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「失敗しない」高齢者のPDD(認知症を伴うパーキンソン病)の服薬とは

この数か月のブログのまとめになりますが、日常的に、高齢者(目安は70歳以上)のパーキンソン病(PD)、特に認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の服薬において、この1年間で他の医療機関での多くの失敗処方例を見てきて、感じてきたことをブログに書いてきました。「失敗しない」高齢者のPD,PDDの服薬とは何か?というテーマに対してある程度の結論に近いものがまとまったので、以下に箇条書きで示します。
ただし、これは学会の発表している「パーキンソン病治療ガイドライン」とは異なる内容であり、科学的根拠もエビデンス(EBM)もない、学術的実績もない一介の開業医の個人経験的なものにすぎず、学術的には何の意味もなさない内容であることをお断りしておきます。
「失敗しない」高齢者PDD(認知症を伴うパーキンソン病)の処方薬の原則とは、

1) アマンタジンは少ない量で服用したほうがよい、できれば増やさない
2) レボドパ配合剤は少ない量で服用したほうがよい、できれば増やさない
3) ドパミン・アゴニストは服用しないほうがよい
4) コリンエステラーゼ阻害薬は服用しないほうがよい
※ アマンタジン(シンメトレル)
※ ドパミン・アゴニスト;プラミペキソール(ビ・シフロール、ミラペックス)、ロピニロール(レキップ)、ロチゴチン(ニュープロ)、カベルゴリン(カバサール)、ブロモクリプチン(パーロデル)、タリペキソール(ドミン)、ぺルゴリド(ペルマックス)
※ レボドパ配合剤; レボドパ/カルビドパ(メネシット、ネオドパストンなど)、レボドパ/ベンゼラシド(マドパー、イーシー・ドパール、ネオドパゾールなど)
※ コリンエステラーゼ阻害薬; ドネぺジル(アリセプト)、リバスチグミン(リバスタッチ、イクセロン)、ガランタミン(レミニール)

いろいろ試してみましたが、PDDに最適なのは、アマンタジンとレボドパ配合剤の併用ですが、PDDの初期、軽度の場合はアマンタジンだけでも著効する場合が多いようです。レボドパだけだとたとえ少量(100~150mg)でも日中の眠気が強くなり、覚醒度が悪くなる、効果が乏しいケースが多いようです。アマンタジンを50~150mgの範囲では、単独使用では他の治療薬でみられるような幻覚、妄想、錯乱、日中の過眠、せん妄、などはほとんど見られません。精神症状が出るのは200~300mgだと推定されますが、そこまで増やす事はまずありません。なぜなら50~150mgで著効するからです。
しかし、昨今の神経内科の臨床医の処方を見るかぎり、アマンタジンを使う臨床医はほとんどいないようです。失敗例のほとんどは、ドパミンアゴニスト・ファーストで開始されて、レボドパやら他の治療薬を2~3追加しても、ちっとも良くならず、認知症か精神症状が悪化してしまうケースがほとんどです。このような症例でもレボドパ配合剤以外の治療薬を漸減・中止して、アマンタジンに入れ替えると上手くいくようです。
パーキンソン病においては、コリンエステラーゼ阻害薬が前医で処方されている多くの場合、パーキンソン治療薬が3~4種使われた上にコリンエステラーゼ阻害薬が上乗せされるケースがほとんどですので、PDDにおいてともに枯渇状態にある上の、ドパミンとアセチルコリンなどの神経伝達物質の動向が、神経系薬剤の多剤併用(ポリファーマシー)によって非常に複雑で想定外の事が起こります。特に運動症状(特に姿勢異常)の悪化、精神症状の悪化などが高い確率でみられます。それをさらに薬で抑えようとするという悪循環に陥りやすいのです。
コリンエステラーゼ阻害薬を開始して2~3か月は調子よくても、数か月~半年くらい経過すると姿勢異常が悪化する症例がほとんどです。特にドパミンアゴニストとの併用ケースでは姿勢異常は必発と言ってもいいでしょう。
現状はドパミン・アゴニストとコリンエステラーゼ阻害薬は非常に好んで使われていますが、アマンタジンは全く使われていません。アマンタジンを開発した製薬会社も販売権を売り渡してしまったようで、この薬は完全に過去の薬扱いです。しかしパーキンソン病の年齢層のピークが統計によると70歳半ば~80歳であるという現実を考えると
PDD予備軍が今後増えることは確実であり、アマンタジンはむしろレボドパより重要な薬になってくるのではないかと考えています。
70歳の高齢で発症したパーキンソン病や長期間罹患したパーキンソン病は認知症に移行しやすいという事には異論はありませんが、高齢発症だから、長期罹患しているから、みな認知症に移行するのか?と言えばそれはNOです。
90歳で発症しても、20年以上罹患しても、認知症ではない、純粋なPDの症例も私は診ています。純粋なPDに対しては必ずしもアマンタジンは必要ではないと考えます。
認知症と精神症状(幻覚、妄想、錯乱)は比例して起こるのか?というとそれも違う事がわかります。認知症と言っても程度や質が様々であり、大脳皮質のどれくらいの領域・範囲のコリン作動性神経が障害されているのかによって全く症状が違ってきますし、精神症状に関しては(大脳)辺縁系のドパミンとコリン作動性神経の障害の程度に左右されると思われます。大脳皮質の神経障害が強くても辺縁系の神経障害が軽い場合は、認知症が強くても精神症状が目立たず、逆の場合は、精神症状が強くても認知症が目立たないという場合もあります。高齢者の場合はこのように症例によってヴァリエーションが非常に大きいという事もあり、ドパミン・アゴニスト、コリンエステラーゼ阻害薬のように受容体に強く作用する薬は忍容性に問題があるので、できれば避けたほうがいいというのが私の考えです。ドパミン・アゴニストもコリンエステラーゼ阻害薬も高齢者のPD、PDDに使うのは大変困難な薬だと言えます。「失敗しない」ためには、最初からこの2つの薬は使わないほうが賢明ではないかと思います。


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by shinyokohama-fc | 2017-10-13 12:42 | 治療

