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パーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬?(2)

コリンエステラーゼ阻害薬に様々な副作用、有害事象があるという事実は、これまでの過去のブログで書いてきたとおりです。副作用を軽減するという観点でいうと、アセチルコリン賦活作用が他の2種類よりも1/18~1/20程度と言われていて、他の神経伝達物質とのバランスを崩しにくいガランタミンが最も無難に使用できると思われます。
以前の内容の繰り返しにはなりますが、コリンエステラーゼ阻害薬にはさまざまな副作用が報告されていますが、主に問題になるのは以下のものです。
1) 徐脈性の不整脈、脈拍が30~40回/分という高度の徐脈に至り、心停止の危険性。
2) QT延長症候群、心電図でQT時間が延長している状態では、心室性不整脈を誘発して、心停止の危険性。
3) 食欲低下・吐き気、食事が食べられなくなって体重が減少して体力が低下して衰弱。
4) 頻尿、トイレに何度も行く
5) 動作・歩行能力低下、嚥下障害
6) 易怒・興奮性・常同行動悪化
近年、パーキンソン病の非運動症状が問題にされクローズアップされていますが、特に問題になるのが、自律神経不全症状と精神不安定症状です。
A)自律神経不全症状
自律神経は血圧や体温、内臓の働きなどを調整する神経で、活動する交感神経と休息する副交感神経が上手く切り替わらず、さまざまな身体的不調をきたします。MIBG心筋シンチグラフィーで証明されているように、心臓の自律神経が障害されてしまうため、血圧・脈拍がコントロールできず不安定になって血圧・脈拍が上がったり、下がったりする。特に立ち上がった時や食事後に血圧が急激に下がって気を失いそうになるなど。また体温調節の異常によるうつ熱、消化管運動能力の低下による便秘、膀胱を動かす運動能力低下による頻尿などが問題になります。
2) 精神不安定症状
もともと幻覚・妄想、抑うつ・不安神経症、などがみられますが、病気が大脳の前頭葉や辺縁系に影響を及ぼすために、この程度が強い事例では、易怒・興奮・精神錯乱などがみられることもあります。特にドパミン・アゴニストやその他の治療薬でこれらの症状が増強している状況があります。
以上でお分かりであろうと思いますが、元々、動作歩行能力が低下し、自律神経症状があり、精神症状のあるパーキンソン病に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬の追加処方は、時として火に油を注ぐようなものになりえます。
コリンエステラーゼ阻害薬を処方できるパーキンソン病というのは、動作歩行能力が低下していない(ヤール1~2度)、自律神経障害が少ない(血圧変動がほとんどない)、精神症状が少ない、という事例に限られるのではないかと思われます。そういう事例でも時間の経過とともに、病気が進行して運動症状、自律神経症状、精神症状が強くなっていくと推定されますので、いずれ安全に継続服用するのが難しい状況におかれるでしょう。
一般的にコリンエステラーゼ阻害薬の効果は1~3年程度しかもたないと言われていますので、特に75歳以上の高齢発症で、病気の進行が速く症状が重い事例では、パーキンソン病の諸症状をむしろ悪化させたり、副作用リスクの高い薬をわざわざ使う必要があるのか?と考えると強い疑念があります。
どうしてもコリンエステラーゼ阻害薬を使うと言うのであれば、リバスチグミンを1.125mg~2.25mg/日、ガランタミンを2~4mg/日、ドネぺジルを0.5~1mg/日程度でしか安全には使えないのではないでしょうか。
教科書に書いてあるパーキンソン病という病気の解説には、必ずアセチルコリンとドパミンの天秤の絵の解説があって、ドパミンよりもアセチルコリンが過剰になっているとされています。私が神経内科医になったばかりの時代は抗コリン剤がよく処方されていたほどです。コリンエステラーゼ阻害薬というのはアセチルコリンを増やす薬で、その真逆の作用です。アセチルコリンが過剰になっている状態にさらに上乗せする意味があるのか?ということになりますが、もし意味があるとすれば、それはドパミンを増やす薬を過剰に投与しすぎた場合に限られます。コリンエステラーゼ阻害薬を使おうと考える前に、まずはドパミンを増やす薬を減らすことを考えるべきだと思います。
当然ながらパーキンソン病にはコリンエステラーゼ阻害薬の適応はありませんので、上記のようなリスクとそれを冒してまで服用すべき必要性を十分に説明して同意を得る必要があるでしょう。適応外使用であることに関しても説明して同意を得る必要があるのではないかと考えるわけですが、実際に多くの患者さんたちは外来医からも薬剤師からもロクな説明を受けておらず、ただ訳も分からない状態で服用させられているというのが現実ではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2017-07-11 12:04 | 治療

パーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬?(1)

