釣藤散の抗認知症作用

「Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol 39 No1 2015/p36~37/釣藤散の抗認知症作用」から以下引用
富山大学和漢医薬総合研究所 複合薬物薬理学教室
当研究室では脳血管性認知症(VD)およびアルツハイマー型認知症(AD)モデル動物を用いて、コリンエステラーゼ阻害薬(タクリン)と比較し、釣藤散の薬理学的効果と作用メカニズムの解明を進めてきた。その結果、釣藤散は認知行動を改善し、学習記憶障害を予防改善し、情動障害を改善する事が明らかになった。ADおよびVDの治療ではコリン作動性神経の伝達を促進する事が有用とされる。既存の抗認知症薬ではコリンエステラーゼ阻害作用を有するが、釣藤散はムスカリン性M1受容体刺激によりコロン作動性神経を活性化した。ここから釣藤散の学習記憶障害の予防および改善作用はムスカリン性M1受容体への直接刺激が関与し、これには構成生薬の釣藤鈎が主要な役割を果たしていると考えられた。大脳皮質や海馬におけるNMDA受容体は学習記憶に重要であり、脳虚血後の神経細胞死に関与するとされる。既存の抗認知症薬ではメマンチンがNMDA受容体拮抗作用を有し、過剰なグルタミン酸によるNMDA受容体の活性化を抑制するが、釣藤散に含まれる特徴的なアルカロイド成分はNMDA受容体を非競合的に阻害することで興奮毒性を抑制し神経細胞障害を防止した。学習記憶の基本的なメカニズムではシナプス可塑性が大きな役割を担っている。グルタミン酸作動性神経のNMDA受容体とAMPA受容体が重要な働きを担っており、釣藤散はシナプス可塑性に関与する複数のメディエーターを活性化してシナプス機能を改善した。血管内皮増殖因子(VEGF)は血管新生および神経の保護・再生に関与し、学習記憶に関与し加齢に伴い低下するとされる。釣藤散はVEGF系の機能低下を抑制し、神経細胞の保護作用を示すことが示唆されている。認知症はADを中心に論じられる傾向にあるが、その原因は複雑でVD/DLB/FTDと明確に区別する事は難しい。漢方薬は多彩な成分を含み多彩な機序を有する事から、さらなる機序解明とエビデンスの蓄積により、安全・低薬価に認知症治療に貢献することができると考える。

このたび、こういう記事をわざわざ取り上げたのは、医療の進歩による長寿化により、特に女性を中心に80~90歳の超高齢者の急増の実態があります。がん、脳卒中、心疾患、肺炎などの致死的なイベントなく、健康で長寿をまっとうしている高齢女性が増加するのに比例して、さまざまなタイプの認知症が増加しています。しかし超高齢女性の多くは心機能が低下していて不整脈や弁膜症があり、肝臓・腎臓の代謝能力も低下しています。とても通常用量の抗認知症薬(西洋薬)が耐えられないという状況です。こういう人に薬を無理に内服させる事によって患者が悪化するというリスクを負わせるのは避けるべきです。たしかに漢方薬がすべて安全だとは言えません。たとえば甘草が一定量入っている薬では電解質異常(カリウム低下)に伴う浮腫・筋融解などの副作用があります。実例として抑肝散2.5g/日を10日間内服しただけで、全身の筋肉が融解して歩けなくなったという驚くべきケース(85歳女性)もあります。漢方薬では「一般に高齢者では生理機能が低下しているので、減量するなど注意すること」という記載があります。西洋薬にはこのような記載が一切ないという点に違和感を感じています。
高齢者で使用する場合は抑肝散の使用が5g/日で推奨されているように、釣藤散も5g/日という事になると思います。抑肝散よりも甘草の含有量は低いので比較的安全に使えるのではないかと思います。西洋薬神経系薬剤の欠点は配合剤がほとんど存在しない事で、どうしても薬の種類が増えがち(多剤)になってしまう問題がありますので、そういう点では元々配合剤である漢方薬にアドバンテージがあるのではと考えています。


