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抗精神病薬の長期使用による不随意運動の深刻さ

先週、外来診療において、抗精神病薬によると思われる不随意運動の症例を2例も診ることがありました。
いずれも、ジスキネジアという不随意運動で、原因薬物の服薬量としてはごくわずかでそれぞれ、アリピプラゾール3mg、リスぺリドン0.5mgでした。ただし他に神経系に作用する併用薬が2~3種類あるため相互作用によって血中濃度が高くなっている可能性が考えられました。私が以前から「神経系薬剤の多剤併用が好ましくない」と再三申し上げているのはこういうことです。抗てんかん薬剤については他の薬剤との相互作用による血中濃度の変動が常に問題視されるのですが、認知症、パーキンソン病、精神疾患の薬物処方に関しては、処方している臨床医がまったく意識されていないというのが残念です。
以前もブログに書いたかもしれませんが、抗精神病薬によって不随意運動が誘発されることが非常に多いようです。不随意運動というのは「自分の意志とはかかわらず身体が勝手に動くこと」です。
抗精神病薬というのは、主に「統合失調症」に使うべき薬で、精神科医(精神保健指定医)が処方する薬です。内科医がこのような薬を処方することは滅多にありません。何故ならこのような薬を処方せざるをえない症例は精神科医に紹介するからです。一般的によく使われている薬は以下のとおりです。
1)フェノチアジン系・クロルプロマジン(コントミン、ウインタミン)、レボメプロマジン(ヒルナミン)
2)ブチロフェノン系・ハロペリドール(セレネース、リントンなど)
3)ベンザミド系・スルピリド(ドグマチールなど)、チアプリド(グラマリール)
4)セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)・リスぺリドン(リスパダール)、ベロスピロン(ルーラン)
5)多元受容体作用薬(MARTA)・オランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル)
6)ドパミン受容体部分作動薬(DPA)アリピプラゾール(エビリファイ)
これらの薬を長期間にわたって服用、あるいは2種類以上の使用歴、2種類同時使用などによって、特にジスキネジアという不随意運動が高い確率で発症するようです。3)だけは例外で不随意運動を抑える働きがあります。
それゆえ不随意運動を回避するためには、3)を使用するほうがいいと思われますが、3)の欠点は用量増加、長期服用によって高い確率で薬剤性パーキンソニズムによる動作歩行障害が悪化することです。
1)2)4)5)6)によって実際は身体の静止時(安静時)に身体(体幹)の上下運動を繰り返したり、下半身のみを常時粗大に動かしていたり、片方の上肢が常時動かしていたりと、そのバリエーションは多彩です。
パーキンソン病においてレボドパ配合剤を(メネシット、マドパーなど)を長期間使用しているケースに多くみられますが、抗精神病薬によるジスキネジアとはタイプが違うようです。
私のイメージでは6)2)1)4)の順に出現する頻度が多いのではないかという印象を受けます。最近は高齢者にもアリピプラゾールなどが処方される機会が増えることによってジスキネジアが増えた気がします。
対策としては原因薬剤を中止することです。私の臨床経験では原因薬剤を服用して数か月・半年程度であれば、中止してから2~3か月で消失することが多いようです。しかし75歳以上の高齢者で3~4年以上もの間、抗精神病薬を飲まされて続けている不幸な方も少なくないようで、こういう方は中止しても効果はないようです。
薬の本には「遅発性ジスキネジア」と書いています。この「遅発性」というのが曲者で、服用してから4~5年経過してから出現するケースが多いようです。
原因薬剤の抗精神病薬を処方する医者(多くは精神科医だが、中には知ったかぶりの内科医もいる)はこういう遅発性のジスキネジアやジストニアが抗精神病薬を長期間服用してから現れてくることを知らないようです。薬の副作用の知識がないのに薬を処方する医者としてきわめて無責任だと思います。こういう無知で無責任な医者は抗精神病薬を処方する資格を剥奪すべきではないかと私は考えます。
複数の抗精神病薬とコリンエステラーゼ阻害薬の長期間にわたる併用の後、クロルプロマジンが処方されることによってで深刻な上半身のジストニアになってしまった60歳代前半の若年性認知症の症例を今から3年前に診ることになりました。その悲惨さは筆舌に尽くしがたいものであり、今でも忘れられません。
このような事実があるにもかかわらず、何をもって認知症に対して抗精神病薬を使うことを正当化できるのでしょうか?不随意運動が出れば、精神科医や内科医は自分の責任で処理しようとすることは決してありません。
「自分はわからない、知らない」と言って、「神経内科」の外来へ放り込まれるのです。薬剤性パーキンソニズムと不随意運動(まとめて薬剤性EPS(錐体外路症候群)と呼ぶ)ばかり診させられ続けたこの25年でした。
私は抗精神病薬の副作用で苦しむ患者を診るたびに、怒りがこみあげてきます。やはり抗精神病薬は統合失調症に限定して使用すべき薬ではないかと私は考えます。



新横浜フォレストクリニック
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by shinyokohama-fc | 2017-08-22 11:44 | 治療
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