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コリンエステラーゼ阻害薬は安全に使用できるのか?

この2年間の外来における臨床事例において、あまりにも多くのコリンエステラーゼ阻害薬による有害事象を経験しました。この薬の使い方は本当に難しいと痛感させられました。私が出した結論は以下のとおりです。
1) 不整脈(QT延長症候群・高度徐脈)
ともに心停止につながる危険な不整脈である。80歳以上の超高齢者、抗精神病薬との併用は当然リスクが高まる
使用前に心電図を必ずとり、QTc 0.47以上の事例では使用を控える。
家庭血圧で毎日脈拍を記録して、40/分以下の高度徐脈にならないか確認する(徐脈化があれば直ちに中止)。初診から2週間後に再診が望ましい。
2) 姿勢異常(首下がり・ピサ徴候(体幹ジストニア)・腰折れ)・動作歩行障害の悪化
パーキンソニズムを少しでも確認できる症例、罹病期間長期・重症・80歳以上の超高齢者など線条体ドパミン高度欠乏が疑われる事例においてよくみられる。
パーキンソニズムがヤール2度以上の症例、ドパミントランスポーターシンチグラフィ(ダットスキャン)において線条体のドパミン取り込みが低下している症例(パーキンソン型認知症、大脳皮質基底核変性症)においては、特にアセチルコリン賦活作用の強力なドネぺジルとリバスチグミンを使用する場合はごく少量で
3) 易怒・興奮・常同行動悪化
NPIスコアにおいて、興奮性・脱抑制・易怒性・異常行動が確認できる症例(つまり前頭側頭型タイプ、グレインを含む)へのドネぺジルとリバスチグミンを使用する場合はごく少量で
4) 食欲低下・体重減少・嘔吐
超高齢者で特に食欲低下・低体重・フレイルの症例でのガランタミン、ドネぺジルの使用を控える。もし使用する場合は、週1回の体重測定を行う。
5) 頻尿・尿失禁
使用前後で変化がないか、十分に問診にて確認する
私の結論としては
1)ドパミン神経の変性・脱落が疑われる症例には、ガランタミンを1stで使用。
2)ドパミン神経の変性・脱落が疑われない症例には、リバスチグミンを1stで使用。
3)脱抑制の強い症例にはガランタミンを1stで使用。
4)80歳以上にはかなり慎重にモニタリングしながら使用。ガランタミン>リバスチグミン
5)70歳以下で、BPSDも動作歩行障害もみられない純性アルツハイマーにはリバスチグミン1st、ドネぺジル2nd
リバスチグミンやドネぺジルは前頭葉を賦活するので、歩行障害系に使えとか、パーキンソン型認知症に使えという意見があるようですが、ドパミン系障害がある症例においては、強いアセチルコリン賦活作用が、相対的ドパミン欠乏→姿勢異常・動作歩行の悪化を招くことが非常に多いことがわかったので、個人的には推奨できません。
パーキンソン治療薬・ドパミン作動薬であるレボドパ、ドパミンアゴニスト、セレギリンなどが過剰投与されていて幻覚・妄想が誘発されている場合は、例外的だと思いますが、そもそも幻覚・妄想が出るほどドパミン作動薬が過剰投与されている方が問題だろうと思うので、安易にアセチルコリンエステラーゼ阻害薬を追加する前に、まずドパミン作動薬(特にドパミンアゴニスト)を可能な限り減薬するべきだと思います。ドパミン作動薬の過剰投与によってせん妄状態に至っているのを「認知症だ!ChEIだ!」と短絡的・即物的に処方されている事例があまりにも多いようですが、ドパミン作動薬を整理して、せん妄を解いた後にスケールを行うと26~30点だったという事例ばかりでした。いかに専門医を名乗るDrが薬物作用というものに無理解かというのがよくわかります。
コリンエステラーゼ阻害薬は、50~70歳で発症する純粋型アルツハイマーにおいては、通常規定された用量どおりで使用することが安全に可能だと思いますが、中には例外的な症例もあるので、最低でも心電図測定・血圧・脈拍測定などのモニタリングくらいはするべきです。無駄な救急医療費は使わせないように。



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by shinyokohama-fc | 2016-11-21 17:10 | 治療

