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日本人のための糖尿病食事療法

先日、日本内科学会総会・講演会に行ってきました。時間の都合で午前中の糖尿病の講演しか聞けませんでした。
4月の京都は観光客も含めて駅周辺から地下鉄なども多くの人でごったかえしていました。京都は毎年行く度に国内外の観光客が増えて人が多くなっている気がします。少年時代(30~40年前)に家族で何度も観光で訪れましたが、その頃とは人の多さが全然違う気がします。京都は元々大阪や名古屋に比べて地下鉄やトラムなどが充実しておらずアクセスが良くないので、今のままでいいのか?と今後が心配です。
教育講演で「日本人のための糖尿病食事療法」という講演がありました。わずか30分の講演でしたが、糖質制限療法についても言及されていました。
すべての栄養素がバランスよく配合された、昔ながらの和食が日本人には最も体に合っていると思われますし、最近は魚や豆腐、雑穀米や玄米による食事が見直されているように思います。人間の体はすべて個々に体質が大きく違いますので、すぐに太りやすいメタボリック体質の人と、いくら食べても太らない体質の人で、同じような食事・薬物療法はありえないわけです。極端な糖質制限が体質に合う人もいれば合わない人もいるでしょう。問題は個別対応の仕方だと思います。しかし欧米の食文化が流入して飽食的な環境にある現代社会では糖質を過剰摂取しがちな環境にあることは事実です。まずは糖尿病・メタボリック患者の糖質過剰制限をやめさせる事が大事だと思います。昨今は多剤併用の薬物治療で糖尿病患者のHbA1Cの数値だけを低下させても死亡率は変わらないというデータも示されていて、現状の糖尿病薬物治療の意義に疑問の声が投げかけられているようです。HbA1cの基準値も高齢化に伴う低血糖の脳・心臓へのリスクが問題視されていて、スルホニルウレア(SU)剤などによる低血糖が高齢者には特に危険だと言われています。やはり適切な食事療法・運動療法が第一であるべきだと思いますが、年齢や体重やライフスタイルによって状況が変わります。当たり前のことですが、同じ糖尿病患者でも40歳の体重90kgの男性と85歳の体重40kgの女性では食事・運動・薬物療法とも全く違う対応が求められます。


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by shinyokohama-fc | 2015-04-13 12:33 | 治療

スタチンによる糖尿病リスク

~スタチンによる糖尿病リスク・従来報告を上回る46%の上昇 ~
フィンランドUniversity of Eastern Finland のHenna Cederberg氏らは、同国の地域住民コホート研究METSIMの結果から、スタチン療法を受けていた人が受けていなかった人に比べて2型糖尿病を発症するリスクが46%上昇することが分かったとDiabetologia(2015.3.4オンライン版)で報告した。またこのようなスタチン療法による2型糖尿病リスクの上昇には、インスリン感受性・分泌の低下が影響していることも示された。
スタチンと糖尿病リスクの関連は、これまでにも数多くの研究で検討されてきた。2001年に報告されたWOSCOPSサブ解析では、ブラバスタチンに伴う2型糖尿病リスクのわずかな上昇を示す報告が相次いでいた。以前の研究で報告されたスタチンによる糖尿病リスク上昇度は9%~22%まで幅があるが、①対象が心血管疾患(CVD)の高リスク者で、一般人口とは糖尿病リスクが異なる可能性がある ②糖尿病の有無を自己申告や空腹時血糖値に基つき判定しており、糖尿病発症率が過小評価されている可能性があるなどの限界があった。(中略)こうしたことを踏まえ、Cederberg氏らは今回の住民ベース研究でスタチンと糖尿病リスクの関連について検討。またインスリン抵抗性とインスリン分泌の評価を行い、スタチン療法が糖尿病リスクを上昇させる機序についても検討した。
対象は2005~10年にMETSIMに登録された同国クオピオの糖尿病のない男性8,749例、平均年齢は57±7歳(45~73歳)、BMIは平均26.8±3.8だった。2型糖尿病の診断は、①空腹時血糖値126mg/dl以上、経口糖負荷試験(OGTT)②時間値200mg/dl以上またはHbA1c6.5%以上 ②血糖降下剤の使用 ③医療記録における2型糖尿病診断または①のデータありのいずれかの基準をみたした場合とした。ベースライン時にスタチンを使用していたのは2,142例(24.5%)で、スタチン使用者の65.9%がシンバスタチン、18.1%がアトルバスタチン、8.6%がロスバスタチン、3.8%がフルバスタチンを使用していた。5.9年の追跡期間中に625例が2型糖尿病を発症。非スタチン使用者に比べてスタチン使用者で発症率が高く(5.8%vs.11.2%,P<0.001)、調整後の2型糖尿病リスクが46%上昇していた(ハザード非(HR)1.46, 95%CI 1.22~1.74)
スタチンの種類別の解析では、シンバスタチンとアトルバスタチンの使用は2型糖尿病リスク上昇と有意に相関していた(調整後のHRはそれぞれP=0.001,P=0.037) 一方スタチン使用者では非使用者に比べてインスリン感受性が24%、インスリン分泌が12%低下していた(それぞれP<0.001 P<0.01)。Cederberg氏らは「スタチン療法による2型糖尿病リスクは、交絡因子で調整後も46%上昇しており、これまでに報告されていたよりも高いことがスタチン使用に伴う2型糖尿病リスクの上昇に直接影響している可能性が高い。」と考察した上で、今回の結果について研究規模の大きさから「信頼性は高い」とする一方で、対象者が白人男性のみであるために、女性や他の人種にも一般化できるわけではないと述べている。
内科・神経内科で診療を20年以上行ってきた経験でいうと、病院勤務時にスタチンによる重症横紋筋融解症により、全身の筋肉が一気に壊れて急性腎不全に至った症例を数例ほど入院患者として診療した経験があります。特に中高年の男性に多いようです。ここ数年の外来診療ではスタチンを内服している中高年女性で下半身の筋肉痛によってしゃがみ立ちが困難になったり、肩~上腕の筋肉痛で上肢が上がらなくなったりで日常生活動作が著しく阻害された症例を10例前後みたことがあります。また末梢神経障害により両足末端のひどいしびれに悩まされた方も数例いました。それ以後はスタチンの使用には慎重にならざるをえなくなっています。筋肉や神経の副作用の症状が出ると、神経内科に回ってくるので、循環器科医や糖尿病内科医はおそらく私のようにスタチンの深刻な副作用の症例を診た経験がほとんどなくて副作用の実態を知らないDrが多いのではないか?と思われます。
今回の報告、スタチン使用によりインスリン分泌やインスリン感受性が低下したという大規模臨床調査結果は人種・性が限定されたとはいえ、きわめて重大で深刻な結果だと受け止めるべきだと考えます。日本を含めて全世界で女性も含めて同じような臨床調査をただちに行うべきでしょう。近年は生活習慣病、メタボリック症候群、糖尿病などのリスクファクターのない体質性の高コレステロール血症(特に女性に多い)に対しては、家族性を除いてコレステロール低下薬や食事療法などの治療に意味がないという意見が専門医からも聞かれるようになりました。本来スタチンというのは家族性しか適応がないと断言する医師もいます。
スタチンに限らず、効果の高い薬剤ほど副作用のリスクが高いという事実を患者側に伝えるべきでしょう。
薬剤に伴う不都合な真実に目を背けていては、患者側を向いて医療をしていないと批判されても仕方ないことです。


