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抗精神病薬のダブル処方はやめよう

ここ最近、認知症の超高齢者に抗精神薬を次々と処方して、深刻な不随意運動を発症しているケースが目立つようです。中には多少の易怒性や軽度の幻覚・妄想だけで、安易に抗精神病薬が2種類併用で、何年にもわたって継続されてしまった結果、深刻なジスキネジア、アテトーゼといった不随意運動が発症する、あるいは原因不明の発熱をきたす症例を外来でよく見かけるようになりました。古くから使われているクロールプロマジン(商品名ウインタミン/コントミン)、ハロペリドール(商品名リントン/セレネース)は定型抗精神薬なので、特にこの2つの組み合わせは不随意運動が発生しやすいという印象ですが、非定型が安全というわけではなくアリピプラゾール(商品名エビリファイ)、ベロスピロン(商品名ルーラン)でも比較的発生しやすいようです。
最近私が外来で診た、抗精神病薬による不随意運動事例を以下に紹介します。
95歳女性、施設入所中、4年前から大学病院の精神科外来で認知症に伴う幻覚と診断されて、担当医にクロルプロマジン25mg、クエチアピン25mgがずっと処方されていました。現在は歩行できず車いすの状態です。1か月前から原因不明の37~38℃の発熱あり、上半身をくねらせたりする奇妙な激しい動きが出たという事で受診しました。
すでに施設の判断で前者は中止していたので、後者の中止も指示しました。しかし超高齢にもかかわらず4年もの長きにわたって抗精神病薬を処方されてきたので、おそらくこのジスキネジアを止めるのは困難だと思われます。
80歳女性、独居 近所の認知症が診れるという神経内科クリニックに通院。認知症で若干の易怒・興奮性があるとの事で、クロールプロマジン2mg 、ハロペリドール2mgが処方され、この他にもセルトラリン25mg、ジアゼパム1mg、リバスチグミン4.5mgが処方されていました。3年前から上半身を上下するような奇妙な動きがみられ、会うたびにひどくなり、年々悪化してきて怖くなってきたので、ご家族が連れてこられました。診察した印象では軽度の脱抑制的態度がありました、FAB(前頭葉機能検査)では10/18でしたが、時計描画や図形模写は完璧でした。前医ではアルツハイマーという診断でしたが、アルツハイマーらしさは全く感じられず、年齢的にはグレイン(AGD)ではないかという印象でした。たとえ少量であっても定型抗精神病薬をダブル処方すれば不随意運動は出るという事例です。
認知症専門の学会では定型抗精神薬の処方は禁止されており、非定型を期間限定で使用するように指導されているようですが、実際の臨床現場ではこのような指導は全く行きわたっていないようです。
82歳女性、独居 自宅にて幻覚、妄想、不穏あり、近医の精神科診療所で、ガランタミン12+12mgに加えて、リスぺリドン2mg、エビリファイ3mgが追加された。これらを内服して数か月経過してから、座位と立位において上半身を大きく上下させる奇妙な不随意運動が次第に悪化したということで受診しました。精神科医に相談したが「パーキンソン病なので神経内科で診てもらえ」と言われて、紹介状もなく受診されました。体重が40kg以下の方であったので、ガランタミン8+8→4+4と段階的に減量しました。ChEIの過剰投与によって行動心理症状が悪化しているのは明白だったからです。むろん抗精神病薬は中止して、4~5か月で運よく不随意運動は消失しました。
最近、超高齢者に対する抗精神病薬のダブル処方・長期処方が目に余ります。米国では抗精神病薬処方の副作用についての見識が厳しいので、特に難治性の重度ジスキネジアに対しては処方したDrに厳しく責任が問われます。日本がこれだけ抗認知症薬、パーキンソン治療薬、抗精神薬の副作用に対する見識が甘すぎるのは驚くべき事実です。
認知症高齢者の行動心理症状に対する抗精神病薬の処方が今後増えるであろうと推定されます。処方する精神科や神経内科の専門を名乗るDrの方に抗精神病薬の副作用、不随意運動やジスキネジア、アテトーゼに対する見識が乏しく、薬の副作用の事をまったく何も理解していないDrが安易に超高齢者に劇薬を処方している現実には呆れ、憤りを感じずにはいられません。


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by shinyokohama-fc | 2016-10-22 17:18 | 治療

副作用の観点から貼付剤のメリット

脳神経系に作用する薬剤において、貼付剤・経皮吸収タイプの薬剤がここ数年で上市されました。1つがアルツハイマー型認知症の治療薬・リバスチグミンで、もう1つがパーキンソン病/レストレッグス症候群の治療薬・ロチゴチンです。
リバスチグミンはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬としては強力な作用があるため、私の担当する患者ではわずか4.5mgでもしばしば興奮・易怒性が強調されて、介護者に被害が及ぶ場合が少なくないようです。日本人においては反応性のうつ状態、アパシー(何もやる気がおきずに、目的達成型の行動ができない)、アンへドニア(ふつうの人が楽しいと思うことが楽しく感じられない)タイプの症例にフィットするようです。アセチルコリンを増やして脳を興奮させる薬であるが故に、しばしば副作用として睡眠障害が誘発されるケースがあります。睡眠障害の多くは入眠困難か中途覚醒ですが、明らかにChEIで誘発されたと推定される場合は、副作用に対してさらに睡眠導入薬を加えるというのは好ましくないので、入眠前に貼付薬を剥がして、翌朝の起床後から次の日の分を貼付するという方法が有効なようです。貼付剤は内服薬とは違い、剥がせば薬効はすぐにオフになります。ChEIの内服薬の場合は半減期が70時間という長いものもあり、中止しても場合によっては2週間以上薬効(副作用)が残ってしまうケースもあるようです。
ロチゴチンはドパミンアゴニストとしてはほぼすべてのドパミン受容体に均等に作用する薬剤で、同類の薬剤の中では最もレボドパに性質が類似していると言われている薬剤で、同類の内服薬に比較して嗜眠・突発性睡眠・幻覚などの副作用が比較的少ないそうですが、日本人は薬剤過敏体質の方が多いのか、実際は2.25~4.5mgでもこのような副作用が出てしまうケースが少なくないようです。特にまだ現役で仕事に従事している50歳代のパーキンソン病患者においては仕事の支障になります。夜間のレム睡眠行動異常と片側下肢ジストニアに対してロチゴチン2.25mgを処方してある程度有効だったのですが、仕事中に突発性睡眠が出てしまった52歳男性の症例がありました。やはり貼付薬の特性を考慮して、ロチゴチンを就寝時から起床時まで使用してもらうという方法をとることにしました。
起床時に剥がせば、薬効がオフになり、日中の突発性睡眠は回避されると考えました。
現在、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病に使用されている薬剤は「対症療法」の薬剤ですので、効いてほしい時間帯には必要ですが、効いてほしくない(副作用が出てほしくない)時間帯もあるわけです。そのような場合に、貼付剤の薬効メリットが生かされるという事を症例を通じて実感しました。
半減期の長い長時間作用型の内服薬や徐放型の薬剤は副作用が回避しにくいという共通のデメリットがあります。実際にあるドパミンアゴニストを使用していた数名のパーキンソン病の患者を同じ徐放剤タイプに変更したところ、今までに現れなかった副作用が続々と起こってしまい、慌てて元の非徐放タイプに戻したという事もありました。
神経系の薬剤の多くは「諸刃の剣」という要素が強いため常に注意が必要です。薬を処方する側(医者)にも薬を処方される側(患者)にもそういう意識が必要だと思います。


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by shinyokohama-fc | 2016-10-04 17:10 | 治療
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