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意味性認知症の症例発表

先日、東京都内で行われた認知症に関する研究会で、講演をしました。私が経験した、意味性認知症の2つの症例を提示して、それぞれの症例に対する前医での薬物処方、当医での薬物処方とその転帰についての反省を含めた考察を行いました。当日は台風が直撃するという予報で大雨の悪天候の中を30人程度の、医療関係者、患者家族の方々がお越しになられました。
私が今回話したような「意味性認知症」というテーマの講演はなかなかないという事で、前頭側頭型変性症の患者会の方3名が、私の講演を聴く目的で来られたようです。
患者会の方々から、配偶者やご兄弟である患者さんの話を訊いてみて、神経難病の介護の切実さと薬物療法による症状の増悪の深刻さが改めて痛感させられました。
このような話を訊いてみて、今後はFTDよりも多くの症例を診ている、「レビー小体型認知症(DLB)」「認知症を伴うパーキンソン病 (PDD)」「進行性核上性麻痺 (PSP)」「大脳皮質基底核変性症(CBD)」という病気に関して、患者側・介護側に向けての講演活動の必要性を痛感させられました。
このブログでもずっと書いてきた事ですが、意味性認知症、行動障害性、ピックコンプレックス系のPSPやCBDに対してドネぺジル、リバスチグミン、抗精神病薬 (クロールプロマジンなど)を使うことによって病状悪化したという報告が訊かれました。
後日、メールにて上記のうちの2名の方々の病状経過を詳細に訊いたのですが、嚥下障害、運動障害がかなり進行して重症化しているようでしたので、おそらくPSPサブタイプだと推定されました。
PSPは様々なサブタイプがありますが、私が診てきた症例で言いますと、100例中10~15例程度が、FTD的な症状(語義失語、行動異常、脱抑制、アパシーなど)で発症する症例があり、初診時は運動障害がほとんど目立たないので、FTDと診断するしかないのですが、1~2年のうちに急速にPSPあるいはCBD的な運動症状が進行してしまい、立って歩くことができなくなります。この2例もそういう経過のようでしたが、頭部打撲や上記に挙げた薬の副作用によって悪化した側面もあるようです。PSPは前頭葉~側頭葉を中心とした大脳皮質広範囲にタウ蛋白質がたまる病気ですが、頭部打撲によりタウ蛋白質がカスケードで拡散することが知られています。私も数例経験しましたが、硬膜下血腫まで起こしてしまった症例の機能予後は特に悪いようです。
FTD的症状の場合は、精神科にかかることが多いのですが、次第に運動症状が出てきて、精神科から私の外来へ変わってくるケースが多いようです。最近は70歳以上の高齢者の急増に伴って、このようなピックコンプレックスのPSP、CBDの症例が急増しています。
私がFTDに抗精神病薬を原則NGにしている理由はまさにここにあります。現在はFTDよりもPSPやCBDの有病率のほうが高いからです。この3年、FTD様症状で初診で来られた方のうち、半数以上がPSPやCBDのような運動症状が出現して1年以内に重症化していくという転帰をとりました。
PSPやCBDではコリンエステラーゼ阻害薬(ドネぺジルやリバスチグミン)と抗精神病薬(リスぺリドン、ハロペリドール、クロルプロマジンなど)で著しく病状が悪化します。その悪化具合はDLBやPDDよりも顕著で、原因薬剤を中止しても不可逆的である事が多いです。これは、PSPやCBDでは、中脳のドパミンニューロン、セロトニンニューロンなどの障害程度が、DLBやPDDをはるかにしのぐレベルだからです。これはある病理学者の書いた書籍に書いてありまして、2年前にそれを知りました。いろいろ使ってみて、少なくとも病状を悪化させない神経作用薬はアマンタジンなど限られた薬だけである事がわかりました。つまり、アマンタジンだけを服薬して、他の薬を使わなければ少なくとも薬による病状悪化は防げるであろうと思います。先日のブログで書いたようにPDDという病態もそうです。PSP、CBD、PDDに使える薬はかなり限定されていますが、それが知られていない、正しい臨床診断が難しく、適当に薬を試されてしまうという点が予後をさらに悪くしているのであろうと思います。


