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クエチアピンの使い方

クエチアピンという薬、認知症の行動心理症状 (BPSD)の抑制?目的でよく使われているようです。

認知症の教科書とか講演会ではよくこの薬が書いてあります。学会が推奨?しているからか、この薬を抵抗なく処方する先生方が多いようです。

抗精神病薬の中では力価が低いため、本来の「統合失調症」に対して使う場合は、高用量が必要になります。

夜間暴れて眠らないとか、レビー小体型認知症(DLB)で幻覚が出ているとか、そういう症状に対して専門医?によって使われることが多いようです。

実際はこの薬はDLBに使うと合う症例と合わない症例があるようです。
前者は皮質型で脳幹がまったく障害されていないタイプ、後者は脳幹型あるいは通常型で脳幹網様体が強く障害されている対応でしょう。

クエチアピンという薬の受容体結合親和性の比率を確認すると
1) ヒスタミン受容体1 30%
眠気、鎮静、肥満、認知機能低下
2) アルファ1A受容体 30%
鎮静、起立性低血圧
3) アルファ2C受容体 7%
認知機能改善
4) セロトニン5HT2A受容体 7%
抗精神病作用(幻覚など)
5) セロトニン5HT1A受容体 4%
抗不安作用、認知機能改善
6) セロトニン5HT7受容体 3%
認知機能改善
7) ムスカリンM1受容体 2%
認知機能低下、便秘
8) ドパミンD2L受容体 0.5%
パーキンソニズム(動作歩行障害)

少なくとも上記8つの神経系受容体に作用して拮抗作用、つまりブロックする、多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)と呼ばれています。
しかし多元とはいえ、その実態は1/3がヒスタミン遮断で、1/3がアルファ遮断なわけです。
それゆえ、最も多い副作用がヒスタミン遮断による傾眠・眠気であり、次いで、アルファ遮断による起立性低血圧です。

いわゆるDLBらしい症例というのは脳幹網様体が強く障害されている、
「注意・覚醒レベルの変動を伴う認知機能障害」が顕著な症例です。
つまり、薬による有害作用がなくても日中眠気が強いタイプであり、こういうタイプは、顕著な起立性低血圧を示すことが多いです。

こういうタイプのDLBに、日中にクエチアピンを服用させてしまうとどうなるでしょうか??
ただでさえ眠いのがさらに眠くなり、血圧も下がって、立ちくらみや失神を誘発するでしょう。立位・座位・食後の低血圧が助長されるので、脳循環不全となり、覚醒レベルはさらに悪くなるでしょう。たとえDLBでなくても、75歳以上の何らかの認知機能低下症の高齢者であれば、誰でも起こりうることでしょう。

クエチアピンを1年以上継続して服用するとどうなるか?おそらくかなり認知機能が低下するのではないかと思います。もしかすると、いくらドネぺジルやらリバスチグミンやらを使っていてもまったく役に立たないのではないかと推定されます。

というわけで、私はこの薬は高齢者が長期に服用するには良くない薬ではないかと思います。
どうしても服用するというのなら、6.25~12.5mgを眠前に服用するだけにとどめ、2~3か月で中止したほうがいいでしょう。
レビー小体型認知症(DLB)の皮質限局型以外には長期的に服用してしまうと良くない薬であるというのは、病態生理的には自明の理です。



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# by shinyokohama-fc | 2019-06-03 18:33 | 治療

パーキンソニズム型DLBにゾニサミド、クロナゼパムが著効

前医で「パーキンソン病」という診断されていた、71歳男性の方。
自宅の近くにある公立病院の神経内科の外来に通院していましたが、
拙著を読まれて、初診は昨年の11月、12月に2回セカンドオピニオンで受診されました。自宅の近くの医療機関にかかるように説得しましたが、
どうしてもという希望で今年1月から当院で定期診療になりました。

当初は、前医の「パーキンソン病」という診断を前提で診ていたので、非常に難しく感じました。

まず「パーキンソン病」に必須条件である、レボドパの顕著な効果がみられません。日内変動はあるが、レボドパ服用時間と一致しない。ドパストンという点滴を実施しても運動状態は目に見えて良くはなりませんでした。

レボドパ・カルビドパ 配合剤 500mg
エンタカポン 300mg
プラミペキソール徐放剤 4.5mg
ゾニサミド 25mg

物が二重に見えたり(変形視)、自宅内でしばしば宮殿の中にいるような(実体意識性)がみられ、ゾニサミド追加された後から、夜間眠りが浅く、大声をあげて手足をバタバタさせるという症状(レム睡眠行動異常症)がひどくなり、連日みられるようになったそうです。姿勢も首下がりがひどく、頸部~脊柱の筋強剛が目立つ状態でした。

プラミペキソール+ゾニサミドという組み合わせは高率に精神症状を悪化させます。当院へ初診で受診するほとんどの症例がこの組み合わせです。
おそらくそれぞれを単独で適切な症例に適切な用量で使えばよい薬なのだと思います。実際私も両方ともいくつかの症例に使っています。しかし、両方を併用してしまうと効果よりも薬害のほうが大きくなってしまうようです。

