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パーキンソン・精神病症候群(非幻覚性)の劇的改善例

最近、外来で診る症例は認知症というよりは、軽度のパーキンソン(錐体外路)症状と精神病のコンプレックスの症例が増えてきました。こういう症例をレビー小体型認知症?と巷では呼ぶのかもしれません。しかし以前のブログでも申しましたように、臨床症状から脳にレビー小体(シヌクレイン)がたまっているのか、異常タウがたまっているのかなど誰にもわかりませんし、それを検査する方法もありません。また不確かな病理解剖なき病理学的診断?というのは治療薬の選択をするに当たって何の意味もない事が症例を通じてわかってきました。今回提示する症例は、病名をつけるとすれば、パーキンソン・精神病(強迫神経症型)症候群と言えるでしょう。
69歳女性。1~2年前から不安、強迫的な強い神経症があり、近医から抗認知症薬D(ChEI)が処方されて、数か月経過してから安静時振戦、前傾姿勢、小刻み歩行、仮面様顔貌、四肢の運動障害・歩行障害を自覚するようになり、病院の神経内科外来を受診して、パーキンソン病初期と診断されたようです。MMSEは22/30点だったようですが、情緒不安定で検査に信憑性が乏しいとの事でした。相変わらず精神症状が顕著であったため、近医のメンタルクリニックに通院し、夜間の叫び声や日中の嗜眠、自発性低下などがあったため、クロナゼパムなどベンゾジアゼピン系薬剤が処方されていましたが、内服後に副作用のため動けなくなったりしていたようで、結局、精神科医が1年にわたり薬剤コントロールを試みたが、まったく上手くいかなかったという事で、当院へ紹介されてきました。ちなみにこの方は幻覚(幻視・幻聴)の訴えはないようです。私が外来で診るパーキンソン・精神病症候群はこの症例のように幻覚症状を欠く症例が多いようです。
初診時は動作の緩慢さは目立たず、歩行時のすくみもなく、姿勢も正常で、普通のスピードで歩行できていました。おそらく抗認知症薬Dを中止した影響でドパミン阻害作用が軽減したものと推定されました。しかし上肢・下肢ともに歯車現象(歯車様筋固縮)は顕著で左右差(左に強い)がみられました。きわめて情緒不安定で強迫的であり、治らない事に対する苛立ちが強くみられ、激越的で号泣していて認知症の評価などとてもできない状態でした。この方にはアマンタジン50mg(朝)とアロチノロール5mg×2(朝・夕)を処方し、フェルラ酸を推奨しました。2週間後に再診で来院された時は、あまりの変貌ぶりに驚きました。別人のように表情が明るくなり、笑顔でした。この病気がなければ、元々はこんな人だったんだという感じでした。アマンタジンが意欲を劇的に改善し、アロチノロールが過度の緊張状態を沈め、フェルラ酸で精神不安が大幅に軽減されたのだと推定されました。
この症例のように非幻覚性のパーキンソン・精神病症候群という症例は数多く見られます。非幻覚性のタイプはアマンタジン少量が劇的に奏功するようです。その一方で幻覚性が強いタイプは抗精神薬も効果がなく、アマンタジン少量でも幻覚が悪化するようで、治療に難渋する事が多いという印象です。パーキンソン・精神病症候群とパーキンソン・認知症症候群はきわめて多様性があり、それぞれ同じ薬剤が通用しないという特徴があります。きわめてヘテロ的な多様性の大きい症候群であると言えるでしょう。


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by shinyokohama-fc | 2016-02-25 15:24 | 治療