小生はパーキンソン病の関連学会に所属しているわけですが、学会ではパーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬を使用することを推奨しており、治療ガイドラインにもそう書いてあるようです。また、最近発行された、パーキンソン病の治療に関する専門書(医学書)にも、コリンエステラーゼ阻害薬を処方する症例報告が当たり前のように掲載されています。パーキンソン病のエキスパートを自称されている先生方も、「パーキンソン治療薬を3~4種類処方した症例で幻覚・妄想が出現した症例にコリンエステラーゼ阻害薬を追加して良くなりました。」と自慢気に発表されていました。実際に使われる薬剤は、リバスチグミンとドネぺジルのようで、なぜかガランタミンが選ばれることはないようです。
実際にコリンエステラーゼ阻害薬を使用する意図としては、パーキンソン病に伴う精神症状である幻覚(特に幻視)を抑制するという目的が多いようです。認知機能低下を遅らせるという目的の場合もあるようです。リバスチグミンは1日用量18mg、ドネぺジルは1日用量10mgで使うように推奨されています。
学会のエキスパートを自称する先生方の講演会によると、パーキンソン病を発症して10~15年経つと認知症になるというお決まりのスライドが提示されます。認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の診断基準では、簡易テスト(MMSE)が26点以下としているそうです。この基準はそれまでの認知症の診断基準よりもハードルが下げられています。この基準だとパーキンソン病を発症している75歳以上の患者の2/3くらいは自動的に「認知症」にされてしまいそうです。治療ガイドラインでは「認知症であれば、ドネぺジルを試みるように(グレードB)」と記載されています。確かに、神経内科の専門医は判で押したようにどんなパーキンソン病症例に対してもこの薬が試みられているのが現実のようです。私はこのやり方に懐疑的ですので、こういう処方を選択することはありません。
レビー小体型認知症(DLB)におけるドネぺジルの安全性評価(承認時)によると、パーキンソン治療薬を一切服用しておらず、介助を必要としない日常生活動作が自立したレベルの運動障害、重症度ヤール1~2(5段階で)に使用することが望ましいようです。薬剤性パーキンソニズムの原因薬剤リストにも入ってる薬剤でもありますので、それが当然だと思います。パーキンソン運動症状が軽度(ヤール1~2レベル)で比較的若年(50~65歳)のレビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン運動症状が重度(ヤール3~5レベル)で発症10~15年経過した老年(75歳以上)の認知症を伴うパーキンソン病(PDD)がいつのまにか一緒くたにされてしまっている??というおかしな現実があるようです。
学会では「PDDとDLBは同じ神経病理だ」と言われますが、はたして同じ神経病理だから同じ病気なのでしょうか?死後の病理組織の所見だけで病気のすべてが説明できるわけではありません。神経の学会というのはとかく「病理至上主義」になりがちで、それが強く反映されたのが、多系統萎縮症(MSA)という病名の誕生です。それまで、別々の診断名であった、小脳症状が主体のオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)とパーキンソン症状が主体の線条体黒質変性症(SND)、自律神経症状が主体のシャイドレジャー症候群(SDS)を、同じシヌクレインが脳にたまる病理だからという理由で一緒くたにされてされてしまったという歴史があります。近年は学会においてエキスパート専門医を自称する先生方はPDDとDLBも同じ病名(レビー小体病)にしてしまおうという動きがあるようです。しかし、実際の臨床では前者(PDD)は発症して5~10年が経過し、パーキンソン治療薬が4~5種類てんこ盛りにされていて、ヤール3~5度です。当然治療薬過剰処方によって誘発されている幻覚・妄想もあります。後者(DLB)は発症して2~3年で、パーキンソン治療薬は全く処方されていない状態で幻覚・妄想があり、ヤール1~2度、やや動作が遅く歩きにくいという程度です。これだけ薬の使用状況が異なるにもかかわらず、これらは「同じ病気」と言えるのでしょうか?
ドネぺジルの安全性評価を見る限り後者(DLB)はともかく、前者(PDD)には果たして適応はあるのでしょうか?
今から約10年前にヤール3度のPDDの70歳男性にドネぺジル3mg/日で使用していました、認知機能は使用後からすぐに改善したのですが、ドネぺジルを4~6か月継続した時点で動作歩行レベルは明らかに低下しており、転倒による怪我が増えてしまいヤール4度になってしまったことがありました。また2年前にヤール3度のPDDの65歳女性にリバスチグミン18mg/日で使用していました。規定通り1か月ごとに4.5mg→9mg→13.5mg→18mgと増量していきました。その1か月後から、体幹の前屈と傾斜という姿勢異常が強くなり歩行時の姿勢保持が困難になり、やはりヤール4度になりました。これらの2つの事例を見てもわかるように、PDDに対してはドネぺジルやリバスチグミンを現在の推奨されている用量で使うというのは非常に難しいと言わざるをえないでしょう。
最近はリバスチグミンを非常に多くの症例で使用されている先生が、「パーキンソン病にリバスチグミンを少量で使えば、歩行が改善する」と言われていましたので、小生が診ている5つの症例で1日用量2.25mg~4.5mgで使ってみました。結果は2勝3敗。残念ながら、むしろ歩行障害や姿勢異常が悪化した症例が3例もありました。
パーキンソン病、特にPDDでは、視床のアセチルコリン神経(チャンネル6)が減少しているので、姿勢保持が悪化して転倒しやすくなるという仮説があります。リバスチグミンは脳幹網様体には有効に作用しても、ガランタミンのように視床には有効に作用しないようです。コリンエステラーゼ阻害薬の反応性を観察するかぎり、PDDとDLBではアセチルコリンとドパミンの相対的バランスは明らかに違っているのは間違いないでしょう。アセチルコリン神経系の障害や局在部位には症例によって明らかに差異がありますので、「死後の病理所見が同じだから、同じ薬を使え」という理屈は到底通らないのではないでしょうか?
臨床よりも病理偏重である診断名は混乱を招きます。「レビー小体っていったい何ですか?」というのが多くの一般人のうける感想ではないでしょうか?またレビー小体とパーキンソン病の因果関係は解明されておらず、レビー小体はパーキンソン病の原因なのか結果なのかは不明。レビー小体だけがパーキンソン病の原因とは特定できず、ミトコンドリアが原因であるという仮説も有力ではあるが、現在研究中のようです。そういう専門家にしかわからないような病名、特に患者さんの立場からわかりつらい病名というのは適切ではないと思われますし、まったく臨床像が異なる病気を一緒くたにしてしまうのは誤解を招くのではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2017-07-10 12:36 | 治療

