<   2016年 03月 ( 3 )   > この月の画像一覧


抗精神薬の副作用を知らずに処方する医者

抗精神薬という薬は本来、統合失調症の精神興奮症状を抑制するために使用される薬剤です。実際に統合失調症に対して使用される薬剤としてはオランザピン、リスぺリドンが比較的多いようです。その一方で、昨今では認知症に伴う他害的な言動行動に代表される、行動心理症状にも頻用される傾向があります。認知症とされる症例のうち、約3/4が75歳以上の代謝能力の著しく低下した後期高齢者という事を考慮すると、こういう薬を使うにあたって安全性が特に問題とされます。特にコリンエステラーゼ阻害薬と抗精神薬の併用は心電図において、QT時間の延長や徐脈化などの他に冠動脈攣縮を誘発すると言われており、心臓不整脈、心臓突然死のリスクが高まると言われています。
そのため、高齢者に抗精神薬を使用する場合は、①事前に心電図検査を実施してQT時間などリスクファクターを確認する、②可能な限りコリンエステラーゼ阻害薬や甘草含有漢方薬との併用を避ける、③重篤な副作用のリスクの少ないチアプリドを使用する ④有害事象のリスクについて十分な説明と同意を得る、事が必要です。
私自身の経験では1年前まではいくつかの抗精神薬を使用していましたが、チアプリド以外の薬剤に関しては少量投与(年齢や体重を考慮した用量)では期待していたほど効果が得られず、一方で8~9割以上の症例に長期連用(1か月以上)で何らかの副作用が出現しました。総合的に評価してチアプリド以外の薬剤はリスクを冒して使用するメリットがなく、むしろ有害事象デメリットが多かった(結果的に脱落・使用中止がほとんど)という印象でした。後期高齢者においては抗精神薬に対する忍容性は残念ながら極めて乏しいと言わざるをえないという結論でした。
先日の外来で83歳の痩せさらばえた女性で認知症と診断されて、上半身の不随意運動で受診した方がいました。薬の手帳によると、前医にてガランタミン12mg×2!!が処方された上に、2年前からリスぺリドン2mg/日、1年前からアリピプラゾール3mg/日が処方されていました。同伴者のご家族は抗精神薬を使用してから、ひどい不随意運動(アテトーゼタイプのジスキネジア)が出現している事にすぐに気がついて、中止するように処方した医者に伝えたそうです。しかしこの医者は抗精神薬による副作用であることを本当に知らないのか?知らないふりをしているのかわかりませんが、事もあろうに「パーキンソン病だ」とか訳のわからない事を言い始めたそうです。年齢体重を考慮せずにChEIを不相応に過量処方して興奮させておいて、それを抑えるために不必要な抗精神薬を処方して、このようなひどい薬剤性錐体外路症状(EPS)であるジスキネジアを誘発させているのですから呆れます。高齢者に対しては抗精神薬で誘発されたジスキネジア、ジストニアは遅発性かつ遷延性であり、原因薬剤を中止しても改善しにくいケースが多いようです。非定型と呼ばれる抗精神薬である、ベロスピロン、リスぺリドン、アリピプラゾールでもかなりの頻度でEPSとしての不随意運動を誘発するようです。不随意運動は致死的な副作用ではありませんが、患者に長く苦痛を与える有害事象です。1年前は己の処方したクロルプロマジンで発熱しているのが明白なのに「原因がわからない」とか言っている医者がいるという話を患者家族から聞きました。高齢者に抗精神薬を処方する場合は、必ず事前に起こりうる有害事象をすべて説明すべきだと思います。抗精神薬の副作用をまったく知らない医者が処方して、EPSが出現したら神経内科へ送るのでしょうか?このような悲惨な薬害の症例を診るたびに、そんな無責任な医者は劇薬である抗精神薬を処方する資格などないのではないかと強い憤りを感じます。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-03-22 14:53 | 治療