薬剤過敏性、パーキンソン病の症例提示

75歳男性、手の振戦から発症して6~7年経過しているYahr3度の典型的なパーキンソン病の症例です。
右>左手の安静時振戦、筋固縮、動作緩慢、前傾姿勢、姿勢反射障害は明確にあります。この症例はありとあらゆる薬剤に過敏性、副作用を示しました。合併症として癌があるため抗がん剤治療をしているという事情もありました。前医処方の抗コリン剤(トリヘキシフェニジル)で記憶低下、セレギリン(MAO阻害剤)、ゾピクロン(睡眠導入剤)で強いふらつき、エチゾラム(ベンゾジアゼピン系・抗不安剤)で嚥下障害があると訴えていました。私は前医処方のうちレボドパ/カルビドパ合剤を300mg(100mg×3)/日で継続し、ロチゴチン貼付剤を4.5mg追加したところ、下腿浮腫が顕著に現れたため、中止に至りました。また通常の便秘薬で効かないほどの便秘であったため、大黄甘草湯5gを処方したら、やはり甘草の副作用なのか下腿浮腫が現れました。その一方で不眠と抑うつにはスボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬)を処方したところ、以前よりも眠れて不安神経症的な不定愁訴が減少した印象でした。
「薬剤過敏性」というのは、その人にとって有害な薬から身を守る身体反応ですので、非常に大事な症状です。薬剤服用後1週間以内の早期に副作用・有害事象が出現してくれる人は、早く中止して対応できると思いますが、神経系の薬剤は長期投与によって遅発性にドパミンが阻害されて副作用が出るケースも多く、それを注意深く見極める必要があります。パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患は年単位にゆっくりと進行していく病気であり、たった2~3か月で歩けなくなったり、食べ物が飲み込めなくなることは常識的にはあり得ないわけです。自れの処方した薬の有害性を認識できず、薬によって遅発性のドパミン枯渇状態を誘導しているにもかかわらず、「病気が進行したんだから、仕方ない」という病状説明(詭弁??)には疑ってかかるべきでしょう。


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by shinyokohama-fc | 2016-02-19 09:11 | 治療

前頭側頭型認知症/意味性認知症の症例提示(薬剤選択に非常に苦労した症例報告)

