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推薦図書・第2弾

個人的推薦図書、第2弾です。
今回は紹介するのは医学書ではなく、一般書で、書店では家庭医学と文庫本コーナーにあります。

1)「家族よ、ボケと闘うな!~誤診・誤処方だらけの認知症医療」著者 長尾和宏×近藤誠 2014.12.22
この書には、私自身が日常的に内科医として認知症診療していて感じられる事象がほとんど書かれているといっても過言ではないです。読んでいて私ときわめて価値観が近いと感じました。前回の対談形式に続いて、往復書簡というきわめて斬新な形式をとっています。印象的なテーマをざっと取り上げてみると「早期発見、早期治療に意味があるの?」「4つの薬が有効とされているけれど...」「なぜ医者は薬の処方を間違えるのか?」「認知症をうつ病を誤診する医者」「エビデンス主義は誰を幸せにするの?」「医者を信じるな?薬を信じるな?」などなど。認知症に関わる家族・介護者・医療者にすべて考えてほしいテーマですね。私的にはエビデンス...のところで、EBM(Evidence Based Medicine)に対して、NBM(Narrative Based Medicine)という物語(ストーリー)に基つく医療の重要性を強調されていて、認知症においては家族の生の声(NBM)の方がレベルが高いかもしれないという事に共感できました。認知症医療の混乱をもたらしているのは患者側の個性・個別性というものを度外視して、すべてEBMに無理矢理あてはめようとしている事だという指摘には同意できます。NBMについてはまた後日に自分なりにブログで意見を書いてみたいと思います。

2)「沈みゆく大国アメリカ」著者 堤未果 2014.11.19
内容はアメリカの医療、特に保険医療に翻弄されて、この国の保険制度のために真っ当な医療が受けられない一般市民や真っ当な医療が実践できない医者の実態などが書かれている。医療の恩恵を受けているのは笑いが止まらない保険会社(民間)と製薬会社とウォール街、資本主義・合理主義を徹底したらこうなってしまうのかと痛感しました。医療のファストフード化を勧める事で、医療者から仕事のプライドを奪い、家庭医やかかりつけ医がどこにもいなくなるという事態にまで至っているという事実は衝撃的です。医療の米国追従は是か非か?今の日本の保険制度を守るべきなのか?この書を読めばそれがわかるはずです。前のブログでもその一例を書きましたが、米国流のEBM一辺倒主義に日本の医療が追従するというのはきわめて危険です。病気を全体化するというのは個々の諸問題を無視したり矮小化したりする可能性があるからです。医療は全体化したファストフードではなく、個別の人間の物語に沿ってオーダーメイドに実践されるべきものだと思います。


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by shinyokohama-fc | 2015-02-15 12:09 | 医療

CBSはなぜPD,DLB,ATDと誤認されるのか?