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by shinyokohama-fc | 2017-10-31 19:31 | 治療

ドパミンアゴニストは若年者PDには有用

ドパミンアゴニストの中では、ロチゴチン(貼付剤)がドパミン受容体に均等に作用すると言われています。私が診ているパーキンソン病の方でも、50台前半と40台半ばの男性にこのロチゴチン(貼付剤)を使用しています。2名とも発症して5年以内にウェアリングオフ(レボドパの効果が短くなってしまい、持続時間が短くなる現象)が出現してしまっている難しいケースです。通常はウェアリングオフは発症して10年で出現するので、かなり早いです。
ドパミンアゴニストの利点は、ウェアリングオフを軽減する以外に、抑うつを軽減する効果もあります。以下の症例は副作用のためにドパミンアゴニストを漸減中止して、ウェアリングオフ現象と抑うつが顕著に現れた症例です。
40台半ばの男性。3年前から動作が緩慢で、日内変動が顕著で、時間帯によって動作歩行ができなくなっている方です。静止時振戦(じっとしている時の手のふるえ)は全く出現しておらず、無動固縮型です。
1) レボドパ・カルビドパ100mg×1日2回、
2) ロピニロールCR (徐放型)8+2mg、1日1回
3) セレギリン5mg、1日1回
当院へ来られたきっかけとしては、①仕事中の突発性睡眠(突然眠くなる) ②衝動制御障害(病的賭博) ③立ちくらみでした。①②はドパミンアゴニスト(ロピニロール)の副作用、③はセレギリンの副作用と推定されました。
初診時の血圧測定では、座位~立位1~3分で血圧が段階的に12mgまで低下する傾向があったので中止。
特に①に関しては高所作業の仕事が危険でできない ②に関しては、ドパミンアゴニストを中止しないと収まらないと言われていますので、10→6→4→0mgと段階的に漸減して中止しました。その一方でレボドパを1日300mgとして、6回分割で服用としました。当時の当院の処方は以下のとおりです。
1) レボドパ・カルビドパ 50mg×1日6回
2) イストラデフィリン 20mg 1日1回
しかし、いざドパミンアゴニスト(ロピニロール)を中止してみると、レボドパの効果が1時間しかもたなくなり、日常生活や仕事に支障が出てしまいました。そのためにイストラデフィリン20mgを追加しましたが、ウェアリングオフの軽減にはほとんど効果がありませんでした。さらにそれまでなかったアパシー(何もやる気が起こらないという症状)が顕著に現れてしまいました。②の副作用があったため、本来はドパミンアゴニストを使用するのは適切ではないと考えていましたが、ドパミンアゴニストをロチゴチンに変更して4.5~9mgで開始しました。するとウェアリングオフ現象による無動状態はいくらか軽減し、アパシーの症状も軽減したようです。修正後の処方は以下のとおりです。
1) レボドパ・カルビドパ 50mg×1日6回
2) ロチゴチン 9mg /1日
ドパミンアゴニストはこの症例のように、比較的若年(40~50歳)発症で、無動型で、ウェアリングオフが強い症例にはかなり有用であると再確認できました。前医で処方されていた、ロピニロール10mgというのは、ロチゴチンに換算すると22.5mg相当ですので、ロチゴチン9mgですでに十分な効果が実感できる方にとっては、いささかオーバードース(過量)ではなかったかと考えられました。ドパミンアゴニストは少しでも過量であれば高率に副作用が出やすい薬です。
超高齢化社会で、70歳以上の高齢者が激増した昨今では、パーキンソン病も高齢者の比率が高くなっており、私の診ている方々も、多くは70歳以上です。このような高齢者で、認知機能が大なり小なり落ちているケースにおいては、ドパミンアゴニストは幻覚、妄想、精神錯乱、嗜眠、せん妄などを引き起こすだけのメリットのない場合が多く大半の症例で中止して、アマンタジンなどの別の薬剤に置き換えざるをえない状況でした。
ドパミンアゴニスト・ファーストという学会の提唱している治療薬の使い方というのは、40~50台のパーキンソン病患者さん達には合っていますが、70歳以上のパーキンソン病患者さん達、特にPDDには合っていません (前ブログ「PDDにドパミンアゴニストは百害あって一利なし」を参照)
ドパミンアゴニストという薬は症例をよく選んで、副作用が出現しない程度の適正な用量で使って、生きる薬だと思います。しかし、現実は不適切な症例(高齢者のPDやPDD)に使用されてひどいせん妄、精神錯乱をきたしていたり、今回の症例のように薬の用量が多すぎて、仕事に支障をきたすケースが多くみられるようで、非常に残念です。
「薬は使い方、使用量を間違えれば毒にもなりうる」という格言を証明するのがこの薬だと思います。パーキンソン病の患者さん達とご家族はこの薬の効果と副作用について十分な知識が必要なのではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2017-10-28 16:35 | 治療

