カテゴリ:医療( 38 )


症状が同じでも病態は異なる/病因は同じでも病態は異なる

臨床の現場で長年診療していると以下のケースに当たる事が少なくないです。
1) 症状は同じでも病態は異なることがある
例えば前回のブログで取り上げた若年性認知症に関しては一般的に言って頭頂葉と前頭葉の症状が中心になります。
頭頂葉の症状が中心だと一般的に大脳皮質基底核変性症候群(CBS)と診断され、前頭葉症状が中心だと行動障害型前頭側頭葉型認知症(bv-FTD)と診断される傾向にありますが、その病態は死後の病理解剖では、CBDやFTDではなくアルツハイマー(ATD)と診断される事が少なくないようです。つまり頭頂葉・前頭葉症状が中心でもCBD,FTD,ATD,
と様々な病態が考えられますが、それらを鑑別する事は不可能です。現在研究中のアミロイドPETやタウPETに多少は可能性がありますが、検査が超高額であるために実用的とは言えません。また混合病理・病態には対応困難です。これらすべての疾患を網羅しうる現時点では根治的治療法はタウ凝集阻害剤しかないと思われます。
CBSでも病理はPSP、PSPSでも病理はCBDなども珍しくない事であり、病理診断を臨床診断と合致させる事は不可能であることは成書に記載されています。今現在もっとも混沌としているのは幻覚・パーキンソン症候群の解釈であり、この症候群がDLB以外にもPSPS,CBS,bv-FTD,J-ATDなどが少なからず混在しているようです。パーキンソン症状があればレボドパなど抗パーキンソン薬剤を使うべきか?たしかに一度は試してみる価値はあると思いますが、有効性・メリットが感じられなければすぐに撤退(減量・中止)すべきだと思います。私の臨床経験では比較的安全に抗パーキンソン薬剤が通常用量で規定通り増量して使用できるのは発症10年以内のパーキンソン病(PD)だけだと思います。DLBやPDDは通常量だと幻覚・妄想などの統合失調症様症状を誘発しやすいですし、中には抗パーキンソン薬剤で低活動性せん妄や嗜眠傾向が誘発される症例も少なくないのが現実です。
2) 病因は同じでも症状が異なることがある
同じアルツハイマー病態(病理)でも60歳以下の若年発症者は頭頂葉・前頭葉症状が中心になり、問題行動が顕著です。一方で70歳以上の高齢発症者は数年間は海馬症状だけにとどまる症例が多く、一部前頭葉症状が出現するくらいで、頭頂葉症状まで出現するケースはごく稀です。またシヌクレイン病態(病理)でもPD,PDD,DLBはそれぞれ臨床像と経過の格差が大きく、特に発症年齢によってまるで臨床像が違うようです。PSPSやCBSもまったく同じで臨床像はさまざまです。一般的に言えることは若年発症は進行が比較的速い傾向にあり、高齢発症は進行が比較的遅い傾向にあると言えます。PSP症候群においては特にそれが顕著なようです。神経変性疾患を数多く診療して強く感じる事は、今の正確性の乏しい診断名(ATDとかDLBなど)から決まった画一的な薬物選択というシステム自体にもはや限界を感じます。それが柔軟性のない硬直化した薬物治療を多く生み出しているような気がします。やはり重要なのは診断ではなく対症療法です。認知症症候群の様々な多種多彩な症状への対応、副作用が非常に出やすく使いにくい神経系の西洋薬よりもむしろ漢方薬に可能性を感じます。今後は様々な漢方薬を積極的に試していきたいと思います。



