歩くことが神経難病の発症時期を遅らせる?

最近、神経学会の最先端では、Disease Modifying Therapy (DMT)の話題、特にメジャーな神経変性疾患である、アルツハイマー病とパーキンソン病についての話題ばかりのようです。
有名大学病院の最先端医学の研究者たちが考えていることは、現在行われている、発症してからの対症療法的な薬物治療ではなくて、いかにして発症前に病気をバイオマーカーでとらえて、病気そのものを進行させないための治療(DMT)を早期から施すかということのようです。
しかし発症する20~30年前の働きさかりの30~40歳の時に、あなたはアルツハイマー病だ、パーキンソン病だ、今後20年後に発症するだろうと告知された人にどのような心理的悪影響を与えるのか?という点は考慮されていないようです。現在検討されている可能性のある治療としては、発症を予防するためのワクチンが主流のようです。
それ以外にもIPS細胞やオートファジーを応用した治療が検討されているようですが、問題になるのは、やはり最新治療はあまりにも高額すぎるので、最新治療の適応は若年発症の遺伝性のタイプに限定される方向にあるということでしょう。パーキンソン病が多い年齢層、75~85歳の非生産年齢層の患者さん達に、20年前の55~65歳からワクチンを打つようにという事は現実的とはいえないでしょう。比較的メジャーな疾患、アルツハイマー病やパーキンソン病ですらこういう現状ですので、他のマイナーな疾患に関してはDMTは期待できそうもないでしょう。
最近、クリニックの近隣にお住まいの84歳の動作歩行障害の女性の方が、総合病院の神経内科に通院していたのですが、変わりたいということで、4か月前から定期受診されるようになりました。もともとムズムズ脚(レストレスレッグス)症候群があり、右手のふるえ、書字が小字傾向で、筋固縮はなかったが、診断はパーキンソン病ヤール2度であろうと考えていたのですが、どうもパーキンソン病としては歩行時に左右へのふらつき・動揺がかなり強いのが合点がいかなかったのです。後日、前医(総合病院の神経内科・外来担当医)から診療情報提供、MRI画像を見て驚きました。両側の小脳半球の萎縮と、両側の線条体の顕著な低信号が確認され、典型的な多系統萎縮症(MSA)の画像所見だったのです。画像所見の重症度と実際の臨床的な重症度が一致しないことは少なくはないのですが、この症例は病気がMSAで画像的にはかなり進行期だったので驚きました。よく聞いてみると、昨年まで月に1回ほどゴルフのプレーラウンドをしていたそうです。おそらく80歳を超えてもゴルフでかなり長い距離を歩いて、手を使っていたのが良かったのだと思います。
最近は歩いて認知症を予防できるという学説があるほどで、手足を使うことは、いかなる対症療法の薬物治療よりも勝るのではないかと思います。現在、当院で定期受診している、パーキンソン病の患者さんのうち、ほとんど2~3年間動作歩行障害が進行しない症例が4~5例あります。治療薬も3年ほとんど変更しないで済んでいます。どうやら、歩くことは神経変性疾患・神経難病の発症時期、臨床症状の進行を抑える効果があるようです。
パーキンソン病は9種類もの対症療法の治療薬があり、すべての薬の併用が保険医療として認められているというきわめて特殊な疾患です。日本人はもともと医療を薬に依存する傾向が強いため、短い外来診療時間を解消する目的で患者のリクエストに応じて外来へ行くたびに薬が追加され続けるというパターンが非常に多いようです。私の長年の臨床経験でいうと、薬を増やされすぎて長期間服用した人は間違いなく副作用によって病気そのものが悪化したりします。薬をたくさん服用する前に、まず患者さん自身がやれることがたくさんあるのではないかと思います。


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# by shinyokohama-fc | 2017-06-29 15:49 | 医療

