パーキンソン病治療薬の副作用(5)ドパミン・アゴニスト(後編)

ドパミン・アゴニストで最も多いのは、眠気・睡眠発作ではないかと思います。もともとパーキンソン病の方というのは脳幹網様体の障害に伴う睡眠覚醒リズムの異常があり、日中は眠く、夜間は眠れないという傾向があります。薬剤過敏性体質の方だと、レボドパでも眠気が誘発されるようですが、ドパミン・アゴニストは単独で開始量のごく少量でも強い眠気のため、継続が困難になりやすいようです。徐放剤に変更されてからはより眠気が起こりやすくなった印象がありますので、まずは最初に処方開始する場合は、速放剤で少量ずつゆっくり漸増したほうがいいのかもしれません。というのはある程度の期間服用したら、眠気がなくなるケースが少なくないからです。中でも「突発性睡眠(睡眠発作)」は危険で、もともと眠気を自覚したいないまま、突然眠り込むため、自動車運転や機械操作などで事故を起こす可能性があります。
また高齢者の場合は、心不全、悪性腫瘍など様々な事情で下肢のリンパ液の循環が悪くなっており、レボドパとドパミンアゴニストの併用で、下肢、特に膝から下の下腿がむくみ(浮腫)やすいようです。
ドパミン受容体は胃腸に存在しますので、ドパミン・アゴニストが結合することによって、嘔気(嘔吐)、食欲不振、などがおこりますが、この副作用は従来使用されていた「麦角系」よりも、現在使用されている「非麦角系」のほうが少ないようです。
起立性低血圧による、立ちくらみ、ふらつきもドパミン・アゴニストでよくみられます。レボドパと併用、薬の増量によって血圧変動が大きくなります。まずは寝ている状態で血圧を測定し、立ち上がってからの状態で血圧を3~4回測定します。通常は立ち上がった状態のほうが血圧が高くなりますが、起立性低血圧の場合は、3~5分程度血圧が15~20mmHg下がった状態で経過します。
このようにドパミン・アゴニストの副作用は多くみられ、非常に多岐にわたっているので、この薬を処方する前にはこれらの副作用に関して十分なインフォームドコンセント(IC)が必要であろうと言われています。しかし、実際はこれらの副作用に関して、患者さん側に十分に説明されていないことの方が多いようです。


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# by shinyokohama-fc | 2017-05-29 15:52 | 治療

パーキンソン病治療薬の副作用(4)ドパミン・アゴニスト(中編)