新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-05-18 19:26 | 医療

若年発症の認知症症候群

一般的に神経内科医が認知症症候群として若年発症のケースを診療するケースは稀です。たぶん認知症専門外来でも1~2割程度、一般内科医が診る機会はほとんどないのではないかと思います。多くは行動異常が前面的に現れるために実際は精神科を受診することがほとんどではないかと思います。多くは「認知症」としての診断が困難で、精神疾患と捉えられて薬物治療が実施されるケースが多いようです。前回のブログに書きましたように、抗精神薬やコリンエステラーゼ阻害剤で過剰な副作用・奇異反応によりかえって病状が悪化するケースが多いようです。
45~65歳の若年発症例では病状が4~5年単位で目に見えて進行するケースが多いようです。また若年に限っていうとアルツハイマー型(ATD)は30~40%程度で、前頭葉型(FTD)の割合が多いと言われます。実際はATDでもFTDでも臨床症状・経過としては程度の差異はあれど、一般的に以下のような特徴を示す傾向にあります。
1)早期からの頭頂葉症状
肢節運動失行(習熟した行為開始が困難)・観念運動失行(習慣的動作が意図的にできない)・観念失行(目的のある道具使用と一連動作ができない)・構成失行(形態・造形ができない)・着衣失行(衣服の着脱衣ができない)・左半側空間無視(左側の対象を見落とす、常に左側を無視し、右側を向く)
2)早期からの前頭葉症状
運動性失語・非流暢な会話・被影響性亢進/環境依存傾向・常同行動/周徊行為・脱抑制行動(立ち去り行動など)
3)パーキンソニズム(おそらく前頭葉起源と推定される)
姿勢異常・動作歩行の緩慢さ・四肢の巧緻運動障害など、通常振戦(手足の震え)はみられない
記憶障害が進行するよりも1)~3)のような行動異常が進行してくるので、当人の不安・焦燥がより強いようです。臨床症状の特徴から、しばしば大脳皮質基底核変性症候群(CBS)との鑑別が難しくなります。臨床的にFTDやCBSと診断されたケースが病理診断がATDであったという事は少なくありません。頭頂葉症状と前頭葉症状が双方とも顕著な臨床像ではCBS-FTDと命名されます。病理診断はFTDだったりATDだったりします。パーキンソニズムがあるからDLBという事ではないと前回のブログで書きましたが、症例を見ればその違いがわかるはずです。
個人的な感想ですが、認知症症候群の病理診断名を臨床診断名にするのは無理があるのではないかと感じます。記憶障害は側頭葉症候群、失行は頭頂葉症候群、脱抑制・アパシーは前頭葉症候群という名前でいいのではないか。それぞれの症状についての対応が大事だと思います。現状は診断はATD?(ATDという正確な診断は現状では不可能)だろうから全員一律にコリンエステラーゼ阻害薬を決まった用量で内服させようということになっていますが、前頭葉症候群が強いATDに対してはかえって常同行動や脱抑制を悪化させてしまうリスクもかなり高いわけです。若年発症者の場合は最初の2~3年は問題なくても、2~3年経つと薬による問題が出てくる事が多い。前頭葉症候群はもっとも介護者を精神的に疲弊させる症状ですので、薬が適切なのか再考する必要が出てくると思います。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-05-16 16:58 | 医療

精神疾患と神経変性疾患の鑑別検査

認知症の行動心理症状に幻覚・妄想というのがあります。一方で認知機能障害を伴わない高齢者の妄想性精神障害が高齢者人口の急増に比例して最近増えているようです。高齢の独身者(未婚者または未亡人が多い)、独居者、社会的・精神的に孤立者などが多いようです。精神学者のRothにより、遅発性パラフレニー(the natural history of mental disorder in old age)と名つけられています。また遅発性統合失調症なるケースもあり、自分とは無関係の対象への体系化された幻覚・妄想を訴えます。双方とも認知症はまったくないかあってもごく軽度(年齢相応)です。
本来はこういう症状が主体の方は精神症状の対処に精通した精神科医を受診されるのが適切なのですが、私のクリニックにもときどきこういう方が来られます。診察した第一印象ではDLBのような違和感は感じられません。プレコックス感や暗い感じも全くみられません。初対面の人に対する人格・感情・礼節などは保持されているようです。
しかし本人やご家族に話を聞いてみると、幻覚・妄想が自分とは本来無関係の対象にまで体系的に広がり、発展性があるようです。その訴えの内容も自身に対する迫害妄想や色情妄想でより具体的であるため、それに関連した問題行動を起こしてしまうリスクを伴うようです。統合失調症などの精神疾患の病歴がなくても統合失調気質、妄想的人格傾向の方は数多く存在しますので、そういう人々が高齢化による周辺環境の変化により発病してしまう事が少なくないようです。当院に来るまでに前医であらゆる抗精神薬が試されている方もいますが、多くはこういう薬剤が奏功しにくいようです。また薬の長期内服により副作用の問題が懸念されます。若年者と同様に自傷他害に至る危険性が非常に高く、本人の同意を得ない入院の対象になりうるため、精神保健指定医による診療が必須と考えています。
認知症の妄想の多くは家族など身の回りの人を対象とした物盗られ妄想や嫉妬妄想で、DLBにおいても幻覚(幻視・幻聴)と被害妄想を訴えますが、断片的で体系化されておらず、空想的で内容は変化する場合が多いので、周囲の人間が適切な介護ケア対応をすれば問題行動を起こすに至らない事がほとんどです。
遅発性統合失調症やパラフレニーなどと思われる幻覚・妄想を中心とした精神症状で来院される方の多くはATDでみられる認知機能低下はなく、DLBでみられる動作歩行緩慢などのパーキンソニズムがまったくみられません。認知症を診察してきた神経内科医の立場から言うと、やはりATDでは相応の認知機能低下、DLBでは相応の動作歩行緩慢・思考遅延がみられるはずです。典型例DLBのパーキンソニズムはPDのそれに比べると多くは軽度ですが、医療者でなくても誰が見ても第一印象でそれだと目で見てわかるくらいハッキリしています。
昨今はDLBの疾患啓蒙活動が功を奏したためか、DLBの精神症状だけがクローズアップされているようですが、臨床現場ではDLBという疾患はそれほど多いという印象はありません。特に動作歩行障害・パーキンソニズムがまったくみられない(診察上でドパミン欠乏が全く確認できない)、抑うつ症状や激しい幻覚・妄想症状が前面に現れた非典型例の場合は除外診断目的としてダットスキャンを使用したドパミントランスポーターイメージングシンチグラフィー(DTI)という検査が有用ではないかと考えます。逆に言えば臨床的にパーキンソニズム動作歩行障害のハッキリしている症例にこの検査を実施してもほとんど意味はありません。例外的には心因性・演技性パーキンソニズムの場合は、疾病利得的な心理性が強い方が多くて対応に困ります。遠方から遥々付添人なしで単独で来院する方が多いです。こちらがパーキンソン関連疾患ではありませんと説明しても、頑として「自分はパーキンソンだ」と言い張りなかなか納得されませんので、そういうケースではDTIは有用だと思います。DTIという高額な検査を実施せざるをえないのはCT・MRIという形態的検査では精神機能性疾患と神経変性疾患の鑑別が難しいからという理由です。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-05-14 11:44 | 医療

