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残薬山積みの高齢者宅

高齢者宅から薬が大量に見つかる事例が目立っているそうです。「残薬」と呼ばれ、多種類を処方された場合など適切に服用できず、症状の悪化でさらに薬が増える悪循環もあるそうです。年400億円を超えるとの推計もあり、薬剤師が薬を整理し、医師に処方薬を減らすように求める試みが広がっているようです。
4月15日放送のTBS・Nスタの特集で、残薬と多剤処方の問題が取り上げられていていました。この番組では白衣を着ない在宅訪問医師が高齢者宅などを訪問したりして、他の医師が処方した多剤処方の問題を指摘するという内容でしたが、私が思うに、こういう仕事は医師がするべきではなくて中立的な立場の訪問薬剤師がするべきではないかと思いました。薬剤師は副作用や相互作用の知識を確立した上で、医療者として医師の処方に対して適切かどうか正しい意見が言えるような立場になってほしいと思います。ある医師が他の医師の処方薬にクレームをつけるという行為は医師間の不毛な軋轢を新たに生んだり、患者と主治医との信頼性を破壊するというリスクもはらんでいるので慎重にするべきです。ただ実際は多剤併用処方というのは相互作用の危険、特に代謝能力の低下した高齢者には副作用の危険が高まるという報告がありますので、患者にはデメリットをもたらす可能性が高いと思われます(以前のブログを参照ください)。実際には複数の医療機関や診療科各医師からそれぞれ薬が5~6種類処方されて、合計20種類・1日30錠を超えてしまう事例も少なくないようです。それだけの薬を毎日正確に内服するのは高齢者でなくても至難の業だと思います。我々にできることは少しでも副作用のリスクを減らし、残薬(医療費のムダ)を減らすために、できるだけ少ない種類と数の処方薬にとどめるように努めることではないかと考えています。


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by shinyokohama-fc | 2015-04-19 12:08 | 治療

市販薬で死亡15例・風邪薬8例・解熱鎮痛剤3例

市販薬(OTC)、特に風邪薬や解熱鎮痛剤というよく頻用される薬剤で死亡した例が過去に15例あったとの事です。
これは薬に関する事なので本来は厚労省が扱う事ではないかと思いますし、死亡・重篤例の原因薬剤名やメーカーも明かされないために、かえって一般市民に疑心暗鬼を植え付けるだけの悪影響しかないのではないかと思います。
そもそも市販薬だけでなく「医療機関で処方される総合感冒薬や消炎鎮痛薬ではどうなのか?」という事になる。
当院では風邪薬の処方に関しては以下のように説明しています。
「一般的に誰もがかかる感染症として急性上気道炎・急性胃腸炎などいわゆる「風邪」があります。その大半はウイルスが原因で特効薬がないため、その症状の不快さを抑えるだけの対症療法的な薬の使い方になります。そのため当院では主として自然治癒を促す目的で漢方薬を処方しています。抗生物質は細菌感染による扁桃腺の膿瘍や肺炎など明らかに細菌感染が原因と推定した場合にのみ使用しております。西洋薬の消炎鎮痛剤、抗生物質、抗ヒスタミン剤などに関しては時に副作用が出現する場合があるためご注意ください。お薬に関しては慎重に処方するように努めておりますが、もし副作用がでたり自己中止した場合はお手数ですが報告願います。」
総合感冒薬や消炎鎮痛剤で重篤な副作用が出るのは昔から有名な話で、何をいまさらという気もします。医療機関で昔から最もよく使われてきた総合感冒薬にも2種類の解熱鎮痛剤(NSAIDs)が含有されているのですが、最近でもTVCMで頻繁に宣伝されているNSAIDsは常用すると食欲低下したり消化管粘膜障害を起こします。同じく含有されている抗ヒスタミン剤に関しては脳・中枢神経を抑制する作用があるため、眠気、めまい、倦怠感、活動性低下などを引き起こします。特に高齢者が感冒を患っている状態でこのような副作用が起こればかなりマズイ事になるだろうというのは容易に想像できると思います。それゆえ高齢者、特に脳機能低下した疾患の方には安全に処方できる風邪薬は漢方薬しかないという事になります。若年者でも総合感冒薬を連用してから食事が食べれなくなったり、眠気やめまいで仕事ができなくなったという話は日常的によく聞きます。ただそれ以上に重篤な副作用が新聞記事にもある①~③です。①Steevens-Johnson症候群(全身の皮膚粘膜症候群)②肝機能障害 ③腎機能障害です。
私が風邪に漢方薬を処方するのはこれが主な理由です。漢方薬も長期に内服する場合は肝機能障害や間質性肺炎、横紋筋融解症などの副作用がありますので注意は必要ですが、短期間であればそのような副作用は起こりにくいです。薬と名のつくものに絶対に安全なものは存在しないので、年間に莫大な人に使用されている市販の風邪薬や消炎鎮痛剤による重篤副作用例がこの人数であれば、むしろ稀少だという評価が一般的でしょう。ただしいくら稀だからといっても、風邪薬を飲んだ人が①~③の副作用で死に至ったり、後遺症が残るほどの重篤な副作用の被害に遭ったとしたら本人とその家族はやりきれないのではないでしょうか?
医療機関で処方される薬でも市販で購入する薬でも同じで、医療機関の処方薬だから安全だという事はないです。薬で副作用が出てしまうのは体質・相性の問題であるので、ある意味防ぎようのない事ではありますが、「必ず薬には副作用がある」という認識を持ちながら、常に副作用に注意して慎重に服薬するという姿勢が大事だと思います。