パーキンソン病で必要性の高い薬、レボドパとアマンタジン

昨日、神経が専門でない一般臨床医の方々から、パーキンソン病の薬に関する質問がありました。
「レボドパ500mgとゾニサミド50mg服用しているパーキンソン病の患者さんで、ジスキネジアがひどかったので、ゾニサミドを中止して、アマンタジンを開始して150mgまで増やしたらジスキネジアが多少軽減しました。ジスキネジアを抑えるよい方法はないでしょうか?」
「現状ではジスキネジアを抑える方法としては、レボドパの服用方法を工夫する以外は、アマンタジンを使うという方法しかないと思います。ただし200~300mgだと幻覚・妄想など精神症状が出る場合があるので、150mg以下で維持するのがいいと思います。」と私は返答しました。ジスキネジアに対するアマンタジンの効果は60%程度で、1年継続後になると50%程度と言われています。レボドパ・アマンタジン以外の薬はすべてジスキネジアを悪化させる(例えばセレギリン)と言われているので、それらの薬を使用している場合は順次中止していくのが良いと治療ガイドラインでは言われています。
また別の臨床医の先生からは「パーキンソン病の治療薬で優先順位をつけるとすれば?」と訊かれました。誰もが知りたい質問のはずですが、これまで25年神経内科医をやっていて、おそらく初めて訊かれた質問だったのですが、やや悩みながらも以下のように回答しました。
1) レボドパ
2) アマンタジン
3) エンタカポン
パーキンソン病の動作歩行障害にはレボドパが欠かせない薬であるというのはおよそ万人が一致する意見だと思います。レボドパはアミノ酸で自然物質に近く、パーキンソン病治療薬の中で最も副作用の頻度が少ないというのが現実だと思います。90歳を超えた症例でも少量であれば安全に服用できて、かつ有効性が高いわけです。神経毒仮説については賛否両論があるのは事実ですが、私の考え方としては「その患者にとって必要以上の用量を処方すれば、神経毒として作用する」というものです。それは最近診察している患者さんからもはっきり見てとれるわけです。従来型のパーキンソン病(PD)ではなくて、パーキンソン病+認知症(PDD)・重症タイプの症例については、レボドパの必要量は100~200mg程度が適量だと考えています。1日量300mgになると幻覚などの精神症状が誘発されることがほとんどです。従来型のPDでも1日量600mgを超える量を継続すると高率に精神症状が出ると思います。特に高齢になればなるほどその可能性は高まると思います。
アマンタジンについては、レボドパの長期連用に伴って現れてくる、ジスキネジアを抑制できる唯一の薬としての重要性だけではなく、最近増加していると思われる、PDD・軽症タイプや高齢発症のPDに対して有効かつ副作用がでにくく使いやすい薬だという事です。ただし必要量は50~150mgになります。高齢者の場合は腎機能障害の問題があり、200mg以上を長期に継続すると、代謝されにくいので副作用が出やすくなるわけです。
エンタカポンについては、レボドパの効果を30~60分延長するための薬としての存在意義があります。言わばレボドパの補完的な位置ですが、レボドパという薬のもう1つの問題が、5~10年服用を継続することで、約半数程度にみられるウェアリングオフ現象(レボドパの効果が服用後2時間程度で切れてくる)の問題があるため、長期罹病者で必要になるケースは出てきます。高齢者でも安全に服用できるというのがいいのではないかと思います。
ドパミン・アゴニストなど他の薬がベスト3に入らなかった理由は、これまでのブログで詳しく書いてきたように、メリット以上にデメリット(副作用)の部分が大きく、特に高齢者に忍容性が低く、副作用による減量・中止を余儀なくされる薬が多いというのが実情だからです。
パーキンソン病患者さんのメインの年齢層が75~85歳が中心で、80歳以上の年齢層も多いという実情を考慮すればこの3種類の薬が中心にならざるをえないのではないでしょうか?


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# by shinyokohama-fc | 2017-06-26 13:24 | 治療