私の経験では、ドパミン・アゴニストの副作用というのは多岐にわたりますが、どういう患者が副作用が出やすいのか?というのは予見が難しいのが現実だと思います。一般的な傾向としては、以下のような事例に副作用が出やすいのではないかと思います。
1) 高齢(70歳以上)での発症
2) 注意障害、遂行機能障害、記憶障害などを伴っている (一般的には「認知症」という)
3) 他の神経系作用薬の併用が多い (コリンエステラーゼ阻害薬、ベンゾジアゼピン系)
4) ドーパミン・アゴニストまたはレボドパの使用量が多い
5) 姿勢異常・姿勢不安定がすでにある
6) コリンエステラーゼ阻害薬か抗精神病薬を併用している
先のブログでも書いたように、当初ドパミン・アゴニストは当初は「麦角系」でしたが、この20年で時代とともに「非麦角系」が主流になり、1日3回の「速方剤」から1日1回の「徐放剤」に代わっていきました。皮肉なことにこの変遷が、ドパミン・アゴニストの副作用を増やしたのではないかと推定されます。20年前に「麦角系」を使用していた時期は、タリペキソールの嗜眠、ぺルゴリドの消化器症状(嘔気など)くらいではなかったかと思います。
最近、特に問題になっているのは、「姿勢異常」です。これは海外ではあまりに話題になっておらず、近年日本の臨床現場で、パーキンソン病にドパミン・アゴニストを使用している専門医の間で話題にされ始めました。パーキンソン病で日本で最も著名な先生が書かれた近著にも、「ドパミン・アゴニストによる姿勢異常」について明記されています。
新しい患者さんとして診る患者で、すでにドパミン・アゴニストが入っている方々にも、姿勢異常が数多く見られます。ドパミン・アゴニストを継続しているかぎり悪化していく傾向がみられるので、やはり減量・中止にするしか対応策がないと思われます。先のブログで述べたように、コリンエステラーゼ阻害薬でも同じような姿勢異常が数多くみられますので、併用するとかなりの確率で姿勢異常が現れるように感じます。
姿勢異常というのは主に以下の3タイプがありますが、多くは混合しています。
1) 体幹の側方傾斜(左右いずれかに傾く15度以上)、ピサ症候群 (ピサの斜塔になぞらえてこう呼ばれている)
2) 首下がり・首垂れ
3) 腰折れ・腰曲がり・体幹の高度前屈姿勢(45度以上)、カンプトコルミア
いずれも、動作や歩行速度はまったく落ちていない (パーキンソン病の必須症状である、「動作緩慢」は薬物治療が奏功して上手くいっている)のに、姿勢だけが外来で診るたびに悪くなっていく症例があります。
首下がりや腰曲がり姿勢が高度になっておこる二次的な問題としては、胃酸の逆流(逆流性食道炎)や腸管麻痺(イレウス)、嘔吐、誤嚥などのリスクが高くなることです。また起立・歩行時の転倒リスクが高まるために、我々臨床医としては、とても放置できない状況です。高齢(70~80歳)・認知症・多剤併用症例では特に要注意です。
しかし、ドパミン・アゴニストを減量・中止にすると、動きが悪くなることを予め覚悟しなければならず、一時期は動作障害を我慢していただいて、別の薬剤に切り替えるしかないと思います。このようなケースにおいて、どういう薬剤に切り替えればよいのかというのは、ガイドラインにも示されておらず、当然のごとくエビデンスどころか海外では話題にもされていないというのが現実です。治療を担当する医者の価値観や裁量に左右されざるを得ないのが現実です。その治療を担当している医者にとっても、それぞれの患者の脳内で神経伝達物質と受容体がどういう状態になっているのかがまったく見えていないですし、また1人1人の症例は同じ病気でも個別差が非常に大きくて違うので手探り状態でやっているというのが現実ではないかと思います。
ドパミン・アゴニストで姿勢異常が起こる理由は、現時点でまったく解明されていませんが、多くの症例で起こっているのは現実です。なるべく早期に気が付いて減量~中止して、他の薬剤に変更したほうがよいと言われますが、動作が悪化するので、実際に行うのはなかなか面倒です。
ある程度長期に服用しているケースでは骨変形が起こるため、修正が難しいようです。
以下は私の自験例です。私が診始めた時点ですでに前医でドーパミン・アゴニストが処方されていた症例です。
症例1)65歳女性。重度認知症を伴う症例
3~4年前に前医で、ビ・シフロール、ドネぺジルが処方されて、幻覚や精神錯乱状態となり、現在は中止されています。ご家族の希望で1年前から通院されています。幻覚や精神状態は安定していますが、特に立位・歩行時にひどい首下がりと腰曲がりが見られます。
現在の処方は、レボドパ/カルビドパ/エンタカポン配合剤(100mg)×3、 リバスチグミン4.5mg/日、リバスチグミンも姿勢異常を悪化させる傾向があるので、中止・変更を検討中です。
症例 2) 74歳男性。認知症なし
前医から紹介、すでに2年前から腰曲がりで前屈姿勢。前医処方は①レボドパ・カルビドパ(100mg)2錠、②ロピニロール速方剤(0.25mg)4錠・分2、③トリへキシフェニジル(2mg)1錠。
③は中止して、②を徐放剤へ変更、2mgから1か月ごとに2mgずつ増量して8mgで約1年間維持。動作は格段に速くなりましたが、前屈姿勢が悪化し、両下肢の浮腫もひどくなったので、一時ロチゴチンへの変更を試みたが、上手くいかず、結局①を300mgに増量して、ロピニロールは2mgずつ段階的に減量して最終的に中止としました。
主に神経内科医が行っている、パーキンソン病の薬物治療というのは、精神科のそれと同じで、実際には全く見えていない、患者の神経伝達物質のバランスや受容体の状態を推測しながら、神経に作用する薬をいくつか処方するという点で難しさがあります。


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# by shinyokohama-fc | 2017-05-26 10:35 | 治療

