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本当に怖いのは低血糖による心臓死

最近は高齢者の糖尿病が増加しました。ここ20~30年の医療の進歩に伴い、感染症や血管障害、喘息などによる死亡者が激減して長寿になりました。戦後の食生活の急速な欧米化に伴い、糖質や脂質の摂取が多くなり、日本人の体質に合わない食事が糖尿病患者の増加を招いているとよく言われます。
糖尿病患者の多くは糖質依存・糖質中毒とも呼ばれる状態になっていて、食事療法や運動療法が守れないケースが少なくありません。また年齢に反比例して代謝能力が低下する傾向にあり、長年にわたって経口血糖降下剤を何種類も内服しているケースが多いようです。これらの薬剤の副作用としては低血糖が問題になります。特に昔からあるスルホニルウレア(SU)剤は遷延性低血糖を引き起こすためしばしば問題になります。私も20年前、病院勤務時代に遷延性低血糖で意識障害で搬送されてきた患者を数名救急~入院対応した経験がありますが、いくら糖液を静脈注射しても全く血糖が上がってこないし、一時的に上がってもすぐに下がってしまうという、きわめて恐ろしい体験でした。
遷延性低血糖患者のうち数名は意識が戻らず、準植物状態で数か月入院しましたが、最期は感染症で死亡しました。
原因薬剤として最も多かったのが、SU剤第2世代グリベンクラミドという薬でした。さすがに近年はこの薬が使われている薬手帳はほとんど見なくなりました。専門医の間でもSU剤は高用量は危険だという認識のようです。
低血糖を起こすとブドウ糖をエネルギーとしている脳の働きに支障をきたし、意識を失って倒れて事故につながるリスクが高まります。無自覚性の低血糖を繰り返すことによって認知症リスクが3割増加するというデータもあるようです。さらに低血糖になると心臓に栄養を送っている動脈(冠動脈)が収縮して心筋梗塞や致死性の不整脈を引き起こす事も近年報告されています。糖尿病患者の死因としては「QT延長症候群」という心室性不整脈による心室細動による突然死が多いようです。米国で行われた臨床試験(アコード試験)によると、HbA1cを6.0%以下と厳格にコントロールしすぎた集団は7.0~7.9%でコントロールした集団よりもわずか3年余の間に22%も死亡率が増加したとの事です。特に65歳以上の高齢者で経口血糖降下剤を複数内服している方々に関しては食事時間のズレや、食事量の変化、運動量の変化に伴って無自覚の低血糖を繰り返している可能性が高いようです。それに伴って上記の冠動脈攣縮や心室性不整脈のリスクも高まると言えるでしょう。それゆえ高齢者では死につながる低血糖を極力起こさない事を最優先すべきだと言えるでしょう。
以前のブログで書いたように認知症の治療薬として定着しているコリンエステラーゼ阻害薬(CHE-I)や認知症の周辺症状(行動心理症状)を抑制する目的で使用する抗精神薬なども同じように冠動脈攣縮や心室性不整脈による心臓突然死のリスクを高めると言われていますので、やむをえずこのような薬剤を処方するケースでは、HbA1cを8.0%前後でコントロールすべきではないかと考えます。
この事実だけでも薬が多剤併用されると非常に危険だという事がよくわかってもらえると思います。


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by shinyokohama-fc | 2014-12-18 18:22 | 医療

レビー小体病の抑うつ治療薬における問題

レビー小体型認知症、レビー小体病については最近新聞やTVなどマスコミでよく報道されるようになりました。しかし生前は確実な診断法がないというのは他の変性疾患と同じであり、MIBG心筋シンチグラムというアイソトープを使用した高価で人体に侵襲的な検査ですら、糖尿病や心疾患など他のファクターによる偽陽性が含まれたり、病理診断例のうちの2割が偽陰性であったという報告されているようです。また高齢者の場合はアルツハイマーや嗜銀性顆粒球症など他の疾患との混合も少なくないようなので、実際の臨床診断としては「大脳皮質基底核変性症候群(CBS)」と同じように「レビー小体症候群(LBS)」としたほうがいいのかもしれません。
LBSに関してはレム睡眠行動障害(RBS)や抑うつ状態が何年も前から先行することが多いと言われています。55歳を超えてからの抑うつ状態であれば、LBSを疑えという意見も老年精神医学ではよく言われていることです。ただしLBSの抑うつが通常の抑うつとは違うのは、SSRIなどの各種抗うつ剤や抗精神薬が効果がみられない事がほとんどだという事実です。同じαシヌクレインの疾患であるパーキンソン病(PD)の抑うつ状態の治療薬にも同じ事が言われます。PDの抑うつ状態の治療薬としては一般的にドーパミンアゴニストが推奨されていますが、この薬剤は用量依存性に幻覚や嗜眠を誘発しやすいのが最大の欠点です。それゆえもともと幻覚・嗜眠が出現しやすいLBSには使用しにくい薬剤です。現在頻用されている非麦角系のドーパミンアゴニストはプラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチンの3剤ですが、前2者はD2受容体親和性が強い影響で幻覚・嗜眠が悪化しやすい傾向にあります。それゆえロチゴチンを使う事になるのですが、薬剤等価換算表によるとかなり少ない用量で使用しないとやはり用量オーバーで幻覚・嗜眠が悪化するようです。私の経験では4.5mgでも悪化した事例が2~3ありました。他にはレボドパ配合剤の用量を少なくするというのも幻覚・嗜眠を悪化させないための有効な方法です。一般的にはパーキンソン病の通常量である300mgの半分の150mgくらいがいいのではないかと考えます。50mg錠剤を使用して細かく用量調節ができるような工夫が必要でしょう。私も20~25例程度のLBSの患者に投薬して経過をみていますが、実際は薬剤調整がなかなか難しいケースが多いというのが実情です。


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by shinyokohama-fc | 2014-12-04 19:09 | 治療
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