コリンエステラーゼ阻害薬による姿勢異常の悪化~歩行困難

最近、コリンエステラーゼ阻害薬・リバスチグミン貼付薬の少量投与でも、短期間で姿勢異常が急激に悪化する症例が続発していて、非常に驚かされます。これらの症例に共通しているのは、「レボドパを使用しなかった」という事ですが、それぞれパーキンソン病+認知症(PDD)と意味性認知症ですが、いずれも重症ケースでした。簡易スケールテストができないような重症ケースでは、ドパミン・アセチルコリン・セロトニンなど各神経細胞はいずれも変性・脱落が著しくなっていると推定されます。それぞれの神経伝達物質は枯渇状態になっているため、外的に1つの神経伝達物質を増やそうとすると相対的に他の神経伝達物質が減少して、ドパミン欠乏・アセチルコリン欠乏・セロトニン欠乏・ノルアドレナリン欠乏などによる有害事象が生じるようです。
76歳女性、PDDかCBS 前傾で右へ傾斜した姿勢異常がありましたが、数mなら歩行可能でした。メマンチン20mgを内服していたが、嗜眠が強かったため中止、代わりにリバスチグミン4.5mgを開始しました。3週間後、意思疎通や反応は良くなったようですが、前傾・右傾の姿勢異常がさらに悪化し、首下がりや腰曲がりも出現してきて、介助でも姿勢が安定せず、歩行困難になってしまいました。
65歳女性 FTD/SD 元々動作歩行・姿勢には問題ないが、重度失語・反響常同言語、脱抑制が著明で、診察室の椅子に座らず、座ってもすぐに背を向けるほどでした。前医のドネぺジル10mgメマンチン20mgを中止して2か月経過していましたが、リバスチグミン2.25mgを開始しました。開始して1週間もたたないうちに、体幹が右へ傾き始め失禁が増えたとの報告がありました。
69歳女性 CBS/FTD 歩行失行があるため歩行は拙劣、診察中は礼節は保持され挨拶なども可能ですが、自宅やデイケアでは不穏・介護抵抗など脱抑制が強い場合があるそうです。リバスチグミン2.25mgを開始しました。開始して1週間もたたないうちに、左へ体幹傾斜したと報告がありました。
これまでドネぺジルによる体幹傾斜/ピサ徴候の悪化の報告は数多くありましたが、リバスチグミン少量でもこのような症例が続出したことにまず驚きました。今回の症例ではいずれもレボドパを含めてドパミン作動性薬剤は使用していなかった事が誘因かもしれません。つまりレボドパ/カルビドパを100~150mgでも使用していればこのような姿勢異常の悪化は出現していなかったかもしれません。同じアセチルコリンエステラーゼ阻害薬でもガランタミンにおいては、4+4mg~8+8mgでもこのような運動障害の悪化という事例は1度もみられていないようです。
リバスチグミンは海外ではPDDに適応があると言われていますが、PDDの場合は通常レボドパがすでに使用されていることが多いため、このような問題が表面化しにくいのかもしれません。PDDでリバスチグミンやドネぺジルを使用する場合は少量投与で、しかも少量のレボドパを必ず併用するという条件が必要なのかもしれません。ただしPDDの症例をいくつか診ていると、それで上手くいく症例もあるが、上手くいかない症例も少なくないという印象です。外的薬剤よる神経伝達物質の調整には限界がある事を思い知らされる毎日です。
似たような有害事象は、パーキンソン治療薬である、ドパミンアゴニストで見られることがあるようです。つい最近も前医でブロモクリプチン単剤で投与されていた、80歳女性のPDDの症例がやはり幻覚・妄想・せん妄の悪化とともに首下がり姿勢となって受診されました。
脳内の神経伝達物質のバランスを評価することは不可能であるが故に、たとえ慎重に少量で薬剤を投与していても、想定外の有害事象が続々と起こりうる。それが薬物治療の限界であり、現実なのです。
おそらく数えきれないほどの神経変性疾患の症例が、このような神経系薬剤の有害事象によって動けていた(歩けていた)人が動けなく(歩けなく)されているのかと思うと、本当にやりきれない気持ちです。


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by shinyokohama-fc | 2016-11-18 18:30 | 治療