ドパミンアゴニストはPDDには百害あって一利なし

この1年はドパミンアゴニストでひどい副作用に至ったPDDの症例がクリニックに多数訪れました。1か月前に来られた、かなりひどかった症例を以下に提示します。
75歳男性、10年前から歩行障害で総合病院の神経内科へ通院。主な運動症状はすくみと加速・突進の反復歩行で筋固縮は軽度、静止時振戦(ふるえ)も軽度、自立歩行はできるので、ヤール3度でした。
一見、普通のパーキンソン病(PD)に見えたのですが、字を書かせてみて驚きました。住所を書いてみると漢字6文字書くのに3~4倍くらい時間がかかり、まともな字が書けず、神奈川の川の字を飛ばしてしまう状態でした。時計を描かせてみると、数字と数字の間隔がバラバラで、12という数字を2つ書くことになってしまいました。高額な核医学検査ではなく、こういった医者でなくてもできるような単純作業をやらせてみて観察する事が何よりも大事だと思います。もし可能であれば、診察に来る前に同居しているご家族が自宅で実践して、紙に書いたものと携帯電話で録画したものを診察時に提示してもらえれば診察の時間も節約できるのではないかと思います。

総合病院の神経内科医からの処方は以下のとおりでした。神経内科医の診療は1年に1回にされており、通常はかかりつけ医の診療所でまったく同じ処方されていました。
1) レボドパ・カルビドパ配合剤(100mg)3錠
2) トリへキシフェニジル(2mg)1錠
3) カベルゴリン(1mg)1錠
4) プラミペキソール(0.125mg)6錠
5) マグネシウム(330mg)6錠
6) ファモチジン(20mg)1錠
7) リバスチグミン(9mg)1枚/日

まず75歳にもかかわらず、3)4)と新旧のドパミン・アゴニストが2種類も処方されているのには驚きました。3)は旧型(麦角系)ドパミン・アゴニストの中では、心臓弁膜症の発症率が最も高いと報告されている薬で、4)も3種類の中ではD3受容体に対する作用が強力であるが故に、高齢者では副作用が出やすいので控えるべき薬だと認識しています。 ドパミン・アゴニストという薬の問題点については以前のブログ内容を参照ください。
ふるえ(振戦)を抑える目的でと思いますが、2)抗アセチルコリン剤が処方されています。これも75歳という年齢では認知症、精神症状のリスクが高い薬なのでよほどの特別な理由がないかぎり使うべきではない薬です。
また残念なことにマグネシウムがレボドパと同じ時間帯に処方・服用されています。これではせっかくのレボドパもほとんど有効に吸収されていないのではと推定されました。
さらにファモチジン(抗ヒスタミン剤)が処方されています。近年、老年医学会のストップ対象でもある、漫然と服用すればヒスタミンの過剰抑制によって、せん妄や認知機能低下を誘発しかねない薬です。
リバスチグミンが9mgで処方されてたという事は、処方薬を決めた医者に、この方が「認知症」であるという認識があるのだと思います。

この方が私のクリニックに来られた理由としては、睡眠覚醒リズムが破綻しており、夜間の異常行動が顕著で、一日中、ひどい幻覚と妄想があったという事で、配偶者(奥さま)のストレスが大変なものでした。このような精神症状というのは、介護者をかなり疲弊させます。かかりつけ医は専門ではなくて、神経内科医(専門医)も1年に1回しか診ないとの事で、何も有効な対処がされず、見かねた家族の勧めで来られました。
診察した時は、意識ははっきりしていましたが、右手のふるえ(静止時)があり、筋固縮(筋強剛)は全く確認できず、動作の遅さもそれほどでもありませんでした。ただ歩行時にすくみと加速の反復と突進が顕著にあったようです。一般的に、すくみと加速の反復に対する有効な薬物というのはあまりなくて、セレギリンが有効な場合があるという程度です。
明らかに薬剤副作用でこじらせて、病態が複雑化してしまった症例というのは、正直、臨床医としてはあまり関わりたくないというのが本音です。認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の精神症状が悪化する場合の90%以上は、薬でこじらせた事例ではないかと思います。こじらせる原因薬剤として、この症例の場合はまず第1にドパミン・アゴニストの2重使用、第2に抗コリン剤、第3に抗ヒスタミン剤です。
第1段階(初診時)で、ドパミン・アゴニストであるカベルゴリンをニュープロに変更、プラミペキソールを1/6まで減量、トリへキシフェニジルを減量、抗ヒスタミン剤を中止としました。これによってかなり幻覚やせん妄は減少したものの、完全にはなくなっておらず、動作レベルも悪化していましたが、突進はなくなっていました。やはり突進はドパミン・アゴニストの過剰反応だと推定されました。相変わらず夜間まったく眠れないという事でした。
第2段階(再診時)で、ドパミン・アゴニスト(ニュープロ、プラミペキソール)は両方とも完全に中止して、全く有効に作用していると思えないコリンエステラーゼ阻害薬(リバスチグミン)も中止しました。その代わりに、朝にアマンタジン100mg(起床時)とクロナゼパム0.5mg(就眠前)を追加しました。PDDにおいてはレム睡眠行動異常(RBD)が高率にみられ、その上で薬剤によるせん妄状態が悪化しやすく、昼夜を問わず不穏状態になりやすいようです。せん妄を高率に起こしやすいドパミン・アゴニストを完全に中止する必要があり、夜間の興奮による就眠を妨げる可能性のあるコリンエステラーゼ阻害薬も中止する必要がありました。
アマンタジンはPDDにおいては、どの薬剤よりも副作用が少なく効果が大きい薬ではないかと思います。PDDではDLBと同じように日中の眠気(過眠)、覚醒不良が問題になりますが、この症状に対して最も有効なのが、アマンタジンだと思います。50~150mgの範囲では精神症状を悪化させる事はほとんどありません。クロナゼパムはベンゾジアゼピン系薬剤ですので、呼吸抑制の副作用があり、誤嚥性肺炎を誘発します(以前のブログ参照)ので、本来は好んで使う薬はありませんが、RBDに対しては他に代わる有効な薬剤がないので仕方なく使っています。
2回目の再診時には、精神症状やせん妄状態はほぼ消失し、動作も大きな問題はなくなったようです。最後に抗コリン剤を中止してから、再度、認知機能の評価をする予定です。
この症例の処方では、アセチルコリンを抑える薬(抗コリン剤、トリへキシフェニジル)とアセチルコリンを増やす薬(コリンエステラーゼ阻害薬)が同時に使われていました。どういう意図で処方されたのかは私には全く理解できませんが、典型的な薬剤カスケードと言えるのではないかと思います。PDDやDLBの症例においては特に相反する薬剤を使うという事は好ましくないと言えるでしょう。
この症例でお分かりのように、PDDに関しては、現在までパーキンソン病関連学会や認知症関連学会が作成した治療ガイドラインに基ついた、パーキンソン病の治療薬の使い方もレビー小体型認知症の治療薬の使い方では上手くいかない、むしろ、双方の治療ガイドラインを頑迷に推し進めると病態が悪化してしまう事例が多いというのが最近よくわかってきました。PDDはPDでもDLBでもないので、同じ薬の使い方はできないと思います。程度は症例によって違えど、脳幹も辺縁系も大脳皮質もコリン&ドパミン作動系神経障害が起こるため、障害をカバーできるエリア・神経細胞がほとんど残っていない厳しい病態と言えます。PDでは問題なく使える薬であるレボドパですら忍容性がなくて増量できない症例が多いようです。PDD独自の治療薬の使い方を考えるべきではないかと思います。


