パーキンソン病のふるえ(振戦)、薬物治療の限界と新しい治療

同じ県下にある、湘南藤沢徳洲会病院において、パーキンソン病のふるえに対する超音波治療の臨床研究が始まっているようです。昨年11月にMRIガイド下集束超音波治療(MRgFUS)の装置を導入して、今年から実用開始して、振戦優位型パーキンソン病の症例、3例の治療に成功したとの事です。
ヘルメット型超音波装置を頭に装着し、2時間程度かけて標的部位を確認してから10回の超音波の照射を実施したところ、ふるえ(振戦)と筋肉のこわばり(筋固縮)が軽減効果が確認されたようです。
振戦優位型パーキンソン病に関しては、当院でも何例か症例を診ていますが、ふるえ(振戦)+筋肉のこわばり(筋固縮)という組み合わせです。振戦優位型は動作の遅さや姿勢不安定による歩行障害はほとんど目立たないケースがほとんどです。発症してから数年経過しても、1人で歩いて通院できる方が多く、歩行には支障はほとんどなく転倒などはありません。しかし、日中通してふるえが非常に強く、ストレスがあるようです。
一般的に投薬による制御が難しい事が多く、最も良く効くと言われる、プラミペキソール(ビ・シフロール/ミラペックス)などのドパミンアゴニストは薬剤による精神系の副作用が問題になりますし、レボドパ配合剤(メネシットやマドパーなど)であればかなり増量しないと効果が得られないです。レボドパは早期から増量すると効果の減弱による、オフ現象やジスキネジアが出現しやすくなると報告されています。
半年前から当院で定期受診されている、69歳の男性の振戦優位型パーキンソン病の方がいます。
最初に通院された病院の処方では、プラミペキソールの増量でひどい薬剤性せん妄、幻覚、被害妄想となり、次に転院された病院の処方では、レボドパ・カルビドパ(メネシット)450mg+エンタカポン300mg+ゾニサミド(エクセグラン)100mg/日でふるえはほぼ完全に止まってました。そのため全くパーキンソン病らしさが感じられませんでした。やはり軽度の薬剤性せん妄のために、ぼーっとして生気がないという印象で、奥さんも通常の会話がまったくできないと嘆いていました。病院への通院が遠方で長時間待機などで丸一日かかるため、通院しやすい小生のクリニックへの転医を希望されました。小生が2~3か月かけて、レボドパ・カルビドパ300mg/日のみまで薬を減量しました。左手優位のやや大きなふるえ(振戦)が静止時と歩行時に目立つようになり、見た目はパーキンソン病らしくなりました。前医投薬の大幅な減量によって、ふるえと筋固縮は目立つようになりましたが、薬剤性せん妄は完全になくなり、表情が生き生きするようになり、会話も普通にできるようになりました。ふるえを薬で無理に抑えようとすると、こうなるという典型的な事例だったと思います。
パーキンソン病のふるえを抑えるための薬を処方され、ふるえは軽減したが、薬剤性せん妄で精神錯乱を起こしていたり、精神活動が著しく低迷しているとすれば、いったい何のための薬物治療なのか?という事になります。
小生もパーキンソン病のふるえを抑えるために薬物治療をしますが、ゾニサミドかトリへキシフェニジル(抗コリン剤)をまずファーストで使い、次にセレギリンを追加し、レボドパやドパミンアゴニストは極力使わないという方法をとっています。ドパミンアゴニストをまずファーストという方法は改められるべきだと考えています。
ベネフィットよりもリスク(精神系副作用)が大きく上回っている、振戦優位型パーキンソン病に対する現状のドパミンアゴニスト中心の薬物治療の弊害の深刻さを考えると、この超音波治療が広く使われるようにと願わずにはいられません。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2017-09-12 18:37 | 治療

