PD,PDD,DLBによる血圧サージ

レビー小体(アルファシヌクレインの重合体)がたまる病気 、レビー小体病(現状では脳や自律神経にレビー小体がたまっているという事を証明できる検査ツールは存在しないため、こういう病名を使うことは正直言って非常に不快感が強いのですが)であるパーキンソン病(PD)、認知症を伴うパーキンソン病(PDD)、レビー小体型認知症(DLB)は症例によってですが、延髄~脊髄の自律神経内にレビー小体がたまるために、早期から便秘があると言われています。このような自律神経不全の影響で体位や状況によって血圧変動が著しい状態(血圧サージ)になる場合が多いようです。活動する交感神経(血管を収縮させて血圧や脈拍を上げる神経)と休息する副交感神経(血管を拡張させて血圧や脈拍を下げる神経)でバランスをとっているのですが、健常な場合は、置かれている状況次第でそのバランスの切り替えが上手くいくのですが、このような病気では2つの神経の切り替えが上手くいかなくなります。
血圧サージというのは、血圧が大きく上下する変動の激しい状況の事です。具体的には起立性低血圧、食事性低血圧などと言われますが、血圧サージをきたす代表的な病気としては糖尿病があります。長年にわたる糖尿病が全身の動脈硬化を起こすのは、血圧サージによる要素も大きいと言われています。動脈硬化が、網膜症、末梢神経障害、心筋梗塞、脳梗塞などの原因になり、脳の細小動脈硬化による血流障害によって、間接的に大脳起源の認知機能低下が誘発されてしまうと言われます。動脈硬化の評価としては、MRI検査などで虚血性変化の評価、頸動脈の超音波などで動脈硬化の評価などが可能です。脳にアルツハイマー病理やレビー病理が存在しても認知症として発症しないケースも多く、脳梗塞・脳出血の既往があったり、脳の細小動脈硬化によるラクナ変化が確認される場合は、認知症が発症しやすい、あるいは認知症が重症化しやすいようです。
レビー小体関連の病気でよく初発症状・前駆症状と言われている、レム睡眠行動異常症(RBD)という症状ですが、
夜間就眠時も筋肉が休まらないという症状のために、血圧サージが起こりやすいと推定されます。逆にRBDが顕著な症例ほど、夜間の血圧サージが頻繁に起こるために、脳の細小動脈硬化が促進されやすい、つまりMRI検査で、虚血性変化(微小脳循環障害を示すラクナという変化を多数確認する)がみられ、結果として、認知機能障害、PDDやDLBが起こりやすいという転帰をとるのではないかと思われます。これに加えて、日中の体位変換や食事などの生活行動に伴う血圧サージが大きいケースでは高確率でPDDやDLBが発症しやすいのではないかと推定されます。
近年、血糖に関しては、簡易に装着できる血糖の日内変動が測定できる機器が登場して、血糖サージの実態が確認できるようになりました。しかし、血圧サージの悪影響に関しては、PDやDLBを診察している神経内科医や認知症専門医にはきわめて軽んじられていると感じます。立ち上がると気を失い、立位で測定不能になるほどの起立性血圧低下がある症例にアムロジピンとドネぺジルを処方したり、臥位で血圧が160以上に上がる症例にドロキシドパを処方しているのが現状です。起立性低血圧だけではなく、臥位高血圧が問題になるケースも多く、PDやDLBの診察では必ずと言っていいほど、臥位・座位・立位と体位による血圧変動を確認しなればならないのですが、そういう診察されているといった話は患者さん側からほとんど訊くことはありません。
レビー小体関連した病気においてを軽減するのは実際容易ではありません。下手に血圧を下げる薬(降圧剤)や上げる薬(昇圧剤)が処方されて、長期的にはそのような薬を服用することが細小動脈硬化と脳循環不全、認知機能障害が悪化させているのではないかと推定されます。
起立性低血圧を軽減・改善させるためには以下のような生活習慣が指導されます。
1) 水分と塩分をこまめにとる
2) 1回の食事量を少なくして、5~6回にわけて食事をとる
3) 脚力を落とさないために、下半身を中心した運動を行う (坂道や階段の上り下りやスクワットなど)
4) 眠るときは、枕を高くする
5) 弾性タイツ(ストッキング)を着用する
6) 便秘をしないようにする
血圧サージの対処法として、海外では「ハンドグリップ法」全力の30%で2分握ることで、上肢の血圧を上昇させて、交感神経を刺激する事によって血圧の変動を軽減する効果があるそうです。PDD/DLBにおける認知の変動は、血圧変動による脳循環の変動による所が大きいと思われますので、認知の変動の著しいケースでの症状の安定化に効果があるのではないかと考えています。
私が外来で、30mmHg以上の起立性低血圧、あるいは血圧手帳において、30mmHg以上の血圧サージを確認する症例の多くが、PDD(重症型PD)かDLBです。逆にそれが確認できない症例の多くは軽症型PDです。
これらの病気において、血圧変動というのは予後・重症度を規定する重要な因子だと私は確信しています。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2017-11-04 12:39 | 医療

