カテゴリ:治療( 71 )


胃粘膜防御因子増強薬が著効した認知症症例

79歳女性、行動心理症状がなく、記憶・見当識・実行機能障害が主体の老年認知症の方が先日受診されました。発症は数年前に自宅に帰れなかったというのが初発症状だったそうです。2年前から、市内の認知症の専門クリニックに通院している方でしたが、ご家族が胃粘膜PG増加による防御因子増強薬として有名なテプレノンという薬剤に熱ショックタンパク質(HSP)誘導作用があるという情報に注目され、前医にお願いして1年前から処方してもらっていたそうです。1年前に実施した簡易知能スケールMMSEで18/30だったそうですが、今回のMMSEでは26/30まで改善していました。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)も処方されていましたが、副作用を警戒してご家族の判断で2か月前から中止していたとの事です。ChEIを中止しても特別中核症状が悪化したという印象もなかったようで、当院での診察評価でも、時間・場所の見当識障害以外の項目はほとんど満点であり、立方体模写、図形(重複五角形)模写、時計描画は完璧に書けました。診察した上ではどうみても軽度認知障害(MCI)のレベルでした。パーキンソン症状(錐体外路症状)や行動心理症状(精神症状)は一切なく、臨床的にはアルツハイマー老年型(SDAT)か神経原線維型老年認知症(SD-NFT)のいずれかというイメージの症例でした。
異常な絡まり方をしたタンパク質が脳内に蓄積されてSDATやSD-NFTのような神経変性疾患が引き起こされると言われています。そのようなタンパク質の絡まりを解いてくれるのが、熱ショックタンパク質(Heat Shock Protein:HSP)と呼ばれるタンパク質です。HSPは誤って絡み合ってしまったタンパク質を元通りに戻して処理してくれるが、そういうタンパク質が大量になると、処理能力を超えてしまうと言われています。HSPを増やす事ができる物質を体内に投与すれば、HSPの処理能力が上がり、病状の進行を抑制できると言われています。たしかにテプレノンという薬剤には胃の細胞をストレスに強くするHSPを増加させる働きもあると言われていましたが、今回のような実際に改善した症例を確認するまでは半信半疑でした。おそらく軽度認知障害(MCI)レベルで維持されている症例や進行が遅いSD-NFTのような症例では有効性が高いのではないかと思われます。その一方で50~60歳という若年発症、比較的進行の速いアルツハイマー(ATD)のような症例ではHSPの効果が及ばないのではないかと考えます。
最近は高齢化・長寿化により75歳以上の後期高齢者の年齢で発症する認知症が多いようです。外来に受診する症例も行動心理症状が先行するタイプ(病理診断ではグレイン(嗜銀性顆粒性))が最も多く、行動心理症状を欠くタイプがそれに次いで多いようです。これら高齢者タウオパチーの症例の特徴としては、若年性ATDに比べて進行が遅いという事です。75歳以上で発症した比較的早期、あるいは進行していないMMSE 20~30程度の方々にはHSP誘導作用が有効ではないかと思われます。最近はHSP誘導作用のあるアスフラールという物質も注目されています。HSP誘導作用のある薬剤やサプリメントを併用して認知症の中核症状を改善できるかどうか注目していきたいと思います。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-03-01 12:34 | 治療