行動障害型前頭側頭型認知症(bv-FTD)について

前頭側頭葉変性症(FTLD)は人格変化や行動障害、言語障害を主徴とし、大脳の前方部(前頭葉・前部側頭葉)に主病変を有する変性疾患の症候群です。3つの臨床病型が代表的で①前頭側頭型認知症(FTD)/行動障害型前頭側頭型認知症(bv-FTD) ②進行性非流暢性失語(PNFA) ③意味性認知症(SD)です。従来の病理診断的な呼称であるFTLDという呼称は臨床現場では用いられなくなりつつあります。欧米と違いアジアでは家族性は極めて少ないと言われていますが、何らかの遺伝的因子が関与している症候群も少なからず存在するようです。画像診断としては前頭葉と側頭葉前方部に限局した萎縮所見がみられ、国際コンセンサス基準によるとbv-FTDにはいかの臨床的特徴があるようです。
1) 早期からの脱抑制行動
2) 無関心・無気力・無感動(アパシー)
3) 同情または共感する能力の欠如
4) 保続的・常同的・儀式的な行動
5) 食行動の異常・口唇傾向
6) 実行機能の障害
bv-FTDは前頭葉機能低下そのもので起こる陰性症状(2)と前頭葉機能低下によりより後方(後方連合野・大脳辺縁系・大脳基底核)の機能がコントロールを失い暴走する陽性症状(1)があるようです。
陰性症状としてのアパシー・自発性の低下は初期の精神症状として9割でみられるが、陽性症状にかき消されて、気がつかれずにわかりにくい症例も多いようです。心的障害として他者の心的状態、思考・感情を推察したり、自分の思考・行動を振り返る意識が早期から障害されていまうことにより、家庭や社会における人間関係が破綻することが多いようです。また危険な運転行動や万引きなどの反社会的行為が目立つようです。
陽性症状としては抑制される部位により、以下のように分類されます。
1) 被影響性の亢進・環境依存症候 (模倣行為・反響言語など); 後方連合野への抑制障害
2) 脱抑制・我が道を行く行動(going my way) (立ち去り行動・考え無精など); 大脳辺縁系への抑制障害
3) 常同行動 (常用的周遊・食行動パターン化・時刻表的生活・反復行為) ; 大脳基底核への抑制障害
bv-FTDの食行動異常の9割以上が過食で、嗜好変化や偏食も目立つようです。極端に甘いものばかり大量に摂取するため糖尿病のリスクも高くなるようです。
環境依存傾向の強いbv-FTDのケアとしては環境設定が最も大事だと言われています。環境変化に適応できずに、脱抑制が悪化して粗暴化したり、逆にアパシーが悪化して動けなくなったりする事例はよく聞かれます。
bv-FTDの症例では特に40~60歳前後の比較的若年発症例では薬物療法が困難を極め、効果があっても短期間で、しかも様々な副作用が出やすく治療に難渋するケースが多く、その多くは抗認知症治療薬や抗精神薬の使用によって病状が悪化するようです。次節では症例から経験した薬物不応例・副作用例について報告したいと思います。
参考文献) 老年期認知症研究会誌 vol.17 2010 p97-100 ; 前頭側頭型認知症の臨床症候学 池田学教授(熊本大)


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-05-02 14:16 | 医療

パーキンソニズムとは何か?