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by shinyokohama-fc | 2015-04-14 13:03 | 治療

日本人のための糖尿病食事療法

先日、日本内科学会総会・講演会に行ってきました。時間の都合で午前中の糖尿病の講演しか聞けませんでした。
4月の京都は観光客も含めて駅周辺から地下鉄なども多くの人でごったかえしていました。京都は毎年行く度に国内外の観光客が増えて人が多くなっている気がします。少年時代(30~40年前)に家族で何度も観光で訪れましたが、その頃とは人の多さが全然違う気がします。京都は元々大阪や名古屋に比べて地下鉄やトラムなどが充実しておらずアクセスが良くないので、今のままでいいのか?と今後が心配です。
教育講演で「日本人のための糖尿病食事療法」という講演がありました。わずか30分の講演でしたが、糖質制限療法についても言及されていました。
すべての栄養素がバランスよく配合された、昔ながらの和食が日本人には最も体に合っていると思われますし、最近は魚や豆腐、雑穀米や玄米による食事が見直されているように思います。人間の体はすべて個々に体質が大きく違いますので、すぐに太りやすいメタボリック体質の人と、いくら食べても太らない体質の人で、同じような食事・薬物療法はありえないわけです。極端な糖質制限が体質に合う人もいれば合わない人もいるでしょう。問題は個別対応の仕方だと思います。しかし欧米の食文化が流入して飽食的な環境にある現代社会では糖質を過剰摂取しがちな環境にあることは事実です。まずは糖尿病・メタボリック患者の糖質過剰制限をやめさせる事が大事だと思います。昨今は多剤併用の薬物治療で糖尿病患者のHbA1Cの数値だけを低下させても死亡率は変わらないというデータも示されていて、現状の糖尿病薬物治療の意義に疑問の声が投げかけられているようです。HbA1cの基準値も高齢化に伴う低血糖の脳・心臓へのリスクが問題視されていて、スルホニルウレア(SU)剤などによる低血糖が高齢者には特に危険だと言われています。やはり適切な食事療法・運動療法が第一であるべきだと思いますが、年齢や体重やライフスタイルによって状況が変わります。当たり前のことですが、同じ糖尿病患者でも40歳の体重90kgの男性と85歳の体重40kgの女性では食事・運動・薬物療法とも全く違う対応が求められます。