薬剤カスケードという問題

最近、特に高齢者における多剤併用処方(ポリファーマシー)が問題になっています。中でも認知症、精神病、パーキンソン病とその関連疾患の75歳以上の薬手帳を拝見しますと、驚愕レベルの神経系薬剤・劇薬・向精神薬のポリファーマシーが当たり前のように行われている現状があるようです。ホームページのトップでその一部を紹介しておりますが、「薬剤カスケード」という行為が、精神科や神経内科などいわゆる「神経の専門医」と言われるDrに漫然と見られることが問題です。「週刊東洋経済」の9/24の58~59ページにその典型的な事例を掲載しました。この症例は「薬剤カスケード」の連鎖によって、仕事ができなくなる所まで追い込まれた最も悲惨な事例でした。
「薬剤カスケード」とは、ある薬で副作用が出て、その副作用の症状を抑えるために薬剤を新たに追加処方する行為の事です。中には推奨されるカスケードもありますが、処方している医者が、薬の副作用と気がついていなくて、どんどん薬が連鎖のごとく投与されるケースがある。抗精神病薬を投与して、薬剤性パーキンソニズムが出て、抗アセチルコリン剤が処方されて、認知機能が低下したため、ドネぺジルが処方されるという、明らかに処方医が無自覚の薬剤カスケードが多いようです。私が減薬主義、薬を1つでも減らすことを目指す方針を掲げている理由としては、まさにこの「薬剤カスケード」にならないためです。前医でポリファーマシーが行われている症例に関しては患者が依存性になっていて、減薬が難しい症例が少なくないです。そういう症例はだいたい肺炎とか脳梗塞とかで入院してしまう症例が多く、いわゆる「入院予備軍」と呼んでも過言ではないようです。高齢者がベンゾジアゼピン系と公精神病薬を併用されていて、誤嚥性肺炎にならないほうが不思議です。ここに抗認知症薬・コリンエステラーゼ阻害薬が追加されてしまえば、さらに誤嚥性肺炎のリスクは高まるでしょう。つまり神経系薬剤のカスケードによって、医療費を浪費している。それがこの国の高齢者医療の現実ではないかと思います。


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by shinyokohama-fc | 2016-11-10 18:55 | 治療