CBS(大脳皮質基底核症候群)という名前が一般化した背景としては、臨床診断と病理診断が合致しないからです。
臨床的CBSの病理診断はCBDが50%でPSPが30%残りはAD,FTD-Pick,Prion病などと言われています。CBDとPSPで事実上80%です。一般的にCBDとPSPというのは兄弟のような疾患と認識されます。この2つに共通している最大のポイントは既存の薬物治療が非常に困難であるという点です。
CBS-PSPのほうがCBS-CBDよりも姿勢が不安定で体幹保持障害と動作歩行障害が強いという印象です。CBS-ADは早期から認知症、注意障害、失語が目立ち、CBS-FTDは早期から異常行動が目立つようです。
<<CBSと他の疾患群の臨床症状の比較>>
<初期>
1)片手が使いにくい(片側巧緻運動障害)→運動麻痺ではなく「上手く使えない」という症状です。
2)物を触ってもわかりにくい(立体的感覚障害)
3)片方にある物を見落とす(半側空間無視)
4)道具の使い方がわからない(観念運動失行)
5)細かい筋肉の震え(反射性ミオクローヌス)
1)~5)はCBS-CBDにきわめて特徴的と言われている症状で、CBSの50%では初期からみられるはずです。しかし言い方を変えれば残りの50%では1)~5)ははっきりしないという事です。
注意しなければならないのは5)の症状であり、感覚的刺激(触覚・視覚・聴覚など)により反射性に誘発される局所(特に上肢に多い)の震えです。上肢が震えると言えば、パーキンソン病が有名なので、片手の震え=パーキンソンという単純公式による誤認がされやすいようです。事実私も含めた神経内科医もほとんど誤認しているようです。
PDの安静時振戦というのは何も刺激しなくても震えますが、反射性ミオクローヌスの場合は反応性に震えます。
6)物事を考えるのに時間がかかる(思考遅延)→PSPの記述を参照、皮質下性認知症全般の特徴
7)記憶障害・注意障害→初発症状がこれだとほぼADと誤認されます。2年以内に何らかの神経動作障害がみられるので、そこで臨床診断を修正する必要があります。
※ADと誤認されるので、漫然とCHE-Iが処方されますが、ADと違い認知症が短期的に進行するのが特徴で、CHE-Iの副作用によりむしろ常同行動などの前頭葉症状が増強されやすい傾向にあります。
8)異常行動→初発症状がこれだとFTDと認識されます。2年以内に何らかの神経動作障害がみられるので、そこで臨床診断を修正する必要があります。
※異常行動に対して抗精神薬(主としてリスぺリドン)が処方されますが、多くは過鎮静になりやすいようです。
<中期>
1)片手が無目的に動く(他人の手徴候)
2)手で触れたものを反射的につかむ(把握反応)
3)言葉が出にくい、自発的会話が少ない(失語)
4)体の左右がアンバランス・捻転(体幹傾斜・体幹ジストニア)
5)左右いずれかの上下肢に不自然に力が入る(四肢ジストニア)
1)5)はCBSに特有の症状と言われていますが、実際の評価が難しいようです。
2)~4)はPSP症候群でも共通してみられる症状ですが、4)に関してはかなり特徴的なので注意が必要です。
2)~4)はPD・DLBでは一般的にみられない事が多いと思いますので、必ず確認する必要があります。
<後期・終末期>
1)完全失語 2)嚥下困難~不可 3)体幹ジストニア~姿勢保持不能 4)起立歩行不可
特に体幹ジストニアはCBS-PSPで顕著にでやすいという印象です。CBS-CBDでは失行・失認・失語などの高次脳機能障害が主として進行しますが、動作歩行能力に関しては比較的保たれる傾向があるようです。早期から姿勢保持やジストニアが悪化して動作歩行能力が困難になるのはCBS-PSPだと推定されます。
前回のブログで記載した、PSPの行動心理症状・皮質下認知症はCBSでも同様にみられます。ただし症例によって差異が大きいようです。
実際の対症療法としてはミオクローヌスに対して抗てんかん剤を、四肢・体幹ジストニアには抗コリン剤を、四肢・体幹のつっぱり感に対しては抗痙縮剤を処方しますが、やはり副作用が出現しやすい傾向にあります。レボドパやCHE-Iも同様であり、薬を足せば足すほど病状が複雑化してわかり辛くなります。つまりどこまでが原疾患の症状で、どこからが薬剤の副作用なのかがわからなくなるという事です。


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by shinyokohama-fc | 2015-02-07 17:50 | 医療