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by shinyokohama-fc | 2015-04-13 12:33 | 治療

スタチンによる糖尿病リスク

~スタチンによる糖尿病リスク・従来報告を上回る46%の上昇 ~
フィンランドUniversity of Eastern Finland のHenna Cederberg氏らは、同国の地域住民コホート研究METSIMの結果から、スタチン療法を受けていた人が受けていなかった人に比べて2型糖尿病を発症するリスクが46%上昇することが分かったとDiabetologia(2015.3.4オンライン版)で報告した。またこのようなスタチン療法による2型糖尿病リスクの上昇には、インスリン感受性・分泌の低下が影響していることも示された。
スタチンと糖尿病リスクの関連は、これまでにも数多くの研究で検討されてきた。2001年に報告されたWOSCOPSサブ解析では、ブラバスタチンに伴う2型糖尿病リスクのわずかな上昇を示す報告が相次いでいた。以前の研究で報告されたスタチンによる糖尿病リスク上昇度は9%~22%まで幅があるが、①対象が心血管疾患(CVD)の高リスク者で、一般人口とは糖尿病リスクが異なる可能性がある ②糖尿病の有無を自己申告や空腹時血糖値に基つき判定しており、糖尿病発症率が過小評価されている可能性があるなどの限界があった。(中略)こうしたことを踏まえ、Cederberg氏らは今回の住民ベース研究でスタチンと糖尿病リスクの関連について検討。またインスリン抵抗性とインスリン分泌の評価を行い、スタチン療法が糖尿病リスクを上昇させる機序についても検討した。
対象は2005~10年にMETSIMに登録された同国クオピオの糖尿病のない男性8,749例、平均年齢は57±7歳(45~73歳)、BMIは平均26.8±3.8だった。2型糖尿病の診断は、①空腹時血糖値126mg/dl以上、経口糖負荷試験(OGTT)②時間値200mg/dl以上またはHbA1c6.5%以上 ②血糖降下剤の使用 ③医療記録における2型糖尿病診断または①のデータありのいずれかの基準をみたした場合とした。ベースライン時にスタチンを使用していたのは2,142例(24.5%)で、スタチン使用者の65.9%がシンバスタチン、18.1%がアトルバスタチン、8.6%がロスバスタチン、3.8%がフルバスタチンを使用していた。5.9年の追跡期間中に625例が2型糖尿病を発症。非スタチン使用者に比べてスタチン使用者で発症率が高く(5.8%vs.11.2%,P<0.001)、調整後の2型糖尿病リスクが46%上昇していた(ハザード非(HR)1.46, 95%CI 1.22~1.74)
スタチンの種類別の解析では、シンバスタチンとアトルバスタチンの使用は2型糖尿病リスク上昇と有意に相関していた(調整後のHRはそれぞれP=0.001,P=0.037) 一方スタチン使用者では非使用者に比べてインスリン感受性が24%、インスリン分泌が12%低下していた(それぞれP<0.001 P<0.01)。Cederberg氏らは「スタチン療法による2型糖尿病リスクは、交絡因子で調整後も46%上昇しており、これまでに報告されていたよりも高いことがスタチン使用に伴う2型糖尿病リスクの上昇に直接影響している可能性が高い。」と考察した上で、今回の結果について研究規模の大きさから「信頼性は高い」とする一方で、対象者が白人男性のみであるために、女性や他の人種にも一般化できるわけではないと述べている。
内科・神経内科で診療を20年以上行ってきた経験でいうと、病院勤務時にスタチンによる重症横紋筋融解症により、全身の筋肉が一気に壊れて急性腎不全に至った症例を数例ほど入院患者として診療した経験があります。特に中高年の男性に多いようです。ここ数年の外来診療ではスタチンを内服している中高年女性で下半身の筋肉痛によってしゃがみ立ちが困難になったり、肩~上腕の筋肉痛で上肢が上がらなくなったりで日常生活動作が著しく阻害された症例を10例前後みたことがあります。また末梢神経障害により両足末端のひどいしびれに悩まされた方も数例いました。それ以後はスタチンの使用には慎重にならざるをえなくなっています。筋肉や神経の副作用の症状が出ると、神経内科に回ってくるので、循環器科医や糖尿病内科医はおそらく私のようにスタチンの深刻な副作用の症例を診た経験がほとんどなくて副作用の実態を知らないDrが多いのではないか?と思われます。
今回の報告、スタチン使用によりインスリン分泌やインスリン感受性が低下したという大規模臨床調査結果は人種・性が限定されたとはいえ、きわめて重大で深刻な結果だと受け止めるべきだと考えます。日本を含めて全世界で女性も含めて同じような臨床調査をただちに行うべきでしょう。近年は生活習慣病、メタボリック症候群、糖尿病などのリスクファクターのない体質性の高コレステロール血症(特に女性に多い)に対しては、家族性を除いてコレステロール低下薬や食事療法などの治療に意味がないという意見が専門医からも聞かれるようになりました。本来スタチンというのは家族性しか適応がないと断言する医師もいます。
スタチンに限らず、効果の高い薬剤ほど副作用のリスクが高いという事実を患者側に伝えるべきでしょう。
薬剤に伴う不都合な真実に目を背けていては、患者側を向いて医療をしていないと批判されても仕方ないことです。