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by shinyokohama-fc | 2015-04-09 19:03 | 治療

認知症治療研究会(第1回)

「認知症治療研究会・第1回」が東京・品川グランドセントラルタワーのTHE GRAND HALLで行われました。
この研究会は医者だけでなく介護職・ケアマネなども含めて幅広く認知症に関わる医療関係者が全国から参加したものと思われます。午前10時から始まって17時まで、昼もランチョンセミナーでひたすら講演会の連続だったので疲れました。講演の内容のいくつかは大変意義が深いものもありましたが、残念な事に各講演の間に質問の時間がほとんどなかったのが不満でした。結局1日通してほとんど誰も質問することなく終わったのが残念です。
こういう研究会や学会は質問や討議の時間が十分設けられるべきであり、次回から他職種の演者によるパネルディスカッションなどもあったほうがいいでしょう。聴衆と演者の討論が活発にならないとダメだと思いました。
講演会の中では一番ラストの「リバスチグミンの上手な使用法」という誠弘会池袋病院(埼玉県川越市)の平川亘先生の講演が非常にインパクトが強かったです。この薬を日本でトップクラスで使用している医療機関らしく、アルツハイマー認知症に限定せず、ありとあらゆる使い方をしているのにまず驚かされました。薬の用量や用途を自由にした発想でやれば、ここまで薬というのは威力を発揮するものなのかと感心させられました。実際どういう使い方をしているのかの内容については詳しくはここでは語れませんが、常識を覆すような使い方を次々と紹介していて、動画付きで発表していたので、インパクトが大変強いもので、また圧倒的な使用症例数を基盤とした統計は説得力のあるのものでした。わかった事としてはこの薬はとてつもなく色々な用途で使える薬だという事です。
この研究会、来年3月の第2回はパシフィコ横浜で1000人の会場で行われる予定だそうです。次回は小生も「神経学的診察」というテーマで講演を拝命しています。家族やケアマネなど誰でも目で見てわかりやすく、見つけやすい特徴的な所見を動画を満載した内容にしたいと思います。「大病院の専門外来では、同伴者の話も聞いてくれず、患者の診察もほとんどなく検査結果を画面でみているだけで満足度が低い」という証言は当クリニックを受診される同伴家族から少なからず聞かれます。大病院・専門外来への過度の患者集中という実態が外来を飽和させて診療の質を低下させているのではないかと懸念されます。これから高齢化が急速に進む中で認知症や動作歩行障害などの加齢変性性脳疾患というのは大病院の専門外来ではなくて、全国どこでも診療所で診れるようにするのが理想です。
今回の研究会はそのための第一歩だったはずです。次回からはもっと闊達な討議ができる研究会にしてほしいです。


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by shinyokohama-fc | 2015-03-02 17:49 | 治療

PSP・CBSにドパミンは必要なのか?

