パーキンソン治療薬と医療経済/国民皆保険医療・持続不能

本日の日本経済新聞の朝刊の1面記事です。「国民皆保険による医療 医師の半数「持続不能」」数年前から日本経済新聞をとっているので、医療系の記事には注目するようにしています。
医師向け情報サイトの会員医師に対して、6月中旬にインターネットでアンケートを実施して、回答が1000人に達した時点で集計したそうです。このアンケート集計によれば、約半数の医師が「現体制の国民皆保険による医療は維持できない」と回答したようです(回答者は勤務医81%、開業医19%)。
医療費の高騰問題で、常に問題にされることとしては
1) 高齢者に対する非高齢者と同等レベルの濃厚医療が施されている
2) 医療の高度化による薬剤費の高騰、特に新規認可薬の高価格
1)に対しては、例えばある学会では高齢者の誤嚥性肺炎に対する抗生物質の投与が疑問視されています。私も約10年前までは急性期病院勤務医でしたが、寝たきり状態の高齢者に対する延命目的の輸液(持続点滴)、繰り返す誤嚥性肺炎による発熱に対して何種類も抗生物質を点滴をしたりしながら強い疑問を感じていました。
私が主に診療している、パーキンソン病という病気に関してこの問題を考えてみると、発症して10~15年以上経過した80歳を超えた患者さんに対しても、レボドパ、アマンタジン以外の高額な新規治療薬を4~5種類も処方されていることが珍しくなくて、その過剰処方の副作用を抑えるために定番のようにドンペリドンが追加されています。しかし実際は新規治療薬を入れられすぎて、肝心のレボドパが全然効いていない症例が多く、動作歩行は全く良くなっていなくて、幻覚・妄想でひどい精神病になっているか、慢性的なせん妄状態に至っており、「レビー小体型認知症に進行したので」と言われて、さらにドネぺジルが追加されてしまうというパターンが非常に多いようです。80歳以上の女性にこれだけの多種多様で大量の神経系薬剤が重ねられると普通に考えれば廃人化してしまう危険性が高くなります。誤解を恐れずに言ってしまえば、このような病状を悪化させるだけの行き過ぎた多剤併用処方(ポリファーマシー)は、医療費の高騰化を推進する最大の要因でしょう。高齢者に対して高額処方を長期に継続した結果、神経薬物中毒あるいは二次的な合併症で救急受診~入院することにより、さらなる医療費がかかります。
私が近年「パーキンソン病の薬物治療」を問題視し始めたのは、こういう事例が後をたたない状況だからです。パーキンソン病という病気は、がんとは違って、病気が直接的に生死にかかわる病気ではなく、レボドパの導入によって動ける期間が延長したことで多くの患者さんが恩恵を受けているという半面、この20年で薬の種類が増えすぎてしまい、年齢や病状など患者の状況を深く思慮なしに、動けなければ薬を追加するの繰り返しをしているのではないかと思います。効果がはっきりしない薬を中止して別の薬に変更するのであればまだしも、効果がはっきりしない薬でもそのまま続行し中止することなく、別の薬を追加するという「足し算処方」ばかりなので雪だるま式に薬ばかりが際限なく増えるようです。パーキンソン病治療薬以外にも、抗精神病薬、抗認知症薬、抗不安薬、抗うつ薬など際限なく薬が足し算されていくようです。「たくさん薬を処方する・服用する=精一杯治療努力をしている」という勘違いそのものではないかと思います。医療経済を多少でも意識すれば、80歳以上の高齢者のパーキンソン病についてはレボドパとアマンタジン以外はあと1種類程度の処方薬にとどめるべきではないかと思います。パーキンソン治療薬の中には1錠800~1000円という超高額な薬もあります。また病気が進行したヤール4~5度の症例に対しては、むしろ不必要な薬を少しずつ減らして最低限の処方にとどめるべきではないかと考えます。
前回のブログにも書きましたが、やはり早期のヤール1~2度の時期からよく外出して歩行して手足をよく使うことがどんな薬物治療よりも勝るのではないでしょうか?私が診てきた患者さんの実例がそれを証明しています。


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by shinyokohama-fc | 2017-06-30 12:04 | 医療
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