第2回認知症治療研究会

先日13日(日曜日)に「認知症治療研究会」の第2回総会がパシフィコ横浜の会議センターで行われました。当日は横浜マラソンと日が重なりましたが、昨年よりも多い600名弱の参加者があったそうで、私のクリニックに通院中のご家族の方も数名参加していただきました。私は今回の教育講演を副会長の河野和彦先生に2年前から依頼されていたので、自宅で20回以上リハーサルしたのですが、やはりあれだけの大ホールで講演した経験がなく、他の百戦錬磨の演者の先生方と比べますと、非常に聴きつらい内容で大変申し訳なかったと思っています。45分間の講演で2つの疾患を取り上げたのでスライドがビジーになりすぎました。そのうえ20年前から進化していない面白みのないスライドで、他の演者の先生方のカラフルで豪華なスライドを見て嘆息しました。内容も専門ではない方々には堅苦しすぎたと思います。やはり私は講演よりも文章を書くほうが自分の思い通りの表現ができるような気がします。もう少し文章を減らして、わかりやすい動画を中心にしたほうが良かったかもしれないと反省しています。15年前に学会発表して以来だったので、私だけ15年前で止まっていて取り残されてるような気がしました。
他の演者の先生方の講演はすべて素晴らしかったです。私と同じ教育講演では在宅医療の草分け・パイオニアとも言うべき長尾和弘先生、新しい在宅医療のリーダーの松嶋大先生の話は動画満載で患者側目線で発信される内容であり、聴講しに来られた方々も非常に共感できたのではないかと思います。
ランチョンセミナーの木村武実先生による「前頭側頭葉変性症(FTLD)に対する臨床研究シリーズ」も大変貴重で価値の高い研究発表でした。アルツハイマーあるいはレビー一辺倒の学会において、これほどまでFTLDの症例を臨床研究している方はいないのではないかと思いました。
午後のリハビリテーションで著名な酒向正春先生の特別講演、副会長の河野和彦先生の基調講演は見事でした。
最終演題は昨年の第1回でリバスチグミンで聴衆を驚かせた、池袋病院(埼玉県川越市)の副院長、脳神経外科の平川亘先生でしたが、今年はシロスタゾールで再び驚かされました。脳外科の緊急対応・手術などをしながら、これだけ多くの認知症患者を外来で診察し、かつ治療効果を細かく分析されている事には脱帽するしかなかったです。
今回は情報交換会などで、長尾先生、酒向先生、平川先生らと非常に有意義な臨床談義ができた事が私にとって何よりの収穫でした。それぞれ分野は違いますが、「患者を良くしたい」という信念のある本物の臨床医の先生方と話ができて良かったと思いました。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-03-15 08:54 | 治療

胃粘膜防御因子増強薬が著効した認知症症例

79歳女性、行動心理症状がなく、記憶・見当識・実行機能障害が主体の老年認知症の方が先日受診されました。発症は数年前に自宅に帰れなかったというのが初発症状だったそうです。2年前から、市内の認知症の専門クリニックに通院している方でしたが、ご家族が胃粘膜PG増加による防御因子増強薬として有名なテプレノンという薬剤に熱ショックタンパク質(HSP)誘導作用があるという情報に注目され、前医にお願いして1年前から処方してもらっていたそうです。1年前に実施した簡易知能スケールMMSEで18/30だったそうですが、今回のMMSEでは26/30まで改善していました。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)も処方されていましたが、副作用を警戒してご家族の判断で2か月前から中止していたとの事です。ChEIを中止しても特別中核症状が悪化したという印象もなかったようで、当院での診察評価でも、時間・場所の見当識障害以外の項目はほとんど満点であり、立方体模写、図形(重複五角形)模写、時計描画は完璧に書けました。診察した上ではどうみても軽度認知障害(MCI)のレベルでした。パーキンソン症状(錐体外路症状)や行動心理症状(精神症状)は一切なく、臨床的にはアルツハイマー老年型(SDAT)か神経原線維型老年認知症(SD-NFT)のいずれかというイメージの症例でした。
異常な絡まり方をしたタンパク質が脳内に蓄積されてSDATやSD-NFTのような神経変性疾患が引き起こされると言われています。そのようなタンパク質の絡まりを解いてくれるのが、熱ショックタンパク質(Heat Shock Protein:HSP)と呼ばれるタンパク質です。HSPは誤って絡み合ってしまったタンパク質を元通りに戻して処理してくれるが、そういうタンパク質が大量になると、処理能力を超えてしまうと言われています。HSPを増やす事ができる物質を体内に投与すれば、HSPの処理能力が上がり、病状の進行を抑制できると言われています。たしかにテプレノンという薬剤には胃の細胞をストレスに強くするHSPを増加させる働きもあると言われていましたが、今回のような実際に改善した症例を確認するまでは半信半疑でした。おそらく軽度認知障害(MCI)レベルで維持されている症例や進行が遅いSD-NFTのような症例では有効性が高いのではないかと思われます。その一方で50~60歳という若年発症、比較的進行の速いアルツハイマー(ATD)のような症例ではHSPの効果が及ばないのではないかと考えます。
最近は高齢化・長寿化により75歳以上の後期高齢者の年齢で発症する認知症が多いようです。外来に受診する症例も行動心理症状が先行するタイプ(病理診断ではグレイン(嗜銀性顆粒性))が最も多く、行動心理症状を欠くタイプがそれに次いで多いようです。これら高齢者タウオパチーの症例の特徴としては、若年性ATDに比べて進行が遅いという事です。75歳以上で発症した比較的早期、あるいは進行していないMMSE 20~30程度の方々にはHSP誘導作用が有効ではないかと思われます。最近はHSP誘導作用のあるアスフラールという物質も注目されています。HSP誘導作用のある薬剤やサプリメントを併用して認知症の中核症状を改善できるかどうか注目していきたいと思います。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-03-01 12:34 | 治療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line