意味性認知症の症例発表

先日、東京都内で行われた認知症に関する研究会で、講演をしました。私が経験した、意味性認知症の2つの症例を提示して、それぞれの症例に対する前医での薬物処方、当医での薬物処方とその転帰についての反省を含めた考察を行いました。当日は台風が直撃するという予報で大雨の悪天候の中を30人程度の、医療関係者、患者家族の方々がお越しになられました。
私が今回話したような「意味性認知症」というテーマの講演はなかなかないという事で、前頭側頭型変性症の患者会の方3名が、私の講演を聴く目的で来られたようです。
患者会の方々から、配偶者やご兄弟である患者さんの話を訊いてみて、神経難病の介護の切実さと薬物療法による症状の増悪の深刻さが改めて痛感させられました。
このような話を訊いてみて、今後はFTDよりも多くの症例を診ている、「レビー小体型認知症(DLB)」「認知症を伴うパーキンソン病 (PDD)」「進行性核上性麻痺 (PSP)」「大脳皮質基底核変性症(CBD)」という病気に関して、患者側・介護側に向けての講演活動の必要性を痛感させられました。
このブログでもずっと書いてきた事ですが、意味性認知症、行動障害性、ピックコンプレックス系のPSPやCBDに対してドネぺジル、リバスチグミン、抗精神病薬 (クロールプロマジンなど)を使うことによって病状悪化したという報告が訊かれました。
後日、メールにて上記のうちの2名の方々の病状経過を詳細に訊いたのですが、嚥下障害、運動障害がかなり進行して重症化しているようでしたので、おそらくPSPサブタイプだと推定されました。
PSPは様々なサブタイプがありますが、私が診てきた症例で言いますと、100例中10~15例程度が、FTD的な症状(語義失語、行動異常、脱抑制、アパシーなど)で発症する症例があり、初診時は運動障害がほとんど目立たないので、FTDと診断するしかないのですが、1~2年のうちに急速にPSPあるいはCBD的な運動症状が進行してしまい、立って歩くことができなくなります。この2例もそういう経過のようでしたが、頭部打撲や上記に挙げた薬の副作用によって悪化した側面もあるようです。PSPは前頭葉~側頭葉を中心とした大脳皮質広範囲にタウ蛋白質がたまる病気ですが、頭部打撲によりタウ蛋白質がカスケードで拡散することが知られています。私も数例経験しましたが、硬膜下血腫まで起こしてしまった症例の機能予後は特に悪いようです。
FTD的症状の場合は、精神科にかかることが多いのですが、次第に運動症状が出てきて、精神科から私の外来へ変わってくるケースが多いようです。最近は70歳以上の高齢者の急増に伴って、このようなピックコンプレックスのPSP、CBDの症例が急増しています。
私がFTDに抗精神病薬を原則NGにしている理由はまさにここにあります。現在はFTDよりもPSPやCBDの有病率のほうが高いからです。この3年、FTD様症状で初診で来られた方のうち、半数以上がPSPやCBDのような運動症状が出現して1年以内に重症化していくという転帰をとりました。
PSPやCBDではコリンエステラーゼ阻害薬(ドネぺジルやリバスチグミン)と抗精神病薬(リスぺリドン、ハロペリドール、クロルプロマジンなど)で著しく病状が悪化します。その悪化具合はDLBやPDDよりも顕著で、原因薬剤を中止しても不可逆的である事が多いです。これは、PSPやCBDでは、中脳のドパミンニューロン、セロトニンニューロンなどの障害程度が、DLBやPDDをはるかにしのぐレベルだからです。これはある病理学者の書いた書籍に書いてありまして、2年前にそれを知りました。いろいろ使ってみて、少なくとも病状を悪化させない神経作用薬はアマンタジンなど限られた薬だけである事がわかりました。つまり、アマンタジンだけを服薬して、他の薬を使わなければ少なくとも薬による病状悪化は防げるであろうと思います。先日のブログで書いたようにPDDという病態もそうです。PSP、CBD、PDDに使える薬はかなり限定されていますが、それが知られていない、正しい臨床診断が難しく、適当に薬を試されてしまうという点が予後をさらに悪くしているのであろうと思います。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2017-10-31 19:31 | 治療

