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パーキンソン病のふるえ(振戦)、薬物治療の限界と新しい治療

同じ県下にある、湘南藤沢徳洲会病院において、パーキンソン病のふるえに対する超音波治療の臨床研究が始まっているようです。昨年11月にMRIガイド下集束超音波治療(MRgFUS)の装置を導入して、今年から実用開始して、振戦優位型パーキンソン病の症例、3例の治療に成功したとの事です。
ヘルメット型超音波装置を頭に装着し、2時間程度かけて標的部位を確認してから10回の超音波の照射を実施したところ、ふるえ(振戦)と筋肉のこわばり(筋固縮)が軽減効果が確認されたようです。
振戦優位型パーキンソン病に関しては、当院でも何例か症例を診ていますが、ふるえ(振戦)+筋肉のこわばり(筋固縮)という組み合わせです。振戦優位型は動作の遅さや姿勢不安定による歩行障害はほとんど目立たないケースがほとんどです。発症してから数年経過しても、1人で歩いて通院できる方が多く、歩行には支障はほとんどなく転倒などはありません。しかし、日中通してふるえが非常に強く、ストレスがあるようです。
一般的に投薬による制御が難しい事が多く、最も良く効くと言われる、プラミペキソール(ビ・シフロール/ミラペックス)などのドパミンアゴニストは薬剤による精神系の副作用が問題になりますし、レボドパ配合剤(メネシットやマドパーなど)であればかなり増量しないと効果が得られないです。レボドパは早期から増量すると効果の減弱による、オフ現象やジスキネジアが出現しやすくなると報告されています。
半年前から当院で定期受診されている、69歳の男性の振戦優位型パーキンソン病の方がいます。
最初に通院された病院の処方では、プラミペキソールの増量でひどい薬剤性せん妄、幻覚、被害妄想となり、次に転院された病院の処方では、レボドパ・カルビドパ(メネシット)450mg+エンタカポン300mg+ゾニサミド(エクセグラン)100mg/日でふるえはほぼ完全に止まってました。そのため全くパーキンソン病らしさが感じられませんでした。やはり軽度の薬剤性せん妄のために、ぼーっとして生気がないという印象で、奥さんも通常の会話がまったくできないと嘆いていました。病院への通院が遠方で長時間待機などで丸一日かかるため、通院しやすい小生のクリニックへの転医を希望されました。小生が2~3か月かけて、レボドパ・カルビドパ300mg/日のみまで薬を減量しました。左手優位のやや大きなふるえ(振戦)が静止時と歩行時に目立つようになり、見た目はパーキンソン病らしくなりました。前医投薬の大幅な減量によって、ふるえと筋固縮は目立つようになりましたが、薬剤性せん妄は完全になくなり、表情が生き生きするようになり、会話も普通にできるようになりました。ふるえを薬で無理に抑えようとすると、こうなるという典型的な事例だったと思います。
パーキンソン病のふるえを抑えるための薬を処方され、ふるえは軽減したが、薬剤性せん妄で精神錯乱を起こしていたり、精神活動が著しく低迷しているとすれば、いったい何のための薬物治療なのか?という事になります。
小生もパーキンソン病のふるえを抑えるために薬物治療をしますが、ゾニサミドかトリへキシフェニジル(抗コリン剤)をまずファーストで使い、次にセレギリンを追加し、レボドパやドパミンアゴニストは極力使わないという方法をとっています。ドパミンアゴニストをまずファーストという方法は改められるべきだと考えています。
ベネフィットよりもリスク(精神系副作用)が大きく上回っている、振戦優位型パーキンソン病に対する現状のドパミンアゴニスト中心の薬物治療の弊害の深刻さを考えると、この超音波治療が広く使われるようにと願わずにはいられません。


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by shinyokohama-fc | 2017-09-12 18:37 | 治療