抗精神病薬の長期使用による不随意運動の深刻さ

先週、外来診療において、抗精神病薬によると思われる不随意運動の症例を2例も診ることがありました。
いずれも、ジスキネジアという不随意運動で、原因薬物の服薬量としてはごくわずかでそれぞれ、アリピプラゾール3mg、リスぺリドン0.5mgでした。ただし他に神経系に作用する併用薬が2~3種類あるため相互作用によって血中濃度が高くなっている可能性が考えられました。私が以前から「神経系薬剤の多剤併用が好ましくない」と再三申し上げているのはこういうことです。抗てんかん薬剤については他の薬剤との相互作用による血中濃度の変動が常に問題視されるのですが、認知症、パーキンソン病、精神疾患の薬物処方に関しては、処方している臨床医がまったく意識されていないというのが残念です。
以前もブログに書いたかもしれませんが、抗精神病薬によって不随意運動が誘発されることが非常に多いようです。不随意運動というのは「自分の意志とはかかわらず身体が勝手に動くこと」です。
抗精神病薬というのは、主に「統合失調症」に使うべき薬で、精神科医(精神保健指定医)が処方する薬です。内科医がこのような薬を処方することは滅多にありません。何故ならこのような薬を処方せざるをえない症例は精神科医に紹介するからです。一般的によく使われている薬は以下のとおりです。
1)フェノチアジン系・クロルプロマジン(コントミン、ウインタミン)、レボメプロマジン(ヒルナミン)
2)ブチロフェノン系・ハロペリドール(セレネース、リントンなど)
3)ベンザミド系・スルピリド(ドグマチールなど)、チアプリド(グラマリール)
4)セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)・リスぺリドン(リスパダール)、ベロスピロン(ルーラン)
5)多元受容体作用薬(MARTA)・オランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル)
6)ドパミン受容体部分作動薬(DPA)アリピプラゾール(エビリファイ)
これらの薬を長期間にわたって服用、あるいは2種類以上の使用歴、2種類同時使用などによって、特にジスキネジアという不随意運動が高い確率で発症するようです。3)だけは例外で不随意運動を抑える働きがあります。
それゆえ不随意運動を回避するためには、3)を使用するほうがいいと思われますが、3)の欠点は用量増加、長期服用によって高い確率で薬剤性パーキンソニズムによる動作歩行障害が悪化することです。
1)2)4)5)6)によって実際は身体の静止時(安静時)に身体(体幹)の上下運動を繰り返したり、下半身のみを常時粗大に動かしていたり、片方の上肢が常時動かしていたりと、そのバリエーションは多彩です。
パーキンソン病においてレボドパ配合剤を(メネシット、マドパーなど)を長期間使用しているケースに多くみられますが、抗精神病薬によるジスキネジアとはタイプが違うようです。
私のイメージでは6)2)1)4)の順に出現する頻度が多いのではないかという印象を受けます。最近は高齢者にもアリピプラゾールなどが処方される機会が増えることによってジスキネジアが増えた気がします。
対策としては原因薬剤を中止することです。私の臨床経験では原因薬剤を服用して数か月・半年程度であれば、中止してから2~3か月で消失することが多いようです。しかし75歳以上の高齢者で3~4年以上もの間、抗精神病薬を飲まされて続けている不幸な方も少なくないようで、こういう方は中止しても効果はないようです。
薬の本には「遅発性ジスキネジア」と書いています。この「遅発性」というのが曲者で、服用してから4~5年経過してから出現するケースが多いようです。
原因薬剤の抗精神病薬を処方する医者(多くは精神科医だが、中には知ったかぶりの内科医もいる)はこういう遅発性のジスキネジアやジストニアが抗精神病薬を長期間服用してから現れてくることを知らないようです。薬の副作用の知識がないのに薬を処方する医者としてきわめて無責任だと思います。こういう無知で無責任な医者は抗精神病薬を処方する資格を剥奪すべきではないかと私は考えます。
複数の抗精神病薬とコリンエステラーゼ阻害薬の長期間にわたる併用の後、クロルプロマジンが処方されることによってで深刻な上半身のジストニアになってしまった60歳代前半の若年性認知症の症例を今から3年前に診ることになりました。その悲惨さは筆舌に尽くしがたいものであり、今でも忘れられません。
このような事実があるにもかかわらず、何をもって認知症に対して抗精神病薬を使うことを正当化できるのでしょうか?不随意運動が出れば、精神科医や内科医は自分の責任で処理しようとすることは決してありません。
「自分はわからない、知らない」と言って、「神経内科」の外来へ放り込まれるのです。薬剤性パーキンソニズムと不随意運動(まとめて薬剤性EPS(錐体外路症候群)と呼ぶ)ばかり診させられ続けたこの25年でした。
私は抗精神病薬の副作用で苦しむ患者を診るたびに、怒りがこみあげてきます。やはり抗精神病薬は統合失調症に限定して使用すべき薬ではないかと私は考えます。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2017-08-22 11:44 | 治療

パーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬?(2)

コリンエステラーゼ阻害薬に様々な副作用、有害事象があるという事実は、これまでの過去のブログで書いてきたとおりです。副作用を軽減するという観点でいうと、アセチルコリン賦活作用が他の2種類よりも1/18~1/20程度と言われていて、他の神経伝達物質とのバランスを崩しにくいガランタミンが最も無難に使用できると思われます。
以前の内容の繰り返しにはなりますが、コリンエステラーゼ阻害薬にはさまざまな副作用が報告されていますが、主に問題になるのは以下のものです。
1) 徐脈性の不整脈、脈拍が30~40回/分という高度の徐脈に至り、心停止の危険性。
2) QT延長症候群、心電図でQT時間が延長している状態では、心室性不整脈を誘発して、心停止の危険性。
3) 食欲低下・吐き気、食事が食べられなくなって体重が減少して体力が低下して衰弱。
4) 頻尿、トイレに何度も行く
5) 動作・歩行能力低下、嚥下障害
6) 易怒・興奮性・常同行動悪化
近年、パーキンソン病の非運動症状が問題にされクローズアップされていますが、特に問題になるのが、自律神経不全症状と精神不安定症状です。
A)自律神経不全症状
自律神経は血圧や体温、内臓の働きなどを調整する神経で、活動する交感神経と休息する副交感神経が上手く切り替わらず、さまざまな身体的不調をきたします。MIBG心筋シンチグラフィーで証明されているように、心臓の自律神経が障害されてしまうため、血圧・脈拍がコントロールできず不安定になって血圧・脈拍が上がったり、下がったりする。特に立ち上がった時や食事後に血圧が急激に下がって気を失いそうになるなど。また体温調節の異常によるうつ熱、消化管運動能力の低下による便秘、膀胱を動かす運動能力低下による頻尿などが問題になります。
2) 精神不安定症状
もともと幻覚・妄想、抑うつ・不安神経症、などがみられますが、病気が大脳の前頭葉や辺縁系に影響を及ぼすために、この程度が強い事例では、易怒・興奮・精神錯乱などがみられることもあります。特にドパミン・アゴニストやその他の治療薬でこれらの症状が増強している状況があります。
以上でお分かりであろうと思いますが、元々、動作歩行能力が低下し、自律神経症状があり、精神症状のあるパーキンソン病に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬の追加処方は、時として火に油を注ぐようなものになりえます。
コリンエステラーゼ阻害薬を処方できるパーキンソン病というのは、動作歩行能力が低下していない(ヤール1~2度)、自律神経障害が少ない(血圧変動がほとんどない)、精神症状が少ない、という事例に限られるのではないかと思われます。そういう事例でも時間の経過とともに、病気が進行して運動症状、自律神経症状、精神症状が強くなっていくと推定されますので、いずれ安全に継続服用するのが難しい状況におかれるでしょう。
一般的にコリンエステラーゼ阻害薬の効果は1~3年程度しかもたないと言われていますので、特に75歳以上の高齢発症で、病気の進行が速く症状が重い事例では、パーキンソン病の諸症状をむしろ悪化させたり、副作用リスクの高い薬をわざわざ使う必要があるのか?と考えると強い疑念があります。
どうしてもコリンエステラーゼ阻害薬を使うと言うのであれば、リバスチグミンを1.125mg~2.25mg/日、ガランタミンを2~4mg/日、ドネぺジルを0.5~1mg/日程度でしか安全には使えないのではないでしょうか。
教科書に書いてあるパーキンソン病という病気の解説には、必ずアセチルコリンとドパミンの天秤の絵の解説があって、ドパミンよりもアセチルコリンが過剰になっているとされています。私が神経内科医になったばかりの時代は抗コリン剤がよく処方されていたほどです。コリンエステラーゼ阻害薬というのはアセチルコリンを増やす薬で、その真逆の作用です。アセチルコリンが過剰になっている状態にさらに上乗せする意味があるのか?ということになりますが、もし意味があるとすれば、それはドパミンを増やす薬を過剰に投与しすぎた場合に限られます。コリンエステラーゼ阻害薬を使おうと考える前に、まずはドパミンを増やす薬を減らすことを考えるべきだと思います。
当然ながらパーキンソン病にはコリンエステラーゼ阻害薬の適応はありませんので、上記のようなリスクとそれを冒してまで服用すべき必要性を十分に説明して同意を得る必要があるでしょう。適応外使用であることに関しても説明して同意を得る必要があるのではないかと考えるわけですが、実際に多くの患者さんたちは外来医からも薬剤師からもロクな説明を受けておらず、ただ訳も分からない状態で服用させられているというのが現実ではないでしょうか?