パーキンソン病の薬物治療におけるEBMの限界

パーキンソン病の薬物治療においては、科学的根拠に基つく医療 (EBM Evidence-Based Medicine) だけで実践するのは困難だと、パーキンソン病のエキスパート専門医が語っていました。私もこの意見にはおおむね賛成です。
日本において、製薬会社や医師が主導でない、バイアスのかかっていない、公正に実施された大規模臨床試験が実施されていないこと、年齢別・パーキンソン病のキャラクター別の薬物治療の検討がまったくなされていないこと、などが理由としてあげられますが、そもそもUPRDSという個人的主観のバイアスがかかるスコアで公正な評価ができるのかという根本的な問題があります。
またパーキンソン病でよく問題になる、レボドパの効果短縮による、ウェアリングオフ現象・オンオフ現象などの対策として、レボドパの服薬回数を増やしたり服薬時間を変更したりすることのメリットや、ドパミン・アゴニストやセレギリンなどによって誘発される精神症状への減薬対応など、パーキンソン病の薬物治療の現場ではごく普通に行われていて、半ば常識にもなっている手法ですら、エビデンスが存在しないというのが現実なのです。
治療薬が3種類以上併用されている治療に関してもエビデンスは存在しない。つまりパーキンソン病の薬物治療の多くの部分は、専門医のそれぞれの経験や通説に基ついて行われているというのが現実ではないかと思います。
高血圧、糖尿病などは数値がすべてでデータ化しやすいので、EBMが重要視されるのは理解できますが、症状の重症度をデータ化しにくい神経疾患の分野に関しては、EBMに当てはめることがそもそも困難であるという事でしょう。むしろ無理矢理、EBM原理主義で治療をしようとすれば、治療窓が極端に狭くなって、何も有効な手段ができなくなってしまうのではないか?これはパーキンソン病だけではなくて、神経変性疾患全般に言えることだと思います。


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# by shinyokohama-fc | 2017-05-20 17:04 | 医療

パーキンソン病治療薬の副作用 (3) ドパミン・アゴニスト(前編)