精神症状、レム睡眠行動異常の悪化、体軸性姿勢異常はいずれも、プラミペキソール4.5mgの影響で間違いないでしょう。当院へ初診する直前に患者側希望で中止されていたようです。中止2週間後からは変形視や実体意識性は見られなくなったようです。ゾニサミド25mgも一旦中止するようにお伝えしました。

レボドパ・カルビドパ配合剤も服用直後に頭痛と嘔気が出現していたため、一時自己中止されていました。しかし中止後数日経つと、運動症状が極端に悪化したため再開されたようです。レボドパの有効時間にかかわらず、足が出なかったり、立位姿勢の維持や歩行も困難になっていたようです。

レボドパ・ベンセラジド配合剤に変更して、上記の副作用の問題は解決されましたが、やはり肝心の有効性がはっきりせず、レボドパが有効なはずの時間帯でも運動症状が不調になる状態が続きました。逆にレボドパ服用しなくても普通に問題なく歩ける時間帯もあるとのことでした。

さらに頸部~腰部にかけての違和感 (体軸性の筋強剛)、開眼困難、呼吸困難感、入眠時の下肢のピクピクした違和感、入眠後に下肢をバタバタさせる動きがひどくなり、声も出にくいという様々な多彩な症状がありました。

これらの症状以上に抑うつ症状が顕著であり、夜間の不眠が深刻な状況でしたので、うつ状態に伴う心気的な症状だと考えて、ミルタザピン15mgを眠前に処方しました。1日だけ服用したが、全く眠れず気分が悪くなるだけだったので、翌日から服用中止したそうです。むしろ夜間の行動異常が悪化したようです。ロチゴチンも2.25mgで再開しましたが、一時期治っていた
首下がりが再び悪化しました。下肢の症状に対する有効性も実感できないとこ事で中止しました。

「レム睡眠行動異常」が顕著で悪化傾向であることは明確でした。ラメルテオン8mgも試しましたが、全く効果がないという事で中止。やむを得ず、クロナゼパムを0.25mgから開始しました。このクロナゼパムは著効して、行動異常も下肢の症状も軽減して、夜間よく眠れるようになり、日中の心身体調も大幅に回復したようです。

この時点で「認知症のないレビー小体型認知症」を疑いました。これは日本語として甚だおかしい表現ですが、実際に医学雑誌にそういう質問があり、
「レビー小体型認知症」という病名がよくないのだという返答でした。
たしかに記憶の問題はないのですが、時計描画にやや問題がありました。

ご本人から、以前中止していた、残薬のゾニサミド25mgをもう一度試してみたいという申し出があり、服用可能としました。
服用開始してから、頸部~腰背部の体軸の筋肉痛が軽減、運動症状も平均的に良くなり、歩行可能な時間も増えたようです。開眼困難、呼吸困難感、夜間の下肢の症状なども減少したようです。

ゾ二サミドについては、以前のブログに書いたように、プラミペキソールとの併用、トッピング処方によって、数多くの症例において精神症状の悪化が確認されたので、あまり良い印象をもっていませんでした。

パーキンソン病においては、振戦が強いタイプに使用していますが、その効果は抗コリン薬より劣るケースも多く、あまり評価していませんでした。

昨年ゾニサミドは「レビー小体型認知症」の運動症状に保険適用になったようです。当症例では思いの他著効したようです。
当症例では「レビー小体型認知症」中核4症状のうち、確実なものは「レム睡眠行動異常症」「パーキンソン症状」の2つしかありませんでした。プラミペキソール服用中に、変形視や実体意識性は確認されていますが、記憶力は維持されているにもかかわらず、くりかえす幻視は見られていません。

半年前に実施したDATスキャン検査では、左右の線条体のSBRが同等に低下していました。運動症状に関しても、パーキンソン病ほど顕著な左右差が確認できず、静止時振戦もなく、レボドパに対する顕著な効果もない。つまり「パーキンソン病」と診断するにはかなり微妙な症例でもあります。

ともあれ、当症例はクロナゼパムとゾ二サミドが著効で、レボドパ配合剤の効果が微妙、プラミペキソール、ロチゴチン、ミルタザピンで悪化という経過を踏まえると「パーキンソン病」ではなく、「レビー小体型認知症」に近いことは間違いないでしょう。


この症例に限らず、これまでの臨床経験ではっきりと言えることは、ゾニサミドは、プラミペキソール1.5~4.5mgと併用してしまうと全く効果を発揮できないばかりか、精神症状を悪化させる方向に作用してしまうわけです。
その一方で、レボドパ配合剤との併用で使用すると想像以上に効果を発揮するという事です。

臨床試験でも単独使用か、レボドパ配合剤との併用でしか有効性・安全性は確認していないはずで、プラミペキソールを合わせた3薬剤併用での臨床試験は実施されていないはずです。

つまり、臨床医のあくまで個人的な判断による、レボドパ配合剤+プラミペキソール+ゾニサミド+セレギリンという3~4種類薬剤併用という、誤ったポリファーマシーが多くの精神症状(薬害)を招いているのは間違いないようです。

神経内科の専門医の多くが、私を含めて「レビー小体型認知症」の臨床評価や経験スキルがなく、「パーキンソン病」と鑑別する臨床的スキルも検査手段もきわめて乏しいという現状を考えると由々しき事ではないでしょうか?