PSP、CBSにドパミン賦活治療は無効。どの教科書にもそう書いてあります。当然ですが無効な薬剤は不要です。
PSP、CBSの臨床症例を数多く診察してみると、前医でレボドパやドパミン賦活剤などパーキンソン治療薬を無意味に多剤多種処方されている状態をよく見かけます。その多くは薬剤の効果がはっきりしないにもかかわらずただ漫然と継続されているだけのようです。これらの薬剤は長期的にはピックコンプレックス症候群に対しては有害な事が非常に多いです。事実として薬剤追加によって動作歩行が著しく悪化してしまった症例をよく目にします。レビー系のパーキンソン病やDLBの場合はそれらの治療薬の効果が明確であり、特にレボドパは半減期が短いために3~4時間で切れるはずです。そのため中止したりして本当に効果があるのか(この薬を飲み続ける意味があるのか?)を確認する必要があります。長年レボドパは「パーキンソン治療薬のゴールドスタンダードだ」と言われてきました。たしかにレボドパを投与すれば動けない人が動けるようになるというケースもあるでしょう。しかし特に検査による立証が困難であるパーキンソン病やDLBという病気の場合は、一般的に心因性反応による身体運動障害との区別が難しいです。またパーキンソン病やDLBの患者も神経症的な方々が多いです。こういう患者全員に鑑別のためにMIBG心筋シンチを実施しろというのも非経済的な気がします。レボドパが効いたと言っても、それがプラシーボ効果なのか本当の効果なのかは真相は不明なままです。なぜならレボドパは快楽・報酬系の神経伝達物質で依存性があるからです。最近の学会の流れとしてはできるだけ「レボドパは低用量で使え、高用量はできるだけ避けろ」という流れに変わっているようです。しかしそれが他の新規パーキンソン治療薬を使わせるための誘導ではないかという疑義も確かにあるわけです。実際は高齢で低体重の女性に450~600㎎/日などはとんでもない用量です。私の友人の神経内科医からもレボドパを通常量処方していて心臓突然死したケースが数例あったという報告がありました。その一方で高齢のPSPやCBSに対して800mg/日という神経内科医の処方を見て呆然とした経験もあります。
実際、実験室レベルの研究論文では国内も含めて、レボドパの神経毒の報告が散見されます。臨床レベルでは証明されていないというが、本当にそうでしょうか?レボドパ高用量やパーキンソン治療薬を盛られて長期に内服した結果として、精神的に錯乱したり、動作歩行ができなくなっていて、減量したら改善したという症例が多く見られます。
長期に治療薬を使用している症例では多種多剤併用すればするほどよくならないでむしろ病状が悪化するのではないか?という印象すら感じます。それが高齢者であればさらに忍容性に問題があると推定されます。
PSPとCBSの話に戻りますが、これらはマンチェスターグループによって「ピックコンプレックス」にカテゴリーされた疾患群・症候群です。前頭葉~側頭葉のタウが広範囲に蓄積している状態です。そういう状況に対して薬でドパミンを賦活したり補充したらどうなるか?当然のごとく神経伝達物質の微妙なバランスが崩れて、元々潜在している前頭葉症状が悪化しやすいわけです。具体的にはドパミン過剰による幻覚、精神錯乱、常同行動の悪化、抑うつなどを高頻度で誘発されます。セレギリン、エンタカポン、ドパミン受容体刺激薬の追加ではそういう症状がさらに悪化する可能性が高いという事は特に75歳以上の症例において確認できます。症例経験からいってもPSPとCBSにはドパミン賦活は必要ないと私は考えます。通常量で効かない(動作歩行が良くならない)から追加するいうのは愚策であり、一度高用量まで増量してしまうと薬剤の性質上減量や中止が危険を伴い困難だということがよく理解されていないようです。元はと言えば、高用量処方を行った医者の責任です。
「効果のない薬剤はまず中止して判定する」これさえ実践すれば上記のような薬害は回避されるはずです。


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by shinyokohama-fc | 2015-02-03 18:03 | 治療