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by shinyokohama-fc | 2017-10-06 12:28 | 治療

PDとPDDを区別する簡単な方法

PD(パーキンソン病)、PDD(認知症を伴うパーキンソン病) 、DLB(レビー小体型認知症)
PD とPDDを区別できる方法は実に簡単です。まず字を書かせる事です。住所を書かせるとPDの方は小字傾向があるものの最後まで書けますが、PDDでは大きく崩壊した漢字になり、10文字書くまでに止まってしまう事が多いです。たった5文字書くのも時間がかかり一苦労です。図形模写も小さいだけでなく五角形が大きく崩れて五角形ではなく、かなりいびつな四角形になります。時計描画でも数字の間隔がおかしくなり、平面でも視覚失認がみられる事があります。字に関しては、動作歩行障害が目立たないDLBでもほとんど同じようになります。つまり字が書けないPDDとDLBでは大脳皮質のコリン作動系神経障害&ドパミン作動系神経障害が存在すると言っても過言ではないでしょう。ただし動作時の手の強いふるえ(本態性振戦か書痙)を伴うケースを除きますが。PDの場合は原則的に静止時の手のふるえで、動作時は止まる事が多いのです。
後はシリアル7と呼ばれる、100から7を5回連続で引いていく引き算です。PDDでは65まで正答できる人はまずいません。だいたい1回目か2回目で誤答になります。
以上の事は、医者でなくても、一般の人(介護者家族)でも実に簡単にできる事です。私のクリニックは画像検査機器を持たない、一介の診療所にすぎませんので、誰でもできるような単純な診察を愚直にやるしかないのですが、こういう誰でもできる事をやる事が診断の重要な参考になるという事をこの2~3年でようやくわかってきました。恥ずかしながら病院勤務時代に外来診療やっていた時にはわからなかったのです。つまりPDとPDDの区別など考えた事もなかったわけです。
PDDの方はパーキンソン病の運動症状が無動固縮型で先行する、動作歩行、姿勢反射にも問題があるケース、つまりヤール3~4レベルの方がほとんどです。注意障害を伴うので、PDに比べて室内での転倒リスクが高くなります。PDの方はヤール4~5レベルでも室内で転倒することはめったにありません。注意障害が保持されている場合は、転倒の危険性を熟知しているので、より慎重に行動するからではないかと考えられます。
最近の講演では必ず話している事ですが、PDDの半数以上の症例は悪性経過をたどります。コリン作動性神経と
なぜ、PDとPDDを厳格に区別しなければならないのか?それは対症療法としての薬物処方の仕方が根本的に変わってくるからです。PDDとDLBも厳格に区別するべきだと考えています。この点に関して学会は肝心な事を何も示しておらず、曖昧にしていると私は感じます。PDは15年以上経過したらみな認知症になる??病理変化が同じだから、全部まとめて同じ薬を使え??そんな考え方だから、PDDに使ってはいけない不適切な処方が繰り返されてしまうケースが後を絶たないのでしょう。それに関しては症例を示しながら、次節で詳しく書こうと思います。


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by shinyokohama-fc | 2017-10-06 11:47 | 治療

