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クスリを追加処方することが免罪符?

お薬手帳を拝見すると病院の外来から神経系のクスリが目が眩むほど多剤大量に出されていて驚かされることが少なくないです。中には神経系のクスリが10種類近くフルドースで出されている80歳や90歳の患者さんもいます。
常識的に考えて、これだけ神経系のクスリ多種多量に飲んでよく死なないなと心配に思うのがまず第一印象です。
最近でこそようやくポリファーマシー(多剤大量投与)の問題を批判するマスコミ記事や書籍が増えましたが、長年にわたって「病気で受診したらとりあえずクスリ。外来に行けば行くほどクスリが増える。患者側からも何かいいクスリはないかととにかくクスリを出すことを強く求められ、医療側も外来で説明する時間も限られているのでとりあえずクスリを出してその場をしのぐ」という現実から逃れられないようです。私の知人からも某大学病院で多種多量のクスリを出されて薬物中毒で救急で運ばれてきた患者を何人も診されられて困っているという話をよく聞きます。
日本は世界中でも飛びぬけてクスリが多く使われる国で、あるクスリは世界のシェアの7~8割を占めるという冗談のような事実があるようです。神経内科の分野ではパーキンソン治療薬のドカ盛り処方、精神科の分野では抗精神薬のドカ盛り処方が散見され、さらに認知症患者になるとコリンエステラーゼ阻害薬も加わり、ありとあらゆる多種多量の神経系のクスリが混在していて何が起こるかわからない想定外のカオス状態になることは容易に想像できます。
中でも一番拙い処方は、効果があるかどうかわからないクスリの際限なき追加です。パーキンソン治療薬というのはレボドパ配合剤以外にも、抗コリン剤、ドパミン放出促進薬、ノルアドレナリン補充薬、ドパミン受容体阻害剤、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤、レボドパ賦活剤、アデノシンA2a受容体拮抗薬と9種類もあり、現行の保険診療では無制限で何種類の治療薬を高用量でいくら使っても保険上ではまったく問題視されていないようです。しかし逆に1つのクスリを低用量で維持すれば、規定通り用量を上げない理由は何故なのか説明せよとか言われる。本来は用量というのは年齢や体重で担当医の裁量の範囲で決めるべき事であって、85歳の患者でも55歳の患者と同じように一律で用量を上げるのが当然だとでも言うのでしょうか?その一方で85~90歳の患者に高用量を使う事のほうが危険なはずなのに不問にされている。全くもっておかしな話です。また、1つのクスリが十分効かなければ、これでもかこれでもかと外来に行くたびにクスリの種類と用量が増えていって最終的には信じられないほどの種類と量のクスリを飲んでることになってしまうというパターンが多いようです。特に「進行性核上性麻痺サブタイプの症候群」に対する無意味で不必要なドカ盛り処方は目に余りますし、この病気にパーキンソン治療薬をいくら積み重ねてもムダだというのは、いくつもの医療機関を受診した患者さんから教えられました。「レビー小体病」もあらゆる症状が出現するのでドカ盛り処方されて悪化してしまう傾向にあるようで、特にパーキンソン症状が先行するタイプはそうなる傾向があります。多くのケースではムダに医療費がかさむだけで患者さんにとってほとんどメリットはありません。そればかりか神経系のクスリは必要以上に盛られると、結果的に幻覚・妄想・衝動制御障害・せん妄などを引き起こし、麻薬中毒と大差ない状況になってしまい非常に危険なので注意が必要です。
患者側も医療側も日本国内で常態化しているポリファーマシーの問題を今一度考え直すべき時ではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2014-09-19 14:16 | 治療

