診断基準・治療ガイドラインは本当に必要か?

神経変性疾患、認知症関連疾患やパーキンソン関連疾患における、診断基準、治療ガイドラインによるミスリードと
これらを参考にして処方する医者の応用力のなさが目立つようです。薬理学を学習・理解せず、薬による有害事象を予測できず、ステレオタイプ的な思考回路で盲目的にガイドライン(マニュアル)通りの処方をすればいい?何か有害事象が起こっても免罪される?こんな状況では医者ではなく、AI(人工知能)にでもプログラミングして処方してもらう時代もそう遠くないのではないかと思われます。個人的には診断ガイドライン、治療マニュアルというのはステレオタイプ思考を増幅させるだけの誤診・誤処方を誘導するだけのものではないか?という印象すら持ちます。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2016-12-06 18:40 | 医療

PDDでは大脳皮質に広汎なコリン作動神経障害

放射線医学研究所で開発されたMP4A(methyl-4-piperidyl acetate)というPETトレーサーを用いることで、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)による水酸化・加水分解速度定数を直接絶対値で評価することで、脳局所のAChE活性を測定することが可能になったようです。この研究チームはこのMP4Aを用いたPET検査を、パーキンソン病(PD)、認知症を伴うパーキンソン病(PDD)/レビー小体型認知症(DLB)の臨床像を呈する患者に実施して、データをまとめ評価した結果を、2009年のNeurology(米国の神経学会雑誌)で発表しています。
MMSE(認知機能)が低下するほど大脳皮質のAChE活性が低く、コリン作動性神経障害がPDの認知機能に強く関連しているとの結果を得ています。PETの利点は脳内のどの部位でAChE活性が低下しているかを見える化(可視化)できることです。AChE活性は未治療PD、治療後3年以上のPDでは後頭葉の一部限局した範囲にしかAChE活性低下がみられず、PDD/DLBでは前頭葉~側頭葉を含めた大脳皮質の広範囲でAChE活性低下がみられました。マイネルト基底核からのコリン神経経路には帯状回・後頭葉に投射する内側系と前頭葉・側頭葉など広範囲に投射する外側系がありますが、PDD/DLBでは内側系+外側系が障害されている可能性が示唆されました。
千葉大学の神経内科では神経変性疾患における大脳皮質コリン神経系減少率を検討しているようです。PDでは-10%、PDD/DLBでは-20%以上と大きな差があるようです。一方でPSP,MSAでは-10%以下、SCA3/6ではー2%以下だったようです。
米国のBohnenらのグループは、PD,PDDの大脳皮質におけるAChE活性は罹病期間や運動症状の重症度とは相関せず、注意力・遂行機能障害と関連することを示しています。また彼らはPDの転倒イベントと視床のコリン神経系活性の相関性を検討しました。その結果として転倒歴のあるPDでは大きなACh活性低下がみられたという事です。
視床のコリン神経系は姿勢保持・転倒防止に関連し、大脳皮質のコリン神経系は注意力・遂行機能に関連するようです。PDD/DLBでは両方ともコリン神経系の神経障害が進行性のようです。
以前のブログでも取り上げていますが、放射線医学研究所が2012年に発表している、アミロイド沈着を伴うPDD/DLBというのが存在するというものであり、PDD/DLBは病理的に①アルツハイマー+レビーと②レビーという2つのタイプが存在し、①はコリンエステラーゼ阻害薬が無効、②は有効との報告でした。
数か月単位でラッシュな進行性がみられるPDD/DLBという症例がいくつか確認できますが、現存の治療薬などまったく通用しないことがわかります。ドパミン神経だけではなく、コリン作動性神経細胞がどんどん変性・脱落していくような症例にコリンエステラーゼ阻害薬を使ってもまったく通用しないことが、症例を通じてよく理解できます。効果がないばかりか、少量のリバスチグミンやドネぺジル、ドパミンアゴニストでも姿勢異常(首下がり、腰曲がり)が誘発されたり、動作歩行障害が悪化したりするようです。
その一方でPDが発症して15~20年経過している緩徐進行性の症例にはこのような臨床像はみられません。発症22年経過した72歳の女性PD症例に関して、初診時にみられた薬剤性せん妄の要素を解除して実施したMMSEは28点でした。つまりPDという病型では発症後20年以上経過しても認知症はみられなかったわけです。これに似た症例を2~3人診ていますが、やはり転倒歴はほとんどなく、注意力・遂行機能は維持されています。これらの症例ではおそらくMP4A/PET検査ではコリン作動系神経障害はかなり限定的なのだろうと思います。
