公平性と多様性のある情報提供が医療者には求められる

先日、昨年12月に続いて、池袋病院の平川亘先生に新横浜のホテルで講演していただきました。私の知っている地域の開業医の先生方にも何人かお声をかけて参加していただいて、まずまず盛会?だったようです。
一般的に疾患の薬物治療に関する講演会においては、講演者の先生方は、ことさら特定の薬剤の効果やメリットだけを強調しがちです。すべての薬剤においては増量により、副作用(有害事象)のリスクが高まるというのは自明の理なのですが、そのような副作用情報はスルーして、ひたすら「増量しろ」と連呼する講演者の方々が目立つように思います。平川先生の講演がなぜ信用できるのかというと、ご自身が長年にわたって多くの患者で使用した経験に基ついた副作用をすべて講演スライドにて詳らかに公表しているという事です。今回、私が座長としてコリンエステラーゼ阻害剤の副作用で確認した範囲では「痙攣」の副作用だけ触れられていない事だけ、僭越ながら講演前に指摘させていただきましたが、現実的には先のブログで示しましたように、ガランタミンでも痙攣誘発症例を経験したほどですので、リバスチグミンでもドネぺジルでも当然起こりますし、実際そのような症例を経験しているというのが平川先生と私の共通意見でした。
医療に携わる者、特にその指揮的立場にある医者には、科学者としての公平性が求められます。「自らが提示した薬物治療のやり方だけが正しい」などという考え方は、自分の意向に合わないことや不都合な真実を無視したり、隠したりするというきわめて偏った行動になりがちです。特に薬物治療においては長所・欠点、プラスとマイナスが必ずあるので、いずれの情報もできるだけ開示して、それぞれの医療者の独自の考え方を尊重していく、場合によっては批判も真摯に受け入れていく必要があるのではないでしょうか? 日本人(東アジア人?)というのは、フランス人などと比べても自分価値観や考え方・意見というのが確立してない、自分の頭で考えたり調べたり勉強したりして、自分なりの考え方・価値観というのを構築する習慣が身についていない人が多い気がします。それがカリスマ的指導者のような人が生まれやすい背景があると思われます。そのような指導者が提示した内容を自分で検証することなく、鵜呑みにしてしまう。「○○先生の言っていることはすべて正しい」という思い込みの集団的心理こそが、排他的で偏向した価値観を生む危険性があるのではないでしょうか?このような問題を解決していくためには、一人一人が様々な方向の価値観の情報を見聞処理して積極的に問題提起をし、それぞれ個人個人の多様性、多様な考え方・価値観というものを反映させていく、不都合な情報をスルーしたりしないかを注意深く監視していくべきでしょう。様々な医療者の多様な意見が反映されて、批判・討論が活発に行われなければ、それは研究会や学会とは呼べないのではないかと私は思います。
平川先生の講演では最後に「私の考え」というスライドが入ります。「これはあくまで私の考えである」という事だと解釈しています。講演を聴いた医者全員が、まったく同じような処方を真似たり、同じ考え方をする必要はないと思いますし、私も平川先生の薬物処方の方法を一部参考にしてはいますが、すべてコピーしているわけではなく、独自の方法でやっています。なぜなら平川先生が主に外来で診ている症例と、私が主に外来で診ている症例はあまりにも違うからです。この病気なら、この薬物で、この必要量だとか1対1の単純な方法では済まないのが現実です。そうでないと多様な症例には対応できません。
1人の意見を鵜呑みにして盲目的に従うのではなく、多様な意見に耳を傾けるという態度こそが、我々医療者には求められると思います。


新横浜フォレストクリニック
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by shinyokohama-fc | 2017-03-11 10:40 | 医療
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