神経学的な精緻診察なき乱雑な外来診療では「高齢者の歩行障害=パーキンソン病、パーキンソニズム」という安易な評価・診断がされがちです。患者が多く十分な診察時間がとれない状態では致し方ない場合もあります。
まず高齢者では脊椎疾患による脊髄障害による歩行障害を除外しなければなりません。特に女性の場合は骨そしょう症による脊椎変形や圧迫骨折が少なくないので要注意です。長期の脊髄圧迫は下肢運動障害の原因になりえます。
また高齢者では加齢に伴いドパミンが低下傾向になるので、動作が遅くなり、震えやすくなる傾向にあります。
まず注意すべきなのはドパミン阻害剤です。嘔気止めのドンぺリドンやメトクロプラミド、抗精神薬のスルピリドやチアプリドはたとえ少量でも高齢者女性では薬剤性パーキンソニズムをきたします。
パーキンソニズムを語る場合、まず本家の「パーキンソン病(PD)」を知る必要があります。PDの最大の特徴は左右差と初期の片側性です。初期~中期は必ず右か左かのいずれかにしか症状はありません。ベッドに横たわった状態、安静時の片手のリズミックな振戦(ふるえ)、丸薬手位という独特の手の姿勢があります。有名な歯車様筋固縮も同側にみられます。手関節と肘関節で一様な歯車的抵抗を確認できます。それに対して反対側にはそれらの所見はほとんどありません。次に姿勢は前傾姿勢、姿勢反射障害は前後に軽く押して踏ん張りにくい状態です。ただし姿勢反射障害の診察で明らかに自ら率先して倒れようとする場合があり、この場合は演技性・心因性という判定になります。発症年齢にもよりますが、発症して2~3年経つと動作が緩慢(遅く)になり、思考も緩慢で遅くなる傾向があります。PDの多くは神経質で慎重なので、中期まではほとんど転倒して大怪我することは稀です。高齢発症のPDの場合は動作歩行障害の進行が速く、発症後数年で幻視・妄想・認知機能低下が出現するタイプもあります。いわゆるPDDです。PDの一部がPDDに移行するようですが、高齢発症でもPDDに移行しないタイプもあるようです。
次に最近話題の「レビー小体型認知症(DLB)」ですが、一般的には上記のPDでみられるパーキンソニズムの軽度レベルのものが多く、やはり歯車様固縮ですが左右差はPDほど顕著ではないようです。DLBの中には前頭葉~側頭葉障害が強いタイプ、いわゆるフロンタルDLBがあります。この場合はフロンタルパーキンソニズムやアタキシアが混在してくるので、PSPSやMSAとの臨床的な区別が難しくなります。その一方で40~60歳と比較的若年発症に多い、妄想型DLBというのが存在します。統合失調症との鑑別が問題になるため、DATスキャンが診断に有用です。パーキンソニズムがほとんどみられないグループのためほとんどが精神科を受診しますので、神経内科の外来で診ることはまずありません。
パーキンソン関連疾患と呼ばれている疾患群ですが、見た目がPDと似ているだけで本質はまるで違います。
大脳皮質基底核症候群(CBS)は顕著な左右差が特徴的です。初期は一側の上肢のみ鉛管様固縮がみられます。やがて同側の運動拙劣が顕著となってきて、不使用という症状になります。しばしば運動麻痺と誤解されています。典型的なCBSは軽度のフロンタルアタキシアの開脚性失調歩行は存在するものの歩行は中期までは比較的安定しています。ただし視空間失認が顕著なため、一見安定しているように見えるわりには怪我が多いようです。
進行性核上性麻痺症候群(PSPS)は様々な病型があります。古典型のRichardson Syndromeは1~2年で急速に進行して歩行不可能になるタイプで、中脳被蓋が顕著に非薄化します。脳幹障害も非常に強いために、高度の嚥下障害に伴い喀痰貯留・呼吸障害などをきたしやすく、早々に胃瘻や気管切開を余儀なくされることが多いようです。
最近外来でよく見るPSPSはRSタイプに比べて進行の遅いタイプばかりです。しかし初期から姿勢反射障害が強く転倒するのが特徴です。またすくみ現象とフロンタルアタキシアの開脚性失調歩行が必ず全例にみられます。
PSP-Pというパーキンソン病にきわめて類似したタイプがあります。初期の臨床像はPDと似ていると言われますが、最大の違いは上肢に筋固縮が軽度~正常で左右差がないことです。頸部~体幹~下肢は筋固縮が目立ちます。
PSP-PAGF、純粋無動症(PA)タイプは前回ブログに記載したとおりで、四肢の筋固縮はほとんどなくむしろ筋トーヌスが低下しているためにしばしばMSAと誤認されます。体が固くないのにすくみや突進現象がみられます。PSPSの最大の特徴は前頭葉~後方連合野への抑制障害による被影響性の亢進と環境依存により動作歩行状態が大きく変化することです。ここが中脳黒質に限局性のPDとの違いです。
MSA(多系統萎縮症)の代表的なものはMSA-C(OPCA)です。上肢は小脳運動失調の影響で筋トーヌスが低下しますが、下肢は固縮ではなく痙縮となり、伸展位から屈曲するときのみ強い抵抗があります。Babinski反射や足のクローヌス(間代)という所見もみられます。MSA-P(SND)の場合は早期から四肢・体幹ともに高度の筋固縮があり、2~3年で全身がガチガチになります。あらゆる薬剤に抵抗性で、動作歩行レベルが著しく阻害されます。
NPH(正常圧水頭症)ではフロンタルアタキシアとパーキンソニズムが軽度~中等度みられます。初期はPSPSと非常に類似しているので、画像診断による確認が必須になります。画像診断でNPHでなければ多くはPSPSです。
このように代表的な疾患において「パーキンソニズム」を検証していくと一筋縄ではいかないというのがお分かりだと思います。やはりカギは「フロンタル・パーキンソニズム」と「フロンタル・アタキシア」の評価になります。
詳細は以前のブログをもう一度参照してください。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-04-07 19:23 | 医療