PSPはなぜPDやDLBと誤認されてしまうのか

PSP症候群(進行性核上性麻痺)がなぜPD(パーキンソン病),DLB(レビー小体病),ATD(アルツハイマー病)と誤認されてしまうのか?実は私自身でも初診時はよく誤認してしまうので、自分なりにその理由を分析しています。「誤診」という言葉は使いたくないので、「誤認」と呼ぶのが適切だと思っています。
<<PSP症候群とPD・DLBの比較>>
<PSPの神経症状>
A初期)
1)よく転んで怪我をする→PD・DLBは慎重で病識が高いので、初期からは転倒しにくい
2)歩きにくい→PD・DLBは初期では継ぎ足歩行が可能で、開脚歩行(ワイドベース)にはならない
3)同じ場所に立っていられない→椅子にドスンと座ってしまうというのはPD・DLBではみられない
4)足が出にくい→強いすくみ現象はPD・DLBでは初期からはみられない
5)体の方向を変えにくい→PD・DLBでは初期からはみられない
6)頸部・体幹が固い(体軸性固縮)→PD・DLBでは上肢・下肢が歯車様に固いが、PSPは特に上肢は固くない
7)環境や状況によって動作レベルが大きく違う(環境依存)→PD・DLBではそれほど環境に影響されない
8)レボドパの効果が不明確→PD・DLBでは薬効によるオン・オフで動作レベルが明確に違う。
9)表情→PD・DLBは暗く笑顔が乏しいが、PSPは明るく笑顔がみられる(笑顔のままというケースも多い)
B中期)
1)言葉がでにくい、口数が少ない(失語)→PD・DLBでは失語はほとんどなく、単調性の構音障害のみ
2)目が動かしにくい(眼球運動麻痺)→PD・DLBではみられない
3)飲み込みにくい(嚥下障害)→PD・DLBではそれほど顕著ではなく、程度も軽い
4)介助なしで歩けない→PD・DLBでは薬剤効果があるので中期でも自立で歩行できる
5)体幹の左右がアンバランス・捻転・傾斜(ジストニア)→PD・DLBでは体幹の左右差はなく、四肢のみ
6)手を触れると磁石のように追随する、つかんで離さない(把握反応・強制把握)→PD・DLBではみられない
7)テーブルの上の物を勝手にさわる(視覚性探索反応)→PD・DLBではみられない
8)指示されないのに目の前の動作を真似る(模倣行動)→PD・DLBではみられない
C後期)
1)後方に倒れる、頸が後屈する→PD・DLBでは起こりえない
中期症状2)~5)がさらに進行した状態、眼球固定・嚥下不可能・発語不可能・起立歩行不可
※PSPは数か月単位で目に見えて神経症状が進行するが、PD・DLBでは年単位でごくわずかな進行しかない
※PSPはB-6)~8)のような前頭葉徴候による身体所見が高頻度に出現する
<PSPの行動心理・精神症状>
・幻覚・妄想
経過中にしばしば現れて、中には初発症状の場合もある。人格水準が著しく低下するので、被害妄想や嫉妬妄想に伴う異常行動、動作障害のため幻覚・妄想に派手さはなく、抗精神薬を必要とするほどではない(ほとんどは抑肝散で十分である)、時に動揺性の意識障害(せん妄状態)と混在する状態に至る
・挿間性の昏迷状態
動作障害が進行した時期(中期)にみられる。突如として外部刺激に反応せず、質問に対して反応が乏しくなり(或いは全く反応しない)、視線が定まらずという状態が数時間持続する。病期が進行すると無動・無言状態に至る
・人格変化(人格退行)
初期)何か人が変わってきた印象、物事に対する視野が狭くなり、人の言う事を聞き入れようとせず、自己中心的な行動をする。興奮しやすく怒りっぽくなる、或いは子供っぽくなり、意味不明の上機嫌さがある
中期)意欲が低下し、周囲に対して無関心となり、物事に対する興味を失って無感動でぼんやりした印象になる
・認知症(皮質下性)
簡易知能スケールにおいて初期~中期ですでに10~20点の中等度レベル(PD・DLBでは25~30点レベル)
<PSPの認知症>高次脳機能は比較的保持されているが、それを活用する能力に問題がある
1)すでに得られている知識を状況に応じて操作しうまく活用する能力の障害
2)思考過程、情報処理過程の緩慢化
3)ある種の記憶障害(記憶の喪失ではなく、素早く思い出す事ができない「失念」タイプ
4)注意力の障害→PD・DLBよりも転倒・怪我が非常に多い
5)意欲の低下、自発性の減退、無関心・無気力(アパシー)
原因は視床やルイ体と脳幹網様体賦活系の結合が断たれるためと推測されている

幻視・嗜眠・認知の変動・動作歩行障害⇒DLBという「誤認」、動作歩行障害⇒PDという「誤認」、認知症=ADという「誤認」は上記のように丁寧に神経・行動心理・認知症の臨床評価をしなければ、常に起こりえます。
当然ですがPSP症候群にはDLB,PD,ADの標準的薬物治療は通用しませんのでご注意ください。私自身もDLBと誤認して誤処方をしてかえって動作障害・行動心理症状を悪化させてしまったケースが数例ほどありました。昨今の傾向としてDLBが第2の認知症としてマスメディアなどで大きくクローズアップされて、医者も患者もそのブームに引っ張られてすぎているように感じられます。患者さんを診て診断基準の項目をチェックするだけになってしまった事が多くなったように思います。診断基準の重要性を否定するわけではないのですが、このような操作的診断のみが病気の診断だと思い込むことによって、臨床医には病気の本質が見えにくくなってしまってるのではないでしょうか?
一番の問題は誤処方により病状が明らかに悪化してしまい、それが修正されずにいるケースが多くみられる事です。
次回はCBS(大脳皮質基底核変性症候群)とPD・DLB・ADの誤認について書きたいと思います。

参考文献)
Albert ML et al;The subcortical dementia of progressive supranuclear palsy. J Neurol Neurosurg Psychiarty 37 : 121-130, 1974
天野直二 ;進行性核上性麻痺にみる精神症状 ;臨床精神医学 20 :1185-1194, 1991


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by shinyokohama-fc | 2015-02-05 19:20 | 医療

PSP・CBSにドパミンは必要なのか?