抗精神病薬の長期使用による不随意運動の深刻さ

先週、外来診療において、抗精神病薬によると思われる不随意運動の症例を2例も診ることがありました。
いずれも、ジスキネジアという不随意運動で、原因薬物の服薬量としてはごくわずかでそれぞれ、アリピプラゾール3mg、リスぺリドン0.5mgでした。ただし他に神経系に作用する併用薬が2~3種類あるため相互作用によって血中濃度が高くなっている可能性が考えられました。私が以前から「神経系薬剤の多剤併用が好ましくない」と再三申し上げているのはこういうことです。抗てんかん薬剤については他の薬剤との相互作用による血中濃度の変動が常に問題視されるのですが、認知症、パーキンソン病、精神疾患の薬物処方に関しては、処方している臨床医がまったく意識されていないというのが残念です。
以前もブログに書いたかもしれませんが、抗精神病薬によって不随意運動が誘発されることが非常に多いようです。不随意運動というのは「自分の意志とはかかわらず身体が勝手に動くこと」です。
抗精神病薬というのは、主に「統合失調症」に使うべき薬で、精神科医(精神保健指定医)が処方する薬です。内科医がこのような薬を処方することは滅多にありません。何故ならこのような薬を処方せざるをえない症例は精神科医に紹介するからです。一般的によく使われている薬は以下のとおりです。
1)フェノチアジン系・クロルプロマジン(コントミン、ウインタミン)、レボメプロマジン(ヒルナミン)
2)ブチロフェノン系・ハロペリドール(セレネース、リントンなど)
3)ベンザミド系・スルピリド(ドグマチールなど)、チアプリド(グラマリール)
4)セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)・リスぺリドン(リスパダール)、ベロスピロン(ルーラン)
5)多元受容体作用薬(MARTA)・オランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル)
6)ドパミン受容体部分作動薬(DPA)アリピプラゾール(エビリファイ)
これらの薬を長期間にわたって服用、あるいは2種類以上の使用歴、2種類同時使用などによって、特にジスキネジアという不随意運動が高い確率で発症するようです。3)だけは例外で不随意運動を抑える働きがあります。
それゆえ不随意運動を回避するためには、3)を使用するほうがいいと思われますが、3)の欠点は用量増加、長期服用によって高い確率で薬剤性パーキンソニズムによる動作歩行障害が悪化することです。
1)2)4)5)6)によって実際は身体の静止時(安静時)に身体(体幹)の上下運動を繰り返したり、下半身のみを常時粗大に動かしていたり、片方の上肢が常時動かしていたりと、そのバリエーションは多彩です。
パーキンソン病においてレボドパ配合剤を(メネシット、マドパーなど)を長期間使用しているケースに多くみられますが、抗精神病薬によるジスキネジアとはタイプが違うようです。
私のイメージでは6)2)1)4)の順に出現する頻度が多いのではないかという印象を受けます。最近は高齢者にもアリピプラゾールなどが処方される機会が増えることによってジスキネジアが増えた気がします。
対策としては原因薬剤を中止することです。私の臨床経験では原因薬剤を服用して数か月・半年程度であれば、中止してから2~3か月で消失することが多いようです。しかし75歳以上の高齢者で3~4年以上もの間、抗精神病薬を飲まされて続けている不幸な方も少なくないようで、こういう方は中止しても効果はないようです。
薬の本には「遅発性ジスキネジア」と書いています。この「遅発性」というのが曲者で、服用してから4~5年経過してから出現するケースが多いようです。
原因薬剤の抗精神病薬を処方する医者(多くは精神科医だが、中には知ったかぶりの内科医もいる)はこういう遅発性のジスキネジアやジストニアが抗精神病薬を長期間服用してから現れてくることを知らないようです。薬の副作用の知識がないのに薬を処方する医者としてきわめて無責任だと思います。こういう無知で無責任な医者は抗精神病薬を処方する資格を剥奪すべきではないかと私は考えます。
複数の抗精神病薬とコリンエステラーゼ阻害薬の長期間にわたる併用の後、クロルプロマジンが処方されることによってで深刻な上半身のジストニアになってしまった60歳代前半の若年性認知症の症例を今から3年前に診ることになりました。その悲惨さは筆舌に尽くしがたいものであり、今でも忘れられません。
このような事実があるにもかかわらず、何をもって認知症に対して抗精神病薬を使うことを正当化できるのでしょうか?不随意運動が出れば、精神科医や内科医は自分の責任で処理しようとすることは決してありません。
「自分はわからない、知らない」と言って、「神経内科」の外来へ放り込まれるのです。薬剤性パーキンソニズムと不随意運動(まとめて薬剤性EPS(錐体外路症候群)と呼ぶ)ばかり診させられ続けたこの25年でした。
私は抗精神病薬の副作用で苦しむ患者を診るたびに、怒りがこみあげてきます。やはり抗精神病薬は統合失調症に限定して使用すべき薬ではないかと私は考えます。



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by shinyokohama-fc | 2017-08-22 11:44 | 治療

パーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬?(2)

コリンエステラーゼ阻害薬に様々な副作用、有害事象があるという事実は、これまでの過去のブログで書いてきたとおりです。副作用を軽減するという観点でいうと、アセチルコリン賦活作用が他の2種類よりも1/18~1/20程度と言われていて、他の神経伝達物質とのバランスを崩しにくいガランタミンが最も無難に使用できると思われます。
以前の内容の繰り返しにはなりますが、コリンエステラーゼ阻害薬にはさまざまな副作用が報告されていますが、主に問題になるのは以下のものです。
1) 徐脈性の不整脈、脈拍が30~40回/分という高度の徐脈に至り、心停止の危険性。
2) QT延長症候群、心電図でQT時間が延長している状態では、心室性不整脈を誘発して、心停止の危険性。
3) 食欲低下・吐き気、食事が食べられなくなって体重が減少して体力が低下して衰弱。
4) 頻尿、トイレに何度も行く
5) 動作・歩行能力低下、嚥下障害
6) 易怒・興奮性・常同行動悪化
近年、パーキンソン病の非運動症状が問題にされクローズアップされていますが、特に問題になるのが、自律神経不全症状と精神不安定症状です。
A)自律神経不全症状
自律神経は血圧や体温、内臓の働きなどを調整する神経で、活動する交感神経と休息する副交感神経が上手く切り替わらず、さまざまな身体的不調をきたします。MIBG心筋シンチグラフィーで証明されているように、心臓の自律神経が障害されてしまうため、血圧・脈拍がコントロールできず不安定になって血圧・脈拍が上がったり、下がったりする。特に立ち上がった時や食事後に血圧が急激に下がって気を失いそうになるなど。また体温調節の異常によるうつ熱、消化管運動能力の低下による便秘、膀胱を動かす運動能力低下による頻尿などが問題になります。
2) 精神不安定症状
もともと幻覚・妄想、抑うつ・不安神経症、などがみられますが、病気が大脳の前頭葉や辺縁系に影響を及ぼすために、この程度が強い事例では、易怒・興奮・精神錯乱などがみられることもあります。特にドパミン・アゴニストやその他の治療薬でこれらの症状が増強している状況があります。
以上でお分かりであろうと思いますが、元々、動作歩行能力が低下し、自律神経症状があり、精神症状のあるパーキンソン病に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬の追加処方は、時として火に油を注ぐようなものになりえます。
コリンエステラーゼ阻害薬を処方できるパーキンソン病というのは、動作歩行能力が低下していない(ヤール1~2度)、自律神経障害が少ない(血圧変動がほとんどない)、精神症状が少ない、という事例に限られるのではないかと思われます。そういう事例でも時間の経過とともに、病気が進行して運動症状、自律神経症状、精神症状が強くなっていくと推定されますので、いずれ安全に継続服用するのが難しい状況におかれるでしょう。
一般的にコリンエステラーゼ阻害薬の効果は1~3年程度しかもたないと言われていますので、特に75歳以上の高齢発症で、病気の進行が速く症状が重い事例では、パーキンソン病の諸症状をむしろ悪化させたり、副作用リスクの高い薬をわざわざ使う必要があるのか?と考えると強い疑念があります。
どうしてもコリンエステラーゼ阻害薬を使うと言うのであれば、リバスチグミンを1.125mg~2.25mg/日、ガランタミンを2~4mg/日、ドネぺジルを0.5~1mg/日程度でしか安全には使えないのではないでしょうか。
教科書に書いてあるパーキンソン病という病気の解説には、必ずアセチルコリンとドパミンの天秤の絵の解説があって、ドパミンよりもアセチルコリンが過剰になっているとされています。私が神経内科医になったばかりの時代は抗コリン剤がよく処方されていたほどです。コリンエステラーゼ阻害薬というのはアセチルコリンを増やす薬で、その真逆の作用です。アセチルコリンが過剰になっている状態にさらに上乗せする意味があるのか?ということになりますが、もし意味があるとすれば、それはドパミンを増やす薬を過剰に投与しすぎた場合に限られます。コリンエステラーゼ阻害薬を使おうと考える前に、まずはドパミンを増やす薬を減らすことを考えるべきだと思います。
当然ながらパーキンソン病にはコリンエステラーゼ阻害薬の適応はありませんので、上記のようなリスクとそれを冒してまで服用すべき必要性を十分に説明して同意を得る必要があるでしょう。適応外使用であることに関しても説明して同意を得る必要があるのではないかと考えるわけですが、実際に多くの患者さんたちは外来医からも薬剤師からもロクな説明を受けておらず、ただ訳も分からない状態で服用させられているというのが現実ではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2017-07-11 12:04 | 治療

パーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬?(1)

小生はパーキンソン病の関連学会に所属しているわけですが、学会ではパーキンソン病にコリンエステラーゼ阻害薬を使用することを推奨しており、治療ガイドラインにもそう書いてあるようです。また、最近発行された、パーキンソン病の治療に関する専門書(医学書)にも、コリンエステラーゼ阻害薬を処方する症例報告が当たり前のように掲載されています。パーキンソン病のエキスパートを自称されている先生方も、「パーキンソン治療薬を3~4種類処方した症例で幻覚・妄想が出現した症例にコリンエステラーゼ阻害薬を追加して良くなりました。」と自慢気に発表されていました。実際に使われる薬剤は、リバスチグミンとドネぺジルのようで、なぜかガランタミンが選ばれることはないようです。
実際にコリンエステラーゼ阻害薬を使用する意図としては、パーキンソン病に伴う精神症状である幻覚(特に幻視)を抑制するという目的が多いようです。認知機能低下を遅らせるという目的の場合もあるようです。リバスチグミンは1日用量18mg、ドネぺジルは1日用量10mgで使うように推奨されています。
学会のエキスパートを自称する先生方の講演会によると、パーキンソン病を発症して10~15年経つと認知症になるというお決まりのスライドが提示されます。認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の診断基準では、簡易テスト(MMSE)が26点以下としているそうです。この基準はそれまでの認知症の診断基準よりもハードルが下げられています。この基準だとパーキンソン病を発症している75歳以上の患者の2/3くらいは自動的に「認知症」にされてしまいそうです。治療ガイドラインでは「認知症であれば、ドネぺジルを試みるように(グレードB)」と記載されています。確かに、神経内科の専門医は判で押したようにどんなパーキンソン病症例に対してもこの薬が試みられているのが現実のようです。私はこのやり方に懐疑的ですので、こういう処方を選択することはありません。
レビー小体型認知症(DLB)におけるドネぺジルの安全性評価(承認時)によると、パーキンソン治療薬を一切服用しておらず、介助を必要としない日常生活動作が自立したレベルの運動障害、重症度ヤール1~2(5段階で)に使用することが望ましいようです。薬剤性パーキンソニズムの原因薬剤リストにも入ってる薬剤でもありますので、それが当然だと思います。パーキンソン運動症状が軽度(ヤール1~2レベル)で比較的若年(50~65歳)のレビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン運動症状が重度(ヤール3~5レベル)で発症10~15年経過した老年(75歳以上)の認知症を伴うパーキンソン病(PDD)がいつのまにか一緒くたにされてしまっている??というおかしな現実があるようです。
学会では「PDDとDLBは同じ神経病理だ」と言われますが、はたして同じ神経病理だから同じ病気なのでしょうか?死後の病理組織の所見だけで病気のすべてが説明できるわけではありません。神経の学会というのはとかく「病理至上主義」になりがちで、それが強く反映されたのが、多系統萎縮症(MSA)という病名の誕生です。それまで、別々の診断名であった、小脳症状が主体のオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)とパーキンソン症状が主体の線条体黒質変性症(SND)、自律神経症状が主体のシャイドレジャー症候群(SDS)を、同じシヌクレインが脳にたまる病理だからという理由で一緒くたにされてされてしまったという歴史があります。近年は学会においてエキスパート専門医を自称する先生方はPDDとDLBも同じ病名(レビー小体病)にしてしまおうという動きがあるようです。しかし、実際の臨床では前者(PDD)は発症して5~10年が経過し、パーキンソン治療薬が4~5種類てんこ盛りにされていて、ヤール3~5度です。当然治療薬過剰処方によって誘発されている幻覚・妄想もあります。後者(DLB)は発症して2~3年で、パーキンソン治療薬は全く処方されていない状態で幻覚・妄想があり、ヤール1~2度、やや動作が遅く歩きにくいという程度です。これだけ薬の使用状況が異なるにもかかわらず、これらは「同じ病気」と言えるのでしょうか?
ドネぺジルの安全性評価を見る限り後者(DLB)はともかく、前者(PDD)には果たして適応はあるのでしょうか?
今から約10年前にヤール3度のPDDの70歳男性にドネぺジル3mg/日で使用していました、認知機能は使用後からすぐに改善したのですが、ドネぺジルを4~6か月継続した時点で動作歩行レベルは明らかに低下しており、転倒による怪我が増えてしまいヤール4度になってしまったことがありました。また2年前にヤール3度のPDDの65歳女性にリバスチグミン18mg/日で使用していました。規定通り1か月ごとに4.5mg→9mg→13.5mg→18mgと増量していきました。その1か月後から、体幹の前屈と傾斜という姿勢異常が強くなり歩行時の姿勢保持が困難になり、やはりヤール4度になりました。これらの2つの事例を見てもわかるように、PDDに対してはドネぺジルやリバスチグミンを現在の推奨されている用量で使うというのは非常に難しいと言わざるをえないでしょう。
最近はリバスチグミンを非常に多くの症例で使用されている先生が、「パーキンソン病にリバスチグミンを少量で使えば、歩行が改善する」と言われていましたので、小生が診ている5つの症例で1日用量2.25mg~4.5mgで使ってみました。結果は2勝3敗。残念ながら、むしろ歩行障害や姿勢異常が悪化した症例が3例もありました。
パーキンソン病、特にPDDでは、視床のアセチルコリン神経(チャンネル6)が減少しているので、姿勢保持が悪化して転倒しやすくなるという仮説があります。リバスチグミンは脳幹網様体には有効に作用しても、ガランタミンのように視床には有効に作用しないようです。コリンエステラーゼ阻害薬の反応性を観察するかぎり、PDDとDLBではアセチルコリンとドパミンの相対的バランスは明らかに違っているのは間違いないでしょう。アセチルコリン神経系の障害や局在部位には症例によって明らかに差異がありますので、「死後の病理所見が同じだから、同じ薬を使え」という理屈は到底通らないのではないでしょうか?
臨床よりも病理偏重である診断名は混乱を招きます。「レビー小体っていったい何ですか?」というのが多くの一般人のうける感想ではないでしょうか?またレビー小体とパーキンソン病の因果関係は解明されておらず、レビー小体はパーキンソン病の原因なのか結果なのかは不明。レビー小体だけがパーキンソン病の原因とは特定できず、ミトコンドリアが原因であるという仮説も有力ではあるが、現在研究中のようです。そういう専門家にしかわからないような病名、特に患者さんの立場からわかりつらい病名というのは適切ではないと思われますし、まったく臨床像が異なる病気を一緒くたにしてしまうのは誤解を招くのではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2017-07-10 12:36 | 治療