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2017-07-11 12:04 | 治療

パーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬?(1)

小生はパーキンソン病の関連学会に所属しているわけですが、学会ではパーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬を使用することを推奨しており、治療ガイドラインにもそう書いてあるようです。また、最近発行された、パーキンソン病の治療に関する専門書(医学書)にも、コリンエステラーゼ阻害薬を処方する症例報告が当たり前のように掲載されています。パーキンソン病のエキスパートを自称されている先生方も、「パーキンソン治療薬を3~4種類処方した症例で幻覚・妄想が出現した症例にコリンエステラーゼ阻害薬を追加して良くなりました。」と自慢気に発表されていました。実際に使われる薬剤は、リバスチグミンとドネぺジルのようで、なぜかガランタミンが選ばれることはないようです。
実際にコリンエステラーゼ阻害薬を使用する意図としては、パーキンソン病に伴う精神症状である幻覚(特に幻視)を抑制するという目的が多いようです。認知機能低下を遅らせるという目的の場合もあるようです。リバスチグミンは1日用量18mg、ドネぺジルは1日用量10mgで使うように推奨されています。
学会のエキスパートを自称する先生方の講演会によると、パーキンソン病を発症して10~15年経つと認知症になるというお決まりのスライドが提示されます。認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の診断基準では、簡易テスト(MMSE)が26点以下としているそうです。この基準はそれまでの認知症の診断基準よりもハードルが下げられています。この基準だとパーキンソン病を発症している75歳以上の患者の2/3くらいは自動的に「認知症」にされてしまいそうです。治療ガイドラインでは「認知症であれば、ドネぺジルを試みるように(グレードB)」と記載されています。確かに、神経内科の専門医は判で押したようにどんなパーキンソン病症例に対してもこの薬が試みられているのが現実のようです。私はこのやり方に懐疑的ですので、こういう処方を選択することはありません。
レビー小体型認知症(DLB)におけるドネぺジルの安全性評価(承認時)によると、パーキンソン治療薬を一切服用しておらず、介助を必要としない日常生活動作が自立したレベルの運動障害、重症度ヤール1~2(5段階で)に使用することが望ましいようです。薬剤性パーキンソニズムの原因薬剤リストにも入ってる薬剤でもありますので、それが当然だと思います。パーキンソン運動症状が軽度(ヤール1~2レベル)で比較的若年(50~65歳)のレビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン運動症状が重度(ヤール3~5レベル)で発症10~15年経過した老年(75歳以上)の認知症を伴うパーキンソン病(PDD)がいつのまにか一緒くたにされてしまっている??というおかしな現実があるようです。