ドパミンアゴニストは若年者PDには有用

ドパミンアゴニストの中では、ロチゴチン(貼付剤)がドパミン受容体に均等に作用すると言われています。私が診ているパーキンソン病の方でも、50台前半と40台半ばの男性にこのロチゴチン(貼付剤)を使用しています。2名とも発症して5年以内にウェアリングオフ(レボドパの効果が短くなってしまい、持続時間が短くなる現象)が出現してしまっている難しいケースです。通常はウェアリングオフは発症して10年で出現するので、かなり早いです。
ドパミンアゴニストの利点は、ウェアリングオフを軽減する以外に、抑うつを軽減する効果もあります。以下の症例は副作用のためにドパミンアゴニストを漸減中止して、ウェアリングオフ現象と抑うつが顕著に現れた症例です。
40台半ばの男性。3年前から動作が緩慢で、日内変動が顕著で、時間帯によって動作歩行ができなくなっている方です。静止時振戦(じっとしている時の手のふるえ)は全く出現しておらず、無動固縮型です。
1) レボドパ・カルビドパ100mg×1日2回、
2) ロピニロールCR (徐放型)8+2mg、1日1回
3) セレギリン5mg、1日1回
当院へ来られたきっかけとしては、①仕事中の突発性睡眠(突然眠くなる) ②衝動制御障害(病的賭博) ③立ちくらみでした。①②はドパミンアゴニスト(ロピニロール)の副作用、③はセレギリンの副作用と推定されました。
初診時の血圧測定では、座位~立位1~3分で血圧が段階的に12mgまで低下する傾向があったので中止。
特に①に関しては高所作業の仕事が危険でできない ②に関しては、ドパミンアゴニストを中止しないと収まらないと言われていますので、10→6→4→0mgと段階的に漸減して中止しました。その一方でレボドパを1日300mgとして、6回分割で服用としました。当時の当院の処方は以下のとおりです。
1) レボドパ・カルビドパ 50mg×1日6回
2) イストラデフィリン 20mg 1日1回
しかし、いざドパミンアゴニスト(ロピニロール)を中止してみると、レボドパの効果が1時間しかもたなくなり、日常生活や仕事に支障が出てしまいました。そのためにイストラデフィリン20mgを追加しましたが、ウェアリングオフの軽減にはほとんど効果がありませんでした。さらにそれまでなかったアパシー(何もやる気が起こらないという症状)が顕著に現れてしまいました。②の副作用があったため、本来はドパミンアゴニストを使用するのは適切ではないと考えていましたが、ドパミンアゴニストをロチゴチンに変更して4.5~9mgで開始しました。するとウェアリングオフ現象による無動状態はいくらか軽減し、アパシーの症状も軽減したようです。修正後の処方は以下のとおりです。
1) レボドパ・カルビドパ 50mg×1日6回
2) ロチゴチン 9mg /1日
ドパミンアゴニストはこの症例のように、比較的若年(40~50歳)発症で、無動型で、ウェアリングオフが強い症例にはかなり有用であると再確認できました。前医で処方されていた、ロピニロール10mgというのは、ロチゴチンに換算すると22.5mg相当ですので、ロチゴチン9mgですでに十分な効果が実感できる方にとっては、いささかオーバードース(過量)ではなかったかと考えられました。ドパミンアゴニストは少しでも過量であれば高率に副作用が出やすい薬です。
超高齢化社会で、70歳以上の高齢者が激増した昨今では、パーキンソン病も高齢者の比率が高くなっており、私の診ている方々も、多くは70歳以上です。このような高齢者で、認知機能が大なり小なり落ちているケースにおいては、ドパミンアゴニストは幻覚、妄想、精神錯乱、嗜眠、せん妄などを引き起こすだけのメリットのない場合が多く大半の症例で中止して、アマンタジンなどの別の薬剤に置き換えざるをえない状況でした。
ドパミンアゴニスト・ファーストという学会の提唱している治療薬の使い方というのは、40~50台のパーキンソン病患者さん達には合っていますが、70歳以上のパーキンソン病患者さん達、特にPDDには合っていません (前ブログ「PDDにドパミンアゴニストは百害あって一利なし」を参照)
ドパミンアゴニストという薬は症例をよく選んで、副作用が出現しない程度の適正な用量で使って、生きる薬だと思います。しかし、現実は不適切な症例(高齢者のPDやPDD)に使用されてひどいせん妄、精神錯乱をきたしていたり、今回の症例のように薬の用量が多すぎて、仕事に支障をきたすケースが多くみられるようで、非常に残念です。
「薬は使い方、使用量を間違えれば毒にもなりうる」という格言を証明するのがこの薬だと思います。パーキンソン病の患者さん達とご家族はこの薬の効果と副作用について十分な知識が必要なのではないでしょうか?


