鹿児島認知症ブログ・書評(2)減薬して良くなったことを評価される珍妙な現場

書評(2) 減薬して良くなったことを評価される珍妙な現場

薬を多量に盛られた方を、再度評価しなおして、慎重に減薬していく作業は、やったことがある医師ならわかると思うが、とにかく時間がかかる。
おそらく、初診には相当時間を費やしていると思われる。(中略)
「他院で大量に出された薬の後始末をしているから」


他の医者が処方した薬など、本当は一切触りたくないというの本音であり、本当は処方した医者が修正するべきものだと思います。小生も自分の診断や処方が間違っていたと後で気がついて後悔する事があります。副作用によるデメリットが大きければ、自分で処方した薬は自分で減薬したり中止したりする事は日常茶飯事です。

例えば、本書に掲載した症例が、なぜ前医にかかるのをやめて、当院へ来なければならなかったのでしょうか?
「医者と患者側のコミュニケーション不十分で、現状を共有できていない」「医者が副作用(有害事象)を十分認識していない、深刻に考えていない」
この2点につきるのではないでしょうか?
逆にこの2点ができていれば、前医によって副作用で有害な薬は減薬・中止されて、病状は安定したはずで、当院へ来る事もなかったはずです。
副作用をまず第一に実感するのは、患者さん自身と同居している家族や介護者であり、医者ではありません。医者が診察している時間(数分間)に副作用が目に見えて出現しているケースというのはまれです。
そういう意味で、患者側との対話、コミュニケーションが不可欠です。
初診の時間はだいたい30分にしています。薬の減量や変更はすぐには難しいので、通常は病状が安定するまでは2週間毎に診察にしています。特にパーキンソン病の場合は現行の保険医療制度下では何種類併用しても許されているので、ありえないほどの多剤併用処方(ポリファーマシー)が少なくないので、大変困難な仕事になりますが、誰もこういう仕事をやる人がいないので、仕方なく自分がやるしかないのかと諦めてやっています。
誰かがこの仕事をやらなれば、患者さんの病状が悪化していくだけなので、それを見過ごす事は到底できないからです。

減薬という、いわば他所の仕事の尻拭いで患者さんから喜ばれるというのは、なんとも妙な気分である。自分が一からその患者さんを良くしたわけではないからである。
他所の仕事の尻拭いのために、こちらの時間が持ち出しになっていることにゲンナリする。
誰かがやらなくてはならない仕事なのだろうが、自分個人の精神衛生上はきわめてよろしくない。

前医がもっと副作用を厳重に注意しながら慎重に薬を処方していれば、こんな事態(薬剤せん妄など)には至るはずもないわけで、正直言うと満足感は何もないです。
今回本書を書いた理由は、こういうポリファーマシーの被害者が少しでも減る事を願ったものです。
たぶんさほど効果は期待できないでしょうが。その理由は次回に。


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by shinyokohama-fc | 2018-03-05 12:00 | 医療
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