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# by shinyokohama-fc | 2015-06-06 17:19 | 治療

心臓疾患・不整脈のある高齢者にCHE-Iは高リスク、慎重投与・厳重観察が必要

CHE-I(コリンエステラーゼ阻害薬)という薬は、患者が物忘れを外来で訴えれば、60歳でも90歳でも安易に外来で処方されているのが現状のようです。個人的に「物忘れ外来」というネーミングが好ましいと思えない理由は「物忘れ=認知症=薬」という公式が蔓延しているからです。言語聴覚士や臨床心理士を雇って別室で検査を実施できる特別な認知症専門医療機関を除いては、多くの外来診療では一般内科と混在して時間的に余裕のない状況で「物忘れ」患者を医者1人が診ているのが現状です。物忘れの理由はさまざまで、まず本人が訴える場合は、抑うつ状態または軽度認知障害が多いようです。MMSEなどの簡易的知能検査では22~30点程度です。MMSEが高得点でも行動心理症状・精神症状が先行するFTDやDLBのような疾患もあります。年齢が80歳を超えていれば年齢相応・加齢性変化との区別が難しくなります。他にも甲状腺機能低下、ビタミン欠乏、側頭葉てんかんに伴う健忘症、水頭症、様々な身体疾患に伴うせん妄など、認知症(ATD)以外の原因を慎重に推察する必要があります。しかしそのための十分な問診の時間を確保するのが難しいようで、そのような適応を十分検証することなく免罪符的に初診時からCHE-Iが処方されてしまうケースも少なくないようです。逆に行動心理症状が顕著にもかかわらず、外来でのMMSEが高得点で画像検査でも有意所見がないから「認知症」ではないと言われるケースも多いようです。ともあれ体格の大きくない超高齢者(80~90歳)にもCHE-Iが数多く処方されて、様々な副作用が出現するケースが多いようです。
CHE-Iは中枢神経内において効果を生じるのが主たる薬物動態ですが、中枢神経以外においても自律神経系におけるコリン賦活作用がしばしば問題を起こします。消化器系における副作用、消化管運動を亢進させて下痢・嘔気を誘発しやすい、唾液分泌が亢進して流涎(よだれ)をきたしやすい、泌尿器系を膀胱運動を亢進させて頻尿を誘発しやすいというのはよく知られています。特に高齢者に対して高用量のCHE-Iが使用されている場合はほぼこのような副作用は必発です。しかし案外知られていないのは、循環器系の副作用です。実際よくみかけるのは徐脈であり、30~40/分の高度徐脈の症例をみて肝を冷やした事はこの5年で6~7回程度経験しました。実際薬の使用上の注意として、洞性不整脈、狭心症・心筋梗塞の既往がある場合は慎重投与とされています。個人的には75歳以上の心疾患のある方には初めからCHE-Iを処方しないという選択をします。また高齢者は心疾患に伴う胸部自覚症状が乏しい事が多いため心疾患(不整脈)の存在を認知されていないケースが非常に多く、実際ECG検査をしたら高度のQT延長(0.5s!)というケースもありました。こういう症例に高用量のCHE-Iを処方したらどうなるか。考えただけで恐ろしいです。
海外の「Drug&Aging」という医学雑誌今年の5月15日号では英国の大学教授により「現在使用されているCHE-IとNMDA受容体アンタゴ二ストは効果があっても1年まで」という発表があったようです。おそらく抗認知症薬の必要以上の乱用を心配してのものだと思われます。先日のブログにも書いたようにCHE-IやNMDA-RAには行動心理症状を抑制するという作用もありますので、現在高齢者に処方されているCHE-Iがすべてムダとは思えませんが、必要に応じて副作用の出現しない範囲に留めるべきでしょう。特に心臓の副作用というのは生命にかかわります。薬の副作用で心臓が止まるという事がないように細心の注意を払う必要があります。これまで高度徐脈に気がついたケースは私自身が外来診療で気がついたのではなく、介護者による日常の血圧・脈拍測定が契機となりました。危険な副作用の発見には介護者の日々の観察が欠かせません。昨今は高齢者・認知症に対する抗精神薬の心臓副作用が学会などで問題視されているようですが、CHE-Iに関しても症例や使い方(用量)によっては抗精神薬と同程度のリスクがあると感じています。抗精神薬は危険でCHE-Iは安全という話ではなく、心臓副作用リスクというのは双方にあり、それは用量依存的に増加するという事だと思います。