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2017-10-28 16:35 | 治療

DLBとPDDの相違点と共通点

レビー小体型認知症(DLB)と認知症を伴うパーキンソン病(PDD)は全く臨床的なキャラクターが違います。個人的には「レビー小体型」とか「認知症」とかいう名前は非常に気に入らないのですが、公式にそう呼ばれているので仕方なくそう呼んでいます。
DLBは大脳皮質や辺縁系の症状がメインです。軽症型は大脳皮質の後半に限局しますが、重症型は大脳皮質全域に及びます。前者ではドネぺジルやリバスチグミンなどのコリンエステラーゼ阻害薬が著効しますが、後者ではほとんど効果がなく、ドネぺジルやリバスチグミンを使うと精神興奮や錯乱が誘発されてしまうようです。
PDDは脳幹の症状がメインですが、大脳皮質も障害されてしまうので、多くの場合DLBよりも重症です。軽症型では大脳皮質の後半に限局しますが、中等症~重症型では大脳皮質全域に及ぶので、PSPと同様に中枢神経細胞のほとんどが機能不全に陥っており、機能をカバーできる中枢神経領域がほとんど残っていない状態です。軽症型ではレボドパ+アマンタジンがある程度奏功しますが、中等症以上になると効果が落ちてきて、重症型ではほとんど効きません。それゆえ私は「認知症は薬物療法で必ずコントロールできる」とは全く思いません。DLB やPDDだけでみてもコントロールできない症例が半数程度存在します。薬物療法というのは、正常な神経細胞や受容体が残っていて初めて奏功するものですが、PDDやPSPの重症型ステージの症例の場合は、それがほとんど残っていない状態なので薬物療法は奏功しようがないと考えます。
DLBとPDDはかつては認知症が先か、パーキンソン症状が先か、1年ルールというものがありましたが、いつから症状が出たのかなど誰にもわかるわけがないのです。本人が自覚した?家族が気が付いた?重症になるまで気が付かない症例も多いです。MMSEやHDSRやMOCAなどという簡易スケールでの評価は病気のステージを反映しないという事は、患者を診ている医者であればわかります。よって1年ルールは臨床的にはまったく無意味です。
両者に共通しているのは、書字の障害が顕著で、図形や立方体、時計の数字などが上手く書けないという事です。多くの症例は文字が拙劣で、ラインがまっすぐ描けず、書くのに非常に時間がかかり躊躇します。これはパーキンソン症状がほとんど目立たないヤール1~2レベルのDLB症例でも同じです。
両者の相違点は、患者のキャラクターです。典型的なDLBは表情は普通でどちらかというと多弁でよくしゃべる人が多いのですが、典型的なPDDは表情が乏しく、暗くどんよりした雰囲気で口数が少なく、重症になると話そうとしてもほとんど上手く話せない状態になります。運動障害が重くヤール3~5レベルです。軽症型DLBではコリンエステラーゼ阻害薬が多くの症例で奏功し、幻覚や妄想などをある程度抑制する効果がありますので使います。しかしPDDでは軽症型でもコリンエステラーゼ阻害薬は合わない症例が多く2~3か月継続すると多くの症例で姿勢異常や動作緩慢が悪化します。私はPDDで10例ほどコリンエステラーゼ阻害薬を試しましたが、結果は1勝9敗でした。1勝の症例でもリバスチグミン6.75mgで使用しています。
DLBとPDDの軽症型~中等症型ではある程度薬物療法が奏功しますが、しっかりと鑑別をして使うべき薬を選ばないと、薬物でかえって病状がすごく悪化してしまうという転帰をとる事が多いようなので、注意が必要です。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2017-10-26 18:57 | 医療