抗精神病薬のダブル処方はやめよう

ここ最近、認知症の超高齢者に抗精神薬を次々と処方して、深刻な不随意運動を発症しているケースが目立つようです。中には多少の易怒性や軽度の幻覚・妄想だけで、安易に抗精神病薬が2種類併用で、何年にもわたって継続されてしまった結果、深刻なジスキネジア、アテトーゼといった不随意運動が発症する、あるいは原因不明の発熱をきたす症例を外来でよく見かけるようになりました。古くから使われているクロールプロマジン(商品名ウインタミン/コントミン)、ハロペリドール(商品名リントン/セレネース)は定型抗精神薬なので、特にこの2つの組み合わせは不随意運動が発生しやすいという印象ですが、非定型が安全というわけではなくアリピプラゾール(商品名エビリファイ)、ベロスピロン(商品名ルーラン)でも比較的発生しやすいようです。
最近私が外来で診た、抗精神病薬による不随意運動事例を以下に紹介します。
95歳女性、施設入所中、4年前から大学病院の精神科外来で認知症に伴う幻覚と診断されて、担当医にクロルプロマジン25mg、クエチアピン25mgがずっと処方されていました。現在は歩行できず車いすの状態です。1か月前から原因不明の37~38℃の発熱あり、上半身をくねらせたりする奇妙な激しい動きが出たという事で受診しました。
すでに施設の判断で前者は中止していたので、後者の中止も指示しました。しかし超高齢にもかかわらず4年もの長きにわたって抗精神病薬を処方されてきたので、おそらくこのジスキネジアを止めるのは困難だと思われます。
80歳女性、独居 近所の認知症が診れるという神経内科クリニックに通院。認知症で若干の易怒・興奮性があるとの事で、クロールプロマジン2mg 、ハロペリドール2mgが処方され、この他にもセルトラリン25mg、ジアゼパム1mg、リバスチグミン4.5mgが処方されていました。3年前から上半身を上下するような奇妙な動きがみられ、会うたびにひどくなり、年々悪化してきて怖くなってきたので、ご家族が連れてこられました。診察した印象では軽度の脱抑制的態度がありました、FAB(前頭葉機能検査)では10/18でしたが、時計描画や図形模写は完璧でした。前医ではアルツハイマーという診断でしたが、アルツハイマーらしさは全く感じられず、年齢的にはグレイン(AGD)ではないかという印象でした。たとえ少量であっても定型抗精神病薬をダブル処方すれば不随意運動は出るという事例です。
認知症専門の学会では定型抗精神薬の処方は禁止されており、非定型を期間限定で使用するように指導されているようですが、実際の臨床現場ではこのような指導は全く行きわたっていないようです。
82歳女性、独居 自宅にて幻覚、妄想、不穏あり、近医の精神科診療所で、ガランタミン12+12mgに加えて、リスぺリドン2mg、エビリファイ3mgが追加された。これらを内服して数か月経過してから、座位と立位において上半身を大きく上下させる奇妙な不随意運動が次第に悪化したということで受診しました。精神科医に相談したが「パーキンソン病なので神経内科で診てもらえ」と言われて、紹介状もなく受診されました。体重が40kg以下の方であったので、ガランタミン8+8→4+4と段階的に減量しました。ChEIの過剰投与によって行動心理症状が悪化しているのは明白だったからです。むろん抗精神病薬は中止して、4~5か月で運よく不随意運動は消失しました。
最近、超高齢者に対する抗精神病薬のダブル処方・長期処方が目に余ります。米国では抗精神病薬処方の副作用についての見識が厳しいので、特に難治性の重度ジスキネジアに対しては処方したDrに厳しく責任が問われます。日本がこれだけ抗認知症薬、パーキンソン治療薬、抗精神薬の副作用に対する見識が甘すぎるのは驚くべき事実です。
認知症高齢者の行動心理症状に対する抗精神病薬の処方が今後増えるであろうと推定されます。処方する精神科や神経内科の専門を名乗るDrの方に抗精神病薬の副作用、不随意運動やジスキネジア、アテトーゼに対する見識が乏しく、薬の副作用の事をまったく何も理解していないDrが安易に超高齢者に劇薬を処方している現実には呆れ、憤りを感じずにはいられません。


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by shinyokohama-fc | 2016-10-22 17:18 | 治療

副作用の観点から貼付剤のメリット

脳神経系に作用する薬剤において、貼付剤・経皮吸収タイプの薬剤がここ数年で上市されました。1つがアルツハイマー型認知症の治療薬・リバスチグミンで、もう1つがパーキンソン病/レストレッグス症候群の治療薬・ロチゴチンです。
リバスチグミンはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬としては強力な作用があるため、私の担当する患者ではわずか4.5mgでもしばしば興奮・易怒性が強調されて、介護者に被害が及ぶ場合が少なくないようです。日本人においては反応性のうつ状態、アパシー(何もやる気がおきずに、目的達成型の行動ができない)、アンへドニア(ふつうの人が楽しいと思うことが楽しく感じられない)タイプの症例にフィットするようです。アセチルコリンを増やして脳を興奮させる薬であるが故に、しばしば副作用として睡眠障害が誘発されるケースがあります。睡眠障害の多くは入眠困難か中途覚醒ですが、明らかにChEIで誘発されたと推定される場合は、副作用に対してさらに睡眠導入薬を加えるというのは好ましくないので、入眠前に貼付薬を剥がして、翌朝の起床後から次の日の分を貼付するという方法が有効なようです。貼付剤は内服薬とは違い、剥がせば薬効はすぐにオフになります。ChEIの内服薬の場合は半減期が70時間という長いものもあり、中止しても場合によっては2週間以上薬効(副作用)が残ってしまうケースもあるようです。
ロチゴチンはドパミンアゴニストとしてはほぼすべてのドパミン受容体に均等に作用する薬剤で、同類の薬剤の中では最もレボドパに性質が類似していると言われている薬剤で、同類の内服薬に比較して嗜眠・突発性睡眠・幻覚などの副作用が比較的少ないそうですが、日本人は薬剤過敏体質の方が多いのか、実際は2.25~4.5mgでもこのような副作用が出てしまうケースが少なくないようです。特にまだ現役で仕事に従事している50歳代のパーキンソン病患者においては仕事の支障になります。夜間のレム睡眠行動異常と片側下肢ジストニアに対してロチゴチン2.25mgを処方してある程度有効だったのですが、仕事中に突発性睡眠が出てしまった52歳男性の症例がありました。やはり貼付薬の特性を考慮して、ロチゴチンを就寝時から起床時まで使用してもらうという方法をとることにしました。
起床時に剥がせば、薬効がオフになり、日中の突発性睡眠は回避されると考えました。
現在、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病に使用されている薬剤は「対症療法」の薬剤ですので、効いてほしい時間帯には必要ですが、効いてほしくない(副作用が出てほしくない)時間帯もあるわけです。そのような場合に、貼付剤の薬効メリットが生かされるという事を症例を通じて実感しました。
半減期の長い長時間作用型の内服薬や徐放型の薬剤は副作用が回避しにくいという共通のデメリットがあります。実際にあるドパミンアゴニストを使用していた数名のパーキンソン病の患者を同じ徐放剤タイプに変更したところ、今までに現れなかった副作用が続々と起こってしまい、慌てて元の非徐放タイプに戻したという事もありました。
神経系の薬剤の多くは「諸刃の剣」という要素が強いため常に注意が必要です。薬を処方する側(医者)にも薬を処方される側(患者)にもそういう意識が必要だと思います。