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# by shinyokohama-fc | 2015-06-04 09:51 | 治療

ドーパミン補充・賦活薬が起こす前頭葉症候群の悪化

パーキンソン病の治療薬はドーパミン補充療法を含めてすべてドーパミン賦活作用があります。パーキンソン病について記載している教科書には以下のような治療薬によって引き起こされる諸問題が記載されています。パーキンソン病の治療薬に関する知識が乏しい医者がたくさんいて、この事を全く認識しておらず、動作歩行障害がある患者には誰でも彼でも「とにかくパーキンソン治療薬を処方しておけばいい」と考えている医者があまりにも多いようです。パーキンソン治療薬によって起こる以下の諸問題は、主としてパーキンソン病を長年罹患してるがために、比較的若年時から治療薬を長期(5~15年)に内服した事によって起こるといわれていましたが、最近は若年性FTD,PSPS,CBS,など前頭葉型DLBなどいわゆる前頭葉症候群のグループのフロンタル・パーキンソニズムと思われる動作歩行障害に対してもパーキンソン治療薬が使われることにより、薬剤誘発性に脱抑制や常同行動などの前頭葉症状が悪化している症例が散見されるようです。
1)衝動制御障害 (Impulse Control Disorder)
衝動や欲望を抑えられずに、本人または他人に危険な行動をしてしまう現象。病的賭博、病的買い物、病的摂食、病的性欲亢進などが主として挙げられるが、DSM-Ⅳには窃盗、放火などの犯罪的行動異常も挙げられている。ドーパミン受容体刺激薬の使用が契機になりやすい。
2)ドーパミン調節異常症候群 (Dopamine Dysregulation Syndrome)
レボドパやドーパミン受容体刺激薬を必要以上に欲しがる傾向があり、薬によってドーパミン特有の快感が得られる。報酬系を司どるmesolimbic systemの過剰興奮と推定されている。レボドパの使用が誘因になる傾向にある。
3)Puding
複雑で常同的な行動である。細かいものを集めたり整理したり、引き出しの中のものを入れたり出したり、歩き回ったり(周遊)、これらの常同的行動が強迫的でやめられない状態になり、周囲が無理に止めようとすると激怒したり、暴れたりする傾向にある。必要以上のドーパミン補充療法が衝動性を亢進すると言われている。
これら1)~3)の諸問題は、一般的にパーキンソン病においては若年発症で、性格傾向のある、治療薬内服期間が長期にわたる症例が多いと言われています。
個人的な見解を言うと、純粋なPD(パーキンソン病)にはレボドパやドーパミン受容体刺激剤などの治療薬は生活水準・QOLを向上するためにある程度は必要だと思います。ただし必要以上の高用量・多剤併用などの過剰な治療薬の使用には反対です。特に70歳以上の高齢者の場合はむしろ投薬を過剰にすると逆に動作歩行レベルが悪化する症例のほうが多いという印象です。パーキンソン治療薬を減らしたら動作レベルが劇的に改善したというケースはPDDやDLBのような薬剤過敏性傾向の症例に多くみられるようです。PD・DLBの動作歩行障害には薬を増やすよりも積極的なリハビリテーションの介入が有効なのは言うまでもありません。私が診ている症例でも80歳前後で積極的にリハビリ・運動療法を実践した結果として、明らかに1年前より動作レベルが向上した症例があります。
若年性FTDでは後期にパーキンソニズムが出現しやすいというのは前回のブログで書いたとおりですが、この場合のパーキンソニズムは前頭葉起源のものですので、当然パーキンソン病のそれとは性質がまるで違います。若年性FTDはDLB以上に薬剤過敏性の症例が多いという印象です。それはCHE-I、抗精神薬、パーキンソン治療薬など神経系薬剤すべてにおいてです。おそらく病気の進行がきわめて速いために、正常な神経細胞が少なくなり、薬剤の作用すべき受容体が正常に機能しなくなっていると推察されます。
50歳で発症した若年性FTDと思われる症例で、発症7~8年目でパーキンソニズムが出現してきたのですが、前医では精神症状の変動とパーキンソニズムと核医学検査の所見からDLBと診断されて、CHE-Iに加えてレボドパ300mgが処方されていました。来院すると、たしかに前傾姿勢ではあるのですが、動作は機敏でパーキンソンらしさは微塵もなく、とにかく座らず、院内を周遊してあちこちの物を触りまくる(使用行動)という状態でした。自宅では易怒・興奮性、脱抑制が顕著という事でした。当然のごとくレボドパとCHE-Iの大幅な減量を提案しました。それで易怒・興奮性は軽減したようです。前頭葉障害が末期状態で重度アパシーで活動性が著しく低下していた状態にCHE-Iとレボドパを投入した事により、易怒・興奮・多動とアパシー・無動を目まぐるしく繰り返しているという奇妙な状態に陥っていたようです。これは断じてDLBの認知の変動などではなくて、薬害そのものです。いわゆるピックコンプレックスと呼ばれる前頭葉系のCBSやPSPSという疾患でもここまで極端ではないにせよ、薬剤により前頭葉症候が悪化するという似たような状況を数多く経験しました。
あくまで個人的な見解ですが、レボドパやドーパミンアゴニストのようなパーキンソン治療薬は「パーキンソン病」にはある程度適した薬ですが、それ以外のFTD,CBS,PSPS,DLB(前頭葉障害優位型)など複雑化した症候群に対してはICD,DDS,Pudingのような不都合な結果を招いているケースが多いので、使用を控えるべきだと思います。