パーキンソン病は軽症から重症まである

「Brain」という雑誌の今年度に興味深い論文が投稿されていました。
「Clinical criteria for subtyping Parkinson's disease : biomarkers and longitudinal progression」
パーキンソン病を軽症型・中間型・重症型という3つのサブタイプに分類すべく、脳画像診断や脳脊髄液のバイオマーカー、運動症状と非運動症状の重症度などで評価し、経時的に病状の進行を確認した臨床研究のようです。この研究では対象は未治療の新規パーキンソン病患者421例で、以下の3つのサブタイプに分類されました。
1) mild motor predominant type (運動症状優位・軽症型)
2) moderate type (中間型)
3) diffuse malignant type (広汎・重症型)
1)~3)の重症度分類は、運動症状と非運動症状のスコアで分類され、それぞれ1)221例(52.5%)、2)146例 (34.7%)、3)52例 (12.3%)でした。全タイプで中脳の有意な萎縮が確認され、1)2)3)と重症になるにつれて段階的に悪化、3)では大脳全体の萎縮がみられ、高度な尾状核の脱神経がみられ、脳脊髄液中のアミロイドベータ/タウタンパク比が低値で、病状の進行が速かったという事でした。
やはり重症であればあるほど、アルツハイマーと同じ病理が混在して、タウ蛋白がアルツハイマー以上に広範囲にたまると推定されます。数年前の放射線医学研究所のタウPET検査で証明された、「認知症を伴うレビー小体病」において、タウがたまらないタイプとたまるタイプがあるという報告と矛盾しないのではないかと思われます。
私がかつてのブログで書いていたように、実際に外来で診ているパーキンソン病の症例の重症度・進行度もまさにピンからキリまでですが、特に3)のタイプは、レボドパにもコリンエステラーゼ阻害薬にもほとんど反応せず、対症療法的にも薬物治療がまったく通用しないようです。私もこのような悪性経過の症例を数例診てきましたが、おそらく、進行性核上性麻痺の最重症型(リチャードソン症候群)と同じかそれ以上の悪性経過ではないかと思われます。
これまでの医学書や一般書に書いてある内容のパーキンソン病というのは1)のことしか書かれていません。パーキンソン病はどの症例も15~20年単位で緩やかに進行して、20年経ってから認知症や精神症状が出てくると書いてあります。どの書籍も同じような事しか書いていないようです。こういうのを読むと読者の多くはパーキンソン病というのは均質に良性経過をとる病気だと大きな誤解するのではないでしょうか? これらの書籍の筆者の多くは、敷居の高い大病院で外来診療を行っている著名な先生方が多いようで、おそらく2) 3)のような進行が速くて薬物治療が全く通用しないタイプは1年以内に通院が途絶えてしまうので、進行した状態までフォローされずにスルーされてしまっているのではないかと想像されます。日常の外来診療で2)や3)のタイプの重症進行型のパーキンソン病を少なからず診ている私としては、こういうありきたりな内容の書籍を読んで、パーキンソン病という病気のたかだか50~60%の良性経過の軽症型の内容だけでパーキンソン病のすべてを語るというのはどうなのか?と感じました。特に「パーキンソン病は薬物療法が奏功するので薬物療法とリハビリをやれば生涯を全うできる」というお決まりの文句には違和感を覚えます。本当に患者を診ているのか?とすら思いますね。
今回の論文は、パーキンソン病にも軽症(良性)から重症(悪性)まで多様性があるという事実を示したという点で価値があるのではないでしょうか?これまでのパーキンソン病の医学書や一般書はすべて書き直されるべきでしょう。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2017-10-24 16:38 | 医療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line