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by shinyokohama-fc | 2016-10-04 17:10 | 治療

動画で学ぶ神経学

昨日、パーキンソン病・運動障害疾患学会主催のビデオフォーラム(動画で学ぶ神経学)を聴講してきました。
会場の青森までは東北新幹線(はやぶさ)の新函館北斗行きを使って前日から行きました。行きのはやぶさは大宮、仙台、盛岡、新青森しか停車しなかったので、東京から3時間で新青森に到着しました。連休だったので終点(函館)まで行く乗客も多かったように思います。北海道は以前何度か行っていますが、飛行機でしか行けなかったので、東京から函館まで新幹線で行ける日がついに来たというのは未だに信じられないという感じです。新青森から奥羽本線に乗り換えて弘前方面と青森方面に別れますが、今回は青森の方に行きました。青森駅から歩いてすぐの場所に海(港)があり、津軽半島と下北半島が望めます。ベイブリッジや八甲田丸という観光客船があり、何となく同じ港湾都市である横浜とよく似ている感じがします。関東地方の9月は秋雨前線が例年以上に活発で、この2週間太陽を見れない日が続きましたが、青森は秋雨前線がかかっておらず、久しぶりの晴天でした。地元の物産品はリンゴを使った加工品ジャム・ジュース・菓子類が多く、海産物としてはホタテやイカが多かったように思います。駅からすぐのアウガというビルの地下に大きな市場があり、海鮮食事を提供する店も何軒かありました。有名な釧路の和商市場と同じ規模でした。町を歩くと高級感のある喫茶店が何軒かあり、喫茶店文化が感じられました。人口30万人程度の地方都市なので、人口370万人の横浜と比べて人口密度がきわめて低く感じました。
今回は演者の先生方が非常に珍しい疾患の不随意運動の動画を数多く見せていただきました。てんかんの動画もここまで多く見れる機会はあまりなかったですし、若年女性に多いと言われる自己免疫性脳炎の不随意運動の動画も大変貴重なものでした。動画の教育講演の重要性を再認識しました。
神経内科では外来診療において動画を撮影して記録するのはきわめて重要です。病院勤務時代は外来で動画を撮影することは1度もなかったのですが、2年前に自分のクリニックを開業してからは主として歩行障害の症例の歩行記録を動画撮影する機会が増えました。最も多いのは進行性核上性麻痺症候群(PSPS、サブタイプ含む)の起立・着座と歩行の記録です。この他にもパーキンソン病(PD)の静止時振戦、筋固縮、体幹傾斜・姿勢異常など、大脳皮質基底核症候群(CBS)の上肢のジストニア、失行、脊髄小脳変性症の失調性歩行、意味性認知症の児戯的(子供っぽい)行動なども記録してました。これらを記録し始めたきっかけとしては、今年の3月のCBSとPSPSの教育講演目的が大きかったと思います。歩行を記録しているうちに、PSPSの歩行はサブタイプによってすべて違う事がよくわかりました。PAGFタイプ(純粋無動症)のすくみはパーキンソン病のすくみを10倍強くしたというイメージですし、C(小脳)タイプの失調性歩行の左右のふらつきは、脊髄小脳変性症(SCD)のように見えます。今後もPSPSやPDの症例の歩行を記録し続けていきたいと思います。