認知機能障害を伴うパーキンソン病(PDD)とは

小生はパーキンソン病を中心とした専門外来をやっています。パーキンソン病の症状として目に見える症状としては
1)手がふるえる 2)動作が遅い 3)姿勢が不安定
があります。これらは医者でなくても、普通の人が見てもわかる症状ですので、わかりやすい病気です。
それぞれ1)~3)どれが主体かによって、以下のタイプに分けられます。
1) 振戦優位型 2) 無動固縮型 3) 姿勢反射障害型
認知機能障害が顕著に現れやすいのが、2) 無動固縮型ですが、1)や3)でも軽度の認知機能障害をきたしている場合があります。運動症状がかなり重く、石のごとく動かないようなイメージの症例が多いようです。
パーキンソン病に伴う認知機能障害というのは注意力・記憶力に関するものですが、記憶力は維持されている場合も少なくないようです。
1)活動に集中できない 2)話し方が遅い 3)物忘れがある 4)名前・数字・出来事を覚えるのが難しい
認知機能障害の簡易評価方法としては、記憶障害・認知症の有無を診断するため、MMSE (ミニメンタルステート検査)と認知機能の全般的な評価するためのMMSE(モントリオール認知機能評価・日本版)で行うことが推奨されています。しかし、我が国における繁忙な外来診療体制では、実地医家の先生にとってパーキンソン病の診察は、四肢の動きとか歩行とか身体診察(観察)をまずしなければならないので、それに付け加えてこのような検査をする時間的な余裕はないと思われます。
小生の場合は、時計描画と図形模写(五角形を重ねたもの)を書いてもらいます。これらを書くのに手間がかかり時間がかかったり、うまく書けない場合は、認知機能障害がありと判定します。また左半分がうまく書けないなど、視空間認知障害が確認できる場合があります。これをやってもらうと、誰の目からみても認知機能に問題があるというのが明確です。この他に数字の逆唱、シリアル7(100から7を引き続ける暗算)も簡単に判定できます。認知機能障害がある場合は高い確率で、計算間違いをします。
問診においては、配偶者からレム睡眠行動異常(RBD)がある事を確認します。小生の経験ではPDDにおいては2/3くらいにRBDの症状が確認できるようです。
小生が、明らかにPDDであると判断できる症例に対して、使用を避けている薬があります。それがドパミン・アゴニストです。特に作用の強いプラミペキソールでは、深刻な薬剤性せん妄、精神錯乱、レム睡眠行動異常の急性増悪をきたすようです。PDDの診断基準に合わなくても、RBDがある症例では使用をさけるべきだと思います。
辺縁系に存在するドパミンD3受容体を過剰に刺激することによって、精神症状が誘発されるようです。おそらくこのような症例では、辺縁系の障害が強いと推定されます。
しかし実際はRBD、PDDの症例にドパミンアゴニストが使われて、深刻な精神症状の悪化がみられる症例が非常に多く見られます。これは「パーキンソン病にはまずドパミンアゴニストから使え」という学会の指導にも大きな問題があるのではないかと考えます。
PDDにおけるレビー小体病理の進展形式(通説)は以下のとおりです。
1) 脳幹優位 睡眠障害 (日中の過眠、レム睡眠行動異常)、自律神経障害など
2) 辺縁系優位 うつ状態、不安神経症、疲労、疼痛、体重減少など
3) 大脳皮質優位 注意障害(転倒)、記銘力障害、自発性・意欲低下(アパシー)
通常のパーキンソン病(PD)は運動障害のわりには意外と転倒が少ないですが、やはりPDDになると注意障害が強くなるため、転倒が増えるようです。
レビー小体は、病気の原因なのか?結果なのか?という議論が長年ありますが、私は最近の研究を見る限りでは後者ではないかと考えています。つまりレビー小体(アルファシヌクレイン重合体)は病気によるコリン・ドパミン神経障害に抵抗するために発生しているのだという説を信用しています。
いずれにしても、コリン作動性神経障害、ドパミン作動性神経障害の分布には、症例によって大きな差異があるため、同じ病理基盤だからといって、どんな症例でも同じような薬剤処方をしていてはダメだという事です。



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by shinyokohama-fc | 2017-09-28 19:02 | 治療

神経変性疾患に必要なのは治す医療ではなく緩和医療

先日、講演会のために28年ぶりに札幌に行きました。前日に市内を少々観光しましたが、横浜とは市街地の区画が2~3倍違うことに戸惑いました。この街は外国人の指導などで開拓された街で、土地もかなり広いので、地図を見ながら歩いてもなかなか目的地に到達できませんでした。自分でも気が付かないうちに、普段横浜や東京ではまず歩かないくらいのかなりの距離を歩いていたので、久しぶりに下肢の筋肉痛になりました。
講演会の内容は、認知症と言われている変性疾患には様々なものがある、精神症状の強い、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(3Rタウオパチー)、4Rタウオパチーの症例が、高齢者の増加とともに増えている、特にこのような疾患群の高齢者に対してはコリンエステラーゼ阻害薬とか抗精神病薬というのは非常に使うのが難しい、むしろ高いリスクを冒してまで使うべきではないといった内容でした。内容的にはこのブログでこれまで書いてきた内容に近いと思われますので、これ以上は省略します。
参加者は10名前後でしたが、脳外科、精神科を専門として、認知症の臨床をよくやっている民間病院、医院の院長先生方が主に参加されていました。中には小生のブログを拝読されている先生もおられました。
講演後の質問の時間も4~5名の先生方から1人2~3の質問やご意見があり、その内容もかなりハイレベルな質問であったので、私も丁寧に回答しなければならかなったので、1人の質疑応答に10分以上の時間を費やしました。少人数ならではのかなり充実した質疑応答であったと思います。
講演終了後に病院長の精神科の先生に、「私の考え方としては、高齢者の変性疾患(認知症・パーキンソン病その他)への抗精神病薬の使用は副作用のリスクが大きすぎるので原則的に好ましくないと思っているが、若年の統合失調症、躁鬱病などの精神疾患には抗精神病薬は必要だと思っています」と言いましたが、「私は抗精神病薬は使いません」というお返事が返ってきて、大変驚かされました。私とは違う立場で長年の臨床・処方経験を経て、おそらくそういう考え方に行きつかれた(帰結された)のかもしれません。
私自身もこの3~4年の外来の臨床経験で神経系に作用する薬剤に対する考え方がかなり変わりました抗認知症薬、抗精神病薬、パーキンソン治療薬、抗不安薬(睡眠導入薬)、抗てんかん薬、いずれも使うのが非常に難しい薬であるという事を様々な症例を通じて観察し、痛感してきました。
「認知症、パーキンソン病、高齢者の精神症状などの神経変性疾患を薬で治す、治る」という理念を唱える臨床医もいるようですが、私はどうしてもこの理念には同意できません。一見健常に見える、中高年者であっても、発症いかんにかかわらず、個人差はあるが、年齢とともに誰もが神経の変性が進み、アミロイド、タウ、シヌクレインなどの異常タンパクがたまっていきます。これが自然の流れであり、老化現象の一つだと思っています。
一度発症してしまった神経変性をもとに戻すのは医学的に不可能であり、記銘力障害、見当識障害、運動失行、失認、失語といった症状を元に戻すのは不可能です。患者さんの年齢も多くは65歳以上の高齢者ですので、現実的には、すべての神経変性疾患に対しては病気を治す事ではなく、「緩和医療・緩和ケア」が中心になるべきだと思っています。治す事に固執しすぎて、劇薬を多数使いすぎる事によって病状が著しく悪化する症例が多すぎる、これが私のこの3~4年診療経験で実感した事でした。