コリンエステラーゼ阻害剤(CHE-I)と抗コリン剤

当院では薬の副作用でこじれた認知症や神経変性疾患を初診で数多く受け入れているのですが、前医による呆然とするしかない処方が記されたお薬手帳を拝見することが少なくありません。特に最近よく見かけるのが、認知症患者にコリンエステラーゼ阻害薬(CHE-I)を処方した結果、頻尿症状(過活動膀胱)を誘発して、その上で旧来型の抗コリン剤(プロピぺリンやオキシブチニン)を処方するというパターンです。
半年前に79歳の男性でアルツハイマーと診断されている方が来院されました。お住いの近くの総合病院の専門外来でこのような処方(CHE-Iと抗コリン剤の併用)がされてから、傾眠・幻覚症状が悪化したということで、約20km先から遠路遥々当院まで来られました。診察中も嗜眠・朦朧状態でほとんど歩行できず、首垂れ前傾姿勢になっていたようです。原因となっているCHE-Iと抗コリン剤を両方とも中止するように指示しました。両方とも半減期の非常に長い(薬の副作用も長期に遷延する)薬剤で、重度のせん妄状態だったので、薬物中毒の治療薬(注射薬)をしばらく点滴しました。1か月後には首垂れ姿勢は改善して意識も覚醒状態となり自立歩行が可能となりました。もともとCHE-Iの副作用であったであろう頻尿症状も全くみられません。改めて神経学的診察をしてみると、両手とも強制把握反応が著明で、四肢の筋トーヌスで抵抗症(gegenhalten)を認め、歩行は開脚性歩行でしたが、小脳性運動失調は認めませんでした(前頭葉性失調・フロンタルアタキシア)でした。姿勢はやや捻転性の右への体幹傾斜(ジストニア)がみられました。皮質性感覚障害、肢節運動失行もみられたので、臨床診断としてはCBS(大脳皮質基底核変性症)としました。いずれにしても前頭葉系の神経変性疾患であることは間違いなく、臨床的にATDは否定的でした。CBSやPSPなどの前頭葉系の神経変性疾患にCHE-Iを処方すると例外なく精神症状が悪化するのは前述ブログに書いたとおりです。マンチェスターグループがピックコンプレックス(前頭葉系)にカテゴリーしている疾患群なので、CHE-Iで常同行動や行動心理症状がほぼ確実に悪化します。また抗コリン剤ですが、いまだに高齢者や認知症患者に旧来型の薬剤が平然と処方されている現実に驚かされます。「古くからある薬は信用できる」というのはこの薬に関しては通用しません。過活動膀胱の頻尿症状に使用される新型の抗コリン剤は膀胱選択性が高いので、高齢者や認知症患者が内服してもこの症例のように重度のせん妄状態を誘発することもありません。CHE-Iと抗コリン剤というのは相反する作用の薬剤と想定されがちであり、この2つの薬剤を併用するのはマズイのではという意見を以前聞かされた事がありました。たしかに旧来型抗コリン剤を認知症患者に使用するのはこの症例に示したように非常にマズいのですが、膀胱選択性の高い新型抗コリン剤では認知機能を低下させたり、せん妄を誘発したりする事も非常に少ないようです。ある医科大学の泌尿器科の教室が3年間、52施設、145症例で追跡調査しているようです。
CHE-Iもそうですが、同じ系統の薬でも薬剤というのは個別差が大きいものです。時には新しい薬より古い薬が勝る事も(主としてコストパフォーマンスという意味で)あるでしょうが、新しい薬には特に副作用減少という意味でアドバンテージが少なくないことがあります。単純に古ければいい、新しければいいという事ではなく、それぞれの薬剤の特徴をよく知って処方すべきでしょう。特に高齢者や認知症患者には①より安全で副作用の少ない薬剤を使用する、②効果のない薬を漫然と使用しないという事を心掛け、この症例のような著しくQOLを低下させるような重篤な薬害を起こさないように細心の注意を払うべきだと思います。


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by shinyokohama-fc | 2015-01-27 18:22 | 治療