ドパミンアゴニスト徐放剤+ゾ二サミドが高率に精神症状を誘発

これまで当院へ来られるまでに、深刻な精神症状 (現実味を帯びた幻覚、被害妄想など)をきたしていた方々の多くが、内服薬のドパミンアゴニスト徐放剤 (ロピニロール、プラミペキソール)と抗てんかん剤のゾニサミドを服用していました。多くのケースではドパミンアゴニスト徐放剤 (1日1回の服用薬)を増量する段階で出現しているようです。ゾニサミドは1日50~100mg程度のことが多いようです。それぞれの薬の特色については、以前の2つのブログにくわしく書いてありますので、ご参照ください。
おそらくこの2つの薬剤に関しては、手のふるえに対して効果があるという学説や論文などが多くを占めているので、専門医から処方される傾向があるようですが、手のふるえが軽くなる代償として、ひどい精神症状によって当人は精神錯乱状態となり、家族に多大な迷惑をかけているケースが数多くみられます。手のふるえを軽くするための治療としてはあまりにもハイリスクすぎないかと思います。もちろんこの2種類の薬を同時に併用しても、ドパミンアゴニスト徐放剤を増量しても精神症状が現れない幸運な人もいるとは思いますが、精神症状が出てしまう人は本当に深刻です。最近、患者さんのご家族による当院へ来院前の精神錯乱状態に関する詳細な記録を拝読する機会があり、胸につまるものがありました。ドパミンアゴニスト徐放剤とゾニサミドが使われるようになってから、深刻な精神錯乱レベルの副作用の事例が増えてきたのは、間違いないでしょう。以前「麦角系」のドパミンアゴニスト(ブロモクリプチン、カベルゴリン、ぺルゴリド)を主として使っていた時代はこのような深刻な精神症状をきたす事例は経験も見聞もしなかったように思います。また「非麦角系」のドパミンアゴニスト(ロピニロール、プラミペキソール)が登場した後もそれほどでもなかったと思います。やはり内服薬のドパミンアゴニストが速放剤から徐放剤に変更されてからではないかと思います。私が思うに、欧米人と日本人は明らかに体格・体質が違いすぎるので、 製薬会社主導ではない、大規模臨床試験を実施して副作用を再検証する必要があるのではないかと思います。
神経学会のパーキンソン病治療ガイドラインによると、幻覚・妄想の治療アルゴリズムというのがあり、直近に加えた薬物を中止するようにという指針があり、もちろんドパミン・アゴニスト、ゾニサミドも含まれています。
薬によって副作用が出てしまうのは仕方がないにしても、明らかに深刻な薬の副作用が出て、精神錯乱状態になっているのにもかかわらず、減量しない、中止しない、強制的に続行するという外来医の姿勢に問題があります。
患者側には「拒否権」があります。「ドパミン・アゴニスト、ゾニサミドを開始・増量してから、明らかに幻覚・妄想が出現している場合」に関しては、減薬・中止してもらうように申し出るべきでしょう。外来医は診察室のたかだか1~2分のごく短時間の患者さんの姿しか見ていないので、いかに深刻かを実感できない場合が多いようです。
「パーキンソン病」と診断されたはずの患者が、治療薬が開始されてから、幻覚、妄想、精神錯乱状態に至ってしまうと、なぜか途中から「レビー小体型認知症」にされてしまうというパターンがあまりにも多すぎて、失笑を禁じ得ないというのが私の感想です。「レビー小体型認知症」という病名を途中からわざわざ持ち出す真意はいったい何なのか?専門医による「レビー診断病」に決して騙されないようにしましょう。
個人的にはドパミンアゴニストについては、最初から徐放剤を使うべきではなく、まずは速放剤で2~3か月経過をみてから、徐放剤に変更する、安易にゾニサミドを併用しない。というのがおそらく無難な使い方ではないかと思います。そもそもレボドパを3回以上服用する場合は、ドパミンアゴニストも速放剤のまま1日3回で十分ではないでしょうか?わざわざ精神症状の危険をおかしてまで徐放剤を使う意義があるのか?とすら最近は感じています。
欧米人にはそうではない薬でも日本人にとっては超劇薬。そういう事は珍しくないと考えるべきでしょう。
体重80~90kgの60歳の欧米人と体重30~40kgの80歳の日本人に同じ処方をしようとする事が、そもそもおかしなことではないでしょうか?常識的に考えれば、そんな当たり前のことは誰でも理解できるはずです。


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# by shinyokohama-fc | 2017-06-12 12:36 | 治療

