横浜認知症セミナー/平川先生の講演

一昨日、12月14日水曜日に、新横浜駅前の新横浜グレイスホテルにおいて、「横浜認知症セミナー」が実施されました。「認知症診断のポイントと治療のコツ」というタイトルで、誠弘会池袋病院の副院長、脳神経外科医の平川亘先生の特別講演がありました。座長は済生会横浜市東部病院の神経内科部長の後藤先生が務められました。
平川先生は、病院で脳神経外科の救急医療・入院管理などの業務をこなしながら、外来で莫大な症例数の認知症患者を20年前から診療してきたDrです。元々高次脳機能学を専門にされていたので、認知症の診療には抵抗はなかったのかもしれませんが、コリンエステラーゼ阻害薬の3種類の薬剤を様々な用量で様々なタイプの認知症患者に試されて、その経験を統計処理しておられます。いわば単独で大規模臨床試験をしているようなものなので、その仕事ぶりには非常に驚かされます。単発の症例で薬物治療がまぐれ当たりで効いたという話ではないので、非常に説得力があります。この大規模臨床試験をベースにした講演を首都圏各地で行っていて、新横浜では10月15日に続いての講演でした。平川先生は私がいつもブログで書いている、コリンエステラーゼ阻害薬の危険性を誰よりも熟知されているので、コリンエステラーゼ阻害薬の少量投与を昔から試しておられます。一番驚いたのは、リバスチグミン4.5mgを1/4にカットして1.125mgで使用するというものです。初めに聞いたときは???と思いましたが、実際に重度の認知症の高齢者でアパシーが強く、食事を食べない人にリバスグミン1.125mgで試してみると、確かに食事を食べるようになったのです。平川先生のこの薬の使い方としては、記憶を良くする目的でも進行を遅らせる目的でもなく、今もっとも困っている症状を改善するという事に主眼を置いています。講演では「認知症は治らないが、元気で機嫌よくいてくれたらいい」という言葉で結んでいます。
私は今年の3月の「認知症治療研究会」で開演前に40分ほど話し込んだのが平川先生との初めての対談でした。それ以後、平川先生の臨床医としての姿勢や薬物療法の理念に感銘を受けて、意気投合しました。今年も様々な講演会の情報交換会やメールなどで交流を重ねさせていただきました。10月15日の新横浜の講演会もお願いすると快く引き受けていただきました。「今の認知症の薬物治療はおかしい」と言っておられます。初めて講演を聞いた医者はほぼ全員「衝撃を受けた」「価値観が変わった」と口にします。
認知症を含めた神経変性疾患を本当の意味で「治す」治療は存在しませんし、現存の薬物治療でやれることも期間限定の「対症療法」に限られています。それを認めたうえで、私は薬物治療の強制的な推進は好ましくないと思っています。例えば「意味性認知症/前頭側頭型認知症」という疾患では、ドネぺジル(保険適用外)の薬剤を3~5年内服していた患者を4~5名診ましたが、全例で常同行動や反響言語、脱抑制行動が顕著に重症化していました。おそらくリバスチグミンなど他の薬剤でも同じ結果が起こったと推定されます。つまりこのタイプにはコリンエステラーゼ阻害薬を使用してはいけないのです。「認知症であれば、誰でも彼でも同じような標準量のコリンエステラーゼ阻害薬を処方してればいい」と考えて診療にあたっている専門医が多いという現実があります。コリンエステラーゼ阻害薬の3種類が全く違う性質があるという事実が知られていないようです。


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by shinyokohama-fc | 2016-12-16 12:32 | 治療
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