今回は、私が神経内科医の仕事を初めてから20年以上にわたって新薬が続々と登場した、ドパミン・アゴニストについて書いていきたいと思います。
ドパミン受容体を刺激する薬で、ドパミン神経細胞などに、ドパミンを受け取ったと認識させて、ドパミンの伝達をリレーするのを補助する薬と言われています。
神経系の薬剤において、一般的にこの「受容体に直接作用する」という薬は非常に曲者です。それは深刻な副作用をきたす可能性があるからです。この薬ほど、使う対象(患者さん)と使い方(用量)を間違うと、毒物に化ける薬はないのではないかと思います。「すべての物質は毒である。(中略)ある物質が毒になるか薬になるかは用量による」という、ギリシャ時代の薬物学者・軍医、ディオスコリデスの書いた「薬物誌 (マテリア・メディカ)」に書かれている有名な一文に最も当てはまる典型的な薬、それがドパミン・アゴニストです。
最近、パーキンソン病のエキスパートと呼ばれる専門医による書籍を拝読したり、講演を聴講したりしましたが、この薬はとにかく精神系の副作用が多いということで意見が一致していました。5~10年前まではこの点はほとんど強調されていませんでしたが、実際の臨床現場でこの薬を使ってみると、誰もが副作用の多さに驚くのではないかと思います。一時期はアパシーや抑うつ状態を改善させるという、メリットばかりが強調されていた時期がありましたが、先発品の特許期間が続々と切れるにしたがって、近年は明らかに風向きが変化してきたのを感じます。
もともと、ドパミン・アゴニストは「麦角系」というエルゴタミンが入ったタイプの薬剤が使われていました。ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、タリペキソールなどです。しかしこれらの薬を特に高用量で使用して、エルゴタミンの血管収縮作用が長期になると、心臓弁膜症、肺線維症、後腹膜線維症に至ることが海外で報告されました。またぺルゴリドについては、海外で発がん性が指摘されており、米国のFDAでは何年も前に発売禁止となり、製薬会社も販売権を放棄したほどです。そのような事情があって、エルゴタミンを含んでいない、「非麦角系」というタイプのドパミン・アゴニストが開発されました。それが、プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチンです。しかし実際に使ってみると「麦角系」以上に副作用の出現頻度が多いようです。開始時から副作用が現れやすいため、少ない用量から少しずつ増やすことになっていますが、開始量でも精神系の副作用が現れやすいようです。実際に最も多い副作用は眠気で、高齢者になると幻覚、せん妄に至るケースが多いようです。初めてこの薬を使う患者さんでも、開始量ですぐにこの薬の使用を断念せざるをえない症例は半数以上になると思います。私が診る以前から、すでにプラミペキソール、ロピニロールが使われているケースでも、特に70歳以上の高齢者では、ひどいせん妄になっていて、まるで「レビー小体型認知症」のようになっています。多くは「レビー化だ!」と診断されて、ドネぺジルが追加されていますが、まったく効果がないばかりか、むしろせん妄が悪化していることが大半です。以前のブログでも触れていますが、これが専門医による「レビー診断病」です。レビー診断病の多くの症例では、ドパミン・アゴニスト以外にも、ゾニサミド、セレギリンが併用されていて、深刻なせん妄に陥っている悲惨な症例も数多く診てきましたが、今回はレボドパにドパミン・アゴニストの併用で幻覚が出ていた症例について紹介します。
81歳女性、数年前に脳卒中の既往があるが、明らかな片麻痺は残っていません。動作歩行困難が年々悪化してきたので、前医処方でレボドパ・カルビドパ100mg×4回、プラミペキソール徐放剤0.375mg×3錠/1回、ドロキシドパ100mg×3。10年ほど経過した姿勢異常型のパーキンソン病の方ですが、最近幻覚がひどくなり、それに伴う妄想やパニックを起こすようになったとの事で、2か月前に小生のクリニックを受診されました。81歳というかなりの高齢でもあり、幻覚の悪化の主たる原因はプラミペキソール徐放剤と推定されたので0.375mg×3⇒2⇒1と漸減しました。0.375mg/日で幻覚は完全になくなりましたが、動作歩行が悪化したため、再び0.75mg/日に戻すと幻覚が再発。苦悩した上で、徐放剤を速放剤に変更し、0.125mg錠×2錠を1日3回に変更しました。プラミペキソールの用量は同じでしたが、幻覚は大幅に減少して、動作歩行レベルも維持されていました。あれだけひどかった幻覚は減少するにつれて顔つきもしっかりして受け答えができるようになったそうです。この症例はわかりやすくズバリと例えれば「ドパミン・アゴニストの過剰投与でレビー化していた、薬剤性レビー?の症例」と言えます。
幻覚と認知の変動 (その多くは薬剤性せん妄)が確認されるだけで、どんな症例でもすぐに「レビーではないか?」と安易な臨床診断名が連呼されている現状、臨床診断の質の低下もかなり深刻です。レビー小体が脳にたまっていなくても、幻覚や認知の変動が起こることは日常茶飯事にありますし、レビー小体がたまっているかどうかを検査で確定する手段も存在しないのに、そういう病名が安易につけられるのもおかしい。学会の作成した、パーキンソン病治療薬ガイドラインには、幻覚が出現したら、順次パーキンソン治療薬を減薬するように書いてあります。しかしここに書いてあるとおりに減薬する専門医は少ないようです。ほとんどの専門医は幻覚=レビー化、ドネぺジルを追加するという選択をするようです。負の薬剤カスケードの典型です。
ドパミン・アゴニストは、非運動症状である、アパシー(意欲減退)、アンへドニア(心地よい気持ちの減退)を改善する作用があると言われていますが、その反面、以下の精神系の副作用が問題になります。
1) 眠気・睡眠発作
ロピニロールに多いと言われていますが、他の2種類でもよく現れます。日中にずっと強い眠気がおこりますが、高齢者ではそれが高じて、意識もうろう、せん妄となり、昼夜逆転、睡眠覚醒リズムに異常をきたして、夜間にレム睡眠行動異常が悪化して不穏になるというパターンも目立つようです。
2) 幻覚・妄想・精神錯乱
プラミペキソールに多いと言われていますが、他の2種類でも現れます。本人に強い恐怖感とストレスを与え、時に家族に迷惑をかける場合は、ドパミン・アゴニストを含めて原因薬剤を順次減量していく事になっています。
特に注意すべき患者さんは、パーキンソン病を発症してから10年以上、70歳以上での発症、軽度認知障害がある、薬剤過敏体質、他に脳卒中の既往があるなどです。
3)ドパミン調節異常症
レボドパの精神刺激作用をさらに増強してしまうようです。レボドパを必要以上に求めるようになったり、病的賭博、ギャンブル、買い物・食欲亢進など、脱抑制行動が顕著に現れる場合があるようです。
レボドパの服薬量が多い上に、ドパミンアゴニスト服薬量も多い場合に起こりやすいようです。
ドパミン・アゴニストは今回取り上げた、精神系の副作用以外にも多くの副作用があります。近年はドパミン・アゴニストを処方する前にこれらの副作用の事を十分にインフォームドコンセント(IC)してから処方するようにと言われていますが、実際は副作用の情報提供はまったくと言っていいほど、患者側に与えられていないようです。これが医療側への不信感を抱かせる大きな理由ではないかと思います。
ドパミン・アゴニストにはまだまだ厄介な身体的副作用があります。後編でそれを解説したいと思います。