症例報告 83歳女性 平成26年6月初診
74歳時から幻覚・妄想で発症、かつては強い幻視であったため、レビー小体型認知症(DLB)と診断されていました。コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)としてはドネぺジル10mg+メマンチン20mgが処方されてすぐに不穏、易怒、攻撃性、歩行障害となりました。レボドパ/カルビドパ150mg処方されて幻覚・妄想が悪化したようです。易怒に対してクロルプロマジン8mg/日が処方されて首下がりとなり、ハロペリドール0.75mgが処方されて口ジスキネジアと徐脈になったようです。これが初診時までの投薬経過です。
初診時の所見、礼節は保たれていて、挨拶も丁寧。常に笑顔で鼻歌を歌っていました。反復的常同行動、使用行動、模倣行為があり、言葉は流暢だが、その場にそぐわない内容の一方的な会話で、普通の会話になりませんでした。語義失語が強く、物品呼称と単語理解が著しく障害されていました。歩行はやや開脚性でしたが、動作や歩行の緩慢さは全くなく、一見してDLBらしさは感じられませんでした。
前医での最終処方がリバスチグミン9mg/日+メマンチン10mgでしたが、スイッチ易怒、不穏、独語が著しいとのことで家族の判断で中止していました。抗精神薬は上記の通りすべて少量でも副作用が出たので使用できませんでした。メマンチンをそのまま継続して、リバスチグミンをガランタミン4+4mgに変更しました。その後易怒、興奮は著しく減少したという事でした。しかしデイケアでは相変わらず多動で落ち着きがなく、脱抑制症状が著しいとの事で、ガランタミンも中止、メマンチン5mgまで減量しました。多動・脱抑制症状、夕方症候群に対してはチアプリド25~75mgで処方しました。結果的にこの組み合わせで行動心理症状は著しく軽減できました。試しにメマンチン5mgを中止してみると、アパシーで全く動かなくなるとの事でした。因みにこの方は希望にてサプリメントも3年前から使用しています。
意味性認知症(SD)というのは前頭側頭型認知症(FTD)の臨床病型の一つとして知られていますが、一般的な認知度は驚くほど低く、私も3年前まではまったく知りませんでした。認知症専門医として有名なDrでも診断が難しいようです。しかし非常に特徴的なキャラクターなので、それさえつかんでいれば誤診することはないと思います。私の外来患者では認知症来院者のうちの5%でしたので、少なくはないようです。語義失語が主症状ですので、初期から言葉の数が減少していくことにより、周囲との意思疎通が困難となり、世界が狭くなり自己中心的になってきます。その延長として幻覚(幻視)・妄想が初期からみられる症例がいくつかあるようです。多くはレビー小体型認知症(DLB)としてコリンエステラーゼ阻害薬が処方されますが上手くいきません。FTDのもう一つの臨床病型である、傍若無人的で受診拒否傾向の行動障害型(bv-FTD)とは違って、他者に対する礼節は保たれていて、接触は良く柔和な印象が多いです。このキャラクターはアルツハイマーに似ています。しかし礼節は保たれているものの、いざ会話してみると一方通行で思いつくままに、その場で意味のない会話をペラペラ話します。鼻歌を歌い上機嫌で笑顔で子供っぽいです。机の上の物をいじって勝手に遊んだりします。私が経験したFTD-SDの症例は全員女性でした。
<FTD-SDの診断基準>※難病申請のための臨床調査票より引用
1) 中核症状(必須項目); A) 物品呼称の障害 B)単語理解の障害
2)( 副項目)少なくとも4つのうち3つ
A) 対象物に対する知識の障害 B)表層性失読・失書 C)復唱は保たれる。流暢性の発語 D)発話は保たれる
3) 発症年齢が65歳以下である
4) 画像検査所見 ; 側頭葉前部にMRI/CTで限局性萎縮がみられる
5) 他の疾病を鑑別し除外できる ATD,DLB,VD,PSP,CBD,精神疾患
6) 1)~5)すべてを満たす
この診断基準に対する私個人の意見としては疑問点がかなりあります。1)2)に関しては全く異論はありません。3)について、発症年齢を区切る事に関してはどういう意味があるのか理解できません。また発症年齢を正確に測ることなど可能なのでしょうか?これは患者の差別化ではないでしょうか?4)について、一般的にどんな変性疾患でもかなり病気が進行しないと脳萎縮は起こりません。画像所見ありきというのは誤診を生む種だと思います。5)について、様々な疾患に類似した特徴があるので鑑別・除外は難しいケースも少なくないです。実際私がFTD-SDと診断した多くの症例は前医ではATD,DLBです。ATDの礼節・接遇良好性がある半面、DLBの幻覚・妄想も出ます。歩行は前頭葉性失調、開脚歩行を呈したり、片手の失行を伴う症例も多く、PSPやCBDの鑑別は困難です。
<FTD-SDの重症度>※難病申請のための臨床調査票より引用
0)正常発語・正常理解
1) 明らかな喚語障害、通常会話では理解は正常
2) 語を大きく阻害するほどではない程度の軽度の喚語障害、軽度の理解障害
3) コミュニケーションを阻害する中等度の喚語障害、通常会話における中等度の理解障害
4) 高度の喚語障害、言語表出障害、理解障害により実質的にコミュニケーションが不能
今回提示した症例では初診時にすでに3)レベルで、現在は完全に4)で最重症レベルです。発症してすでに9年ほど経過しているため失語の改善は困難ですが、投薬の度重なる変更、思考錯誤により、メマンチン極少量+チアプリドに落ちつきました。おそらくガランタミン単独使用でも抑制できたのではないかと思われますが、メマンチンとの併用により両者の抑制系としての効果が十分に発揮されてなかったようです。コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)+メマンチンの併用という組み合わせは奇異反応例や失敗例が多いので、最近は併用しないようにしています。発症して経過が長く病気が進行ステージで重度で、かつ高齢でもあるため、正常な脳神経細胞が乏しくなっているがための、薬剤過敏性ではないかと推定されます。早期に副作用が出てくれる症例のほうが、副作用だと気がつきやすいので対処はしやすいと思いますが、今回の症例は合わない薬剤が非常に多くて苦労させられました。


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by shinyokohama-fc | 2016-02-01 17:35 | 治療
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