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by shinyokohama-fc | 2017-09-25 11:05 | 治療

パーキンソン病のふるえ(振戦)、薬物治療の限界と新しい治療

同じ県下にある、湘南藤沢徳洲会病院において、パーキンソン病のふるえに対する超音波治療の臨床研究が始まっているようです。昨年11月にMRIガイド下集束超音波治療(MRgFUS)の装置を導入して、今年から実用開始して、振戦優位型パーキンソン病の症例、3例の治療に成功したとの事です。
ヘルメット型超音波装置を頭に装着し、2時間程度かけて標的部位を確認してから10回の超音波の照射を実施したところ、ふるえ(振戦)と筋肉のこわばり(筋固縮)が軽減効果が確認されたようです。
振戦優位型パーキンソン病に関しては、当院でも何例か症例を診ていますが、ふるえ(振戦)+筋肉のこわばり(筋固縮)という組み合わせです。振戦優位型は動作の遅さや姿勢不安定による歩行障害はほとんど目立たないケースがほとんどです。発症してから数年経過しても、1人で歩いて通院できる方が多く、歩行には支障はほとんどなく転倒などはありません。しかし、日中通してふるえが非常に強く、ストレスがあるようです。
一般的に投薬による制御が難しい事が多く、最も良く効くと言われる、プラミペキソール(ビ・シフロール/ミラペックス)などのドパミンアゴニストは薬剤による精神系の副作用が問題になりますし、レボドパ配合剤(メネシットやマドパーなど)であればかなり増量しないと効果が得られないです。レボドパは早期から増量すると効果の減弱による、オフ現象やジスキネジアが出現しやすくなると報告されています。
半年前から当院で定期受診されている、69歳の男性の振戦優位型パーキンソン病の方がいます。
最初に通院された病院の処方では、プラミペキソールの増量でひどい薬剤性せん妄、幻覚、被害妄想となり、次に転院された病院の処方では、レボドパ・カルビドパ(メネシット)450mg+エンタカポン300mg+ゾニサミド(エクセグラン)100mg/日でふるえはほぼ完全に止まってました。そのため全くパーキンソン病らしさが感じられませんでした。やはり軽度の薬剤性せん妄のために、ぼーっとして生気がないという印象で、奥さんも通常の会話がまったくできないと嘆いていました。病院への通院が遠方で長時間待機などで丸一日かかるため、通院しやすい小生のクリニックへの転医を希望されました。小生が2~3か月かけて、レボドパ・カルビドパ300mg/日のみまで薬を減量しました。左手優位のやや大きなふるえ(振戦)が静止時と歩行時に目立つようになり、見た目はパーキンソン病らしくなりました。前医投薬の大幅な減量によって、ふるえと筋固縮は目立つようになりましたが、薬剤性せん妄は完全になくなり、表情が生き生きするようになり、会話も普通にできるようになりました。ふるえを薬で無理に抑えようとすると、こうなるという典型的な事例だったと思います。
パーキンソン病のふるえを抑えるための薬を処方され、ふるえは軽減したが、薬剤性せん妄で精神錯乱を起こしていたり、精神活動が著しく低迷しているとすれば、いったい何のための薬物治療なのか?という事になります。
小生もパーキンソン病のふるえを抑えるために薬物治療をしますが、ゾニサミドかトリへキシフェニジル(抗コリン剤)をまずファーストで使い、次にセレギリンを追加し、レボドパやドパミンアゴニストは極力使わないという方法をとっています。ドパミンアゴニストをまずファーストという方法は改められるべきだと考えています。
ベネフィットよりもリスク(精神系副作用)が大きく上回っている、振戦優位型パーキンソン病に対する現状のドパミンアゴニスト中心の薬物治療の弊害の深刻さを考えると、この超音波治療が広く使われるようにと願わずにはいられません。


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by shinyokohama-fc | 2017-09-12 18:37 | 治療

