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ドパミン阻害剤で悪化する共通項

最近、「パーキンソン病」「パーキンソン症候群」という病名で健康保険適応の検査となった核医学検査として、ドパミントランスポーターシンチグラフィー(通称・ダットスキャン)というのがあります。主として本態性振戦とパーキンソン病、アルツハイマー病とレビー小体病(DLB)の鑑別ができる検査といわれています。ただしピックコンプレックスと呼ばれている疾患群であるCBD/PSP(CBS/PSPS)でもレビー小体病と同様に両側の線条体のドパミン集積が著しく低下しています。それゆえこれらの3つの疾患群ではすべて元々ドパミンが枯渇状態にあるわけです。こういうドパミンが枯渇状態の疾患に対してドパミン阻害作用の薬剤を処方するとどうなるか?当然のごとく動作歩行は悪化するだけでなく、仮性球麻痺がひどい場合は嚥下障害、呼吸筋麻痺を引き起こします。私が診てきた症例の印象としては、DLBよりもCBD/PSPのほうがドパミン阻害剤で症状が悪化する程度がより強い傾向にあると思われます
CBS/PSPSは「ピックコンプレックス」かつ「ドパミン枯渇症候群」です。そういう疾患群が少なくないという事を臨床医の多くが知りません。認知症専門医・神経内科専門医を名乗っている医者すらほとんど知らないのではないか?かく言う私もつい3~4年前までは全く知りませんでした。CBS/PSPSの症例を1年で50例以上診たからこそわかったのです。特にアセチルコリン賦活作用の強力な薬剤はアセチルコリンードパミンのバランスに影響してドパミンの相対的低下をもたらし、錐体外路症状(パーキンソニズム)増悪させる事が懸念されると考えられていて、実際の私の臨床経験でもそうでした。やはりDLBよりもCBS/PSPS症候群のほうが薬剤性パーキンソニズム有害事象がより深刻であるようです。加えてアセチルコリンの強力賦活によりピック症状が悪化して脱抑制・錯乱状態になり、きわめて悲惨な状態に至ります。CBD/PSPはDLBと違ってレボドパやパーキンソン治療薬が全くと言っていいほど効かないため、ドパミン阻害剤による有害事象に対しては解毒治療しか方法がないわけです。
CBS/PSPSとDLBの鑑別はMIBG心筋シンチグラムが有用だと言われています。前者ではMIBGの集積は正常であり、後者では著明に低下すると成書には記載されています。しかし両者の鑑別はDLBではレボドパが少量50mg×1~2でも著効しますが、CBS/PSPSでは300mg以上使用しても効果が得られないという事です。もちろん例外的なケースもあり、PSP-Pというタイプだけはレボドパが効果を示しますし、DLBの中にはレボドパやChEIなどが効かない悪性進行性タイプもあります。いずれにしても動作歩行障害系の神経変性疾患にはアセチルコリン賦活作用の強力な薬剤を使用するには細心の注意が必要であり、重度のドパミン枯渇状態が推定される病状のケースでは最初から使用を控えるべきではないかと思います。


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by shinyokohama-fc | 2016-01-23 17:25 | 治療

パーキンソン型認知症には少量アマンタジンが著効

当ブログでは以前から「レビー小体型認知症(DLB)」という呼称を用いてきましたが、軽度~中等度のパーキンソン症状が明確に存在する症例以外はともかく、パーキンソン症状が全く存在せず、むしろ動作が通常よりも速い症例でも幻視、認知の変動があればDLBだと前医で診断される症例を数多く診ました。それらの多くがピック系の意味性認知症、行動障害型FTDとして典型的な症例が多かったという印象です。私はこの2年でさまざまな症例を診るにつれてDLBという病名を現行の診断基準で診断するのは不可能ではないかとすら感じるようになりました。そもそも「レビー小体」というのは病理診断であるために、実際の症状だけで、レビー(シヌクレイン)が溜まっているのか、タウが溜まっているのかなど誰もわからないので当然といえば当然なのですが。そもそも幻視という症状1つとっても、前頭葉、側頭葉が起源のものから、中脳黒質~脳幹、あるいは後頭葉が起源のものもあると言われており多彩です。統合失調症の症状として幻視・幻聴がみられるように、意味性認知症などのピック系の疾患群、CBS/PSPSなどのピックコンプレックスでも幻視・幻聴がみられる症例は少なくないという印象です。
つまり「木を見て森を見ず」という診療が誤解を生んでいるのではないか?神経疾患の臨床診断というのは全体像を見てするべきであり、「幻視」「パーキンソン症状」とか断片的な症状だけで診断すべきではないと考えています。
今後はパーキンソン病の主要症候が存在する症例を「パーキンソン型認知症」と呼ぶようにしたいと思います。このタイプの認知症にはパーキンソン病の主要症候のうちわずかでも確認できるタイプをすべてそう呼称したいと思います。必須項目は1)動作緩慢~寡動(思考緩慢、歩行緩慢を含む) 2)歯車様筋固縮 3)姿勢異常・姿勢反射障害 4)安静時振戦とし、追加項目として1)自律神経症状(起立性低血圧、便秘、排尿障害、体温調節障害など) 2)レム睡眠行動異常とします。これらの所見がみられないものはすべて除外します。つまり私案では「パーキンソン病らしさ」があるかないかを重視し、「幻視」「認知の変動」という主観的で判断の曖昧な臨床診断を混乱させる項目は除外します。
「パーキンソン型認知症」に共通してみられ問題になる症候として「日中の嗜眠・傾眠」があります。先日、同じ日の外来にこの「パーキンソン型認知症」で継続診療している症例が4~5例集まりました。そのうち3例が前回処方したアマンタジン50mg(朝食後)が著明に効果を示しました。以前から他のどんな薬剤を使用しても効果がなかった「日中の嗜眠・傾眠」という症状に対してです。わずか50mgで劇的に効いたのは大変驚きでした。特に毎回外来受診時にいつも嗜眠状態であった60代の症例が初めて外来受診時に嗜眠状態がなかったのです。このたびアマンタジンを使用した症例は元々幻視の訴えがないかあっても軽度の症例が多かったと思われます。アマンタジンは副作用として幻覚が出やすいというのは神経系専門の人間であれば誰もが知っているほど有名な事ですので、DLBにはこれまで一切使用が推奨されて来なかったように思われます。しかしアマンタジンという薬剤は「パーキンソン病」「パーキンソン症候群」に適応があり、実際はパーキンソン病の症例においても古くはレボドパの次に選択される薬剤という位置付けでした。パーキンソン病に対してドパミンアゴニストなど次々と新薬が出たために、ここ最近の10~15年くらいはいつしかアマンタジンを使わなくなったという傾向がありましたが、少量でもこれだけの効果があるのであれば見直されるべきだと思います。個人的にはChE-Iよりも価値の高い薬剤治療だと考えます。


