神経変性疾患に必要なのは治す医療ではなく緩和医療

先日、講演会のために28年ぶりに札幌に行きました。前日に市内を少々観光しましたが、横浜とは市街地の区画が2~3倍違うことに戸惑いました。この街は外国人の指導などで開拓された街で、土地もかなり広いので、地図を見ながら歩いてもなかなか目的地に到達できませんでした。自分でも気が付かないうちに、普段横浜や東京ではまず歩かないくらいのかなりの距離を歩いていたので、久しぶりに下肢の筋肉痛になりました。
講演会の内容は、認知症と言われている変性疾患には様々なものがある、精神症状の強い、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(3Rタウオパチー)、4Rタウオパチーの症例が、高齢者の増加とともに増えている、特にこのような疾患群の高齢者に対してはコリンエステラーゼ阻害薬とか抗精神病薬というのは非常に使うのが難しい、むしろ高いリスクを冒してまで使うべきではないといった内容でした。内容的にはこのブログでこれまで書いてきた内容に近いと思われますので、これ以上は省略します。
参加者は10名前後でしたが、脳外科、精神科を専門として、認知症の臨床をよくやっている民間病院、医院の院長先生方が主に参加されていました。中には小生のブログを拝読されている先生もおられました。
講演後の質問の時間も4~5名の先生方から1人2~3の質問やご意見があり、その内容もかなりハイレベルな質問であったので、私も丁寧に回答しなければならかなったので、1人の質疑応答に10分以上の時間を費やしました。少人数ならではのかなり充実した質疑応答であったと思います。
講演終了後に病院長の精神科の先生に、「私の考え方としては、高齢者の変性疾患(認知症・パーキンソン病その他)への抗精神病薬の使用は副作用のリスクが大きすぎるので原則的に好ましくないと思っているが、若年の統合失調症、躁鬱病などの精神疾患には抗精神病薬は必要だと思っています」と言いましたが、「私は抗精神病薬は使いません」というお返事が返ってきて、大変驚かされました。私とは違う立場で長年の臨床・処方経験を経て、おそらくそういう考え方に行きつかれた(帰結された)のかもしれません。
私自身もこの3~4年の外来の臨床経験で神経系に作用する薬剤に対する考え方がかなり変わりました抗認知症薬、抗精神病薬、パーキンソン治療薬、抗不安薬(睡眠導入薬)、抗てんかん薬、いずれも使うのが非常に難しい薬であるという事を様々な症例を通じて観察し、痛感してきました。
「認知症、パーキンソン病、高齢者の精神症状などの神経変性疾患を薬で治す、治る」という理念を唱える臨床医もいるようですが、私はどうしてもこの理念には同意できません。一見健常に見える、中高年者であっても、発症いかんにかかわらず、個人差はあるが、年齢とともに誰もが神経の変性が進み、アミロイド、タウ、シヌクレインなどの異常タンパクがたまっていきます。これが自然の流れであり、老化現象の一つだと思っています。
一度発症してしまった神経変性をもとに戻すのは医学的に不可能であり、記銘力障害、見当識障害、運動失行、失認、失語といった症状を元に戻すのは不可能です。患者さんの年齢も多くは65歳以上の高齢者ですので、現実的には、すべての神経変性疾患に対しては病気を治す事ではなく、「緩和医療・緩和ケア」が中心になるべきだと思っています。治す事に固執しすぎて、劇薬を多数使いすぎる事によって病状が著しく悪化する症例が多すぎる、これが私のこの3~4年診療経験で実感した事でした。


新横浜フォレストクリニック
内科・漢方内科・老年内科・神経内科

JR・新幹線・横浜市営地下鉄 
新横浜駅 篠原口より徒歩1分






[PR]

by shinyokohama-fc | 2017-09-25 11:05 | 治療
line

新横浜フォレストクリニック(横浜市港北区・新横浜駅)の院長が日々綴る様々な情報を発信するブログです


by shinyokohama-fc
line