当症例のように「レビー小体型認知症」の診断そのものが操作的であるというのも、薬害問題を大きくしていると推定されます。
繰り返しますが、脳神経に作用する薬はもっと慎重で厳重な対応が求められます。あまりにも杜撰すぎやしないかと思うのは私だけでしょうか?


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# by shinyokohama-fc | 2019-05-23 17:53 | 治療

PSP症例、レボドパ→アマンタジンでV回復!

前医で長年「パーキンソン病」だと診断されていて、レボドパ・カルビドパ配合剤200mg×3回(1日600mg)とエンタカポン100mg×3回が処方されていて、半年前の初診時は私も「パーキンソン病なのか」と前医の診断を信用していました。75歳の男性の方です。

ただ、2回頭部を打撲する大怪我をしていて、硬膜下血種や外傷性クモ膜下血種になっているというのが気になっていました。

よく診ると、四肢よりも頸部~体幹のほうが筋強剛が強く、前後の可動域制限があるようです。目を見開いたびっくり眼であり、眼の動きは上下・左右とも制限されていました。
椅子から後ろにずり落ちて転倒することが多く、椅子に座るときもドスンと倒れこむような座り方でした。
この方にはレボドパ配合剤はまったく効果がなく、100mg×3に減量しました。
画像検査を再検査すると、中脳被蓋と前頭葉が萎縮しているのが確認できました。進行性核上性麻痺(PSP)だと思いました。

日常的に転倒を繰り返していて、歩行器での歩行もできなくなり、飲み込み時のむせ、嚥下困難も目立っていて、いよいよ病状が進行してきたかという
感じでした。日常生活動作、トイレや食事なども自分でできない状況。

効果が感じられない、レボドパ配合剤は段階的に減量して中止し、代わりにアマンタジン150mg(朝100mg昼50mg)に変更しました。
標準タイプの進行性核上性麻痺(PSP)は幻覚が出現することはめったにないので、アマンタジンは使いやすい薬です。

レボドパ→アマンタジンに変更してからは、意欲が出てきて、日常生活動作はほとんどできるようになり、足がすくまなくなり、歩行器なしで歩けるようになりました。顔の表情も出るようになり、話しかけて笑顔、大きな声で笑えるようになりました。自宅内では何もつかまらずに移動できるようです。嚥下もむせることはほとんどなくなったようです。

この病気に関しては、コリンエステラーゼ阻害薬とレボドパは病状を悪化させうることが多いので、最近は使わないようにしています。
このアマンタジンという薬は、CBSにも有効な症例が多いようです。


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# by shinyokohama-fc | 2019-05-18 12:46 | 治療

レボドパ (メネシット・マドパー)神話の崩壊

臨床医、特に神経内科医の頭には「レボドパ配合剤 はゴールドスタンダード、王道である」という公式が刷り込まれているようです。

ちなみに、レボドパ配合剤とは以下の商品名の薬です。
レボドパ/ベンセラジド
イーシードパール、ネオドパゾール、マドパーなど
レボドパ/カルビドパ
ネオドパストン、メネシット、ドパコールなど

パーキンソニズムがあれば、パーキンソン病であろうが、その他の病気であろうが、「とりあえずレボドパ配合剤を処方しておけばいい」と考えているでしょう。

パーキンソン病の国際的な診断基準には「レボドパ配合剤の顕著な効果」とあります。つまりレボドパが顕著な効果がなければ、パーキンソン病ではないと言っても過言ではないのです。

パーキンソニズムをきたすが、パーキンソン病ではない病気、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症、皮質基底核変性症に対しては、レボドパはパーキンソン病のようにうまく働きません。むしろ悪いほうに作用することが多いですので、中止したほうがいい場合も多いです。

レボドパ配合剤をやめて、何を使うかというと、それはアマンタジン(シンメトレル)です。上記3つの疾患に関してはアマンタジンが著効する症例が多いことに気が付きました。レビー小体型認知症の場合は量を増やすと幻覚が悪化することもありますが、ドパミンアゴニストのひどさに比べたら大したことはないです。

私が診ている患者さんはレボドパ配合剤が効かない症例のほうが多いです。レボドパ配合剤はノルアドレナリンを減らすのか、血圧が下がったり、眠気が出たり、特に上記3つの疾患では副作用でひどく悪化してしまうケースが多いです。
「レボドパが効かない、副作用で飲めない」と処方している神経内科医に勇気を出して進言すると、激怒されてしまうことがよくあります。
「レボドパは決してゴールドスタンダード(王道)などではない」のです。
レボドパに固執されすぎて、病状が悪化して不幸な転帰をとっているケースはかなり多いのではないでしょうか?


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# by shinyokohama-fc | 2019-05-14 18:46 | 治療

室生寺 (真言宗・奈良県宇陀市)

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# by shinyokohama-fc | 2019-05-10 08:49
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新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


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