パーキンソン・精神病症候群(非幻覚性)の劇的改善例

最近、外来で診る症例は認知症というよりは、軽度のパーキンソン(錐体外路)症状と精神病のコンプレックスの症例が増えてきました。こういう症例をレビー小体型認知症?と巷では呼ぶのかもしれません。しかし以前のブログでも申しましたように、臨床症状から脳にレビー小体(シヌクレイン)がたまっているのか、異常タウがたまっているのかなど誰にもわかりませんし、それを検査する方法もありません。また不確かな病理解剖なき病理学的診断?というのは治療薬の選択をするに当たって何の意味もない事が症例を通じてわかってきました。今回提示する症例は、病名をつけるとすれば、パーキンソン・精神病(強迫神経症型)症候群と言えるでしょう。
69歳女性。1~2年前から不安、強迫的な強い神経症があり、近医から抗認知症薬D(ChEI)が処方されて、数か月経過してから安静時振戦、前傾姿勢、小刻み歩行、仮面様顔貌、四肢の運動障害・歩行障害を自覚するようになり、病院の神経内科外来を受診して、パーキンソン病初期と診断されたようです。MMSEは22/30点だったようですが、情緒不安定で検査に信憑性が乏しいとの事でした。相変わらず精神症状が顕著であったため、近医のメンタルクリニックに通院し、夜間の叫び声や日中の嗜眠、自発性低下などがあったため、クロナゼパムなどベンゾジアゼピン系薬剤が処方されていましたが、内服後に副作用のため動けなくなったりしていたようで、結局、精神科医が1年にわたり薬剤コントロールを試みたが、まったく上手くいかなかったという事で、当院へ紹介されてきました。ちなみにこの方は幻覚(幻視・幻聴)の訴えはないようです。私が外来で診るパーキンソン・精神病症候群はこの症例のように幻覚症状を欠く症例が多いようです。
初診時は動作の緩慢さは目立たず、歩行時のすくみもなく、姿勢も正常で、普通のスピードで歩行できていました。おそらく抗認知症薬Dを中止した影響でドパミン阻害作用が軽減したものと推定されました。しかし上肢・下肢ともに歯車現象(歯車様筋固縮)は顕著で左右差(左に強い)がみられました。きわめて情緒不安定で強迫的であり、治らない事に対する苛立ちが強くみられ、激越的で号泣していて認知症の評価などとてもできない状態でした。この方にはアマンタジン50mg(朝)とアロチノロール5mg×2(朝・夕)を処方し、フェルラ酸を推奨しました。2週間後に再診で来院された時は、あまりの変貌ぶりに驚きました。別人のように表情が明るくなり、笑顔でした。この病気がなければ、元々はこんな人だったんだという感じでした。アマンタジンが意欲を劇的に改善し、アロチノロールが過度の緊張状態を沈め、フェルラ酸で精神不安が大幅に軽減されたのだと推定されました。
この症例のように非幻覚性のパーキンソン・精神病症候群という症例は数多く見られます。非幻覚性のタイプはアマンタジン少量が劇的に奏功するようです。その一方で幻覚性が強いタイプは抗精神薬も効果がなく、アマンタジン少量でも幻覚が悪化するようで、治療に難渋する事が多いという印象です。パーキンソン・精神病症候群とパーキンソン・認知症症候群はきわめて多様性があり、それぞれ同じ薬剤が通用しないという特徴があります。きわめてヘテロ的な多様性の大きい症候群であると言えるでしょう。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-02-25 15:24 | 治療

薬剤過敏性、パーキンソン病の症例提示

75歳男性、手の振戦から発症して6~7年経過しているYahr3度の典型的なパーキンソン病の症例です。
右>左手の安静時振戦、筋固縮、動作緩慢、前傾姿勢、姿勢反射障害は明確にあります。この症例はありとあらゆる薬剤に過敏性、副作用を示しました。合併症として癌があるため抗がん剤治療をしているという事情もありました。前医処方の抗コリン剤(トリヘキシフェニジル)で記憶低下、セレギリン(MAO阻害剤)、ゾピクロン(睡眠導入剤)で強いふらつき、エチゾラム(ベンゾジアゼピン系・抗不安剤)で嚥下障害があると訴えていました。私は前医処方のうちレボドパ/カルビドパ合剤を300mg(100mg×3)/日で継続し、ロチゴチン貼付剤を4.5mg追加したところ、下腿浮腫が顕著に現れたため、中止に至りました。また通常の便秘薬で効かないほどの便秘であったため、大黄甘草湯5gを処方したら、やはり甘草の副作用なのか下腿浮腫が現れました。その一方で不眠と抑うつにはスボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬)を処方したところ、以前よりも眠れて不安神経症的な不定愁訴が減少した印象でした。
「薬剤過敏性」というのは、その人にとって有害な薬から身を守る身体反応ですので、非常に大事な症状です。薬剤服用後1週間以内の早期に副作用・有害事象が出現してくれる人は、早く中止して対応できると思いますが、神経系の薬剤は長期投与によって遅発性にドパミンが阻害されて副作用が出るケースも多く、それを注意深く見極める必要があります。パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患は年単位にゆっくりと進行していく病気であり、たった2~3か月で歩けなくなったり、食べ物が飲み込めなくなることは常識的にはあり得ないわけです。自れの処方した薬の有害性を認識できず、薬によって遅発性のドパミン枯渇状態を誘導しているにもかかわらず、「病気が進行したんだから、仕方ない」という病状説明(詭弁??)には疑ってかかるべきでしょう。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-02-19 09:11 | 治療

前頭側頭型認知症/意味性認知症の症例提示(薬剤選択に非常に苦労した症例報告)