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by shinyokohama-fc | 2016-09-20 17:55 | 治療

睡眠薬の適性使用について考える

先日、週刊現代の電話取材に応じました。「睡眠薬の過剰摂取と誤嚥性肺炎の関連」についての内容でした。
現在わが国で使用されている睡眠導入薬と呼ばれる薬剤の多くがベンゾジアゼピン系です。わが国では欧米の6~10倍ものベンゾジアゼピン系の消費量があるそうです。問題としては覚せい剤と同等の依存性と耐性化による増量であり、米国では法で禁止されている州があるくらいです。中でも特に我が国において、臨床医に繁用されすぎているエチゾラムはこのたび向精神薬に指定されることになりました。エチゾラムは内科医であれ、整形外科医であれ、あまりにも安易に処方されすぎる向精神薬であり、私が最も違和感を感じるのは神経内科医が緊張型頭痛、パーキンソン病や神経変性疾患に対して普通に処方している事です。たしかに筋肉の緊張を取る直接的な作用は確実であり、即効性があり、効いてる実感が感じられるので、人気があるのかもしれませんが、それこそが危ないところだと思います。私は過去にエチゾラム、或はその他のベンゾジアゼピン系抗不安薬、睡眠導入薬が誘因と思われる、呼吸抑制、ドパミン阻害作用により誤嚥性肺炎を誘発したというケースを数例みてきました。また最近ではパーキンソン患者において前医処方の眠前のエチゾラムを中止させて、喀痰貯留症状を改善させた事例があります。気管支喘息などの慢性呼吸不全患者に対してもベンゾジアゼピン系が普通に処方されている無神経さにも大変驚かされます。最近は使われなくなりましたが、今回の週刊現代の記事になった、古くから使用されているベゲタミンという配合剤に含まれているフェノバルビタールは呼吸抑制作用も強いのですが、未だに高齢者に使われている事例が散見させて驚きます。私のイメージではこのような呼吸抑制作用の強い向精神薬の処方件数が減れば、どれだけ誤嚥性肺炎というものが少なくなるのではないかという事です。とはいえ、一度前医でベンゾジアゼピン系などの向精神薬が処方されていれば、その薬を止めさせる事は容易ならざることであり、こういうケースは大変迷惑であり困ります。つい最近もフル二トラゼパムをずっと内服している、神経難病の方が、感冒から気管支肺炎になり、治るまで1か月近くかかったという事例がありました。
今後は向精神薬扱いではない睡眠導入剤が推奨されます。具体的にはゾピクロン、エスゾピクロン、リルマザホン、ラメルテオン、スボレキサントです。高齢者にとってより安全な睡眠導入剤の使用が望まれると思います。


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by shinyokohama-fc | 2016-09-13 19:25 | 治療