こう考えていくと、アミロイド沈着を伴うPDD/DLBは、非常に悪性度の高い疾患群であり、原則的に経過が非常に緩徐・良性で非進行性のPDやDLBとは同じスペクトラムにあるとは言い難いです。臨床的には以下のように分類されるのではないかと思います。
(1)パーキンソン病・純粋型(PD);ダットスキャン軽度~中等度異常、 アミロイドPET正常~軽度異常
経過は非常に緩徐で良性、15~20年長期に経過しても中等度以上の認知症、重度の精神症状はきたさず、薬物処方過剰などの外的要因を除外すれば、日常生活動作に関する遂行能力と注意力は維持される。転倒は少ない。
パーキンソン治療薬の調整によって運動機能も比較的維持される、長期経過してもレボドパは有効である。
(2)レビー小体型認知症(DLB);ダットスキャン高度異常、 アミロイドPET正常~軽度異常
経過は非常に緩徐で良性、薬物選択を慎重に選べば、良好にコントロールでき、日常生活動作能力も維持される
(3)アミロイド沈着型・パーキンソン型認知症(PDD/DLB) ;ダットスキャン高度異常、アミロイドPET高度異常
高度の姿勢異常や転倒が多く、遂行能力・注意力は著しく阻害され、幻覚や妄想などの精神症状も強い場合がある。様々な薬物処方に対して少量でも有害事象が出現するが、レボドパ含むパーキンソン治療薬、ChEIなどは効果は全くないかあっても一時的で月単位で進行速く、多くは歩行不可となり、介護困難で入院や入所の対象になりやすい
パーキンソニズム(運動障害)、認知機能低下、精神症状がいずれも著しく、薬物コントロールがほとんど不可能なのが、(3)だと思われます。臨床経過と病状の重症度からPSP-RSに類似しています。ドパミン作動神経とコリン作動性神経の障害が重度であるため、ほとんど既存の薬物治療が通用しないようです。パーキンソニズム(運動症状)で発症するか、認知機能障害で発症するか、精神症状で発症するかの違いはあれども、最終的にはどれも重症になります。それに比べて(2)はパーキンソニズムがあったとしても薬剤性の要因を除外すればかなり軽度で、パーキンソン治療薬を全く必要としないケースも少なくないです。よく診察しないとわかりにくいようなレベルです。(1)はレボドパなどでパーキンソニズムはかなり軽減できます。臨床的には(1)(2)と(3)は全く別の疾患だと考えたほうがよいのではないかと個人的には思います。一般的にPDDと診断される疾患群は(3)であることがほとんどのようです。
一般的に(2)を臨床医が診断するのは相当難しいと思われます。動作歩行障害が目立たないので多くはうつ病など精神疾患とされています。幻覚(幻視・幻聴)や妄想を訴える場合もありますが、これらは(2)に特異的な症状ではなく、非定型ATD,FTD/SD,CBSなどでも高頻度にみられます。幻覚・妄想の発症部位は単一ではないからですし、高齢者の場合は様々な薬剤によっても幻覚(幻視)は容易に誘発されます。個人的には幻覚(幻視)というあまりにもありふれた症状をDLBの診断基準から除外すべきだと考えています。幻覚・妄想よりもむしろアパシー、アンへドニア、抑うつなどがDLBらしさなのではないかと考えます。パーキンソン治療薬が一切入っていない状況で診察すると、わずかに左右差のあるパーキンソニズムが確認できます。多くはドパミン阻害剤(抗精神病薬かChEIなど)によってパーキンソニズムが顕性化しますが、原因薬剤を減量・中止など修正すれば容易に軽減します。
私自身も(2)正確に診断する自信はありません。パーキンソニズムもアパシーもない幻覚症例を何人かダットスキャン検査を依頼しましたが、予想通り正常でした。近年はDLBの過剰診断が拡大生産されている状況のようです。
その一方で、PDに対するドパミン作動性薬剤の過剰投与によってPDD/DLBが拡大生産されています。多くの場合はドパミン作動性薬剤を一切整理することなく、ChEIが追加されます。こういうケースはPDD/DLBでもなんでもなくて、ただの薬剤カスケードにすぎないので、一時的にはChEIは有効かもしれませんが、またすぐに別の問題が出てきます。終わりなき有害事象悪循環の罠(袋小路)に迷入してしまうのです。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2016-12-02 12:33 | 医療

