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行動異常型前頭側頭型認知症(bv-FTD)の臨床類型、類似病型など

マンチェスター大クループのスノウデンらは行動異常型前頭側頭型認知症(bv-FTD)を、脱抑制型、無欲型、常同型の3つの臨床病型に分けられると提唱しています。つまりピック型認知症の代表格である、bv-FTDはすべて同じ症状という訳ではなく、やはり多様性があるという事です。3つの臨床病型の特徴を以下に示します。
1) 脱抑制型 (disinhibition form) ;前方連合野~辺縁系、前頭葉眼窩面・内側面、右腹内側前頭葉皮質~扁桃核
落ち着きなく、無目的な過剰活動、高度の社会性喪失による反社会的行動などが主症状で、生来の発達障害や知的障害と類似した行動パターンを示す。
A1)社会的に不適切な行動 A2)マナーや上品さ(言葉・行為・服装など)の喪失 A3)衝動的、軽率、不注意な行為
環境依存症候群;言語によって行為制御できない、利用行動、模倣行動がみられる
2) 無欲・無為型 (apathetic form) ;前頭葉背外側面、右BA10野
無気力、自発性・意欲低下、無頓着、保続的な症状が特徴
B)初期からB1)無関心・意欲低下 B2)不活発
C)初期から C1)他者要求や感情に対する感受性低下 C2)社会的な興味・人間的暖かさ、対人交流の低下
3) 常同型 (stereotypic form) ; 線条体、下部前頭前野、前部帯状回
初期から同じ行動や言葉があり、強迫的で儀式的な行動傾向がみられる。他人が制すると苛立ち、怒りやすい。
D1)単純な繰り返しの運動 D2)複雑な繰り返しの運動 D3)型にはまった言葉(反復言語)
bv-FTDは病理的には3リピートタウの異常蓄積によると言われていますが、初期~中期は前頭葉のタウ蓄積により障害される部位が局在的ですので、上記のようなタイプに分かれると思われます。bv-FTDの症例がすべて反社会的で暴力的だというわけではないようです。もちろん病状の進展にともなって1)2)3)の臨床症候がオーバーラップする可能性は高いと考えられます。
以上のbv-FTDに類似する症候の疾患群が存在します。実際に臨床的にbv-FTDの14%がCBD、7%がPSPと言われています。進行に伴い発症して5~10年経過してから、CBS,PSPSの臨床症候である、四肢動作障害や姿勢歩行障害が現れてくるパターンの症例が少なからずみられます。それ以外にAGD(グレイン、嗜銀顆粒性認知症)は全認知症の10%、高齢者認知症の50%を占めると言われています。最近は健康な女性長寿者の増加に伴い、80歳以上でbv-FTD的な症候で発症するケースが目立つようです。これらの多くはグレインであり、行動心理症状が目立ち、同居者や介護者が最も迷惑するタイプで外来では最も受診率が高い傾向にあります。FTD類似症候群としては、他にも遺伝性のFTDP-17、FTD-MND、DNTCなどがありますが、いずれも低頻度であり、通常の認知症外来で遭遇する頻度としては圧倒的に多数なのがAGD、続いてPSPS、CBSという印象です。AGDに関してはガランタミンだけで奏功するケースが多いようです。
bv-FTDの治療薬としては、最近出版された、前頭側頭葉変性症の臨床について書かれた書籍によると、脱抑制型には非定型抗精神薬が、無欲・無為型、常同型にはSSRI,SNRI、非定型抗精神薬が推奨されていました。しかし私の外来での臨床経験で言いますと、75歳以下で発症した典型的なbv-FTDと思われる症例ではこれらの治療薬の有効性は低いようです。どうやら統合失調症やうつ病のようには上手くいかないようです。先日の講演会によるとアパシーはうつとは違って、SSRIやSNRIは効果がないとの事でした。むしろアパシーに対してはドパミン作動薬のアマンタジンやアセチルコリンエステラーゼ阻害薬のリバスチグミンのほうが有効性が高いと言われてました。私もこの点には同意です。認知症患者のうつに対してよくSSRIなどが使われる傾向にありますが、殆どのケースでは無効か症状が悪化しています。これは認知症の行動心理症状の陰性症状の大多数がアパシーであるということを示していると思われます。アパシーとうつの鑑別は専門医でも難しいそうですが、うつは「やる気はあるのにできない」、アパシーは「最初からやる気がない」そうです。私の経験では前医処方でSSRI、非定型抗精神薬に対して無効な症例で、アマンタジンに変更すると上手くいく症例が多いようです。


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by shinyokohama-fc | 2016-05-30 19:07 | 医療