パーキンソン病で必要性の高い薬、レボドパとアマンタジン

昨日、神経が専門でない一般臨床医の方々から、パーキンソン病の薬に関する質問がありました。
「レボドパ500mgとゾニサミド50mg服用しているパーキンソン病の患者さんで、ジスキネジアがひどかったので、ゾニサミドを中止して、アマンタジンを開始して150mgまで増やしたらジスキネジアが多少軽減しました。ジスキネジアを抑えるよい方法はないでしょうか?」
「現状ではジスキネジアを抑える方法としては、レボドパの服用方法を工夫する以外は、アマンタジンを使うという方法しかないと思います。ただし200~300mgだと幻覚・妄想など精神症状が出る場合があるので、150mg以下で維持するのがいいと思います。」と私は返答しました。ジスキネジアに対するアマンタジンの効果は60%程度で、1年継続後になると50%程度と言われています。レボドパ・アマンタジン以外の薬はすべてジスキネジアを悪化させる(例えばセレギリン)と言われているので、それらの薬を使用している場合は順次中止していくのが良いと治療ガイドラインでは言われています。
また別の臨床医の先生からは「パーキンソン病の治療薬で優先順位をつけるとすれば?」と訊かれました。誰もが知りたい質問のはずですが、これまで25年神経内科医をやっていて、おそらく初めて訊かれた質問だったのですが、やや悩みながらも以下のように回答しました。
1) レボドパ
2) アマンタジン
3) エンタカポン
パーキンソン病の動作歩行障害にはレボドパが欠かせない薬であるというのはおよそ万人が一致する意見だと思います。レボドパはアミノ酸で自然物質に近く、パーキンソン病治療薬の中で最も副作用の頻度が少ないというのが現実だと思います。90歳を超えた症例でも少量であれば安全に服用できて、かつ有効性が高いわけです。神経毒仮説については賛否両論があるのは事実ですが、私の考え方としては「その患者にとって必要以上の用量を処方すれば、神経毒として作用する」というものです。それは最近診察している患者さんからもはっきり見てとれるわけです。従来型のパーキンソン病(PD)ではなくて、パーキンソン病+認知症(PDD)・重症タイプの症例については、レボドパの必要量は100~200mg程度が適量だと考えています。1日量300mgになると幻覚などの精神症状が誘発されることがほとんどです。従来型のPDでも1日量600mgを超える量を継続すると高率に精神症状が出ると思います。特に高齢になればなるほどその可能性は高まると思います。
アマンタジンについては、レボドパの長期連用に伴って現れてくる、ジスキネジアを抑制できる唯一の薬としての重要性だけではなく、最近増加していると思われる、PDD・軽症タイプや高齢発症のPDに対して有効かつ副作用がでにくく使いやすい薬だという事です。ただし必要量は50~150mgになります。高齢者の場合は腎機能障害の問題があり、200mg以上を長期に継続すると、代謝されにくいので副作用が出やすくなるわけです。
エンタカポンについては、レボドパの効果を30~60分延長するための薬としての存在意義があります。言わばレボドパの補完的な位置ですが、レボドパという薬のもう1つの問題が、5~10年服用を継続することで、約半数程度にみられるウェアリングオフ現象(レボドパの効果が服用後2時間程度で切れてくる)の問題があるため、長期罹病者で必要になるケースは出てきます。高齢者でも安全に服用できるというのがいいのではないかと思います。
ドパミン・アゴニストなど他の薬がベスト3に入らなかった理由は、これまでのブログで詳しく書いてきたように、メリット以上にデメリット(副作用)の部分が大きく、特に高齢者に忍容性が低く、副作用による減量・中止を余儀なくされる薬が多いというのが実情だからです。
パーキンソン病患者さんのメインの年齢層が75~85歳が中心で、80歳以上の年齢層も多いという実情を考慮すればこの3種類の薬が中心にならざるをえないのではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2017-06-26 13:24 | 治療

ドパミンアゴニスト徐放剤+ゾ二サミドが高率に精神症状を誘発

これまで当院へ来られるまでに、深刻な精神症状 (現実味を帯びた幻覚、被害妄想など)をきたしていた方々の多くが、内服薬のドパミンアゴニスト徐放剤 (ロピニロール、プラミペキソール)と抗てんかん剤のゾニサミドを服用していました。多くのケースではドパミンアゴニスト徐放剤 (1日1回の服用薬)を増量する段階で出現しているようです。ゾニサミドは1日50~100mg程度のことが多いようです。それぞれの薬の特色については、以前の2つのブログにくわしく書いてありますので、ご参照ください。
おそらくこの2つの薬剤に関しては、手のふるえに対して効果があるという学説や論文などが多くを占めているので、専門医から処方される傾向があるようですが、手のふるえが軽くなる代償として、ひどい精神症状によって当人は精神錯乱状態となり、家族に多大な迷惑をかけているケースが数多くみられます。手のふるえを軽くするための治療としてはあまりにもハイリスクすぎないかと思います。もちろんこの2種類の薬を同時に併用しても、ドパミンアゴニスト徐放剤を増量しても精神症状が現れない幸運な人もいるとは思いますが、精神症状が出てしまう人は本当に深刻です。最近、患者さんのご家族による当院へ来院前の精神錯乱状態に関する詳細な記録を拝読する機会があり、胸につまるものがありました。ドパミンアゴニスト徐放剤とゾニサミドが使われるようになってから、深刻な精神錯乱レベルの副作用の事例が増えてきたのは、間違いないでしょう。以前「麦角系」のドパミンアゴニスト(ブロモクリプチン、カベルゴリン、ぺルゴリド)を主として使っていた時代はこのような深刻な精神症状をきたす事例は経験も見聞もしなかったように思います。また「非麦角系」のドパミンアゴニスト(ロピニロール、プラミペキソール)が登場した後もそれほどでもなかったと思います。やはり内服薬のドパミンアゴニストが速放剤から徐放剤に変更されてからではないかと思います。私が思うに、欧米人と日本人は明らかに体格・体質が違いすぎるので、 製薬会社主導ではない、大規模臨床試験を実施して副作用を再検証する必要があるのではないかと思います。
神経学会のパーキンソン病治療ガイドラインによると、幻覚・妄想の治療アルゴリズムというのがあり、直近に加えた薬物を中止するようにという指針があり、もちろんドパミン・アゴニスト、ゾニサミドも含まれています。
薬によって副作用が出てしまうのは仕方がないにしても、明らかに深刻な薬の副作用が出て、精神錯乱状態になっているのにもかかわらず、減量しない、中止しない、強制的に続行するという外来医の姿勢に問題があります。
患者側には「拒否権」があります。「ドパミン・アゴニスト、ゾニサミドを開始・増量してから、明らかに幻覚・妄想が出現している場合」に関しては、減薬・中止してもらうように申し出るべきでしょう。外来医は診察室のたかだか1~2分のごく短時間の患者さんの姿しか見ていないので、いかに深刻かを実感できない場合が多いようです。
「パーキンソン病」と診断されたはずの患者が、治療薬が開始されてから、幻覚、妄想、精神錯乱状態に至ってしまうと、なぜか途中から「レビー小体型認知症」にされてしまうというパターンがあまりにも多すぎて、失笑を禁じ得ないというのが私の感想です。「レビー小体型認知症」という病名を途中からわざわざ持ち出す真意はいったい何なのか?専門医による「レビー診断病」に決して騙されないようにしましょう。
個人的にはドパミンアゴニストについては、最初から徐放剤を使うべきではなく、まずは速放剤で2~3か月経過をみてから、徐放剤に変更する、安易にゾニサミドを併用しない。というのがおそらく無難な使い方ではないかと思います。そもそもレボドパを3回以上服用する場合は、ドパミンアゴニストも速放剤のまま1日3回で十分ではないでしょうか?わざわざ精神症状の危険をおかしてまで徐放剤を使う意義があるのか?とすら最近は感じています。
欧米人にはそうではない薬でも日本人にとっては超劇薬。そういう事は珍しくないと考えるべきでしょう。
体重80~90kgの60歳の欧米人と体重30~40kgの80歳の日本人に同じ処方をしようとする事が、そもそもおかしなことではないでしょうか?常識的に考えれば、そんな当たり前のことは誰でも理解できるはずです。