症例報告 83歳女性 平成26年6月初診
74歳時から幻覚・妄想で発症、かつては強い幻視であったため、レビー小体型認知症(DLB)と診断されていました。コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)としてはドネぺジル10mg+メマンチン20mgが処方されてすぐに不穏、易怒、攻撃性、歩行障害となりました。レボドパ/カルビドパ150mg処方されて幻覚・妄想が悪化したようです。易怒に対してクロルプロマジン8mg/日が処方されて首下がりとなり、ハロペリドール0.75mgが処方されて口ジスキネジアと徐脈になったようです。これが初診時までの投薬経過です。
初診時の所見、礼節は保たれていて、挨拶も丁寧。常に笑顔で鼻歌を歌っていました。反復的常同行動、使用行動、模倣行為があり、言葉は流暢だが、その場にそぐわない内容の一方的な会話で、普通の会話になりませんでした。語義失語が強く、物品呼称と単語理解が著しく障害されていました。歩行はやや開脚性でしたが、動作や歩行の緩慢さは全くなく、一見してDLBらしさは感じられませんでした。
前医での最終処方がリバスチグミン9mg/日+メマンチン10mgでしたが、スイッチ易怒、不穏、独語が著しいとのことで家族の判断で中止していました。抗精神薬は上記の通りすべて少量でも副作用が出たので使用できませんでした。メマンチンをそのまま継続して、リバスチグミンをガランタミン4+4mgに変更しました。その後易怒、興奮は著しく減少したという事でした。しかしデイケアでは相変わらず多動で落ち着きがなく、脱抑制症状が著しいとの事で、ガランタミンも中止、メマンチン5mgまで減量しました。多動・脱抑制症状、夕方症候群に対してはチアプリド25~75mgで処方しました。結果的にこの組み合わせで行動心理症状は著しく軽減できました。試しにメマンチン5mgを中止してみると、アパシーで全く動かなくなるとの事でした。因みにこの方は希望にてサプリメントも3年前から使用しています。
意味性認知症(SD)というのは前頭側頭型認知症(FTD)の臨床病型の一つとして知られていますが、一般的な認知度は驚くほど低く、私も3年前まではまったく知りませんでした。認知症専門医として有名なDrでも診断が難しいようです。しかし非常に特徴的なキャラクターなので、それさえつかんでいれば誤診することはないと思います。私の外来患者では認知症来院者のうちの5%でしたので、少なくはないようです。語義失語が主症状ですので、初期から言葉の数が減少していくことにより、周囲との意思疎通が困難となり、世界が狭くなり自己中心的になってきます。その延長として幻覚(幻視)・妄想が初期からみられる症例がいくつかあるようです。多くはレビー小体型認知症(DLB)としてコリンエステラーゼ阻害薬が処方されますが上手くいきません。FTDのもう一つの臨床病型である、傍若無人的で受診拒否傾向の行動障害型(bv-FTD)とは違って、他者に対する礼節は保たれていて、接触は良く柔和な印象が多いです。このキャラクターはアルツハイマーに似ています。しかし礼節は保たれているものの、いざ会話してみると一方通行で思いつくままに、その場で意味のない会話をペラペラ話します。鼻歌を歌い上機嫌で笑顔で子供っぽいです。机の上の物をいじって勝手に遊んだりします。私が経験したFTD-SDの症例は全員女性でした。
<FTD-SDの診断基準>※難病申請のための臨床調査票より引用
1) 中核症状(必須項目); A) 物品呼称の障害 B)単語理解の障害
2)( 副項目)少なくとも4つのうち3つ
A) 対象物に対する知識の障害 B)表層性失読・失書 C)復唱は保たれる。流暢性の発語 D)発話は保たれる
3) 発症年齢が65歳以下である
4) 画像検査所見 ; 側頭葉前部にMRI/CTで限局性萎縮がみられる
5) 他の疾病を鑑別し除外できる ATD,DLB,VD,PSP,CBD,精神疾患
6) 1)~5)すべてを満たす
この診断基準に対する私個人の意見としては疑問点がかなりあります。1)2)に関しては全く異論はありません。3)について、発症年齢を区切る事に関してはどういう意味があるのか理解できません。また発症年齢を正確に測ることなど可能なのでしょうか?これは患者の差別化ではないでしょうか?4)について、一般的にどんな変性疾患でもかなり病気が進行しないと脳萎縮は起こりません。画像所見ありきというのは誤診を生む種だと思います。5)について、様々な疾患に類似した特徴があるので鑑別・除外は難しいケースも少なくないです。実際私がFTD-SDと診断した多くの症例は前医ではATD,DLBです。ATDの礼節・接遇良好性がある半面、DLBの幻覚・妄想も出ます。歩行は前頭葉性失調、開脚歩行を呈したり、片手の失行を伴う症例も多く、PSPやCBDの鑑別は困難です。
<FTD-SDの重症度>※難病申請のための臨床調査票より引用
0)正常発語・正常理解
1) 明らかな喚語障害、通常会話では理解は正常
2) 語を大きく阻害するほどではない程度の軽度の喚語障害、軽度の理解障害
3) コミュニケーションを阻害する中等度の喚語障害、通常会話における中等度の理解障害
4) 高度の喚語障害、言語表出障害、理解障害により実質的にコミュニケーションが不能
今回提示した症例では初診時にすでに3)レベルで、現在は完全に4)で最重症レベルです。発症してすでに9年ほど経過しているため失語の改善は困難ですが、投薬の度重なる変更、思考錯誤により、メマンチン極少量+チアプリドに落ちつきました。おそらくガランタミン単独使用でも抑制できたのではないかと思われますが、メマンチンとの併用により両者の抑制系としての効果が十分に発揮されてなかったようです。コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)+メマンチンの併用という組み合わせは奇異反応例や失敗例が多いので、最近は併用しないようにしています。発症して経過が長く病気が進行ステージで重度で、かつ高齢でもあるため、正常な脳神経細胞が乏しくなっているがための、薬剤過敏性ではないかと推定されます。早期に副作用が出てくれる症例のほうが、副作用だと気がつきやすいので対処はしやすいと思いますが、今回の症例は合わない薬剤が非常に多くて苦労させられました。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-02-01 17:35 | 治療

