではないでしょうか?


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2018-07-24 12:02 | 治療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line