カテゴリ:医療( 38 )


大脳皮質基底核症候群(CBS)の主要症候(2)行動抑制障害

タウイメージングPET検査において大脳皮質基底核変性症候群(CBS)ではタウが基底核と白質の限局的領域に蓄積するという報告がありました。PSPSでタウが前頭葉~側頭葉、中脳被蓋~脳幹、小脳に至るまで広範囲に蓄積するのと対照的でした。前頭葉障害型DLB(アミロイド蓄積型)でも前頭葉~側頭葉に広範囲にタウが蓄積するそうです。
CBSはPSPSに比べて非常に進行が緩く、症状が弱いという印象はこのタウPET検査からも理解できると思います。
CBSがPSPSと大きな違いは前頭葉障害がそれほど強くないことです。症候学について書かれた成書によるとCBSにおいてはPSPSでみられる「多幸」「脱抑制(行動抑制障害)」がみられないとされています。
しかし、PSPSに比べても極めて稀と認識されていたCBSの臨床像を呈する症例を75歳~85歳の高齢女性で比較的よくみかけるようになりました。そしてこれらの症例に共通しているのは、「多幸」「脱抑制」がほぼ全例でみられる事です。抑うつ的・神経症的な印象は皆無で、動作歩行障害がかなり顕著にもかかわらず、病識がまったくないため、しばしばその面で介護者のイライラ感を誘発しやすいようです。
高齢者CBSでは従来から言われている、常同行動、環境依存、失語症に加えて、利用行動(使用行動)、易刺激性、脱抑制行動などが前面に現れる症例が多いようです。これらの高齢者CBSを診察しますと、片側上肢運動拙劣症・上肢の左右差はそれほど顕著ではないが、上肢を目的をもって使用することは困難です。しかし多くの症例では車椅子に座っている高齢女性が突如として診察室の机の上のマウスやボールペンを触りだします。何の悪げもなく触る様子はまるで小さい幼児のようです。いわゆる利用行動(使用行動)という症状ですが、諸説あるがやはり被影響性の亢進、行動抑制障害(脱抑制)の一部と捉えるとわかりやすいと思います。前頭葉障害が画像診断ではさほどでもないのに、こうした症状が顕著に現れるのはなぜなのか?と症例をみながら考えました。行動抑制系の神経回路として「前頭葉-基底核-視床回路というのがあります。この回路が大脳基底核病変のみで伝達障害をおこすと言われています。その影響で二次的に前頭前野機能低下を起こして情動的精神症状や認知症類似症状を引き起こすと言われています。高齢者ではもともと加齢に伴う前頭前野の機能低下があるので若年者よりもこのような症状が出現しやすいのではないかと推定できます。つまりCBSの前頭葉症状の多くは二次的な症状ではないかと考えます。
パーキンソン病の外科治療として確立されている、深部脳刺激(DBS)ですが、主としてこの回路に含まれる視床・淡蒼球に作用する治療です。刺激ポイントが少しでもズレると症例によっては行動抑制障害がみられる事もあると言われます。この線条体・淡蒼球・視床という複雑なターミナルステーションのような部分の病変・障害はデリケートなものですので、神経系の薬剤の与で過敏反応や有害事象を起こす場合も少なくないのでしょうか。



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by shinyokohama-fc | 2015-10-06 12:49 | 医療

CBS(大脳皮質基底核変性症候群)の主要症候(1)一側上肢の運動拙劣

大脳皮質基底核症候群(CBS)と思われる症例を開院以来15例ほど診療してきましたが、最もわかりやすい片側上肢の顕著な運動拙劣症候が確認できるのは6例にとどまっています。顕著な片側上肢の運動拙劣~不使用のほとんどが「右手」ではなく「左手」です。今回はこれについて考察したいと思います。
おそらくCBSには右大脳優位機能低下タイプと左大脳優位機能低下タイプがあるはずで、その比率に関しては成書には記載されていません。左手の運動拙劣症状が現れる症例は右大脳優位機能低下例です。程度の差はあれ多くは左半側空間無視と非流暢性失語を伴っています。右大脳脳卒中で左半側空間無視の場合、失語は伴わないのと異なります。もともと大半の人は右利きであり、左手に比べて右手を使う機会は圧倒的に多くなります。私も1~2例だけ右手拙劣タイプを診ていますが、このタイプに関してはかなり進行しないとわかりにくいという事です。少なくとも右利きで右手を生来から頻用する方は右手の運動拙劣が表面化しにくいのではないか?それに対して左手の場合は普段使わないので、軽度の巧緻運動障害が起こると益々右手に頼る傾向が強まり、次第に使わなくなるので廃用化が早いのではないかと思われます。手の運動拙劣という症状はパーキンソン病の主要症状としても有名ですが、
パーキンソン病は発症年齢や個人の資質に差異はあるものの、重度の廃用化に至るまでは15~20年かかる傾向があります。それに対してCBS右優位タイプの場合は4~5年以内にほぼ片側上肢の完全拘縮・廃用化に至る事が多いようです。しかしこの「運動拙劣」という症状は一般の臨床医に理解されにくい症状でしばしば「運動麻痺」と誤解される事が非常に多いようです。存在しない脳梗塞による左片麻痺と診断されてしまうようです。たしかに左上肢を屈曲したまま歩行するので、一見重度の左上肢の運動麻痺に見えるのですが、私の手を左手に近つけると猛烈な力で握り返してきて驚かされることがあります。これは前頭葉症候群の本態性把握反応ですが、中等度以上のCBS症例にはかなりの確率で顕著な把握反応がみられます。手で触れたものを反射的につかんでしまうのです。また普段は全く動かさないにもかかわらず、何らかの外的刺激や状況反応によって突如動かないはずの上肢が無目的に動くという事もよくあります。つまり「運動拙劣」という症状は「自分の意志どおりに上肢をうまく動かせない(命令動作を含む)」と言い換えることもできます。「運動麻痺」の場合は麻痺肢にいかなる刺激を与えても重度麻痺の場合はまったく動きません。こういう症状は大脳基底核特有の症状で、基底核が障害されると起こります。CBSとPD以外で比較的多いのは脳血管性パーキンソニズムと呼ばれる病態であり、基底核に微小梗塞あるいは血流障害が起こることによるものです。最近は脳血管性パーキンソニズムの症例を診ることはCBS以上に稀になりました。
「運動麻痺」という症状は主として「錐体路」の障害で起こり、「運動拙劣」という症状は「基底核」の障害で起こります。高齢者医療に携わる医療者、看護・介護・リハビリの専門職にはそのことをまず知ってほしいと思います。