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by shinyokohama-fc | 2016-01-18 19:00 | 治療

薬害だらけの医療現場

新年早々で久しぶりのブログ更新ですが、おめでたくない話題で恐縮です。以下は私の知人(病院勤務Dr・神経内科)から先日受信したメールの一部引用です。
「本日から仕事初めでしたが、救急患者はゾルピデム(短時間型睡眠導入薬)飲みすぎて意識障害の高齢男性、フル二トラゼパム(長時間型睡眠導入薬)、レべチラセタム+ガバペンチン(抗てんかん薬)と神経系薬剤を多剤併用されて転倒して腰椎圧迫骨折した高齢男性、チクロピジン(抗血小板薬)を内服していて腸腰筋血腫をおこした高齢男性などなどいきなり薬害患者のオンパレードでした(苦笑)」
もともと私の診療科である「神経内科」は薬害患者が放り込まれやすい傾向にあります。薬害患者の原因薬剤が処方されるのは大半が「精神科」です。「うつ病」で精神科にかかっていて、抗精神薬を多剤併用されている患者から、手が震えるとか歩きにくいので診てほしいというケースが非常に多すぎてこちらは辟易します。
病院勤務時代も今でも一番印象に残っているのは精神科で処方されたハロペリドールやクロルプロマジンなどの抗精神薬で「悪性症候群」を起こした数々の重症症例です。抗精神薬を処方された方すべてがこのような重篤な有害事象を起こすわけではありませんが、人というのは個体差・個別差があり、1000人に1人はこのようなケースがあるわけです。特に代謝能力が低下した高齢者では抗精神薬や睡眠導入薬などの神経系薬剤を多剤併用あるいは高用量で投与された場合は高い確率で重篤な副作用(意識障害やせん妄など)を起こしえます。
一番の問題は薬を処方する医者側が薬の副作用(危険性)を十分に理解していない事です。特に神経系に作用する薬剤というのはやむを得ず、恐る恐る処方する薬です。患者側もそういう意識で薬を飲むべきです。そういう薬が数種類に増えれば脳の中で何が起こるか誰にも予測できないのです。
昨日NHKのドクターGという番組で「スルピリド(抗精神薬)による薬剤性パーキンソン症候群」のケースが取り上げられていました。一般の方が視聴する番組としてはかなりマニアックだと思いましたが、私が20年以上神経内科の外来をやっていて最も多かったのはこのケースでした。古くから胃薬としても使われていて特に精神科においてはよく頻用されている薬です。「食欲がない」という症状には特に効果があるようです。しかしこの薬を長期間内服を続けることによって、「手が震える、動作が鈍くなった、歩けなくなった」という事で神経内科の外来を訪れるケースが非常に多かったのです。スルピリドを中止しても元のように歩けるまで数か月~半年かかった症例もありました。高齢者でなくても「薬剤性パーキンソン症候群」が出やすい薬であることは間違いないようです。
最近よく診るケースとしては高齢者の側頭葉てんかんの症例に対してカルバマゼピン(抗てんかん薬)が処方されて、ふらついて歩けなくなったという症例です。100~200mgという少量でもそういう症状が出るようです。この薬はそれだけ「小脳性運動失調」を起こしやすい薬だという事です。長期内服により「薬剤性小脳変性症」を起こすことも知られており、若年時から20~30年の間内服を続けていた結果、60歳で高度の小脳萎縮、起立歩行が不可能になった症例も最近診て非常に驚きました。昨年から単独使用が可能になった新規抗てんかん剤にはこのような有害事象はないようです。
薬害は日常の臨床現場に溢れています。医療者(医者や薬剤師)の勉強不足・管理責任が欠如していると言わざるをえない現状です。神経系の薬剤は症例を選んで上手に使えば非常に有用であることは間違いないのですが、使い方がまずいために有害事象が放置されているケースがあまりにも多すぎて嘆息させられます。こういう現状を踏まえて将来的には神経系薬剤の副作用に関する啓蒙活動などを考えています。


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by shinyokohama-fc | 2016-01-08 09:25 | 治療
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