パーキンソン病で必要性の高い薬、レボドパとアマンタジン

昨日、神経が専門でない一般臨床医の方々から、パーキンソン病の薬に関する質問がありました。
「レボドパ500mgとゾニサミド50mg服用しているパーキンソン病の患者さんで、ジスキネジアがひどかったので、ゾニサミドを中止して、アマンタジンを開始して150mgまで増やしたらジスキネジアが多少軽減しました。ジスキネジアを抑えるよい方法はないでしょうか?」
「現状ではジスキネジアを抑える方法としては、レボドパの服用方法を工夫する以外は、アマンタジンを使うという方法しかないと思います。ただし200~300mgだと幻覚・妄想など精神症状が出る場合があるので、150mg以下で維持するのがいいと思います。」と私は返答しました。ジスキネジアに対するアマンタジンの効果は60%程度で、1年継続後になると50%程度と言われています。レボドパ・アマンタジン以外の薬はすべてジスキネジアを悪化させる(例えばセレギリン)と言われているので、それらの薬を使用している場合は順次中止していくのが良いと治療ガイドラインでは言われています。
また別の臨床医の先生からは「パーキンソン病の治療薬で優先順位をつけるとすれば?」と訊かれました。誰もが知りたい質問のはずですが、これまで25年神経内科医をやっていて、おそらく初めて訊かれた質問だったのですが、やや悩みながらも以下のように回答しました。
1) レボドパ
2) アマンタジン
3) エンタカポン
パーキンソン病の動作歩行障害にはレボドパが欠かせない薬であるというのはおよそ万人が一致する意見だと思います。レボドパはアミノ酸で自然物質に近く、パーキンソン病治療薬の中で最も副作用の頻度が少ないというのが現実だと思います。90歳を超えた症例でも少量であれば安全に服用できて、かつ有効性が高いわけです。神経毒仮説については賛否両論があるのは事実ですが、私の考え方としては「その患者にとって必要以上の用量を処方すれば、神経毒として作用する」というものです。それは最近診察している患者さんからもはっきり見てとれるわけです。従来型のパーキンソン病(PD)ではなくて、パーキンソン病+認知症(PDD)・重症タイプの症例については、レボドパの必要量は100~200mg程度が適量だと考えています。1日量300mgになると幻覚などの精神症状が誘発されることがほとんどです。従来型のPDでも1日量600mgを超える量を継続すると高率に精神症状が出ると思います。特に高齢になればなるほどその可能性は高まると思います。
アマンタジンについては、レボドパの長期連用に伴って現れてくる、ジスキネジアを抑制できる唯一の薬としての重要性だけではなく、最近増加していると思われる、PDD・軽症タイプや高齢発症のPDに対して有効かつ副作用がでにくく使いやすい薬だという事です。ただし必要量は50~150mgになります。高齢者の場合は腎機能障害の問題があり、200mg以上を長期に継続すると、代謝されにくいので副作用が出やすくなるわけです。
エンタカポンについては、レボドパの効果を30~60分延長するための薬としての存在意義があります。言わばレボドパの補完的な位置ですが、レボドパという薬のもう1つの問題が、5~10年服用を継続することで、約半数程度にみられるウェアリングオフ現象(レボドパの効果が服用後2時間程度で切れてくる)の問題があるため、長期罹病者で必要になるケースは出てきます。高齢者でも安全に服用できるというのがいいのではないかと思います。
ドパミン・アゴニストなど他の薬がベスト3に入らなかった理由は、これまでのブログで詳しく書いてきたように、メリット以上にデメリット(副作用)の部分が大きく、特に高齢者に忍容性が低く、副作用による減量・中止を余儀なくされる薬が多いというのが実情だからです。
パーキンソン病患者さんのメインの年齢層が75~85歳が中心で、80歳以上の年齢層も多いという実情を考慮すればこの3種類の薬が中心にならざるをえないのではないでしょうか?


