パーキンソン病治療薬の効果を邪魔する薬、酸化マグネシウム (マグミットなど)

パーキンソン病という病気は、動作歩行などの運動症状が現れる、何年も以前から「便秘」の症状が現れる患者さんが多く、パーキンソン病の患者さんの多くは、すでに2~3種類の消化器系の薬剤を服用していることがほとんどのようです。前回のブログでも書きましたが、異常たんぱく質が早期から延髄背側核に問題を起こしますので、その影響で消化管(胃腸)の運動が悪くなると言われています。
便秘への一般的な対処法としては、1日3食で生野菜を食べて十分な食物繊維を取り、食事の時と服薬の時にコップ1杯以上の飲料水を飲むことが推奨されていますが、それでも不十分な頑固な便秘に至る場合が少なくないようで、実際は緩下剤というのが必要とされます。モサプリドはセロトニン受容体刺激により消化管の運動機能を改善する作用があり、神経内科医のパーキンソン病処方においてはかなりの確率で処方されています。長期に服用すると肝機能障害の恐れがあると書いてありますので、モサプリドを服用している方は定期的な血液検査で肝機能が正常範囲かどうかのチェックが必要になりますが、私の経験ではこの薬は概ね副作用が少ない良い薬で、パーキンソン病の自律神経症状である消化管運動障害には欠かせない薬だと言っても過言ではないと思います。
緩下剤として内科でもっとも頻用されている薬、それは酸化マグネシウムです。パーキンソン病患者でも非常によく使われています。しかし、この実際はレボドパというパーキンソン病の治療薬で最も大事な薬とこの酸化マグネシウムや制酸剤 (ヒスタミン受容体遮断剤・ファモチジンなど、プロトンポンプインヒビター・ランソプラゾールなど)が併用されているがために、レボドパの小腸からの吸収が著しく阻害(邪魔)されて、レボドパが脳に十分に到達しないという状態になります。そのためいくらレボドパ(ドパミンの前駆体)を服用しても有効に作用せず、必要以上にレボドパが600~800mgまで増やされてしまうという事が非常によくみられます。レボドパはアミノ酸でパーキンソン病治療薬の中では最も副作用が少ないのですが、400mg以上に増やすと副作用出現頻度が高まると海外の大規模臨床試験では報告されています。パーキンソン病病歴5年以上の患者さんの多くにとってレボドパは運動症状を改善する必要不可欠な薬ですので、その肝心の薬の効果が阻害されるというのはかなりシビアな問題になるのですが、レボドパとマグネシウムを同じ時間に服用している患者さんがどういうわけか非常に多くみられます。
私はパーキンソン病の患者さんには、原則的に酸化マグネシウムを処方しないようにしています。日本人にとっては緩下剤(便秘を解消する薬)としては漢方薬が最も合うということは確認されていますので、パーキンソン病患者さんに対しては漢方薬をファーストで使うべきだと考えています。ただし長年前医にてマグネシウムを処方されている患者さんについては、レボドパを服用して2~3時間後にマグネシウムを服用するように指示しました。そうすることによって発症後20年以上経過した患者さんにおいてもレボドパ(同じ1日量)の効果が著しく上がり、1日の動作レベルが向上したようです。
酸化マグネシウムは腎機能が低下した高齢者では、長期間服用を続けると、「高マグネシウム血症」を起こしやすいと言われています。それゆえ製薬会社からの以下のような注意勧告があります。
・処方に際しては、必要最小限の使用にとどめてください。
・定期的に血清マグネシウムを測定して、高マグネシウム血症の発症に十分注意ください。
・高マグネシウム血症の症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診するようにご指導ください。
①血清マグネシウム5.0mg/dl以上 ; 悪心、嘔吐、徐脈、起立性低血圧、筋力低下、嗜眠、倦怠感、無気力
②血清マグネシウム6.0~12.0mg/dl ; 房室ブロック、QT延長症候群、嚥下障害、筋肉麻痺、血圧低下
③血清マグネシウム18.0mg/dl以上 ; 昏睡、呼吸筋麻痺、血圧低下、心停止
①~②くらいの症例は、75歳以上でマグネシウムを長期服用している、体重30~45kg程度の虚弱な女性であれば、よく見かけるはずです。しかし血清マグネシウムが定期的に測定されているケースは残念ながら非常に希少のようです。以前のブログで何度も取り上げている、高力価・高用量のコリンエステラーゼ阻害薬 (リバスチグミン18mgやドネぺジル5~10mg)と併用していれば、相互作用増強で心臓不整脈のリスクが高まるでしょうし、レボドパ・ドパミンアゴニストなどパーキンソン治療薬が高用量で使用されていれば、低血圧による失神など自律神経不全の悪化のリスクが高まるであろうと推定されます。
パーキンソン病患者の高齢者で当たり前のようにどこでも使われている薬だからこそ、要注意なのだと思います。


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by shinyokohama-fc | 2017-06-05 19:07 | 治療
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