レビー小体病の抑うつ治療薬における問題

レビー小体型認知症、レビー小体病については最近新聞やTVなどマスコミでよく報道されるようになりました。しかし生前は確実な診断法がないというのは他の変性疾患と同じであり、MIBG心筋シンチグラムというアイソトープを使用した高価で人体に侵襲的な検査ですら、糖尿病や心疾患など他のファクターによる偽陽性が含まれたり、病理診断例のうちの2割が偽陰性であったという報告されているようです。また高齢者の場合はアルツハイマーや嗜銀性顆粒球症など他の疾患との混合も少なくないようなので、実際の臨床診断としては「大脳皮質基底核変性症候群(CBS)」と同じように「レビー小体症候群(LBS)」としたほうがいいのかもしれません。
LBSに関してはレム睡眠行動障害(RBS)や抑うつ状態が何年も前から先行することが多いと言われています。55歳を超えてからの抑うつ状態であれば、LBSを疑えという意見も老年精神医学ではよく言われていることです。ただしLBSの抑うつが通常の抑うつとは違うのは、SSRIなどの各種抗うつ剤や抗精神薬が効果がみられない事がほとんどだという事実です。同じαシヌクレインの疾患であるパーキンソン病(PD)の抑うつ状態の治療薬にも同じ事が言われます。PDの抑うつ状態の治療薬としては一般的にドーパミンアゴニストが推奨されていますが、この薬剤は用量依存性に幻覚や嗜眠を誘発しやすいのが最大の欠点です。それゆえもともと幻覚・嗜眠が出現しやすいLBSには使用しにくい薬剤です。現在頻用されている非麦角系のドーパミンアゴニストはプラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチンの3剤ですが、前2者はD2受容体親和性が強い影響で幻覚・嗜眠が悪化しやすい傾向にあります。それゆえロチゴチンを使う事になるのですが、薬剤等価換算表によるとかなり少ない用量で使用しないとやはり用量オーバーで幻覚・嗜眠が悪化するようです。私の経験では4.5mgでも悪化した事例が2~3ありました。他にはレボドパ配合剤の用量を少なくするというのも幻覚・嗜眠を悪化させないための有効な方法です。一般的にはパーキンソン病の通常量である300mgの半分の150mgくらいがいいのではないかと考えます。50mg錠剤を使用して細かく用量調節ができるような工夫が必要でしょう。私も20~25例程度のLBSの患者に投薬して経過をみていますが、実際は薬剤調整がなかなか難しいケースが多いというのが実情です。


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# by shinyokohama-fc | 2014-12-04 19:09 | 治療

古いクスリだから安全とは限らない

「古い薬は臨床現場で長年残っているのだからきっと安全だろう」私はそう信じていました。
しかし私も含めて内科医・神経内科医によく使われているあの薬が、まさか...という事実が続出しています。
すでに今年の2~3月にある雑誌で発表されたドンペリドンに関する心臓不整脈と突然死のリスクです。
QT延長症候群と心臓不整脈を1.6~3.7倍も起こりやすいと報告されています。欧州ではドンペリドンによる心臓突然死がいくつも報告があり、20mg錠剤・10mg/60mg坐剤は今後使用禁止・販売禁止を検討すべきと欧州医薬品庁PRACは勧告しています。なお代替薬剤としてはメトクロプラミド、プロトンポンプ阻害剤が推奨されています。
内科であれば悪心・嘔吐などにきわめてよく処方する薬で、一般的に向精神薬だという認識が乏しいようです。
神経内科の分野でもわが国ではでは片頭痛随伴症状の抑制目的やパーキンソン治療薬の副作用制御目的で学会ガイドラインで奨励されている薬剤です。名前がリスぺリドン(統合失調症のみに限定的に使用される非定型第2世代向精神薬)に類似している同類の薬剤であり、心臓不整脈・突然死に関してはリスぺリドンと同様のリスクがあるという事です。
その他にも主としててんかんの予防薬として長年使用されてきた薬にも重篤なリスクがある事が判明しています。
てんかん予防薬として長年使われてきた、フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピンです。
これらの薬剤が肝臓での酵素誘導作用が非常に強力であるため、他の各種薬剤の代謝を促進するというのは古くから知られてきたことですが、同様に生体内の酵素の代謝も強力に促進するために、骨粗しょう症、動脈硬化性疾患(冠動脈疾患、脳血管疾患など)の発症が8倍以上にもなると報告されています。てんかん予防薬というのは何年にもわたって長期内服するために与える有害性が大きいのでしょう。わかりやすく言えば、てんかん予防薬を飲み続けることによって血管や骨などの老化が人一倍進行するということです。
カルバマゼピンに関しては重症薬疹や重篤な血小板減少症などを経験した事があり、非常にリスクの高い薬だという認識でしたが、長期内服により小脳変性症も起こすと言われています。実際に50~100mgの少量でも平衡失調の副作用が出ます。てんかん以外にも三叉神経痛などにも広く使用されてきましたが、どうしてもこの薬でないと効かないという方以外にはもはや第一選択で使うべき薬とは言えないでしょう。やはり新規てんかん予防薬である、ラモトリギンとレベチラセタムの使用が推奨されていますが、わが国では前者がようやく先月に単独使用可能になったばかりで、この2種類の薬剤は長年にわたって単独使用が認められていませんでした。
パーキンソン治療薬のドーパミンアゴニストの古いタイプ、麦角系も10年前までは臨床現場でよく使用していましたが、心臓弁膜症、肺線維症のハイリスクが報告されてからは、非麦角系に代用されるようになりました。
またこの麦角系ドーパミンアゴニストは新たに悪性腫瘍発症リスクも報じられていて、おそらく今後は衰退していく流れにあると思われます。
わが国の薬の情報は非常に遅れているなという印象です。
現在まで頻用されているCHE-I(コリンエステラーゼ阻害剤)に関しても、心臓不整脈やてんかん発作など数々の重篤な副作用が報告されているため、かなり厳重に注意して使うべき薬だと思います(以前のブログを参照ください)。