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by shinyokohama-fc | 2017-06-26 13:24 | 治療

ドパミンアゴニスト徐放剤+ゾ二サミドが高率に精神症状を誘発

これまで当院へ来られるまでに、深刻な精神症状 (現実味を帯びた幻覚、被害妄想など)をきたしていた方々の多くが、内服薬のドパミンアゴニスト徐放剤 (ロピニロール、プラミペキソール)と抗てんかん剤のゾニサミドを服用していました。多くのケースではドパミンアゴニスト徐放剤 (1日1回の服用薬)を増量する段階で出現しているようです。ゾニサミドは1日50~100mg程度のことが多いようです。それぞれの薬の特色については、以前の2つのブログにくわしく書いてありますので、ご参照ください。
おそらくこの2つの薬剤に関しては、手のふるえに対して効果があるという学説や論文などが多くを占めているので、専門医から処方される傾向があるようですが、手のふるえが軽くなる代償として、ひどい精神症状によって当人は精神錯乱状態となり、家族に多大な迷惑をかけているケースが数多くみられます。手のふるえを軽くするための治療としてはあまりにもハイリスクすぎないかと思います。もちろんこの2種類の薬を同時に併用しても、ドパミンアゴニスト徐放剤を増量しても精神症状が現れない幸運な人もいるとは思いますが、精神症状が出てしまう人は本当に深刻です。最近、患者さんのご家族による当院へ来院前の精神錯乱状態に関する詳細な記録を拝読する機会があり、胸につまるものがありました。ドパミンアゴニスト徐放剤とゾニサミドが使われるようになってから、深刻な精神錯乱レベルの副作用の事例が増えてきたのは、間違いないでしょう。以前「麦角系」のドパミンアゴニスト(ブロモクリプチン、カベルゴリン、ぺルゴリド)を主として使っていた時代はこのような深刻な精神症状をきたす事例は経験も見聞もしなかったように思います。また「非麦角系」のドパミンアゴニスト(ロピニロール、プラミペキソール)が登場した後もそれほどでもなかったと思います。やはり内服薬のドパミンアゴニストが速放剤から徐放剤に変更されてからではないかと思います。私が思うに、欧米人と日本人は明らかに体格・体質が違いすぎるので、 製薬会社主導ではない、大規模臨床試験を実施して副作用を再検証する必要があるのではないかと思います。
神経学会のパーキンソン病治療ガイドラインによると、幻覚・妄想の治療アルゴリズムというのがあり、直近に加えた薬物を中止するようにという指針があり、もちろんドパミン・アゴニスト、ゾニサミドも含まれています。
薬によって副作用が出てしまうのは仕方がないにしても、明らかに深刻な薬の副作用が出て、精神錯乱状態になっているのにもかかわらず、減量しない、中止しない、強制的に続行するという外来医の姿勢に問題があります。
患者側には「拒否権」があります。「ドパミン・アゴニスト、ゾニサミドを開始・増量してから、明らかに幻覚・妄想が出現している場合」に関しては、減薬・中止してもらうように申し出るべきでしょう。外来医は診察室のたかだか1~2分のごく短時間の患者さんの姿しか見ていないので、いかに深刻かを実感できない場合が多いようです。
「パーキンソン病」と診断されたはずの患者が、治療薬が開始されてから、幻覚、妄想、精神錯乱状態に至ってしまうと、なぜか途中から「レビー小体型認知症」にされてしまうというパターンがあまりにも多すぎて、失笑を禁じ得ないというのが私の感想です。「レビー小体型認知症」という病名を途中からわざわざ持ち出す真意はいったい何なのか?専門医による「レビー診断病」に決して騙されないようにしましょう。
個人的にはドパミンアゴニストについては、最初から徐放剤を使うべきではなく、まずは速放剤で2~3か月経過をみてから、徐放剤に変更する、安易にゾニサミドを併用しない。というのがおそらく無難な使い方ではないかと思います。そもそもレボドパを3回以上服用する場合は、ドパミンアゴニストも速放剤のまま1日3回で十分ではないでしょうか?わざわざ精神症状の危険をおかしてまで徐放剤を使う意義があるのか?とすら最近は感じています。
欧米人にはそうではない薬でも日本人にとっては超劇薬。そういう事は珍しくないと考えるべきでしょう。
体重80~90kgの60歳の欧米人と体重30~40kgの80歳の日本人に同じ処方をしようとする事が、そもそもおかしなことではないでしょうか?常識的に考えれば、そんな当たり前のことは誰でも理解できるはずです。


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by shinyokohama-fc | 2017-06-12 12:36 | 治療