DLBとPDDの相違点と共通点

レビー小体型認知症(DLB)と認知症を伴うパーキンソン病(PDD)は全く臨床的なキャラクターが違います。個人的には「レビー小体型」とか「認知症」とかいう名前は非常に気に入らないのですが、公式にそう呼ばれているので仕方なくそう呼んでいます。
DLBは大脳皮質や辺縁系の症状がメインです。軽症型は大脳皮質の後半に限局しますが、重症型は大脳皮質全域に及びます。前者ではドネぺジルやリバスチグミンなどのコリンエステラーゼ阻害薬が著効しますが、後者ではほとんど効果がなく、ドネぺジルやリバスチグミンを使うと精神興奮や錯乱が誘発されてしまうようです。
PDDは脳幹の症状がメインですが、大脳皮質も障害されてしまうので、多くの場合DLBよりも重症です。軽症型では大脳皮質の後半に限局しますが、中等症~重症型では大脳皮質全域に及ぶので、PSPと同様に中枢神経細胞のほとんどが機能不全に陥っており、機能をカバーできる中枢神経領域がほとんど残っていない状態です。軽症型ではレボドパ+アマンタジンがある程度奏功しますが、中等症以上になると効果が落ちてきて、重症型ではほとんど効きません。それゆえ私は「認知症は薬物療法で必ずコントロールできる」とは全く思いません。DLB やPDDだけでみてもコントロールできない症例が半数程度存在します。薬物療法というのは、正常な神経細胞や受容体が残っていて初めて奏功するものですが、PDDやPSPの重症型ステージの症例の場合は、それがほとんど残っていない状態なので薬物療法は奏功しようがないと考えます。
DLBとPDDはかつては認知症が先か、パーキンソン症状が先か、1年ルールというものがありましたが、いつから症状が出たのかなど誰にもわかるわけがないのです。本人が自覚した?家族が気が付いた?重症になるまで気が付かない症例も多いです。MMSEやHDSRやMOCAなどという簡易スケールでの評価は病気のステージを反映しないという事は、患者を診ている医者であればわかります。よって1年ルールは臨床的にはまったく無意味です。
両者に共通しているのは、書字の障害が顕著で、図形や立方体、時計の数字などが上手く書けないという事です。多くの症例は文字が拙劣で、ラインがまっすぐ描けず、書くのに非常に時間がかかり躊躇します。これはパーキンソン症状がほとんど目立たないヤール1~2レベルのDLB症例でも同じです。
両者の相違点は、患者のキャラクターです。典型的なDLBは表情は普通でどちらかというと多弁でよくしゃべる人が多いのですが、典型的なPDDは表情が乏しく、暗くどんよりした雰囲気で口数が少なく、重症になると話そうとしてもほとんど上手く話せない状態になります。運動障害が重くヤール3~5レベルです。軽症型DLBではコリンエステラーゼ阻害薬が多くの症例で奏功し、幻覚や妄想などをある程度抑制する効果がありますので使います。しかしPDDでは軽症型でもコリンエステラーゼ阻害薬は合わない症例が多く2~3か月継続すると多くの症例で姿勢異常や動作緩慢が悪化します。私はPDDで10例ほどコリンエステラーゼ阻害薬を試しましたが、結果は1勝9敗でした。1勝の症例でもリバスチグミン6.75mgで使用しています。
DLBとPDDの軽症型~中等症型ではある程度薬物療法が奏功しますが、しっかりと鑑別をして使うべき薬を選ばないと、薬物でかえって病状がすごく悪化してしまうという転帰をとる事が多いようなので、注意が必要です。