ドパミン阻害剤で悪化する共通項

最近、「パーキンソン病」「パーキンソン症候群」という病名で健康保険適応の検査となった核医学検査として、ドパミントランスポーターシンチグラフィー(通称・ダットスキャン)というのがあります。主として本態性振戦とパーキンソン病、アルツハイマー病とレビー小体病(DLB)の鑑別ができる検査といわれています。ただしピックコンプレックスと呼ばれている疾患群であるCBD/PSP(CBS/PSPS)でもレビー小体病と同様に両側の線条体のドパミン集積が著しく低下しています。それゆえこれらの3つの疾患群ではすべて元々ドパミンが枯渇状態にあるわけです。こういうドパミンが枯渇状態の疾患に対してドパミン阻害作用の薬剤を処方するとどうなるか?当然のごとく動作歩行は悪化するだけでなく、仮性球麻痺がひどい場合は嚥下障害、呼吸筋麻痺を引き起こします。私が診てきた症例の印象としては、DLBよりもCBD/PSPのほうがドパミン阻害剤で症状が悪化する程度がより強い傾向にあると思われます
CBS/PSPSは「ピックコンプレックス」かつ「ドパミン枯渇症候群」です。そういう疾患群が少なくないという事を臨床医の多くが知りません。認知症専門医・神経内科専門医を名乗っている医者すらほとんど知らないのではないか?かく言う私もつい3~4年前までは全く知りませんでした。CBS/PSPSの症例を1年で50例以上診たからこそわかったのです。特にアセチルコリン賦活作用の強力な薬剤はアセチルコリンードパミンのバランスに影響してドパミンの相対的低下をもたらし、錐体外路症状(パーキンソニズム)増悪させる事が懸念されると考えられていて、実際の私の臨床経験でもそうでした。やはりDLBよりもCBS/PSPS症候群のほうが薬剤性パーキンソニズム有害事象がより深刻であるようです。加えてアセチルコリンの強力賦活によりピック症状が悪化して脱抑制・錯乱状態になり、きわめて悲惨な状態に至ります。CBD/PSPはDLBと違ってレボドパやパーキンソン治療薬が全くと言っていいほど効かないため、ドパミン阻害剤による有害事象に対しては解毒治療しか方法がないわけです。
CBS/PSPSとDLBの鑑別はMIBG心筋シンチグラムが有用だと言われています。前者ではMIBGの集積は正常であり、後者では著明に低下すると成書には記載されています。しかし両者の鑑別はDLBではレボドパが少量50mg×1~2でも著効しますが、CBS/PSPSでは300mg以上使用しても効果が得られないという事です。もちろん例外的なケースもあり、PSP-Pというタイプだけはレボドパが効果を示しますし、DLBの中にはレボドパやChEIなどが効かない悪性進行性タイプもあります。いずれにしても動作歩行障害系の神経変性疾患にはアセチルコリン賦活作用の強力な薬剤を使用するには細心の注意が必要であり、重度のドパミン枯渇状態が推定される病状のケースでは最初から使用を控えるべきではないかと思います。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-01-23 17:25 | 治療