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by shinyokohama-fc | 2017-06-12 12:36 | 治療

パーキンソン病に処方してはいけない薬、エチゾラム&ゾルピデム

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬、特にエチゾラムは、70歳以上の発症して5年以上経過した、ヤール3度以上のパーキンソン病患者には処方してはいけないと考えます。理由は2つあります。
理由その1、パーキンソン治療薬の効果を妨害することが多い
理由その2、依存性・増量により呼吸抑制、誤嚥による肺炎を誘発しうる
1年前に外来で診ていた患者で、パーキンソン病ヤール3度、72歳男性。発症8年目。レボドパ・カルビドパ300mgとモサプリド15mgを続けていました。
前医で長期にエチゾラムが眠前処方されていて、夜間の唾液~喀痰貯留、呼吸困難があったため、エチゾラムを中止して、非ベンゾジアゼピン系睡眠導入薬に変更したところ、夜間の症状はなくなったようです。
エチゾラムを高齢者になるまで長年処方されている方で、何らかの脳疾患(脳梗塞、脳出血、パーキンソン病など)70~80歳で深刻な誤嚥性肺炎を起こすケースが多いようで、私もこれまで10例前後は経験しています。
それゆえエチゾラムという薬は私は自ら新規処方を開始しない薬です。この薬は筋緊張を緩めるために、パーキンソン病患者にとっては癖になりやすい薬です。ただし薬物依存性が非常に高く、エチゾラム信者になってしまう。最もやめにくい薬です。今年、この薬がようやく処方制限が出ました。今までなぜ放置されてきたのか?と思います。
エチゾラムは飲み始めたら最後、処方し始めたら最後という薬だと言っても過言ではないでしょう。慢性頭痛に筋緊張型頭痛という頭頸部の筋肉の収縮性の頭痛をきたすタイプの頭痛に対しても、安易にエチゾラムを処方する神経内科医がいるようです。海外の常識からすれば考えられないことで、「日本の薬の常識は世界的に非常識」と言えるでしょう。米国では州によっては禁止薬物に指定されている薬が、日本では普通に処方されているというのはどうなのか?と疑問に感じることがしばしばです。
薬物依存を専門に研究している専門家によると、抗不安薬・睡眠薬で問題薬物ベスト6は以下のとおりです。
1) エチゾラム 2) フルニトラゼパム 3) トリアゾラム 4) ゾルピデム 5) べゲタミン (クロールプロマジンとフェノバルビタールの配合剤、特にフェノバルビタールが問題) 6) 二トラゼパム
べゲタミンは特に致死率・死亡率がきわめて高く、自殺企図と肺炎が多いそうです。おそらくクロールプロマジンとフェノバルビタールはどちらも危険な薬ですが、併用というのが神経伝達物質に非常に悪影響を及ぼすのでしょう。
ゾルピデムという薬は、超短時間型の睡眠導入剤で、他のベンゾジアゼピン系睡眠導入剤に比べて、翌朝に持ち越さない、筋弛緩作用が弱く、ふらつきによる転倒イベントが少ないなどの利点が強調されていたため、私も数年前までは処方していました。一時期はこの薬を処方させるためのプロパガンダではないかと思えるくらい、過剰ともいえるベンゾジアゼピン系薬バッシングみたいなムーブメントがあったのを記憶しています。
しかし、この2~3年は、70歳以上のパーキンソン病の患者さんにおいて、他医にてゾルピデムが処方されて、幻覚やせん妄が悪化したり、レム睡眠行動異常が悪化したりという事例が続出しました。これまで他のベンゾジアゼピン系の睡眠薬やゾピクロンではそのような精神症状の副作用は1例もなかったため、非常に驚きました。
パーキンソン病患者の場合は、レム睡眠行動異常が高い確率で併存している、すでにレボドパなどドパミン作動薬を服用している、睡眠覚醒リズムの異常がみられるなど特別な問題があるため、一般よりも幻覚、せん妄などの精神症状が悪化しやすいようです。私がこれまで診てきた、ゾルピデムを服用していた、パーキンソン病患者さんについてはすべての症例でゾルピデムを中止させて、ラメルテオン、少量のプラミペキソール、ゾピクロン、エスゾピクロンなどに変更することによって、精神症状は消失しているようです。


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by shinyokohama-fc | 2017-06-08 18:46 | 治療

パーキンソン病治療薬の効果を邪魔する薬、酸化マグネシウム (マグミットなど)