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by shinyokohama-fc | 2017-10-26 18:57 | 医療

パーキンソン病は軽症から重症まである

「Brain」という雑誌の今年度に興味深い論文が投稿されていました。
「Clinical criteria for subtyping Parkinson's disease : biomarkers and longitudinal progression」
パーキンソン病を軽症型・中間型・重症型という3つのサブタイプに分類すべく、脳画像診断や脳脊髄液のバイオマーカー、運動症状と非運動症状の重症度などで評価し、経時的に病状の進行を確認した臨床研究のようです。この研究では対象は未治療の新規パーキンソン病患者421例で、以下の3つのサブタイプに分類されました。
1) mild motor predominant type (運動症状優位・軽症型)
2) moderate type (中間型)
3) diffuse malignant type (広汎・重症型)
1)~3)の重症度分類は、運動症状と非運動症状のスコアで分類され、それぞれ1)221例(52.5%)、2)146例 (34.7%)、3)52例 (12.3%)でした。全タイプで中脳の有意な萎縮が確認され、1)2)3)と重症になるにつれて段階的に悪化、3)では大脳全体の萎縮がみられ、高度な尾状核の脱神経がみられ、脳脊髄液中のアミロイドベータ/タウタンパク比が低値で、病状の進行が速かったという事でした。
やはり重症であればあるほど、アルツハイマーと同じ病理が混在して、タウ蛋白がアルツハイマー以上に広範囲にたまると推定されます。数年前の放射線医学研究所のタウPET検査で証明された、「認知症を伴うレビー小体病」において、タウがたまらないタイプとたまるタイプがあるという報告と矛盾しないのではないかと思われます。
私がかつてのブログで書いていたように、実際に外来で診ているパーキンソン病の症例の重症度・進行度もまさにピンからキリまでですが、特に3)のタイプは、レボドパにもコリンエステラーゼ阻害薬にもほとんど反応せず、対症療法的にも薬物治療がまったく通用しないようです。私もこのような悪性経過の症例を数例診てきましたが、おそらく、進行性核上性麻痺の最重症型(リチャードソン症候群)と同じかそれ以上の悪性経過ではないかと思われます。
これまでの医学書や一般書に書いてある内容のパーキンソン病というのは1)のことしか書かれていません。パーキンソン病はどの症例も15~20年単位で緩やかに進行して、20年経ってから認知症や精神症状が出てくると書いてあります。どの書籍も同じような事しか書いていないようです。こういうのを読むと読者の多くはパーキンソン病というのは均質に良性経過をとる病気だと大きな誤解するのではないでしょうか? これらの書籍の筆者の多くは、敷居の高い大病院で外来診療を行っている著名な先生方が多いようで、おそらく2) 3)のような進行が速くて薬物治療が全く通用しないタイプは1年以内に通院が途絶えてしまうので、進行した状態までフォローされずにスルーされてしまっているのではないかと想像されます。日常の外来診療で2)や3)のタイプの重症進行型のパーキンソン病を少なからず診ている私としては、こういうありきたりな内容の書籍を読んで、パーキンソン病という病気のたかだか50~60%の良性経過の軽症型の内容だけでパーキンソン病のすべてを語るというのはどうなのか?と感じました。特に「パーキンソン病は薬物療法が奏功するので薬物療法とリハビリをやれば生涯を全うできる」というお決まりの文句には違和感を覚えます。本当に患者を診ているのか?とすら思いますね。
今回の論文は、パーキンソン病にも軽症(良性)から重症(悪性)まで多様性があるという事実を示したという点で価値があるのではないでしょうか?これまでのパーキンソン病の医学書や一般書はすべて書き直されるべきでしょう。


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by shinyokohama-fc | 2017-10-24 16:38 | 医療