パーキンソン病に処方してはいけない薬、エチゾラム&ゾルピデム

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬、特にエチゾラムは、70歳以上の発症して5年以上経過した、ヤール3度以上のパーキンソン病患者には処方してはいけないと考えます。理由は2つあります。
理由その1、パーキンソン治療薬の効果を妨害することが多い
理由その2、依存性・増量により呼吸抑制、誤嚥による肺炎を誘発しうる
1年前に外来で診ていた患者で、パーキンソン病ヤール3度、72歳男性。発症8年目。レボドパ・カルビドパ300mgとモサプリド15mgを続けていました。
前医で長期にエチゾラムが眠前処方されていて、夜間の唾液~喀痰貯留、呼吸困難があったため、エチゾラムを中止して、非ベンゾジアゼピン系睡眠導入薬に変更したところ、夜間の症状はなくなったようです。
エチゾラムを高齢者になるまで長年処方されている方で、何らかの脳疾患(脳梗塞、脳出血、パーキンソン病など)70~80歳で深刻な誤嚥性肺炎を起こすケースが多いようで、私もこれまで10例前後は経験しています。
それゆえエチゾラムという薬は私は自ら新規処方を開始しない薬です。この薬は筋緊張を緩めるために、パーキンソン病患者にとっては癖になりやすい薬です。ただし薬物依存性が非常に高く、エチゾラム信者になってしまう。最もやめにくい薬です。今年、この薬がようやく処方制限が出ました。今までなぜ放置されてきたのか?と思います。
エチゾラムは飲み始めたら最後、処方し始めたら最後という薬だと言っても過言ではないでしょう。慢性頭痛に筋緊張型頭痛という頭頸部の筋肉の収縮性の頭痛をきたすタイプの頭痛に対しても、安易にエチゾラムを処方する神経内科医がいるようです。海外の常識からすれば考えられないことで、「日本の薬の常識は世界的に非常識」と言えるでしょう。米国では州によっては禁止薬物に指定されている薬が、日本では普通に処方されているというのはどうなのか?と疑問に感じることがしばしばです。
薬物依存を専門に研究している専門家によると、抗不安薬・睡眠薬で問題薬物ベスト6は以下のとおりです。
1) エチゾラム 2) フルニトラゼパム 3) トリアゾラム 4) ゾルピデム 5) べゲタミン (クロールプロマジンとフェノバルビタールの配合剤、特にフェノバルビタールが問題) 6) 二トラゼパム
べゲタミンは特に致死率・死亡率がきわめて高く、自殺企図と肺炎が多いそうです。おそらくクロールプロマジンとフェノバルビタールはどちらも危険な薬ですが、併用というのが神経伝達物質に非常に悪影響を及ぼすのでしょう。
ゾルピデムという薬は、超短時間型の睡眠導入剤で、他のベンゾジアゼピン系睡眠導入剤に比べて、翌朝に持ち越さない、筋弛緩作用が弱く、ふらつきによる転倒イベントが少ないなどの利点が強調されていたため、私も数年前までは処方していました。一時期はこの薬を処方させるためのプロパガンダではないかと思えるくらい、過剰ともいえるベンゾジアゼピン系薬バッシングみたいなムーブメントがあったのを記憶しています。
しかし、この2~3年は、70歳以上のパーキンソン病の患者さんにおいて、他医にてゾルピデムが処方されて、幻覚やせん妄が悪化したり、レム睡眠行動異常が悪化したりという事例が続出しました。これまで他のベンゾジアゼピン系の睡眠薬やゾピクロンではそのような精神症状の副作用は1例もなかったため、非常に驚きました。
パーキンソン病患者の場合は、レム睡眠行動異常が高い確率で併存している、すでにレボドパなどドパミン作動薬を服用している、睡眠覚醒リズムの異常がみられるなど特別な問題があるため、一般よりも幻覚、せん妄などの精神症状が悪化しやすいようです。私がこれまで診てきた、ゾルピデムを服用していた、パーキンソン病患者さんについてはすべての症例でゾルピデムを中止させて、ラメルテオン、少量のプラミペキソール、ゾピクロン、エスゾピクロンなどに変更することによって、精神症状は消失しているようです。


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by shinyokohama-fc | 2017-06-08 18:46 | 治療

パーキンソン病治療薬の効果を邪魔する薬、酸化マグネシウム (マグミットなど)

パーキンソン病という病気は、動作歩行などの運動症状が現れる、何年も以前から「便秘」の症状が現れる患者さんが多く、パーキンソン病の患者さんの多くは、すでに2~3種類の消化器系の薬剤を服用していることがほとんどのようです。前回のブログでも書きましたが、異常たんぱく質が早期から延髄背側核に問題を起こしますので、その影響で消化管(胃腸)の運動が悪くなると言われています。
便秘への一般的な対処法としては、1日3食で生野菜を食べて十分な食物繊維を取り、食事の時と服薬の時にコップ1杯以上の飲料水を飲むことが推奨されていますが、それでも不十分な頑固な便秘に至る場合が少なくないようで、実際は緩下剤というのが必要とされます。モサプリドはセロトニン受容体刺激により消化管の運動機能を改善する作用があり、神経内科医のパーキンソン病処方においてはかなりの確率で処方されています。長期に服用すると肝機能障害の恐れがあると書いてありますので、モサプリドを服用している方は定期的な血液検査で肝機能が正常範囲かどうかのチェックが必要になりますが、私の経験ではこの薬は概ね副作用が少ない良い薬で、パーキンソン病の自律神経症状である消化管運動障害には欠かせない薬だと言っても過言ではないと思います。
緩下剤として内科でもっとも頻用されている薬、それは酸化マグネシウムです。パーキンソン病患者でも非常によく使われています。しかし、この実際はレボドパというパーキンソン病の治療薬で最も大事な薬とこの酸化マグネシウムや制酸剤 (ヒスタミン受容体遮断剤・ファモチジンなど、プロトンポンプインヒビター・ランソプラゾールなど)が併用されているがために、レボドパの小腸からの吸収が著しく阻害(邪魔)されて、レボドパが脳に十分に到達しないという状態になります。そのためいくらレボドパ(ドパミンの前駆体)を服用しても有効に作用せず、必要以上にレボドパが600~800mgまで増やされてしまうという事が非常によくみられます。レボドパはアミノ酸でパーキンソン病治療薬の中では最も副作用が少ないのですが、400mg以上に増やすと副作用出現頻度が高まると海外の大規模臨床試験では報告されています。パーキンソン病病歴5年以上の患者さんの多くにとってレボドパは運動症状を改善する必要不可欠な薬ですので、その肝心の薬の効果が阻害されるというのはかなりシビアな問題になるのですが、レボドパとマグネシウムを同じ時間に服用している患者さんがどういうわけか非常に多くみられます。
私はパーキンソン病の患者さんには、原則的に酸化マグネシウムを処方しないようにしています。日本人にとっては緩下剤(便秘を解消する薬)としては漢方薬が最も合うということは確認されていますので、パーキンソン病患者さんに対しては漢方薬をファーストで使うべきだと考えています。ただし長年前医にてマグネシウムを処方されている患者さんについては、レボドパを服用して2~3時間後にマグネシウムを服用するように指示しました。そうすることによって発症後20年以上経過した患者さんにおいてもレボドパ(同じ1日量)の効果が著しく上がり、1日の動作レベルが向上したようです。
酸化マグネシウムは腎機能が低下した高齢者では、長期間服用を続けると、「高マグネシウム血症」を起こしやすいと言われています。それゆえ製薬会社からの以下のような注意勧告があります。
・処方に際しては、必要最小限の使用にとどめてください。
・定期的に血清マグネシウムを測定して、高マグネシウム血症の発症に十分注意ください。
・高マグネシウム血症の症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診するようにご指導ください。
①血清マグネシウム5.0mg/dl以上 ; 悪心、嘔吐、徐脈、起立性低血圧、筋力低下、嗜眠、倦怠感、無気力
②血清マグネシウム6.0~12.0mg/dl ; 房室ブロック、QT延長症候群、嚥下障害、筋肉麻痺、血圧低下
③血清マグネシウム18.0mg/dl以上 ; 昏睡、呼吸筋麻痺、血圧低下、心停止
①~②くらいの症例は、75歳以上でマグネシウムを長期服用している、体重30~45kg程度の虚弱な女性であれば、よく見かけるはずです。しかし血清マグネシウムが定期的に測定されているケースは残念ながら非常に希少のようです。以前のブログで何度も取り上げている、高力価・高用量のコリンエステラーゼ阻害薬 (リバスチグミン18mgやドネぺジル5~10mg)と併用していれば、相互作用増強で心臓不整脈のリスクが高まるでしょうし、レボドパ・ドパミンアゴニストなどパーキンソン治療薬が高用量で使用されていれば、低血圧による失神など自律神経不全の悪化のリスクが高まるであろうと推定されます。
パーキンソン病患者の高齢者で当たり前のようにどこでも使われている薬だからこそ、要注意なのだと思います。