パーキンソン病に処方してはいけない薬、エチゾラム&ゾルピデム

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬、特にエチゾラムは、70歳以上の発症して5年以上経過した、ヤール3度以上のパーキンソン病患者には処方してはいけないと考えます。理由は2つあります。
理由その1、パーキンソン治療薬の効果を妨害することが多い
理由その2、依存性・増量により呼吸抑制、誤嚥による肺炎を誘発しうる
1年前に外来で診ていた患者で、パーキンソン病ヤール3度、72歳男性。発症8年目。レボドパ・カルビドパ300mgとモサプリド15mgを続けていました。
前医で長期にエチゾラムが眠前処方されていて、夜間の唾液~喀痰貯留、呼吸困難があったため、エチゾラムを中止して、非ベンゾジアゼピン系睡眠導入薬に変更したところ、夜間の症状はなくなったようです。
エチゾラムを高齢者になるまで長年処方されている方で、何らかの脳疾患(脳梗塞、脳出血、パーキンソン病など)70~80歳で深刻な誤嚥性肺炎を起こすケースが多いようで、私もこれまで10例前後は経験しています。
それゆえエチゾラムという薬は私は自ら新規処方を開始しない薬です。この薬は筋緊張を緩めるために、パーキンソン病患者にとっては癖になりやすい薬です。ただし薬物依存性が非常に高く、エチゾラム信者になってしまう。最もやめにくい薬です。今年、この薬がようやく処方制限が出ました。今までなぜ放置されてきたのか?と思います。
エチゾラムは飲み始めたら最後、処方し始めたら最後という薬だと言っても過言ではないでしょう。慢性頭痛に筋緊張型頭痛という頭頸部の筋肉の収縮性の頭痛をきたすタイプの頭痛に対しても、安易にエチゾラムを処方する神経内科医がいるようです。海外の常識からすれば考えられないことで、「日本の薬の常識は世界的に非常識」と言えるでしょう。米国では州によっては禁止薬物に指定されている薬が、日本では普通に処方されているというのはどうなのか?と疑問に感じることがしばしばです。
薬物依存を専門に研究している専門家によると、抗不安薬・睡眠薬で問題薬物ベスト6は以下のとおりです。
1) エチゾラム 2) フルニトラゼパム 3) トリアゾラム 4) ゾルピデム 5) べゲタミン (クロールプロマジンとフェノバルビタールの配合剤、特にフェノバルビタールが問題) 6) 二トラゼパム
べゲタミンは特に致死率・死亡率がきわめて高く、自殺企図と肺炎が多いそうです。おそらくクロールプロマジンとフェノバルビタールはどちらも危険な薬ですが、併用というのが神経伝達物質に非常に悪影響を及ぼすのでしょう。
ゾルピデムという薬は、超短時間型の睡眠導入剤で、他のベンゾジアゼピン系睡眠導入剤に比べて、翌朝に持ち越さない、筋弛緩作用が弱く、ふらつきによる転倒イベントが少ないなどの利点が強調されていたため、私も数年前までは処方していました。一時期はこの薬を処方させるためのプロパガンダではないかと思えるくらい、過剰ともいえるベンゾジアゼピン系薬バッシングみたいなムーブメントがあったのを記憶しています。
しかし、この2~3年は、70歳以上のパーキンソン病の患者さんにおいて、他医にてゾルピデムが処方されて、幻覚やせん妄が悪化したり、レム睡眠行動異常が悪化したりという事例が続出しました。これまで他のベンゾジアゼピン系の睡眠薬やゾピクロンではそのような精神症状の副作用は1例もなかったため、非常に驚きました。
パーキンソン病患者の場合は、レム睡眠行動異常が高い確率で併存している、すでにレボドパなどドパミン作動薬を服用している、睡眠覚醒リズムの異常がみられるなど特別な問題があるため、一般よりも幻覚、せん妄などの精神症状が悪化しやすいようです。私がこれまで診てきた、ゾルピデムを服用していた、パーキンソン病患者さんについてはすべての症例でゾルピデムを中止させて、ラメルテオン、少量のプラミペキソール、ゾピクロン、エスゾピクロンなどに変更することによって、精神症状は消失しているようです。


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# by shinyokohama-fc | 2017-06-08 18:46 | 治療

パーキンソン病治療薬の効果を邪魔する薬、酸化マグネシウム (マグミットなど)