「失敗しない」高齢者のPDD(認知症を伴うパーキンソン病)の服薬とは

この数か月のブログのまとめになりますが、日常的に、高齢者(目安は70歳以上)のパーキンソン病(PD)、特に認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の服薬において、この1年間で他の医療機関での多くの失敗処方例を見てきて、感じてきたことをブログに書いてきました。「失敗しない」高齢者のPD,PDDの服薬とは何か?というテーマに対してある程度の結論に近いものがまとまったので、以下に箇条書きで示します。
ただし、これは学会の発表している「パーキンソン病治療ガイドライン」とは異なる内容であり、科学的根拠もエビデンス(EBM)もない、学術的実績もない一介の開業医の個人経験的なものにすぎず、学術的には何の意味もなさない内容であることをお断りしておきます。
「失敗しない」高齢者PDD(認知症を伴うパーキンソン病)の処方薬の原則とは、

1) アマンタジンは少ない量で服用したほうがよい、できれば増やさない
2) レボドパ配合剤は少ない量で服用したほうがよい、できれば増やさない
3) ドパミン・アゴニストは服用しないほうがよい
4) コリンエステラーゼ阻害薬は服用しないほうがよい
※ アマンタジン(シンメトレル)
※ ドパミン・アゴニスト;プラミペキソール(ビ・シフロール、ミラペックス)、ロピニロール(レキップ)、ロチゴチン(ニュープロ)、カベルゴリン(カバサール)、ブロモクリプチン(パーロデル)、タリペキソール(ドミン)、ぺルゴリド(ペルマックス)
※ レボドパ配合剤; レボドパ/カルビドパ(メネシット、ネオドパストンなど)、レボドパ/ベンゼラシド(マドパー、イーシー・ドパール、ネオドパゾールなど)
※ コリンエステラーゼ阻害薬; ドネぺジル(アリセプト)、リバスチグミン(リバスタッチ、イクセロン)、ガランタミン(レミニール)

いろいろ試してみましたが、PDDに最適なのは、アマンタジンとレボドパ配合剤の併用ですが、PDDの初期、軽度の場合はアマンタジンだけでも著効する場合が多いようです。レボドパだけだとたとえ少量(100~150mg)でも日中の眠気が強くなり、覚醒度が悪くなる、効果が乏しいケースが多いようです。アマンタジンを50~150mgの範囲では、単独使用では他の治療薬でみられるような幻覚、妄想、錯乱、日中の過眠、せん妄、などはほとんど見られません。精神症状が出るのは200~300mgだと推定されますが、そこまで増やす事はまずありません。なぜなら50~150mgで著効するからです。
しかし、昨今の神経内科の臨床医の処方を見るかぎり、アマンタジンを使う臨床医はほとんどいないようです。失敗例のほとんどは、ドパミンアゴニスト・ファーストで開始されて、レボドパやら他の治療薬を2~3追加しても、ちっとも良くならず、認知症か精神症状が悪化してしまうケースがほとんどです。このような症例でもレボドパ配合剤以外の治療薬を漸減・中止して、アマンタジンに入れ替えると上手くいくようです。
パーキンソン病においては、コリンエステラーゼ阻害薬が前医で処方されている多くの場合、パーキンソン治療薬が3~4種使われた上にコリンエステラーゼ阻害薬が上乗せされるケースがほとんどですので、PDDにおいてともに枯渇状態にある上の、ドパミンとアセチルコリンなどの神経伝達物質の動向が、神経系薬剤の多剤併用(ポリファーマシー)によって非常に複雑で想定外の事が起こります。特に運動症状(特に姿勢異常)の悪化、精神症状の悪化などが高い確率でみられます。それをさらに薬で抑えようとするという悪循環に陥りやすいのです。
コリンエステラーゼ阻害薬を開始して2~3か月は調子よくても、数か月~半年くらい経過すると姿勢異常が悪化する症例がほとんどです。特にドパミンアゴニストとの併用ケースでは姿勢異常は必発と言ってもいいでしょう。
現状はドパミン・アゴニストとコリンエステラーゼ阻害薬は非常に好んで使われていますが、アマンタジンは全く使われていません。アマンタジンを開発した製薬会社も販売権を売り渡してしまったようで、この薬は完全に過去の薬扱いです。しかしパーキンソン病の年齢層のピークが統計によると70歳半ば~80歳であるという現実を考えると
PDD予備軍が今後増えることは確実であり、アマンタジンはむしろレボドパより重要な薬になってくるのではないかと考えています。
70歳の高齢で発症したパーキンソン病や長期間罹患したパーキンソン病は認知症に移行しやすいという事には異論はありませんが、高齢発症だから、長期罹患しているから、みな認知症に移行するのか?と言えばそれはNOです。
90歳で発症しても、20年以上罹患しても、認知症ではない、純粋なPDの症例も私は診ています。純粋なPDに対しては必ずしもアマンタジンは必要ではないと考えます。
認知症と精神症状(幻覚、妄想、錯乱)は比例して起こるのか?というとそれも違う事がわかります。認知症と言っても程度や質が様々であり、大脳皮質のどれくらいの領域・範囲のコリン作動性神経が障害されているのかによって全く症状が違ってきますし、精神症状に関しては(大脳)辺縁系のドパミンとコリン作動性神経の障害の程度に左右されると思われます。大脳皮質の神経障害が強くても辺縁系の神経障害が軽い場合は、認知症が強くても精神症状が目立たず、逆の場合は、精神症状が強くても認知症が目立たないという場合もあります。高齢者の場合はこのように症例によってヴァリエーションが非常に大きいという事もあり、ドパミン・アゴニスト、コリンエステラーゼ阻害薬のように受容体に強く作用する薬は忍容性に問題があるので、できれば避けたほうがいいというのが私の考えです。ドパミン・アゴニストもコリンエステラーゼ阻害薬も高齢者のPD、PDDに使うのは大変困難な薬だと言えます。「失敗しない」ためには、最初からこの2つの薬は使わないほうが賢明ではないかと思います。


