認知症何でもレビー診断病の専門医

今回紹介する症例は、神経学会・認知症学会で臨床実績もある著名な専門医DRによる、非常にわかりやすい誤診症例です。

認知症、パーキンソニズムの領域では誤診は日常茶飯事ですが、学会で実績がある専門医DRだからといって、正しく診断できるとは限らないようです。

これまでも数々の学会で著名な先生方の診断・処方を見てきましたが、残念ながら、学会における専門性、ヒエラルキーと診断・処方の適確性はまったく比例しない事がよくわかりました。

今回の症例は67歳女性。

4年前から左足をひきずって歩くようになり、パーキンソン病(PD)と診断。
3年前から自発性低下、意欲減退、夜間不穏、転倒、ムズムズ脚の症状などが始まったようです。

2年前に転倒して右手を骨折して、某大学病院へ入院。
入院先でレビー小体型認知症(DLB)と診断されて、様々な薬がテストされるが、どれを使われても、病状が悪化するという経過をたどり、半年前には
コリンエステラーゼ阻害薬、ドネぺジルやリバスチグミンの増量によって、焦燥、興奮性、攻撃性、脱抑制、多動が悪化、まったく歩けなくなり、車椅子移動になってしまった事もあるそうです。

コリンエステラーゼ阻害薬を中止してレボドパ配合剤を服用して歩けるようにはなったが、レボドパを増量するとやはり上記の陽性症状がかなり悪化してしまうようでした。歩けるようにはなったそうですが、誰かの誘導が必要のようです。レボドパを一時中止すると体幹傾斜が高度になって、立位保持が困難になってしまうそうです。

夫の介護が限界レベルだったので、施設へ入所となりましたが、急に立ち上がったり、大声でわめいたりという脱抑制症状が顕著であったため、トラゾドン、炭酸リチウムが処方されていました。

診察で観察してみると
歩行時の姿勢が不安定で、体幹傾斜が強く、頭を上へ向けるなど視線がどこを向いているかわからないような姿勢をとるが、何とか立位の保持は可能なようでした。

椅子に倒れるように座り、誘導しないと短距離でも移動できませんでした
指タップ、脚タップは右はできるが、左は全くできませんでした。
両手とも強い把握反応があり、
言葉はオウム返し、反響言語が顕著で、通常の会話が困難のようでした。

決定的なのは、左上肢を不自然に挙上して、左手で何かをつかもうとするような奇妙な動きをすることで、まさにこれこそが「他人の手徴候」でした。

小生も、初回の診察では気がつかなかったのですが、2回目、3回目の再診時に再現性がみられましたので、これぞ臨床診断「皮質基底核変性症候群」(CBS)で間違いないと確信しました。

現在の処方薬は
1) レボドパ・カルビドパ配合薬(100mg) 2錠
2) トラゾドン(25mg) 3錠
その他、便秘薬など2~3種としています。
一時期は炭酸リチウムが処方されていましたが、夫の希望で中止となりました。本来は「躁病」に使う薬なのに、前医から使途理由の説明もなく、納得できないとの事でした。中止しても何の問題もありませんでした。

「皮質基底核変性症」(CBS)の臨床所見がほぼ揃っていましたので、難病申請するようにしました。臨床調査票に画像診断所見の記載が必要だったので、近隣の医療機関へ頭部CT検査を依頼しました。

予想通り! 右側前頭葉~頭頂葉にかけて脳溝の拡張、脳萎縮所見が確認され
顕著な非対称性、左右差が顕著でした。

臨床的にあそこまで顕著な非対称性があるのですから、当然の結果でした。

認知症専門医はとかく、DLBという診断をしたがります。この症例の特徴からして、一体この症例のどこがDLB なんですか?という印象でした。
さらに四肢の症状に顕著な左右差があり、左手の他人の手徴候まである。
一番目立つのは、前頭葉解放症状と失行、失認、失語だったからです。こういうのが主症状であるDLBというのは、臨床的には考えられない。

マンチェスターグループの提唱した「ピックコンプレックス」という概念が大変意義深いのは、CBD、PSP、AGDなどの4リピートタウオパチーと呼ばれている疾患群をFTLD(ピック系疾患群)の仲間だと捉えた事。

個人的には、CBD、PSPにパーキンソニズムが現れるから、「パーキンソン症候群」という呼称する事はまったく気に入らない。まるでCBD、PSP がPDやDLBの仲間であるような誤解を生むからです。

そういう誤解が、CBD(CBS)の臨床的に典型症例を、学会の高名な専門医が、DLBだ!コリンエステラーゼ阻害薬だ!と安易に診断・投薬してしまうという事が起こりうるのでしょうか?

はっきり言える事としては、DLBという概念が一般化してきた事による弊害のほうが大きいのではないか?という事です。

認知症やパーキンソ二ズム(動作歩行障害)も見れば、診察による十分な評価もせずに、安易にDLBだと診断する専門医が多すぎるようです。
これを「認知症、何でもレビー診断病」と呼んでいます。
最近は核医学などの検査ツールがあるのでそれに依存する傾向があり、本来やるべき診察を全くやらない専門医が非常に多いようです

そもそも、神経変性疾患の診断基準というのは、病理検査によるものではなく、症状の操作的診断が主体の診断基準なので、本来は臨床医がかなり精密に神経学的な診察をして、除外診断をかなり丁寧にやる必要があります。

それ以外にも、薬剤過敏性=DLB だという誤解、精神症状(幻覚など)の評価をめぐる誤解・混乱などが目に余ります。
これらの要因が「認知症、何でもレビー診断病、何でもコリンエステラーゼ阻害薬処方」を生む温床になっているのではないか?
こういう診断や処方をやめない限り、患者は救われないでしょうね。
神経学会・認知症学会の指導的立場にある専門医が日常的にそういう事をやっているのですから、もはや何を信用していいのかわからないですね。

6月10日(日曜日)に中野サンプラザで行われる「認知症治療研究会」では
小生がそのような専門医による誤診症例を4症例、30分の講演で紹介します。ぜひご興味のある方はお越しください。


新横浜フォレストクリニック
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by shinyokohama-fc | 2018-05-31 16:39 | 医療
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