パーキンソン病という病気は、動作歩行などの運動症状が現れる、何年も以前から「便秘」の症状が現れる患者さんが多く、パーキンソン病の患者さんの多くは、すでに2~3種類の消化器系の薬剤を服用していることがほとんどのようです。前回のブログでも書きましたが、異常たんぱく質が早期から延髄背側核に問題を起こしますので、その影響で消化管(胃腸)の運動が悪くなると言われています。
便秘への一般的な対処法としては、1日3食で生野菜を食べて十分な食物繊維を取り、食事の時と服薬の時にコップ1杯以上の飲料水を飲むことが推奨されていますが、それでも不十分な頑固な便秘に至る場合が少なくないようで、実際は緩下剤というのが必要とされます。モサプリドはセロトニン受容体刺激により消化管の運動機能を改善する作用があり、神経内科医のパーキンソン病処方においてはかなりの確率で処方されています。長期に服用すると肝機能障害の恐れがあると書いてありますので、モサプリドを服用している方は定期的な血液検査で肝機能が正常範囲かどうかのチェックが必要になりますが、私の経験ではこの薬は概ね副作用が少ない良い薬で、パーキンソン病の自律神経症状である消化管運動障害には欠かせない薬だと言っても過言ではないと思います。
緩下剤として内科でもっとも頻用されている薬、それは酸化マグネシウムです。パーキンソン病患者でも非常によく使われています。しかし、この実際はレボドパというパーキンソン病の治療薬で最も大事な薬とこの酸化マグネシウムや制酸剤 (ヒスタミン受容体遮断剤・ファモチジンなど、プロトンポンプインヒビター・ランソプラゾールなど)が併用されているがために、レボドパの小腸からの吸収が著しく阻害(邪魔)されて、レボドパが脳に十分に到達しないという状態になります。そのためいくらレボドパ(ドパミンの前駆体)を服用しても有効に作用せず、必要以上にレボドパが600~800mgまで増やされてしまうという事が非常によくみられます。レボドパはアミノ酸でパーキンソン病治療薬の中では最も副作用が少ないのですが、400mg以上に増やすと副作用出現頻度が高まると海外の大規模臨床試験では報告されています。パーキンソン病病歴5年以上の患者さんの多くにとってレボドパは運動症状を改善する必要不可欠な薬ですので、その肝心の薬の効果が阻害されるというのはかなりシビアな問題になるのですが、レボドパとマグネシウムを同じ時間に服用している患者さんがどういうわけか非常に多くみられます。
私はパーキンソン病の患者さんには、原則的に酸化マグネシウムを処方しないようにしています。日本人にとっては緩下剤(便秘を解消する薬)としては漢方薬が最も合うということは確認されていますので、パーキンソン病患者さんに対しては漢方薬をファーストで使うべきだと考えています。ただし長年前医にてマグネシウムを処方されている患者さんについては、レボドパを服用して2~3時間後にマグネシウムを服用するように指示しました。そうすることによって発症後20年以上経過した患者さんにおいてもレボドパ(同じ1日量)の効果が著しく上がり、1日の動作レベルが向上したようです。
酸化マグネシウムは腎機能が低下した高齢者では、長期間服用を続けると、「高マグネシウム血症」を起こしやすいと言われています。それゆえ製薬会社からの以下のような注意勧告があります。
・処方に際しては、必要最小限の使用にとどめてください。
・定期的に血清マグネシウムを測定して、高マグネシウム血症の発症に十分注意ください。
・高マグネシウム血症の症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診するようにご指導ください。
①血清マグネシウム5.0mg/dl以上 ; 悪心、嘔吐、徐脈、起立性低血圧、筋力低下、嗜眠、倦怠感、無気力
②血清マグネシウム6.0~12.0mg/dl ; 房室ブロック、QT延長症候群、嚥下障害、筋肉麻痺、血圧低下
③血清マグネシウム18.0mg/dl以上 ; 昏睡、呼吸筋麻痺、血圧低下、心停止
①~②くらいの症例は、75歳以上でマグネシウムを長期服用している、体重30~45kg程度の虚弱な女性であれば、よく見かけるはずです。しかし血清マグネシウムが定期的に測定されているケースは残念ながら非常に希少のようです。以前のブログで何度も取り上げている、高力価・高用量のコリンエステラーゼ阻害薬 (リバスチグミン18mgやドネぺジル5~10mg)と併用していれば、相互作用増強で心臓不整脈のリスクが高まるでしょうし、レボドパ・ドパミンアゴニストなどパーキンソン治療薬が高用量で使用されていれば、低血圧による失神など自律神経不全の悪化のリスクが高まるであろうと推定されます。
パーキンソン病患者の高齢者で当たり前のようにどこでも使われている薬だからこそ、要注意なのだと思います。


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# by shinyokohama-fc | 2017-06-05 19:07 | 治療
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