中脳障害をきたす疾患(PSP症候群とDLB症候群)

中脳というのはあらゆる場所とつながり、複数の路線が乗り入れているバスターミナルのようなものかもしれません。中脳~脳幹を主座とするPSP症候群やDLB症候群において多彩な症状をきたす理由はここにあるのでしょう。
中脳連絡系に関連する症候を以下にまとめてみます。
1)中脳ーマイネルト核 ⇒意識障害、嗜眠、記憶障害 ;アセチルコリン欠乏
2)黒質ー線条体系⇒パーキンソ二ズム(動作緩慢、歩行拙劣など) ; ドパミン欠乏
3)中脳ー大脳辺縁系⇒幻覚・妄想・興奮 ; ドパミン亢進
4)中脳ー大脳皮質系⇒せん妄・症状の動揺性
例えば、3)の症状によくリスぺリドンという薬剤が使用されます。一方で制吐剤としてドンぺリドンもそれに類似した薬剤でやはり中脳に作用します。どちらの薬剤も効果が非常に高いため臨床現場で頻用される傾向にある反面、誤って作用してしまうと1)2)のような症状をきたしてしまうリスクがあります。事実としてリスぺリドンを高齢者に使用したり、ドンぺリドンを小児に使用したりすることによって、ドパミンが阻害されるだけではなく、脳幹網様体が誤作動して意識障害に陥ったりするケースが時々報告されています。フランスでは座薬の販売中止が勧告されているほどです。
中脳障害により神経伝達のバランスが崩れている、PSP症候群とDLB症候群ではアセチルコリンとドパミンの拮抗バランスも微妙に崩れていると推定されます。PSP症候群の中には上記1)~4)の症候すべてが出現・消退をくりかえす症例が存在するという事を最近知りました。この症例にはレボドパ、ドパミンアゴニスト、コリンエステラーゼ阻害剤、漢方薬(抑肝散、真武湯)など様々な薬剤が試されましたが、いずれも一時的に効果があっても持続しなかったり副作用で忍容できなかったりでした。中でもレボドパ少量で強烈な嗜眠をきたす状況でした。保険医療ではもはや限界と判断したケースです。PSPSとDLBSは程度の差はあれど1)~4)の症候をきたしうるようです。実に様々な症状が現れるため、あらゆる神経系薬剤が使用されがちですが、それらの薬剤によってさらにバランスを崩してしまうケースが後を絶たないようです。それだけ中脳障害系の疾患のコントロールは一筋縄ではいかず、まさに難関と言えるでしょう。
PSPSで特徴的な中脳被蓋の高度萎縮所見は進行の速いPSP-RS(Richardson syudrome)では確実にみられますが、比較的高齢で発症するPSP-PやPSP-PAGF,PSP-CBDなどでは顕著ではありません。また眼球運動障害も発症して数年以後に顕性化してくる症例がほとんどのようです。中脳萎縮が画像的に軽度だからといって、中脳障害が存在しないわけではなくて、程度の差こそあれ、1)~4)の症候は存在すると考えたほうがいいでしょう。
PSPSとDLBSの最大の違いは自律神経障害と言われます。自律神経障害に著効する薬剤は残念ながら存在しないようです。PSPSでは頻尿や便秘などの仙骨部~腰部にある副交感神経関連の症状に限定されますが、DLBSではしばしば高度の心血管系自律神経障害による30mmHg以上の高度の起立性低血圧や徐脈、体温調節や発汗障害などをきたします。起立性低血圧の有無の確認は両者の鑑別の参考になるでしょう。
最近保険適用となったDATスキャンによるドパミントランスポーターイメージング検査では両者の鑑別は困難ですがMIBG心筋シンチグラムでは鑑別が可能と言われます。ただしこの検査とて糖尿病や心筋疾患による他の要素を除外できるものではなく、検査というのはあくまで参考程度にしたほうがいいようです。
参照ブログ) 「老年科医の独り言」http://ameblo.jp/lewybody/