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by shinyokohama-fc | 2015-09-25 09:18 | 医療

長寿化・高齢者増加に伴う神経変性疾患の増加

敬老の日に発表された統計では、現在日本では65歳以上の人口が3384万人、80歳以上の人口が1002万人もいるという事です。ここ数年で後期高齢者(75歳以上)で何らかの神経変性疾患が発症するケースが激増したという印象ですが、それは母数の増加にもあるのでしょうが、感染症治療や心疾患・がんなどの予防が国民レベルに浸透したという医療的にはポジティブに捉えるべき成果の裏返しなのでしょう。
日常診療していて驚かされるのは80歳以上で発症する老年認知症(DLB、AGD(グレイン)、NFT-SDなど)が非常に多数を占める一方で、PSPSやCBSと思われる症例も比較的よく見られます。20年前に私が神経内科の診療を始めた頃はこのような症例は60~65歳前後で発症し1~2年に1人診るかどうかという程度でしたが、75歳以上で発症するPSPSやCBSが増えているようです。もはやPSPSやCBSは以前のようなレアな神経難病ではなくなりつつあります。神経内科医以外の診療科のDrはPSPやCBSを診たことがないDrも多いと思われるため、多くはパーキンソンに似た動作歩行障害があることからDLBやPDと診断されているようです。一般的に診療したときに最初にレアでマイナーな疾患を想定せず、メジャーな疾患を想定して薬物処方するのが常識的だと思われます。DLBに対してはコリンエステラーゼ阻害薬、PDに対してはレボドパなどパーキンソン治療薬を試すのが普通ですが、それらが効果がないか、むしろ奇異反応で症状が増悪する場合は、PSPSやCBSを疑うきっかけになると思います。特に80歳以上の方では一般的に高齢に伴う薬剤代謝能力の低下・薬剤過敏性の増加によって薬剤忍容性の低下がみられます。私の場合は80~85歳のPSPS、CBSに関しては神経系にダイレクトに作用するタイプの薬剤処方は極力最小限に留めるように心がけています。このような高齢者の神経難病に対しては薬物療法よりもむしろ緩和ケアが重要です。
医者というのは薬で治そうとしますし、患者側からもそれを求められます。しかし神経難病に有効な治療薬は存在しないという現状を考えますと、生活の質(QOL)を第一に考慮すれば80歳以上の方に対してに関してはやはり介護側が中心になって、いかにして神経難病の緩和ケアを充実させていくかという事に力点を置くべきです。神経難病はいわゆる老衰とは違います。何歳で発症しても神経難病です。老衰者のように穏やかな経過とはいかないわけです。そして50~60歳の神経難病と80~90歳の神経難病は臨床像も周辺環境などがまるで違うので、やはりそれぞれの年齢相応の対応というのが求められます。現状のように60歳でも90歳でも同じ薬物治療をガイドライン?していてはうまく行くはずがなく、80歳以上では薬物治療に限界を感じる事のほうが多いですし、むしろ弊害のほうが多いように思えます。


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by shinyokohama-fc | 2015-09-23 10:33 | 医療