学会では「PDDとDLBは同じ神経病理だ」と言われますが、はたして同じ神経病理だから同じ病気なのでしょうか?死後の病理組織の所見だけで病気のすべてが説明できるわけではありません。神経の学会というのはとかく「病理至上主義」になりがちで、それが強く反映されたのが、多系統萎縮症(MSA)という病名の誕生です。それまで、別々の診断名であった、小脳症状が主体のオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)とパーキンソン症状が主体の線条体黒質変性症(SND)、自律神経症状が主体のシャイドレジャー症候群(SDS)を、同じシヌクレインが脳にたまる病理だからという理由で一緒くたにされてされてしまったという歴史があります。近年は学会においてエキスパート専門医を自称する先生方はPDDとDLBも同じ病名(レビー小体病)にしてしまおうという動きがあるようです。しかし、実際の臨床では前者(PDD)は発症して5~10年が経過し、パーキンソン治療薬が4~5種類てんこ盛りにされていて、ヤール3~5度です。当然治療薬過剰処方によって誘発されている幻覚・妄想もあります。後者(DLB)は発症して2~3年で、パーキンソン治療薬は全く処方されていない状態で幻覚・妄想があり、ヤール1~2度、やや動作が遅く歩きにくいという程度です。これだけ薬の使用状況が異なるにもかかわらず、これらは「同じ病気」と言えるのでしょうか?
ドネぺジルの安全性評価を見る限り後者(DLB)はともかく、前者(PDD)には果たして適応はあるのでしょうか?
今から約10年前にヤール3度のPDDの70歳男性にドネぺジル3mg/日で使用していました、認知機能は使用後からすぐに改善したのですが、ドネぺジルを4~6か月継続した時点で動作歩行レベルは明らかに低下しており、転倒による怪我が増えてしまいヤール4度になってしまったことがありました。また2年前にヤール3度のPDDの65歳女性にリバスチグミン18mg/日で使用していました。規定通り1か月ごとに4.5mg→9mg→13.5mg→18mgと増量していきました。その1か月後から、体幹の前屈と傾斜という姿勢異常が強くなり歩行時の姿勢保持が困難になり、やはりヤール4度になりました。これらの2つの事例を見てもわかるように、PDDに対してはドネぺジルやリバスチグミンを現在の推奨されている用量で使うというのは非常に難しいと言わざるをえないでしょう。
最近はリバスチグミンを非常に多くの症例で使用されている先生が、「パーキンソン病にリバスチグミンを少量で使えば、歩行が改善する」と言われていましたので、小生が診ている5つの症例で1日用量2.25mg~4.5mgで使ってみました。結果は2勝3敗。残念ながら、むしろ歩行障害や姿勢異常が悪化した症例が3例もありました。
パーキンソン病、特にPDDでは、視床のアセチルコリン神経(チャンネル6)が減少しているので、姿勢保持が悪化して転倒しやすくなるという仮説があります。リバスチグミンは脳幹網様体には有効に作用しても、ガランタミンのように視床には有効に作用しないようです。コリンエステラーゼ阻害薬の反応性を観察するかぎり、PDDとDLBではアセチルコリンとドパミンの相対的バランスは明らかに違っているのは間違いないでしょう。アセチルコリン神経系の障害や局在部位には症例によって明らかに差異がありますので、「死後の病理所見が同じだから、同じ薬を使え」という理屈は到底通らないのではないでしょうか?
臨床よりも病理偏重である診断名は混乱を招きます。「レビー小体っていったい何ですか?」というのが多くの一般人のうける感想ではないでしょうか?またレビー小体とパーキンソン病の因果関係は解明されておらず、レビー小体はパーキンソン病の原因なのか結果なのかは不明。レビー小体だけがパーキンソン病の原因とは特定できず、ミトコンドリアが原因であるという仮説も有力ではあるが、現在研究中のようです。そういう専門家にしかわからないような病名、特に患者さんの立場からわかりつらい病名というのは適切ではないと思われますし、まったく臨床像が異なる病気を一緒くたにしてしまうのは誤解を招くのではないでしょうか?