ドパミントランスポーターシンチグラフィー(ダットスキャン)の意義

ダットスキャンはパーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)の診断目的で現在は保険適応になっている検査です。PD,DLBとそれ以外を鑑別する目的とされてます。McKeithらが作成したDLBの診断基準では支持項目になっているようです。しかし最近わが国では、幻覚(幻視・幻聴)がある高齢者は全部DLBと診断しようという動きがあるようです。つまり「高齢者の幻覚=DLB」というのが、認知症専門医の共通認識のようです。
私は神経内科医ですが、パーキンソニズムが確認できる認知症を伴うパーキンソン病(PDD)という臨床像というのは理解できるのですが、パーキンソニズムを伴わないDLBという臨床像がよくわかりません。前医(認知症専門医)では幻覚があればDLBにされているからです。しかし実際に私の診断では薬剤性のせん妄が最も多いようです。比較的多いのは泌尿器系の過活動膀胱に使用される抗コリン剤です。抗生物質や抗インフルエンザ剤の内服は1週間以内ですが、一時的に幻覚が出る場合が多いようです。より深刻なのは、オピオイド系の鎮痛薬(トラマドール)単独、あるいは神経系鎮痛薬(プレガバリン、デュロキセチン)との併用で長期に内服したケースです。さらにパーキンソン病の治療薬の過剰投与でも、幻覚は容易に出現します。私が診ているPDの患者さんでも、レボドパ/ベンゼラシド150mg+セレギリン5mgにトリへキシフェニジル2mgを追加した70歳女性のケースや、レボドパ/カルビドパ300mg+ロピニロール8mg増量した73歳男性のケースは、ごく軽度ですが、幻覚を訴えました。PDの患者は元々ドパミン作動性薬剤によってドパミン受容体を刺激しているため、受容体の過敏性があり、幻覚が出やすいようです。他の神経内科医は「幻覚がでたらDLB化だ」と早計に誤診して、ドパミン作動薬の見直し減量などをまったく検討せずに、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネぺジルがほとんど)を安易に処方したがる傾向にあります。日本神経学会の作成しているガイドラインにも大いに問題があると思います。これを「薬剤カスケード」「ポリファーマシー」と言います。これまで、この処方パターンで病状がよくなったという声をほとんど聞いたことがない。高額な薬剤を過剰に処方しても患者の病状がよくならなければ、それは「医療費(薬剤)のムダ」に他ならないのです。
ダットスキャンという検査は、脳内の黒質から線条体に向かう神経経路(ドパミン神経)の変性・脱落の程度を評価する検査です。著しくドパミンの取り込みが欠乏している状況は、PDD/DLB,PSP,CBDでみられ、左右差のある軽度~中等度のドパミン取り込み欠乏はPDでみられます。たしかにPDD/DLB,PSP,CBDの鑑別診断には役に立たないので、価値がないのでは?という医者もいます。しかし私はこれらを「線条体ドパミン高度欠乏症候群」として一括した症候群として捉えていいのではないかと考えます。現状では脳内ドパミンニューロンの状況、病気の重症度を反映できる検査は他には存在しません。MIBG心筋シンチグラフィーは脳ではなく、あくまで心臓における自律神経の状態を診ているものです。自律神経不全はPD,PDD/DLBの症例によって差異が大きいと思います。
「線条体ドパミン高度欠乏症候群」では、ドパミンニューロンの変性・脱落が高度ですので、これらに共通しているのはドパミンやアセチルコリンに作動する薬剤がごく少量でも有害反応が出てしまうという事です。PSP、CBDに至っては効果も期待できないので、有害事象で病状が悪化するだけのケースが多いです。レボドパ少量でも眠気や幻覚が出たり、コリンエステラーゼ阻害薬少量でも、首曲がりや腰曲がりなどの姿勢異常が出てしまうのです。ドパミン高度欠乏(枯渇状態)を証明する検査として価値が大きいと考えています。
他には心因性パーキンソニズム、アルツハイマーの非典型型、ピック系(意味性認知症など)の除外診断をするのに必要だと考えています。明らかに臨床的にドパミン欠乏には見えないのに、「幻覚があるだけでDLBだ」と誤診されるケースが後を絶たないからです。「前医の診断を否定するための検査」として使うことが少なくないのです。幻覚の原因を臨床的に正確に評価できず、安易に「DLBだ」としてしまう臨床医があまりにも多すぎるからです。臨床医として、あまりにも短絡的でステレオタイプ的な思考回路としか言いようがないです。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2016-12-01 19:07 | 治療

