パーキンソン病治療薬の副作用(4)ドパミン・アゴニスト(中編)

私の経験では、ドパミン・アゴニストの副作用というのは多岐にわたりますが、どういう患者が副作用が出やすいのか?というのは予見が難しいのが現実だと思います。一般的な傾向としては、以下のような事例に副作用が出やすいのではないかと思います。
1) 高齢(70歳以上)での発症
2) 注意障害、遂行機能障害、記憶障害などを伴っている (一般的には「認知症」という)
3) 他の神経系作用薬の併用が多い (コリンエステラーゼ阻害薬、ベンゾジアゼピン系)
4) ドーパミン・アゴニストまたはレボドパの使用量が多い
5) 姿勢異常・姿勢不安定がすでにある
6) コリンエステラーゼ阻害薬か抗精神病薬を併用している
先のブログでも書いたように、当初ドパミン・アゴニストは当初は「麦角系」でしたが、この20年で時代とともに「非麦角系」が主流になり、1日3回の「速方剤」から1日1回の「徐放剤」に代わっていきました。皮肉なことにこの変遷が、ドパミン・アゴニストの副作用を増やしたのではないかと推定されます。20年前に「麦角系」を使用していた時期は、タリペキソールの嗜眠、ぺルゴリドの消化器症状(嘔気など)くらいではなかったかと思います。
最近、特に問題になっているのは、「姿勢異常」です。これは海外ではあまりに話題になっておらず、近年日本の臨床現場で、パーキンソン病にドパミン・アゴニストを使用している専門医の間で話題にされ始めました。パーキンソン病で日本で最も著名な先生が書かれた近著にも、「ドパミン・アゴニストによる姿勢異常」について明記されています。
新しい患者さんとして診る患者で、すでにドパミン・アゴニストが入っている方々にも、姿勢異常が数多く見られます。ドパミン・アゴニストを継続しているかぎり悪化していく傾向がみられるので、やはり減量・中止にするしか対応策がないと思われます。先のブログで述べたように、コリンエステラーゼ阻害薬でも同じような姿勢異常が数多くみられますので、併用するとかなりの確率で姿勢異常が現れるように感じます。
姿勢異常というのは主に以下の3タイプがありますが、多くは混合しています。
1) 体幹の側方傾斜(左右いずれかに傾く15度以上)、ピサ症候群 (ピサの斜塔になぞらえてこう呼ばれている)
2) 首下がり・首垂れ
3) 腰折れ・腰曲がり・体幹の高度前屈姿勢(45度以上)、カンプトコルミア
いずれも、動作や歩行速度はまったく落ちていない (パーキンソン病の必須症状である、「動作緩慢」は薬物治療が奏功して上手くいっている)のに、姿勢だけが外来で診るたびに悪くなっていく症例があります。
首下がりや腰曲がり姿勢が高度になっておこる二次的な問題としては、胃酸の逆流(逆流性食道炎)や腸管麻痺(イレウス)、嘔吐、誤嚥などのリスクが高くなることです。また起立・歩行時の転倒リスクが高まるために、我々臨床医としては、とても放置できない状況です。高齢(70~80歳)・認知症・多剤併用症例では特に要注意です。
しかし、ドパミン・アゴニストを減量・中止にすると、動きが悪くなることを予め覚悟しなければならず、一時期は動作障害を我慢していただいて、別の薬剤に切り替えるしかないと思います。このようなケースにおいて、どういう薬剤に切り替えればよいのかというのは、ガイドラインにも示されておらず、当然のごとくエビデンスどころか海外では話題にもされていないというのが現実です。治療を担当する医者の価値観や裁量に左右されざるを得ないのが現実です。その治療を担当している医者にとっても、それぞれの患者の脳内で神経伝達物質と受容体がどういう状態になっているのかがまったく見えていないですし、また1人1人の症例は同じ病気でも個別差が非常に大きくて違うので手探り状態でやっているというのが現実ではないかと思います。
ドパミン・アゴニストで姿勢異常が起こる理由は、現時点でまったく解明されていませんが、多くの症例で起こっているのは現実です。なるべく早期に気が付いて減量~中止して、他の薬剤に変更したほうがよいと言われますが、動作が悪化するので、実際に行うのはなかなか面倒です。
ある程度長期に服用しているケースでは骨変形が起こるため、修正が難しいようです。
以下は私の自験例です。私が診始めた時点ですでに前医でドーパミン・アゴニストが処方されていた症例です。
症例1)65歳女性。重度認知症を伴う症例
3~4年前に前医で、ビ・シフロール、ドネぺジルが処方されて、幻覚や精神錯乱状態となり、現在は中止されています。ご家族の希望で1年前から通院されています。幻覚や精神状態は安定していますが、特に立位・歩行時にひどい首下がりと腰曲がりが見られます。
現在の処方は、レボドパ/カルビドパ/エンタカポン配合剤(100mg)×3、 リバスチグミン4.5mg/日、リバスチグミンも姿勢異常を悪化させる傾向があるので、中止・変更を検討中です。
症例 2) 74歳男性。認知症なし
前医から紹介、すでに2年前から腰曲がりで前屈姿勢。前医処方は①レボドパ・カルビドパ(100mg)2錠、②ロピニロール速方剤(0.25mg)4錠・分2、③トリへキシフェニジル(2mg)1錠。
③は中止して、②を徐放剤へ変更、2mgから1か月ごとに2mgずつ増量して8mgで約1年間維持。動作は格段に速くなりましたが、前屈姿勢が悪化し、両下肢の浮腫もひどくなったので、一時ロチゴチンへの変更を試みたが、上手くいかず、結局①を300mgに増量して、ロピニロールは2mgずつ段階的に減量して最終的に中止としました。
主に神経内科医が行っている、パーキンソン病の薬物治療というのは、精神科のそれと同じで、実際には全く見えていない、患者の神経伝達物質のバランスや受容体の状態を推測しながら、神経に作用する薬をいくつか処方するという点で難しさがあります。


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by shinyokohama-fc | 2017-05-26 10:35 | 治療
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