パーキンソン型認知症には少量アマンタジンが著効

当ブログでは以前から「レビー小体型認知症(DLB)」という呼称を用いてきましたが、軽度~中等度のパーキンソン症状が明確に存在する症例以外はともかく、パーキンソン症状が全く存在せず、むしろ動作が通常よりも速い症例でも幻視、認知の変動があればDLBだと前医で診断される症例を数多く診ました。それらの多くがピック系の意味性認知症、行動障害型FTDとして典型的な症例が多かったという印象です。私はこの2年でさまざまな症例を診るにつれてDLBという病名を現行の診断基準で診断するのは不可能ではないかとすら感じるようになりました。そもそも「レビー小体」というのは病理診断であるために、実際の症状だけで、レビー(シヌクレイン)が溜まっているのか、タウが溜まっているのかなど誰もわからないので当然といえば当然なのですが。そもそも幻視という症状1つとっても、前頭葉、側頭葉が起源のものから、中脳黒質~脳幹、あるいは後頭葉が起源のものもあると言われており多彩です。統合失調症の症状として幻視・幻聴がみられるように、意味性認知症などのピック系の疾患群、CBS/PSPSなどのピックコンプレックスでも幻視・幻聴がみられる症例は少なくないという印象です。
つまり「木を見て森を見ず」という診療が誤解を生んでいるのではないか?神経疾患の臨床診断というのは全体像を見てするべきであり、「幻視」「パーキンソン症状」とか断片的な症状だけで診断すべきではないと考えています。
今後はパーキンソン病の主要症候が存在する症例を「パーキンソン型認知症」と呼ぶようにしたいと思います。このタイプの認知症にはパーキンソン病の主要症候のうちわずかでも確認できるタイプをすべてそう呼称したいと思います。必須項目は1)動作緩慢~寡動(思考緩慢、歩行緩慢を含む) 2)歯車様筋固縮 3)姿勢異常・姿勢反射障害 4)安静時振戦とし、追加項目として1)自律神経症状(起立性低血圧、便秘、排尿障害、体温調節障害など) 2)レム睡眠行動異常とします。これらの所見がみられないものはすべて除外します。つまり私案では「パーキンソン病らしさ」があるかないかを重視し、「幻視」「認知の変動」という主観的で判断の曖昧な臨床診断を混乱させる項目は除外します。
「パーキンソン型認知症」に共通してみられ問題になる症候として「日中の嗜眠・傾眠」があります。先日、同じ日の外来にこの「パーキンソン型認知症」で継続診療している症例が4~5例集まりました。そのうち3例が前回処方したアマンタジン50mg(朝食後)が著明に効果を示しました。以前から他のどんな薬剤を使用しても効果がなかった「日中の嗜眠・傾眠」という症状に対してです。わずか50mgで劇的に効いたのは大変驚きでした。特に毎回外来受診時にいつも嗜眠状態であった60代の症例が初めて外来受診時に嗜眠状態がなかったのです。このたびアマンタジンを使用した症例は元々幻視の訴えがないかあっても軽度の症例が多かったと思われます。アマンタジンは副作用として幻覚が出やすいというのは神経系専門の人間であれば誰もが知っているほど有名な事ですので、DLBにはこれまで一切使用が推奨されて来なかったように思われます。しかしアマンタジンという薬剤は「パーキンソン病」「パーキンソン症候群」に適応があり、実際はパーキンソン病の症例においても古くはレボドパの次に選択される薬剤という位置付けでした。パーキンソン病に対してドパミンアゴニストなど次々と新薬が出たために、ここ最近の10~15年くらいはいつしかアマンタジンを使わなくなったという傾向がありましたが、少量でもこれだけの効果があるのであれば見直されるべきだと思います。個人的にはChE-Iよりも価値の高い薬剤治療だと考えます。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-01-18 19:00 | 治療

薬害だらけの医療現場

新年早々で久しぶりのブログ更新ですが、おめでたくない話題で恐縮です。以下は私の知人(病院勤務Dr・神経内科)から先日受信したメールの一部引用です。
「本日から仕事初めでしたが、救急患者はゾルピデム(短時間型睡眠導入薬)飲みすぎて意識障害の高齢男性、フル二トラゼパム(長時間型睡眠導入薬)、レべチラセタム+ガバペンチン(抗てんかん薬)と神経系薬剤を多剤併用されて転倒して腰椎圧迫骨折した高齢男性、チクロピジン(抗血小板薬)を内服していて腸腰筋血腫をおこした高齢男性などなどいきなり薬害患者のオンパレードでした(苦笑)」
もともと私の診療科である「神経内科」は薬害患者が放り込まれやすい傾向にあります。薬害患者の原因薬剤が処方されるのは大半が「精神科」です。「うつ病」で精神科にかかっていて、抗精神薬を多剤併用されている患者から、手が震えるとか歩きにくいので診てほしいというケースが非常に多すぎてこちらは辟易します。
病院勤務時代も今でも一番印象に残っているのは精神科で処方されたハロペリドールやクロルプロマジンなどの抗精神薬で「悪性症候群」を起こした数々の重症症例です。抗精神薬を処方された方すべてがこのような重篤な有害事象を起こすわけではありませんが、人というのは個体差・個別差があり、1000人に1人はこのようなケースがあるわけです。特に代謝能力が低下した高齢者では抗精神薬や睡眠導入薬などの神経系薬剤を多剤併用あるいは高用量で投与された場合は高い確率で重篤な副作用(意識障害やせん妄など)を起こしえます。
一番の問題は薬を処方する医者側が薬の副作用(危険性)を十分に理解していない事です。特に神経系に作用する薬剤というのはやむを得ず、恐る恐る処方する薬です。患者側もそういう意識で薬を飲むべきです。そういう薬が数種類に増えれば脳の中で何が起こるか誰にも予測できないのです。
昨日NHKのドクターGという番組で「スルピリド(抗精神薬)による薬剤性パーキンソン症候群」のケースが取り上げられていました。一般の方が視聴する番組としてはかなりマニアックだと思いましたが、私が20年以上神経内科の外来をやっていて最も多かったのはこのケースでした。古くから胃薬としても使われていて特に精神科においてはよく頻用されている薬です。「食欲がない」という症状には特に効果があるようです。しかしこの薬を長期間内服を続けることによって、「手が震える、動作が鈍くなった、歩けなくなった」という事で神経内科の外来を訪れるケースが非常に多かったのです。スルピリドを中止しても元のように歩けるまで数か月~半年かかった症例もありました。高齢者でなくても「薬剤性パーキンソン症候群」が出やすい薬であることは間違いないようです。
最近よく診るケースとしては高齢者の側頭葉てんかんの症例に対してカルバマゼピン(抗てんかん薬)が処方されて、ふらついて歩けなくなったという症例です。100~200mgという少量でもそういう症状が出るようです。この薬はそれだけ「小脳性運動失調」を起こしやすい薬だという事です。長期内服により「薬剤性小脳変性症」を起こすことも知られており、若年時から20~30年の間内服を続けていた結果、60歳で高度の小脳萎縮、起立歩行が不可能になった症例も最近診て非常に驚きました。昨年から単独使用が可能になった新規抗てんかん剤にはこのような有害事象はないようです。
薬害は日常の臨床現場に溢れています。医療者(医者や薬剤師)の勉強不足・管理責任が欠如していると言わざるをえない現状です。神経系の薬剤は症例を選んで上手に使えば非常に有用であることは間違いないのですが、使い方がまずいために有害事象が放置されているケースがあまりにも多すぎて嘆息させられます。こういう現状を踏まえて将来的には神経系薬剤の副作用に関する啓蒙活動などを考えています。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2016-01-08 09:25 | 治療