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-04-06 19:17 | 医療

純粋無動症(Pure Akinesia)という概念

前回に続いて、「KEY WORD 1998-99 神経変性疾患 先端医学社」の42~43ページから引用です。
レボドパ無効の純粋無動症~すくみのみを呈する症例~ 中村利生・今井壽正
無動症はパーキンソン病に特徴的な臨床症状であるが、レボドパの出現によりパーキンソン病の理解が画期的な進展をみてほどなく、1974年に今井と楢林は、歩行・所持・会話など反復運動の加速とすくみ(無動症の一種)を主徴とし、筋固縮や振戦が全くなく、レボドパが無効な2例を純粋無動症(Pure Akinesia)として報告した。
その臨床的特徴を列挙してみると、
①PAは歩行・書字・会話など反復運動の加速とすくみを主徴とする。
②加速とはこれらの運動が次第に速まり(一定の速さになり)かつ運動の振幅が小さくなることである。小字症(micrographia)は一般に加速書字と並行して出現する
③すくみとはこれらの運動遂行時に止まってしまうことで、運動の一過性の破綻現象である。加速歩行の極限としてすくみ足に至ることもあるが、突然にすくむことも歩行の開始時にすくむこともある。
④加速ーすくみと表裏一体となるkinesie paradoxaleの出現
⑤すくみ足が明らかになると立位で防御反応の低下に伴う後方突進現象(retropulsion)が必発する
⑥四肢に筋固縮や振戦がなく、筋緊張はむしろ低下気味である
⑦痴呆がない
⑧レボドパが無効である
今井はそのうち4例で測定した髄液中のHVAがいずれも正常範囲であったので、この加速ーすくみの主要責任病巣は黒質線条体ドパミン系とは異なる症候群として上記命名(PA)した。今井の自験例では20年間で34例に達した。男性19例、女性15例で、すべて孤発例である。発症年齢は32~73歳、平均61.5歳で、経過観察しえた最長罹病期間は18年である。経過観察しえたPAがその経過中にすくみ以外にどのような症状を随伴してくるかに関心をもった。それはすなわち、1964年にSteeleらが核上性眼球運動麻痺、仮性球麻痺、構音障害、頸部ジストニア、痴呆などを主症状として発表したPSPの臨床症状の複合である。当初PAと診断され、後にPSPと診断され、病理学的にPSPと確認された例もある。臨床的にPAと診断された経過2年の剖検例では、病理学的にPSPと診断されたが、中脳被蓋の所見が乏しいことも判明した。これはPSPの症例のなかにはPAを初発症状とするものがあることを意味する。
<純粋無動症の後発する随伴症状>
①眼球運動障害31 ②開眼失行10 ③頸部ジストニア10 ④嚥下障害8 ⑤軽度痴呆7 ⑥びっくり眼4 ⑦palilalia2
PA/PSP症候群
臨床的にPAとPSPを分離して論じることに不合理な症例を経験した。経過1年で症状は加速ーすくみと側方注視眼振と垂直方向注視麻痺であり、いずれも軽微だが確実である。眼球運動障害を有意にとればすでにPAではない。しかしPSPの臨床診断の必要条件からはほど遠い状態にある。ここにPA/PSP症候群を想定・提唱し、その早期診断のために必須の症状と存在すれば診断を支持・補強する症状を分けて提示してみたい。
<必須症状>
①姿勢反射障害;これはすくみ足とは等価ではないが、すくみが明瞭になれば立位での防御反応の低下に伴い後方突進現象が必発する
②筋固縮;PAでは四肢の筋固縮はないのが普通であるが、頸部の筋固縮の判定はしばしば微妙かつ困難である。頸部のpassiveな前屈で軽い固縮が認められることがある。
③寡動症(動作緩慢);これも加速ーすくみと等価ではないが、PAが明瞭となれば結果的に同様症状に陥る。またこの両者が合併して出現することもある
④レボドパが無効;PAでも一過性にレボドパが有効なことがあるが、著効することはない。
⑤眼球運動障害;眼球運動の神経学に精通していれば、病初期から異常を指摘することができる
以上より、PSPの初期相が常にPAではないが、PAはPSPの初期における一特殊型であり、その頻度はPSPの半数に達すると著者らは推測している
以上が引用です。
2007年にWilliamsらにより、PSPの第3臨床病型としてPSP-PAGF(pure akinesia with gait freezing)と命名され、その臨床診断基準案として以下のように示されています。
①発症が緩徐で、早期に歩行または発語のすくみ現象がある
②持続的なL-ドパの効果がない
③振戦がない
④画像で多発ラクナ梗塞やビンスワンガー病を示唆する所見がない
⑤発症5年以内に四肢の筋固縮、認知症、核上性注視麻痺、血管障害による急性のイベントがない
PSP-PAGFは通常のPSPより罹病期間が平均13年と長く、平均9年目に眼球運動異常が出現していた。PSP-RSと比較して、大脳皮質、線条体、小脳、橋核のタウタンパク蓄積が軽度であったと報告されています。
以前勤務していた職場で、私がカルテの評価欄に「純粋無動症(pure akinesia)」と記したら、専門医にそんな古い言い方は今はしないのではないかと諭されたことがありました。しかし早期からはPSPの診断基準を満たさず、「Pure Akinesia」と評価するしかない症例が実際は少なからず見られます。当院では現在まで23例のPSP症候群と思われる症例を診察しましたが、少なくとも4~5例はそういう症例がありました。その中には前医で「脊髄小脳変性症」と診断されて難病申請までされていたケースもあり、当院の初診時は発症後3年ほど経過していました。小脳性運動失調の評価を四肢でしてみましたが、指鼻・膝踵試験や回内回外運動などにおいて左右は同調しており、小脳失調を示唆する所見は全くみられません。近年の画像診断でも小脳萎縮は確認できませんでした。歩行は開脚性で失調性でした。おそらく前医は失調性開脚歩行=小脳失調だと判断したのでしょうが、前頭葉性失調(Frontal Ataxia)という概念を知らなかったのかもしれません。歩行は他のPSP症候群と同様の典型的な前頭葉性失調歩行であり、上記に列記してあるPure AkinesiaとPSP-PAGFの特徴にほぼ合致していました。特に四肢に筋固縮がみられず、むしろ筋緊張は低下ぎみにみえる事があるので、神経内科の専門医でも小脳変性症と非常に間違われやすいようです。私個人としては「Pure Akinesia(純粋無動症)」という臨床像を表現する用語として大事にしてほしいです。専門医が患者の体に触ったり観察したりする時間を十分とらずに、画像診断偏重になりつつある昨今こそ古くからの臨床神経学をもう一度思い起こしてほしいと思います。今回取り上げた内容はそういう意味で価値があると考えています。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-03-27 19:06 | 医療