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by shinyokohama-fc | 2017-10-13 12:42 | 治療

ドパミンアゴニストはPDDには百害あって一利なし

この1年はドパミンアゴニストでひどい副作用に至ったPDDの症例がクリニックに多数訪れました。1か月前に来られた、かなりひどかった症例を以下に提示します。
75歳男性、10年前から歩行障害で総合病院の神経内科へ通院。主な運動症状はすくみと加速・突進の反復歩行で筋固縮は軽度、静止時振戦(ふるえ)も軽度、自立歩行はできるので、ヤール3度でした。
一見、普通のパーキンソン病(PD)に見えたのですが、字を書かせてみて驚きました。住所を書いてみると漢字6文字書くのに3~4倍くらい時間がかかり、まともな字が書けず、神奈川の川の字を飛ばしてしまう状態でした。時計を描かせてみると、数字と数字の間隔がバラバラで、12という数字を2つ書くことになってしまいました。高額な核医学検査ではなく、こういった医者でなくてもできるような単純作業をやらせてみて観察する事が何よりも大事だと思います。もし可能であれば、診察に来る前に同居しているご家族が自宅で実践して、紙に書いたものと携帯電話で録画したものを診察時に提示してもらえれば診察の時間も節約できるのではないかと思います。

総合病院の神経内科医からの処方は以下のとおりでした。神経内科医の診療は1年に1回にされており、通常はかかりつけ医の診療所でまったく同じ処方されていました。
1) レボドパ・カルビドパ配合剤(100mg)3錠
2) トリへキシフェニジル(2mg)1錠
3) カベルゴリン(1mg)1錠
4) プラミペキソール(0.125mg)6錠
5) マグネシウム(330mg)6錠
6) ファモチジン(20mg)1錠
7) リバスチグミン(9mg)1枚/日

まず75歳にもかかわらず、3)4)と新旧のドパミン・アゴニストが2種類も処方されているのには驚きました。3)は旧型(麦角系)ドパミン・アゴニストの中では、心臓弁膜症の発症率が最も高いと報告されている薬で、4)も3種類の中ではD3受容体に対する作用が強力であるが故に、高齢者では副作用が出やすいので控えるべき薬だと認識しています。 ドパミン・アゴニストという薬の問題点については以前のブログ内容を参照ください。
ふるえ(振戦)を抑える目的でと思いますが、2)抗アセチルコリン剤が処方されています。これも75歳という年齢では認知症、精神症状のリスクが高い薬なのでよほどの特別な理由がないかぎり使うべきではない薬です。
また残念なことにマグネシウムがレボドパと同じ時間帯に処方・服用されています。これではせっかくのレボドパもほとんど有効に吸収されていないのではと推定されました。
さらにファモチジン(抗ヒスタミン剤)が処方されています。近年、老年医学会のストップ対象でもある、漫然と服用すればヒスタミンの過剰抑制によって、せん妄や認知機能低下を誘発しかねない薬です。
リバスチグミンが9mgで処方されてたという事は、処方薬を決めた医者に、この方が「認知症」であるという認識があるのだと思います。

