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抗コリン剤が著効したパーキンソン病77歳女性

今月半ばに初診で来られた、臨床的(操作的診断)において典型的なパーキンソン病だと診断した、77歳の女性の方が来られました。

6月から左下肢のふるえで気がつかれて、ふるえがストレスになってる影響なのか、食欲もかなり落ちているそうです。

診察してみると
ベッド上安静、静止時で左下肢の顕著なふるえ(振戦)、左上肢の軽度のふるえ、顕著な歯車様筋強剛が左上肢・下肢ともに確認されました。
手足の往復運動(タップ動作、開閉・回内回外運動など)は左側で手足とも著しく拙劣でした。
血圧は臥位~立位で収縮気圧(上の血圧)が20~25mmHgほど下がりますが、10回測定して、120~145で推移していました。

77歳でこれだけ顕著なパーキンソン病の運動症状があるわけですから、
おそらく神経内科医が10人いたら10人とも、レボドパ配合剤を処方する事例でしょう。

しかし、高齢女性は、レボドパ配合剤やドパミンアゴニストを使うと、想像以上に食欲が落ちます。

これらの薬を使うことによって、セロトニンに影響を与えて自律神経が不調になり、胃腸の蠕動運動が低下してしまうのでしょう。セロトニンの90%が胃腸に存在していて、日本人はセロトニンを再取り込みする窓口が欧米人よりもかなり少ないようですので。

ドンペリドンを併用して、レボドパ配合剤とかドパミンアゴニストを処方する神経内科医が多いようで、これは日本のガイドラインに推奨されていますが、ただの薬剤カスケードにすぎず、安全性・有効性が臨床試験で証明されているわけではないので、何一つ正当性がありません。

薬剤カスケードの問題というのは、レボドパ配合剤とかドパミンアゴニストがその症例にとって、どの程度毒性を及ぼしているか(副作用が深刻か)をかき消してしまうものです。ブラインドをかけるのと同じで、蓋をして副作用を見えないようにしているのと同じなわけです。

天邪鬼な私は、悩んだ挙句、トリへキシフェニジル1mgから処方しました。
認知症学会、神経学会が目の敵にしている抗コリン剤です。
本当のパーキンソン病は、ドパミンの放出は当然のごとく減少していますが、アセチルコリンの放出は過剰になっているはずです。
ふるえが強く、筋強剛も強く、左右差が顕著で、食欲が落ちている、となると、数あるパーキンソン病治療薬の中で、この薬以外はまったく頭に浮かびませんでした。

ご存知のように、学会が推奨する、専門医の皆さんが大好きな、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネぺジル、リバスチグミン)はいずれも食欲が落ちるどころか、吐き気まで催す可能性のある薬です。さらに、これらの薬は、パーキンソン病に間違って使われてしまうと、四肢の筋強剛が悪化してしまうこともありました。そのことを思い出して、逆手にとったのです。

1週間後、効果は驚くほどで、予想以上でした。
食欲が戻っただけではなく、あれほどひどかった静止時振戦(ふるえ)、歯車様筋強剛が大幅に軽減していました。わずか1mgのトリへキシフェニジル(アーテン🄬)が想定以上に著効したわけです。
往復運動はまだ左右差が確認されたので、次は2mgに増やしました。

私は近年、この世代(後期高齢者)のパーキンソン病症例に対して、レボドパ配合剤かアマンタジンを処方してきましたが、正直いって今回ほど著効したケースはありませんでした。

これぞ「原点回帰」だと実感させられました。
トリへキシフェニジルを処方している症例はありますが、わずかに10例以下です。
高齢発症のパーキンソン病の場合は、レビーと紛らわしいケースも多いですが、もしレビーであれば、間違いなく認知機能や精神症状が悪化する薬でもありますので、いいリトマス紙(試験紙)になると思います。

私見ですが、パーキンソン病(特に筋強剛(筋肉が硬い)、静止時振戦)のある
方は、アセチルコリンが過剰なことが多いので、むしろ少し抑えるくらいのほうがいいと思います。

高齢者のパーキンソン病はいずれ短期間で認知症になるから、前もってコリンエステラーゼ阻害薬を服用させておけという臨床治験をやっていたはずですが、アレはどうなったのでしょうかね?

脳を構成するアセチルコリンを伝達する神経細胞(ニューロン)がある程度減ってしまえば、いくらアセチルコリンの分解を阻害しても、何の役にも立たないですからね。

最近、進行性核上性麻痺(PSP)にトリへキシフェニジルを臨床治験を検討している?という情報を知りましたが、意図が私には理解できません。


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# by shinyokohama-fc | 2019-08-23 12:34 | 治療

薬を変えればレビー症(DLB)は良くなる?!