パーキンソン病という病気は、動作歩行などの運動症状が現れる、何年も以前から「便秘」の症状が現れる患者さんが多く、パーキンソン病の患者さんの多くは、すでに2~3種類の消化器系の薬剤を服用していることがほとんどのようです。前回のブログでも書きましたが、異常たんぱく質が早期から延髄背側核に問題を起こしますので、その影響で消化管(胃腸)の運動が悪くなると言われています。
便秘への一般的な対処法としては、1日3食で生野菜を食べて十分な食物繊維を取り、食事の時と服薬の時にコップ1杯以上の飲料水を飲むことが推奨されていますが、それでも不十分な頑固な便秘に至る場合が少なくないようで、実際は緩下剤というのが必要とされます。モサプリドはセロトニン受容体刺激により消化管の運動機能を改善する作用があり、神経内科医のパーキンソン病処方においてはかなりの確率で処方されています。長期に服用すると肝機能障害の恐れがあると書いてありますので、モサプリドを服用している方は定期的な血液検査で肝機能が正常範囲かどうかのチェックが必要になりますが、私の経験ではこの薬は概ね副作用が少ない良い薬で、パーキンソン病の自律神経症状である消化管運動障害には欠かせない薬だと言っても過言ではないと思います。
緩下剤として内科でもっとも頻用されている薬、それは酸化マグネシウムです。パーキンソン病患者でも非常によく使われています。しかし、この実際はレボドパというパーキンソン病の治療薬で最も大事な薬とこの酸化マグネシウムや制酸剤 (ヒスタミン受容体遮断剤・ファモチジンなど、プロトンポンプインヒビター・ランソプラゾールなど)が併用されているがために、レボドパの小腸からの吸収が著しく阻害(邪魔)されて、レボドパが脳に十分に到達しないという状態になります。そのためいくらレボドパ(ドパミンの前駆体)を服用しても有効に作用せず、必要以上にレボドパが600~800mgまで増やされてしまうという事が非常によくみられます。レボドパはアミノ酸でパーキンソン病治療薬の中では最も副作用が少ないのですが、400mg以上に増やすと副作用出現頻度が高まると海外の大規模臨床試験では報告されています。パーキンソン病病歴5年以上の患者さんの多くにとってレボドパは運動症状を改善する必要不可欠な薬ですので、その肝心の薬の効果が阻害されるというのはかなりシビアな問題になるのですが、レボドパとマグネシウムを同じ時間に服用している患者さんがどういうわけか非常に多くみられます。
私はパーキンソン病の患者さんには、原則的に酸化マグネシウムを処方しないようにしています。日本人にとっては緩下剤(便秘を解消する薬)としては漢方薬が最も合うということは確認されていますので、パーキンソン病患者さんに対しては漢方薬をファーストで使うべきだと考えています。ただし長年前医にてマグネシウムを処方されている患者さんについては、レボドパを服用して2~3時間後にマグネシウムを服用するように指示しました。そうすることによって発症後20年以上経過した患者さんにおいてもレボドパ(同じ1日量)の効果が著しく上がり、1日の動作レベルが向上したようです。
酸化マグネシウムは腎機能が低下した高齢者では、長期間服用を続けると、「高マグネシウム血症」を起こしやすいと言われています。それゆえ製薬会社からの以下のような注意勧告があります。
・処方に際しては、必要最小限の使用にとどめてください。
・定期的に血清マグネシウムを測定して、高マグネシウム血症の発症に十分注意ください。
・高マグネシウム血症の症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診するようにご指導ください。
①血清マグネシウム5.0mg/dl以上 ; 悪心、嘔吐、徐脈、起立性低血圧、筋力低下、嗜眠、倦怠感、無気力
②血清マグネシウム6.0~12.0mg/dl ; 房室ブロック、QT延長症候群、嚥下障害、筋肉麻痺、血圧低下
③血清マグネシウム18.0mg/dl以上 ; 昏睡、呼吸筋麻痺、血圧低下、心停止
①~②くらいの症例は、75歳以上でマグネシウムを長期服用している、体重30~45kg程度の虚弱な女性であれば、よく見かけるはずです。しかし血清マグネシウムが定期的に測定されているケースは残念ながら非常に希少のようです。以前のブログで何度も取り上げている、高力価・高用量のコリンエステラーゼ阻害薬 (リバスチグミン18mgやドネぺジル5~10mg)と併用していれば、相互作用増強で心臓不整脈のリスクが高まるでしょうし、レボドパ・ドパミンアゴニストなどパーキンソン治療薬が高用量で使用されていれば、低血圧による失神など自律神経不全の悪化のリスクが高まるであろうと推定されます。
パーキンソン病患者の高齢者で当たり前のようにどこでも使われている薬だからこそ、要注意なのだと思います。


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by shinyokohama-fc | 2017-06-05 19:07 | 治療

パーキンソン病治療薬の副作用の治療薬?ドンペリドン(ナウゼリン)

ドンペリドン(商品名:ナウゼリン)は長年制吐剤として、「悪心・嘔吐」に対して一般臨床医にとても頻用されてきた薬です。私自身も若い頃は、この薬の事をよく知りもせずに「先輩医が使っているから」という理由だけで処方していました。恥ずかしながら、この薬が「向精神薬」だという重大な事実を認識せずに使用していました。
気が付くきっかけは、ジェネリック推奨になった10年前でした。「ドンペリドン」という名前は「リスぺリドン」にそっくりだという事に遅まきながら気が付きました。リスぺリドン(商品名:リスパダール)はご存知のように、非常に強力な力価の「向精神薬・抗精神病薬」です。数年前に施設入所中の患者を診ていたときに、ひどい精神症状で介護困難であった高齢者症例に対して、当時紹介した精神科医からリスぺリドンが1~3mgで処方されてから、急激に動作歩行が悪化して、全身がガチガチに硬直してしまった症例が何名かいたのを覚えています。このときこの薬がいかに強力すぎる薬かを実感しました。仕方なく使うとしても頓服で使用すべきでしたが、ずっと連日服用していたのも問題だったと思います。それ以後は65歳以上の高齢者には自ら処方することはなくなりました。元々加齢に伴ってドパミン減少している高齢者が連日服用してしまうと、悲惨な転帰を招いてしまうということです。
神経遮断系の抗精神病薬に共通した、深刻な副作用として「心臓のリズム異常」が知られています。以前のブログにも何度か書いていたと思いますが、心電図のQT間隔が延長して、致死的な徐脈性不整脈、心室性不整脈を引き起こすということです。近年のことですが、2005年以後、カナダとオランダの疫学研究で、ドンペリドン服用者では、心臓の突然死が1.6~3.7倍も起こりやすいことが示されました。欧州医薬品庁(EMA)が2014年にドンペリドンを使用する際は「できるだけ投与量を少なく、使用期間を短くして使うように」というコメントがありました。フランスのプレスクリール誌は、ドンペリドンに関連したと思われる突然死が1年で100人前後存在すると推定されたため、ドンぺリドンを市場から撤去すべきだと提言したほどです。代替薬としては、プロトンポンプインヒビター(PPI)かメトクロプラミド(プリンペランなど)が推奨されています。以前は主に小児において脱水時に注射剤、坐剤の使用によるQT延長による突然死が、1982~1985年の3年間で17例報告され、7例は死亡しています。注射剤は販売中止になりました。高齢者、特に女性、パーキンソン病においてはフレイルで衰弱している患者さんが多く、常時脱水リスクがあり、その上に神経系の薬剤がいくつも多剤併用されている状況ですので、たとえ内服薬でもQT延長による突然死のリスクが高くなるのは間違いないでしょう。
明らかにリスクの高い薬剤の長期連用によって、原因不明の突然死、あるいは救急搬送されている事例は数えきれないほど存在すると推定されますが、「高齢だから仕方がなかったね」という事で闇に葬られているのではないか。
最近、パーキンソン病に長期罹患している高齢者75~80歳の患者さんの薬手帳をみると、判で押したように、ドンペリドンが処方されています。この1年だけでも10名程度はいたでしょうか?なぜこの薬を服用する必要があるのか?私には理解できなかったので、当然のごとくほぼ全例で減量~中止しましたが、特に中止して問題は起こっていないようです。神経学会作成の「パーキンソン病治療ガイドライン」によると、「ドンペリドンは脳内移行が極めて低いために、パーキンソニズムの発現・増悪頻度は極めて低いので、制吐剤として推奨される」と記載されています。元々、パーキンソン病という病気は、運動症状が発症する何年も前から、延髄へのシヌクレイン(病気の原因と推定されているタンパク質)蓄積による迷走神経背側核の障害があり、胃腸(消化管)の動きが悪くなる傾向があります。パーキンソン病治療薬としてよく使われる、レボドパやドパミン・アゴニストにも副作用として消化器症状があるため、いわゆる患者さんが薬を飲むのを嫌がらないため、副作用出現防止目的で処方される、典型的な薬剤カスケードの処方薬です。ご存知のように薬剤カスケードがポリファーマシーの入り口になります。初期の治療薬の導入時、2~4週間の期間限定であれば納得できますが、ありえないことに、このドンペリドンを何年も長期にわたって飲まされているのです。私はこのドンペリドンを長期間飲ませれている患者を診たら、まずは心電図の検査をします。それはコリンエステラーゼ阻害薬の場合と同様です。心電図のQT時間が0.47以上で黄信号、0.48以上で赤信号のレベルです。赤信号だと突然死につながる致死性不整脈のハイリスクレベルになります。
75歳以上の高齢者に対しては、安易に処方できる薬ではないことがわかっていただけるのではないでしょうか?また漫然とこの薬を継続されている場合は注意が必要です。どうしても継続しなければならない場合は、心臓不整脈による突然死のリスクに関して患者さん側に十分にインフォームドコンセント(説明)する必要があると思われます。
にもかかわらず、4~5年も無意味にこの危険な薬を継続する意味はいったいどこにあるのでしょうか?パーキンソン病を長年患っている高齢者はただでさえ、自律神経不全に至っているため、心臓突然死のリスクが高いです。それはMIBG心筋シンチグラムという検査ではっきりと証明されています。
余談ですが、コリンエステラーゼ阻害薬にもこの「QT延長症候群」という危険な副作用はよくみられます。原因薬剤を中止して2週間してから心電図を撮り直すと、QT時間は正常域に戻っています。
コリンエステラーゼ阻害薬 (ドネぺジル、ガランタミン、リバスチグミン)とドンペリドンあるいはリスぺリドンを心臓の弱っている高齢者に併用したらどうなるか? 低く見積もっても、1.6倍×1.6倍で2.56倍!!私自身はとてもそんな恐ろしい処方はできないと考えています。コリンエステラーゼ阻害薬による消化器症状(嘔気など)は実際言われているよりもはるかに少ないと思いますので、わざわざドンペリドンを併用する意味はないと思います。心臓突然死の安全性を考慮すれば、百歩譲ってPPIかメトクロプラミドの頓服用処方でしょうか?消炎鎮痛剤(ロキソプロフェンなど)に胃薬を併用するくらい意味のない処方だと思います。私は自験例においてドネぺジル、ガランタミンで消化器症状が出現した症例を検証してみましたが、他の医者による併用薬の影響、肝機能障害、腎機能障害でした。ただしガランタミンの場合は、むしろ緩徐な消化器症状によって、食欲低下~体重減少のほうが要注意のようです。そういう副作用を予防するために、心臓リスクを冒してドンペリドンをずっと併用してまでも、ガランタミンやドネぺジルを処方する意義がどれほどあるのかと考えるとはなはだ疑問だと思います。
ドパミン・アゴニストにも言えることですが、病気そのものの進行を止める効果があるわけでもない薬を、危険な薬剤カスケードをしてまでも無理に服用する必要があるのでしょうか?よくよく考え直したほうがいいでしょう。