この方が私のクリニックに来られた理由としては、睡眠覚醒リズムが破綻しており、夜間の異常行動が顕著で、一日中、ひどい幻覚と妄想があったという事で、配偶者(奥さま)のストレスが大変なものでした。このような精神症状というのは、介護者をかなり疲弊させます。かかりつけ医は専門ではなくて、神経内科医(専門医)も1年に1回しか診ないとの事で、何も有効な対処がされず、見かねた家族の勧めで来られました。
診察した時は、意識ははっきりしていましたが、右手のふるえ(静止時)があり、筋固縮(筋強剛)は全く確認できず、動作の遅さもそれほどでもありませんでした。ただ歩行時にすくみと加速の反復と突進が顕著にあったようです。一般的に、すくみと加速の反復に対する有効な薬物というのはあまりなくて、セレギリンが有効な場合があるという程度です。
明らかに薬剤副作用でこじらせて、病態が複雑化してしまった症例というのは、正直、臨床医としてはあまり関わりたくないというのが本音です。認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の精神症状が悪化する場合の90%以上は、薬でこじらせた事例ではないかと思います。こじらせる原因薬剤として、この症例の場合はまず第1にドパミン・アゴニストの2重使用、第2に抗コリン剤、第3に抗ヒスタミン剤です。
第1段階(初診時)で、ドパミン・アゴニストであるカベルゴリンをニュープロに変更、プラミペキソールを1/6まで減量、トリへキシフェニジルを減量、抗ヒスタミン剤を中止としました。これによってかなり幻覚やせん妄は減少したものの、完全にはなくなっておらず、動作レベルも悪化していましたが、突進はなくなっていました。やはり突進はドパミン・アゴニストの過剰反応だと推定されました。相変わらず夜間まったく眠れないという事でした。
第2段階(再診時)で、ドパミン・アゴニスト(ニュープロ、プラミペキソール)は両方とも完全に中止して、全く有効に作用していると思えないコリンエステラーゼ阻害薬(リバスチグミン)も中止しました。その代わりに、朝にアマンタジン100mg(起床時)とクロナゼパム0.5mg(就眠前)を追加しました。PDDにおいてはレム睡眠行動異常(RBD)が高率にみられ、その上で薬剤によるせん妄状態が悪化しやすく、昼夜を問わず不穏状態になりやすいようです。せん妄を高率に起こしやすいドパミン・アゴニストを完全に中止する必要があり、夜間の興奮による就眠を妨げる可能性のあるコリンエステラーゼ阻害薬も中止する必要がありました。
アマンタジンはPDDにおいては、どの薬剤よりも副作用が少なく効果が大きい薬ではないかと思います。PDDではDLBと同じように日中の眠気(過眠)、覚醒不良が問題になりますが、この症状に対して最も有効なのが、アマンタジンだと思います。50~150mgの範囲では精神症状を悪化させる事はほとんどありません。クロナゼパムはベンゾジアゼピン系薬剤ですので、呼吸抑制の副作用があり、誤嚥性肺炎を誘発します(以前のブログ参照)ので、本来は好んで使う薬はありませんが、RBDに対しては他に代わる有効な薬剤がないので仕方なく使っています。
2回目の再診時には、精神症状やせん妄状態はほぼ消失し、動作も大きな問題はなくなったようです。最後に抗コリン剤を中止してから、再度、認知機能の評価をする予定です。
この症例の処方では、アセチルコリンを抑える薬(抗コリン剤、トリへキシフェニジル)とアセチルコリンを増やす薬(コリンエステラーゼ阻害薬)が同時に使われていました。どういう意図で処方されたのかは私には全く理解できませんが、典型的な薬剤カスケードと言えるのではないかと思います。PDDやDLBの症例においては特に相反する薬剤を使うという事は好ましくないと言えるでしょう。
この症例でお分かりのように、PDDに関しては、現在までパーキンソン病関連学会や認知症関連学会が作成した治療ガイドラインに基ついた、パーキンソン病の治療薬の使い方もレビー小体型認知症の治療薬の使い方では上手くいかない、むしろ、双方の治療ガイドラインを頑迷に推し進めると病態が悪化してしまう事例が多いというのが最近よくわかってきました。PDDはPDでもDLBでもないので、同じ薬の使い方はできないと思います。程度は症例によって違えど、脳幹も辺縁系も大脳皮質もコリン&ドパミン作動系神経障害が起こるため、障害をカバーできるエリア・神経細胞がほとんど残っていない厳しい病態と言えます。PDでは問題なく使える薬であるレボドパですら忍容性がなくて増量できない症例が多いようです。PDD独自の治療薬の使い方を考えるべきではないかと思います。