レビー小体型認知機能低下症(以下、レビー症)という病気は薬を変えれば良くなるでしょうか?

答えは下の写真を見れば、一目瞭然だと思います。
正確には、患者さんの病状に合っていない薬をやめて、合っている薬に変えれば、劇的によくなるという事です。

今回の症例は驚くべきことに、
コリンエステラーゼ阻害薬(ドネぺジル、リバスチグミン)は一切使っていません。使わなくても良くなりました。

78歳女性
幻覚と誤認妄想が、半年前から連日継続的に見られるようです。
夜間の異常行動が顕著で安眠できていないようです。レム睡眠行動異常。
1日のうちで注意と覚醒レベルの変化があるようです。
動作緩慢、前傾姿勢、右手のふるえなどパーキンソン病の運動症状
MIBG心筋シンチグラムでは心臓/縦隔比の集積低下

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時計描画)
数字が円から大きく離れ、内側にクロージングしていくのが顕著でした。
長針と短針を書くように指示も、全く書けず、数字を書いてしまいました。
重複五角形模写)
五角形は描けていますが、かなり小さくなっています。

かなりぼーっとした感じで、ミニメンタルステートテストをしましたが、17点(30点満点)でした。全体的に質問に対する返答がかなり遅い。
動作は全体的に遅いものの、手の往復運動に左右差はありませんでした。
体幹が左へ大きく傾斜して、前傾姿勢でトボトボと歩く
イスに座るとき、手すりにひっかかる(視覚認知の問題か?)
右手の静止時のふるえ(振戦)が顕著でした。
臥位→立位で、25~30mmHgの血圧低下がみられました。

<前医処方>
① ロチゴチン(ニュープロ🄬) 9mg/日
② トリへキシフェニジル(アーテン🄬) 2 mg 朝1回
③ 抑肝散 2.5g 朝・昼・夕3回
④ アムロジピン2.5mg 朝・夕2回
⑤ ラニチジン 75mg 眠前 1回


※パーキンソン病運動症状のふるえに対する薬としては、①②はよく使われる薬でこの量は決して過量ではなく、むしろ少ない量です。
③は幻覚・妄想を抑えるための処方だが、全く効果がないようです。

※右手のふるえは強いものの、①②で幻覚が悪化していると推定されたために減量して中止。抑肝散も効いてなさそうなので減量して中止。眠前のラニチジンも夜間の症状を悪化させているようなので中止。

<1回目の処方変更>
① ロチゴチン2.25mg/日
② ゾニサミド50mg 朝1回
③ 抑肝散 2.5g 朝夕2回
④ オルメサルタン5mg
⑤ シロスタゾール(プレタール🄬)50mg 朝夕2回


<1週間後の再診時>
変更後最初の2日は幻覚・妄想はなかったが、3日目から前と同じように復活
脈拍が異常に速くなり、動悸のため眠れなくなったそうです。本人もプレタール🄬を始めてから眠れなくなったと強く訴えてました
本質的にはまったくといっていいほど良くなっておらず、むしろ悪化?
動作レベルは以前と変わらず。ふるえは軽減。以前よりも覚醒レベルが悪くなり、ぼーっとしている感じでした。
収縮期血圧は臥位で130~135、立位で112~135でした。

応急的に、グルタチオン600mgとシチコリン500mgを点滴注射。
点滴注射後は、動作歩行も速くなり、意識がしっかりしていました。

<2回目の処方変更>
① レボドパ・カルビドパ 50mg1日2回 朝・昼
② クロナゼパム0.25mg 1日1回眠前
③ オルメサルタン5mg 1日1回夕食後

※ロチゴチン、ゾニサミド、プレタール🄬は明らかに悪く作用しているため中止。抑肝散も全く役にたっていないため中止。
※パーキンソン運動症状に代わりの薬としてレボドパ配合剤ごく少量。レム睡眠行動異常・不眠にクロナゼパムごく少量。八方塞がり苦肉の処方変更。

<2週間後の再診時 >
幻覚・誤認妄想はほとんどなくなりました。夜も眠れているそうです。
日中もしっかりした状態が続いているようです。
姿勢も良くなり、動作も速くなり、覚醒レベルも非常によくて驚きました。
右手のふるえ (静止時振戦)は相変わらずのようです。