アルツハイマー型認知症とメマンチンの再評価

「アルツハイマー型認知症」とはどういう臨床像なのでしょうか?私は認知症ばかり診るような「認知症専門医」ではありませんが、最近になってようやく純度の高い「アルツハイマー型認知症」の臨床像というものが理解できるようになりました。基本は除外診断に尽きるということです。
「アルツハイマー型認知症」では記憶・見当識・実行機能・注意障害などが3~4年単位で進行するため、ほとんどが仕事ができなくなります。日常生活動作も家族の援助がないと難しくなり、援助が得られない環境にいるケースでは早々にグループホームなどの世話になるしかない事になります。
「行動心理症状も精神症状も動作歩行障害もない、一見普通の人にしか見えないけど、日常生活動作が自立困難な認知症」それこそが典型的な「アルツハイマー型認知症」であり、発症年齢は55~75歳あるいは60~70歳が大半だと思います。そもそも発症年齢を同定するのはほぼ困難ですが、周囲が異変に気が付いた年齢というべきでしょう。そのため感度に大きな誤差が出ます。70歳を超えると純度が減少します。いわゆるレビー病理やピック病理が混在することによって、パーキンソン、グレイン、脳血管性などの要素が混在してくるので、アルツハイマーの純度は減少しておそらく50%くらいになると思います。75歳を超えると、グレイン(AGD)やPART(SD-NFT)のようなアミロイド無関係のタウオパチーの比率が増えてくるので、アルツハイマーそのものが減少してきます。たとえアルツハイマー病理が死後に確認されても、実際は本来のアルツハイマーとは大きくかけ離れた臨床像の症例ばかりになってしまいます。80歳以上ではやく半数を占めるのが、グレイン(AGD)と言われています。これはFTLDに似た臨床像で行動心理症状が前面に出ます。その一方でほとんどは日常生活動作は自立しています。
成書によると、病理的に「アルツハイマー」でも、臨床的には視空間失認や失行が強い、大脳皮質基底核変性症候群(CBS)をきたすタイプや、幻覚・妄想などのBPSDが強く出現するタイプ、前頭葉に病変が強く脱抑制が目立つタイプが存在するようで、私の外来においても非典型例がいくらか存在します。その多くは50~70歳と比較的若年者ですが、やはりこのような非典型タイプにおいては、コリンエステラーゼ阻害薬+メマンチンの標準的薬物処方は通用しないようで、たびたび奇異反応や副作用を起こすのではないかと思われます。
脱抑制、精神症状のない典型タイプでは、発症後7~8年経過して、簡易テストがほとんどできなくなった、FAST6レベルでも、メマンチンは10mgで有効でした。ガランタミンのみで2年継続してきましたが、病状が進行してアパシーで不活発になっていたケースではこの薬のおかげで活気を取り戻せたようです。
認知症を数多く診ている医者の中で、コリンエステラーゼ阻害薬ばかりを評価して、このメマンチンをまったく評価していない方々がいるようです。確かに高齢者に使うと軒並み眠ってしまったり、せん妄になったりするケースも多いので、「頭が悪くなる薬だ」と決めつけている医者も多いようですが、私はそうは思いません。たぶん多くの認知症専門を自称する医者は、コリンエステラーゼ阻害薬・ファーストの価値観が抜け切れていないのではないかと思います。以前から言っているように、この薬は単独で使用してこそ効果を発揮する薬剤だと思っています。コリンエステラーゼ阻害薬のフルドース(ドネぺジル10mg、リバスチグミン18mg、ガランタミン24mg)と併用するように指導している指南がこの薬の価値を貶めているのです。
純粋型のアルツハイマーの中等症~重症にとっては大変貴重な薬剤だと考えます。またコリンエステラーゼ阻害薬の副作用の多さ、リスクの高さを考えると、使いにくい症例が非常に多いのが現実です。コリンエステラーゼ阻害薬が使えない、発症して5年以上経過した症例にはメマンチンが有用ではないかと思います。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2016-11-22 18:56 | 医療