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by shinyokohama-fc | 2015-04-09 19:03 | 治療

パーキンソニズムとは何か?

神経学的な精緻診察なき乱雑な外来診療では「高齢者の歩行障害=パーキンソン病、パーキンソニズム」という安易な評価・診断がされがちです。患者が多く十分な診察時間がとれない状態では致し方ない場合もあります。
まず高齢者では脊椎疾患による脊髄障害による歩行障害を除外しなければなりません。特に女性の場合は骨そしょう症による脊椎変形や圧迫骨折が少なくないので要注意です。長期の脊髄圧迫は下肢運動障害の原因になりえます。
また高齢者では加齢に伴いドパミンが低下傾向になるので、動作が遅くなり、震えやすくなる傾向にあります。
まず注意すべきなのはドパミン阻害剤です。嘔気止めのドンぺリドンやメトクロプラミド、抗精神薬のスルピリドやチアプリドはたとえ少量でも高齢者女性では薬剤性パーキンソニズムをきたします。
パーキンソニズムを語る場合、まず本家の「パーキンソン病(PD)」を知る必要があります。PDの最大の特徴は左右差と初期の片側性です。初期~中期は必ず右か左かのいずれかにしか症状はありません。ベッドに横たわった状態、安静時の片手のリズミックな振戦(ふるえ)、丸薬手位という独特の手の姿勢があります。有名な歯車様筋固縮も同側にみられます。手関節と肘関節で一様な歯車的抵抗を確認できます。それに対して反対側にはそれらの所見はほとんどありません。次に姿勢は前傾姿勢、姿勢反射障害は前後に軽く押して踏ん張りにくい状態です。ただし姿勢反射障害の診察で明らかに自ら率先して倒れようとする場合があり、この場合は演技性・心因性という判定になります。発症年齢にもよりますが、発症して2~3年経つと動作が緩慢(遅く)になり、思考も緩慢で遅くなる傾向があります。PDの多くは神経質で慎重なので、中期まではほとんど転倒して大怪我することは稀です。高齢発症のPDの場合は動作歩行障害の進行が速く、発症後数年で幻視・妄想・認知機能低下が出現するタイプもあります。いわゆるPDDです。PDの一部がPDDに移行するようですが、高齢発症でもPDDに移行しないタイプもあるようです。
次に最近話題の「レビー小体型認知症(DLB)」ですが、一般的には上記のPDでみられるパーキンソニズムの軽度レベルのものが多く、やはり歯車様固縮ですが左右差はPDほど顕著ではないようです。DLBの中には前頭葉~側頭葉障害が強いタイプ、いわゆるフロンタルDLBがあります。この場合はフロンタルパーキンソニズムやアタキシアが混在してくるので、PSPSやMSAとの臨床的な区別が難しくなります。その一方で40~60歳と比較的若年発症に多い、妄想型DLBというのが存在します。統合失調症との鑑別が問題になるため、DATスキャンが診断に有用です。パーキンソニズムがほとんどみられないグループのためほとんどが精神科を受診しますので、神経内科の外来で診ることはまずありません。
パーキンソン関連疾患と呼ばれている疾患群ですが、見た目がPDと似ているだけで本質はまるで違います。