PSP症候群/Psudo-DLB

新年おめでとうございます。今年もベッドサイドの臨床神経学をより深める1年にしたいと思います。
昨年のトピックスとしては、DLB(レビー小体病)の中核症状を有しているのだが、DLBの治療薬として有効とされている薬剤が全く通用しない症例がいくつかみられたという事実です。
DLBの治療薬として一般的に有効とされているのは、①コリンエステラーゼ阻害薬(CHE-I;ドネぺジル、リバスチグミンなど)②抑肝散 ③レボドパ/カルビドパ配合剤 ですが、そのどれもがまったく通用しなかったのです。
本来DLBという疾患は薬剤過敏性ですが、言い方を換えると薬剤有効性が高いはずです。それゆえ典型的なDLBであればCHE-IもL/C配合剤も少量で反応し効果を示さないとおかしいわけです。しかしDLBの診断基準として中核症状と支持的特徴に合致していても、いざ投薬してみると①②③が全然通用しないという症例が少なからず存在する事がわかってきました。これらの症例を改めて神経学的診察と画像診断をし直してみると、実はPSP(進行性核上性麻痺)の診断基準に合致している事がわかりました。これらをPSP-psudoDLBとでも呼称することにします。
当初はPSPとPDまたはDLBの混合型かと思いましたが、③が無効・奇異反応(嗜眠やせん妄誘発など)である点からPDやDLBは治療的診断としては否定的だと言わざるをえないというのが私の見解です。
PSPは古典的には50~60歳で発症するRichardson-Syndrome(PSP-RS)と認識されてきましたが、近年の外来診療ではPSP症候群とも言えるさまざまなタイプのPSP病型症例を多数確認しました。先のブログで記載したようにPSP症候群を示す疾患は多くのバリエーションがあります。主として脳幹優位型(PSP-P, PSP-PAGF)と大脳皮質優位型(PSP-CBS,PSP-PNFA,PSP-FTD)に分類されると言われてますが、脳幹と大脳皮質が同時に障害されるタイプもありえると推定されます。要はどの部位が優先的に障害されるかで臨床症候に差が出るだけだと思われます。脳幹と大脳皮質が同時に障害される疾患として代表的なものがDLBです。つまりPSPがDLBと症状が似てしまう(psudo-DLB)というのは障害される部位が類似しているため、十分起こりうる可能性があると考えられます。PSP症候群でもPSP以外にCBD(大脳皮質基底核症候群)や脳血管障害(CVD)が存在します。PSPでもタウ病変が脳幹・前頭葉に広汎分布するPSP-RSやPSP-C、黒質・淡蒼球に限局するPSP-PAGF、大脳皮質に分布するCBSがあると言われています。つまり臨床診断と病理診断を合致させるのはほとんど不可能だというのが現実です。PSP症候群というのはさまざまな疾患の集団ですのでCBSと同じくPSPSと呼ぶのが適切ではないかと考えられます。最も特徴的な症候(中核症状)としては主に3つ挙げられます。①早期からの強い姿勢反射障害(同じ場所に立ち続けるのが困難で椅子にドスンと尻餅をつくように座る)②易転倒性(多くは頭部顔面を打撲する)③すくみ現象(歩き出すまでが苦労するが、歩き出すと比較的安定する傾向) 支持的特徴としては①垂直方向(上下)の眼球運動麻痺②物事を考えるのに時間がかかる(思考遅延)③嚥下障害④非流暢性失語、画像的特徴としては中脳萎縮・前頭葉側頭葉萎縮がありますが、これらは病型により程度がさまざまであり必ずしも症状を反映させるものではないようです。特に最近多くみられる高齢発症のPSP症候群では病気の進行が比較的遅いため、画像よりも早期に出現する臨床症候が優先されるべきだと考えます。
一方のDLBの診断基準を再確認しますと、A)中核症状としては①注意・覚醒レベルの顕著な変動を伴う動揺性の認知障害 ②具体的内容の再現性のある幻視 ③特発性パーキンソニズム(振戦、動作・歩行障害、姿勢反射障害) 、B)示唆性特徴としては①レム睡眠行動障害 ②抗精神薬による過敏性 C)支持的特徴としては①転倒・失神 ②一過性意識障害 ③重度の自律神経症状 ④系統化された妄想 ⑤うつ症状です。
以下に当院で経験したpsudoDLB/PSPSの症例を2例示します。
1)84歳男性
3年前から動作・歩行が困難、特にすくみ足が高度であるのが特徴。さまざまな神経系薬剤が試された。
まずレボドパ/カルビドパで嗜眠・低活動性せん妄が増悪、ドパミンアゴニストはさらに悪化、CHE-Iもせん妄を悪化させ、抑肝散は5gでも嗜眠・過鎮静となる。CDP-コリン注射も一時は効果あったが減弱。という臨床経過で
昨年7月に初診。問診では認知の日内変動、一過性意識障害、易転倒、嗜眠、幻視、薬剤過敏性、姿勢反射障害があり、前医ではDLBと診断されていました。しかし神経学的診察では、安静時振戦はみられず、姿勢反射障害とすくみ現象は非常に強く、四肢の歯車筋固縮は正常~ごく軽度、一方で頸部の筋固縮は強い、垂直性眼球運動麻痺が上下ともあり、思考遅延、嚥下障害、非流暢性の失語(失構音、喚語困難含む)がみられました。臨床的PSPと確信し、画像検査専門クリニックへMRIを依頼したところ、やはり中脳被蓋と前頭葉~側頭葉萎縮が確認され、難病申請をするように伝えました。やはり問診だけではなく、神経学的診察が重要だと改めて思い知らされた症例でした。ちなみにDLB支持的特徴③の重度の自律神経障害は起立性低血圧含めてまったくみられませんでした。PSP症候群には現在まで有効な薬剤治療は確認されていません。私のPSPS経験症例においてはL/C配合剤とCHE-Iは有効性が感じられないので、ほとんどは中止していています。薬剤を中止して症状が悪化する事は全くないようです(ここがPDやDLBとの大きな違い)。代替治療が顕著な効果が確認されたので、現在はそれを続けています。
2)77歳男性
5年前から動作・歩行が困難、すくみ足があるが、やはり変動が大きいとの事。2年前から幻視症状(具体的な小動物、人など)が出現し始め、次第に頻度が増加。それ以外には系統化された妄想、レム睡眠行動障害の既往(現在はなし)、認知の変動、易転倒性、嗜眠があり、やはり前医でDLBと診断されてCHE-IとL/C配合剤が処方されていましたが、ほとんど効果がなかったようです。神経学的診察では四肢の筋固縮は軽度で頸部・体幹の姿勢異常、動作緩慢、姿勢反射異常(前後方突進現象)があり、時計描画テスト(CDT)で時間がかかり(思考遅延)、右半側空間失認がみられました。当初はやや非典型的な点もあるがDLBだろうと診断しました。一番の問題症状は幻視で警察を呼ぶ状況だったので、抑肝散を処方してある程度頻度は減少しました。CHE-Iはドネぺジル3mgからリバスチグミン4.5mgに変更しました。しかし1か月後に9mgへ増量するとまず異常行動が出現し動作歩行レベルも極端に悪化しました。すぐに4.5mgへ減量したものの改善しませんでした。脳梗塞を除外するため、病院へMRI画像診断を依頼したところ、拡散強調画像で異常はみられませんでしたが、中脳被蓋の高度萎縮と前頭葉~側頭葉の内側・外側の高度萎縮(左右差あり)を確認しました。側脳室周辺変化はほとんどなくNPH(正常圧水頭症)は否定されました。画像所見を見た上で改めて神経学的診察をしてみるとやはり上方向の眼球運動麻痺が確認されました。DLBに有効とされるL/C配合剤は動作歩行に効果はなく、CHE-Iも規定通りの増量で奇異反応を示したようで、治療的診断としてもDLBは否定的と判断しました。約半年間で15~20例程度のPSP症候群を診察していますが、今回紹介したpsudoDLBタイプ以外についてもPSPSに共通する治療的診断特徴としては、L/C配合剤とCHE-Iがほぼ無効であるという事だと思います。この点はCBSとほとんど同じで、特にCHE-Iについては増量すると例外なく病状が悪化するので要注意です。この方も薬剤治療が困難と判断したので、代替治療を検討中です。
CHE-Iについてはアルツハイマー型など一部の認知症にしか適応が認められておらず、特にPSPSやCBSにおいては増量すると病状を悪化させるケースが圧倒的に多いので、原則的に使用は控えたほうがいいと考えます。この症候群においては効果が明確ではない不必要な神経系薬剤は投与を続ける意味はなく、むしろ神経系のバランスを崩すだけだというのが現実です。教科書にはどこにも書いていませんが、数々の症例がそう教えてくれました。