慢性疼痛治療薬(オピオイドなど)の深刻な副作用

ここ5~10年の間に神経痛などの慢性疼痛に対する治療薬が何種類か発売されました。特に整形外科を中心に最近よく処方されている代表的な薬剤がプレガバリン、トラマドールという薬剤です。
プレガバリンはもともとガバぺンチンという新規抗てんかん剤の前駆体です。高齢者では転倒に注意、副作用には浮動性・回転性めまい、平衡障害、運動失調、傾眠、意識消失、と明記してあります。25mgと75mgがありますが、高齢者では25~50mgでも実際はめまい、ふらつき、運動失調をきたしているケースが多いようです。この1か月だけで4~5名そういう方がおられました。同じ抗てんかん剤の古くからあるカルバマゼピンという薬も少量でかなりふらつきますので、やはり転倒リスクが高まります。
トラマドールという薬剤もアセトアミノフェンとの合剤などもありますが、オピオイドという非麻薬とはいえ、麻薬に近い薬剤ですので、高齢者においてはプレガバリン以上に同様の副作用がでやすいと思われます。実際に最近私の外来でめまい、ふらつきを訴えた高齢者全員がトラマドールかその合剤を他の医療機関(整形外科)で処方されていましたので、僭越ながらトラマドールを減量・中止を指南させていただきました。処方する医師や薬剤師から副作用の説明についてまったくなされてないに等しいという事は憂慮する事態だと考えます。こういう特殊薬剤を処方する場合は医療側からの説明責任が問われるべきでしょう。2年前に病院の整形外科でトラマドールを処方されて全身の粗大な震え(振戦)が止まらないという事で受診した患者、1年前に「DLBの意識障害ではないか?」と家族が誤解してわざわざ50km離れた所から受診した方がいました。診察すると意識朦朧状態であり、重度の脳出血後遺症がある高齢者であるにもかかわらずトラマドールを病院の整形外科から処方されていた患者がいました。
個人的にはプレガバリンやトラマドールに比べると、脳神経に直接作用しない従来のNSAIDsのほうが副作用の点に関してはまだマシだと考えます。泌尿器科で繁用処方されている旧型の抗コリン剤(プロピべリンなど)も同様でせん妄状態、意識朦朧を引き起こしやすく歩けなくなった認知症の方もいました。脳・神経系に作用する薬剤は高齢者、特に脳卒中後遺症や認知症など脳神経にハンディキャップがある患者への使用は深刻な副作用をもたらす可能性が極めて高いため、厳重な注意・観察が必要で、個人的には使用を控えるべきだと考えています。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-11-13 08:48 | 治療