65歳。ガランタミン4+4でも心停止寸前!

これから紹介する症例は、当院へ受診する前のイベントですが、正直言って衝撃的でした。コリンエステラーゼ阻害薬においては他の薬剤よりもアセチルコリン賦活作用が1/8~1/10とも言われている、ガランタミン。しかも4+4mgでの少量での使用。しかも65歳の症例です。
約1年前からカギを無くすなどのエピソードがみられ、今年から病院のメンタル科に通院。意図は不明だが、通常量よりも少ない、4+4mgで処方継続されていました。独居だったので、日常の状況が不明でしたが、1~2か月前から長女宅で同居するようになってから、食思不振、倦怠感がみられ、嘔吐~意識消失を3回繰り返したとのことでした。3回目の救急搬送で、薬剤性(ガランタミンによる)QT延長症候群との診断名でした。忙しいさなかに救急担当医によってメンタル科宛てに書かれた情報提供書の要約を以下に示します。
●月●日●時ごろ、外出先で椅子に座っていたところ、突然嘔吐して意識消失(5分前後)し、救急要請。
救急隊到着時は、意識レベル1-10、脈拍40/分、血圧測定困難、SpO289%、呼吸数18/分、体温36.0℃
病院到着時は、意識レベル1-10、心拍数47/分、血圧 101/61(測定可能)
心電図にてQTc 0.567!! 血液検査で、低カリウム血症(2.8mEq/l)を認めました。
2回目の搬送時に循環器科で精密検査を実施、心臓カテーテル検査・心臓エコー・ホルター心電図を実施しているが、器質的な心臓疾患は確認できませんでした。
ガランタミンによるTorsade de pointes(Tdp)疑いとの事でした。意識消失時にECGが記録できていれば、おそらく
Tdpに特徴的な波形が確認できたかもしれませんが、実際は入院中にイベントが起こらないと難しいでしょう。
この症例においては、このイベント後にガランタミンは中止されて、2週間後に当院を初診されましたので、ECGを実施したところ、QTcは0.471に戻っていました。次回再検査すれば0.45以下になってるかもしれません。
ガランタミンの場合は、ドネぺジルよりも薬剤半減期がかなり短いのが、不幸中の幸いになります。リバスチグミン場合は貼付剤なので、剥がせば薬剤の影響はなくなると言われています。
高齢者でTdpを確認した場合は、房室ブロック、洞不全症候群、高度徐脈、低カリウム血症、QT延長をきたす薬剤などの有無を確認する事が必要とされています。
心筋細胞のイオンチャンネルに関連した遺伝子変異が、QT延長症候群の60~70%に同定されます。カリウムチャネル遺伝子変異の場合は、チャネル機能低下により再分極に時間がかかりすぎることが原因と言われています。
私個人の経験で言うと、ChEI内服中の外来受診時のECGにおいて、房室ブロック、QTcの延長、高度徐脈、洞不全などを確認した事がこの2年で10件ほどあり、慌ててChEIを中止しました。リバスチグミン低用量でも起こった事例がありましたが、多くは通常用量だったと思います。本来なら血液検査で電解質測定も実施すべきだと思います。
このような心室性不整脈というリスクを冒してまで、ChEIを処方すべき症例なのか?ChEIを処方することによって患者側にデメリットはないのか?メリットは得られるのか?処方する前に塾考する必要があります。
ちなみにしつこいようですが、抗精神病薬との併用はリスクを何倍も引き上げるということをお忘れなく!



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2016-11-21 18:42 | 治療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line