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# by shinyokohama-fc | 2015-06-02 19:07 | 治療

ガランタミン vs リスぺリドン・臨床試験

神経内科医の知人から以下の論文を教えてもらいました。要旨(サマリー)のみ以下に紹介します。

「Galantamine Versus Risperidone Treatment of neuropsychiatric Symptoms in Patients with Probable Dementia : An Open Randomized Trial /Yvone Freund-Levi,M.D. et al/Karolinska University Hospital, Stockholm Sweden/Am J Geriatr Psychiatry 22:4, April 2014」
「認知症の神経心理症候に対するガランタミン vs リスぺリドン治療/オープン無作為化臨床試験」
目的)
認知症の認知機能と神経心理症候(NPSD)に対してガランタミンとリスぺリドンの治療効果
方法)
診療所外来で無作為化臨床試験。100名の認知症とNPSDをもつ成人を対象にした。参加者のうち50名にガランタミン8~24mg/日を12週間。50名にリスぺリドン0.5~1.5mg/日を12週間投与。一次的尺度、NPSDに対する効果はNPIにより評価。二次的尺度としてMMSE,CDR,CGI,SASなどで評価。すべての試験は治療前後に実施された。
結果)
結果が受動解析を使って解析され、91%(年齢79±7.5歳、67%女性、NPI 51.0±25.8 MMSE20.1±4.6)が試験を完了した。ガランタミン・リスぺリドンの両者ともNPSDを改善したという結果で、いくつかのNPI項目では同等の効果があった。しかしリスペリドンは重要な項目(易怒・興奮)で優位性を示していた。ガランタミン治療はMMSEで認知機能を基準値より2.8アップさせた。重篤な副作用は確認されなかった。
結論)
これらの結果はガランタミンはNPSDの最初の治療として安全面の点からも推奨される。易怒・興奮に関してはリスペリドンが優れていた。
・NPSD各項目の軽減スコア (G;ガランタミン R;リスペリドン)
①妄想 (G-61/R-67) ②幻覚(G-97/R-83) ③興奮(G-54/R-93) ④うつ(G-60/R-64) ⑤不安(G-76/R-64)⑥多幸(G-57/R-67) ⑦無気力(G-44/R-39) ⑧脱抑制 (G-66/R-86) ⑦易怒(G-40/R-78) ⑧異常行動(G-59/R-85)⑨夜間行動(G-84/R-79) ⑩ 食欲(G-70/R-53)
有意差があった項目は ③興奮・焦燥 ⑦易怒 のみ
・副作用
①心血管障害(G-6/R-10) ②消化器症状(G-7/R-7) ③筋症状(G-2/R-7) ④泌尿器症状(G-6/R-5) ⑤代謝栄養症状(G-2/R-5) ⑥呼吸器症状(G-1/R-0) ⑦皮膚症状(G-1/R-3) ⑧全身症状(G-2/R-0)
全体 G-37/R-45 ※心血管障害・筋症状がRで有意に多い