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by shinyokohama-fc | 2017-06-05 19:07 | 治療

パーキンソン病治療薬の副作用の治療薬?ドンペリドン(ナウゼリン)

ドンペリドン(商品名:ナウゼリン)は長年制吐剤として、「悪心・嘔吐」に対して一般臨床医にとても頻用されてきた薬です。私自身も若い頃は、この薬の事をよく知りもせずに「先輩医が使っているから」という理由だけで処方していました。恥ずかしながら、この薬が「向精神薬」だという重大な事実を認識せずに使用していました。
気が付くきっかけは、ジェネリック推奨になった10年前でした。「ドンペリドン」という名前は「リスぺリドン」にそっくりだという事に遅まきながら気が付きました。リスぺリドン(商品名:リスパダール)はご存知のように、非常に強力な力価の「向精神薬・抗精神病薬」です。数年前に施設入所中の患者を診ていたときに、ひどい精神症状で介護困難であった高齢者症例に対して、当時紹介した精神科医からリスぺリドンが1~3mgで処方されてから、急激に動作歩行が悪化して、全身がガチガチに硬直してしまった症例が何名かいたのを覚えています。このときこの薬がいかに強力すぎる薬かを実感しました。仕方なく使うとしても頓服で使用すべきでしたが、ずっと連日服用していたのも問題だったと思います。それ以後は65歳以上の高齢者には自ら処方することはなくなりました。元々加齢に伴ってドパミン減少している高齢者が連日服用してしまうと、悲惨な転帰を招いてしまうということです。
神経遮断系の抗精神病薬に共通した、深刻な副作用として「心臓のリズム異常」が知られています。以前のブログにも何度か書いていたと思いますが、心電図のQT間隔が延長して、致死的な徐脈性不整脈、心室性不整脈を引き起こすということです。近年のことですが、2005年以後、カナダとオランダの疫学研究で、ドンペリドン服用者では、心臓の突然死が1.6~3.7倍も起こりやすいことが示されました。欧州医薬品庁(EMA)が2014年にドンペリドンを使用する際は「できるだけ投与量を少なく、使用期間を短くして使うように」というコメントがありました。フランスのプレスクリール誌は、ドンペリドンに関連したと思われる突然死が1年で100人前後存在すると推定されたため、ドンぺリドンを市場から撤去すべきだと提言したほどです。代替薬としては、プロトンポンプインヒビター(PPI)かメトクロプラミド(プリンペランなど)が推奨されています。以前は主に小児において脱水時に注射剤、坐剤の使用によるQT延長による突然死が、1982~1985年の3年間で17例報告され、7例は死亡しています。注射剤は販売中止になりました。高齢者、特に女性、パーキンソン病においてはフレイルで衰弱している患者さんが多く、常時脱水リスクがあり、その上に神経系の薬剤がいくつも多剤併用されている状況ですので、たとえ内服薬でもQT延長による突然死のリスクが高くなるのは間違いないでしょう。
明らかにリスクの高い薬剤の長期連用によって、原因不明の突然死、あるいは救急搬送されている事例は数えきれないほど存在すると推定されますが、「高齢だから仕方がなかったね」という事で闇に葬られているのではないか。
最近、パーキンソン病に長期罹患している高齢者75~80歳の患者さんの薬手帳をみると、判で押したように、ドンペリドンが処方されています。この1年だけでも10名程度はいたでしょうか?なぜこの薬を服用する必要があるのか?私には理解できなかったので、当然のごとくほぼ全例で減量~中止しましたが、特に中止して問題は起こっていないようです。神経学会作成の「パーキンソン病治療ガイドライン」によると、「ドンペリドンは脳内移行が極めて低いために、パーキンソニズムの発現・増悪頻度は極めて低いので、制吐剤として推奨される」と記載されています。元々、パーキンソン病という病気は、運動症状が発症する何年も前から、延髄へのシヌクレイン(病気の原因と推定されているタンパク質)蓄積による迷走神経背側核の障害があり、胃腸(消化管)の動きが悪くなる傾向があります。パーキンソン病治療薬としてよく使われる、レボドパやドパミン・アゴニストにも副作用として消化器症状があるため、いわゆる患者さんが薬を飲むのを嫌がらないため、副作用出現防止目的で処方される、典型的な薬剤カスケードの処方薬です。ご存知のように薬剤カスケードがポリファーマシーの入り口になります。初期の治療薬の導入時、2~4週間の期間限定であれば納得できますが、ありえないことに、このドンペリドンを何年も長期にわたって飲まされているのです。私はこのドンペリドンを長期間飲ませれている患者を診たら、まずは心電図の検査をします。それはコリンエステラーゼ阻害薬の場合と同様です。心電図のQT時間が0.47以上で黄信号、0.48以上で赤信号のレベルです。赤信号だと突然死につながる致死性不整脈のハイリスクレベルになります。
75歳以上の高齢者に対しては、安易に処方できる薬ではないことがわかっていただけるのではないでしょうか?また漫然とこの薬を継続されている場合は注意が必要です。どうしても継続しなければならない場合は、心臓不整脈による突然死のリスクに関して患者さん側に十分にインフォームドコンセント(説明)する必要があると思われます。
にもかかわらず、4~5年も無意味にこの危険な薬を継続する意味はいったいどこにあるのでしょうか?パーキンソン病を長年患っている高齢者はただでさえ、自律神経不全に至っているため、心臓突然死のリスクが高いです。それはMIBG心筋シンチグラムという検査ではっきりと証明されています。
余談ですが、コリンエステラーゼ阻害薬にもこの「QT延長症候群」という危険な副作用はよくみられます。原因薬剤を中止して2週間してから心電図を撮り直すと、QT時間は正常域に戻っています。
コリンエステラーゼ阻害薬 (ドネぺジル、ガランタミン、リバスチグミン)とドンペリドンあるいはリスぺリドンを心臓の弱っている高齢者に併用したらどうなるか? 低く見積もっても、1.6倍×1.6倍で2.56倍!!私自身はとてもそんな恐ろしい処方はできないと考えています。コリンエステラーゼ阻害薬による消化器症状(嘔気など)は実際言われているよりもはるかに少ないと思いますので、わざわざドンペリドンを併用する意味はないと思います。心臓突然死の安全性を考慮すれば、百歩譲ってPPIかメトクロプラミドの頓服用処方でしょうか?消炎鎮痛剤(ロキソプロフェンなど)に胃薬を併用するくらい意味のない処方だと思います。私は自験例においてドネぺジル、ガランタミンで消化器症状が出現した症例を検証してみましたが、他の医者による併用薬の影響、肝機能障害、腎機能障害でした。ただしガランタミンの場合は、むしろ緩徐な消化器症状によって、食欲低下~体重減少のほうが要注意のようです。そういう副作用を予防するために、心臓リスクを冒してドンペリドンをずっと併用してまでも、ガランタミンやドネぺジルを処方する意義がどれほどあるのかと考えるとはなはだ疑問だと思います。
ドパミン・アゴニストにも言えることですが、病気そのものの進行を止める効果があるわけでもない薬を、危険な薬剤カスケードをしてまでも無理に服用する必要があるのでしょうか?よくよく考え直したほうがいいでしょう。