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# by shinyokohama-fc | 2014-11-27 19:02 | 治療

大脳皮質基底核変性症候群(CBS)について

大脳皮質基底核変性症(CBD)はパーキンソン類似症候群として1968年に最初に報告されています。病理学的には4リピートタウの蓄積を示す、タウオパチーの1種とされています。タウオパチーにはアルツハイマー病(AD)、レビー小体病(DLB)、進行性核上性麻痺(PSP)、CBDがありますが、前2者がアミロイドβやシヌクレインが蓄積してからタウが蓄積するのに比べて、後2者はタウのみが蓄積するようです。ただCBDというのは病理的診断であって、その臨床診断としては典型的なCBSの他に進行性非流暢性失語(PNFA)、前頭葉側頭葉型変性症(FTD)、AD,Richardson Syndrome(PSP-RS)などさまざまな形態をとるようです。
臨床的診断名として大脳皮質基底核変性症候群(CBS)とされています。臨床的CBSの死後病理解剖による病理診断としてはCBDの他にPSP,FTD,AD,Prion病なども含まれていて、臨床診断と病理診断を合致させる事は困難です。
特にPSPとは類似したピックコンプレックスとしてカテゴライズされていてしばしばオーバーラップしています。
CBSの中核症状としては左右非対称の鉛管様筋強剛・無動、ミオクローヌス(細かい震え)、他人の手徴候の他に把握反応、皮質性感覚障害、ジストニア肢位(特に上肢が顕著)で早期から歩行障害、体幹姿勢異常(左右の傾き)、構音・嚥下障害、認知症、注意障害、失語症、異常行動、尿失禁などが早期から目立つ事もあります。
臨床神経学的には左右差・非対称性が最大の特徴であり、脳画像検査(MRI/CT/SPECT)でも一側優位性障害が確認される事もあります。上記症状に対してはレボドパなどパーキンソン病薬剤の反応は不良・無効です。
当院で診療したCBSと思われる症例を以下に紹介します。
1) 78歳男性 CBS-FTD
注意障害で初発。前医にてアルツハイマーとの診断でドネぺジル処方されて危険行動・常同行動・易怒が悪化、タムスロシン処方で嗜眠、幻覚、歩行困難などが悪化した。両手の把握反応が顕著で、歩行は開脚性で頸垂れ状態であったが、両薬剤を中止後は劇的に改善したが、体幹傾斜が残る。
考察) 開脚性歩行と把握反応必ずなど前頭葉症状を確認した場合は抗コリン剤とドネぺジルを処方してはいけない。
2) 84歳女性 CBS-PSP
数年前から記憶障害、開脚性の歩行障害感染症による発熱の後に右手の巧緻運動障害(不使用)となり、前医で正常圧水頭症との診断でシャント手術を受けたが悪化傾向、体幹の捻転性ジストニアが顕著で立位保持が不可能となった。
意識は清明だが、デスクの上の物を勝手にさわるなど使用行動がみられ、両手の把握反応も顕著。
考察)上肢の左右差、肢節・体幹ジストニアはCBS特有。運動障害の進行が速いためPSPタイプと推定される。
3) 83歳男性 CBS?
3か月前から自転車運転が危なくなり、平地でもバランス悪くふらつきを自覚するようになった。
開脚性歩行と軽度の体幹傾斜がある。パーキンソニズムなし、認知症なし、行動心理症状なし、小脳失調なし
画像検査;前頭葉~側頭葉外側の萎縮、海馬の萎縮はない。
考察) ごく初期の症状であるが、他の疾患を支持する所見がない、今後の経過観察が重要。
4) 76歳女性 CBS-PA
2年前から右半身の運動障害が顕著。体幹アンバランスで歩行障害、右半身と左半身が常に乖離した様子。記憶・注意障害や思考遅延がみられたが、リバスチグミンが少量で著効。前医でパーキンソン病との診断で抗コリン剤が処方されて意識朦朧状態で動けなくなった。立ち上がる時につかまる必要があるが、平地は何とか歩ける状態。片側性の安静時振戦がみられたが、レボドパが著効して振戦は消失、動作も改善したが、左右アンバランスは不変。