ベンゾジアゼピン系薬剤(抗不安薬)の問題

先日、「処方薬物の乱用・依存を防ぐ」という特別研究会を聴講してきました。講師は日常的に薬物中毒者・依存者の治療にあたっているDrで、おそらく抗不安薬特にベンゾジアゼピン系薬剤というのは一度処方すると深刻な薬物依存を生む原因となっていて、精神科はもちろんのこと内科でも頻繁に処方されているのが問題であるとのことでした。薬物依存というのは薬を摂取しないと強い不安状態に陥る精神依存、服用を中止したり減量したときに起こる身体依存、服用を継続することで効果が減弱するため、さらに強い効果を求めて使用量が増加する耐性化の3点が問題になっています。一般的に問題とされるのは、自殺企図直前の大量服用(overdose)であり、抗不安薬の大量服用しなければ自殺までに至らないケースもあるといいます。薬物依存の専門医が問題としている頻用薬剤は主としてベンゾジアゼピン系の薬剤で、エチゾラム(デパスなど)、フル二トラゼパム(サイレースなど)、トリアゾラム(ハルシオンなど)、ゾルピデム(マイスリーなど)、ベゲタミン、二トラゼパム(ベンザリンなど)です。これらの薬剤を常用している患者は複数の医療機関で上記の特定薬剤を指定して「これを処方してくれ」と初診から言ってきます。私は薬物依存を生まないという理念で仕事をしていますので、こういう申し出についてはこれらの薬物の危険性を資料を配布して十分説明した上で断るようにしています。今回の講師のDrはエチゾラムとべゲタミンの新規処方をやめようと呼びかけていました。私もこれには賛同しています。前者は幅広い適応症があり、抗精神薬扱いにはなっていない事もあってわが国では至る所で処方されており、世界的に見ても処方数量が飛び抜けて多すぎると問題視されているくらいです。我が国の保険診療システム、フリーアクセスの負の遺産と言っても過言ではないと思います。後者に関しても3種類の抗精神薬(フェノバルビタール、プロメタジン、クロルプロマジン)の配合剤であるため、死亡率が高い(死因は肺炎、不整脈による突然死、自殺企図)薬のようです。特にフェノバルビタールはてんかん専門医が使用禁止を提案しているほどの薬ですから有用性よりも有害事象がはるかに上回るという事なのでしょう。
神経内科でよく扱っている高齢者の神経変性疾患(パーキンソン病・認知症関連疾患、脳卒中後遺症、神経難病)に関しては上記の薬剤は特にリスクが高いようです。
私自身の経験で言うと、エチゾラムを常用して誤嚥性肺炎を起こした患者が過去に数名いました。最近の症例では発症して6~7年のヤール2度のパーキンソン病の70代男性が不快な喀痰貯留症状を訴えていたのですが、睡眠導入目的でエチゾラムを前医で処方されていたので、中止させて試行錯誤の上でオレキシン受容体拮抗薬に代替した結果、喀痰貯留症状は完全消失して、外来での不定主訴まですっかりなくなりました。パーキンソン病、脳卒中後遺症、神経難病など嚥下障害をきたすケースにおいてはベンゾジアゼピン系の薬剤はやはり問題が大きいと改めて再認識させられました。エチゾラムは最もやめるのが難しい薬剤だと言われていますが、私の診ている症例に関しては数例で中止が可能になっていますので、中止離脱は不可能というわけではないようです。
他の症例では60代女性で重症の神経難病(CBS)+NPH(正常圧水頭症)の方ではCBSの症状であるミオクローヌスに対して前医にて二トラゼパムが使用されていました。前医の使用量が過量だったため小刻みに減量を試みた結果、これまで問題だった嗜眠傾向と誤嚥が大幅に軽減しました。減量しすぎると粗大なミオクローヌスでやはり問題になるようです。BZ系はミオクローヌスに対しては非常に効果の高い事が確認できましたが、半面で副作用のために誤嚥性肺炎を誘発しやすいようです。特に薬剤によって日中が嗜眠状態で食事をするというのはきわめて誤嚥リスクが高いと言えます。BZ系は確かに切れ味がよく患者には喜ばれる薬なので、Dr側は「患者が喜ぶのなら」とついつい際限なく処方してしまうようですが、高齢者の肺炎死亡者が激増している遠因としてBZ系薬剤の過剰処方があるのは間違いないと思われます。BZ系に関しては特に高齢者と脳疾患・脳後遺症患者においては特に注意すべきでしょう。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-10-27 12:46 | 治療

