パーキンソン病・25年目の奇跡 (1) 実録


今回は発症して25年目のパーキンソン病の症例を紹介します。この方は50歳で発症して現在は75歳です。
25年というと、ちょうど小生がこの仕事をやっている年数そのものです。
つまりこの仕事を始めたときに、この方は発症したのです。


「パーキンソン病、少しずつ減薬すれば良くなる!」2月16日出版
今回の書籍を書く動機になった症例でした。書籍の帯で紹介されている(本文では7ページ4~7行目) 文章はこの患者さんご家族からの手紙です。
様々な医療機関を転々として、平成27年8月。当院の受診へ至りました。


「これまでは、外来で神経内科医に不調を相談すると、すぐに薬が追加されていたが、それらの薬にはほとんど効果が感じられず、副作用ばかり増える気がしていた。長年飲んでいる薬の影響で生活の質(QOL)もかなり低い状態になっていた。こちらでは無駄な薬の排除をしてくださるので、大変ありがたい

この方は、症例2(拙著84~90ページ)に紹介しています。
著名な元大学教授の先生の外来へ通院していました。
長くなるので、くわしくは拙著をよく読んでほしいと思います。


初診時は、ほとんど動けず、立位保持も歩行もできない状態でした
診察すると把握反応が著明(左>右)で、開眼失行が目立ち、言葉が話せず、
強い前頭葉機能障害が示唆されました。意識も朦朧としているように見えました。まるで進行性核上性麻痺の進行期と同じような臨床像でした。

ドパミン作動薬を複数服用していても、全然効いていなくて一日中ほとんど動けない、歩けないという厳しい状態でした。
前医では、「発症して20年以上経っていて、認知症もかなり進んでいるので、かなり深刻な状況だ。何をしてもよくなるはずがない。」と言われ

前医で処方されていた、治療薬は
① レボドパ・カルビドパ 200mg×3
② ロピニロール 4mg
③ ロチゴチン 9mg
④ ゾニサミド 25mg
⑤ エンタカポン 100mg×3
⑥ ドネぺジル 3mg
⑦ ドンペリドン 10mg×3
⑧ 酸化マグネシウム 330mg×4


実は小生も前医と同じように「病気が進行していて深刻な状況だ」と認識していて、どう考えてもこの方が良くなるとは思いませんでした。
正直に言うと「エライ患者が来てしまったな」と感じていたほどです。


しかし、そういう状況であれば、なおさら無駄な薬はいらんだろうと思い、ドパミン・アゴニストである②と③の併用。④のゾニサミドの使用、⑥のドネぺジルの使用、⑦のドンペリドンの使用は意味がないと考えましたので、
ドパミン・アゴニストは③に統一して、②④⑥⑦を順次中止しました。
特に⑥⑦はドパミン阻害に作用、②④はせん妄を誘発していると考えました
さらに①レボドパ配合剤200mg×3回を水に溶かして100mg×6回に変更しました。レボドパ吸収を阻害している可能性が考えられた、⑧の酸化マグネシウムをレボドパから2時間ずらして1日2回の服用に変更しました。

日中の意識は覚醒して、自宅内も手すりを使って移動できるようになり、オンの時間帯には日常生活動作もほとんど自分でできるようになりました。
この経過でやはりこの方はパーキンソン病だったのだと確信しました。

運動症状が良くなってから、認知症の簡易評価スケールであるMMSE、HDSRを実施しましたが、それぞれ28点、29点であり、26点以上でしたので、認知症(PDD)には該当しませんでした。
前医の「認知症もかなり進んでいる」という認識は間違いでした

よくパーキンソン病の専門家の先生方が、年表で「発症して20年以上経てば、認知症が進行する」というステレオタイプ的な講演を聞きますが、
この方にとっては前医が処方していた薬で認知症みたいにされていたのであり、認知症には至っていない事がわかりました。


来院後1年の処方 (28年11月)
① レボドパ・カルビドパ 配合剤 600mg/日
6時150/9時100/12時100/15時150/18時100(600mg/日)
② エンタカポン 200mg/日
12時100 18時100
③ロチゴチン 13.5mg/日
④酸化マグネシウム 1000mg/日
14時 500mg 21時 500mg
②は一時期中止したのですが、やはりオフが出るという事で再開。
④も一時期中止して、漢方薬に変更したが合わずに、元に戻しました。

診察時にもオン時間帯には猛烈な上半身のジスキネジアが頻繁にみられ、オフ時間も以前よりはかなり減ったもののエンタカポンでは埋めきれない状況でした。しかしエンタカポンを増やすと、ジスキネジアがさらに悪化すると想定されたので増やす気はありませんでした。

前医の無駄な薬をすべて取っ払うと動ける時間が増える一方で、ウェアリングオフとジスキネジアが目立ち典型的な無動型のパーキンソン病の臨床像が明らかになってきました。
アマンタジン100mgを追加してジスキネジアはいくらか軽減したものの、オフ現象はそのままでした。

つまり残る問題である、ウェアリングオフとジスキネジアは未解決でした。
前回のブログでも示したように、最近
ロチゴチンとイストラデフィリンの併用により、オフ現象の制御に成功した症例がいくつかありましたので
思い切ってエンタカポン、アマンタジンを中止して、イストラデフィリンに変更しました。

最新処方(30年3月)
①レボドパ・カルビドパ配合剤 600mg 1日5回
②ロチゴチン13.5mg 1日1回
③イストラデフィリン 20mg 1日1回
④酸化マグネシウム 1000mg 1日2回
⑤ルビプロストン 24μg 1日1回 (※便秘薬)

ジスキネジアは大幅に減少して、ほとんど見られなくなりましたオフ現象も同居している家族が見ている範囲ではほとんどなくなりました。
現在、歩行器を使って歩行していますが、以前より早くなったという印象で
地面から足がしっかり上がっているという感じがしました。

25年目でも薬の効果があるのが、純粋型パーキンソン病なのです。

パーキンソン病の25年目としては上出来ではないかと思いました
パーキンソン病の20年目以上の方が全員認知症になるわけではなく、実際統計的には半数程度と言われています。

この方を現在のベストの状態に持っていくまで3年近くかかったのですが、
純粋型パーキンソン病は、進行がきわめて遅いために、試行錯誤する時間的猶予が与えられました。
何より前医(元大学教授)とは違って何の権威もない小生のような開業医を信用して、3年も根気強く通院し続けてくれた患者さんとご家族に感謝したいと思います。

この方には、実は薬以外にも、2~3種類のサプリメントを使っています。
そのサプリメントはこちらから提案して、同意のうえで服用しています。
サプリメントの併用がなければ、減薬は困難だったかもしれません。
サプリメントが効果があると言うと、やれ科学的根拠がないだのプラセボ効果だのと言われかねないので、情報は非公開にしています。

またこの症例と同じような方に、同じような事をしたとしても、全員上手くいくとは思いません。それは他の病気でも同じです。

それは「多様性」があるからです。同じ病気でも、それぞれが置かれている環境因子や遺伝的素因はすべて違います。
同じ方法を使ってすべて上手くいくほど実地臨床は甘くはないのです。
この症例はおそらく、認知症がない、アルツハイマー病理がない、など好条件がそろっていたので幸運にも上手くいったのだと思います。




新横浜フォレストクリニック
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by shinyokohama-fc | 2018-03-16 11:32 | 治療
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