考察)例外的にレボドパ反応性の錐体外路系運動障害が主体のタイプがある。進行は遅く、PDと殆ど変わらない。
5) 71歳男性 CBS-PSP
半年前から歩行障害を自覚したが、前医でパーキンソン治療薬(レボドパやドパミンアゴニスト)を試されたが無効
歩行は開脚性ですくみがみられた。右上肢の巧緻運動障害がみられたが、2~3か月で体幹の傾斜が顕著となり、
独居のため病院へ紹介とした。
考察) 左右差や体幹アンバランスが進行性、運動障害の進行が速いためPSPタイプと推定される。
6) 73歳女性 CBS-PNFA/CBD
数年前から言葉が出にくくなり、自転車で転倒して乗れなくなる。2年前から動作歩行が緩慢となり思考遅延や注意障害も顕著となった。前医でCBSと診断。レボドパを2年処方されているが効果は不明。1年前から動作歩行が悪化して短文も話せない。最近は後方に転倒しやすくなった。表情は明るいが、ほとんど話せず、左半側空間失認が顕著で、半身態勢で体を横にして歩行してしまう。右上肢のみ鉛管状筋強剛、体幹は大きく右へ傾斜。動作は緩慢。
転倒による頭部打撲により脳室内出血に至ったが、奇跡的に回復されてからも平地は介助なしで歩行。
考察) 運動障害の進行が遅く、失語症と視空間失認など大脳皮質症状が顕著なCBDらしいタイプ
7) 62歳女性 CBS-FTD-Pick or Prion?
4年前から記憶障害、遂行機能障害、3年前から左上肢のミオクローヌス、転倒しやすい。アルツハイマー?との診断でドネぺジル10mgが処方された後から興奮性となり、メマンチンを追加されて嗜眠状態となり幻覚などが現れてせん妄状態となり、歩行が不安定でさらに転倒しやすくなる。某病院で免疫系疾患と診断されてステロイド点滴・治療をされてから、さらに歩行が困難、体幹の傾斜が強く食事に時間がかかる、1年前に高熱のため入院。ドネぺジル10mgで続行されていた。鎮静剤を同時投与されて急速に悪化しほとんど無動無言状態に至った。最終的に薬剤は整理されて、ミオクローヌスに対する薬剤としてクロナゼパム、バルプロ酸、ニトラゼパムなどが投与されたが、まだ嗜眠状態が強かったため、家族判断で薬剤を減量して嗜眠状態は軽快した。左側空間無視が顕著、左上肢の屈曲にてミオクローヌスが誘発。左右とも把握反応著明、重度失語状態で話せず、強制泣き・笑いがみられる。
考察) 運動障害・精神障害ともに進行が速いが、ドネぺジルとステロイドが病状をさらに悪化させたと推定された。
8) 83歳男性 CBS-AD
数年前から記憶・見当識・注意障害があり、認知症専門医を受診したが、神経内科受診を勧められた。
左半側空間失認 、ベッドに斜めに寝る(再現性あり)、動作緩慢、思考遅延、非流暢性失語、鉛管様筋強剛左右差、
軽度の体幹傾斜、時計描画不可能、図形模写が困難、不正確。表情は明るく朗らか。
考察) 認知症から発症し、行動心理症状なしのタイプ、CBSの高次脳機能症状は遅発性であるのが特徴的
以上のように各症例はそれぞれ経過も進行度もさまざまですが、CBSとしての特徴的所見の存在は共通しています。いずれに前頭葉障害と高次脳機能障害を神経心理学的に正しく評価することが必要です。
上記症例を見てもわかるようにCBSは初期に高次脳機能障害を正しく評価しないと診断できません。医者が評価できないのであれば、言語聴覚士や臨床心理士などを活用して評価できる体制にしたほうがいいでしょう。安易に認知症中核症状=アルツハイマーとしてしまうのは危険です。CBSには抗認知症薬剤、特にドネぺジルとメマンチンには相性が最悪のようなので使用禁忌とすべきでしょう。安易に抗認知症薬を投与する前に、きちんとした神経所見の評価が必要だと感じられました。現存する神経系の薬剤はほとんど効果がないばかりか、むしろ病状を悪化させる可能性が高いと思われますので、できるだけ使用しないほうがよいと考えます。タウオパチーの根治治療として期待できる「タウ凝集阻害薬」の登場が待たれます。