ガランタミンはこの3~4年で200~300例くらい使用してきたと思いますが、副作用で脱落した症例はごくわずかでした。おそらく自験例での脱落症例は肝硬変が1例、遅発性統合失調症疑いが3例くらいでしょうか?この薬で易怒・興奮が誘発される場合は多くはメマンチンとの併用です。どちらか単独にすれば全例治まったようです。ガランタミンもメマンチンもそれぞれ単独で使えばそれほど副作用は多くないというのが率直な印象です。よく言われる消化器症状の副作用例はゼロで、制吐剤を併用する事は全くありませんでした。私の場合はガランタミンを最初に使用する場合は他の神経系薬剤と併用する事が稀だからだと思います。たぶん追加で何か使用するにしてもラメルテオンくらいだと思います。そしてこの薬を使用後に行動/神経心理症候が悪化してきて抗精神薬を追加せざるをえないというケースも稀で、現在は1例のみです。この薬はアセチルコリン、ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニン、GABAなど複数の神経伝達物質に作用すると言われていますので、極端な神経系の副作用がでないのかもしれません。高齢者に薬剤で特定の神経伝達物質を極端に賦活しすぎると必ずと言っていいほど副作用が出現します。この薬は複数の神経伝達物質をうまく調整するという特徴があるので、私としては認知機能を落とさないという目的よりもむしろ行動/神経心理症候(BPSD/NPSD)を制御する目的で使う事が多いように思います。ATDだけでなくbv-FTD(行動障害型・前頭側頭葉型認知症) などの一部症例にも効果があると言われているのは理解できます。
リスぺリドンに関してはドパミン阻害作用が強すぎるのか、高齢者に対しては時に顕著な錐体外路症状(パーキンソニズム)と心不全・不整脈を誘発しやすいという印象があります。自験例で85歳女性で多動がひどい認知症症例を精神科に紹介してリスペリドン2mgが処方され全身がガチガチになってしまった事があります。易怒・興奮には効果があるのでしょうが、連日投与で1~2か月継続するという使い方はあまりにもリスクが高すぎます。過去10年で認知症のBPSD(特に易怒・興奮症状)に対してこの薬が高齢者に対して頻繁に使用されてきた結果として、転倒・骨折・フレイル・パーキンソニズムが数えきれないほど誘発されて寝たきりに至ったケースも少なくないと思われます。本来は「認知症」に対しては適応外使用ですから、リスクについて十分な説明がなされた上で頓用で使用されるべきです。「認知症に抗精神薬は危険」というイメージを作った原因の多くはこの薬の強い副作用にあると思います。
私は以上の自験例を経験した4年前から、この薬を処方する事は一切なくなりました。易怒・興奮症状に対してはチアプリドが効果のある症例が比較的多いという印象です。リスペリドンのような強い副作用もなく、錐体外路症状の副作用も抗精神薬に比べると軽度で全身がガチガチになることはまずなくて減量調整で対応可能のようです。
一般的に神経系の薬剤は非常に使い方が難しく、症例によって薬剤の至適用量や副作用の閾値はまったく異なりますし、薬剤が複数になるとさらにその解釈が複雑化します。症例の特徴を把握してよく考えて使う必要があります。