パニック処方

一昨日、旧知の病院勤務医の内科医からメールがきました。その内容は当地(西日本)では神経内科の基幹病院とされている、ある有名病院の神経内科から町病院へ転院してきた患者についての相談でした。
82歳女性で診断名はよくわからん外人の名前だったようです。リボトリール6mg/日、デパケン800mg/日、テグレトール200mg/日、その他ミラペックスも使われていたとのことでした。どういう経緯でそういう常軌を逸したパニック処方になったのか?は不明のようです。
どうやら何らかの神経難病らしく寝たきりで、気管切開と胃ろうがされているほど進行しているそうですが、知人いわく「こんなの神経内科が創り出した単なる薬害患者じゃないか?」との意見でした。「誤診と違いますの?神経内科は精神科とほとんど同じで患者をすべて「パーキンソン」にして抗パーキンソン治療剤を多剤大量処方して薬物中毒にしてるだけではないのか?」と同じ病院に勤務する内科医も言っていたそうです。
病院の精神科や神経内科の医者が皆このようなパニック処方をするとは思いませんが、当院にわざわざ都内某所から通院されている患者さんもかつては近隣の有名病院の神経内科の外来に通院していて、薬で病状がどんどん悪化していくとご家族が直感的に心配されて受診されました。お薬手帳を拝見すると目を覆いたくなるような典型的なパニック処方でした。初診時はまず患者さんに有害だと思われる処方を3~4種類中止させることから始まりましたが、当院先日4回目の受診ですっかり精神的にも安定して良くなったようで、遠路から通院していただいた甲斐があったと安堵したものです。有名病院で勤務しているという事で、患者さんが方々から殺到して一人一人の患者さんに対して冷静に薬剤の効果や副作用について考察する時間的・精神的余裕がないのかもしれません。
ただ一つ言えることは、パニック処方で病気が悪くなる事はあっても、良くなる事はないと言うことです。
神経系に作用する薬剤はどんな薬でも高い確率で副作用で患者さんを悪化させてしまうリスクをはらんでいますので、より慎重に使わなければなりませんが、残念ながらあまりそういう事が意識されていないように思います。


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by shinyokohama-fc | 2014-09-12 14:24 | 治療

神経系に作用する薬剤の心臓副作用リスクについて

心電図においてQT間隔が延長する「QT延長症候群」というのがあり、これはtorsades points(tdp)などの多形成心室性頻拍(pokymorophic ventricular tachycardia)の原因になると言われています。
言うまでもなく心室性頻拍は心停止に至るリスクの高い危険な不整脈であり、注意が必要です。
原因薬物としては抗精神薬であるハロペリドール(セレネース)、クロルプロマジン(ウインタミン・コントミン)、三環系抗うつ剤などがある。その他にはシメチジン(ガスター)、クラリスロマイシン(クラリス)、キノロン(クラビットなど)があり、原因薬物を併用した場合(例えばセレネース+クラリスなど)はさらにリスクが高まると思われます。
私も研修病院に救急病棟でのせん妄に対してハロペリドールの静脈注射薬を使用してこの不整脈が出現したという話しを聞いた記憶があります。幸い心電図モニター監視中だったので、硫酸マグネシウムの静脈注射により事なきを得たと思います。抗精神薬の中では特にハロペリドールがリスクが高いと言われていています。
これらの薬剤を使用する場合は心電図でQTcを定期的に測定するようにしています。QTcが0.5~0.6になると心室性頻拍のリスクが高いようです。
一方でコリンエステラーゼ阻害薬(抗認知症薬)に関してはアセチルコリン作用によって、冠動脈攣縮を誘発すると言われており、特に高齢者、喫煙歴のある人、長年の糖尿病患者など動脈硬化リスクの高い患者では、心筋梗塞など急性冠症候群を起こしうると言われています。その他にも洞房・房室ブロックによる高度徐脈、QT延長症候群のリスクがあります。私の経験では60歳男性でコリンエステラーゼ阻害剤を内服していた患者が高度徐脈(30~40回/分)に至ってしまい、薬剤を中止してもなかなか改善せず、慌てて病院の循環器科に紹介したケースがありました。
正常な脈に戻るまで1~2か月を要したと記憶しています。
抗精神薬にしてもコリンエステラーゼ阻害剤にしても使用する用量が多くなれば、それに比例して心臓副作用のリスクが高まりますので、これらの薬剤を使用するにあたっては年齢や体重に応じて少量で使用したほうが良いと考えられますし、リスクを十分に説明したほうがいいでしょう。
特に心臓の自律神経が虚脱するようなケース、経年性の糖尿病やパーキンソン病・レビー小体病、多系統萎縮症などでは胸部の自覚症状が乏しくなるので特に要注意だと思われます。


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by shinyokohama-fc | 2014-09-09 19:27
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