メコバラミン(ビタミンB12)の適量処方について考える

「週刊現代」が2か月前から現行の医療批判の記事を毎週特集しているようです。主旨としては無駄な薬物治療が多すぎるということで、有名なドクターのコメント付きで「不必要だ」と断じているようです。私は以前から必要最低限の処方を心がけているため、かかりつけ患者からの問い合わせなどは全くありませんが、実際はお薬手帳で他の医療機関を薬を確認すると目もくらむような多剤大量処方が少なくないので、初診患者には「これ以上追加で薬は出せません」と言わざるをえない事もしばしばです。私に転医したケースでは6~7種類程度削ることもザラです。
「週刊現代」の記事については6~7割程度は賛同できる部分もありますが、3~4割程度はそれぞれのドクターの個人的な主観による意見が散見され、中には過剰批判も存在するようです。今回の「100人の医者が答えた「本当は飲まないほうがいい薬」」という特集で、メコバラミン(商品名メチコバール)が入っていたことに驚愕しました。コメント医師は「大学病院 心臓外科講師」だそうです(苦笑)。まず心臓外科医がこの薬を批判するというのは、神経内科医が心臓手術について語るのと同じくらい滑稽だと言わざるをえないというのが、私の感想です。他の薬のコメントが、長尾和宏先生など名前と所属を明らかにしている中で、なんと匿名(苦笑).... 匿名のコメントなど何の説得力もないので、遠慮なく引用させていただくと「末梢神経障害の適応薬として、神経痛や手足のしびれに用いられていますが、効いているかどうかほとんどわからない。偽薬とまでは言わないが、プラシーボ効果だけを期待して処方している」このドクター以外にも薄々そう感じているドクターは少なくないのかもしれません。
20年以上神経内科に携わった医者として黙っていられず、メコバラミンに対する私見を書いてみたいと思います。
なぜプラシーボ呼ばわりされてしまうのか?それは末梢神経障害の治療としては保険適応で認められている用量が少なすぎるからです。ただし、この用量で効くと思われるケースも存在します。それは末梢神経の回復力のある比較的若年者で、まだ発症して数か月以内の、局所的圧迫による単神経障害のケースです。具体的には手のしびれの原因になりうる、手根管症候群、肘部管症候群、手の麻痺をきたす橈骨神経麻痺、足の麻痺をきたす脛骨神経麻痺などです。しかしこのようなケースでもしびれがきつかったり、発症からの期間が長ければ、本当に有効にするためには常用量の2~3倍(3~4.5mg)くらいは必要だと思います。実際私が診た症例ではそのようなケースがありました。
中高年以上、特に高齢者で長年患った、糖尿病による末梢神経障害や変形性脊椎症による神経根障害などでは、末梢神経が何年にもダメージを受けているので、メコバラミン1500μg(1.5mg)程度ではいくら続けても効くはずがないのではないかと考えます。神経内科で扱う、自己免疫性の短期間で全身の末梢神経が強いダメージを受ける「多発性神経炎」をきたす疾患も同様だと思います。これらのケースだとおそらく10倍(15mg)程度は最低必要ではないかと考えます。しびれに対しての対症療法の薬剤はプレガバリン、カルバマゼピン、デュロキセチン、トラマドール(注;オピオイドのため特に脳の衰えた高齢者には推奨できない。以前のブログ参照)などいろいろありますから、これらの薬剤との併用は一切せず、メコバラミン単独使用で効果があるか否かという臨床評価が必要です。NCS(神経伝達検査)による投薬前後の評価で証明されればなお信憑性が高まると思います。
昨年の新潟で行われた「日本神経学会」では徳島大学から「筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対するメコバラミン大量療法の有効性」についての大規模臨床研究の発表がありました。ALSという非常に機能予後の悪い疾患において、人工呼吸までの期間を大幅に遅らせるというものでした。結局実用化には至らなかったようで、個人的には大変残念に思いましたが、ALSという疾患は末梢神経ではなく中枢神経(運動ニューロン)の疾患だったという事が衝撃的でした。つまりメコバラミン(ビタミンB12)は末梢神経だけではなく、中枢神経疾患に効く可能性があるのです。メコバラミンの一番のアドバンテージは用量を増やして投与しても、重篤な副作用が現れない事です。ALSの大規模臨床研究では1回あたり50mgもの破格の用量を使用していて、この用量でも耐えうるというのは、増量に忍容性がケースが多すぎてよく問題になっているコリンエステラーゼ阻害薬とは天地の差です。神経内科に長年携わってきた1人としては、メコバラミンが中枢・末梢神経障害をきたす神経疾患において、用量の制限なく自由に使用できるようになるのが理想だと個人的には思います。「メコバラミンの適量処方を実現する会」というのが必要なのかもしれません。抗認知症薬とはまったく逆の意味にはなると思いますが。


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by shinyokohama-fc | 2016-08-11 13:39 | 治療