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by shinyokohama-fc | 2015-01-06 18:49 | 治療

レビー小体病の抑うつ治療薬における問題

レビー小体型認知症、レビー小体病については最近新聞やTVなどマスコミでよく報道されるようになりました。しかし生前は確実な診断法がないというのは他の変性疾患と同じであり、MIBG心筋シンチグラムというアイソトープを使用した高価で人体に侵襲的な検査ですら、糖尿病や心疾患など他のファクターによる偽陽性が含まれたり、病理診断例のうちの2割が偽陰性であったという報告されているようです。また高齢者の場合はアルツハイマーや嗜銀性顆粒球症など他の疾患との混合も少なくないようなので、実際の臨床診断としては「大脳皮質基底核変性症候群(CBS)」と同じように「レビー小体症候群(LBS)」としたほうがいいのかもしれません。
LBSに関してはレム睡眠行動障害(RBS)や抑うつ状態が何年も前から先行することが多いと言われています。55歳を超えてからの抑うつ状態であれば、LBSを疑えという意見も老年精神医学ではよく言われていることです。ただしLBSの抑うつが通常の抑うつとは違うのは、SSRIなどの各種抗うつ剤や抗精神薬が効果がみられない事がほとんどだという事実です。同じαシヌクレインの疾患であるパーキンソン病(PD)の抑うつ状態の治療薬にも同じ事が言われます。PDの抑うつ状態の治療薬としては一般的にドーパミンアゴニストが推奨されていますが、この薬剤は用量依存性に幻覚や嗜眠を誘発しやすいのが最大の欠点です。それゆえもともと幻覚・嗜眠が出現しやすいLBSには使用しにくい薬剤です。現在頻用されている非麦角系のドーパミンアゴニストはプラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチンの3剤ですが、前2者はD2受容体親和性が強い影響で幻覚・嗜眠が悪化しやすい傾向にあります。それゆえロチゴチンを使う事になるのですが、薬剤等価換算表によるとかなり少ない用量で使用しないとやはり用量オーバーで幻覚・嗜眠が悪化するようです。私の経験では4.5mgでも悪化した事例が2~3ありました。他にはレボドパ配合剤の用量を少なくするというのも幻覚・嗜眠を悪化させないための有効な方法です。一般的にはパーキンソン病の通常量である300mgの半分の150mgくらいがいいのではないかと考えます。50mg錠剤を使用して細かく用量調節ができるような工夫が必要でしょう。私も20~25例程度のLBSの患者に投薬して経過をみていますが、実際は薬剤調整がなかなか難しいケースが多いというのが実情です。


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by shinyokohama-fc | 2014-12-04 19:09 | 治療