薬剤性QT延長症候群

以前のブログで触れているように、高齢者、特に認知症と診断されていろいろ内服している方々にはQT延長、Torsade de pointesという危険な致死性の心室性不整脈を起こすリスクと背中合わせです。様々な薬剤によって心筋カリウムチャネルが阻害が遮断されるようです。先天性あるいは後天性にカリウムチャネルが減少している方が存在し、
そういう方に原因薬剤が処方されると致死性不整脈により失神発作や突然死を起こすようです。もともと心機能が低下している高齢者女性に多いようです。
<原因薬剤>
抗精神薬 ; クロールプロマジン、ハロペリドールなど、三環系抗うつ薬; イミプラミン、アミトリプチン、ノリトレンなど、抗不安薬 ; エチゾラム アセチルコリンエステラーゼ阻害剤 ; ドネぺジル、ガランタミン、リバスチグミン
<原因病態>
低カリウム/マグネシウム血症、徐脈(房室ブロック、洞不全症候群)、中枢神経疾患、うっ血性心不全、甲状腺機能低下症
例えば、以下のような症例が薬剤性QT延長のハイリスク症例になりえます。
85歳女性、2~3年前から認知症と診断されて精神科に通院中である。ドネぺジル10mgが処方されている、行動心理症状が顕著になってきたため、抑肝散7.5gとハロペリドール3.75mgが追加されている。抑肝散の影響で下腿浮腫があるため、フロセミド20mgが追加されている。内科通院歴はなく、血液検査や心電図検査は一度も実施されていなかった。ある日意識消失で救急搬送された。救急外来では心電図検査で心室性頻拍(Torsade de points)の波形がみられ、緊急血液検査では血清カリウム値が2.3mEg/lであった。
以上のように、認知症と診断された高齢者女性が陥りやすい病態です。私もアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を処方している方で、家庭血圧記録で脈拍が34~40/分だったり、ECG検査でQT時間が480~490msecだったりする症例が続出して、薬剤の中止を余儀なくされるケースが少なくありません。おそらくこれらの症例ではカリウムチャンネルが減少しているのではないかと思われます。


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by shinyokohama-fc | 2016-05-17 19:05 | 治療

オピオイド使用に警鐘 (米国神経学会)

私の旧知の友人から以下の米国神経学会の勧告の情報を教えていただきました。私も昨年11月のブログで書いていたように、実際の外来診療において、主として整形外科で繁用されているオピオイド系薬剤によってせん妄、全身振戦、運動失調、依存症になっている高齢者を数多く診療した経験があり、抗精神薬以上に長期内服すると高齢者には危険な薬剤であるという実感がありましたので、学会がこのような勧告をしていただく事には意義があります。
「オピオイド使用に米国神経学会が警鐘 」非がん性慢性疾患には利益よりも高リスクが上回る
米国神経学会(AAN)は2015年9月29日、処方オピオイドによる死亡、過量投与、中毒、深刻な副作用のリスクは、頭痛や線維筋痛症、慢性腰痛などの慢性疾患におけるべネフィットを上回ると注意喚起する声明を発表した。
学会雑誌であるNeurologyに掲載された(以下引用)。
既存の複数の研究によれば、3か月以上オピオイドを使用した患者の50%が5年後もオピオイドを使用している。オピオイドは短期的には疼痛を有意に緩和する可能性があるが、長期的には深刻な過量投与や依存、中毒のリスクなしに疼痛緩和や機能改善に導くとする実質的なエビデンスはない事が示されている。
声明では、モルヒネ1日換算量が80~120mgを超えても疼痛や機能の改善が十分に得られていなければ、医師は疼痛管理の専門家と相談するように推奨した。
また、オピオイドの安全かつ有効な処方のため
1) オピオイド治療同意書の作成
2) 薬物乱用歴やうつの病歴有無の確認
3) 尿検査による薬物スクリーニングの実施
4) 催眠鎮静剤やベンゾジアゼピン系薬剤などとオピオイドを併用しない
5)州の処方箋モニタリングプログラムを通じて処方箋を監視する
など、具体的な対応方法を提案している
私の印象ではオピオイドという薬は患者によって神経系にどう作用するかわからない危険な薬剤の一つだと認識しています。特に高齢者・認知症・脳梗塞後遺症などでは避けるべき薬剤だと考えています。米国神経学会の勧告はきわめて妥当な提言だと思います。私も昨年1例だけ処方したことがありますが、40代女性で1か月限定にしました。ペインクリニックの専門家の話では1か月など期間限定にすればいい薬で、ダラダラと長期に処方するのは良くないとの事でした。


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by shinyokohama-fc | 2016-05-06 12:36 | 治療
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