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# by shinyokohama-fc | 2014-10-31 18:47 | 医療

安易に抗認知症薬(コリンエステラーゼ阻害薬)を処方するなかれ

最近は「物忘れ」を主訴に医療機関を受診しただけで、安易に抗認知症薬が処方されるようです。
認知症専門医が外来を実施する医療機関はしばしば「物忘れ外来」という名目で早期の受診を推進しています。
ただ元気で健康な高齢者が増加している現在、後期高齢者(75歳以上)の人は皆さん年齢相応の物忘れがあるのは当然のことです。「認知症」というのは日常生活のさまざまな基本的な事が正確にできなくなる事です。
その前段階と言われる軽度認知障害(MCI)の人も多数おられますが、当然、抗認知症薬の対象にはなりえません。
4か月開けて2度、簡易知能スケール(MMSE)とADL評価尺度(DAD)で認知症では全くない事を確認した82歳男性ですが、4か月前までは、認知症専門医(精神科医)による専門外来で抗認知症薬が処方されていました。この専門医が遠方へ転勤したため当院を受診することになりましたが、どう見ても私には認知症には見えませんでした。MMSEは28~29点で、会話上はまったく頭が冴えている。こういう方に薬が処方されるというのは全く理解できないですし、まったく意味がわかりません。患者を診察しないで適当に薬を出しているとしか思えませんでした。
これまで4か月の間に同じようなケースを何人も見ました。認知症専門医の安易な診断と治療により、本来全く正常域の人が家族に「認知症」扱いされて尊厳を傷つけられたというのもありました。
専門医?の安易な診断と処方が家庭崩壊すら招きかねないという事実を知って呆然とするしかありません。
年齢相応の物忘れに対してこういう薬を専門医が処方しているというデタラメ医療が横行しているようです。またこういう年齢相応~軽度の方で、無理に薬が処方されて嘔吐、下痢、頻尿などの副作用が出て非常に困ったというケースをいくつも聞かされました。正常域の高齢者のアセチルコリン、ドーパミン、セロトニンなどの神経伝達物質の微妙なバランスを薬で無理に崩しているというのはナンセンスです。これは医原病そのものではないでしょうか?
抗認知症薬(コリンエステラーゼ阻害剤)は薬剤によっては強力なアセチルコリン作用があり、高度の徐脈性不整脈や虚血性心疾患などが誘発されると書いてあります。わたしも30~35回/分の非常に危険な徐脈性不整脈の副作用が出たケースを2~3例経験しています。薬剤を中止してからも1~2か月続いたため大変困りました。
また易怒性や興奮性をきたすケースも多いようです。薬によって興奮させた患者に対して抗精神薬(統合失調症の薬)を使うという、デタラメでマッチポンプ的な処方もよく見かけます。神経に作用する薬剤というのはすべて劇薬で、一歩間違えば用量が増えるとオーバーランしてしまう薬ばかりですので、厳重な注意と監視が必要なのです。
年齢相応や軽度の「物忘れ」だけで安易に抗認知症薬(コリンエステラーゼ阻害剤)を飲むことのないようにしたいものです。


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# by shinyokohama-fc | 2014-10-23 18:50 | 治療