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# by shinyokohama-fc | 2015-05-25 19:00 | 治療

新潟市と学会の印象

第56回日本神経学会学術大会が、新潟市の朱鷺メッセで今週行われていて、私も参加してきました。昨年の学会は福岡だったのですが、個人的事情でホテルがとれず飛行機の弾丸行脚となったのですが、今年はいつものように1泊2日で、往復は上越新幹線で行きました。飛行機だと気圧の影響で中耳炎になりやすいので、その点新幹線は安心できます。東海道新幹線から上越新幹線への乗り換えは意外にスムーズでした。神経学会はいつも地方都市でやるので、いろいろな地方を訪れるのが楽しみでもあります。今まで一番遠かったのは北海道と鹿児島でした。今回は2日間とも晴天に恵まれ、朱鷺メッセ・31F(140.5m)の展望台から望む、日本海・信濃川・越後平野の見晴らしも最高でした。新潟市街には他にも万代シティレインボータワーや日本海タワーなど展望台があります。
信濃川はさすが日本最長の川であり、信濃川をウォーターシャトルにも乗船しましたが、まさに大河という実感を強く感じられました。その信濃川には萬代橋という歴史と伝統ある橋があり、海側が古町、駅側が万代という繁華街だそうです。講演会の合間の時間に古町を訪れましたが、三越店内や周辺は年配の女性が多かったようです。古町にある古くからあるJAZZ喫茶を約10年ぶりに訪れました。この店は店内の景観やスピーカーの佇まいからして本当に王道のJAZZ喫茶という感じの店で個人的にはこういう店を文化遺産にして保護してほしいと思います。
新潟市は30年前は人口50~60万人の地方の中核都市でしたが、近年の平成大合併で人口が80万人を超えて政令指定都市に昇格しました。同規模の地方の政令市の先輩格の仙台市や広島市に比べると、駅周辺や繁華街の人通りは意外なほど少なくやや寂しい気がしました。越後平野は日本有数の水田地域ですので農繁期という影響もあるかもしれません。
今回は同じ学会に所属している旧知の知人とは予定が合わず残念ながらすれ違いでした。この学会は早朝8時に開始・夜8時終了というきわめてハードな学会です。学会では初日にはホットトピックス講演「認知症診断におけるタウイメージングの進歩」を聴講しました。検査の進歩には感心する一方でやはり臨床・PET検査・病理を合致させるのは不可能であり、混合病理もあり診断はカオス状態だという事を改めて思い知らされる内容でした。翌日は教育講演ベーシック「一歩進んだALS診療」を聴講しました。前日に新聞各紙で記事にもなった「メコバラミン大量筋注療法による筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対する臨床試験」の内容も詳細に発表されていました。メコバラミンはグルタミン酸毒性とホモシスティンを抑制する効果もあるようなので、神経変性の進行を抑制できるのかもしれません。ただこの臨床試験で使用されている用量を使うとなるとアンプルを大量に切らないといけないので現実的には難しそうです。


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# by shinyokohama-fc | 2015-05-22 18:38 | 医療
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新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


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