ガランタミンがPSPSに最適である理由

ガランタミンがPSPSの症例に著効するケースがある、リバスチグミン・ドネぺジルからガランタミンへの変更にて劇的に症状が軽快する症例が多くみられるというのは以前のブログで示した通りです。これらの臨床経験からガランタミンがコリンエステラーゼ阻害薬の中でも他の2剤とはかなり異質な薬剤であることがよくわかります。
ガランタミン投与前後の局所脳血流量(rCBF)をSPECTを用いて評価している論文があり、ガランタミン投与後には橋・中脳・小脳・視床・線条体・前頭葉・頭頂葉・側頭葉で投与前と比較してrCBFが有意に増加していると報告されています。最も血流増加しているのが視床で、中脳、橋、小脳、線条体、前頭葉、頭頂葉においても15~20%前後の顕著な血流増加が確認されました。要約すると大脳基底核と脳幹の顕著な血流増加作用があるとの事でした。大脳皮質のみならず基底核・脳幹・小脳など脳の広域にわたって血流増加があり、PSPSのような広域にわたる病変をきたして多系統で複数の神経症候を悪化させる疾患に対しては最適だと考えられるわけです。以前のブログでも書きましたが、リバスチグミンやドネぺジルのようなコリンエステラーゼの過剰阻害によるアセチルコリン過剰賦活によるドーパミン阻害作用が起こりにくい点や、ニコチン性アセチルコリン受容体の感受性増強により、この受容体を介する複数の神経伝達の亢進作用を有する点、ピックコンプレックスによる前頭葉症状(興奮、不安、異常行動)に対して効果を示す点などもPSPSの病態にマッチしていると考えられます。リバスチグミン・ドネぺジルでは前頭葉の血流を過剰増加してこれら陽性行動心理症状を悪化させうるという事は実際に私が経験した症例で数多くみられました。PSPSのような複雑な病態では多方面にほどほどに作用する薬剤が最適であり、先のブログでふれた、3系統神経伝達物質補充療法においても、レボドパやドロキシドパに比べて重要なキードラッグになると考えられます。
ただしPSPのように神経変性が急速に進行してしまう病態では、現行薬剤による対症的治療だけでは限界があります。前のブログで書いた、パーキンソン治療薬としてトライアルされているフェノール化合物の一部においては異常タウ凝集作用が報告されていて、このような病態の根幹に作用する薬剤の早期実用化が急務であると考えます。


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by shinyokohama-fc | 2016-08-08 18:07 | 治療

パーキンソン病最新治療薬(治験段階)

パーキンソン病、レビー小体病に対して海外では現在において様々な薬剤が臨床治験されています。
1)ミトキノン(フェーズ1)
ミトコンドリアの膜表面で酸化ストレスを防ぐ
2)N-アセチルシスティン(フェーズ2)
脳内・血中のグルタチオンを増加させ、活性酸素の障害作用から細胞を保護する
3)イスラジピン(フェーズ3)
L型チェネルアンタゴ二ストで細胞内カルシウム流入を阻害して、神経を保護する
4)GM1ガングリオシド(フェーズ2)
神経細胞の表面に存在する物質で、障害されたニューロンを修復する
5)デフェリプロン(フェーズ2)
過剰な鉄を除去することで細胞を保護する
6)二ロチニブ(フェーズ1)
チロシンキナーゼ阻害薬、αシヌクレインに対するオートファジーによる分解を促進
7)ワクチン/PD01A、PD03A、PRX002,PRX003(フェーズ1)
αシヌクレインに対する能動免疫・受動免疫を用いる
我が国においても、金沢大学神経内科でポリフェノール・フェノール化合物がin vitroで濃度依存的にαシヌクレイン・オリゴマー形成を抑制し、同時にシナプス毒性を軽減したという報告がありました。ここで使用されたフェノール化合物は5種類で、ミリセチン、フェルラ酸、ノルジヒドログアイアレイン酸、クルクミン、ロスマリン酸でした。
現在行われている、パーキンソン病、レビー小体病の薬物治療には非常に課題が多く、神経にダイレクトに作用するために、神経系の副作用が非常に多い事が問題であり、多剤大量処方によって、若年性パーキンソン病の症例で薬剤性幻覚、認知症、せん妄、舞踏病不随意運動などを誘発された症例も数多くみられました。多剤大量処方を好む臨床医が少なくないのも問題であり、明らかに薬剤によって病状が著しく悪化している症例が多いのが現実です。上記のような病態の根幹に作用する根治的な薬物治療の早期導入が望まれます。
8月20日の第2回フェルラ酸研究会において、多剤大量処方で病状が著しく悪化した悲劇的な症例をいくつか紹介します。興味のある方はぜひお越しください。


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by shinyokohama-fc | 2016-07-30 10:10 | 治療
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