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by shinyokohama-fc | 2017-06-02 12:13 | 治療

パーキンソン病治療薬の副作用(5)ドパミン・アゴニスト(後編)

ドパミン・アゴニストで最も多いのは、眠気・睡眠発作ではないかと思います。もともとパーキンソン病の方というのは脳幹網様体の障害に伴う睡眠覚醒リズムの異常があり、日中は眠く、夜間は眠れないという傾向があります。薬剤過敏性体質の方だと、レボドパでも眠気が誘発されるようですが、ドパミン・アゴニストは単独で開始量のごく少量でも強い眠気のため、継続が困難になりやすいようです。徐放剤に変更されてからはより眠気が起こりやすくなった印象がありますので、まずは最初に処方開始する場合は、速放剤で少量ずつゆっくり漸増したほうがいいのかもしれません。というのはある程度の期間服用したら、眠気がなくなるケースが少なくないからです。中でも「突発性睡眠(睡眠発作)」は危険で、もともと眠気を自覚したいないまま、突然眠り込むため、自動車運転や機械操作などで事故を起こす可能性があります。
また高齢者の場合は、心不全、悪性腫瘍など様々な事情で下肢のリンパ液の循環が悪くなっており、レボドパとドパミンアゴニストの併用で、下肢、特に膝から下の下腿がむくみ(浮腫)やすいようです。
ドパミン受容体は胃腸に存在しますので、ドパミン・アゴニストが結合することによって、嘔気(嘔吐)、食欲不振、などがおこりますが、この副作用は従来使用されていた「麦角系」よりも、現在使用されている「非麦角系」のほうが少ないようです。
起立性低血圧による、立ちくらみ、ふらつきもドパミン・アゴニストでよくみられます。レボドパと併用、薬の増量によって血圧変動が大きくなります。まずは寝ている状態で血圧を測定し、立ち上がってからの状態で血圧を3~4回測定します。通常は立ち上がった状態のほうが血圧が高くなりますが、起立性低血圧の場合は、3~5分程度血圧が15~20mmHg下がった状態で経過します。
このようにドパミン・アゴニストの副作用は多くみられ、非常に多岐にわたっているので、この薬を処方する前にはこれらの副作用に関して十分なインフォームドコンセント(IC)が必要であろうと言われています。しかし、実際はこれらの副作用に関して、患者さん側に十分に説明されていないことの方が多いようです。


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by shinyokohama-fc | 2017-05-29 15:52 | 治療
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