抗精神病薬の長期使用による不随意運動の深刻さ

先週、外来診療において、抗精神病薬によると思われる不随意運動の症例を2例も診ることがありました。
いずれも、ジスキネジアという不随意運動で、原因薬物の服薬量としてはごくわずかでそれぞれ、アリピプラゾール3mg、リスぺリドン0.5mgでした。ただし他に神経系に作用する併用薬が2~3種類あるため相互作用によって血中濃度が高くなっている可能性が考えられました。私が以前から「神経系薬剤の多剤併用が好ましくない」と再三申し上げているのはこういうことです。抗てんかん薬剤については他の薬剤との相互作用による血中濃度の変動が常に問題視されるのですが、認知症、パーキンソン病、精神疾患の薬物処方に関しては、処方している臨床医がまったく意識されていないというのが残念です。
以前もブログに書いたかもしれませんが、抗精神病薬によって不随意運動が誘発されることが非常に多いようです。不随意運動というのは「自分の意志とはかかわらず身体が勝手に動くこと」です。
抗精神病薬というのは、主に「統合失調症」に使うべき薬で、精神科医(精神保健指定医)が処方する薬です。内科医がこのような薬を処方することは滅多にありません。何故ならこのような薬を処方せざるをえない症例は精神科医に紹介するからです。一般的によく使われている薬は以下のとおりです。
1)フェノチアジン系・クロルプロマジン(コントミン、ウインタミン)、レボメプロマジン(ヒルナミン)
2)ブチロフェノン系・ハロペリドール(セレネース、リントンなど)
3)ベンザミド系・スルピリド(ドグマチールなど)、チアプリド(グラマリール)
4)セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)・リスぺリドン(リスパダール)、ベロスピロン(ルーラン)
5)多元受容体作用薬(MARTA)・オランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル)
6)ドパミン受容体部分作動薬(DPA)アリピプラゾール(エビリファイ)
これらの薬を長期間にわたって服用、あるいは2種類以上の使用歴、2種類同時使用などによって、特にジスキネジアという不随意運動が高い確率で発症するようです。3)だけは例外で不随意運動を抑える働きがあります。
それゆえ不随意運動を回避するためには、3)を使用するほうがいいと思われますが、3)の欠点は用量増加、長期服用によって高い確率で薬剤性パーキンソニズムによる動作歩行障害が悪化することです。
1)2)4)5)6)によって実際は身体の静止時(安静時)に身体(体幹)の上下運動を繰り返したり、下半身のみを常時粗大に動かしていたり、片方の上肢が常時動かしていたりと、そのバリエーションは多彩です。
パーキンソン病においてレボドパ配合剤を(メネシット、マドパーなど)を長期間使用しているケースに多くみられますが、抗精神病薬によるジスキネジアとはタイプが違うようです。
私のイメージでは6)2)1)4)の順に出現する頻度が多いのではないかという印象を受けます。最近は高齢者にもアリピプラゾールなどが処方される機会が増えることによってジスキネジアが増えた気がします。
対策としては原因薬剤を中止することです。私の臨床経験では原因薬剤を服用して数か月・半年程度であれば、中止してから2~3か月で消失することが多いようです。しかし75歳以上の高齢者で3~4年以上もの間、抗精神病薬を飲まされて続けている不幸な方も少なくないようで、こういう方は中止しても効果はないようです。
薬の本には「遅発性ジスキネジア」と書いています。この「遅発性」というのが曲者で、服用してから4~5年経過してから出現するケースが多いようです。
原因薬剤の抗精神病薬を処方する医者(多くは精神科医だが、中には知ったかぶりの内科医もいる)はこういう遅発性のジスキネジアやジストニアが抗精神病薬を長期間服用してから現れてくることを知らないようです。薬の副作用の知識がないのに薬を処方する医者としてきわめて無責任だと思います。こういう無知で無責任な医者は抗精神病薬を処方する資格を剥奪すべきではないかと私は考えます。
複数の抗精神病薬とコリンエステラーゼ阻害薬の長期間にわたる併用の後、クロルプロマジンが処方されることによってで深刻な上半身のジストニアになってしまった60歳代前半の若年性認知症の症例を今から3年前に診ることになりました。その悲惨さは筆舌に尽くしがたいものであり、今でも忘れられません。
このような事実があるにもかかわらず、何をもって認知症に対して抗精神病薬を使うことを正当化できるのでしょうか?不随意運動が出れば、精神科医や内科医は自分の責任で処理しようとすることは決してありません。
「自分はわからない、知らない」と言って、「神経内科」の外来へ放り込まれるのです。薬剤性パーキンソニズムと不随意運動(まとめて薬剤性EPS(錐体外路症候群)と呼ぶ)ばかり診させられ続けたこの25年でした。
私は抗精神病薬の副作用で苦しむ患者を診るたびに、怒りがこみあげてきます。やはり抗精神病薬は統合失調症に限定して使用すべき薬ではないかと私は考えます。



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by shinyokohama-fc | 2017-08-22 11:44 | 治療

パーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬?(2)

コリンエステラーゼ阻害薬に様々な副作用、有害事象があるという事実は、これまでの過去のブログで書いてきたとおりです。副作用を軽減するという観点でいうと、アセチルコリン賦活作用が他の2種類よりも1/18~1/20程度と言われていて、他の神経伝達物質とのバランスを崩しにくいガランタミンが最も無難に使用できると思われます。
以前の内容の繰り返しにはなりますが、コリンエステラーゼ阻害薬にはさまざまな副作用が報告されていますが、主に問題になるのは以下のものです。
1) 徐脈性の不整脈、脈拍が30~40回/分という高度の徐脈に至り、心停止の危険性。
2) QT延長症候群、心電図でQT時間が延長している状態では、心室性不整脈を誘発して、心停止の危険性。
3) 食欲低下・吐き気、食事が食べられなくなって体重が減少して体力が低下して衰弱。
4) 頻尿、トイレに何度も行く
5) 動作・歩行能力低下、嚥下障害
6) 易怒・興奮性・常同行動悪化
近年、パーキンソン病の非運動症状が問題にされクローズアップされていますが、特に問題になるのが、自律神経不全症状と精神不安定症状です。
A)自律神経不全症状
自律神経は血圧や体温、内臓の働きなどを調整する神経で、活動する交感神経と休息する副交感神経が上手く切り替わらず、さまざまな身体的不調をきたします。MIBG心筋シンチグラフィーで証明されているように、心臓の自律神経が障害されてしまうため、血圧・脈拍がコントロールできず不安定になって血圧・脈拍が上がったり、下がったりする。特に立ち上がった時や食事後に血圧が急激に下がって気を失いそうになるなど。また体温調節の異常によるうつ熱、消化管運動能力の低下による便秘、膀胱を動かす運動能力低下による頻尿などが問題になります。
2) 精神不安定症状
もともと幻覚・妄想、抑うつ・不安神経症、などがみられますが、病気が大脳の前頭葉や辺縁系に影響を及ぼすために、この程度が強い事例では、易怒・興奮・精神錯乱などがみられることもあります。特にドパミン・アゴニストやその他の治療薬でこれらの症状が増強している状況があります。
以上でお分かりであろうと思いますが、元々、動作歩行能力が低下し、自律神経症状があり、精神症状のあるパーキンソン病に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬の追加処方は、時として火に油を注ぐようなものになりえます。
コリンエステラーゼ阻害薬を処方できるパーキンソン病というのは、動作歩行能力が低下していない(ヤール1~2度)、自律神経障害が少ない(血圧変動がほとんどない)、精神症状が少ない、という事例に限られるのではないかと思われます。そういう事例でも時間の経過とともに、病気が進行して運動症状、自律神経症状、精神症状が強くなっていくと推定されますので、いずれ安全に継続服用するのが難しい状況におかれるでしょう。
一般的にコリンエステラーゼ阻害薬の効果は1~3年程度しかもたないと言われていますので、特に75歳以上の高齢発症で、病気の進行が速く症状が重い事例では、パーキンソン病の諸症状をむしろ悪化させたり、副作用リスクの高い薬をわざわざ使う必要があるのか?と考えると強い疑念があります。
どうしてもコリンエステラーゼ阻害薬を使うと言うのであれば、リバスチグミンを1.125mg~2.25mg/日、ガランタミンを2~4mg/日、ドネぺジルを0.5~1mg/日程度でしか安全には使えないのではないでしょうか。
教科書に書いてあるパーキンソン病という病気の解説には、必ずアセチルコリンとドパミンの天秤の絵の解説があって、ドパミンよりもアセチルコリンが過剰になっているとされています。私が神経内科医になったばかりの時代は抗コリン剤がよく処方されていたほどです。コリンエステラーゼ阻害薬というのはアセチルコリンを増やす薬で、その真逆の作用です。アセチルコリンが過剰になっている状態にさらに上乗せする意味があるのか?ということになりますが、もし意味があるとすれば、それはドパミンを増やす薬を過剰に投与しすぎた場合に限られます。コリンエステラーゼ阻害薬を使おうと考える前に、まずはドパミンを増やす薬を減らすことを考えるべきだと思います。
当然ながらパーキンソン病にはコリンエステラーゼ阻害薬の適応はありませんので、上記のようなリスクとそれを冒してまで服用すべき必要性を十分に説明して同意を得る必要があるでしょう。適応外使用であることに関しても説明して同意を得る必要があるのではないかと考えるわけですが、実際に多くの患者さんたちは外来医からも薬剤師からもロクな説明を受けておらず、ただ訳も分からない状態で服用させられているというのが現実ではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2017-07-11 12:04 | 治療

パーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬?(1)

小生はパーキンソン病の関連学会に所属しているわけですが、学会ではパーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬を使用することを推奨しており、治療ガイドラインにもそう書いてあるようです。また、最近発行された、パーキンソン病の治療に関する専門書(医学書)にも、コリンエステラーゼ阻害薬を処方する症例報告が当たり前のように掲載されています。パーキンソン病のエキスパートを自称されている先生方も、「パーキンソン治療薬を3~4種類処方した症例で幻覚・妄想が出現した症例にコリンエステラーゼ阻害薬を追加して良くなりました。」と自慢気に発表されていました。実際に使われる薬剤は、リバスチグミンとドネぺジルのようで、なぜかガランタミンが選ばれることはないようです。
実際にコリンエステラーゼ阻害薬を使用する意図としては、パーキンソン病に伴う精神症状である幻覚(特に幻視)を抑制するという目的が多いようです。認知機能低下を遅らせるという目的の場合もあるようです。リバスチグミンは1日用量18mg、ドネぺジルは1日用量10mgで使うように推奨されています。
学会のエキスパートを自称する先生方の講演会によると、パーキンソン病を発症して10~15年経つと認知症になるというお決まりのスライドが提示されます。認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の診断基準では、簡易テスト(MMSE)が26点以下としているそうです。この基準はそれまでの認知症の診断基準よりもハードルが下げられています。この基準だとパーキンソン病を発症している75歳以上の患者の2/3くらいは自動的に「認知症」にされてしまいそうです。治療ガイドラインでは「認知症であれば、ドネぺジルを試みるように(グレードB)」と記載されています。確かに、神経内科の専門医は判で押したようにどんなパーキンソン病症例に対してもこの薬が試みられているのが現実のようです。私はこのやり方に懐疑的ですので、こういう処方を選択することはありません。
レビー小体型認知症(DLB)におけるドネぺジルの安全性評価(承認時)によると、パーキンソン治療薬を一切服用しておらず、介助を必要としない日常生活動作が自立したレベルの運動障害、重症度ヤール1~2(5段階で)に使用することが望ましいようです。薬剤性パーキンソニズムの原因薬剤リストにも入ってる薬剤でもありますので、それが当然だと思います。パーキンソン運動症状が軽度(ヤール1~2レベル)で比較的若年(50~65歳)のレビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン運動症状が重度(ヤール3~5レベル)で発症10~15年経過した老年(75歳以上)の認知症を伴うパーキンソン病(PDD)がいつのまにか一緒くたにされてしまっている??というおかしな現実があるようです。
学会では「PDDとDLBは同じ神経病理だ」と言われますが、はたして同じ神経病理だから同じ病気なのでしょうか?死後の病理組織の所見だけで病気のすべてが説明できるわけではありません。神経の学会というのはとかく「病理至上主義」になりがちで、それが強く反映されたのが、多系統萎縮症(MSA)という病名の誕生です。それまで、別々の診断名であった、小脳症状が主体のオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)とパーキンソン症状が主体の線条体黒質変性症(SND)、自律神経症状が主体のシャイドレジャー症候群(SDS)を、同じシヌクレインが脳にたまる病理だからという理由で一緒くたにされてされてしまったという歴史があります。近年は学会においてエキスパート専門医を自称する先生方はPDDとDLBも同じ病名(レビー小体病)にしてしまおうという動きがあるようです。しかし、実際の臨床では前者(PDD)は発症して5~10年が経過し、パーキンソン治療薬が4~5種類てんこ盛りにされていて、ヤール3~5度です。当然治療薬過剰処方によって誘発されている幻覚・妄想もあります。後者(DLB)は発症して2~3年で、パーキンソン治療薬は全く処方されていない状態で幻覚・妄想があり、ヤール1~2度、やや動作が遅く歩きにくいという程度です。これだけ薬の使用状況が異なるにもかかわらず、これらは「同じ病気」と言えるのでしょうか?
ドネぺジルの安全性評価を見る限り後者(DLB)はともかく、前者(PDD)には果たして適応はあるのでしょうか?
今から約10年前にヤール3度のPDDの70歳男性にドネぺジル3mg/日で使用していました、認知機能は使用後からすぐに改善したのですが、ドネぺジルを4~6か月継続した時点で動作歩行レベルは明らかに低下しており、転倒による怪我が増えてしまいヤール4度になってしまったことがありました。また2年前にヤール3度のPDDの65歳女性にリバスチグミン18mg/日で使用していました。規定通り1か月ごとに4.5mg→9mg→13.5mg→18mgと増量していきました。その1か月後から、体幹の前屈と傾斜という姿勢異常が強くなり歩行時の姿勢保持が困難になり、やはりヤール4度になりました。これらの2つの事例を見てもわかるように、PDDに対してはドネぺジルやリバスチグミンを現在の推奨されている用量で使うというのは非常に難しいと言わざるをえないでしょう。
最近はリバスチグミンを非常に多くの症例で使用されている先生が、「パーキンソン病にリバスチグミンを少量で使えば、歩行が改善する」と言われていましたので、小生が診ている5つの症例で1日用量2.25mg~4.5mgで使ってみました。結果は2勝3敗。残念ながら、むしろ歩行障害や姿勢異常が悪化した症例が3例もありました。
パーキンソン病、特にPDDでは、視床のアセチルコリン神経(チャンネル6)が減少しているので、姿勢保持が悪化して転倒しやすくなるという仮説があります。リバスチグミンは脳幹網様体には有効に作用しても、ガランタミンのように視床には有効に作用しないようです。コリンエステラーゼ阻害薬の反応性を観察するかぎり、PDDとDLBではアセチルコリンとドパミンの相対的バランスは明らかに違っているのは間違いないでしょう。アセチルコリン神経系の障害や局在部位には症例によって明らかに差異がありますので、「死後の病理所見が同じだから、同じ薬を使え」という理屈は到底通らないのではないでしょうか?
臨床よりも病理偏重である診断名は混乱を招きます。「レビー小体っていったい何ですか?」というのが多くの一般人のうける感想ではないでしょうか?またレビー小体とパーキンソン病の因果関係は解明されておらず、レビー小体はパーキンソン病の原因なのか結果なのかは不明。レビー小体だけがパーキンソン病の原因とは特定できず、ミトコンドリアが原因であるという仮説も有力ではあるが、現在研究中のようです。そういう専門家にしかわからないような病名、特に患者さんの立場からわかりつらい病名というのは適切ではないと思われますし、まったく臨床像が異なる病気を一緒くたにしてしまうのは誤解を招くのではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2017-07-10 12:36 | 治療