多系統萎縮症(MSA)について

多系統萎縮症(MSA)について、私自身の臨床経験を基に解説したいと思います。
MSA-C(かつてオリーブ橋小脳萎縮症・OPCAと呼ばれていた)は進行性の小脳失調をきたす脊髄小脳変性症(SCD)の1型とされていていて、あくまでSCDの亜型と考えられていました。しかし、進行性のパーキンソン症状(錐体外路症状)をきたす線条体黒質変性症(SND)や進行性の自律神経症状をきたすShy-Drager症候群(SDS)と類似した病理所見が確認されて1969年に多系統萎縮症(MSA)という包括した病名が発表されました。1998年~99年にかけてMSAの診断基準が発表され、その後難病申請の診断書もSCDやパーキンソン関連疾患とは区別されるようになりました。
多系統萎縮症というのは正確には「進行性多系統神経系機能障害」と言うほうが適切です。発症年齢は35歳~80歳と幅広く、男性が8割程度です。一般的には50歳~65歳の発症が多いという印象です。①自律神経症状 ②錐体路症状(痙縮)③錐体外路症状(固縮)④小脳失調の4つが主な症状で症例により差がありますが、最も重要な症状は自律神経症状であり、程度の差はあれどのタイプでも必発の症状だと言われています。
MRIやCTの画像診断では異常が現れないので、忙しい医療機関の外来では問診や診察が不十分でケースが正しく評価されないケースが多いです。睡眠時のいびきや無呼吸の有無を聞いたり、排尿状態を聞いたり、失神や立ちくらみの既往を聞いて、ベッドサイドで起立性低血圧の程度くらいは最低確認すべきでしょう。MSAに関しては初期から40~50mmHg程度の収縮期血圧低下は珍しくなく、中期以後になると70~80mmHgの低下、立位血圧が50~60mmHgでも失神を起こさなくなるのでかえって恐ろしいです。自律神経症状は進行性で非常に強く、薬剤治療に抵抗性ですので最も苦しめられる症状です。特に顕著なのは便秘と排尿障害であり、排尿障害は早期から導尿か尿カテーテル留置が必要になります。また体温調節障害・発汗障害による連日性のうつ熱性の発熱(37~38℃)、難治性の褥瘡、睡眠時無呼吸、喉頭喘鳴なども起こります。血圧・体温・呼吸のコントロール不能により突然死の転帰が多いと言われます。
特に自律神経症状が強いのはSDS(Shy Drager症候群)で、度重なる高度の脳血流低下を反復するため、物忘れなど認知症症状が強くなると言われています。つまり二次的な虚血性認知症が起こりやすい状況にあり、中期以後では慢性的な脳血流低下に伴い、側脳室周囲の白質変化や前頭葉~側頭葉の萎縮が目立つケースも少なくないようです。
初期~中期はMRI/CT検査で脳幹・小脳萎縮が目立たないケースも多くて、多くが見逃されています。MRIの脳幹のクロスサインや被殻外側のスリットサインも必ずしも必発ではなく、古い型のCTだと脳幹・小脳の画像診断が困難なことが多いようです。また見た目の動作・歩行障害という印象から、「パーキンソン病」と診断されて、レボドパなどのパーキンソン治療薬が処方されているが効果が今一つというケースが多いようです。しかしレボドパには強い依存性があるので一度長期投与されると効いた気になってしまうため中止できないという事が往々にしてあります。ドパミン作動薬に関しては一部の症例で有効性があると報告されていますが、いずれも適応外の使用になります。
筋肉の硬さ(トーヌス)に関しては多くの症例では上肢では正常より低下(小脳失調のため)、下肢では正常より亢進(錐体路症状のため)していて、診察では折りたたみナイフ現象や深部腱反射亢進、病的反射(Babinski反射)の確認は必須です。MSAが歩けない理由は1つではなくて、小脳性運動失調以外にも高度の低血圧による脳血流低下、下肢痙縮(筋肉のつっぱり)と固縮による関節の屈曲制限、姿勢反射障害など多岐にわたります。それゆえ比較的早期に歩行困難に至るようで、この点が小脳性運動失調以外の運動阻害因子がなく何年経過しても杖歩行で通院が可能なLCCAやSCA6とは全く違うのです。さまざまな神経所見がオーバーラップしており、この病気の診断にはベッドサイドの診察において上で述べたようないかに神経学的所見を正確にとれるかが最大のポイントになります。いずれにしても
安易にCT/MRI画像所見だけでは診断できない疾患であることを特に強調しておきたいです。
このたび難病医療費助成制度の変更により、神経難病の新規申請には都道府県の指定した「難病指定医」による診断書の記載が必須となりました。ぜひ当クリニックへご相談ください。


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# by shinyokohama-fc | 2014-10-20 12:47 | 医療
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