大脳皮質基底核症候群(CBS)は顕著な左右差が特徴的です。初期は一側の上肢のみ鉛管様固縮がみられます。やがて同側の運動拙劣が顕著となってきて、不使用という症状になります。しばしば運動麻痺と誤解されています。典型的なCBSは軽度のフロンタルアタキシアの開脚性失調歩行は存在するものの歩行は中期までは比較的安定しています。ただし視空間失認が顕著なため、一見安定しているように見えるわりには怪我が多いようです。
進行性核上性麻痺症候群(PSPS)は様々な病型があります。古典型のRichardson Syndromeは1~2年で急速に進行して歩行不可能になるタイプで、中脳被蓋が顕著に非薄化します。脳幹障害も非常に強いために、高度の嚥下障害に伴い喀痰貯留・呼吸障害などをきたしやすく、早々に胃瘻や気管切開を余儀なくされることが多いようです。
最近外来でよく見るPSPSはRSタイプに比べて進行の遅いタイプばかりです。しかし初期から姿勢反射障害が強く転倒するのが特徴です。またすくみ現象とフロンタルアタキシアの開脚性失調歩行が必ず全例にみられます。
PSP-Pというパーキンソン病にきわめて類似したタイプがあります。初期の臨床像はPDと似ていると言われますが、最大の違いは上肢に筋固縮が軽度~正常で左右差がないことです。頸部~体幹~下肢は筋固縮が目立ちます。
PSP-PAGF、純粋無動症(PA)タイプは前回ブログに記載したとおりで、四肢の筋固縮はほとんどなくむしろ筋トーヌスが低下しているためにしばしばMSAと誤認されます。体が固くないのにすくみや突進現象がみられます。PSPSの最大の特徴は前頭葉~後方連合野への抑制障害による被影響性の亢進と環境依存により動作歩行状態が大きく変化することです。ここが中脳黒質に限局性のPDとの違いです。
MSA(多系統萎縮症)の代表的なものはMSA-C(OPCA)です。上肢は小脳運動失調の影響で筋トーヌスが低下しますが、下肢は固縮ではなく痙縮となり、伸展位から屈曲するときのみ強い抵抗があります。Babinski反射や足のクローヌス(間代)という所見もみられます。MSA-P(SND)の場合は早期から四肢・体幹ともに高度の筋固縮があり、2~3年で全身がガチガチになります。あらゆる薬剤に抵抗性で、動作歩行レベルが著しく阻害されます。
NPH(正常圧水頭症)ではフロンタルアタキシアとパーキンソニズムが軽度~中等度みられます。初期はPSPSと非常に類似しているので、画像診断による確認が必須になります。画像診断でNPHでなければ多くはPSPSです。
このように代表的な疾患において「パーキンソニズム」を検証していくと一筋縄ではいかないというのがお分かりだと思います。やはりカギは「フロンタル・パーキンソニズム」と「フロンタル・アタキシア」の評価になります。
詳細は以前のブログをもう一度参照してください。


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by shinyokohama-fc | 2015-04-07 19:23 | 医療

中脳障害をきたす疾患(PSP症候群とDLB症候群)