古いクスリだから安全とは限らない

「古い薬は臨床現場で長年残っているのだからきっと安全だろう」私はそう信じていました。
しかし私も含めて内科医・神経内科医によく使われているあの薬が、まさか...という事実が続出しています。
すでに今年の2~3月にある雑誌で発表されたドンペリドンに関する心臓不整脈と突然死のリスクです。
QT延長症候群と心臓不整脈を1.6~3.7倍も起こりやすいと報告されています。欧州ではドンペリドンによる心臓突然死がいくつも報告があり、20mg錠剤・10mg/60mg坐剤は今後使用禁止・販売禁止を検討すべきと欧州医薬品庁PRACは勧告しています。なお代替薬剤としてはメトクロプラミド、プロトンポンプ阻害剤が推奨されています。
内科であれば悪心・嘔吐などにきわめてよく処方する薬で、一般的に向精神薬だという認識が乏しいようです。
神経内科の分野でもわが国ではでは片頭痛随伴症状の抑制目的やパーキンソン治療薬の副作用制御目的で学会ガイドラインで奨励されている薬剤です。名前がリスぺリドン(統合失調症のみに限定的に使用される非定型第2世代向精神薬)に類似している同類の薬剤であり、心臓不整脈・突然死に関してはリスぺリドンと同様のリスクがあるという事です。
その他にも主としててんかんの予防薬として長年使用されてきた薬にも重篤なリスクがある事が判明しています。
てんかん予防薬として長年使われてきた、フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピンです。
これらの薬剤が肝臓での酵素誘導作用が非常に強力であるため、他の各種薬剤の代謝を促進するというのは古くから知られてきたことですが、同様に生体内の酵素の代謝も強力に促進するために、骨粗しょう症、動脈硬化性疾患(冠動脈疾患、脳血管疾患など)の発症が8倍以上にもなると報告されています。てんかん予防薬というのは何年にもわたって長期内服するために与える有害性が大きいのでしょう。わかりやすく言えば、てんかん予防薬を飲み続けることによって血管や骨などの老化が人一倍進行するということです。
カルバマゼピンに関しては重症薬疹や重篤な血小板減少症などを経験した事があり、非常にリスクの高い薬だという認識でしたが、長期内服により小脳変性症も起こすと言われています。実際に50~100mgの少量でも平衡失調の副作用が出ます。てんかん以外にも三叉神経痛などにも広く使用されてきましたが、どうしてもこの薬でないと効かないという方以外にはもはや第一選択で使うべき薬とは言えないでしょう。やはり新規てんかん予防薬である、ラモトリギンとレベチラセタムの使用が推奨されていますが、わが国では前者がようやく先月に単独使用可能になったばかりで、この2種類の薬剤は長年にわたって単独使用が認められていませんでした。
パーキンソン治療薬のドーパミンアゴニストの古いタイプ、麦角系も10年前までは臨床現場でよく使用していましたが、心臓弁膜症、肺線維症のハイリスクが報告されてからは、非麦角系に代用されるようになりました。
またこの麦角系ドーパミンアゴニストは新たに悪性腫瘍発症リスクも報じられていて、おそらく今後は衰退していく流れにあると思われます。
わが国の薬の情報は非常に遅れているなという印象です。
現在まで頻用されているCHE-I(コリンエステラーゼ阻害剤)に関しても、心臓不整脈やてんかん発作など数々の重篤な副作用が報告されているため、かなり厳重に注意して使うべき薬だと思います(以前のブログを参照ください)。


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by shinyokohama-fc | 2014-11-27 19:02 | 治療

安易に抗認知症薬(コリンエステラーゼ阻害薬)を処方するなかれ

最近は「物忘れ」を主訴に医療機関を受診しただけで、安易に抗認知症薬が処方されるようです。
認知症専門医が外来を実施する医療機関はしばしば「物忘れ外来」という名目で早期の受診を推進しています。
ただ元気で健康な高齢者が増加している現在、後期高齢者(75歳以上)の人は皆さん年齢相応の物忘れがあるのは当然のことです。「認知症」というのは日常生活のさまざまな基本的な事が正確にできなくなる事です。
その前段階と言われる軽度認知障害(MCI)の人も多数おられますが、当然、抗認知症薬の対象にはなりえません。
4か月開けて2度、簡易知能スケール(MMSE)とADL評価尺度(DAD)で認知症では全くない事を確認した82歳男性ですが、4か月前までは、認知症専門医(精神科医)による専門外来で抗認知症薬が処方されていました。この専門医が遠方へ転勤したため当院を受診することになりましたが、どう見ても私には認知症には見えませんでした。MMSEは28~29点で、会話上はまったく頭が冴えている。こういう方に薬が処方されるというのは全く理解できないですし、まったく意味がわかりません。患者を診察しないで適当に薬を出しているとしか思えませんでした。
これまで4か月の間に同じようなケースを何人も見ました。認知症専門医の安易な診断と治療により、本来全く正常域の人が家族に「認知症」扱いされて尊厳を傷つけられたというのもありました。
専門医?の安易な診断と処方が家庭崩壊すら招きかねないという事実を知って呆然とするしかありません。
年齢相応の物忘れに対してこういう薬を専門医が処方しているというデタラメ医療が横行しているようです。またこういう年齢相応~軽度の方で、無理に薬が処方されて嘔吐、下痢、頻尿などの副作用が出て非常に困ったというケースをいくつも聞かされました。正常域の高齢者のアセチルコリン、ドーパミン、セロトニンなどの神経伝達物質の微妙なバランスを薬で無理に崩しているというのはナンセンスです。これは医原病そのものではないでしょうか?
抗認知症薬(コリンエステラーゼ阻害剤)は薬剤によっては強力なアセチルコリン作用があり、高度の徐脈性不整脈や虚血性心疾患などが誘発されると書いてあります。わたしも30~35回/分の非常に危険な徐脈性不整脈の副作用が出たケースを2~3例経験しています。薬剤を中止してからも1~2か月続いたため大変困りました。
また易怒性や興奮性をきたすケースも多いようです。薬によって興奮させた患者に対して抗精神薬(統合失調症の薬)を使うという、デタラメでマッチポンプ的な処方もよく見かけます。神経に作用する薬剤というのはすべて劇薬で、一歩間違えば用量が増えるとオーバーランしてしまう薬ばかりですので、厳重な注意と監視が必要なのです。
年齢相応や軽度の「物忘れ」だけで安易に抗認知症薬(コリンエステラーゼ阻害剤)を飲むことのないようにしたいものです。