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時計描画)
数字は正しい配列で円に沿って12まで書けています。
12→3→6→9の順に書きました。数字間の間隔がまだやや不整です。
長針・短針ともに正確に書けています。
2週間前に比べると別人のように変わっていて驚きました。
時計描画において、ここまで短期間に劇的変化したケースは初めてでした。

<<薬に関する考察>>
今回は、パーキンソニズム優位型のレビー症であり、最初からコリンエステラーゼ阻害薬を使うという選択肢は微塵もありませんでした。
この症例はすでに体軸性の筋強剛と体幹傾斜・姿勢異常が、おそらくロチゴチンによって引き起こされていたからです。
コリンエステラーゼ阻害薬を使う事で、体軸性筋強剛と姿勢異常が顕著に悪化していったケースをあまりにも多く経験してきたからです。
その数々の経験は筆舌に尽くしたいほどの悔しさとして、今でも私の頭に刻まれているからです。

レビー症にドパミンアゴニストは絶対禁忌にすべきでしょう。これだけ微量のロチゴチンですらここまでひどい精神症状が出るのですから。ロチゴチン以外のドパミンアゴニストだとさらにひどかったであろうと推察されます。

ゾニサミドは今年に入って、75歳~85歳の高齢者女性に数例処方しました。レビー症ではなく、パーキンソン病でしたが、結果はすべてNG。
高齢者女性には抑制系の副作用が出やすく合わないようです。

プレタール🄬(シロスタゾール)もやはり、高齢者女性では顕著に頻脈が出現しますが、ここまでひどいのは初めてでした。おそらく心臓がかなり悪いのでしょうか?以前も申しましたが、高齢者の女性はほとんど心不全です。
プレタール🄬は心不全には禁忌です。心不全の上にレビー症やパーキンソン病のために心臓の交感神経が脱落しているわけですから厳しいでしょう。

コリンエステラーゼ阻害薬、シロスタゾールがなくても劇的に良くなる!
これがレビー症という病気が一筋縄ではいかない奥の深い症候群であることの証左でしょう。決してステレオタイプでは通用しないのです。



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# by shinyokohama-fc | 2019-07-27 12:06 | 治療

投薬行為に対する倫理観

「鹿児島認知症ブログ」の「投薬は侵襲行為という自覚」という記事を興味深く拝読しました。
これを自覚している臨床医、患者が果たしてどのくらいいるでしょうか?

投薬をすることで診療をした気になっていませんか?
投薬をされることで診療をされた気になっていませんか?


開業当初、私の投薬が平均よりあまりにも少ないので、調剤薬局の薬剤師から不信がられた事がありました。
この薬剤師は「ポリファーマシー」の処方箋が当たり前の常識だと思い込んでいたのかもしれません。

国民皆保険制度による恩恵?によって、世界的にもここまでひどいポリファーマシーが野放しにされている国は他にないのではないかと思います。

「医療行為(投薬)は生体内に何らかの変化をもたらす侵襲行為である」
「人体という複雑系を扱うことへの怖れを忘れると薬によって患者を傷つけてしまう」


このことを多くの高齢者の患者さん(症例)が嫌というほど教えてくれます。
特に、高齢者女性の増加に比例して増えている、遅発性(Late on set)注意欠陥多動性障害(ADHD)やレビー小体型(DLB)などがその代表格でしょう。

つい最近も、レビー小体型(DLB)と推定される女性に、シロスタゾールという薬、50~100mg/日を処方し服用してから、ひどい頻脈 (110~120/分)になってしまったケースが2~3例ありました。

特に高齢者女性の場合は「投薬しなかったほうが良かったのではないか?」と思わせるケースが多いように思います。

おそらく昔は「老化現象」として素直に受け入れていたように思います。
近年は「老化現象」などと正直に言うと、反発される事も少なくない。
いつから、ここまで「老化現象」に対して不寛容になったのでしょうか??

高齢者の投薬には、メリットとデメリットを勘案すべきであり、特に慎重にあるべきではないでしょうか?