すくみ足と歩行失行

久しぶりに実家の本棚を探してみると、15年以上前に学会認定医試験勉強の目的で購入した古医学書を見つけました。あまり読まないであろう古医学書はほとんど捨てたのですが、先端医学社の「KEY WORD1998-99 神経変性疾患」というのがまだありました。100人以上もの神経内科の専門家の共著でしたが、何年かぶりに読んでみると、近年の医学書にはみられない結構有意義な事がいろいろ書かれていて、久しぶりに読んでいて感銘を受けました。画像診断が進歩してない時代のほうが、臨床症候の評価を精密に考察しているので、実地医科としては参考になります。
今回はその中から48ページの「すくみ足と歩行失行」を取り上げます。(以下引用)
すくみ足(frozen gait)とは、歩行を開始する際にまたはその途中において、足が床から離れず、前に進むことができない状態を意味する。視覚的または聴覚的刺激で改善する(paradoxical kinesia)ことがある。(中略) 床反力計ですくみ足を調べ、多発性脳梗塞では歩隔(左右の足の幅)がパーキンソン病に比べ有意に広かった。少歩の連続線上にあると考えられ、パーキンソン病と多発性脳梗塞とのすくみ足の発症機序は神経学的に異質なものと推定した。いまだに十分解明されていないが、リズム構成障害に関連するとされ、責任病巣は黒質ー大脳基底核ー前頭葉が関与していると考えられる。
歩行失行(apraxia of gait)とは、下肢の運動麻痺や感覚障害がないにもかかわらず、歩行に際して正しく下肢を動かす能力の低下または欠如と定義されている。もともと歩行失行は前頭葉失調(1892年、Brunsら)からGerstmannとSchilderが分離して独立した概念としたもので、長らく議論の対象になった。現在までに報告された症例を表にまとめた。歩行失行と考えた症例の歩行の特徴は歩き出そうとしてもなかなか第一歩が出ず、ようやく歩き出してもすぐに止まってしまい、再び同じ事を繰り返した。paradoxical kinesiaはみられなかった。歩行失行の責任病巣は過去の報告例からも前頭葉と考えられるが、補足運動野の関与も推定される。
歩行失行のおもな報告例の原疾患;脳腫瘍(前頭葉)、脳梗塞(前頭葉)、前大脳動脈動脈硬化、神経梅毒、ピック病
当クリニックでは10か月で約20例ほどの進行性核上性麻痺とその亜型と思われる症例群を診察してきましたが、パーキンソン病のすくみ足とは違って、歩隔が広い開脚性歩行であり、症例によっては体幹を揺らしながら、左右に足をぎこちなく運んで歩く症例が目立ちました。歩行開始時に床から足が離れないという感じであり、歩行が拙劣という表現が適切だと思います。病巣は両側前頭葉の内側と推定されていて、正常圧水頭症でも同様の歩行がみられます。今後は進行性核上性麻痺症候群(PSPS)のすくみ足と歩行失行の特徴について分析して考察してみたいと考えています。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-03-23 18:30 | 医療