MIBG心筋シンチ検査とDLB診断の限界

ここ1~2年のキャンペーンによって、DLBという疾患への啓蒙が進む中で、症候主体の箱入れ的診断法による患者あるいは診察医によるミスリード症例をたくさん見る機会が増えたという印象です。その多くは診断基準の主要症候といわれる、1)幻覚(特に幻視) 2)認知の変動 3)パーキンソニズムの正しくない解釈によるものでしたが、ここに来て補助診断的検査の正しくない解釈症例も目にするようになりました。
MIBG心筋シンチという検査があります。心筋の自律神経を評価する目的の検査です。長年糖尿病を患っていたり動脈硬化を患っていて無症候性の心筋梗塞がありそうな症例、特に男性高齢者では当然欠損像が多くみられます。先日、MIBG心筋シンチで欠損が確認されて、認知症専門医?にDLBと診断されたという長年糖尿病を患っている80代男性の方が訪れました。この検査をオーダーした専門医?は長年糖尿病を患うとその罹患年数に比例して糖尿病性自律神経障害が起こってくるという事実を知らないのかもしれません。検査というのは必ず落とし穴があり、それゆえこういう検査はあくまで補助的な位置つけにしかならないわけです。
症候学的解釈の誤りのよくあるパターンとしては
1)幻覚(幻視)⇒薬剤誘発性(抗PD剤など)、前頭側頭型変性症候群(前頭葉起源)、側頭葉てんかん(側頭葉起源)
2)認知の変動⇒薬剤誘発性せん妄、電解質異常、側頭葉てんかん、行動障害型老年認知症の症状の曲解
3)パーキンソ二ズム⇒長期罹患パーキンソン病、薬剤誘発性EPS、PSP/CBSなどの症状の曲解
DLBという症候群をなんでもかんでも入れてしまう箱入れ的診断法(疾患群の広義化)に私が賛同できない理由というのは、非常に多種多彩でヘテロな症候群に対して、画一的な薬物処方がまるで通用しないという事実がわかったからです。薬剤過敏性による薬害を極力減らすためにはDLBという症候群に対してはできるだけ上記に挙げた除外診断を徹底することにより狭義化するべきだと個人的には感じます。そもそも主要症候の1)~3)を根拠にDLBであろうと言われてしまう症例群が本当にDLBなのか?患者を診れば診るほどわからなくなり、神経系薬剤の処方を重ねれば重ねるほど病態がどんどん修飾されすぎて迷宮入りしてわからなくなるというのが現実です。一番厄介なのはすでに4~5種の神経系薬剤の多剤処方をされていてどうしようもない状態で来られる方です。一度神経伝達物質や受容体の流れを多剤で修飾してしまうと本来の症候的な病態がまったく見えなくなるからです。例えば前医にパーキンソン治療薬を3~4種類も使用されて幻覚が出て大変だ!というDLBらしき症例をときどき見かけますが、この状態でパーキンソ二ズムの評価をしようというのが無理な話で、こういう症例の多くは診察室では明らかな筋固縮はみられず、薬が過剰、効きすぎて何らかの副作用が出ています。一般的にDLBのパーキンソニズムというのは初期~中期は基本的に軽度で、安静時振戦は目立ちません。ただしパーキンソニズム(薬剤誘発性EPS)を起こす薬がまったく入っていなければの話ですが。四肢・体幹の歯車筋固縮が顕著なDLBはまず見たことがないです。
結論をいうと、DLBの診断というのは非常に難しいです。PSPSやCBSの診断のほうがはるかに明確でブレがない。その捉え所のないヘテロな症候群をそれぞれ複数の神経系薬剤によってコントロールというのはさらに難しいです。それは個々の症例がすべて薬剤に対する反応が全例違うからです。多くの症例では想定外の副作用が続出してしまうため、どこからが主症状でどこからが副作用かがさっぱりわからないという迷路に入り込みます。どんな薬剤を試してもすべて副作用が出てしまってどうしようもないという症例も少なくないわけです。コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)が有効だとよく言われますが、実際はまったく違うのです。おそらく本当に有効といえる症例は3~4割程度しかないのではないか?ChEIが著効してHAPPYという報告ばかり見聞すると、「そんなに簡単に良くなるのか?」という希望を生みますが、その希望はものの見事に打ち砕かれます。3~4割は初期量でごく少量のChEIに対してすら顕著な薬剤性過敏性を示すわけで、神経系薬剤に対して絶望的に忍容性がない症例があまりにも多いのです。一昨年ChEIが無効で予後不良なDLB症例が存在すると発表していた貴重な学会講演がありました。その多くは前頭葉機能障害が顕著な症例でアパシーが強い症例のようです。ああやはりそうなのかと納得させられました。薬物治療の難しさと限界を思い知らされたわけです。


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by shinyokohama-fc | 2015-09-08 11:04 | 医療