パーキンソン病で必要性の高い薬、レボドパとアマンタジン

昨日、神経が専門でない一般臨床医の方々から、パーキンソン病の薬に関する質問がありました。
「レボドパ500mgとゾニサミド50mg服用しているパーキンソン病の患者さんで、ジスキネジアがひどかったので、ゾニサミドを中止して、アマンタジンを開始して150mgまで増やしたらジスキネジアが多少軽減しました。ジスキネジアを抑えるよい方法はないでしょうか?」
「現状ではジスキネジアを抑える方法としては、レボドパの服用方法を工夫する以外は、アマンタジンを使うという方法しかないと思います。ただし200~300mgだと幻覚・妄想など精神症状が出る場合があるので、150mg以下で維持するのがいいと思います。」と私は返答しました。ジスキネジアに対するアマンタジンの効果は60%程度で、1年継続後になると50%程度と言われています。レボドパ・アマンタジン以外の薬はすべてジスキネジアを悪化させる(例えばセレギリン)と言われているので、それらの薬を使用している場合は順次中止していくのが良いと治療ガイドラインでは言われています。
また別の臨床医の先生からは「パーキンソン病の治療薬で優先順位をつけるとすれば?」と訊かれました。誰もが知りたい質問のはずですが、これまで25年神経内科医をやっていて、おそらく初めて訊かれた質問だったのですが、やや悩みながらも以下のように回答しました。
1) レボドパ
2) アマンタジン
3) エンタカポン
パーキンソン病の動作歩行障害にはレボドパが欠かせない薬であるというのはおよそ万人が一致する意見だと思います。レボドパはアミノ酸で自然物質に近く、パーキンソン病治療薬の中で最も副作用の頻度が少ないというのが現実だと思います。90歳を超えた症例でも少量であれば安全に服用できて、かつ有効性が高いわけです。神経毒仮説については賛否両論があるのは事実ですが、私の考え方としては「その患者にとって必要以上の用量を処方すれば、神経毒として作用する」というものです。それは最近診察している患者さんからもはっきり見てとれるわけです。従来型のパーキンソン病(PD)ではなくて、パーキンソン病+認知症(PDD)・重症タイプの症例については、レボドパの必要量は100~200mg程度が適量だと考えています。1日量300mgになると幻覚などの精神症状が誘発されることがほとんどです。従来型のPDでも1日量600mgを超える量を継続すると高率に精神症状が出ると思います。特に高齢になればなるほどその可能性は高まると思います。
アマンタジンについては、レボドパの長期連用に伴って現れてくる、ジスキネジアを抑制できる唯一の薬としての重要性だけではなく、最近増加していると思われる、PDD・軽症タイプや高齢発症のPDに対して有効かつ副作用がでにくく使いやすい薬だという事です。ただし必要量は50~150mgになります。高齢者の場合は腎機能障害の問題があり、200mg以上を長期に継続すると、代謝されにくいので副作用が出やすくなるわけです。
エンタカポンについては、レボドパの効果を30~60分延長するための薬としての存在意義があります。言わばレボドパの補完的な位置ですが、レボドパという薬のもう1つの問題が、5~10年服用を継続することで、約半数程度にみられるウェアリングオフ現象(レボドパの効果が服用後2時間程度で切れてくる)の問題があるため、長期罹病者で必要になるケースは出てきます。高齢者でも安全に服用できるというのがいいのではないかと思います。
ドパミン・アゴニストなど他の薬がベスト3に入らなかった理由は、これまでのブログで詳しく書いてきたように、メリット以上にデメリット(副作用)の部分が大きく、特に高齢者に忍容性が低く、副作用による減量・中止を余儀なくされる薬が多いというのが実情だからです。
パーキンソン病患者さんのメインの年齢層が75~85歳が中心で、80歳以上の年齢層も多いという実情を考慮すればこの3種類の薬が中心にならざるをえないのではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2017-06-26 13:24 | 治療
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