たとえば、85歳以上の患者にパーキンソン病の治療薬+睡眠導入薬など神経系に作用する薬を何種類も処方・服用するという事が正しいのか?
これが倫理的な医療行為と言えるのか?
自分の頭でもう一度よく考えてみたほうがいいでしょう。


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# by shinyokohama-fc | 2019-07-23 17:13 | 治療

称名寺(浄土律宗・横浜市金沢区)

国指定史跡「称名寺境内」
鎌倉時代の浄土庭園
金沢北条氏の菩提寺

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# by shinyokohama-fc | 2019-07-18 11:16

誤診パーキンソン病

パーキンソン病ではないのに、パーキンソン病だと診断されて、必要性のないパーキンソン病治療薬を長年服用しているケースが非常に多いようです。

パーキンソン病と大病院数か所で明らかに誤診されていたケース、70代の男性が続けて、初診で受診されました。

お2人とも、呂律が回らない話し方で、左右に足を広げて、ふらついた歩き方でした。筋肉はまったく硬さはなく、むしろ柔らかいくらいでした。
ひざ~かかと試験をやってみると、左右のかかとでひざを正確に指すことができず、特に左に強い測定障害、ジャーク運動がありました。

これらの症例ではパーキンソン病の診断基準である、動作緩慢(おそい)、筋強剛(かたい)、静止時振戦(ふるえ)は一切確認できません。
小脳性の運動失調(アルコールを多飲したときに現れるような、しゃべり方、歩き方、手足の測定困難)であり、こんな症状がパーキンソン病で出ることはまずありえません。

実はパーキンソン病の診断は難しく、専門医でも感度80%くらいなのですが、今回の症例に関しては、なぜパーキンソン病と診断されているのか?
どう考えてもまったく理解できないというレベルでした。

我々、神経内科医は、動作歩行など運動症状の方が受診されれば、まずは「パーキンソン病」なのか、それ以外なのか?を見極める所から始めます。

近年は特に、高齢者の増加に伴って、レビー小体型認知症DLB、進行性核上性麻痺PSPのほうが、増えている傾向があるので、「パーキンソン病」ではない事のほうが多い気がします。

学会の提唱する、パーキンソン病を否定する根拠になりうる、除外診断基準を以下に示します。拙著140ページにも書いてます。

1)3年以内に姿勢が悪くなり、転倒を繰り返すようになる
2)5年以内に日常的に車椅子を使うようになる
3)5年以内に尿がもれる(A尿失禁)、尿が出ない(B尿閉)
4)5年以内に立ち上がると血圧が下がる
5)10年以内に首が前後に動かなくなり、腕や足の関節が動かなくなる
6)5年以内にしゃべりにくい(構音障害)飲み込みにくい(嚥下障害)
7)症状の左右差がなく、左右がほぼ同じ(両側性・対称性)

1)2)3A)5)6)7)は進行性核上性麻痺(PSP)
1)2)3A)4)5)6)7)はレビー小体型認知症(DLB)
3B)4)5)6)7)は多系統萎縮症(MSA-P )
6)だけだと脊髄小脳変性症(SCD)
を一般的に疑います。
病気の進行度・重症度は、MSA>PSP>>DLB>>SCD
難しいのが1)~7)に該当しない、皮質基底核変性症(CBS)です。

パーキンソン病では主に手首と足首、次に肘と膝の関節が硬くなりますが、
レボドパの服用で軽減します。逆にレボドパの服用で軽減しなければ、パーキンソン病ではないと国際的診断基準では言われています。

進行性核上性麻痺(PSP)やレビー小体型認知症(DLB)では手や足よりも、
頸部から体幹(体軸)の筋肉が硬くなります。体軸の筋肉の柔軟性がなくなるから、脊柱の側部にある傍脊柱筋が思うように自由に動かなくなり、姿勢が左右に傾斜したり、転倒しやすくなったりするわけです。

典型的なパーキンソン病の患者さんは、レボドパの服用で筋肉の硬さはなくなりますし、個人差はあるものの初期の5~10年は頸部~体幹の筋肉はそれほど顕著に硬くはならないので、姿勢が悪くなったり、転倒したりしないわけです。

今回、受診されたケースは「しゃべりにくい」です。
それも並大抵のレベルではなく、呂律が回らず、ほとんど言葉が正確に聞きとるのが難しいというレベルです。

パーキンソン病では、話し方は小声で単調にはなりますが、呂律が回らないという事はまずありえません。

神経内科であれば、もう少し丁寧に診察してほしいものですが、神経内科の患者さんは病院外来ばかりに殺到しすぎていて、外来医が丁寧に診察する時間も余裕もないのかもしれません。
とはいえ、話し方がパーキンソン病とは全然違うというくらいは気がついてほしいものです。まさか外来で顔を見るだけで会話も交わす時間もないのでしょうか?


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# by shinyokohama-fc | 2019-06-29 12:46 | 医療
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新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


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