認知症の誤診問題とCDTの重要性

昨日のNHKニュースで、医者による認知症の誤診の問題についてかなり取り上げられていました。認知症専門医から見て誤診が多いという内容だったようですが、実際は多忙な認知症専門医が誤診しているケースも少なくないようです。私は神経内科専門で動作歩行障害の症状が主体のパーキンソン病や神経難病を診察するのがメインの仕事でしたので、いわゆる認知症(アルツハイマー型(ATD)、レビー小体型(DLB)、前頭葉側頭葉型(FTD))の臨床経験は認知症専門医に比べてそれほど多くありません。しかし1年前にクリニックを開業してからは認知症の症例を診る機会が増えました。認知症ではないか?と言われて受診された患者のうち、上記3つのタイプで間違いないと思える方は実際はそれほど多くありません。約半数が正常または軽度認知障害(MCI)で残りのうち、ATD1割、DLB1割、FTD1割、その他CBS/PSPSが2割程度でしょうか?認知症ではないかと受診されても典型的なATDやDLBというのは意外と少ないものです。比較的多いのは高齢女性の抑うつ状態ではないかと思います。抑うつ状態でも当人が物忘れを主訴にして受診することが多いですが、一方で高齢になってからの抑うつ状態はDLBの前駆症状であることが多いようです。前者は抗うつ剤が奏功し、後者は抗うつ剤が全く効果がないようです。一般的に認知症の方はDLB以外は自分自身で困っているという意識が乏しく、特にFTDでは病識は全くゼロなので、医療を受ける事の意味が理解できないので激しく拒否する傾向が強いようです。
私からみて、動作歩行障害の症状が主体の神経変性疾患(PD,PSPS,CBS,MSAなど)の診断基準と比較して、一次的認知症疾患(ATD,DLB,FTD)の診断基準というのはかなり粗いのではないかという印象が強いです。以前のブログでその事は何度か取り上げています。具体的に申しますと、DLB以外の疾患でも幻視・幻聴やパーキンソニズムの症状は非常に多くみられます。最も多い原因としては薬剤性です。高齢者ではパーキンソン治療薬で幻視・幻聴が容易に誘発されやすいのは事実であり、精神症状を抑えるために頻用されがちな抗精神薬は高率にパーキンソニズムを誘発しひどい場合は悪性症候群をも起こします。高齢者に神経系薬剤を処方するということが新たな病気を作る可能性を生みます。特に神経系薬剤が多剤併用されて病状がひどく悪化してしまった症例の場合は深刻です。
私の見解では既存の認知症の診断基準で認知症非専門医が正確な診断をするのは困難だと言わざるをえないですし、認知症専門医だからといって、必ずしも正確な診断ができているとは限らないという印象です。MRIや核医学などの検査は多くの場合診断の決定打にはなりえず、あくまで支持所見にすぎません。今年の神経学会の認知症をテーマとした講演会やシンポジウムでは高齢者における混合病理・混合疾患の問題が大きいとの指摘があり、現在の認知症治療ガイドラインというのはこの混合疾患や最近後期高齢者に急増している「行動障害型老年認知症」の問題に全く対応できていないように思えます。生前に生検病理や検査値で正確な診断が可能な他の分野とは違って認知症を含む神経変性疾患においては正確な診断が不可能で、仮に正確な診断ができたとしても現在の医療レベルでは有効な治療手段に結びつかないという無力感があります。認知症において対症療法的薬物療法が初期の1~3年はうまくいく場合もありますが、4~5年経つと多くの場合は病気が進行してしまうのでその薬物療法も通用しなくなる事が多いようです。パーキンソン病において初期のハネムーン期と呼ばれる4~5年が過ぎると対症療法的薬物治療がさまざまな副作用や薬効減退などで困難になるのとほぼ同じではないかと思います。
現実的には認知症の診断は診察した医者の価値観に左右されてしまうのが現実です。それは精神疾患と全く同じですので、正確な診断に限界がある上に、過剰診断(over-diagnosis)による過剰投薬が問題になっているというのが現実のようです。やや過剰気味の認知症キャンペーン活動も過剰診断・過剰投薬の誘因と言えるかもしれません。ニュースで取り上げられた誤診(過剰診断?)による迷走的薬物治療が行われる原因としては、①家族・本人からの問診が不十分 ②簡易知能スケール(MMSE、HDS-R)の点数だけでカットオフしてしまう ③物忘れ外来を受診する患者はすべて認知症だという思い込みなどがあると思います。誤診として比較的多い抑うつやせん妄は高齢者では非常によく起こりうる事象であり、内科的には代謝異常、特に低血糖、低ナトリウム血症、高カルシウム血症などは比較的多いのではないかと思います。画像診断を実施する以前にまずはこれらの血液検査によるスクリーニングが必要です。
時計描画テスト(Clock Drawing Test;CDT)さえ実施すれば簡易的にスクリーニング検出できるということが最近わかってきました。CDTこそ実地医家が初診でスクリーニングするのに最適な方法だと考えます。
①ATD ;きわめて拙劣で、数字が正確に描けない、針が描けないなど何らかの描記異常がみられる。
②DLB /PDD; 思考遅延のためきわめて描くのが遅いのですが、最終的にはおおよそ正確に描ける。
③FTD ; 指示に従わずまったく別のものを描く、あるいは猛烈な速さで粗雑に描く。
④MCIなど非認知症;まったく問題なくほぼ完璧に描ける
簡易知能スケール(MMSE,HDS-R)は①の重症度を測るのには適していますが、現実的に外来に受診される患者の9割が①以外です。②の方はプライドの高いインテリの方も多く、③の方は長時間のテストに耐えられない。十分な協力性が得られない場合が多く、テスト点数の信憑性が乏しいというケースが少なくないようです。比較的多いのは行動心理症状が顕著であるのに、スケールの点数が良い(25~30点)ケースです。スケールだけで認知症診断をするDrがあまりにも多いようです。その一方でCDTは著しく軽視されていて、付添家族に確認したかぎりでは認知症専門医前医でCDTが実施されていたケースはほぼ皆無でした。20年前に著書でCDTの重要性を強調されていた認知症専門医ですら最近は多忙のためかまったく実施されていないようです。
正確な診断が困難な認知症を簡易的にスクリーニングするのに最適なのはCDTであると私は確信します。おそらく家族や介護スタッフでもできるきわめて簡単なテストですので、ぜひ医者以外の人々にも実施してほしいものです。
簡易知能スケールをすると不快感を示す事は多いですが、CDTではそのような事はほとんどないようです。


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by shinyokohama-fc | 2015-08-06 12:27 | 医療