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by shinyokohama-fc | 2017-06-02 12:13 | 治療

パーキンソン病治療薬の副作用(5)ドパミン・アゴニスト(後編)

ドパミン・アゴニストで最も多いのは、眠気・睡眠発作ではないかと思います。もともとパーキンソン病の方というのは脳幹網様体の障害に伴う睡眠覚醒リズムの異常があり、日中は眠く、夜間は眠れないという傾向があります。薬剤過敏性体質の方だと、レボドパでも眠気が誘発されるようですが、ドパミン・アゴニストは単独で開始量のごく少量でも強い眠気のため、継続が困難になりやすいようです。徐放剤に変更されてからはより眠気が起こりやすくなった印象がありますので、まずは最初に処方開始する場合は、速放剤で少量ずつゆっくり漸増したほうがいいのかもしれません。というのはある程度の期間服用したら、眠気がなくなるケースが少なくないからです。中でも「突発性睡眠(睡眠発作)」は危険で、もともと眠気を自覚したいないまま、突然眠り込むため、自動車運転や機械操作などで事故を起こす可能性があります。
また高齢者の場合は、心不全、悪性腫瘍など様々な事情で下肢のリンパ液の循環が悪くなっており、レボドパとドパミンアゴニストの併用で、下肢、特に膝から下の下腿がむくみ(浮腫)やすいようです。
ドパミン受容体は胃腸に存在しますので、ドパミン・アゴニストが結合することによって、嘔気(嘔吐)、食欲不振、などがおこりますが、この副作用は従来使用されていた「麦角系」よりも、現在使用されている「非麦角系」のほうが少ないようです。
起立性低血圧による、立ちくらみ、ふらつきもドパミン・アゴニストでよくみられます。レボドパと併用、薬の増量によって血圧変動が大きくなります。まずは寝ている状態で血圧を測定し、立ち上がってからの状態で血圧を3~4回測定します。通常は立ち上がった状態のほうが血圧が高くなりますが、起立性低血圧の場合は、3~5分程度血圧が15~20mmHg下がった状態で経過します。
このようにドパミン・アゴニストの副作用は多くみられ、非常に多岐にわたっているので、この薬を処方する前にはこれらの副作用に関して十分なインフォームドコンセント(IC)が必要であろうと言われています。しかし、実際はこれらの副作用に関して、患者さん側に十分に説明されていないことの方が多いようです。


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by shinyokohama-fc | 2017-05-29 15:52 | 治療

パーキンソン病治療薬の副作用(4)ドパミン・アゴニスト(中編)