てんかんと認知症の行動心理症状との鑑別診断の難しさ

ここ数か月で診た方々の中でも、てんかん性健忘に該当する方が数名いて、提携医療機関に脳波検査を依頼しています。しかし脳波検査では発作間欠期だと検出されない事も多く、また側頭葉てんかんでは興奮性などの精神症状を伴いやすいために、事実脳波検査をするとなると暴れている拒否する場合もあります。その多くは診察室では発作間欠期のため、意識清明で礼節や態度も問題なく、一見普通の人にしか見えません。簡易知能スケールにも協力的で25点前後です。つまりピック系の前頭葉タイプの認知症とは全く違っていてむしろアルツハイマー的です。そういう人が普段が著しく精神不安定で時に発作性に易怒興奮が激しいとなれば、側頭葉てんかんの可能性はかなり疑わしいものになります。そういう方々の多くはすでに精神科で抗精神薬などが2~3種使用済みであり、まったく効果がないかむしろ悪化する事が多いようです。脳波検査が無理なケースでも少量の抗てんかん薬を試す価値はあります。私が実際使用するのはラモトリギン(LTG)が一般的です。本来は側頭葉てんかんの第一選択はカルバマゼピン(CAZ)でしたが、高齢者の場合は忍容性に大いに問題があり、少量でもふらつきやめまいなどの小脳性運動失調の副作用が出現しやすく、また長期使用により小脳変性させるという報告もあり、てんかんが収まってもQOLが著しく低下してしまうので、神経内科医としては非常に使いにくい薬剤です。そこで現実的にはLTGという事になります。もう一つの新規抗てんかん薬のレベチラセタム(LVE)も単独使用が可能になりましたが、興奮性の副作用があるため、興奮性の症例にはやはり使いにくいのです。LTGで注意すべきなのは皮膚症状だけですが、少量で慎重に漸増すれば問題ないことが多いです。私の経験では少量のLTGを数例使用してすべて精神症状は治まりました。
実際、精神科で抗精神薬が数種類処方されても、精神症状がまったく治まらないというケースは少なくないようで、てんかんと認知症の行動心理症状との鑑別というのは専門でも難しいというのが実感です。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-03-13 18:39 | 医療

推薦図書・第2弾

個人的推薦図書、第2弾です。
今回は紹介するのは医学書ではなく、一般書で、書店では家庭医学と文庫本コーナーにあります。

1)「家族よ、ボケと闘うな!~誤診・誤処方だらけの認知症医療」著者 長尾和宏×近藤誠 2014.12.22
この書には、私自身が日常的に内科医として認知症診療していて感じられる事象がほとんど書かれているといっても過言ではないです。読んでいて私ときわめて価値観が近いと感じました。前回の対談形式に続いて、往復書簡というきわめて斬新な形式をとっています。印象的なテーマをざっと取り上げてみると「早期発見、早期治療に意味があるの?」「4つの薬が有効とされているけれど...」「なぜ医者は薬の処方を間違えるのか?」「認知症をうつ病を誤診する医者」「エビデンス主義は誰を幸せにするの?」「医者を信じるな?薬を信じるな?」などなど。認知症に関わる家族・介護者・医療者にすべて考えてほしいテーマですね。私的にはエビデンス...のところで、EBM(Evidence Based Medicine)に対して、NBM(Narrative Based Medicine)という物語(ストーリー)に基つく医療の重要性を強調されていて、認知症においては家族の生の声(NBM)の方がレベルが高いかもしれないという事に共感できました。認知症医療の混乱をもたらしているのは患者側の個性・個別性というものを度外視して、すべてEBMに無理矢理あてはめようとしている事だという指摘には同意できます。NBMについてはまた後日に自分なりにブログで意見を書いてみたいと思います。

2)「沈みゆく大国アメリカ」著者 堤未果 2014.11.19
内容はアメリカの医療、特に保険医療に翻弄されて、この国の保険制度のために真っ当な医療が受けられない一般市民や真っ当な医療が実践できない医者の実態などが書かれている。医療の恩恵を受けているのは笑いが止まらない保険会社(民間)と製薬会社とウォール街、資本主義・合理主義を徹底したらこうなってしまうのかと痛感しました。医療のファストフード化を勧める事で、医療者から仕事のプライドを奪い、家庭医やかかりつけ医がどこにもいなくなるという事態にまで至っているという事実は衝撃的です。医療の米国追従は是か非か?今の日本の保険制度を守るべきなのか?この書を読めばそれがわかるはずです。前のブログでもその一例を書きましたが、米国流のEBM一辺倒主義に日本の医療が追従するというのはきわめて危険です。病気を全体化するというのは個々の諸問題を無視したり矮小化したりする可能性があるからです。医療は全体化したファストフードではなく、個別の人間の物語に沿ってオーダーメイドに実践されるべきものだと思います。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2015-02-15 12:09 | 医療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line