神経変性疾患の病名と雑感

神経変性疾患の現在の病名に関しては正直どうなのかと思う事があります。病理診断名だったり画像診断だったり部位診断だったりと統一性が全くありません。病理診断名を臨床診断名にしているのには抵抗感があります。それは胃がんや白血病などの病気と違って、生検などによる生前の病理診断が難しいからです。神経変性疾患は病理組織所見が病名になっているものもあります。主な神経変性疾患についてそれぞれ検証してみたいと思います。
アルツハイマー型認知症(ATD)
発見者の人名が使われています。一般的に「認知症」といえばこの病気を指すようです。記憶障害・見当識障害・注意障害があります。診断には時計描画テスト(CDT-R)が最も感度が高い検査だと思われます。MMSEやHDS-Rといった簡易知能スケールはATDの重症度を評価する指標になります。主に画像検査などで海馬容積の萎縮があれば診断はほぼ確定とされています。発症は60~70歳がほとんどです。軽度認知障害(MCI)との線引きがしばしば問題になりますが、日常生活動作が自立できないものを認知症としています。MCIからATDに移行するのは30%程度と言われます。行動心理や情動は初期からさほど顕著ではなく比較的保たれる症例が多いので、周囲を困らせないので中等度レベル(MMSE 10~15)まで受診しないケースも少なくないようです。病理診断としてはアミロイドが蓄積するので「大脳アミロイドーシス」の一種という事になるようですが、臨床的には「記憶障害型・認知症」です。
嗜銀性顆粒性認知症(AGD)
病理診断名がそのまま使われています。初発症状としては行動心理症状(不機嫌、易怒・易刺激性、焦燥など)や情動障害が先行しますが、日常生活動作は介助を必要とせず自立しています。ATDで実施するCDT-R、MMSE、HDS-Rなどの簡易検査は初期の2~3年はほぼ正常レべルですので、認知症と診断されない場合もあります。画像検査では前頭葉~側頭葉の左右差のある萎縮が特徴的と言われていますが、初期には目立たないようです。ほとんどが75歳以上の高齢者であり、初期から受診・相談が最も多いタイプです。常同行動や脱抑制が目立つため、以下のFTDと臨床像は類似していますので、「老年性・行動障害型認知症」とでも呼ぶべきでしょうか?
前頭側頭型変性症(FTLD)
病理診断名がそのまま使われていて、かつてはPick病(病理診断名・人名)と呼ばれていたようですが、現在は病理診断名はFTD-FUS/-tau/TDP/FUS/niと分類されています。一方で臨床診断名としては以下の3つの病名になっています。これらの病名は臨床症状を反映した病名であるのできわめて適切だと思います。65歳以下で発症することになっていますが、実際は変性疾患に関しては発症年齢の特定は困難と思われます。
①行動障害型・前頭側頭型認知症(bv-FTD) 脱抑制や常同行動に伴う異常行動が主体 ②意味性認知症(SD)語義失語や失認が主体 ③原発性非流暢性失語症(PNFA)重度の失語が主体
大脳皮質基底核変性症(CBD)
名前のとおり、大脳皮質の一部と大脳基底核に限定した部位から始まる疾患ですが、経過が長くなると大脳全般に障害が及ぶようです。基底核障害による片手の軽度鉛管様筋固縮と不使用(運動麻痺ではない)と頭頂葉障害による半側空間無視・視空間失認が特徴的で障害側のほとんどは左側のようです。脳幹障害は通常はほとんど目立ちませんが、中には姿勢反射障害・すくみ足が高度なPSP的な臨床像をきたす症例もあり、病理診断はCBDが50%、PSPが30%、その他ATD・FTD・Prionなどと言われています。臨床と病理の合致が不可能な疾患群なので、やはりCBS(大脳皮質基底核症候群)と呼ぶのが適切だと思います。
進行性核上性麻痺(PSP)
「核上性麻痺」という脳幹のきわめて限定した部位だけの疾患のように誤解されそうな名前ですが、実際はタウ蛋白が前頭葉~側頭葉、脳幹全体に広汎かつ高度に蓄積して、多彩な症状をきたしうる疾患群です。PDやDLBに比べて脳幹障害が重度のため、高度の姿勢反射障害による頻回の転倒が早期からみられることが多く(全例ではないが)、また嚥下障害が高度になるため、誤嚥性肺炎を最も起こしやすい疾患と言えます。病理診断はPSPが50%でCBDが20%、その他はFTDや稀ながらCVDという症例も存在するようです。病理的にPSPの症例でも臨床的CBS・広汎型・限局型の3つに分かれるといいます。また、若年発症に多いRSタイプと老年発症に多いPAタイプでは病状の進行スピードや重症度に大きな差があるようです。臨床と病理の合致がほぼ不可能であり、臨床診断名としてはCBSと同じくPSPSと呼ぶのが相応しいと思います。
多系統萎縮症(MSA)
錐体路・錐体外路・脊髄小脳路・自律神経という4つの神経ルートが障害されるという特徴がある疾患群です。下肢に強い痙縮、パーキンソニズム(動作緩慢・筋固縮・姿勢反射障害)、小脳性運動失調(構音障害、失調性歩行)、高度の起立性低血圧(多くは失神で倒れる)と高度の排尿障害(多くは尿閉に至る)が特徴的です。パーキンソニズムが強いMSA-Pは線条体黒質変性症(SND)と呼ばれ、小脳性運動失調が強いMSA-Cはオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)と呼ばれていました。いずれも部位的診断名です。
パーキンソン病(PD)
発見者の人名が使われています。「錐体外路症状=パーキンソニズム」と呼ばれているくらい定着していますが、パーキンソニズム=パーキンソン病ではない点が臨床現場で混乱を生んでいるようです。実際は特に高齢者ではパーキンソン病ではないパーキンソニズムのほうが多いという印象があります。片側性(左右差)のある上肢安静時振戦と筋固縮が特徴的な典型例は診断が容易ですが、さまざまな非典型例があるため「ドパミン欠乏性・錐体外路症候群」と呼んだほうがいいのではと思います。
レビー小体型認知症(DLB)/レビー小体病
レビー小体という病理所見の人名が使われています。レビー小体の蓄積する部位(大脳・脳幹・脊髄・自律神経)や進展の仕方によってさまざまなサブタイプがあるようです。「認知症」という呼び名が不適切ではないかという意見があるようです。主要症状は幻覚(幻視)・認知の変動・パーキンソニズムとされていますが、過剰診断により別の疾患や病態までもDLBと診断して、薬物療法が迷走して病状が悪化してしまうケースがあまりに多いようです。パーキンソニズムを欠き、幻覚+認知の変動のみ場合はDLBよりも側頭葉てんかん(TEA)を考えるべきかと思います。典型例は左右差の乏しい軽度~中等度のパーキンソニズム(動作緩慢・思考遅延・軽度の筋固縮)と自律神経症状(起立性低血圧・排尿障害・排便障害・体温調節/発汗障害)に幻視・抑うつ症状を伴うものだと思います。パーキンソニズムが長年進行した上で、幻視などの行動心理症状が後発するのは臨床的にPDDと呼ばれていましたが、ここに至るまでにパーキンソン治療薬を長期・複数内服しているケースが多く、行動心理症状は長年の薬物治療の副産物とも言えます。パーキンソニズム・自律神経障害を欠く非典型的例の場合は、可能であればTEAを除外するためにEEG検査を、DLBを支持するためにDTS検査が実施されたほうがよいと考えます。その理由はTEAにChEIや抗精神薬を処方しても効果がないばかりかむしろ症状を悪化させるからです。MCIやATDがあってTEAを起こす症例も多いようです。「ドパミン欠乏性・大脳・脳幹・自律神経症候群」とでも呼ぶのが適当でしょうか。
個人的に気になるのが、幻覚と認知の変動があればDLBだというのは操作的・短絡的な診断手法だと感じます。精神科における新型うつ病とか双極性障害2型の診断手法に近いものがあります。精神科と神経内科の問題というのは他の診療科と違って、診察医の個人的な価値観によってブレが大きすぎる所にあります。現状の各変性疾患の診断基準というのはその問題を解決できていないように思います。それを解決すべく核医学検査の研究が進められていますが、学会のシンポジウムではやはり混合病理の問題に対応できないという結論でした。75歳以上の変性疾患では混合病理が大半だという事を考えると、やはりFTLDとFTDのように臨床診断名と病理診断名を区別するしかないのではないかと感じます。