PSP、CBSにドパミン賦活治療は無効。どの教科書にもそう書いてあります。当然ですが無効な薬剤は不要です。
PSP、CBSの臨床症例を数多く診察してみると、前医でレボドパやドパミン賦活剤などパーキンソン治療薬を無意味に多剤多種処方されている状態をよく見かけます。その多くは薬剤の効果がはっきりしないにもかかわらずただ漫然と継続されているだけのようです。これらの薬剤は長期的にはピックコンプレックス症候群に対しては有害な事が非常に多いです。事実として薬剤追加によって動作歩行が著しく悪化してしまった症例をよく目にします。レビー系のパーキンソン病やDLBの場合はそれらの治療薬の効果が明確であり、特にレボドパは半減期が短いために3~4時間で切れるはずです。そのため中止したりして本当に効果があるのか(この薬を飲み続ける意味があるのか?)を確認する必要があります。長年レボドパは「パーキンソン治療薬のゴールドスタンダードだ」と言われてきました。たしかにレボドパを投与すれば動けない人が動けるようになるというケースもあるでしょう。しかし特に検査による立証が困難であるパーキンソン病やDLBという病気の場合は、一般的に心因性反応による身体運動障害との区別が難しいです。またパーキンソン病やDLBの患者も神経症的な方々が多いです。こういう患者全員に鑑別のためにMIBG心筋シンチを実施しろというのも非経済的な気がします。レボドパが効いたと言っても、それがプラシーボ効果なのか本当の効果なのかは真相は不明なままです。なぜならレボドパは快楽・報酬系の神経伝達物質で依存性があるからです。最近の学会の流れとしてはできるだけ「レボドパは低用量で使え、高用量はできるだけ避けろ」という流れに変わっているようです。しかしそれが他の新規パーキンソン治療薬を使わせるための誘導ではないかという疑義も確かにあるわけです。実際は高齢で低体重の女性に450~600㎎/日などはとんでもない用量です。私の友人の神経内科医からもレボドパを通常量処方していて心臓突然死したケースが数例あったという報告がありました。その一方で高齢のPSPやCBSに対して800mg/日という神経内科医の処方を見て呆然とした経験もあります。
実際、実験室レベルの研究論文では国内も含めて、レボドパの神経毒の報告が散見されます。臨床レベルでは証明されていないというが、本当にそうでしょうか?レボドパ高用量やパーキンソン治療薬を盛られて長期に内服した結果として、精神的に錯乱したり、動作歩行ができなくなっていて、減量したら改善したという症例が多く見られます。
長期に治療薬を使用している症例では多種多剤併用すればするほどよくならないでむしろ病状が悪化するのではないか?という印象すら感じます。それが高齢者であればさらに忍容性に問題があると推定されます。
PSPとCBSの話に戻りますが、これらはマンチェスターグループによって「ピックコンプレックス」にカテゴリーされた疾患群・症候群です。前頭葉~側頭葉のタウが広範囲に蓄積している状態です。そういう状況に対して薬でドパミンを賦活したり補充したらどうなるか?当然のごとく神経伝達物質の微妙なバランスが崩れて、元々潜在している前頭葉症状が悪化しやすいわけです。具体的にはドパミン過剰による幻覚、精神錯乱、常同行動の悪化、抑うつなどを高頻度で誘発されます。セレギリン、エンタカポン、ドパミン受容体刺激薬の追加ではそういう症状がさらに悪化する可能性が高いという事は特に75歳以上の症例において確認できます。症例経験からいってもPSPとCBSにはドパミン賦活は必要ないと私は考えます。通常量で効かない(動作歩行が良くならない)から追加するいうのは愚策であり、一度高用量まで増量してしまうと薬剤の性質上減量や中止が危険を伴い困難だということがよく理解されていないようです。元はと言えば、高用量処方を行った医者の責任です。
「効果のない薬剤はまず中止して判定する」これさえ実践すれば上記のような薬害は回避されるはずです。


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by shinyokohama-fc | 2015-02-03 18:03 | 治療
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