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by shinyokohama-fc | 2014-10-23 18:50 | 治療

クスリを追加処方することが免罪符?

お薬手帳を拝見すると病院の外来から神経系のクスリが目が眩むほど多剤大量に出されていて驚かされることが少なくないです。中には神経系のクスリが10種類近くフルドースで出されている80歳や90歳の患者さんもいます。
常識的に考えて、これだけ神経系のクスリ多種多量に飲んでよく死なないなと心配に思うのがまず第一印象です。
最近でこそようやくポリファーマシー(多剤大量投与)の問題を批判するマスコミ記事や書籍が増えましたが、長年にわたって「病気で受診したらとりあえずクスリ。外来に行けば行くほどクスリが増える。患者側からも何かいいクスリはないかととにかくクスリを出すことを強く求められ、医療側も外来で説明する時間も限られているのでとりあえずクスリを出してその場をしのぐ」という現実から逃れられないようです。私の知人からも某大学病院で多種多量のクスリを出されて薬物中毒で救急で運ばれてきた患者を何人も診されられて困っているという話をよく聞きます。
日本は世界中でも飛びぬけてクスリが多く使われる国で、あるクスリは世界のシェアの7~8割を占めるという冗談のような事実があるようです。神経内科の分野ではパーキンソン治療薬のドカ盛り処方、精神科の分野では抗精神薬のドカ盛り処方が散見され、さらに認知症患者になるとコリンエステラーゼ阻害薬も加わり、ありとあらゆる多種多量の神経系のクスリが混在していて何が起こるかわからない想定外のカオス状態になることは容易に想像できます。
中でも一番拙い処方は、効果があるかどうかわからないクスリの際限なき追加です。パーキンソン治療薬というのはレボドパ配合剤以外にも、抗コリン剤、ドパミン放出促進薬、ノルアドレナリン補充薬、ドパミン受容体阻害剤、COMT阻害剤、MAO-B阻害剤、レボドパ賦活剤、アデノシンA2a受容体拮抗薬と9種類もあり、現行の保険診療では無制限で何種類の治療薬を高用量でいくら使っても保険上ではまったく問題視されていないようです。しかし逆に1つのクスリを低用量で維持すれば、規定通り用量を上げない理由は何故なのか説明せよとか言われる。本来は用量というのは年齢や体重で担当医の裁量の範囲で決めるべき事であって、85歳の患者でも55歳の患者と同じように一律で用量を上げるのが当然だとでも言うのでしょうか?その一方で85~90歳の患者に高用量を使う事のほうが危険なはずなのに不問にされている。全くもっておかしな話です。また、1つのクスリが十分効かなければ、これでもかこれでもかと外来に行くたびにクスリの種類と用量が増えていって最終的には信じられないほどの種類と量のクスリを飲んでることになってしまうというパターンが多いようです。特に「進行性核上性麻痺サブタイプの症候群」に対する無意味で不必要なドカ盛り処方は目に余りますし、この病気にパーキンソン治療薬をいくら積み重ねてもムダだというのは、いくつもの医療機関を受診した患者さんから教えられました。「レビー小体病」もあらゆる症状が出現するのでドカ盛り処方されて悪化してしまう傾向にあるようで、特にパーキンソン症状が先行するタイプはそうなる傾向があります。多くのケースではムダに医療費がかさむだけで患者さんにとってほとんどメリットはありません。そればかりか神経系のクスリは必要以上に盛られると、結果的に幻覚・妄想・衝動制御障害・せん妄などを引き起こし、麻薬中毒と大差ない状況になってしまい非常に危険なので注意が必要です。
患者側も医療側も日本国内で常態化しているポリファーマシーの問題を今一度考え直すべき時ではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2014-09-19 14:16 | 治療
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