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by shinyokohama-fc | 2015-07-10 12:33 | 医療

「物忘れ」ではなく「覚える気がない」人たち

認知症の診療を希望して来られる方の多くは80~90歳女性が多いようです。同居あるいは介護している家族は「すぐに物事を忘れる」と訴えますが、簡易知能スケールを実施すると27~29点もあります。5つの物品再生などはほぼ正答であり、時計描画テストも正確に描けるようです。ただし描くスピードが異常に早く雑に描く傾向にあります。
これらの方々の多くは日常生活動作はほぼ自立しており、介護者の手を煩わせる事はないようです。これらの症例に共通しているのは本来記憶力が保持されているにもかかわらず、普段の生活では記憶することを放棄していると推定されます。つまり「考え無精」ならぬ「覚え無精」ではないかと思います。
一般的に典型的な認知症の方は時計描画テストで苦労します。アルツハイマー型(ATD)の方は数字がまともに入れられない事が多く、レビー小体型(DLB)の方は思考遅延傾向のため、数字や針を描くのに異常に時間がかかります。つまり時計描画テストをすれば、きわめて特徴的でほとんど典型的な認知症に関しては抽出できると思われます。簡易知能スケール(MMSEなど)の点数というのはATDの方々の重症度をある程度評価できると思いますが、DLBや前頭側頭型認知症(FTD)タイプの認知症については、診察時は初期~中期までは高得点である事が多い半面、家庭における行動心理症状が顕著な症例が多いようです。例えば「用もないのに肉親に何度も電話をする」とか「自室が片つけられず捨てられない物が溢れている」とか様々です。ATDの尺度でいうと27~29点で認知症という判定にはならず
比較的顕著な行動心理症状出現するというのは説明できません。80歳以上の高齢者に多いと言われている「嗜銀顆粒性認知症(AGD・グレイン)」が最近の学会でもよくクローズアップされるようになりました。これはアミロイドが蓄積せずにタウ蛋白が脳細胞内に蓄積する病気の一つです。一般的には75歳以上で発症するが、記憶・見当識などいわゆる中核症状と呼ばれる症状に関しては緩徐進行性のため、日常生活動作の自立期間も長期間になります。その一方で情動障害に伴う行動心理症状が出現しやすく、焦燥、不機嫌、易怒、易刺激性などで現れてしばしば家族を困らせるようです。AGDの場合多くは中核症状が顕著になってくるのは進行して数年後になると言われます。一般的に60~70歳で発症するATDが中核症状の進行が非常に速く、日常生活動作において1対1介護を必要とするのとは対称的です。AGDは左右差のある前頭葉~側頭葉外側の萎縮が画像診断的には特徴ですが、初期にはそういう所見はみられません。またATDと違って海馬の萎縮もみられない事が多いようです。またDLBと混合症状をきたす場合も少なくないようです。80~90歳の女性人口が非常に多い事を考えるとAGDに対する薬物治療の確立が求められています。
私の印象では少量のガランタミンが比較的相性がいいようです。それはこの薬剤の特性によるものだと思われます。
しかし高齢者の場合は心不全・心臓弁膜症・不整脈などが潜在している事もあり、高用量には耐えられない症例が多いと考えられます。詳しくは以前のブログ(ガランタミンvsリスぺリドン)を参照してください。


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by shinyokohama-fc | 2015-07-07 18:55 | 医療

側頭葉てんかん(TEA)の症例の雑感

80代前半の方で、2年前から幻視・幻聴があり、認知の変動がある、情緒不安定で、突然人格が変わる、思い通りにならないと易怒性、言葉や物の名前が出てこないという症状の方がおられました。前医で1年前と2か月前にMRI検査を施行されてますが、側脳室周辺に軽度の虚血性変化があるのみで、大脳・脳幹・小脳ともに病的萎縮はみられませんでした。脳波では側頭葉棘波がみられ再現性があるようです。診察してみても、動作歩行の緩慢さや思考遅延、振戦はまったくみられず、歯車現象・筋固縮はなくむしろ筋トーヌス低下していました。血圧の起立性変動も測定しましたが、起立性低血圧は全くみられませんでした。神経内科医としてはパーキンソニズムもなく、起立性低血圧もない症例をレビー小体型認知症(DLB)とは考えられません。前医(精神科)の診断も「側頭葉てんかん(TEA)」でした。問診だけの操作的診断でDLBとTEAを鑑別するのは不可能だと思いました。特にパーキンソニズムや起立性低血圧がみられない症例に関してはMIBG心筋シンチ・ドパミントランスポーターイメージング(ダットスキャン)などの検査によりDLBを除外診断したい所ですが、これらの検査は高額で拘束時間が長く、患者側の忍容性問題がありますので代謝能力の低下した80歳以上の高齢者に実施するのはやや酷な気がします。それより簡便に実施できる脳波検査でてんかん波がみられれば、TEAと診断するのは当然だと思います。前医ではカルバマゼピン(CAZ)を100~200mgで1年経過をみられていましたが、有効用量に届かなかったのか、残念ながら明確な効果は得られなかったようです。CAZは長期投与により小脳変性をおこすという事は成書に記載されています。この症例も軽度~中等度の小脳性運動失調症が確認されたため、CAZを中止せざるをえないと判断しました。画像診断で明らかな小脳萎縮は確認できないため、薬剤性(CAZ)が疑われます。高齢者の場合は微量のCAZでも忍容性に問題を起こします。やはり高齢者のTEAに対しては新規抗てんかん薬のラモトリギン(LTG)かレべチラセタム(LVE)を使用するしかないのではと考えますが、LVEに関しては「易刺激性・攻撃性・精神症状の変化に注意」とありますので、やはり現実的にはTEAには使いつらく、結局LTGを選択するしかないと思われます。LTGは双極性障害にも適応のある薬剤ですので、本例のような情緒不安定な症例には奏功するのではないかと期待したい所です。この薬は神経系の副作用がほとんどみられないので、皮膚粘膜眼症候群・重症薬疹の副作用さえなければと思います。