中脳というのはあらゆる場所とつながり、複数の路線が乗り入れているバスターミナルのようなものかもしれません。中脳~脳幹を主座とするPSP症候群やDLB症候群において多彩な症状をきたす理由はここにあるのでしょう。
中脳連絡系に関連する症候を以下にまとめてみます。
1)中脳ーマイネルト核 ⇒意識障害、嗜眠、記憶障害 ;アセチルコリン欠乏
2)黒質ー線条体系⇒パーキンソ二ズム(動作緩慢、歩行拙劣など) ; ドパミン欠乏
3)中脳ー大脳辺縁系⇒幻覚・妄想・興奮 ; ドパミン亢進
4)中脳ー大脳皮質系⇒せん妄・症状の動揺性
例えば、3)の症状によくリスぺリドンという薬剤が使用されます。一方で制吐剤としてドンぺリドンもそれに類似した薬剤でやはり中脳に作用します。どちらの薬剤も効果が非常に高いため臨床現場で頻用される傾向にある反面、誤って作用してしまうと1)2)のような症状をきたしてしまうリスクがあります。事実としてリスぺリドンを高齢者に使用したり、ドンぺリドンを小児に使用したりすることによって、ドパミンが阻害されるだけではなく、脳幹網様体が誤作動して意識障害に陥ったりするケースが時々報告されています。フランスでは座薬の販売中止が勧告されているほどです。
中脳障害により神経伝達のバランスが崩れている、PSP症候群とDLB症候群ではアセチルコリンとドパミンの拮抗バランスも微妙に崩れていると推定されます。PSP症候群の中には上記1)~4)の症候すべてが出現・消退をくりかえす症例が存在するという事を最近知りました。この症例にはレボドパ、ドパミンアゴニスト、コリンエステラーゼ阻害剤、漢方薬(抑肝散、真武湯)など様々な薬剤が試されましたが、いずれも一時的に効果があっても持続しなかったり副作用で忍容できなかったりでした。中でもレボドパ少量で強烈な嗜眠をきたす状況でした。保険医療ではもはや限界と判断したケースです。PSPSとDLBSは程度の差はあれど1)~4)の症候をきたしうるようです。実に様々な症状が現れるため、あらゆる神経系薬剤が使用されがちですが、それらの薬剤によってさらにバランスを崩してしまうケースが後を絶たないようです。それだけ中脳障害系の疾患のコントロールは一筋縄ではいかず、まさに難関と言えるでしょう。
PSPSで特徴的な中脳被蓋の高度萎縮所見は進行の速いPSP-RS(Richardson syudrome)では確実にみられますが、比較的高齢で発症するPSP-PやPSP-PAGF,PSP-CBDなどでは顕著ではありません。また眼球運動障害も発症して数年以後に顕性化してくる症例がほとんどのようです。中脳萎縮が画像的に軽度だからといって、中脳障害が存在しないわけではなくて、程度の差こそあれ、1)~4)の症候は存在すると考えたほうがいいでしょう。
PSPSとDLBSの最大の違いは自律神経障害と言われます。自律神経障害に著効する薬剤は残念ながら存在しないようです。PSPSでは頻尿や便秘などの仙骨部~腰部にある副交感神経関連の症状に限定されますが、DLBSではしばしば高度の心血管系自律神経障害による30mmHg以上の高度の起立性低血圧や徐脈、体温調節や発汗障害などをきたします。起立性低血圧の有無の確認は両者の鑑別の参考になるでしょう。
最近保険適用となったDATスキャンによるドパミントランスポーターイメージング検査では両者の鑑別は困難ですがMIBG心筋シンチグラムでは鑑別が可能と言われます。ただしこの検査とて糖尿病や心筋疾患による他の要素を除外できるものではなく、検査というのはあくまで参考程度にしたほうがいいようです。
参照ブログ) 「老年科医の独り言」http://ameblo.jp/lewybody/


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by shinyokohama-fc | 2015-04-06 19:17 | 医療
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