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# by shinyokohama-fc | 2017-05-20 12:31 | 治療

認知症における操作的診断方法の限界、抗精神病薬の危険

先日、地域で行われた認知症の講演会を聴講しました。認知症学会の専門医による講演でした。
私が気が付いた範囲で今回の講演における重要なポイントを以下に要約して示します。

<前頭側頭葉変性症(FTD)の診断について>
1) 画像診断( 頭部CT/MRI検査)所見での前頭葉萎縮=FTDではない
2) 万引き行為などの脱抑制行動=FTDではない
3) 易怒性・暴力=FTDではない
レビー小体型認知症(DLB)では、前頭葉機能障害が比較的多いので、FTDと誤診・混同されやすい。
認知症学会の専門医でもFTDの鑑別診断は非常に難しい。

以上の問題は、FTDとかDLBが臨床症候中心の「操作的診断方法」に頼っている現状があるからだと思われます。薬剤性せん妄や側頭葉てんかんがDLBだと誤診されやすいように、前頭葉・側頭葉にタウが蓄積するタイプのアルツハイマー(ATD)やDLBもまたFTDと誤診されやすいという事です。
以前のブログでも書いたように、DLBの38.2%が、タウイメージングPETにて前頭葉~側頭葉にタウの蓄積がみられ、頭部CT/MRI検査において前頭葉~側頭葉の萎縮がみられたという、ある医療機関からの報告があります。
私の目からみると、CBSやPSPSが、DLBやFTDと誤診される症例はさらに多いと推定されます。同じ疾患でも病変の進展度合いに個別差が大きいので、診断は診察した医者の独断と偏見に大きく左右されるようです。
実際に現在のDLBやFTDの診断基準は、臨床症候中心の「操作的診断方法」なので、病理的な観点でみると誤診が増えるのは当然だと思います。またFTDは50~60歳の疾患であると言われていて、診断基準にも「65歳以下」と定義されていますが、高齢者の母数が急増した現在ではどうなのか?実際は70歳代、80歳代にも、明らかに臨床的にFTDとしか診断できない症例が多いようですが、これらは類似した臨床的特徴と画像診断所見を呈する嗜銀性顆粒球症(グレイン・AGD)なのか?という事です。ある書籍ではAGDは後期高齢者の認知症症候群の約半数を占めていると言われています。どこからどこまでがFTDでAGDなのか?という、学会からの診断基準や指針は存在しないようです。

<周辺症状の薬物療法について>
2005年4月に、FDA(米国)は、認知症症候群に対する抗精神病薬(リスぺリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール)を使用すると、死亡率が1.6~1.7倍に。死因は心臓血管死、心臓突然死、感染症(肺炎など)
認知症が存在する場合は、さらにリスクが上がって、死亡イベントが起こりやすい。
認知症の行動心理症状(BPSD)に抗精神病薬を処方する場合は、①適用外使用である ②死亡イベントのリスクが高まる、という事を十分に説明をして同意を得る必要性。
「抗精神病薬の長期連用は、生存率が下がり、死亡率が上がる」欧州の精神薬理学の雑誌における投稿論文
1) 抗精神病薬は可能な限り使わない。
2) やむをえず使う場合はできるだけ少量で、期間限定(短期間)

以上の提言(かなり大昔から提言されていましたが)には基本的に私は賛成です。私の印象では、認知症患者の場合はすでに心臓イベントリスクの高いコリンエステラーゼ阻害薬を服用しており、それに抗精神病薬を追加される事によって、死亡イベントが増えるのではないかと推定します。

抗精神病薬のリスクの知識がまったくない、施設従業者や介護家族が安易に抗精神病薬の処方を求めてくるようですが、私は以上のリスクに関してすべて説明します。心臓死や感染症以外でも、動作歩行困難・姿勢異常、転倒の増加、不随意運動の出現、精神錯乱などQOLを著しく低下させる厄介な有害事象が非常に多いのが現実です。
今後は、抗精神病薬&コリンエステラーゼ阻害薬の処方によって、悲惨な目にあった症例を、包み隠さずにできるだけ数多く示していくことが必要だと考えています。
リスクの高い安易な抗精神病薬の処方、コリンエステラーゼ阻害薬との併用を可能なかぎりなくすべきだと思っていますが、こういう処方が普通に当たり前に行われてる現実というのはとても好ましいとは言えないでしょう。


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# by shinyokohama-fc | 2017-04-17 15:41 | 医療
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