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by shinyokohama-fc | 2015-06-30 19:17 | 医療

前頭側頭葉変性症(意味性認知症・行動障害型前頭側頭型認知症)が7月から難病対象に

当院は昨年11月26日付けで神奈川県より神経内科の難病指定医として「指定医指定通知書」を受けています。
本日、厚労省健康局疾病対策課から「平成27年7月1日から、難病の方へ向けた 難病医療費助成制度の対象疾病が拡大します」というお知らせをいただきました。このたび既存の110疾病に加えて196疾病が追加されて306疾病に拡大されます。今回新たに追加された神経疾病には「前頭側頭葉変性症」が新たに含まれていました。
「(行動異常型)前頭側頭型認知症(bv-FTD)」「意味性認知症(SD)」の2つが対象のようで、「進行性非流暢性失語(PNFA)」と「運動ニューロン疾患を有する前頭側頭型認知症(FTD-MND)」は含まれていないようです。臨床調査票に示された、bv-FTDとSDの各診断基準を以下に示しますので、ご参考願います。
<(行動異常型)前頭側頭型認知症>
1)必須項目
進行性の異常行動や認知機能障害を認め、それらにより日常生活が阻害されている
2)次のA-Fのうち3項目以上をみたす
A. 脱抑制行動;以下の3つの症状のうちいずれか1つ以上をみたす
1) 社会的に不適切な行動 2) 礼儀やマナーの欠如 3)衝動的で無分別や無頓着な行動
B. 無関心(アパシー)または無気力
1) アパシー(動機、意欲、興味の消失) 2)無気力(行動開始の減少)
C. 共感や感情移入の欠如;以下のうち2つの症状のうちのいずれか1つ以上を満たす
1) 他者の要求や感情に対する反応欠如 2) 社会的な興味や他者との交流、または人間的な温かさの低下や喪失
D. 固執・常同性;以下の3つの症状のうちいずれか1つ以上を満たす
1) 単純動作の反復 2) 強迫的(常同的)または儀式的な行動 3) 常同言語
E. 口唇傾向と食習慣の変化;以下の3つの症状のうちいずれか1つ以上を満たす
1) 食事嗜好の変化 2) 過食、飲酒、喫煙行動の増加 3) 口唇的探究または異食症
F. 神経心理学的検査において、記憶や視空間認知能力は比較的保持されているにも関わらず、遂行機能障害がみられる
3) 発症年齢が65歳以下である
4) 画像検査所見 : 前頭葉や側頭葉前部にMRI/CTでの萎縮か、PET/SPECTで代謝や血流の低下がみられる
※脳血管障害が原因と考えられるものは除く
※画像読影レポートまたはそれと同内容の文書の写し(判読医の氏名の記載されたもの)を添付する
5) 以下の疾病を鑑別し、全て除外できる
①アルツハイマー病 ②レビー小体型認知症 ③血管性認知症 ④進行性核上性麻痺 ⑤大脳皮質基底核変性症⑥ 統合失調症・うつ病などの精神疾患⑦発達障害
6)臨床診断 ; 1)~5)の全てをみたす
(重症度分類に関する事項)
⓪ 社会的に適切な行動を行える
①態度・共感・行為の適切さに最低限だが明らかな変化
②行動・態度・共感・好意の適切さにおいて、軽度ではあるが明らかな変化
③対人相互関係がすべて一方向性である高度の障害
<意味性認知症>
1)必須項目
次の2つの中核症状の両者を満たし、それらにより日常生活が阻害されている
A. 物品呼称の障害 B. 単語理解の障害
2) 以下の4つのうち少なくとも3つを認める
A. 対象物に対する知識の障害(特に低頻度/低親密性のもので顕著)
B. 表層性失読・失書
C. 復唱は保たれる。流暢性の発語を呈する
D. 発話(文法や自発語)は保たれる
3) 発症年齢が65歳以下である
4) 画像検査所見 :側頭葉前部にMRI/CTでの限局性萎縮がみられる(脳血管障害が原因と考えられるものは除く)
※画像読影レポートまたはそれと同内容の写し(判読医の氏名の記載されたもの)を添付する
5) 以下の疾病を鑑別し、全て除外できる
①アルツハイマー病 ②レビー小体型認知症 ③血管性認知症 ④進行性核上性麻痺 ⑤大脳皮質基底核変性症 ⑥うつ病などの精神疾患
6) 臨床診断: 1)~5)の全てを満たす
(重症度分類に関する事項)
⓪ 正常発語・正常理解
① 最低限だが明らかな喚語障害。通常会話では理解は正常
② しばしば生じる発語を大きく阻害するほどではない程度の軽度の喚語障害・軽度の理解障害
③ コミュニケーションを阻害する中等度の喚語障害、通常会話における中等度の理解障害
④ 高度の喚語障害、言語表出障害、理解障害により実質的にコミュニケーションが不能
FTLD(bv-FTD/SD)の上記診断基準に関しては実際の臨床現場の感覚から言うと、きわめて難しい問題点・課題が以下1)~3)のようにありそうです。
1) 発症年齢を65歳で区切っている事
いつから疾病が発症したかというのは、神経変性疾患の場合は極めて特定が難しく、正確には不明です。何故なら家族・職場など周囲の人間の客観的評価に依存する所が大きいからです。わずかな仕事や生活上の異変をも的確に把握する能力にも差異があり、また家族の客観的情報が真実かどうかを確認する事は指定医側からは不可能です。
65歳からと申告すれば難病で、66歳からと申告すれば難病ではない、その差は何なのか?という疑問があります。
実際は65歳以上で発症したであろう典型的な臨床像のbv-FTDも少なからずみられます。
2) 混合型の臨床像には診断基準は対応していない
bv-FTDやSDの臨床像としては動作歩行障害を伴わないという事ですが、特に50歳前後という早期発症例では発症7~10年でパーキンソニズム、視空間認知障害などが混在してきます。これらの臨床像としてはPSPやCBDと鑑別が困難な事例も少なくないという印象です。またPSPやCBDと思われる症例の中にもbv-FTD的な要素の強い(上記診断基準にもおおよそ合致している)臨床像のケースも私が1年間で診ただけでも5~6例は存在しました。
3) 画像診断を重視しすぎている(画像読影医のレポート添付を義務つけている)
画像診断において、前頭葉・側頭葉に萎縮変化がみられるのは、初期からではなく2~3年以後であり、個人差が大きいです。また多くの症例がこの時期になると行動障害の病状が悪化して検査拒否・安静不能の状況に陥ります。鎮静剤を使ってでも検査しろとでも言うのでしょうか?そこまで画像検査診断に価値があるとは思えないのです。実際前頭葉型ATD、前頭葉型DLBのような臨床像のケースもありますし、検査を実施することによって益々診断が迷走するというケースがむしろ多い気がします。どこから病的萎縮と判断するのか?は判読医による読影スキル・経験・価値観の差異が問題になります。そのような事で運命が左右されるなどあってはならないことです。
病気の診断というのが(患者家族や医師など)人間の主観的印象に左右されてしまうのは、ある程度仕方のないこととはいえ現実問題として、bv-FTDの典型例にまで、コリンエステラーゼ阻害薬が使用されて、行動障害を悪化させているというケースが後を絶たないようです。これは家族情報を担当医が共存できていない事の証左と言えます。この「前頭側頭葉変性症」という疾患群の方々がどれだけ正確に診断されて、難病医療費助成制度の恩恵に預れるのか、今後注目していきたいと思います。