私の経験では、ドパミン・アゴニストの副作用というのは多岐にわたりますが、どういう患者が副作用が出やすいのか?というのは予見が難しいのが現実だと思います。一般的な傾向としては、以下のような事例に副作用が出やすいのではないかと思います。
1) 高齢(70歳以上)での発症
2) 注意障害、遂行機能障害、記憶障害などを伴っている (一般的には「認知症」という)
3) 他の神経系作用薬の併用が多い (コリンエステラーゼ阻害薬、ベンゾジアゼピン系)
4) ドーパミン・アゴニストまたはレボドパの使用量が多い
5) 姿勢異常・姿勢不安定がすでにある
6) コリンエステラーゼ阻害薬か抗精神病薬を併用している
先のブログでも書いたように、当初ドパミン・アゴニストは当初は「麦角系」でしたが、この20年で時代とともに「非麦角系」が主流になり、1日3回の「速方剤」から1日1回の「徐放剤」に代わっていきました。皮肉なことにこの変遷が、ドパミン・アゴニストの副作用を増やしたのではないかと推定されます。20年前に「麦角系」を使用していた時期は、タリペキソールの嗜眠、ぺルゴリドの消化器症状(嘔気など)くらいではなかったかと思います。
最近、特に問題になっているのは、「姿勢異常」です。これは海外ではあまりに話題になっておらず、近年日本の臨床現場で、パーキンソン病にドパミン・アゴニストを使用している専門医の間で話題にされ始めました。パーキンソン病で日本で最も著名な先生が書かれた近著にも、「ドパミン・アゴニストによる姿勢異常」について明記されています。
新しい患者さんとして診る患者で、すでにドパミン・アゴニストが入っている方々にも、姿勢異常が数多く見られます。ドパミン・アゴニストを継続しているかぎり悪化していく傾向がみられるので、やはり減量・中止にするしか対応策がないと思われます。先のブログで述べたように、コリンエステラーゼ阻害薬でも同じような姿勢異常が数多くみられますので、併用するとかなりの確率で姿勢異常が現れるように感じます。
姿勢異常というのは主に以下の3タイプがありますが、多くは混合しています。
1) 体幹の側方傾斜(左右いずれかに傾く15度以上)、ピサ症候群 (ピサの斜塔になぞらえてこう呼ばれている)
2) 首下がり・首垂れ
3) 腰折れ・腰曲がり・体幹の高度前屈姿勢(45度以上)、カンプトコルミア
いずれも、動作や歩行速度はまったく落ちていない (パーキンソン病の必須症状である、「動作緩慢」は薬物治療が奏功して上手くいっている)のに、姿勢だけが外来で診るたびに悪くなっていく症例があります。
首下がりや腰曲がり姿勢が高度になっておこる二次的な問題としては、胃酸の逆流(逆流性食道炎)や腸管麻痺(イレウス)、嘔吐、誤嚥などのリスクが高くなることです。また起立・歩行時の転倒リスクが高まるために、我々臨床医としては、とても放置できない状況です。高齢(70~80歳)・認知症・多剤併用症例では特に要注意です。
しかし、ドパミン・アゴニストを減量・中止にすると、動きが悪くなることを予め覚悟しなければならず、一時期は動作障害を我慢していただいて、別の薬剤に切り替えるしかないと思います。このようなケースにおいて、どういう薬剤に切り替えればよいのかというのは、ガイドラインにも示されておらず、当然のごとくエビデンスどころか海外では話題にもされていないというのが現実です。治療を担当する医者の価値観や裁量に左右されざるを得ないのが現実です。その治療を担当している医者にとっても、それぞれの患者の脳内で神経伝達物質と受容体がどういう状態になっているのかがまったく見えていないですし、また1人1人の症例は同じ病気でも個別差が非常に大きくて違うので手探り状態でやっているというのが現実ではないかと思います。
ドパミン・アゴニストで姿勢異常が起こる理由は、現時点でまったく解明されていませんが、多くの症例で起こっているのは現実です。なるべく早期に気が付いて減量~中止して、他の薬剤に変更したほうがよいと言われますが、動作が悪化するので、実際に行うのはなかなか面倒です。
ある程度長期に服用しているケースでは骨変形が起こるため、修正が難しいようです。
以下は私の自験例です。私が診始めた時点ですでに前医でドーパミン・アゴニストが処方されていた症例です。
症例1)65歳女性。重度認知症を伴う症例
3~4年前に前医で、ビ・シフロール、ドネぺジルが処方されて、幻覚や精神錯乱状態となり、現在は中止されています。ご家族の希望で1年前から通院されています。幻覚や精神状態は安定していますが、特に立位・歩行時にひどい首下がりと腰曲がりが見られます。
現在の処方は、レボドパ/カルビドパ/エンタカポン配合剤(100mg)×3、 リバスチグミン4.5mg/日、リバスチグミンも姿勢異常を悪化させる傾向があるので、中止・変更を検討中です。
症例 2) 74歳男性。認知症なし
前医から紹介、すでに2年前から腰曲がりで前屈姿勢。前医処方は①レボドパ・カルビドパ(100mg)2錠、②ロピニロール速方剤(0.25mg)4錠・分2、③トリへキシフェニジル(2mg)1錠。
③は中止して、②を徐放剤へ変更、2mgから1か月ごとに2mgずつ増量して8mgで約1年間維持。動作は格段に速くなりましたが、前屈姿勢が悪化し、両下肢の浮腫もひどくなったので、一時ロチゴチンへの変更を試みたが、上手くいかず、結局①を300mgに増量して、ロピニロールは2mgずつ段階的に減量して最終的に中止としました。
主に神経内科医が行っている、パーキンソン病の薬物治療というのは、精神科のそれと同じで、実際には全く見えていない、患者の神経伝達物質のバランスや受容体の状態を推測しながら、神経に作用する薬をいくつか処方するという点で難しさがあります。


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by shinyokohama-fc | 2017-05-26 10:35 | 治療

パーキンソン病治療薬の副作用 (3) ドパミン・アゴニスト(前編)