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2017-07-10 12:36 | 治療

パーキンソン治療薬と医療経済/国民皆保険医療・持続不能

本日の日本経済新聞の朝刊の1面記事です。「国民皆保険による医療 医師の半数「持続不能」」数年前から日本経済新聞をとっているので、医療系の記事には注目するようにしています。
医師向け情報サイトの会員医師に対して、6月中旬にインターネットでアンケートを実施して、回答が1000人に達した時点で集計したそうです。このアンケート集計によれば、約半数の医師が「現体制の国民皆保険による医療は維持できない」と回答したようです(回答者は勤務医81%、開業医19%)。
医療費の高騰問題で、常に問題にされることとしては
1) 高齢者に対する非高齢者と同等レベルの濃厚医療が施されている
2) 医療の高度化による薬剤費の高騰、特に新規認可薬の高価格
1)に対しては、例えばある学会では高齢者の誤嚥性肺炎に対する抗生物質の投与が疑問視されています。私も約10年前までは急性期病院勤務医でしたが、寝たきり状態の高齢者に対する延命目的の輸液(持続点滴)、繰り返す誤嚥性肺炎による発熱に対して何種類も抗生物質を点滴をしたりしながら強い疑問を感じていました。
私が主に診療している、パーキンソン病という病気に関してこの問題を考えてみると、発症して10~15年以上経過した80歳を超えた患者さんに対しても、レボドパ、アマンタジン以外の高額な新規治療薬を4~5種類も処方されていることが珍しくなくて、その過剰処方の副作用を抑えるために定番のようにドンペリドンが追加されています。しかし実際は新規治療薬を入れられすぎて、肝心のレボドパが全然効いていない症例が多く、動作歩行は全く良くなっていなくて、幻覚・妄想でひどい精神病になっているか、慢性的なせん妄状態に至っており、「レビー小体型認知症に進行したので」と言われて、さらにドネぺジルが追加されてしまうというパターンが非常に多いようです。80歳以上の女性にこれだけの多種多様で大量の神経系薬剤が重ねられると普通に考えれば廃人化してしまう危険性が高くなります。誤解を恐れずに言ってしまえば、このような病状を悪化させるだけの行き過ぎた多剤併用処方(ポリファーマシー)は、医療費の高騰化を推進する最大の要因でしょう。高齢者に対して高額処方を長期に継続した結果、神経薬物中毒あるいは二次的な合併症で救急受診~入院することにより、さらなる医療費がかかります。
私が近年「パーキンソン病の薬物治療」を問題視し始めたのは、こういう事例が後をたたない状況だからです。パーキンソン病という病気は、がんとは違って、病気が直接的に生死にかかわる病気ではなく、レボドパの導入によって動ける期間が延長したことで多くの患者さんが恩恵を受けているという半面、この20年で薬の種類が増えすぎてしまい、年齢や病状など患者の状況を深く思慮なしに、動けなければ薬を追加するの繰り返しをしているのではないかと思います。効果がはっきりしない薬を中止して別の薬に変更するのであればまだしも、効果がはっきりしない薬でもそのまま続行し中止することなく、別の薬を追加するという「足し算処方」ばかりなので雪だるま式に薬ばかりが際限なく増えるようです。パーキンソン病治療薬以外にも、抗精神病薬、抗認知症薬、抗不安薬、抗うつ薬など際限なく薬が足し算されていくようです。「たくさん薬を処方する・服用する=精一杯治療努力をしている」という勘違いそのものではないかと思います。医療経済を多少でも意識すれば、80歳以上の高齢者のパーキンソン病についてはレボドパとアマンタジン以外はあと1種類程度の処方薬にとどめるべきではないかと思います。パーキンソン治療薬の中には1錠800~1000円という超高額な薬もあります。また病気が進行したヤール4~5度の症例に対しては、むしろ不必要な薬を少しずつ減らして最低限の処方にとどめるべきではないかと考えます。
前回のブログにも書きましたが、やはり早期のヤール1~2度の時期からよく外出して歩行して手足をよく使うことがどんな薬物治療よりも勝るのではないでしょうか?私が診てきた患者さんの実例がそれを証明しています。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

# by shinyokohama-fc | 2017-06-30 12:04 | 医療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line