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by shinyokohama-fc | 2015-06-09 19:21 | 医療

新潟市と学会の印象

第56回日本神経学会学術大会が、新潟市の朱鷺メッセで今週行われていて、私も参加してきました。昨年の学会は福岡だったのですが、個人的事情でホテルがとれず飛行機の弾丸行脚となったのですが、今年はいつものように1泊2日で、往復は上越新幹線で行きました。飛行機だと気圧の影響で中耳炎になりやすいので、その点新幹線は安心できます。東海道新幹線から上越新幹線への乗り換えは意外にスムーズでした。神経学会はいつも地方都市でやるので、いろいろな地方を訪れるのが楽しみでもあります。今まで一番遠かったのは北海道と鹿児島でした。今回は2日間とも晴天に恵まれ、朱鷺メッセ・31F(140.5m)の展望台から望む、日本海・信濃川・越後平野の見晴らしも最高でした。新潟市街には他にも万代シティレインボータワーや日本海タワーなど展望台があります。
信濃川はさすが日本最長の川であり、信濃川をウォーターシャトルにも乗船しましたが、まさに大河という実感を強く感じられました。その信濃川には萬代橋という歴史と伝統ある橋があり、海側が古町、駅側が万代という繁華街だそうです。講演会の合間の時間に古町を訪れましたが、三越店内や周辺は年配の女性が多かったようです。古町にある古くからあるJAZZ喫茶を約10年ぶりに訪れました。この店は店内の景観やスピーカーの佇まいからして本当に王道のJAZZ喫茶という感じの店で個人的にはこういう店を文化遺産にして保護してほしいと思います。
新潟市は30年前は人口50~60万人の地方の中核都市でしたが、近年の平成大合併で人口が80万人を超えて政令指定都市に昇格しました。同規模の地方の政令市の先輩格の仙台市や広島市に比べると、駅周辺や繁華街の人通りは意外なほど少なくやや寂しい気がしました。越後平野は日本有数の水田地域ですので農繁期という影響もあるかもしれません。
今回は同じ学会に所属している旧知の知人とは予定が合わず残念ながらすれ違いでした。この学会は早朝8時に開始・夜8時終了というきわめてハードな学会です。学会では初日にはホットトピックス講演「認知症診断におけるタウイメージングの進歩」を聴講しました。検査の進歩には感心する一方でやはり臨床・PET検査・病理を合致させるのは不可能であり、混合病理もあり診断はカオス状態だという事を改めて思い知らされる内容でした。翌日は教育講演ベーシック「一歩進んだALS診療」を聴講しました。前日に新聞各紙で記事にもなった「メコバラミン大量筋注療法による筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対する臨床試験」の内容も詳細に発表されていました。メコバラミンはグルタミン酸毒性とホモシスティンを抑制する効果もあるようなので、神経変性の進行を抑制できるのかもしれません。ただこの臨床試験で使用されている用量を使うとなるとアンプルを大量に切らないといけないので現実的には難しそうです。


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by shinyokohama-fc | 2015-05-22 18:38 | 医療
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新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


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