PDは薬剤依存性、PDDとDLBは薬剤過敏性

PD(パーキンソン病)は薬剤依存性、DLB(レビー小体型認知症)は薬剤過敏性。特にパーキンソン治療薬に対しては。数々の症例を経験するとそういう結論に至りました。これらの疾患は同じレビー小体病、αシヌクレイン疾患とされていますが、やはり機能性・臨床像で大きな相違点があります。
PDという疾患は進行は緩徐であり、発症年齢は様々ですが通常は発症15~20年までは動作歩行障害のみの症状で、副作用を除いて高次脳機能障害や精神症状はほとんど現れません。DLBのような薬剤過敏性もみられませんので、パーキンソン治療薬や神経系薬剤の少量投与によって顕著な副作用が出現するケースはほとんどありません。ただし発症10年前後で薬効の減退によるウェアリングオフ、オンオフなどの現象が顕著になってきます。動作歩行障害の年次進行に伴って神経内科医が治療薬を多剤併用&増量でどんどん増やしていきます。多くのPD患者は薬剤過敏性はなく、ドーパミン依存性であるため一度増量した薬剤を減量することは困難です。少しでも薬剤を減量すると、動けなくなった!と大騒ぎする方も少なくないわけです。PD患者で多剤併用薬を大幅に減らすと動作歩行が極端に悪化します。なぜなら脳が薬に依存している状態だからです。しかし経過の長い症例では6~7種ものパーキンソン治療薬が処方されるため、副作用として幻覚・妄想・せん妄・嗜眠などの精神症状が避けられない状況になります。それを回避するための一つの方法として外科的治療・DBS(深部脳刺激)があります。
2か月前から72歳女性で20年以上の長期経過のPD(パーキンソン病)の症例をみています。オンオフ現象もはっきりした症例であり、50歳前後からの発症なので本来はDBS(深部脳刺激療法)の適応ではなかったのではないかと思われましたが、前医(神経内科医)からは何故かまったくその話がなかったそうです。PDという疾患は病気の経過進行にしたがって治療薬がどんどん増えてしまう傾向があり、これらの治療薬はすべて神経系に作用するものですので、高齢化とともに多剤併用になるため、薬害リスクが高まるというデメリットが避けられないという問題があります。DBSを導入すれば、治療薬はドーパミンアゴニスト単剤(カベルゴリンなど)にすることが可能になります。この方は6~7種類ものパーキンソン治療薬が盛り付けられていました。レボドパ・カルビドパは600mg/日。前医にて副作用中和目的にドンペリドン(リスぺリドンの親戚薬、日本の治療ガイドラインで推奨されているが、フランスでは危険薬物指定)が処方されて案の定、流延と誤嚥が悪化したため介護者の判断で中止されていました。それ以外にもロピニロール徐放剤とロチゴチン貼付剤(同じドーパミンアゴニスト)が併用されていて、それ以外にもなぜかコリンエステラーゼ阻害薬(内服薬)、COMT阻害剤、ゾニサミド(元々抗てんかん剤)が処方されていました。その結果として嗜眠状態、せん妄状態となっていて、すくみと姿勢反射障害が顕著で介助でもほとんど歩けず、強制把握反応や開眼失行など著しい前頭葉兆候がみられていたため、初診時はPSPSと間違えたほどでした。私は治療薬による有害事象の要素が非常に大きいと考えて、レボドパ減量、ロピニロール中止、ChEI中止、ゾニサミド中止を指示しました。
その後は早朝起床時の覚醒が良くなり、嗜眠は大幅に軽減してしたものの、両足の疼痛が出現したため、ゾニサミドのみ再開とし、最近発売されたリン脂質系のサプリメントを推奨しました。次の診察では動作が良くなっただけではなく、強制把握反応と開眼失行が大幅に軽減していたことです。前頭葉兆候がここまで軽減したケースはこれまで記憶がなかったので驚かされました。過剰な多剤併用を少しでも軽減できるという希望が持てました。私の経験でいうとChEIなどの神経系薬剤の一部は前頭葉症状を悪化させることは間違いないようです。今回紹介した症例はやはり典型的なPDで間違いないのですが、経過が長すぎるため、大脳基底核・黒質・淡蒼球の長期の伝達障害のため、二次的に前頭葉障害が起こっていると推察されました。明らかに多剤併用による精神症状にもかかわらず、幻覚などの症状だけを判断して、DLBだと診断??されたのか患者会に入会していたようです。
典型的なDLBはすべての神経系薬剤に対して薬剤過敏性です。そのため多剤併用には忍容性がなく、ほとんどの症例でChEI、パーキンソン治療薬で副作用が出現しやすいようです。特にパーキンソン治療薬の多剤併用は重篤な副作用を誘発します。意識障害、失神、起立性低血圧、嗜眠状態などを誘発したり、幻覚・妄想などで錯乱状態に至るケースも多いです。DLBのパーキンソン症状の多くは軽度であることがわかったので、最近はあえてパーキンソン治療薬を処方することを避けています。一方で高齢でPD症状が先行して発症して4~5年以内に幻覚などの精神症状や高次脳機能障害をきたすPDDという病型があります。PDDの場合は脳幹障害と前頭葉障害が顕著な症例が多く、臨床像としてはPSPSに類似したものになります。誤嚥性肺炎や転倒などの合併症もDLBよりは非常に多く予後不良のようです。DLBもPDDも一部にChEIが全く通用しないケースがあり、むしろChEI投与により精神症状が増悪したり、動作歩行が悪化したりするケースが存在します。これらが前頭葉にタウが高度蓄積する(前頭葉が高度変性・萎縮する)タイプの悪性DLB/PDDです。ChEI反応性のDLB/PDDと比べると同じ疾患とは思えないほど経過が進行性で悪性のため現存する薬物治療はほとんど無力に近いという印象です。こういうケースの場合はがんと同じく緩和ケア中心の医療を検討したほうがいいのではないかと思います。
いずれにして薬剤反応も含めてあまりにも臨床症状に差異が大きいのが事実です。てんかんの大発作と精神運動発作くらいの違いがあります。ちなみにてんかんという疾患においては病理変化はありません。片頭痛や群発頭痛も同様です。これらの機能性に分類される症候群においては病理診断ではなく、臨床症状と薬物反応のみで評価されます。
PDやDLBという疾患というよりも症候群はそういう性質が強いのではないか?臨床現場においては変性疾患というよりも機能性疾患という意識で考えたほうがいいと個人的には思います。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-10-15 11:38 | 治療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line