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by shinyokohama-fc | 2017-10-06 12:28 | 治療

PDとPDDを区別する簡単な方法

PD(パーキンソン病)、PDD(認知症を伴うパーキンソン病) 、DLB(レビー小体型認知症)
PD とPDDを区別できる方法は実に簡単です。まず字を書かせる事です。住所を書かせるとPDの方は小字傾向があるものの最後まで書けますが、PDDでは大きく崩壊した漢字になり、10文字書くまでに止まってしまう事が多いです。たった5文字書くのも時間がかかり一苦労です。図形模写も小さいだけでなく五角形が大きく崩れて五角形ではなく、かなりいびつな四角形になります。時計描画でも数字の間隔がおかしくなり、平面でも視覚失認がみられる事があります。字に関しては、動作歩行障害が目立たないDLBでもほとんど同じようになります。つまり字が書けないPDDとDLBでは大脳皮質のコリン作動系神経障害&ドパミン作動系神経障害が存在すると言っても過言ではないでしょう。ただし動作時の手の強いふるえ(本態性振戦か書痙)を伴うケースを除きますが。PDの場合は原則的に静止時の手のふるえで、動作時は止まる事が多いのです。
後はシリアル7と呼ばれる、100から7を5回連続で引いていく引き算です。PDDでは65まで正答できる人はまずいません。だいたい1回目か2回目で誤答になります。
以上の事は、医者でなくても、一般の人(介護者家族)でも実に簡単にできる事です。私のクリニックは画像検査機器を持たない、一介の診療所にすぎませんので、誰でもできるような単純な診察を愚直にやるしかないのですが、こういう誰でもできる事をやる事が診断の重要な参考になるという事をこの2~3年でようやくわかってきました。恥ずかしながら病院勤務時代に外来診療やっていた時にはわからなかったのです。つまりPDとPDDの区別など考えた事もなかったわけです。
PDDの方はパーキンソン病の運動症状が無動固縮型で先行する、動作歩行、姿勢反射にも問題があるケース、つまりヤール3~4レベルの方がほとんどです。注意障害を伴うので、PDに比べて室内での転倒リスクが高くなります。PDの方はヤール4~5レベルでも室内で転倒することはめったにありません。注意障害が保持されている場合は、転倒の危険性を熟知しているので、より慎重に行動するからではないかと考えられます。
最近の講演では必ず話している事ですが、PDDの半数以上の症例は悪性経過をたどります。コリン作動性神経と
なぜ、PDとPDDを厳格に区別しなければならないのか?それは対症療法としての薬物処方の仕方が根本的に変わってくるからです。PDDとDLBも厳格に区別するべきだと考えています。この点に関して学会は肝心な事を何も示しておらず、曖昧にしていると私は感じます。PDは15年以上経過したらみな認知症になる??病理変化が同じだから、全部まとめて同じ薬を使え??そんな考え方だから、PDDに使ってはいけない不適切な処方が繰り返されてしまうケースが後を絶たないのでしょう。それに関しては症例を示しながら、次節で詳しく書こうと思います。


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by shinyokohama-fc | 2017-10-06 11:47 | 治療
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