今回は、私が神経内科医の仕事を初めてから20年以上にわたって新薬が続々と登場した、ドパミン・アゴニストについて書いていきたいと思います。
ドパミン受容体を刺激する薬で、ドパミン神経細胞などに、ドパミンを受け取ったと認識させて、ドパミンの伝達をリレーするのを補助する薬と言われています。
神経系の薬剤において、一般的にこの「受容体に直接作用する」という薬は非常に曲者です。それは深刻な副作用をきたす可能性があるからです。この薬ほど、使う対象(患者さん)と使い方(用量)を間違うと、毒物に化ける薬はないのではないかと思います。「すべての物質は毒である。(中略)ある物質が毒になるか薬になるかは用量による」という、ギリシャ時代の薬物学者・軍医、ディオスコリデスの書いた「薬物誌 (マテリア・メディカ)」に書かれている有名な一文に最も当てはまる典型的な薬、それがドパミン・アゴニストです。
最近、パーキンソン病のエキスパートと呼ばれる専門医による書籍を拝読したり、講演を聴講したりしましたが、この薬はとにかく精神系の副作用が多いということで意見が一致していました。5~10年前まではこの点はほとんど強調されていませんでしたが、実際の臨床現場でこの薬を使ってみると、誰もが副作用の多さに驚くのではないかと思います。一時期はアパシーや抑うつ状態を改善させるという、メリットばかりが強調されていた時期がありましたが、先発品の特許期間が続々と切れるにしたがって、近年は明らかに風向きが変化してきたのを感じます。
もともと、ドパミン・アゴニストは「麦角系」というエルゴタミンが入ったタイプの薬剤が使われていました。ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン、タリペキソールなどです。しかしこれらの薬を特に高用量で使用して、エルゴタミンの血管収縮作用が長期になると、心臓弁膜症、肺線維症、後腹膜線維症に至ることが海外で報告されました。またぺルゴリドについては、海外で発がん性が指摘されており、米国のFDAでは何年も前に発売禁止となり、製薬会社も販売権を放棄したほどです。そのような事情があって、エルゴタミンを含んでいない、「非麦角系」というタイプのドパミン・アゴニストが開発されました。それが、プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチンです。しかし実際に使ってみると「麦角系」以上に副作用の出現頻度が多いようです。開始時から副作用が現れやすいため、少ない用量から少しずつ増やすことになっていますが、開始量でも精神系の副作用が現れやすいようです。実際に最も多い副作用は眠気で、高齢者になると幻覚、せん妄に至るケースが多いようです。初めてこの薬を使う患者さんでも、開始量ですぐにこの薬の使用を断念せざるをえない症例は半数以上になると思います。私が診る以前から、すでにプラミペキソール、ロピニロールが使われているケースでも、特に70歳以上の高齢者では、ひどいせん妄になっていて、まるで「レビー小体型認知症」のようになっています。多くは「レビー化だ!」と診断されて、ドネぺジルが追加されていますが、まったく効果がないばかりか、むしろせん妄が悪化していることが大半です。以前のブログでも触れていますが、これが専門医による「レビー診断病」です。レビー診断病の多くの症例では、ドパミン・アゴニスト以外にも、ゾニサミド、セレギリンが併用されていて、深刻なせん妄に陥っている悲惨な症例も数多く診てきましたが、今回はレボドパにドパミン・アゴニストの併用で幻覚が出ていた症例について紹介します。
81歳女性、数年前に脳卒中の既往があるが、明らかな片麻痺は残っていません。動作歩行困難が年々悪化してきたので、前医処方でレボドパ・カルビドパ100mg×4回、プラミペキソール徐放剤0.375mg×3錠/1回、ドロキシドパ100mg×3。10年ほど経過した姿勢異常型のパーキンソン病の方ですが、最近幻覚がひどくなり、それに伴う妄想やパニックを起こすようになったとの事で、2か月前に小生のクリニックを受診されました。81歳というかなりの高齢でもあり、幻覚の悪化の主たる原因はプラミペキソール徐放剤と推定されたので0.375mg×3⇒2⇒1と漸減しました。0.375mg/日で幻覚は完全になくなりましたが、動作歩行が悪化したため、再び0.75mg/日に戻すと幻覚が再発。苦悩した上で、徐放剤を速放剤に変更し、0.125mg錠×2錠を1日3回に変更しました。プラミペキソールの用量は同じでしたが、幻覚は大幅に減少して、動作歩行レベルも維持されていました。あれだけひどかった幻覚は減少するにつれて顔つきもしっかりして受け答えができるようになったそうです。この症例はわかりやすくズバリと例えれば「ドパミン・アゴニストの過剰投与でレビー化していた、薬剤性レビー?の症例」と言えます。
幻覚と認知の変動 (その多くは薬剤性せん妄)が確認されるだけで、どんな症例でもすぐに「レビーではないか?」と安易な臨床診断名が連呼されている現状、臨床診断の質の低下もかなり深刻です。レビー小体が脳にたまっていなくても、幻覚や認知の変動が起こることは日常茶飯事にありますし、レビー小体がたまっているかどうかを検査で確定する手段も存在しないのに、そういう病名が安易につけられるのもおかしい。学会の作成した、パーキンソン病治療薬ガイドラインには、幻覚が出現したら、順次パーキンソン治療薬を減薬するように書いてあります。しかしここに書いてあるとおりに減薬する専門医は少ないようです。ほとんどの専門医は幻覚=レビー化、ドネぺジルを追加するという選択をするようです。負の薬剤カスケードの典型です。
ドパミン・アゴニストは、非運動症状である、アパシー(意欲減退)、アンへドニア(心地よい気持ちの減退)を改善する作用があると言われていますが、その反面、以下の精神系の副作用が問題になります。
1) 眠気・睡眠発作
ロピニロールに多いと言われていますが、他の2種類でもよく現れます。日中にずっと強い眠気がおこりますが、高齢者ではそれが高じて、意識もうろう、せん妄となり、昼夜逆転、睡眠覚醒リズムに異常をきたして、夜間にレム睡眠行動異常が悪化して不穏になるというパターンも目立つようです。
2) 幻覚・妄想・精神錯乱
プラミペキソールに多いと言われていますが、他の2種類でも現れます。本人に強い恐怖感とストレスを与え、時に家族に迷惑をかける場合は、ドパミン・アゴニストを含めて原因薬剤を順次減量していく事になっています。
特に注意すべき患者さんは、パーキンソン病を発症してから10年以上、70歳以上での発症、軽度認知障害がある、薬剤過敏体質、他に脳卒中の既往があるなどです。
3)ドパミン調節異常症
レボドパの精神刺激作用をさらに増強してしまうようです。レボドパを必要以上に求めるようになったり、病的賭博、ギャンブル、買い物・食欲亢進など、脱抑制行動が顕著に現れる場合があるようです。
レボドパの服薬量が多い上に、ドパミンアゴニスト服薬量も多い場合に起こりやすいようです。
ドパミン・アゴニストは今回取り上げた、精神系の副作用以外にも多くの副作用があります。近年はドパミン・アゴニストを処方する前にこれらの副作用の事を十分にインフォームドコンセント(IC)してから処方するようにと言われていますが、実際は副作用の情報提供はまったくと言っていいほど、患者側に与えられていないようです。これが医療側への不信感を抱かせる大きな理由ではないかと思います。
ドパミン・アゴニストにはまだまだ厄介な身体的副作用があります。後編でそれを解説したいと思います。


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by shinyokohama-fc | 2017-05-20 12:31 | 治療
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