認知機能障害を伴うパーキンソン病(PDD)とは

小生はパーキンソン病を中心とした専門外来をやっています。パーキンソン病の症状として目に見える症状としては
1)手がふるえる 2)動作が遅い 3)姿勢が不安定
があります。これらは医者でなくても、普通の人が見てもわかる症状ですので、わかりやすい病気です。
それぞれ1)~3)どれが主体かによって、以下のタイプに分けられます。
1) 振戦優位型 2) 無動固縮型 3) 姿勢反射障害型
認知機能障害が顕著に現れやすいのが、2) 無動固縮型ですが、1)や3)でも軽度の認知機能障害をきたしている場合があります。運動症状がかなり重く、石のごとく動かないようなイメージの症例が多いようです。
パーキンソン病に伴う認知機能障害というのは注意力・記憶力に関するものですが、記憶力は維持されている場合も少なくないようです。
1)活動に集中できない 2)話し方が遅い 3)物忘れがある 4)名前・数字・出来事を覚えるのが難しい
認知機能障害の簡易評価方法としては、記憶障害・認知症の有無を診断するため、MMSE (ミニメンタルステート検査)と認知機能の全般的な評価するためのMMSE(モントリオール認知機能評価・日本版)で行うことが推奨されています。しかし、我が国における繁忙な外来診療体制では、実地医家の先生にとってパーキンソン病の診察は、四肢の動きとか歩行とか身体診察(観察)をまずしなければならないので、それに付け加えてこのような検査をする時間的な余裕はないと思われます。
小生の場合は、時計描画と図形模写(五角形を重ねたもの)を書いてもらいます。これらを書くのに手間がかかり時間がかかったり、うまく書けない場合は、認知機能障害がありと判定します。また左半分がうまく書けないなど、視空間認知障害が確認できる場合があります。これをやってもらうと、誰の目からみても認知機能に問題があるというのが明確です。この他に数字の逆唱、シリアル7(100から7を引き続ける暗算)も簡単に判定できます。認知機能障害がある場合は高い確率で、計算間違いをします。
問診においては、配偶者からレム睡眠行動異常(RBD)がある事を確認します。小生の経験ではPDDにおいては2/3くらいにRBDの症状が確認できるようです。
小生が、明らかにPDDであると判断できる症例に対して、使用を避けている薬があります。それがドパミン・アゴニストです。特に作用の強いプラミペキソールでは、深刻な薬剤性せん妄、精神錯乱、レム睡眠行動異常の急性増悪をきたすようです。PDDの診断基準に合わなくても、RBDがある症例では使用をさけるべきだと思います。
辺縁系に存在するドパミンD3受容体を過剰に刺激することによって、精神症状が誘発されるようです。おそらくこのような症例では、辺縁系の障害が強いと推定されます。
しかし実際はRBD、PDDの症例にドパミンアゴニストが使われて、深刻な精神症状の悪化がみられる症例が非常に多く見られます。これは「パーキンソン病にはまずドパミンアゴニストから使え」という学会の指導にも大きな問題があるのではないかと考えます。
PDDにおけるレビー小体病理の進展形式(通説)は以下のとおりです。
1) 脳幹優位 睡眠障害 (日中の過眠、レム睡眠行動異常)、自律神経障害など
2) 辺縁系優位 うつ状態、不安神経症、疲労、疼痛、体重減少など
3) 大脳皮質優位 注意障害(転倒)、記銘力障害、自発性・意欲低下(アパシー)
通常のパーキンソン病(PD)は運動障害のわりには意外と転倒が少ないですが、やはりPDDになると注意障害が強くなるため、転倒が増えるようです。
レビー小体は、病気の原因なのか?結果なのか?という議論が長年ありますが、私は最近の研究を見る限りでは後者ではないかと考えています。つまりレビー小体(アルファシヌクレイン重合体)は病気によるコリン・ドパミン神経障害に抵抗するために発生しているのだという説を信用しています。
いずれにしても、コリン作動性神経障害、ドパミン作動性神経障害の分布には、症例によって大きな差異があるため、同じ病理基盤だからといって、どんな症例でも同じような薬剤処方をしていてはダメだという事です。



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by shinyokohama-fc | 2017-09-28 19:02 | 治療
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